説明

電子写真用導電性部材、並びにこれを具備したプロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】通電による抵抗変化が小さく、耐久後にも画像不良のない電子写真用導電性部材並びに該電子写真用導電性部材を具備したプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供する。
【解決手段】導電性支持体上に被覆層を有する電子写真用導電性部材において、該被覆層が下記一般式(1)で示される化合物を含有することを特徴とする電子写真用導電性部材、並びに該電子写真用導電性部材を具備したプロセスカートリッジ及び電子写真装置:
【化4】


(式中、R1、R2及びR3は、各々独立に、Hまたはアルキル基である)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置で行われる画像形成プロセスにおいて通電しながら用いられる、現像部材、帯電部材、転写部材等の半導電性部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置は、静電潜像形成用の感光体、帯電部材、露光装置、現像部材、転写部材、クリーニング部材から一般に構成されている。この中で、帯電部材、現像部材、転写部材が半導電性弾性体から成る場合は、ローラやブレードの形状をしていることが多い。これらの半導電性部材は、オゾンやNOxなどの放電生成物により劣化することが、一般的に知られている。このオゾンやNOx等の放電生成物による劣化は大気に触れている最表面での劣化現象であると言える。この放電生成物により生成されたパーオキサイドラジカルの、自動酸化によるラジカル増殖の連鎖を食い止めるために、N,N’−ビス−3−(3’−tert−ブチル−5−tert−アミル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニルヘキサメチレンジアミン(例えば特許文献1参照)や、トリス−(3−tert−ブチル−5−tert−アミル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(例えば特許文献2参照)等のヒンダードフェノール基を有する化合物を導電性部材に含有することが行われてきた。
【特許文献1】特開平3−9380号公報
【特許文献2】特開平3−10266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、放電生成物が影響を及ぼす最表面だけではなく、放電生成物が侵入してこない内部でも劣化は起こっている。この導電性部材の内部の劣化には、オゾンやNOx等の放電生成物により生成するパーオキサイドラジカルは介在しない。その代わりに、無酸素下の通電により発生したアルキルラジカルが劣化を促進させる。このアルキルラジカルは自動酸化によって増殖していく。そして、導電性弾性体の架橋密度を増加させ、同時に硬化が進む。その結果として導電性弾性体が硬化に起因して高抵抗化する。導電性弾性体の抵抗が大きく変化してしまうと画像不良の原因となるので、抵抗変化を最小限に抑える必要がある。導電性弾性体が高硬度化により高抵抗化することで起こる画像不良は、帯電部材、現像部材、転写部材でそれぞれ次のようなものがある。帯電部材の場合は、出力画像の水平方向に数ミリから数センチのすじが発生し、画像の均一性が失われる。現像部材の場合には、トナーがチャージアップしてしまい、出力画像の濃度が薄くなる、濃度むらが出るなどの弊害が出る。転写部材の場合には、電子写真感光体や中間転写体上のトナーが紙に転写されず、濃度むらができる。また、高硬度化によって紙が滑ってしまい搬送不良を起こす。本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、特定の化合物を含有させた導電性弾性体を用いることにより、抵抗の上昇が抑制された、電子写真用導電性部材、並びに該電子写真用導電性部材を具備したプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、導電性支持体上に被覆層を有する電子写真用導電性部材において、該被覆層が下記一般式(1)で示される化合物を含有することを特徴とする電子写真用導電性部材である:
【0005】
【化2】

【0006】
(式中、R1、R2及びR3は、各々独立にHまたはアルキル基である)。
【0007】
また、本発明は、電子写真感光体及び1つまたは2つ以上の電子写真用導電性部材を一体に支持したプロセスカートリッジにおいて、該導電性部材のうち少なくとも1つが上記電子写真用導電性部材であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0008】
また、本発明は、電子写真感光体と、前記電子写真感光体に接触して配置され、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された前記電子写真感光体の表面を露光する露光手段と、前記露光手段によって形成された潜像を可視化する現像手段と、可視化された潜像を転写材に転写する転写手段と、を具備した電子写真装置において、前記帯電手段、現像手段及び転写手段を構成する電子写真用導電性部材のうち少なくとも1つが上記電子写真用導電性部材であることを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0009】
一般式(1)で示される化合物を用いることで、CH2=CHCOO基の二重結合が通電により生成したアルキルラジカルを捕捉する。そして、この反応で新たに生成したラジカルに、分子内に存在するフェノール性のOH基から水素移動が起こる。
【0010】
その結果、前記化合物は、比較的安定なラジカルであるフェノキシラジカルになって、通電により発生したラジカルが連鎖によって増殖していくのを防ぐことができる。それゆえに、該導電性部材の硬化を抑制することができ、ひいては高抵抗化を防ぐことができる。
【0011】
従って、本発明により、通電による抵抗変化が小さく、耐久後にも画像不良のない電子写真用導電性部材並びにそれを具備したプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一般式(1)で示される化合物としては、例えば2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−(1−(3−tert-ブチル−2−ヒドロキシ−5−tert−ペンチルフェニル)エチル)−6−tert-ブチル−4−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−(1−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェニルアクリレート、2−(1−(3−tert-ブチル−5−エチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)−6−tert-ブチル−4−エチルフェニルアクリレート、2−(1−(3−tert-ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピル)−6−tert-ブチル−4−メチルフェニルアクリレート、2−(1−(3−tert-ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エチル)−6−tert-ブチル−4−メチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートが挙げられる。
【0013】
本発明の電子写真用導電性部材の構造及び形態を例示すれば、例えば図1に示したように、弾性体層12を導電性支持体(シャフト)11の外周に形成した電子写真用導電性部材(a)を例示することができる。また、電子写真用導電性部材(a)の該弾性体層12の外側に、外層13を形成した電子写真用導電性部材(b)のように2層以上の多層構成であってもよい。
【0014】
本発明で用いる一般式(1)で示される化合物は、前記のような1層構成の場合はその層、また2層以上の多層構成の場合には、そのいずれかの層もしくは2層以上の層(全層も含む)に含有させることができる。該化合物層は、導電性部材としての抵抗を支配する最も抵抗の高い層に添加するのが好ましい。
【0015】
添加量は、該化合物が添加される層中のポリマーの合計量100質量部に対して、0.1〜50質量部の範囲が好ましく、添加される樹脂、ゴムの種類に対応して、その相溶性、通電劣化防止機能の効果により適宜決めることができる。特に0.5〜5質量部の範囲では、通電劣化防止機能の効果がより大きく、該化合物のブルームもないのでより好ましい。
【0016】
一般に添加量が、0.1質量部未満では通電劣化防止効果が乏しく、50質量部を超えると帯電部材の成膜性や成形性の低下等の弊害を生じる。また、他のヒンダードフェノールやヒンダードアミンなどのパーオキサイドラジカル捕捉剤や、イオウ系やリン系のハイドロパーオキサイド分解剤と併用して用いることもできる。
【0017】
上記弾性体層12は、従来から電子写真用導電性部材の弾性体層として用いられているゴムや熱可塑性エラストマー等で形成することができる。具体的には、ポリウレタン、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム等を基材ゴムとするゴム組成物、あるいは熱可塑性エラストマーで、その種類としては特に制限はなく、汎用のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーなどから選ばれる1種あるいは複数種の熱可塑性エラストマーを好適に用いることができる。
【0018】
この弾性体層12には、導電剤を添加することにより、所定の導電性を付与することができる。その導電剤としては、特に制限されず、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、エトサルフェート塩、臭化ベンジル塩、塩化ベンジル塩等のハロゲン化ベンジル塩といった第四級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤、各種ベタイン等の両性イオン界面活性剤、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル等の非イオン性帯電防止剤等の帯電防止剤、LiCF3SO3、NaClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaCl等のLi+、Na+、K+等の周期律表第1族の金属塩、あるいはNH4+塩等の電解質、また、Ca(ClO42等のCa2+、Ba2+等の周期律表第2族の金属塩、及びこれらの帯電防止剤が、少なくとも1個以上の水酸基、カルボキシル基、一級ないし二級アミン基等のイソシアネートと反応する活性水素を有する基を持ったものが挙げられる。更には、それらと1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールとその誘導体等の錯体あるいはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のモノオールとの錯体等のイオン導電剤、またはケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等が挙げられる。この場合、これら導電剤の配合量は、組成物の種類に応じて適宜選定され、通常弾性体層12の体積抵抗率が102〜108Ω・cm、好ましくは103〜106Ω・cmとなるように調整される。
【0019】
上記外層13は、電子写真用導電性部材表面に形成する材料として、具体的には、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられ、有機系、水系のいずれのものも使用することができる。
【0020】
更に、この導電性樹脂層は架橋密度を制御する為に、架橋剤等の添加剤を必要に応じて適量添加することができる。この場合、架橋剤としては、所望の架橋効果が得られるものであればいずれのものでもよい。例えば、エポキシ系、オキサゾリン系、メラミン系、イソシアネート系、フェノール系の架橋剤を例示することができる。
【0021】
また外層13には、導電剤を添加して導電性を付与または調整することができ、この場合導電剤としては、特に制限されるものではないが、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト、アンチモンドープの酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び金属酸化物等を用いることができる。
【0022】
更に前記導電剤を有機系溶剤で使用する場合は、分散性を考慮し、導電剤の表面にシランカップリング処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0023】
また上記導電剤の添加量は、所望とする抵抗が得られるように適宜調整することができる。この場合、外層13の抵抗は、体積抵抗率103〜1015Ω・cm、特に105〜1014Ω・cmとすることが好ましく、このような体積抵抗率を達成するように導電剤の添加量を調整することができ、導電剤としてシランカップリング剤により表面処理を施されたアンチモンドープの酸化錫を用いた場合の添加量は、通常、外層13の0.01〜30質量%、特に5〜20質量%程度とされる。
【0024】
この外層13に添加する弾性体粒子として、上記導電剤以外の絶縁性粒子である無機粒子、例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ等が挙げられる。また絶縁性の有機粒子として、アクリル樹脂、アクリル/スチレンの共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーンゴム粒子、エポキシ樹脂粒子等が挙げられ、このうち有機粒子であるアクリル粒子あるいはアクリル/スチレンの共重合体樹脂を用いることが表層材の剛性をあまり変化させないので特に好ましい。
【0025】
また、有機粒子を用いた場合は、使用溶剤との組み合わせで膨潤し、粒子形状が変化することがあるので、架橋タイプを用いた方がよい。
【0026】
この外層13の厚さは、10〜50μmとするのが好ましい。特に10〜30μmとすることが好ましく、外層13の厚さが50μmを超えると、外層13が硬くなって柔軟性が損なわれる場合があり、耐久性が低下して使用によりクラックが発生する恐れがある。10μm以下では、弾性体層からブリードしてくる物質を防止することが困難である。
【0027】
上記外層13の形成方法は、特に制限されるものではないが、各成分を含む塗料を調製し、この塗料をディッピング法やスプレー法により塗布して塗膜を形成する方法が好ましく用いられる。この場合、外層を複数層とする場合には、それぞれの層を形成する塗料を用いてディピングやスプレーを繰り返せばよい。なお、外層の形成方法は、上記ディッピング法やスプレー法が好ましい。
【0028】
図2は、本発明の電子写真用導電性部材を電子写真装置に適用した例を示す。21は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(感光体)である。この感光体21は、図中の矢印が示す時計回りに所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動する。感光体21には、例えばロール状の導電性支持体と該支持体上に無機感光材料または有機感光材料を含有する感光層とを少なくとも有する公知の感光体等を採用すればよい。また、感光体21は、感光体表面を所定の極性、電位に帯電させるための電荷注入層を更に有していてもよい。
【0029】
22は本発明の電子写真用導電性部材としての帯電ローラである。帯電装置としては帯電ローラ以外にも公知の手段を利用することができる。帯電ローラ22と帯電ローラ22に帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加電源S1とによって帯電手段が構成されている。帯電ローラ22は、感光体21に所定の押圧力で接触させてあり、本例では感光体21の回転に対して順方向に回転駆動する。この帯電ローラ22に対して帯電バイアス印加電源S1から、所定の直流電圧(本例では−1200Vとする)が印加されることで、感光体21の表面が所定の極性電位(本例では暗部電位−600Vとする)に一様に接触帯電方式のうちのDC帯電方式で帯電処理される。
【0030】
23は露光手段である。この露光手段23には公知の手段を利用することができ、例えばレーザービームスキャナー等を好適に例示することができる。
【0031】
感光体1の帯電処理面に該露光手段23により目的の画像情報に対応した像露光がなされることにより、感光体帯電面の露光明部の電位(本例では明部電位−350Vとする)が選択的に低下(減衰)して感光体21に静電潜像が形成される。
【0032】
24は反転現像手段である。現像手段24としては公知の手段を利用することができ、例えば本例における現像手段24は、トナーを収容する現像容器の開口部に配設されてトナーを担持搬送するトナー担持体24aと、収容されているトナーを撹拌する撹拌部材24bと、トナー担持体24aのトナーの担持量(トナー層厚)を規制するトナー規制部材24cとを有する構成とされている。現像手段24は、感光体21表面の静電潜像の露光明部に、感光体21の帯電極性と同極性に帯電(本例では現像バイアス−350Vとする)しているトナー(ネガトナー)を選択的に付着させて静電潜像をトナー像として可視化する。現像方式としては特に制限はなく、既存の方法すべてを用いることができる。既存の方法としては、例えば、ジャンピング現像方式、接触現像方式及び磁気ブラシ方式等が存在するが、特にカラー画像を出力する画像形成装置には、トナーの飛散性改善等の目的より、接触現像方式の本発明の電子写真用導電性部材である現像ローラが好ましい。
【0033】
25は本発明の電子写真用導電性部材を転写手段としての用いた転写ローラである。転写ローラ25は、感光体21に所定の押圧力で接触させて転写ニップ部を形成させてあり、感光体21の回転と順方向に感光体21の回転周速度とほぼ同じ周速度で回転する。また、転写バイアス印加電源S2からトナーの帯電特性とは逆極性の転写電圧が印加される。転写ニップ部に対して不図示の給紙機構部から転写材Pが所定のタイミングで給紙され、その転写材Pの裏面が転写電圧を印加した転写ローラ5により、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電されることにより、転写ニップ部において感光体21面側のトナー画像が転写材Pの表面側に静電転写される。
【0034】
転写ニップ部でトナー画像の転写を受けた転写材Pは感光体面から分離して、不図示のトナー画像定着手段へ導入されて、トナー画像の定着を受けて画像形成物として出力される。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合は、この画像形成物が不図示の再循環搬送機機構に導入されて転写ニップ部へ再導入される。
【0035】
転写残余トナー等の感光体21上の残留物は、ブレード型等のクリーニング手段26により、感光体上より回収される。
【0036】
また、27は前露光手段である。感光体21に残留電荷が残るような場合には、帯電部材22による一次帯電を行う前に、前露光装置27によって感光体21の残留電荷を除去したほうがよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例、比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。実施例中、「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0038】
[実施例1]導電性弾性体層の形成
エピクロルヒドリンゴム(商品名「エピクロマーCG102」:ダイソー(株)製)100部、充填剤としての炭酸カルシウム30部、研磨性改善のための補強材としての着色グレードカーボン(商品名「MTカーボンブラック」:カナダcancarb製)5部、酸化亜鉛5部、可塑剤(商品名「ポリサイザーP−202」:大日本インキ(株)製)5部、下記構造の過塩素酸4級アンモニウム塩2部
【0039】
【化3】

【0040】
をオープンロールで20分間混練し、更に加硫促進剤DM 1部、加硫促進剤TS 0.5部、加硫剤としてイオウ1部を加えて更に15分間オープンロールで混練した。
【0041】
これをゴム押出機で、外径15mm、内径5.5mmの円筒形に押出、250mmの長さに裁断し、加硫缶で、160℃の水蒸気で40分間1次加硫し、導電性弾性体層1次加硫チューブを得た。次に直径6mm、長さ256mmの円柱形の導電性支持体(鋼製 表面工業ニッケルメッキ)の円柱面の軸方向中央部231mmに金属とゴムとの熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20)を塗布し、80℃×30分乾燥後、120℃×1時間乾燥した。この支持体を前記導電性弾性体基層ゴム1次加硫チューブに挿入し、その後、電気オーブン中で160℃×2時間、2次加硫と接着剤硬化を行い、未研磨品を得た。この未研磨品のゴム部分の両端を突っ切り、ゴム部分の長さを231mmとした後、ゴム部分を回転砥石で研磨し、端部直径8.4mm、中央部8.5mmのクラウン形状で表面の十点平均粗さRz7μm、振れ40μmの導電性弾性体層を有する帯電部材基層を得た。
【0042】
表層の形成
導電性酸化錫粉体(商品名「SN−100P」:石原産業(株)製)50部に、トリフルオロプロピルトリメトキシシランの1%イソプロピルアルコール溶液を500部と平均粒子径0.8mmのガラスビーズ300部を加え、ペイントシェーカーで70時間分散後、分散液を500メッシュの網でろ過し、次にこの溶液をナウターミキサーで撹拌しながら100℃の湯浴で暖め、アルコールを飛ばして乾燥させ、表面にシランカップリング剤を付与し、表面処理導電性酸化錫を得た。
【0043】
更にラクトン変性アクリルポリオール(商品名「プラクセルDC2016(水酸基価 80KOHmg/g)」:ダイセル化学工業(株)製)137部を、463部のMIBK(メチルイソブチルケトン)に溶解し、固形分16.0%の溶液とした。このアクリルポリオール溶液200部に対して、前記表面処理導電性酸化錫粉体を41.6部、シリコーンオイル(商品名「SH−28PA」:東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)を0.01部、微粒子シリカ(一次粒子径0.02μm)を0.96部、弾性体粒子24.00部(商品名「テクポリマーMBX−12」(平均粒径12μm):積水化成品工業(株)製)、フェノール基とCH2=CHCOO基を共に有する化合物として2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートを2.88部配合した。これに直径0.8mmのガラスビーズ200部を加えて、450mlのマヨネーズビンに入れて、ペイントシェーカーを使用し、6時間分散した。
【0044】
更にこの分散液330部にイソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体(IPDI)(商品名「ベスタナートB1370」:デグサ・ヒュルス製)を23.3部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型3量体(HDI)(商品名「デュラネートTPA−B80E」:旭化成工業(株)製)を14.9部混合し、ボールミルで1時間撹拌し、最後に200メッシュの網で溶液をろ過して、表層塗料の固形分を39%とし、表層用塗料を得た。このとき、2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートは、ポリマーの合計量に対し3.9部に相当する。
【0045】
前記表層用塗料をディッピングにより、前記導電性弾性体層を有する帯電部材の表面に塗工した。引き上げ速度400mm/minで塗工し、30分間風乾後、軸方向を反転し、再度引き上げ速度400mm/minで塗工し、30分間風乾後、オーブンで160℃×1時間乾燥した。表層の膜厚は17μmであった。
【0046】
こうして完成した電子写真用導電性ローラを実施例1とした。この電子写真用導電性ローラの各層の抵抗は、表層が4.3E+5Ω、基層が5.5E+4Ωであった。以下の実施例、比較例は、すべて表層の抵抗が基層の抵抗に比べ高い。
【0047】
[実施例2]
前記の実施例1の2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートをポリマーの合計量に対し5部に増量したこと以外は同様の方法でローラを得た。
【0048】
[実施例3]
前記の実施例1の2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートをポリマーの合計量に対し10部に増量したこと以外は同様の方法でローラを得た。
【0049】
[実施例4]
前記の実施例1の2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートをポリマーの合計量に対し0.5部に減量したこと以外は同様の方法でローラを得た。
【0050】
[実施例5]
前記の実施例1の2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートをポリマーの合計量に対し0.1部に減量したこと以外は同様の方法でローラを得た。
【0051】
[実施例6]
前記の実施例1の2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートの代わりに2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを配合したこと以外は同様の方法でローラを得た。
【0052】
[実施例7]
前記の実施例1の2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートを上記外層に添加する代わりに弾性体層にポリマーの合計量に対し5部配合したこと以外は同様の方法でローラを得た。
【0053】
[比較例1]
前記の実施例1の2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートの代わりにN,N’−ビス−3−(3’−tert−ブチル−5’−tert−アミル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニルヘキサメチレンジアミンを配合したこと以外は同様の方法でローラを得た。
【0054】
[比較例2]
前記の実施例1の2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートの代わりにトリス−(3−tert−ブチル−5−tert−アミル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレートを配合したこと以外は同様の方法でローラを得た。
【0055】
[比較例3]
前記の実施例1の2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートの代わりにテトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンを配合したこと以外は同様の方法でローラを得た。
【0056】
[比較例4]
前記の実施例1の2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートの代わりに3,9−ビス(2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンを配合したこと以外は同様の方法でローラを得た。
【0057】
[比較例5]
前記の実施例1の2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレートを配合しないこと以外は同様の方法でローラを得た。
【0058】
上記の実施例1〜7と、比較例1〜5の通電による電流値の減少を以下の方法で測定した。図3に通電劣化試験機の概略図を示す。φ24のアルミシリンダ31に両端に500gの荷重をかけつつ導電性ローラ32を当接させて、シリンダの回転速度を60rpmにして、導電性ローラを従動させた。33は固定抵抗器、34はレコーダー、S3はバイアス印加電源である。その導電性ローラに初期電流値が300μAになるように印可電圧を調節し定電圧で通電した。試験環境としては、温度15℃湿度10%RHで行った。この状態で3時間通電し続けて電流値を記録した。この3時間後の電流値を比較した結果を表1に示した。
【0059】
また、図2に示す構成の電子写真装置に、前記実施例、比較例で得られたローラを帯電ローラとして取り付け、温度15℃、湿度10%RHの環境下においてハーフトーン画像を出力した。初期の画像からは、全ての実施例、比較例で帯電均一性は良好であった。ここで言う帯電均一性が良好であるというのは、ハーフトーン画像の出力方向に対して横方向の「すじ」が出ないことを指している。この横方向の「すじ」は帯電能力が低いことに起因して発生する。
【0060】
前記実施例、比較例のローラについて画像出し耐久試験を行った。試験条件は前記の方法で連続10,000枚を通紙した。その結果、耐久後でも抵抗変動の小さい実施例1〜7では帯電均一性が良好であった。しかし、実施例5〜7では、耐久後の画像に小さなすじが少し発生していた。実施例3では、ブルームが発生し外観という点では好ましくはないが画像には影響しない程度であった。それに対し、比較例1〜5では大きなすじが多発し帯電均一性が不良であった。これは、実施例では、抵抗変動が小さいために帯電能力は保持されているが、比較例は抵抗上昇が大きいために帯電能力が低下し、帯電均一性が悪いといえる。前記の結果を表1にまとめる。
【0061】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の電子写真用導電性部材の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の電子写真装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の電子写真用導電性ローラの通電劣化測定装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0063】
11 導電性支持体(シャフト)
12 導電性弾性体層
13 表層(外層)
21 像担持体(電子写真感光体)
22 帯電部材(帯電ローラ)
23 露光手段
24 現像手段
24a トナー担持体
24b 撹拌部材
24c トナー規制部材
25 転写手段
26 クリーニング手段
27 前露光手段
31 円筒電極(アルミシリンダ)
32 導電性ローラ
33 固定抵抗器
34 記録計(レコーダー)
L レーザー光
S1、S2、S3 バイアス印加電源
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に被覆層を有する電子写真用導電性部材において、該被覆層が下記一般式(1)で示される化合物を含有することを特徴とする電子写真用導電性部材:
【化1】


(式中、R1、R2及びR3は、各々独立に、Hまたはアルキル基である)。
【請求項2】
1がt-C49またはt-C511であり、R2がCH3、C25、i-C3、t-C49及びt-C511から選ばれる基であり、R3がHまたはCH3である請求項1に記載の電子写真用導電性部材。
【請求項3】
3がCH3である請求項2に記載の電子写真用導電性部材。
【請求項4】
被覆層が2層以上で構成されていて、そのうち最も抵抗の高い層が一般式(1)で示される化合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真用導電性部材。
【請求項5】
一般式(1)で示される化合物を含有する層が、該層中のポリマーの合計量100質量部に対して、該化合物を0.5〜5.0質量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用導電性部材。
【請求項6】
電子写真感光体及び1つまたは2つ以上の電子写真用導電性部材を一体に支持したプロセスカートリッジにおいて、該導電性部材のうち少なくとも1つが請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用導電性部材であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用導電性部材が帯電部材である請求項6に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項8】
電子写真感光体と、前記電子写真感光体に接触して配置され、前記電子写真感光体を帯電する帯電手段と、前記帯電手段によって帯電された前記電子写真感光体の表面を露光する露光手段と、前記露光手段によって形成された潜像を可視化する現像手段と、可視化された潜像を転写材に転写する転写手段と、を具備した電子写真装置において、前記帯電手段、現像手段及び転写手段を構成する電子写真用導電性部材のうち少なくとも1つが請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用導電性部材であることを特徴とする電子写真装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用導電性部材が帯電手段を構成する請求項8に記載の電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−47560(P2006−47560A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226804(P2004−226804)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】