電子回路基板の製造装置
【課題】インクジェット法によって高密度な電子回路を形成可能であり、従来よりも製造の手間と時間を短縮できる電子回路基板の製造装置を提供する。
【解決手段】電子回路基板の製造装置1は、撥水性の表面を有する基板Bに光または電子線を照射することにより前記基板Bの表面に親水性を有する所定パターンを形成するレーザー3と、前記パターン上に導電性成分を含むインクを吐出するプリントヘッド21を有するインクヘッド2と、を備えている。
【解決手段】電子回路基板の製造装置1は、撥水性の表面を有する基板Bに光または電子線を照射することにより前記基板Bの表面に親水性を有する所定パターンを形成するレーザー3と、前記パターン上に導電性成分を含むインクを吐出するプリントヘッド21を有するインクヘッド2と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット式記録装置の技術を応用して、電子回路基板を製作することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。これは、金属粒子を分散させたインクを基板上に吐出することにより、基板上に所定の回路パターンを形成するものである。かかる手法はインクジェット法と称されており、従来のフォトリソグラフィ法と比較して、配線パターンに必要な部分にのみ金属インクを吐出すれば足りるので、金属材料の使用量が少なく、また、工程数を削減できるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−296425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の電子回路の高密度化に伴い、配線幅および配線間ピッチは非常に小さくなっている。しかし、従来のインクジェット法では、インクヘッドから吐出された金属インクが基板上に着弾した後、基板表面において広がってしまうため、配線幅および配線間ピッチの小さな電子回路を形成することが困難であった。また、そのような高密度な電子回路を形成するには、多くの手間と時間が必要であった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インクジェット法によって高密度な電子回路を形成可能であり、従来よりも製造の手間と時間を短縮できる電子回路基板の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子回路基板の製造装置は、撥水性の表面を有する基板に光または電子線を照射することにより前記基板の表面に親水性を有する所定パターンを形成する親水部形成装置と、前記パターン上に導電性成分を含むインクを吐出するプリントヘッドを有するインクヘッドと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高密度な電子回路が形成可能となる。また、従来よりも製造の手間と時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る電子回路基板の製造装置の要部を示す正面図である。
【図2】(a)〜(e)は電子回路基板を製作する一連の工程を示す断面図である。
【図3】(a)〜(f)は多層構造の電子回路基板を製作する一連の工程を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)はスルーホールの製作の工程を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は電子デバイスを備えた基板に回路パターンを製作する一連の工程を示す模式図である。
【図6】(a)〜(c)は電子デバイスを備えた基板に回路パターンを製作する一連の工程を示す模式図である。
【図7】他の電子回路基板の製造装置の要部を示す正面図である。
【図8】(a)は第2実施形態に係る電子回路基板の製造装置の斜視図であり、(b)は同製造装置の要部の正面図であり、(c)は回路基板の断面図である。
【図9】(a)〜(d)は電子回路基板を製作する一連の工程を示す模式図である。
【図10】(a)〜(c)は電子回路基板を製作する一連の工程を示す模式図である。
【図11】(a)は第3実施形態に係る電子回路基板の製造装置の斜視図であり、(b)は同製造装置の要部の正面図である。
【図12】(a)〜(d)は回路基板を製作する一連の工程を示す模式図である。
【図13】(a)〜(c)は回路基板を製作する一連の工程を示す模式図である。
【図14】他の実施形態に係る電子回路基板の製造装置の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<第1実施形態>
(電子回路基板の製造装置の構成)
以下、本発明の一実施形態を図面に従って説明する。図1に示すように、本実施形態に係る電子回路基板の製造装置(以下、単に製造装置という)1は、導電性のインクを吐出するインクヘッド2を備えている。このインクヘッド2は、いわゆるインクジェット式の吐出動作を行う。なお、本発明における「インクジェット式」とは、インクジェット技術によるインクの吐出方式を意味する。更に、「インクジェット式」には、公知の各種手法が含まれ、例えば二値偏向方式或いは連続偏向方式等の各種の連続方式や、サーマル方式或いは圧電素子方式等の各種のオンデマンド方式が含まれる。
【0010】
製造装置1は、インクヘッド2とレーザー3と紫外線照射装置4とを備えている。図1等において、符号Yは主走査方向を示す。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向となる。主走査方向と直交する方向である副走査方向は、基板Bが搬送される方向であり、前後方向となる。
【0011】
インクジェットプリンタ1の内部には、主走査方向Yに延びるガイドレール10が設けられている。ガイドレール10の中央部の下方かつ前方には、ベルト状のベッド11が配置されている。ベッド11は、インクヘッド2によるインクの吐出やレーザー3による基板Bの加工の際に、基板Bを支持する部分である。基板Bに対するインクの吐出および加工は、ベッド11上において行われる。
【0012】
インクヘッド2は、基板Bに向かってインクを吐出するヘッドである。インクヘッド2は、インクを吐出するノズル20を有する複数のプリントヘッド21と、これらのプリントヘッド21を支持するプリントヘッドキャリッジ22とを有している。プリントヘッドキャリッジ22は、左右方向に移動可能なようにガイドレール10に係合している。プリントヘッド21は、前記ノズル20からインク滴を下方に向かって吐出する。各プリントヘッド21には、正面右側から順に、親水性の紫外線硬化インク、撥水性の紫外線硬化インク、イエロの紫外線硬化インク、ホワイトの紫外線硬化インク、銅粒子を分散させた金属ナノインク、銀粒子を分散させた金属ナノインクインクがそれぞれ供給される。ここで「親水性」とは、物質の表面が水を弾かず、水が表面になじんだ状態になりやすい性質のことをいう。より具体的には、物質上における水滴の接触角が25度以下のものをいう。「撥水性」とは、ある物質の表面に水滴を落とすと、水滴が弾かれてほぼ球形に近い状態となる性質をいう。より具体的には、物質上における水滴の接触角が60度以上のものをいう。「金属ナノインク」とは、分散させた金属微粒子を含むインクのことをいう。金属微粒子同士がインク中で融着しないように、粒子表面は有機物で被覆されている。金属微粒子としては、他にニッケルやマンガン等が適宜使用される。なお、金属ナノインクに代えて、他の導電性インク、例えば抵抗材料や半導体成分を含有するインク等を使用してもよい。これらは、いずれも導電性成分を含むインクである。なお、前記イエロやホワイトの紫外線硬化インクは、例えば基板Bに文字や記号等を印刷するための印刷用のインクである。ただし、イエロやホワイトの紫外線硬化インクは、電子回路の形成には必須ではない。そのため、それらのインクを吐出するプリントヘッド21は、省略してもよい。また、印刷用のインクの色彩は、イエロやホワイトに限定される訳ではなく、他の色のインクを用いることも可能である。
【0013】
紫外線照射装置4は、紫外線硬化インクに紫外線を照射する装置であり、本実施形態では紫外線発光ダイオードから構成されている。なお、紫外線照射装置4の構成は何ら限定されず、例えばハロゲンランプ等で構成してもよい。紫外線照射装置4は、連結部材30を介してプリントヘッドキャリッジ22の右側部に取り付けられている。紫外線照射装置4は、インクヘッド2と共に左右方向に移動する。すなわち、紫外線照射装置4は、プリントヘッドキャリッジ22を介してガイドレール10に案内され、左右方向に移動する。ただし、紫外線照射装置4自体がガイドレール10に案内されるように構成されていてもよい。プリントヘッドキャリッジ22の左側部には、磁石31が取り付けられている。
【0014】
次に、レーザー3について説明する。レーザー3は、親水部形成装置の一例であり、基板Bにレーザー処理を施すためのレーザー照射装置からなっている。レーザー3からは、例えばCO2レーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等が照射されるが、具体的なレーザー光の種類は、決してこれらに限定されるものではない。レーザー3には、加工の種類等に応じて、レーザー光の照射中でも集光径を変更できるようなレンズ(図示せず)が内蔵されている。この集光径を変更することにより、単位面積当たりの照射強度が一定となるように設定することも可能である。また、レーザー3にはファンが設けられていてもよい。これにより、レーザー加工時に発生する煙を回収することが容易となる。レーザー3の右側部には、磁石32が取り付けられている。レーザー3には、主走査方向Yに移動するキャリッジ33が内蔵されており、レーザー3は前記ガイドレール10に沿って主走査方向Yに自走可能である。ただし、キャリッジはレーザー3ではなく、インクヘッド2に設けられていてもよい。あるいは、レーザー3およびインクヘッド2の両方にキャリッジが設けられていてもよい。
【0015】
キャリッジ33の駆動装置は何ら限定されるものではない。例えば、ガイドレール10の一端近傍に駆動ローラが設けられ、他端近傍に従動ローラが設けられ、それら両ローラに、キャリッジ33が固定された駆動ベルトが巻きかけられていてもよい。このような構成によれば、駆動ローラが回転すると駆動ベルトが走行し、キャリッジ33が主走査方向Yに移動することになる。
【0016】
図1に示すように、インクヘッド2の磁石31とレーザー3の磁石32とが接触すると、両磁石31、32が吸着されるため、レーザー3とインクヘッド2とが互いに連結される。ガイドレール10の右端部分は、インクヘッド2のホームポジションとなる。レーザー3とインクヘッド2との連結は、インクヘッド2のホームポジションにおいて行われる。連結後、インクヘッド2は、レーザー3と共に主走査方向Yに移動する。一方、インクヘッド2がホームポジションに固定された状態で、レーザー3が左側に移動すると、レーザー3とインクヘッド2との連結が解除される。連結が解除されると、インクヘッド2はホームポジションで待機し、レーザー3のみが主走査方向Yに移動することになる。なお、ホームポジションの近傍には、インクヘッド2を固定する固定装置(図示せず)が設けられている。このように、磁石31、32は、レーザー3とインクヘッド2とを着脱自在に連結する機能を有している。キャリッジ33とプリントヘッドキャリッジ22とは、磁石31、32によって着脱自在に連結されている。なお、製造装置1の各部の動作は、制御装置(図示せず)により制御される。
【0017】
(電子回路基板の製造方法)
次に、製造装置1による電子回路基板の製造方法について説明する。
【0018】
まず、インクヘッド2が主走査方向Yに往復移動しながら、シリコン等からなる基板Bに向かってプリントヘッド21が親水性の紫外線硬化インクを吐出すると共に、紫外線照射装置4が紫外線を照射し、上記紫外線硬化インクを硬化させる。これにより、図2(a)に示すように、基板Bの表面に親水性の層(以下、親水層という)Pが形成される。次に、親水層Pの表面に向かってプリントヘッド21が撥水性の紫外線硬化インクを吐出すると共に、紫外線照射装置4が紫外線を照射し、上記紫外線硬化インクを硬化させる。これにより、図2(b)に示すように、親水層Pの上に撥水性の層(以下、撥水層という)Qが形成されることになる。
【0019】
次に、レーザー3によるレーザー加工を行う。すなわち、レーザー3からレーザー光が撥水層Qに照射される。これにより、図2(c)に示すように、レーザー光が照射された撥水層Qの部分は消失し、親水層Pが外部に露出する。レーザー3は、自らが主走査方向Yに移動すると共に、ベッド11上の基板Bが副走査方向Xに搬送されることによって、撥水層Qに電子回路の配線パターンに応じたパターン溝40を形成する。レーザー加工によれば、微細なパターン溝40を形成することが容易である。本実施形態では、約10ミクロン程度の幅のパターン溝40が形成される。
【0020】
次に、図2(d)に示すように、プリントヘッド21から銀または銅粒子を含む金属ナノインクRをパターン溝40に吐出する。図2(d)に示すように、撥水層Qの表面ではインクRは広がらないため、インクRの幅をパターン溝40の幅と同等レベルに抑えることができる。すなわち、線幅の短い配線パターンを形成することができる。次に、レーザー3から金属ナノインクRにレーザー光を照射する。これにより、図2(e)に示すように、金属ナノインクRの溶媒や有機物が溶解除去されて、金属粒子の焼成体Sが生成される。この焼成体Sの全体が、電子回路の配線パターンとなる。
【0021】
以上により、2次元の配線パターンを形成することができる。ただし、本実施形態に係る製造装置1は、3次元の配線パターンを形成することも可能である。次に、3次元の配線パターンの形成方法について説明する。
【0022】
3次元の配線パターンを形成する場合には、まず図3(a)に示すように、上述のように、基板Bの上に親水層P1と撥水層Q1とを順に形成し、撥水層Q1にパターン溝40を形成する。そして、パターン溝40に金属ナノインクRを吐出した後、金属ナノインクRを焼成する。これにより、第1層の配線パターンが形成される。次に、図3(b)に示すように、上記第1層の配線パターンの上に、すなわち撥水層Q1および焼成体S1の全体の上に、プリントヘッド21から親水性の紫外線硬化インクを吐出する。次に、紫外線照射装置4から紫外線を照射し、親水性の紫外線硬化インクを硬化させ、親水層P2を形成する。次に、プリントヘッド21から撥水性の紫外線硬化インクを吐出し、紫外線照射装置4から紫外線を照射し、撥水性の紫外線硬化インクを硬化させる。これにより、図3(c)に示すように、親水層P2の上に撥水層Q2が形成される。
【0023】
次に、図3(d)に示すように、レーザー3により、第2層の配線パターンに応じたパターン溝40を撥水層Q2に形成する。そして、図3(e)に示すように、プリントヘッド21からパターン溝40に金属ナノインクRを吐出する。次に、図3(f)に示すように、レーザー3によって、金属ナノインクRを焼成する。焼成体S2により、第2層の配線パターンが形成される。
【0024】
なお、第1層の配線パターンと第2層の配線パターンとは、以下のスルーホールによって導通することができる。スルーホールは、以下のようにして形成される。図3(d)に示すように、第2層の配線パターンを形成する部分では、撥水層Q2のみに溝40を形成していた。これに対し、図4(a)および図4(b)に示すように、スルーホールを形成する部分では、レーザー3により、撥水層Q2および親水層P2を貫通する溝40を形成する。なお、スルーホールを形成する部分には、第1層の金属ナノインクRまたはその焼成体が設けられている。次に、図4(c)に示すように、この溝40にプリントヘッド21から金属ナノインクRを吐出する。そして、レーザー3により、金属ナノインクRを焼成する(図4(d)参照)。これにより、第1層の配線パターンと第2層の配線パターンとをつなぐスルーホールが形成される。
【0025】
上記の電子回路は2層構造の電子回路であったが、3層以上の電子回路も同様にして製造可能である。
【0026】
(実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態に係る製造装置1においては、撥水層Qのパターン溝40に金属ナノインクRを吐出するようにしたので、吐出後の金属ナノインクRが周囲に広がることを抑制することができ、金属ナノインクRの幅を短くすることができる。また、撥水層Qのパターン溝40はレーザー3によって形成されるものであるため、微細化が容易であり、また、高い精度を有して形成される。従って、所望の配線幅および配線ピッチを備えた回路パターンを形成することができる。その結果、高密度な電子回路基板Aを得ることが可能になる。
【0027】
また、本実施形態に係る製造装置1は、基板Bに対する親水層Pおよび撥水層Qの形成から焼成体Sの生成に至るまでの一連の工程を全て行うことができる。このため、電子回路基板Aの製作を簡易に、かつ効率的に行うことができる。従来よりも製作の手間と時間を短縮することが可能となる。
【0028】
さらに、インクヘッド2はレーザー3と同一のガイドレール10に沿って主走査方向Yに移動するため、インクヘッド2とレーザー3との相互の位置関係を良好に維持できる。パターン溝40の形成とパターン溝40に対する金属ナノインクRの吐出とを、精度良く行うことができる。
【0029】
(変形例)
なお、製造装置1は、基板Bに予め組込まれた集積回路、抵抗器、コンデンサー等の電子デバイス間に回路パターンを形成する場合にも適用できる。以下、その一例として、図5(a)に示すように、中央部分に直方体形状の電子デバイス(例えばCPU等)50を有し、その四方に位置する基板Bの各端部に端子51を備えたものに、回路パターンを形成する場合について説明する。先ず、図5(b)に示すように、インクヘッド2から親水性の紫外線硬化インクを吐出し、これに紫外線照射装置4により紫外線を照射する。これにより、電子デバイス50の周囲に、外側に行くほど下方に傾斜する斜面を備えた断面略三角形状の親水層Pが形成される。次に、図5(c)に示すように、インクヘッド2から撥水性の紫外線硬化インクを前記親水層Pの傾斜面に吐出し、これに紫外線照射装置4により紫外線を照射する。これにより、親水層Pの表面を覆うようにして撥水層Qが形成される。その後、図6(a)に示すように、レーザー3からレーザー光を撥水層Qに照射して、その一部を消失させる。これにより、前記端子51とこれに対向する電子デバイス50の端子52とを繋ぐパターン溝40が形成される。次に、図6(b)に示すように、インクヘッド2からパターン溝40に金属ナノインクRを吐出する。これにより、金属ナノインクRを介して前記端子51、52が接続されることになる。その後、図6(c)に示すように、金属ナノインクRにレーザー3からレーザー光を照射する。金属ナノインクRは焼成され、この焼成体Sを介して端子51、52が導通状態で接続されることになる。
【0030】
上記実施形態では、インクヘッド2に親水性や撥水性の紫外線硬化インクを吐出可能なプリントヘッド21を備えさせているが、これらは適宜に省略しても構わない。これに代えて、例えば親水性や撥水性を予め備えている基板Bを使用することも可能である。予め親水性を備えている基板Bに対しては、撥水性の紫外線硬化インクにより撥水層Qを形成すればよい。予め下部に親水層Pおよび上部に撥水層Qを備えた基板を用いれば、前記各紫外線硬化インクの吐出は不要である。
【0031】
前述したように、製造装置1のインクヘッド2は、印刷用のインクを吐出するプリントヘッド21を備えている。そのため、製造後の電子回路基板Aに対し、型番等の情報を印刷することができる。すなわち、単一の製造装置1によって、電子回路基板Aの製造と印刷とを実行することができる。
【0032】
また、例えば予め撥水性を備えた基板Bにレーザー3からレーザー光を照射して、撥水性の一部分を親水性に改質させたり、基板Bに撥水性の紫外線照射インクを吐出して撥水層Qを形成した後、これに同じくレーザー光を照射して、その部分を親水性に改質させるようにしてもよい。このように、撥水性を親水性に改質させる場合、親水性のパターンは上記実施形態のようなパターン溝とはならず、撥水層Qと面一状に形成されることになる。
【0033】
また、レーザー3は、同種または異種のレーザーを照射する複数のヘッドを適宜組み合せて構成することも可能である。例えば、図7に示すレーザー3は、YAGレーザー光およびエキシマレーザー光を照射可能な2つのヘッド3a、3bを備えている。また、一方のヘッド3aの側面に、加工面までの距離を測定する高さ検出センサ53を設けてもよい。このようにすれば、高さ検出センサ53による測定結果に基づいて、レーザー3によるレーザー集光径を一定に維持することが可能になる。
【0034】
さらに、レーザー3の種類および強度等を適宜に設定することにより、製造装置1にて、基板Bの切断を行うことも可能である。
【0035】
基板Bは剛体に限らず、フィルム状のフレキシブル基板であってもよい。
【0036】
<第2実施形態>
本発明に係る電子回路基板の製造装置は、次のように構成することも可能である。図8に示すように、本実施形態に係る製造装置1は、親水部形成装置としてのプラズマ照射装置3Aと、カメラ61と、マスク62と、インクヘッド2と、焼成炉63と、ベッド11とを備えている。また、製造装置1は、制御装置90を備えている。プラズマ照射装置3Aは、ガイドレール60に沿って主走査方向Yに自走し、プラズマ光を下向きに照射する。プラズマ照射装置3Aは、大気圧で用いることができるものである。カメラ61は、プラズマ照射装置3Aの側部に磁石等を介して着脱自在に取り付けられている。カメラ61がプラズマ照射装置3Aに取り付けられることにより、カメラ61はプラズマ照射装置3Aと共にガイドレール60に沿って主走査方向Yに移動する。カメラ61は、後述するマスク62のパターン孔を画像認識する認識装置として機能し、本実施形態ではデジタル式のカメラで構成されている。マスク62は、プラズマ照射装置3Aおよびカメラ61の下方に配置され、所定のパターン孔が形成されたステンレス製のものである。図8(b)に示すように、インクヘッド2は、ガイドレール10に沿って主走査方向Yに移動可能である。焼成炉63は、インクヘッド2の前方に配置されている。ベッド11は、基板Bを副走査方向Xに搬送する。なお、認識装置は、上記カメラ61に限定されるものではない。また、焼成装置も焼成炉63に限定されない。
【0037】
以上のような構成からなる製造装置1では、次のようにして電子回路基板Aが製作される。先ず、図9(a)および(b)に示すように、表面に撥水層Qを備えた基板Bをベッド11上に取り付ける。基板Bの四隅には、孔64が形成されている。ベッド11に設けられたピン65を孔64に挿入することにより、基板Bが固定される。次に、図9(c)に示すように、基板Bの上方にマスク62を配置する。この状態で、図9(d)に示すように、プラズマ照射装置3Aからマスク62のパターン孔を介して基板Bにプラズマ光を照射する。このようにして、プラズマ処理された撥水層Qの部分は撥水性から親水性に改質され、親水性のパターンが形成される。なお、その際、カメラ61はプラズマ照射装置3Aから切り離されている。
【0038】
次に、図10(a)に示すように、プラズマ照射装置3Aがカメラ61を伴って主走査方向Yに移動し、カメラ61によりマスク62がスキャンされる。なお、同様の電子回路基板Aを複数製作する場合には、このスキャン動作は一回で足り、二回目以降の製作の際には上記スキャン動作は不要となる。このため、一連の作業の効率化が図られることになる。カメラ61のスキャン結果は制御装置90に送られ、制御装置90はマスク62のパターン孔の位置、形状および寸法等を認識する。言い換えると、制御装置90は、基板Bに形成された親水性のパターンを認識する。制御装置90は、上記パターン上に金属ナノインクを吐出するようにインクヘッド2およびベッド11を制御する。すなわち、図10(b)に示すように、ベッド11により基板Bが副走査方向Xに搬送された後、図10(c)に示すようにインクヘッド2から金属ナノインクRが基板Bの親水性パターン上に吐出される。図8(c)に示すように、親水性パターン40Aの周囲は撥水層Qからなるために、親水性パターン40A上に吐出された金属ナノインクRが周囲へ広がることは抑制される。その後、基板Bはベッド11により副走査方向Xに搬送され、焼成炉63において金属ナノインクRが焼成される。
【0039】
本実施形態においては、上記第1実施形態と同様の効果が得られることは勿論、次のような特有の効果も得られる。すなわち、本実施形態では、プラズマ照射装置3Aによるプラズマ処理と、高い精度で製作されるマスク62とを組み合わせて、親水性パターン40Aを形成している。このため、親水性パターン40Aが精度良く形成される。しかも、インクヘッド2には、予め用意された描画パターンではなく、カメラ61による実際のスキャン結果に基づいて、制御装置90から正確な処理信号が送られる。このため、インクヘッド2によって高精度の回路パターンが形成されることになる。すなわち、マスク62に生じる張力や温度変化等により、マスク62の寸法が変化する場合があるが、本実施形態によれば、寸法が変化したとしても、変化後のマスク62のパターン孔を認識することができる。そのため、高精度の回路パターンを形成することができる。
【0040】
また、マスク62に応じたインク吐出用のデータを予めインクヘッド2に与える必要がないので、マスク62を取り替えるだけで、異なるパターンの電子回路を容易に製作することができる。本実施形態によれば、回路パターンの変更が容易である。
【0041】
なお、製作すべき回路基板Aが多い場合は、先ずプラズマ処理のみを行い、その後まとめて金属ナノインクRを吐出して回路パターンを描画してもよい。但し、時間の経過に伴いプラズマによる改質効果が薄れる可能性があるため、金属ナノインクRの吐出はプラズマ処理の直後に行うのが好ましい。
【0042】
上記実施形態における親水部形成装置は、プラズマ光を照射するプラズマ照射装置3Aであったが、これに代えて例えば電子線を照射する装置等であってもよい。この場合も、同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
<第3実施形態>
また、第2実施形態に係る製造装置1は、次のように一部を変更して構成することも可能である。本実施形態では、図11(a)および(b)に示すように、認識装置としてのカメラ61をインクヘッド2の側部に一体的に取り付けている。また、図11(a)に示すように、プラズマ照射装置3Aとインクヘッド2との間には、下端部に回転駆動されるブラシ66を有するクリーナ67が配置されている。さらに、図12(b)等に示すように、基板Bの表面を複数の領域に分けるために、本実施形態では基板Bの表面に色彩の異なるインクが塗布されている。具体的には、Cの領域が青色で、Dの領域が赤色で、Eの領域が黄色に色付けしている。なお、インクは、有機質でかつ撥水性を備えているのが好ましい。また、このインクは、スクリーン印刷等により塗布してもよく、製造装置1のインクヘッド2により塗布してもよい。
【0044】
本実施形態においても、図12(a)〜(d)および図13(a)〜(c)に示すように、第2実施形態と略同様にして電子回路基板が製作される。但し、基板Bにプラズマ照射装置3Aからプラズマ光が照射されると、その照射部分にあるインクの塗膜は除去されることになる。この場合も、塗膜が除去された部分に位置する基板Bの撥水層Qは、撥水性から親水性に改質される。その後、基板Bはベッド11により副走査方向Xに搬送され、クリーナ67の下方を通過する。その際に、基板Bの表面に付着しているインクかす等の異物は、回転しているプラシ66により綺麗に除去される。その後、基板Bはインクヘッド2の下方位置で停止する。そして、基板Bはカメラ61によりスキャンされる。基板Bの各領域C〜Eには色彩が施され、親水性に改質された部分の色彩は除去されているので、カメラ61によって親水性パターンを容易に認識することができる。実施形態2では、マスク62のパターン孔を基板Bの親水性パターンと見なし、当該親水性パターンを間接的に認識していた。これに対し、本実施形態では、基板Bの親水性パターンを直接認識する。そのため、親水性パターンの認識精度を向上させることができる。
【0045】
また、上記のように色分けをすれば、スキャン結果に基づいて、各色ごとに異なる種類のインクを吐出することが可能になる。制御装置90は、上記スキャン結果に基づいて、親水性パターンと、その親水性パターンがどの領域に形成されているかを認識することができる。そこで、制御装置90は、領域毎に異なるインクを吐出するようにインクヘッド2を制御することが可能となる。例えば、青色の領域の親水性パターン40Cに対して銅を含むインク、赤色領域の親水性パターン40Dに対して銀を含むインク、黄色領域の親水性パターン40Eに対して金を含むインクをそれぞれ吐出させることができる。また、基板Bの領域を識別するための情報として、色彩の代わりに次のようなものを採用してもよい。例えば、反射強度が相違するインクを基板Bに塗布したり、同種のインクでもその厚みが異なるように塗布する。この場合は、認識装置として、前記カメラ61に代えて、これら反射強度や厚みを認識するセンサ等を使用してもよい。その他に、数字や文字、或いはバーコード等により領域を識別することも可能である。この場合も、各領域をカメラ61でスキャンして認識し、各領域について吐出する金属ナノインクRの種類やその塗布量を適宜変更することが可能になる。
【0046】
本実施形態においても、カメラ61による実際のスキャン結果に基づいて、インクヘッド2により回路パターンが形成される。そのため、ベッド11に対する基板Bの取り付けにあたって、ゆがみやずれ等があったとしても、高品質の電子回路基板Aを製作することができる。
【0047】
(変形例)
なお、上記実施形態においては、基板Bの表面に複数の色彩による色分けを行ったが、基板Bの地色とは異なる一色のインクを表面全体に塗布するようにしてもよい。この場合にも、基板Bの親水性パターンをカメラ61によって直接認識することができる。
【0048】
また、親水性パターン上に吐出された金属ナノインクRをカメラ61によりスキャンし、抜け部分の有無等を確認するようにしてもよい。抜け部分があった場合は、再度金属ナノインクRを吐出して修正する。このような再検査および修正を行うことにより、歩留りが向上する。
【0049】
また、上記実施形態では、インクヘッド2およびプラズマ照射装置3Aが主走査方向Yに移動するように構成している。しかるに、必ずしもこのように構成する必要はなく、例えば図14に示すように、インクヘッド2およびプラズマ照射装置3Aを主走査方向Yに幅広に形成し、主走査方向Yに移動しないように構成してもよい。この場合、カメラ61は主走査方向Yに移動可能であっても移動不能であってもよいが、移動不能な場合には、主走査方向Yの全域をスキャンできるようにそのスキャン範囲を拡大させる必要がある。
【0050】
<その他の実施形態>
親水部形成装置(実施形態1のレーザー3、実施形態2および3のプラズマ照射装置3A)に、その他の加工機を設けてもよい。これにより、基板B等に対して機械加工を行うことも可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 電子回路基板の製造装置
2 インクヘッド
3 レーザー(親水部形成装置)
3A プラズマ照射装置(親水部形成装置)
10 ガイドレール
21 プリントヘッド
40 パターン溝(パターン)
61 カメラ(認識装置)
62 マスク
63 焼成炉(焼成装置)
90 制御装置
B 基板
P 親水層
Q 撥水層
R インク
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路基板の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット式記録装置の技術を応用して、電子回路基板を製作することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。これは、金属粒子を分散させたインクを基板上に吐出することにより、基板上に所定の回路パターンを形成するものである。かかる手法はインクジェット法と称されており、従来のフォトリソグラフィ法と比較して、配線パターンに必要な部分にのみ金属インクを吐出すれば足りるので、金属材料の使用量が少なく、また、工程数を削減できるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−296425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の電子回路の高密度化に伴い、配線幅および配線間ピッチは非常に小さくなっている。しかし、従来のインクジェット法では、インクヘッドから吐出された金属インクが基板上に着弾した後、基板表面において広がってしまうため、配線幅および配線間ピッチの小さな電子回路を形成することが困難であった。また、そのような高密度な電子回路を形成するには、多くの手間と時間が必要であった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インクジェット法によって高密度な電子回路を形成可能であり、従来よりも製造の手間と時間を短縮できる電子回路基板の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子回路基板の製造装置は、撥水性の表面を有する基板に光または電子線を照射することにより前記基板の表面に親水性を有する所定パターンを形成する親水部形成装置と、前記パターン上に導電性成分を含むインクを吐出するプリントヘッドを有するインクヘッドと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高密度な電子回路が形成可能となる。また、従来よりも製造の手間と時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係る電子回路基板の製造装置の要部を示す正面図である。
【図2】(a)〜(e)は電子回路基板を製作する一連の工程を示す断面図である。
【図3】(a)〜(f)は多層構造の電子回路基板を製作する一連の工程を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)はスルーホールの製作の工程を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は電子デバイスを備えた基板に回路パターンを製作する一連の工程を示す模式図である。
【図6】(a)〜(c)は電子デバイスを備えた基板に回路パターンを製作する一連の工程を示す模式図である。
【図7】他の電子回路基板の製造装置の要部を示す正面図である。
【図8】(a)は第2実施形態に係る電子回路基板の製造装置の斜視図であり、(b)は同製造装置の要部の正面図であり、(c)は回路基板の断面図である。
【図9】(a)〜(d)は電子回路基板を製作する一連の工程を示す模式図である。
【図10】(a)〜(c)は電子回路基板を製作する一連の工程を示す模式図である。
【図11】(a)は第3実施形態に係る電子回路基板の製造装置の斜視図であり、(b)は同製造装置の要部の正面図である。
【図12】(a)〜(d)は回路基板を製作する一連の工程を示す模式図である。
【図13】(a)〜(c)は回路基板を製作する一連の工程を示す模式図である。
【図14】他の実施形態に係る電子回路基板の製造装置の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<第1実施形態>
(電子回路基板の製造装置の構成)
以下、本発明の一実施形態を図面に従って説明する。図1に示すように、本実施形態に係る電子回路基板の製造装置(以下、単に製造装置という)1は、導電性のインクを吐出するインクヘッド2を備えている。このインクヘッド2は、いわゆるインクジェット式の吐出動作を行う。なお、本発明における「インクジェット式」とは、インクジェット技術によるインクの吐出方式を意味する。更に、「インクジェット式」には、公知の各種手法が含まれ、例えば二値偏向方式或いは連続偏向方式等の各種の連続方式や、サーマル方式或いは圧電素子方式等の各種のオンデマンド方式が含まれる。
【0010】
製造装置1は、インクヘッド2とレーザー3と紫外線照射装置4とを備えている。図1等において、符号Yは主走査方向を示す。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向となる。主走査方向と直交する方向である副走査方向は、基板Bが搬送される方向であり、前後方向となる。
【0011】
インクジェットプリンタ1の内部には、主走査方向Yに延びるガイドレール10が設けられている。ガイドレール10の中央部の下方かつ前方には、ベルト状のベッド11が配置されている。ベッド11は、インクヘッド2によるインクの吐出やレーザー3による基板Bの加工の際に、基板Bを支持する部分である。基板Bに対するインクの吐出および加工は、ベッド11上において行われる。
【0012】
インクヘッド2は、基板Bに向かってインクを吐出するヘッドである。インクヘッド2は、インクを吐出するノズル20を有する複数のプリントヘッド21と、これらのプリントヘッド21を支持するプリントヘッドキャリッジ22とを有している。プリントヘッドキャリッジ22は、左右方向に移動可能なようにガイドレール10に係合している。プリントヘッド21は、前記ノズル20からインク滴を下方に向かって吐出する。各プリントヘッド21には、正面右側から順に、親水性の紫外線硬化インク、撥水性の紫外線硬化インク、イエロの紫外線硬化インク、ホワイトの紫外線硬化インク、銅粒子を分散させた金属ナノインク、銀粒子を分散させた金属ナノインクインクがそれぞれ供給される。ここで「親水性」とは、物質の表面が水を弾かず、水が表面になじんだ状態になりやすい性質のことをいう。より具体的には、物質上における水滴の接触角が25度以下のものをいう。「撥水性」とは、ある物質の表面に水滴を落とすと、水滴が弾かれてほぼ球形に近い状態となる性質をいう。より具体的には、物質上における水滴の接触角が60度以上のものをいう。「金属ナノインク」とは、分散させた金属微粒子を含むインクのことをいう。金属微粒子同士がインク中で融着しないように、粒子表面は有機物で被覆されている。金属微粒子としては、他にニッケルやマンガン等が適宜使用される。なお、金属ナノインクに代えて、他の導電性インク、例えば抵抗材料や半導体成分を含有するインク等を使用してもよい。これらは、いずれも導電性成分を含むインクである。なお、前記イエロやホワイトの紫外線硬化インクは、例えば基板Bに文字や記号等を印刷するための印刷用のインクである。ただし、イエロやホワイトの紫外線硬化インクは、電子回路の形成には必須ではない。そのため、それらのインクを吐出するプリントヘッド21は、省略してもよい。また、印刷用のインクの色彩は、イエロやホワイトに限定される訳ではなく、他の色のインクを用いることも可能である。
【0013】
紫外線照射装置4は、紫外線硬化インクに紫外線を照射する装置であり、本実施形態では紫外線発光ダイオードから構成されている。なお、紫外線照射装置4の構成は何ら限定されず、例えばハロゲンランプ等で構成してもよい。紫外線照射装置4は、連結部材30を介してプリントヘッドキャリッジ22の右側部に取り付けられている。紫外線照射装置4は、インクヘッド2と共に左右方向に移動する。すなわち、紫外線照射装置4は、プリントヘッドキャリッジ22を介してガイドレール10に案内され、左右方向に移動する。ただし、紫外線照射装置4自体がガイドレール10に案内されるように構成されていてもよい。プリントヘッドキャリッジ22の左側部には、磁石31が取り付けられている。
【0014】
次に、レーザー3について説明する。レーザー3は、親水部形成装置の一例であり、基板Bにレーザー処理を施すためのレーザー照射装置からなっている。レーザー3からは、例えばCO2レーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等が照射されるが、具体的なレーザー光の種類は、決してこれらに限定されるものではない。レーザー3には、加工の種類等に応じて、レーザー光の照射中でも集光径を変更できるようなレンズ(図示せず)が内蔵されている。この集光径を変更することにより、単位面積当たりの照射強度が一定となるように設定することも可能である。また、レーザー3にはファンが設けられていてもよい。これにより、レーザー加工時に発生する煙を回収することが容易となる。レーザー3の右側部には、磁石32が取り付けられている。レーザー3には、主走査方向Yに移動するキャリッジ33が内蔵されており、レーザー3は前記ガイドレール10に沿って主走査方向Yに自走可能である。ただし、キャリッジはレーザー3ではなく、インクヘッド2に設けられていてもよい。あるいは、レーザー3およびインクヘッド2の両方にキャリッジが設けられていてもよい。
【0015】
キャリッジ33の駆動装置は何ら限定されるものではない。例えば、ガイドレール10の一端近傍に駆動ローラが設けられ、他端近傍に従動ローラが設けられ、それら両ローラに、キャリッジ33が固定された駆動ベルトが巻きかけられていてもよい。このような構成によれば、駆動ローラが回転すると駆動ベルトが走行し、キャリッジ33が主走査方向Yに移動することになる。
【0016】
図1に示すように、インクヘッド2の磁石31とレーザー3の磁石32とが接触すると、両磁石31、32が吸着されるため、レーザー3とインクヘッド2とが互いに連結される。ガイドレール10の右端部分は、インクヘッド2のホームポジションとなる。レーザー3とインクヘッド2との連結は、インクヘッド2のホームポジションにおいて行われる。連結後、インクヘッド2は、レーザー3と共に主走査方向Yに移動する。一方、インクヘッド2がホームポジションに固定された状態で、レーザー3が左側に移動すると、レーザー3とインクヘッド2との連結が解除される。連結が解除されると、インクヘッド2はホームポジションで待機し、レーザー3のみが主走査方向Yに移動することになる。なお、ホームポジションの近傍には、インクヘッド2を固定する固定装置(図示せず)が設けられている。このように、磁石31、32は、レーザー3とインクヘッド2とを着脱自在に連結する機能を有している。キャリッジ33とプリントヘッドキャリッジ22とは、磁石31、32によって着脱自在に連結されている。なお、製造装置1の各部の動作は、制御装置(図示せず)により制御される。
【0017】
(電子回路基板の製造方法)
次に、製造装置1による電子回路基板の製造方法について説明する。
【0018】
まず、インクヘッド2が主走査方向Yに往復移動しながら、シリコン等からなる基板Bに向かってプリントヘッド21が親水性の紫外線硬化インクを吐出すると共に、紫外線照射装置4が紫外線を照射し、上記紫外線硬化インクを硬化させる。これにより、図2(a)に示すように、基板Bの表面に親水性の層(以下、親水層という)Pが形成される。次に、親水層Pの表面に向かってプリントヘッド21が撥水性の紫外線硬化インクを吐出すると共に、紫外線照射装置4が紫外線を照射し、上記紫外線硬化インクを硬化させる。これにより、図2(b)に示すように、親水層Pの上に撥水性の層(以下、撥水層という)Qが形成されることになる。
【0019】
次に、レーザー3によるレーザー加工を行う。すなわち、レーザー3からレーザー光が撥水層Qに照射される。これにより、図2(c)に示すように、レーザー光が照射された撥水層Qの部分は消失し、親水層Pが外部に露出する。レーザー3は、自らが主走査方向Yに移動すると共に、ベッド11上の基板Bが副走査方向Xに搬送されることによって、撥水層Qに電子回路の配線パターンに応じたパターン溝40を形成する。レーザー加工によれば、微細なパターン溝40を形成することが容易である。本実施形態では、約10ミクロン程度の幅のパターン溝40が形成される。
【0020】
次に、図2(d)に示すように、プリントヘッド21から銀または銅粒子を含む金属ナノインクRをパターン溝40に吐出する。図2(d)に示すように、撥水層Qの表面ではインクRは広がらないため、インクRの幅をパターン溝40の幅と同等レベルに抑えることができる。すなわち、線幅の短い配線パターンを形成することができる。次に、レーザー3から金属ナノインクRにレーザー光を照射する。これにより、図2(e)に示すように、金属ナノインクRの溶媒や有機物が溶解除去されて、金属粒子の焼成体Sが生成される。この焼成体Sの全体が、電子回路の配線パターンとなる。
【0021】
以上により、2次元の配線パターンを形成することができる。ただし、本実施形態に係る製造装置1は、3次元の配線パターンを形成することも可能である。次に、3次元の配線パターンの形成方法について説明する。
【0022】
3次元の配線パターンを形成する場合には、まず図3(a)に示すように、上述のように、基板Bの上に親水層P1と撥水層Q1とを順に形成し、撥水層Q1にパターン溝40を形成する。そして、パターン溝40に金属ナノインクRを吐出した後、金属ナノインクRを焼成する。これにより、第1層の配線パターンが形成される。次に、図3(b)に示すように、上記第1層の配線パターンの上に、すなわち撥水層Q1および焼成体S1の全体の上に、プリントヘッド21から親水性の紫外線硬化インクを吐出する。次に、紫外線照射装置4から紫外線を照射し、親水性の紫外線硬化インクを硬化させ、親水層P2を形成する。次に、プリントヘッド21から撥水性の紫外線硬化インクを吐出し、紫外線照射装置4から紫外線を照射し、撥水性の紫外線硬化インクを硬化させる。これにより、図3(c)に示すように、親水層P2の上に撥水層Q2が形成される。
【0023】
次に、図3(d)に示すように、レーザー3により、第2層の配線パターンに応じたパターン溝40を撥水層Q2に形成する。そして、図3(e)に示すように、プリントヘッド21からパターン溝40に金属ナノインクRを吐出する。次に、図3(f)に示すように、レーザー3によって、金属ナノインクRを焼成する。焼成体S2により、第2層の配線パターンが形成される。
【0024】
なお、第1層の配線パターンと第2層の配線パターンとは、以下のスルーホールによって導通することができる。スルーホールは、以下のようにして形成される。図3(d)に示すように、第2層の配線パターンを形成する部分では、撥水層Q2のみに溝40を形成していた。これに対し、図4(a)および図4(b)に示すように、スルーホールを形成する部分では、レーザー3により、撥水層Q2および親水層P2を貫通する溝40を形成する。なお、スルーホールを形成する部分には、第1層の金属ナノインクRまたはその焼成体が設けられている。次に、図4(c)に示すように、この溝40にプリントヘッド21から金属ナノインクRを吐出する。そして、レーザー3により、金属ナノインクRを焼成する(図4(d)参照)。これにより、第1層の配線パターンと第2層の配線パターンとをつなぐスルーホールが形成される。
【0025】
上記の電子回路は2層構造の電子回路であったが、3層以上の電子回路も同様にして製造可能である。
【0026】
(実施形態の効果)
以上説明したように、本実施形態に係る製造装置1においては、撥水層Qのパターン溝40に金属ナノインクRを吐出するようにしたので、吐出後の金属ナノインクRが周囲に広がることを抑制することができ、金属ナノインクRの幅を短くすることができる。また、撥水層Qのパターン溝40はレーザー3によって形成されるものであるため、微細化が容易であり、また、高い精度を有して形成される。従って、所望の配線幅および配線ピッチを備えた回路パターンを形成することができる。その結果、高密度な電子回路基板Aを得ることが可能になる。
【0027】
また、本実施形態に係る製造装置1は、基板Bに対する親水層Pおよび撥水層Qの形成から焼成体Sの生成に至るまでの一連の工程を全て行うことができる。このため、電子回路基板Aの製作を簡易に、かつ効率的に行うことができる。従来よりも製作の手間と時間を短縮することが可能となる。
【0028】
さらに、インクヘッド2はレーザー3と同一のガイドレール10に沿って主走査方向Yに移動するため、インクヘッド2とレーザー3との相互の位置関係を良好に維持できる。パターン溝40の形成とパターン溝40に対する金属ナノインクRの吐出とを、精度良く行うことができる。
【0029】
(変形例)
なお、製造装置1は、基板Bに予め組込まれた集積回路、抵抗器、コンデンサー等の電子デバイス間に回路パターンを形成する場合にも適用できる。以下、その一例として、図5(a)に示すように、中央部分に直方体形状の電子デバイス(例えばCPU等)50を有し、その四方に位置する基板Bの各端部に端子51を備えたものに、回路パターンを形成する場合について説明する。先ず、図5(b)に示すように、インクヘッド2から親水性の紫外線硬化インクを吐出し、これに紫外線照射装置4により紫外線を照射する。これにより、電子デバイス50の周囲に、外側に行くほど下方に傾斜する斜面を備えた断面略三角形状の親水層Pが形成される。次に、図5(c)に示すように、インクヘッド2から撥水性の紫外線硬化インクを前記親水層Pの傾斜面に吐出し、これに紫外線照射装置4により紫外線を照射する。これにより、親水層Pの表面を覆うようにして撥水層Qが形成される。その後、図6(a)に示すように、レーザー3からレーザー光を撥水層Qに照射して、その一部を消失させる。これにより、前記端子51とこれに対向する電子デバイス50の端子52とを繋ぐパターン溝40が形成される。次に、図6(b)に示すように、インクヘッド2からパターン溝40に金属ナノインクRを吐出する。これにより、金属ナノインクRを介して前記端子51、52が接続されることになる。その後、図6(c)に示すように、金属ナノインクRにレーザー3からレーザー光を照射する。金属ナノインクRは焼成され、この焼成体Sを介して端子51、52が導通状態で接続されることになる。
【0030】
上記実施形態では、インクヘッド2に親水性や撥水性の紫外線硬化インクを吐出可能なプリントヘッド21を備えさせているが、これらは適宜に省略しても構わない。これに代えて、例えば親水性や撥水性を予め備えている基板Bを使用することも可能である。予め親水性を備えている基板Bに対しては、撥水性の紫外線硬化インクにより撥水層Qを形成すればよい。予め下部に親水層Pおよび上部に撥水層Qを備えた基板を用いれば、前記各紫外線硬化インクの吐出は不要である。
【0031】
前述したように、製造装置1のインクヘッド2は、印刷用のインクを吐出するプリントヘッド21を備えている。そのため、製造後の電子回路基板Aに対し、型番等の情報を印刷することができる。すなわち、単一の製造装置1によって、電子回路基板Aの製造と印刷とを実行することができる。
【0032】
また、例えば予め撥水性を備えた基板Bにレーザー3からレーザー光を照射して、撥水性の一部分を親水性に改質させたり、基板Bに撥水性の紫外線照射インクを吐出して撥水層Qを形成した後、これに同じくレーザー光を照射して、その部分を親水性に改質させるようにしてもよい。このように、撥水性を親水性に改質させる場合、親水性のパターンは上記実施形態のようなパターン溝とはならず、撥水層Qと面一状に形成されることになる。
【0033】
また、レーザー3は、同種または異種のレーザーを照射する複数のヘッドを適宜組み合せて構成することも可能である。例えば、図7に示すレーザー3は、YAGレーザー光およびエキシマレーザー光を照射可能な2つのヘッド3a、3bを備えている。また、一方のヘッド3aの側面に、加工面までの距離を測定する高さ検出センサ53を設けてもよい。このようにすれば、高さ検出センサ53による測定結果に基づいて、レーザー3によるレーザー集光径を一定に維持することが可能になる。
【0034】
さらに、レーザー3の種類および強度等を適宜に設定することにより、製造装置1にて、基板Bの切断を行うことも可能である。
【0035】
基板Bは剛体に限らず、フィルム状のフレキシブル基板であってもよい。
【0036】
<第2実施形態>
本発明に係る電子回路基板の製造装置は、次のように構成することも可能である。図8に示すように、本実施形態に係る製造装置1は、親水部形成装置としてのプラズマ照射装置3Aと、カメラ61と、マスク62と、インクヘッド2と、焼成炉63と、ベッド11とを備えている。また、製造装置1は、制御装置90を備えている。プラズマ照射装置3Aは、ガイドレール60に沿って主走査方向Yに自走し、プラズマ光を下向きに照射する。プラズマ照射装置3Aは、大気圧で用いることができるものである。カメラ61は、プラズマ照射装置3Aの側部に磁石等を介して着脱自在に取り付けられている。カメラ61がプラズマ照射装置3Aに取り付けられることにより、カメラ61はプラズマ照射装置3Aと共にガイドレール60に沿って主走査方向Yに移動する。カメラ61は、後述するマスク62のパターン孔を画像認識する認識装置として機能し、本実施形態ではデジタル式のカメラで構成されている。マスク62は、プラズマ照射装置3Aおよびカメラ61の下方に配置され、所定のパターン孔が形成されたステンレス製のものである。図8(b)に示すように、インクヘッド2は、ガイドレール10に沿って主走査方向Yに移動可能である。焼成炉63は、インクヘッド2の前方に配置されている。ベッド11は、基板Bを副走査方向Xに搬送する。なお、認識装置は、上記カメラ61に限定されるものではない。また、焼成装置も焼成炉63に限定されない。
【0037】
以上のような構成からなる製造装置1では、次のようにして電子回路基板Aが製作される。先ず、図9(a)および(b)に示すように、表面に撥水層Qを備えた基板Bをベッド11上に取り付ける。基板Bの四隅には、孔64が形成されている。ベッド11に設けられたピン65を孔64に挿入することにより、基板Bが固定される。次に、図9(c)に示すように、基板Bの上方にマスク62を配置する。この状態で、図9(d)に示すように、プラズマ照射装置3Aからマスク62のパターン孔を介して基板Bにプラズマ光を照射する。このようにして、プラズマ処理された撥水層Qの部分は撥水性から親水性に改質され、親水性のパターンが形成される。なお、その際、カメラ61はプラズマ照射装置3Aから切り離されている。
【0038】
次に、図10(a)に示すように、プラズマ照射装置3Aがカメラ61を伴って主走査方向Yに移動し、カメラ61によりマスク62がスキャンされる。なお、同様の電子回路基板Aを複数製作する場合には、このスキャン動作は一回で足り、二回目以降の製作の際には上記スキャン動作は不要となる。このため、一連の作業の効率化が図られることになる。カメラ61のスキャン結果は制御装置90に送られ、制御装置90はマスク62のパターン孔の位置、形状および寸法等を認識する。言い換えると、制御装置90は、基板Bに形成された親水性のパターンを認識する。制御装置90は、上記パターン上に金属ナノインクを吐出するようにインクヘッド2およびベッド11を制御する。すなわち、図10(b)に示すように、ベッド11により基板Bが副走査方向Xに搬送された後、図10(c)に示すようにインクヘッド2から金属ナノインクRが基板Bの親水性パターン上に吐出される。図8(c)に示すように、親水性パターン40Aの周囲は撥水層Qからなるために、親水性パターン40A上に吐出された金属ナノインクRが周囲へ広がることは抑制される。その後、基板Bはベッド11により副走査方向Xに搬送され、焼成炉63において金属ナノインクRが焼成される。
【0039】
本実施形態においては、上記第1実施形態と同様の効果が得られることは勿論、次のような特有の効果も得られる。すなわち、本実施形態では、プラズマ照射装置3Aによるプラズマ処理と、高い精度で製作されるマスク62とを組み合わせて、親水性パターン40Aを形成している。このため、親水性パターン40Aが精度良く形成される。しかも、インクヘッド2には、予め用意された描画パターンではなく、カメラ61による実際のスキャン結果に基づいて、制御装置90から正確な処理信号が送られる。このため、インクヘッド2によって高精度の回路パターンが形成されることになる。すなわち、マスク62に生じる張力や温度変化等により、マスク62の寸法が変化する場合があるが、本実施形態によれば、寸法が変化したとしても、変化後のマスク62のパターン孔を認識することができる。そのため、高精度の回路パターンを形成することができる。
【0040】
また、マスク62に応じたインク吐出用のデータを予めインクヘッド2に与える必要がないので、マスク62を取り替えるだけで、異なるパターンの電子回路を容易に製作することができる。本実施形態によれば、回路パターンの変更が容易である。
【0041】
なお、製作すべき回路基板Aが多い場合は、先ずプラズマ処理のみを行い、その後まとめて金属ナノインクRを吐出して回路パターンを描画してもよい。但し、時間の経過に伴いプラズマによる改質効果が薄れる可能性があるため、金属ナノインクRの吐出はプラズマ処理の直後に行うのが好ましい。
【0042】
上記実施形態における親水部形成装置は、プラズマ光を照射するプラズマ照射装置3Aであったが、これに代えて例えば電子線を照射する装置等であってもよい。この場合も、同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
<第3実施形態>
また、第2実施形態に係る製造装置1は、次のように一部を変更して構成することも可能である。本実施形態では、図11(a)および(b)に示すように、認識装置としてのカメラ61をインクヘッド2の側部に一体的に取り付けている。また、図11(a)に示すように、プラズマ照射装置3Aとインクヘッド2との間には、下端部に回転駆動されるブラシ66を有するクリーナ67が配置されている。さらに、図12(b)等に示すように、基板Bの表面を複数の領域に分けるために、本実施形態では基板Bの表面に色彩の異なるインクが塗布されている。具体的には、Cの領域が青色で、Dの領域が赤色で、Eの領域が黄色に色付けしている。なお、インクは、有機質でかつ撥水性を備えているのが好ましい。また、このインクは、スクリーン印刷等により塗布してもよく、製造装置1のインクヘッド2により塗布してもよい。
【0044】
本実施形態においても、図12(a)〜(d)および図13(a)〜(c)に示すように、第2実施形態と略同様にして電子回路基板が製作される。但し、基板Bにプラズマ照射装置3Aからプラズマ光が照射されると、その照射部分にあるインクの塗膜は除去されることになる。この場合も、塗膜が除去された部分に位置する基板Bの撥水層Qは、撥水性から親水性に改質される。その後、基板Bはベッド11により副走査方向Xに搬送され、クリーナ67の下方を通過する。その際に、基板Bの表面に付着しているインクかす等の異物は、回転しているプラシ66により綺麗に除去される。その後、基板Bはインクヘッド2の下方位置で停止する。そして、基板Bはカメラ61によりスキャンされる。基板Bの各領域C〜Eには色彩が施され、親水性に改質された部分の色彩は除去されているので、カメラ61によって親水性パターンを容易に認識することができる。実施形態2では、マスク62のパターン孔を基板Bの親水性パターンと見なし、当該親水性パターンを間接的に認識していた。これに対し、本実施形態では、基板Bの親水性パターンを直接認識する。そのため、親水性パターンの認識精度を向上させることができる。
【0045】
また、上記のように色分けをすれば、スキャン結果に基づいて、各色ごとに異なる種類のインクを吐出することが可能になる。制御装置90は、上記スキャン結果に基づいて、親水性パターンと、その親水性パターンがどの領域に形成されているかを認識することができる。そこで、制御装置90は、領域毎に異なるインクを吐出するようにインクヘッド2を制御することが可能となる。例えば、青色の領域の親水性パターン40Cに対して銅を含むインク、赤色領域の親水性パターン40Dに対して銀を含むインク、黄色領域の親水性パターン40Eに対して金を含むインクをそれぞれ吐出させることができる。また、基板Bの領域を識別するための情報として、色彩の代わりに次のようなものを採用してもよい。例えば、反射強度が相違するインクを基板Bに塗布したり、同種のインクでもその厚みが異なるように塗布する。この場合は、認識装置として、前記カメラ61に代えて、これら反射強度や厚みを認識するセンサ等を使用してもよい。その他に、数字や文字、或いはバーコード等により領域を識別することも可能である。この場合も、各領域をカメラ61でスキャンして認識し、各領域について吐出する金属ナノインクRの種類やその塗布量を適宜変更することが可能になる。
【0046】
本実施形態においても、カメラ61による実際のスキャン結果に基づいて、インクヘッド2により回路パターンが形成される。そのため、ベッド11に対する基板Bの取り付けにあたって、ゆがみやずれ等があったとしても、高品質の電子回路基板Aを製作することができる。
【0047】
(変形例)
なお、上記実施形態においては、基板Bの表面に複数の色彩による色分けを行ったが、基板Bの地色とは異なる一色のインクを表面全体に塗布するようにしてもよい。この場合にも、基板Bの親水性パターンをカメラ61によって直接認識することができる。
【0048】
また、親水性パターン上に吐出された金属ナノインクRをカメラ61によりスキャンし、抜け部分の有無等を確認するようにしてもよい。抜け部分があった場合は、再度金属ナノインクRを吐出して修正する。このような再検査および修正を行うことにより、歩留りが向上する。
【0049】
また、上記実施形態では、インクヘッド2およびプラズマ照射装置3Aが主走査方向Yに移動するように構成している。しかるに、必ずしもこのように構成する必要はなく、例えば図14に示すように、インクヘッド2およびプラズマ照射装置3Aを主走査方向Yに幅広に形成し、主走査方向Yに移動しないように構成してもよい。この場合、カメラ61は主走査方向Yに移動可能であっても移動不能であってもよいが、移動不能な場合には、主走査方向Yの全域をスキャンできるようにそのスキャン範囲を拡大させる必要がある。
【0050】
<その他の実施形態>
親水部形成装置(実施形態1のレーザー3、実施形態2および3のプラズマ照射装置3A)に、その他の加工機を設けてもよい。これにより、基板B等に対して機械加工を行うことも可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 電子回路基板の製造装置
2 インクヘッド
3 レーザー(親水部形成装置)
3A プラズマ照射装置(親水部形成装置)
10 ガイドレール
21 プリントヘッド
40 パターン溝(パターン)
61 カメラ(認識装置)
62 マスク
63 焼成炉(焼成装置)
90 制御装置
B 基板
P 親水層
Q 撥水層
R インク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性の表面を有する基板に光または電子線を照射することにより前記基板の表面に親水性を有する所定パターンを形成する親水部形成装置と、
前記パターン上に導電性成分を含むインクを吐出するプリントヘッドを有するインクヘッドと、
を備えた電子回路基板の製造装置。
【請求項2】
前記親水部形成装置および前記インクヘッドの所定方向の移動を案内するガイドレールを備え、
前記基板は、親水性の層とこの親水性の層の上に設けられた撥水性の層とを備え、
前記親水部形成装置は、前記基板の前記撥水性の層にレーザー光を照射することにより、前記親水性の層が露出した所定パターンの溝を形成するレーザーである、請求項1に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項3】
前記レーザーは、前記溝に吐出されたインクにレーザー光を照射することによって前記インクを焼成する、請求項2に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項4】
前記インクヘッドは、撥水性のインクを吐出するプリントヘッドを有し、
前記基板の前記撥水性の層は、前記プリントヘッドから吐出された撥水性のインクによって形成される、請求項2または3に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項5】
前記インクヘッドは、親水性のインクを吐出するプリントヘッドを有し、
前記基板の前記親水性の層は、前記プリントヘッドから吐出された親水性のインクによって形成される、請求項2〜4のいずれか一つに記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項6】
前記インクヘッドは、印刷用のインクを吐出するプリントヘッドを有している、請求項1〜5のいずれか一つに記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項7】
前記親水部形成装置は、所定のパターン孔が形成されたマスクを介して前記基板の表面にプラズマ光または電子線を照射することにより、その表面の一部を改質して親水性を備えた前記パターンを形成する照射装置である、請求項1に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項8】
前記マスクの前記パターン孔を認識することによって前記基板のパターンを認識する認識装置と、
前記認識装置から前記パターンの情報を受け、前記パターン上に前記インクを吐出するように前記インクヘッドを制御する制御装置と、
前記インクを焼成する焼成装置とを備えた、請求項7に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項9】
前記基板の表面には、前記基板の地色とは異なる色の塗膜が設けられ、
前記照射装置は、前記マスクを介して前記基板の表面にプラズマ光を照射し、前記塗膜の一部を消失させて前記パターンを形成し、
前記基板の表面の色彩に基づいて前記パターンを認識する認識装置と、
前記認識装置から前記パターンの情報を受け、前記パターン上に前記インクを吐出するように前記インクヘッドを制御する制御装置と、
前記インクを焼成する焼成装置とを備えた、請求項7に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項10】
前記基板の表面には、複数の領域の各々を識別するための複数の情報が付され、
前記照射装置は、前記マスクを介して前記基板の表面にプラズマ光を照射し、前記情報の一部を消失させて前記パターンを形成し、
前記基板の表面の前記情報と前記パターンとを認識する認識装置と、
前記認識装置から前記情報および前記パターンの情報を受け、異なる領域のパターン上に異なる種類のインクを吐出するように前記インクヘッドを制御する制御装置と、
前記インクを焼成する焼成装置とを備えた、請求項7に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項11】
前記インクは、紫外線が照射されると硬化するインクであり、
前記ガイドレールに案内されて前記所定方向に移動し、前記インクに対して紫外線を照射する紫外線照射装置を備えた、請求項2に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項12】
前記ガイドレールに沿って移動可能であり、互いに着脱自在に連結される第1および第2のキャリッジを備え、
前記第1のキャリッジは前記レーザーに設けられ、
前記第2のキャリッジは前記インクヘッドに設けられている、請求項2に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項1】
撥水性の表面を有する基板に光または電子線を照射することにより前記基板の表面に親水性を有する所定パターンを形成する親水部形成装置と、
前記パターン上に導電性成分を含むインクを吐出するプリントヘッドを有するインクヘッドと、
を備えた電子回路基板の製造装置。
【請求項2】
前記親水部形成装置および前記インクヘッドの所定方向の移動を案内するガイドレールを備え、
前記基板は、親水性の層とこの親水性の層の上に設けられた撥水性の層とを備え、
前記親水部形成装置は、前記基板の前記撥水性の層にレーザー光を照射することにより、前記親水性の層が露出した所定パターンの溝を形成するレーザーである、請求項1に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項3】
前記レーザーは、前記溝に吐出されたインクにレーザー光を照射することによって前記インクを焼成する、請求項2に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項4】
前記インクヘッドは、撥水性のインクを吐出するプリントヘッドを有し、
前記基板の前記撥水性の層は、前記プリントヘッドから吐出された撥水性のインクによって形成される、請求項2または3に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項5】
前記インクヘッドは、親水性のインクを吐出するプリントヘッドを有し、
前記基板の前記親水性の層は、前記プリントヘッドから吐出された親水性のインクによって形成される、請求項2〜4のいずれか一つに記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項6】
前記インクヘッドは、印刷用のインクを吐出するプリントヘッドを有している、請求項1〜5のいずれか一つに記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項7】
前記親水部形成装置は、所定のパターン孔が形成されたマスクを介して前記基板の表面にプラズマ光または電子線を照射することにより、その表面の一部を改質して親水性を備えた前記パターンを形成する照射装置である、請求項1に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項8】
前記マスクの前記パターン孔を認識することによって前記基板のパターンを認識する認識装置と、
前記認識装置から前記パターンの情報を受け、前記パターン上に前記インクを吐出するように前記インクヘッドを制御する制御装置と、
前記インクを焼成する焼成装置とを備えた、請求項7に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項9】
前記基板の表面には、前記基板の地色とは異なる色の塗膜が設けられ、
前記照射装置は、前記マスクを介して前記基板の表面にプラズマ光を照射し、前記塗膜の一部を消失させて前記パターンを形成し、
前記基板の表面の色彩に基づいて前記パターンを認識する認識装置と、
前記認識装置から前記パターンの情報を受け、前記パターン上に前記インクを吐出するように前記インクヘッドを制御する制御装置と、
前記インクを焼成する焼成装置とを備えた、請求項7に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項10】
前記基板の表面には、複数の領域の各々を識別するための複数の情報が付され、
前記照射装置は、前記マスクを介して前記基板の表面にプラズマ光を照射し、前記情報の一部を消失させて前記パターンを形成し、
前記基板の表面の前記情報と前記パターンとを認識する認識装置と、
前記認識装置から前記情報および前記パターンの情報を受け、異なる領域のパターン上に異なる種類のインクを吐出するように前記インクヘッドを制御する制御装置と、
前記インクを焼成する焼成装置とを備えた、請求項7に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項11】
前記インクは、紫外線が照射されると硬化するインクであり、
前記ガイドレールに案内されて前記所定方向に移動し、前記インクに対して紫外線を照射する紫外線照射装置を備えた、請求項2に記載の電子回路基板の製造装置。
【請求項12】
前記ガイドレールに沿って移動可能であり、互いに着脱自在に連結される第1および第2のキャリッジを備え、
前記第1のキャリッジは前記レーザーに設けられ、
前記第2のキャリッジは前記インクヘッドに設けられている、請求項2に記載の電子回路基板の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−44481(P2011−44481A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190155(P2009−190155)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【Fターム(参考)】
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