説明

電子回路

【課題】負性抵抗回路において反射特性を向上させること。
【解決手段】制御端子、第1端子および第2端子を有する第1トランジスタとQ1、前記第1トランジスタの前記第2端子に接続された制御端子、第1端子およびDC電源が接続される第2端子を有する第2トランジスタQ2と、前記第1トランジスタの前記第1端子と前記第2トランジスタの前記第1端子との信号を前記第1トランジスタの制御端子に共通に帰還させる正帰還回路22と、前記第2トランジスタの前記第1端子と前記正帰還回路との間に接続された第1キャパシタC1と、前記第1トランジスタの前記第2端子と前記第2トランジスタの前記制御端子との間の第1ノードN1と、前記第2トランジスタの前記第1端子と前記第1キャパシタとの間の第2ノードN2と、をDC的に接続する経路12と、を具備する電子回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路に関し、特に、発振回路を有する電子回路に関する。
【背景技術】
【0002】
発振回路は、トランジスタ等の能動素子に正帰還をかけることにより、負性抵抗回路を形成することにより実現される。例えば、特許文献1には、ソースからゲートに正帰還をかけるカレントリユース型の負性抵抗回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−035083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば能動素子として用いるトランジスタの遮断周波数ftに比べ相対的に高い発振周波数を得ようとしても、所望の周波数において十分な負性抵抗回路の反射特性が得られない場合がある。このため、発振が不安定になる場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、負性抵抗回路において反射特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、制御端子、第1端子および第2端子を有する第1トランジスタと、前記第1トランジスタの前記第2端子に接続された制御端子、第1端子およびDC電源が接続される第2端子を有する第2トランジスタと、前記第1トランジスタの前記第1端子と前記第2トランジスタの前記第1端子との信号を前記第1トランジスタの制御端子に共通に帰還させる正帰還回路と、前記第2トランジスタの前記第1端子と前記正帰還回路との間に接続された第1キャパシタと、前記第1トランジスタの前記第2端子と前記第2トランジスタの前記制御端子との間の第1ノードと、前記第2トランジスタの前記第1端子と前記第1キャパシタとの間の第2ノードと、をDC的に接続する経路と、を具備することを特徴とする電子回路である。本発明によれば、複数段のトランジスタを共通に正帰還できるため負性抵抗回路の反射特性を向上させることができる。
【0007】
上記構成において、前記第1ノードと前記第2ノードとの間に設けられた分布定数線路を具備する構成とすることができる。この構成によれば、負性抵抗回路の反射特性をより向上させることができる。
【0008】
上記構成において、前記分布定数線路は容量性である構成とすることができる。この構成によれば、負性抵抗回路の反射特性をより向上させることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1ノードと前記第2ノードとの間に前記分布定数線路に直列に接続されたスパイラルインダクタを具備する構成とすることができる。この構成によれば、分布定数線路の線路長を短くし、小型化が可能となる。
【0010】
上記構成において、前記第1ノードと前記第2ノードとの間に設けられた第1抵抗を具備する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記帰還回路は、インダクタンス素子を含む構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記帰還回路は、前記インダクタンス素子と直列に接続された第2抵抗と、前記第2抵抗に並列に接続された第2キャパシタとを有する構成とすることができる。この構成によれば、第2抵抗による損失を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数段のトランジスタを共通に正帰還できるため負性抵抗回路の反射特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、比較例に係る電子回路の回路図である。
【図2】図2は、実施例1に係る電子回路の回路図である。
【図3】図3は、実施例2に係る電子回路の回路図である。
【図4】図4は、実施例3に係る電子回路の回路図である。
【図5】図5は、実施例4に係る電子回路の回路図である。
【図6】図6は、シミュレーションに用いたトランジスタのS21およびゲインGamaxを示す図である。
【図7】図7は、周波数に対する反射特性S11のシミュレーション結果を示す図である。
【図8】図8は、実施例5に係る電子回路の回路図である。
【図9】図9は、周波数に対する反射特性S11のシミュレーション結果を示す図である。
【図10】図10は、実施例6に係る電子回路の回路図である。
【図11】図11は、周波数に対する反射特性S11のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】図12は、実施例7に係る電子回路の回路図である。
【図13】図13は、周波数に対する反射特性S11のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、比較例について説明する。図1は、比較例に係る電子回路の回路図である。図1にように、比較例に係る電子回路100aは、負性抵抗回路90と共振回路92を有している。図1の入力端子INから右側の回路が負性抵抗回路90であり、左側の回路が共振回路92である。負性抵抗回路90は発振信号を出力し、共振回路92は、負性抵抗回路90の発振周波数を共振周波数に固定させる。共振回路92としては、例えば、共振用の分布定数線路LCが用いられる。
【0016】
負性抵抗回路90は、主に、トランジスタQおよび正帰還回路20を有している。トランジスタQは、例えばバイポーラトランジスタである。トランジスタQのベースは整合用の分布定数線路L21を介し共振用の分布定数線路LCに接続されている。また、トランジスタQのベースには、電源Vcc2からローパスフィルタであるインダクタL12およびキャパシタC12を介しDC(Direct Current)電圧が供給される。抵抗R21およびR22は電圧供給用の抵抗である。
【0017】
トランジスタQのエミッタは、正帰還回路20を介し接地される。正帰還回路20は例えばキャパシタC20である。また、トランジスタQのエミッタは、キャパシタC20とは並列に抵抗R20およびスパイラルインダクタL20を直列に介し接地される。抵抗R20およびスパイラルインダクタL20は、エミッタをDC的に接地させる。
【0018】
トランジスタQのコレクタには、電源Vcc1からローパスフィルタであるインダクタL11およびキャパシタC11を介し電源が供給される。また、コレクタと出力端子OUTとの間には、整合用分布定数線路L22およびDCカット用キャパシタC21が接続される。
【0019】
例えば、トランジスタQとして、遮断周波数ftが35GHzのInGaP系のHBT(Heterojunction Bipolar Transistor)を用いた場合、入力端子INから負性抵抗回路90をみた反射特性S11が高周波数で低くなってしまう。例えば、反射特性S11を向上させるため整合状態を調整しても、発振周波数38GHzではS11は3dB程度にしかならない。38GHzの発振信号を逓倍し、76GHz帯に用いる場合、例えば−40℃〜125℃で安定して発振状態を保つためには、負性抵抗回路90のS11は6dB以上あることが好ましい。このように、遮断周波数ftが比較的低いトランジスタを用い、比較的高い発振周波数の発振信号を生成する場合、反射特性が低く安定した発振状態が得られないという課題がある。
【0020】
以下に上記課題を解決する実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
実施例1は、トランジスタとしてバイポーラトランジスタを用いた例である。図2は、実施例1に係る電子回路の回路図である。図2のように、実施例1の電子回路100の負性抵抗回路90は、第1トランジスタQ1および第2トランジスタQ2を備えている。第1トランジスタQ1のベース(制御端子)は整合用の分布定数線路L5を介し共振回路92に接続されている。第1トランジスタQ1のエミッタ(第1端子)は、ノードN3に接続されている。ノードN3は正帰還回路22を介し接地されている。ここで、正帰還回路22は、例えば第2抵抗R2および分布定数線路L1が直列に接続されている。第1トランジスタQ1のコレクタ(第2端子)は、第1線路10を介し第2トランジスタQ2のベース(制御端子)に接続されている。第1線路10としては、整合用の分布定数線路L3、DCカット用のキャパシタC3および整合用の分布定数線路L4が直列に接続されている。このように、第2トランジスタQ2のベースに第1トランジスタQ1のコレクタが入力する。また、第1トランジスタQ1のコレクタと第2トランジスタQ2のベースとの間の第1ノードN1と、第2トランジスタQ2のエミッタ(第1端子)と第1キャパシタC1との間の第2ノードN2と、は第2経路12を介しDC的に接続されている。第2線路12は、分布定数線路L2および第1抵抗R1が直列に接続されている。
【0022】
第2トランジスタQ2のエミッタは、DCカット用の第1キャパシタC1を介しノードN3に接続されている。第2トランジスタQ2のコレクタは、整合用の分布定数線路L6およびDCカットキャパシタC4を直列に介し出力端子OUTに接続される。分布定数線路L6とキャパシタC4との間のノードには、ローパスフィルタを構成するキャパシタC11およびインダクタL11を介し電源Vcc1からDC電圧が供給される。これにより、第2トランジスタQ2のコレクタにDC電源Vcc1が接続される。第1トランジスタQ1のベースおよび第2トランジスタQ2のベースには電源Vcc2から電圧が供給される。それぞれのベースには、それぞれのエミッタに対し、1.3V程度の電位差となるように電圧が印加される。抵抗R11〜R14は電圧分割用の抵抗であり、キャパシタC12はローパスフィルタ用のキャパシタである。
【0023】
電子回路100においては、第2トランジスタQ2のエミッタと第3ノードN3との間に第1キャパシタC1が設けられているため、第2トランジスタQ2のエミッタから第3ノードN3には、DC電流が流れることができない。このため、電源Vcc1から図中の点線矢印のように、インダクタL11、分布定数線路L6、第2トランジスタQ2、第2線路(抵抗R1、分布定数線路L)、第1トランジスタQ1、第2抵抗R2および分布定数線路L1を介しDC電流が流れる。一方、第1トランジスタQ1の出力信号の高周波成分は主に第1線路10を介し第2トランジスタQ2のベースに出力される。ここで、例えば分布定数線路L2を4/λ線路(λは、使用周波数の信号の波長)とすることにより、高周波信号として第2線路12はオープンとなる。
【0024】
第1トランジスタQ1のエミッタからは正帰還回路22を介し高周波信号が共振回路92を介し第1トランジスタQ1のベースに帰還される。また、例えば第1キャパシタC1を高周波信号を通過させる容量値とすることにより、第2トランジスタQ2のエミッタからの高周波信号は、正帰還回路22を介し第1トランジスタQ1のベースに帰還される。このように、正帰還回路22は、第1トランジスタQ1のエミッタと第2トランジスタQ2のエミッタとの高周波信号を第1トランジスタQ1のベースに共通に帰還させる。
【0025】
実施例1によれば、第1トランジスタQ1に供給されたDC電流が第2経路12を介し第1トランジスタQ1にも供給される。一方、第1トランジスタQ1の高周波出力信号は、第2経路12とは別の第1経路10を介し第2トランジスタQ2のベースに供給される。第1トランジスタQ1およびQ2のエミッタは共通に正帰還回路22を介し第1トランジスタQ1のベースに帰還される。このような構成により、2段の第1トランジスタQ1および第2トラインジスタQ2を共通に正帰還できるため負性抵抗回路90の反射特性を改善することができる。さらに、第1トランジスタQ1および第2トランジスタQ2で共通のDC電流を用いるため、電流を削減することができる。
【0026】
比較例においては、エミッタ接地接続のトランジスタQではトランジスタQのベースとエミッタでは逆位相となる。このため、トランジスタQのエミッタからコレクタに正帰還をかけるためには、正帰還回路20としてキャパシタC20を用いることになる。一方、実施例1では、エミッタ接地の第1トランジスタQ1および第2トランジスタQ2が2段縦続接続されている。このため、第1トランジスタQ1のベースと第2トランジスタQ2のエミッタとは同位相となる。このため、実施例1の正帰還回路20の分布定数線路L1はインダクタンス素子でもよい。図1のインダクタL20が不要となるので、小型化が可能となる。また、キャパシタはインダクタに対し特性がばらつきやすい。実施例1では、正帰還回路20を小型化し、特性のばらつきを削減することもできる。
【0027】
なお、実施例1では、トランジスタが2段の例を説明したが、トランジスタは3段以上でもよい。
【実施例2】
【0028】
実施例2は、トランジスタとしてFET(Field Effect Transistor)を用いた例である。図3は、実施例2に係る電子回路の回路図である。実施例1の図2と比較し、バイポーラトランジスタである第1トランジスタQ1およびQ2の代わりにFETである第1トランジスタQ11および第2トランジスタQ12を用いている。第1経路10に電源が接続しておらず、DCカットキャパシタC3および分布定数線路L4が接続されていない。また、電源Vcc2も接続されていない。これは、バイポーラトランジスタでは、エミッタに対しベースをプラスの電位(例えば1.3V以上)とすることになるが、FETでは、ソースに対しゲートが0V以下の電位差でもよいためである。例えば、図3では、第2トランジスタQ12のソースに対しゲートが−0.25Vとなるように抵抗R1を設定している。このように、第1抵抗R1を第1ノードN1と第2ノードN2との間に設けることにより、第2トランジスタQ12のゲートにソースに対し電圧を印加することができる。第1トランジスタQ11についても、ソースに対しゲートが−0.25Vとなるように抵抗R11、第2抵抗R2の抵抗値を設定している。
【0029】
実施例2のように、第1トランジスタおよび第2トランジスタとしてFETを用いることもできる。この場合、ソースが第1端子に、ドレインが第2端子に、ゲートが制御端子に対応する。
【実施例3】
【0030】
実施例3は、VCO(Voltage Control Oscillator)の例である。図4は実施例3に係る電子回路の回路図である。図4のように、共振回路92aは可変容量ダイオードD30、抵抗R30およびキャパシタC30を備えている。分布定数線路LCの負性抵抗回路90に接続されている一端とは反対側の他端にダイオードD30のカソードが接続されている。ダイオードD30のアノードは接地されている。分布定数回路LCの他端は抵抗R30を介し制御電圧Vcが印加されている。制御端子Vcにはローパスフィルタ用のキャパシタC30が接続されている。制御端子Vcに制御電圧を印加することにより、ダイオードD30の容量値を変化させ、共振周波数を所望の周波数に設定することができる。実施例3のように、電子回路はVCOとすることもできる。
【実施例4】
【0031】
実施例4は、実施例1の具体例である。図5は、実施例4に係る電子回路の回路図である。図5を参照し、実施例1の図2に比較し、第2抵抗R2に並列に第2キャパシタC2が接続されている。分布定数線路L6とキャパシタC4との間のノードと、グランドとの間に整合用のキャパシタC5が接続されている。第2キャパシタC2を発振周波数で低インピーダンスとすることで、第2抵抗R2による損失を抑制できる。
【0032】
図5の各素子を表1のように設定し、シミュレーションを行なった。なお、以下、分布定数線路については、基板厚が75μm、比誘電率が13.1、配線厚が3μm、配線幅が10μm、Tanδが0.007とし、表内の数字は長さとしてシミュレーションを行っている。発振周波数が38GHzのとき分布定数線路の長さが740μmのときが約4/λである。表1の分布定数線路L1の長さが550μmの場合、約λ/5.4で誘導性となり、0.85nHに相当する。分布定数線路L2の長さが2340μmの場合、約4/5λで容量性となり、0.019pFとなる。
【表1】

【0033】
図6は、シミュレーションに用いたトランジスタのS21およびゲインGamaxを示す図である。トランジスタとしては、エミッタサイズが20×2μmのInGaP系のHBT(Heterojunction Bipolar Transistor)を用いた。図6より、S21がほぼ32.5GHzで0dBとなる。すなわち、シミュレーションに用いたHBTの遮断周波数ftは約32.5GHzである。使用する周波数38GHzでは、S21は−1.58dB、Gamaxは5.26dBである。
【0034】
図7は、周波数に対する反射特性S11のシミュレーション結果を示す図である。38GHzにおいて、入力端子INから負性抵抗回路90をみた反射特性S11が6dB以上となる。分布定数線路L2の長さを変更しシミュレーションしたところ、分布定数線路L2の長さは1/4λ(つまりオープン)でなくてもよく、容量性の場合、S11を高くできることがわかった。よって、分布定数線路L2の長さは、例えば、{(1/4〜1/2)+n/2}λ(nは整数)とすることが好ましい。また、分布定数線路L1の長さを変更しシミュレーションしたところ、分布定数線路L1は誘導性であることが好ましい、例えば、{(1/20〜1/4)+n/2}(nは整数)とすることが好ましいことがわかった。なお、L1は1/4λの場合オープン、L2は1/2λの場合ショート、1/4λの場合オープンとなるが、このような場合でもS11を高めることができることが確認できた。
【0035】
実施例4のように、分布定数線路L2を第1ノードN1と第2ノードN2との間に設ける。これにより、負性抵抗回路90の反射特性を向上させることができる。特に、分布定数線路L2を容量性とすることにより、負性抵抗回路90の反射特性をより向上させることができる。
【0036】
また、正帰還回路22として、インダクタンス素子である分布定数線路L1に直列に接続された第2抵抗R2と、第2抵抗R2に並列に接続された第2キャパシタC2とを有することもできる。これにより、第2抵抗R2による損失を抑制することができる。
【実施例5】
【0037】
実施例5は、実施例4にさらに整合用の分布定数線路を付加した例である。図8は、実施例5に係る電子回路の回路図である。図8を参照し、実施例4の図5と比較し、第1トランジスタQ1のエミッタとノードN3との間に整合用の分布定数線路L7が、第2トランジスタQ2のエミッタと第1キャパシタC1との間に整合用の分布定数線路L8が接続されている。その他の構成は図5と同じであり説明を省略する。
【0038】
図8の各素子を表2のように設定し、シミュレーションを行なった。
【表2】

【0039】
図9は、周波数に対する反射特性S11のシミュレーション結果を示す図である。図9のように、38GHzのS11は10dB近くにすることができる。このように、分布定数線路L7およびL8を付加することにより、S11をさらに向上させることができる。
【実施例6】
【0040】
実施例6は、実施例4の分布定数線路L2を変更した例である。図10は、実施例6に係る電子回路の回路図である。図10を参照し、実施例4の図5と比較し、分布定数線路L2を分布定数線路L21、スパイラルインダクタL20および分布定数線路L22を直列に接続したものに変更している。その他の構成は図5と同じであり説明を省略する。
【0041】
図10の各素子を表3のように設定し、シミュレーションを行なった。ここで、分布定数線路L21、スパイラルインダクタL20および分布定数線路L22は、ライン長が約2/5λである。
【表3】

【0042】
図11は、周波数に対する反射特性S11のシミュレーション結果を示す図である。図11のように、38GHzのS11を実施例4と同程度とすることができる。これは、スパイラルインダクタL20の並列の容量成分が付加され、L21、L20およびL22が実施例4の分布定数線路L2の5/4λと同程度の容量性を有するためと考えられる。このように、スパイラルインダクタL20を第1ノードN1と第2ノードN2との間に分布定数線路L21およびL22に直列に接続する。これにより、線路長を短くし、小型化が可能となる。
【実施例7】
【0043】
実施例7は、実施例5と実施例6とを組み合わせた例である。図12は、実施例7に係る電子回路の回路図である。図12を参照し、実施例4の図5と比較し、分布定数線路L2を分布定数線路L21、スパイラルインダクタL20および分布定数線路L22を直列に接続したものに変更している。また、第1トランジスタQ1のエミッタとノードN3との間に整合用の分布定数線路L7が、第2トランジスタQ2のエミッタと第1キャパシタC1との間に整合用の分布定数線路L8が接続されている。その他の構成は図5と同じであり説明を省略する。
【0044】
図12の各素子を表4のように設定し、シミュレーションを行なった。
【表4】

【0045】
図13は、周波数に対する反射特性S11のシミュレーション結果を示す図である。図13のように、S11特性を実施例5の図9と同程度とすることができる。このように、反射特性S11を向上させることができる。さらに、実施例6と同様に、分布定数線路L2の一部をインダクタに置き換えることにより、線路長を短くし、小型化が可能となる。
【0046】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 第1経路
12 第2経路
22 正帰還回路
C1 第1キャパシタ
C2 第2キャパシタ
Q1 第1トランジスタ
Q2 第2トランジスタ
N1 第1ノード
N2 第2ノード
R1 第1抵抗
R2 第2抵抗
L2 分布定数線路
L20 スパイラルインダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御端子、第1端子および第2端子を有する第1トランジスタと、
前記第1トランジスタの前記第2端子に接続された制御端子、第1端子およびDC電源が接続される第2端子を有する第2トランジスタと、
前記第1トランジスタの前記第1端子と前記第2トランジスタの前記第1端子との信号を前記第1トランジスタの制御端子に共通に帰還させる正帰還回路と、
前記第2トランジスタの前記第1端子と前記正帰還回路との間に接続された第1キャパシタと、
前記第1トランジスタの前記第2端子と前記第2トランジスタの前記制御端子との間の第1ノードと、前記第2トランジスタの前記第1端子と前記第1キャパシタとの間の第2ノードと、をDC的に接続する経路と、
を具備することを特徴とする電子回路。
【請求項2】
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に設けられた分布定数線路を具備することを特徴とする請求項1記載の電子回路。
【請求項3】
前記分布定数線路は容量性であることを特徴とする請求項2記載の電子回路。
【請求項4】
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に前記分布定数線路に直列に接続されたスパイラルインダクタを具備することを特徴とする請求項2記載の電子回路。
【請求項5】
前記第1ノードと前記第2ノードとの間に設けられた第1抵抗を具備することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の電子回路。
【請求項6】
前記正帰還回路は、インダクタンス素子を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の電子回路。
【請求項7】
前記正帰還回路は、前記インダクタンス素子と直列に接続された第2抵抗と、前記第2抵抗に並列に接続された第2キャパシタとを有することを特徴とする請求項6記載の電子回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−172114(P2011−172114A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35303(P2010−35303)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】