説明

電子式放電灯点灯装置

【課題】 高周波点灯専用形のFHF86形およびFLR110H/A/100のような大きさの区分が110の直管形蛍光ランプのどちらも良好に点灯可能な電子式放電灯点灯装置およびこの電子式放電灯点灯装置を搭載した照明器具を提供する。
【解決手段】 電子式放電灯点灯装置10は、放電灯6を高周波で点灯させるためのものであって、放電灯6として高周波点灯専用形のFHF86およびFLR110H/A/100のような大きさの区分が110の直管形蛍光ランプのどちらも点灯可能とするため、ランプ電流を450〜600mAの範囲の所定値に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯を高周波で点灯させるための電子式放電灯点灯装置およびこの電子式放電灯点灯装置を搭載した照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波点灯専用形蛍光ランプのFHF86形(例えばFHF86、およびFHF86/RX等)は、ラピッドスタート形で大きさの区分が110の直管形蛍光ランプ(例えばFLR110H/A、およびFLR110H/A/100等)と同様に長さ約2.4mの直管形蛍光ランプであるが、FLR110H/A/100等のランプ径(φ38mm)に比べランプ径(φ25.5mm)が細く、これにより軽量かつ発光効率を向上させた省エネタイプのランプである。両者の定格ランプ電流は、高周波点灯専用形のFHF86形が395mA、FLR110H/A/100のラピッドスタート形ランプは820mAである。しかしながら、50又は60Hzの商用周波数で点灯させるスタータ形蛍光ランプや商用周波数で点灯させるラピッドスタート形蛍光ランプを高周波で点灯させることでランプ効率が向上することが知られており、例えばFLR110H/A/100では商用周波数で点灯させた場合に得られる光束と同等な光束を得るためには、例えば45kHzの高周波で点灯させるとランプ電流は約630mAで充分であることが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高周波点灯専用形のFHF86形および大きさの区分が110の直管形蛍光ランプFLR110H/A/100等は市場で併存しているが、両者を1つの照明器具で点灯させる技術は知られていない。これは主として両者の定格ランプ電流の隔たりが大きいからである。例えば、高周波点灯専用形のFHF86形の定格ランプ電流である395mAに設定した定電流形の電子式点灯回路で、FHF86形の代わりにFLR110H/A/100のラピッドスタート形ランプを点灯させると、ランプ電流が低いため、光出力が小さくなり、暗くなってしまうという問題がある。また、FLR110H/A/100のラピッドスタート形ランプを点灯させる定電流形の電子式点灯回路で銅鉄形の安定器を用いた点灯回路で商用周波数で点灯させた場合と同じ光出力が得られるランプ電流(630mA)に設定した点灯回路で、FLR110H/A/100のラピッドスタート形ランプの代わりに高周波点灯専用形のFHF86形を点灯させると、光出力が大きくなり、ランプに黒化が発生し、あるいはランプ寿命が短くなるという問題がある。
【0004】
したがって本発明の目的は、高周波点灯専用形のFHF86形およびFLR110H/A/100のような大きさの区分が110の直管形蛍光ランプのどちらも良好に点灯可能な電子式放電灯点灯装置およびこの電子式放電灯点灯装置を搭載した照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、放電灯を高周波で点灯させるための電子式放電灯点灯装置であって、前記放電灯として高周波点灯専用形のFHF86形およびFLR110H/A/100のような大きさの区分110の直管形蛍光ランプのどちらも点灯可能とするため、前記放電灯に供給するランプ電流を450〜600mAの範囲の所定値に設定した電子式放電灯点灯装置により達成される。
【0006】
また上記目的は、前記電子式放電灯点灯装置と、高周波点灯専用形のFHF86形およびFLR110H/A/100のような大きさの区分110の直管形蛍光ランプのどちらも装着できるランプソケットと、前記電子式放電灯点灯装置および前記ランプソケットを搭載する照明器具本体とを備えた照明器具により達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高周波点灯専用形のFHF86形およびFLR110H/A/100のような大きさの区分110の直管形蛍光ランプのどちらも良好に点灯可能な電子式放電灯点灯装置およびこの電子式放電灯点灯装置を搭載した照明器具を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明に係る電子式放電灯点灯装置の一実施例を示す図である。本実施例の電子式放電灯点灯装置10は、一般的に知られるハーフブリッジ形インバータ回路を用いたものであるが、本発明はこれに限定されず、各種の高周波出力回路を用いることができる。図示のように、電子式放電灯点灯装置10は、直流電源1の両端に直列接続されたスイッチング素子2、3およびこれらにそれぞれ逆並列接続されたフライホイールダイオード4、5を備える。このスイッチング素子2、3を制御回路15からの信号で交互にオンオフして、スイッチング素子3の両端に接続された放電灯6に所定のランプ電流を供給する。
【0009】
制御回路15は直流電源1が投入されるとまず、設定された予熱周波数にてスイッチング素子2、3を制御し、放電灯6のフィラメントを予熱する。所定時間が経過した後、制御回路15はスイッチング素子2、3を制御する発振周波数を、設定された点灯周波数へと切り替える。これによりバラスト用インダクタ7、コンデンサ8、9
の共振が強まり、放電灯6へ高電圧が印加され、放電灯6が点灯し、放電灯6には所定のランプ電流が流れる。
【0010】
電子式放電灯点灯装置10には、放電灯6として、高周波点灯専用形のFHF86形またはFLR110H/A/100のような大きさの区分110の直管形蛍光ランプが接続される。ここでランプ電流は、制御回路15により定電流制御可能であり、450〜600mAの範囲の所定値に設定され、その値は例えば550mAである。ランプ電流を450〜600mAの範囲の所定値に設定する理由は後述する。
【0011】
図2は本発明に係る照明器具の一実施例を示す図であり、(a)は照明器具の斜視図、(b)は(a)の照明器具に用いるランプソケットの概略図である。図2(a)に示すように、照明器具20は、上述した図1に記載の電子式放電灯点灯装置10と、高周波点灯専用形のFHF86形およびFLR110H/A/100のような大きさの区分110の直管形蛍光ランプのどちらも装着できるランプソケット21、22と、放電灯点灯装置およびランプソケットを搭載する照明器具本体23とを備え、高周波点灯専用形のFHF86形またはFLR110H/A/100のような大きさの区分110の直管形蛍光ランプ24がランプソケット21、22装着される。
【0012】
ランプソケット21、22には、図2(b)に示すように、ランプ径φ25.5mmの細径の高周波点灯専用形のFHF86形の口金、およびランプ径φ38mmの太径のFLR110H/A/100のような大きさの区分110の直管形蛍光ランプの口金が、それぞれ挿入され固定できるように構成された凹部25が設けられている。
【0013】
本発明では、電子式放電灯点灯装置10によりランプ電流を450〜600mAの範囲の所定値に設定しているため、照明器具20に搭載するランプは高周波点灯専用形のFHF86形の場合でも、またFLR110H/A/100のような大きさの区分110の直管形蛍光ランプの場合でも、良好に点灯することができる。これにより、ユーザはランプ選択の自由度を得ることができ、必要に応じて高周波点灯専用形のFHF86形またはFLR110H/A/100のような大きさの区分110の直管形蛍光ランプを選択し、本照明器具に装着して点灯することができる。
【0014】
図3は、高周波点灯専用形のFHF86におけるランプ電流−光出力の関係を示すグラフである。図4は、ラピッドスタート形で大きさの区分110の直管形蛍光ランプのFLR110H/A/100におけるランプ電流−光出力の関係を示すグラフである。上記のように、ランプ電流は450〜600mAの範囲の所定値に設定されるが、その理由は次のとおりである。すなわち、ランプ電流が450mAに満たないと、FLR110H/A/100を点灯した場合、図4のグラフに示すように、光出力相対値がほぼ80%に満たないこととなり、光出力が小さくなり、暗くなってしまう。また、ランプ電流が600mAを超えると、FHF86を点灯した場合、図3のグラフに示すように、光出力相対値がほぼ120%を超えることとなり、フィラメントに流れる電流が増加することにより、ランプ管端部に黒化が発生してしまい、外観上の問題がおこる。あるいはフィラメントの断線やフィラメントに付着してある電子放射物質の消耗が早まり、ランプ寿命が短くなる。このような問題を避けるため、ランプ電流は450〜600mAの範囲の所定値に設定される。
【0015】
図3および図4に示すように、ランプ電流を450〜600mAに設定することにより、FHF86を点灯させる場合は、光出力をほぼ107〜120%とすることができ、またFLR110H/A/100を点灯させる場合は、光出力をほぼ80〜97%とすることができる。これにより、FLR110H/A/100の点灯時の暗さを回避でき、またFHF86の点灯時の黒化を防止し、ランプ寿命を満足させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、放電灯を高周波で点灯させるための電子式放電灯点灯装置およびこの電子式放電灯点灯装置を搭載した照明器具に関するものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る電子式放電灯点灯装置の一実施例を示す図である。
【図2】本発明に係る照明器具の一実施例を示す図であり、(a)は照明器具の斜視図、(b)は(a)の照明器具に用いるランプソケットの概略図である。
【図3】FHF86におけるランプ電流−光出力の関係を示すグラフである。
【図4】FLR110H/A/100におけるランプ電流−光出力の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0018】
1 直流電源
2、3 スイッチング素子
4、5 フライホイールダイオード
6 放電灯
7 バラスト用インダクタ
8、9 コンデンサ
10 電子式放電灯点灯装置
15 制御回路
20 照明器具
21、22 ランプソケット
23 照明器具本体
24 ランプ
25 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯を高周波で点灯させるための電子式放電灯点灯装置であって、前記放電灯として高周波点灯専用形蛍光ランプのFHF86形およびラピッドスタート形で大きさの区分が110の直管形蛍光ランプのどちらも点灯可能とするため、前記放電灯に供給するランプ電流を450〜600mAの範囲の所定値に設定したことを特徴とする電子式放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子式放電灯点灯装置と、高周波点灯専用形蛍光ランプのFHF86形およびラピッドスタート形で大きさの区分が110の直管形蛍光ランプのどちらも装着できるランプソケットと、前記電子式放電灯点灯装置および前記ランプソケットを搭載する照明器具本体とを備えたことを特徴とする照明器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−204826(P2008−204826A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40063(P2007−40063)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000005474)日立ライティング株式会社 (130)
【Fターム(参考)】