説明

電子放出源用ペースト

【課題】低電圧で電子放出可能で、さらに長寿命の電子放出が得られる電子放出源用ペーストを提供する。
【解決手段】カーボンナノチューブ等の電子放出材料、無機粉末および有機成分を含む電子放出源用ペーストであって、無機粉末として鉛を含有しないハンダ粉末を含む電子放出源用ペースト。無機粉末として、さらに導電性金属酸化物やガラス粉末を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出源用ペーストおよびそれを用いた電子放出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、CNTという)をはじめとした先鋭な先端形状と高アスペクト比を持つカーボンナノ材料は電界放出に適しているため、電界放出型ディスプレイ(FED)や電界放出を用いた液晶用バックライト等の電子放出源として多くの開発がなされている。CNTを用いた電子放出源は、CNTをバインダーや溶媒等の有機成分と混合してペースト化したものをカソード電極上に印刷、焼成することによって作製することができる。
【0003】
CNTが効率よく電子放出するためには、CNTとカソード電極との良好な電気的接触が重要である。そこで、ハンダなどの金属粉末やガラス粉末を用いてCNTをカソード電極に接着させる技術や、導電性粒子を含むことによってCNTとカソード電極との良好な電気的接触を保つ技術が開示されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−243789号公報
【特許文献2】特開2009−289712号公報(段落0045)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これまでの技術では十分に低電圧で駆動し、長寿命である電子放出素子は得られていなかった。
【0006】
本発明は上記課題に着目し、低電圧で電子放出可能で、さらに長寿命の電子放出素子に供される電子放出源用ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、電子放出材料、無機粉末および有機成分を含む電子放出源用ペーストであって、無機粉末として鉛を含有しないハンダ粉末を含むことを特徴とする電子放出源用ペーストである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低電圧に電子放出可能な電子放出源用ペーストを提供することができる。さらに、本発明によれば、電子放出に対する耐久性(寿命)の優れた電子放出素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について、以下に詳細に説明する。電子放出材料としてはCNTが好ましく用いられる。CNTは物理的・化学的耐久性に優れているだけでなく、電界放出に適した曲率の小さな先端形状と大きなアスペクト比を持っているため、電子放出材料として好ましく用いられる。また、電子放出材料として、CNTの他に、カーボンナノファイバー、カーボンナノウォール、カーボンナノホーン、カーボンナノコイルなどを用いてもよい。以下の説明では、炭素材料としてCNTを用いた場合を例に詳細に説明するが、その内容は炭素材料をカーボンナノファイバー、カーボンナノウォール、カーボンナノホーン、カーボンナノコイルなどに置き換えても同様に当てはまる。
【0010】
CNTの直径が大きくなると、電子放出部である先端の曲率も大きくなるため電子放出に必要な印加電圧が高くなるので、CNTの直径が1nm以上10nm未満のものを含むことが好ましい。10nmよりも小さいものを含むことで電子放出に必要な電圧を下げることができる。しかし、1nmより小さいと電子放出しやすくなるが劣化しやすい。より好ましくは、CNTの直径が1nm以上7nm以下である。7nm以下にすることによって、より電子放出に必要な電圧を下げることができる。CNTの直径は透過型電子顕微鏡により測定することができる。
【0011】
電子放出源用ペースト中の固形分において電子放出材料の含有量は0.1重量%以上20重量%以下が好ましい。下限としてはより好ましくは0.5重量%以上である。また上限としては10重量%であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。電子放出材料の含有量が前記範囲内にあると、電子放出源用ペースト中で電子放出材料の分散性、ペーストの基板への印刷特性と均一なパターン形成性、電子放出源からの電子放出特性がより良好となる。
【0012】
本発明で用いるハンダ粉末は、鉛を含まないものが好適に用いられる。特に、スズ、銀、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、およびアルミニウムからなる群より選ばれる1種以上を含むものが好ましい。中でも、スズが主成分であるものが好ましく、ハンダ粉末に含まれるスズの割合が80重量%以上であるものが特に好ましい。ハンダに一般的に用いられている鉛は、人体に有害であり、自然環境に対する悪影響も懸念される。加えて、鉛を含むハンダ粉末は、電子放出源の電子放出特性を低下させることもわかった。これは、鉛の触媒活性が高いために、電子放出源用ペーストを焼成した際にCNTが劣化してしまうためであると推測される。
【0013】
本発明で用いるハンダ粉末は、融点が低いために、熱処理によって有機物を電子放出材料含有ペースト塗膜から除去する工程において軟化する。したがって、後述のガラス粉末を用いない場合でもペースト塗膜とカソード基板との接着性をある程度向上させることができる。また、前記ペースト塗膜を焼成して作製した電子放出源は、導電性が良好であるため、より低電圧で電子放出し、かつ長時間の電子放出が可能となる。
【0014】
ハンダ粉末の含有量は、ペースト中の固形分において0.1重量%以上20%重量以下であることが好ましい。下限としてはより好ましくは0.5重量%以上であり、また上限としてはより好ましくは10重量%以下である。ハンダ粉末の含有量が前記範囲内にあると、導電性が良好で、かつCNTの起毛を阻害しないため好ましい。
【0015】
ハンダ粉末の平均粒子径は、1〜50μmφであることが好ましい。下限としてはより好ましくは3μmφ以上であり、また上限としてはより好ましくは20μmφ以下である。ハンダ粉末の粒径が前記範囲内にあると、電子放出源中に安定かつ均一に分散させることができ、導電性および電子放出の均一性を保つことができる。
【0016】
ここで平均粒子径とは、累積50%粒径(D50)のことをさす。これは一つの粉体の集団の全体積を100%として体積累積カーブを求めたとき、その体積累積カーブが50%となる点の粒径を表したものであり、累積平均径として一般的に粒度分布を評価するパラメータの1つとして利用されているものである。なお、ハンダ粉末の粒度分布の測定はマイクロトラック法(日機装(株)製マイクロトラックレーザー回折式粒度分布測定装置による方法)で測定することができる。
【0017】
本発明の電子放出源用ペーストは、ガラス粉末を有していてもよい。ガラス粉末は、電子放出材料とカソード基板との接着性付与の効果がある。電子放出源用ペーストは、ガラス粉末を含有することで、ペースト塗膜と基板との接着力がさらに向上する。
【0018】
ガラス粉末は、熱処理によって有機物を電子放出材料含有ペースト塗膜から除去する工程において軟化し、電子放出材料とカソード基板を接着させるものであればいずれも用いることができる。電子放出材料として好ましく用いられるCNTの耐熱性が500〜600℃であることと、基板として安価なソーダライムガラス(歪点約500℃)を用いることが好ましいことを考慮すると、ガラス粉末の軟化点は500℃以下が好ましく、450℃以下がさらに好ましい。ガラス粉末は、環境負荷低減の観点から無鉛系ガラスが好ましく、Bi系ガラス、SnO−P系ガラス、SnO−B系ガラス、アルカリ系ガラスが特に好ましく用いられる。これらのガラス粉末を用いると、ガラス軟化点を300℃〜450℃の範囲に制御することができる。
【0019】
本発明の電子放出源用ペーストは、さらに導電性の金属酸化物を含むと好ましい。電子放出源用ペーストが導電性の金属酸化物を含有することで、さらに低電圧での電子放出が可能となる。導電性の金属酸化物としては、酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化スズ、酸化亜鉛などが好ましい。また、酸化チタン、酸化ケイ素などの酸化物表面の一部または全部にITO、酸化スズ、酸化亜鉛、金、白金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、鉄、コバルトなどがコーティングされたものも好ましい。この場合も、導電性材料のコーティング材料としては、ITO、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性酸化物が好ましい。
【0020】
本発明の電子放出源用ペーストは、さらにバインダー樹脂を含むと好ましい。バインダー樹脂としては、セルロース系樹脂(エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、変性セルロースなど)、アクリル系樹脂(アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、アクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなど単量体のうち少なくとも1種からなる重合体)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。
【0021】
本発明の電子放出源用ペーストは、溶媒を適宜含むことができる。溶媒は、バインダー樹脂等有機成分を溶解するものが好ましい。例えば、エチレングリコールやグリセリンに代表されるジオールやトリオールなどの多価アルコール、アルコールをエーテル化および/またはエステル化した化合物(エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート)などが挙げられる。より具体的には、テルピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトールアセテートなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0022】
電子放出源用ペーストは感光性を有してもよく、感光性有機成分を含有することによって、露光および現像を通してパターン加工を行うことができる。感光性有機成分としては、紫外線を照射した時に化学的な変化が生じることによって、紫外線照射前には現像液に可溶であったものが露光後は現像液に不溶になるネガ型感光性有機成分と、紫外線照射前には現像液に不溶であったものが露光後は現像液に可溶になるポジ型感光性有機成分のいずれかを選ぶことができるが、本発明は特にネガ型感光性有機成分を用いた場合に好適に使用することができる。ネガ型感光性有機成分としては、感光性ポリマー、感光性オリゴマー、感光性モノマーのうち少なくとも1種類から選ばれる感光性成分を含有し、さらに必要に応じて、バインダー、光重合開始剤、紫外線吸光剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤等を含むものが好ましい。
【0023】
本発明の電子放出源用ペーストは、各種成分を所定の組成になるよう調合した後、3本ローラー、ボールミル、ビーズミル等の混練機で均質に混合分散することによって作製することができる。ペースト粘度は、ガラス粉末、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤等の添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は2〜200Pa・sである。例えば、基板への塗布をスリットダイコーター法やスクリーン印刷法以外にスピンコート法、スプレー法やインクジェット法で行う場合は、0.001〜5Pa・sが好ましい。
【0024】
以下に、本発明の電子放出源用ペーストを用いたフィールドエミッション用電子放出源および電子放出素子の作製方法について説明する。なお、電子放出源および電子放出素子の作製は、その他の公知の方法を用いてもよく、後述する作製方法に限定されない。
【0025】
はじめに電子放出源の作製方法について説明する。電子放出源は、以下に説明するように、本発明の電子放出源用ペーストからなるパターンを基板上に形成後、焼成することにより得られる。まず、本発明の電子放出源用ペーストを用いて基板上に電子放出源のパターンを形成する。基板としては電子放出源を固定するものであればいかなるものでも良く、ガラス基板、セラミック基板、金属基板、フィルム基板などが挙げられ、さらに基板上には導電性を有する膜が形成されていることが好ましい。基板上に電子放出源のパターンを形成する方法としては、一般的なスクリーン印刷法、インクジェット法などの印刷法が好ましく用いられる。また、感光性を付与した電子放出源用ペーストを用いると、フォトリソグラフィーによって微細な電子放出源のパターンを一括で形成することができるため好ましい。具体的には、スクリーン印刷法またはスリットダイコーター等で基板上に本発明の感光性を付与した電子放出源用ペーストを印刷した後、熱風乾燥機で乾燥して電子放出源用ペーストの塗膜を得る。前記塗膜に対して、上面(電子放出源用ペースト側)からフォトマスクを通じて紫外線を照射した後、アルカリ現像液や有機現像液などで現像して電子放出源パターンを形成することができる。次に電子放出源のパターンを焼成する。焼成雰囲気は大気中または窒素などの不活性ガス雰囲気中にて、焼成温度は400〜500℃の温度で焼成する。
【0026】
次に電子放出素子の作製方法について説明する。電子放出素子は、本発明の電子放出源用ペーストからなる電子放出源をカソード電極上に形成して背面板を作製し、アノード電極と蛍光体を有する前面板と対向させることにより得ることができる。以下、ダイオード型電子放出素子の作製方法とトライオード型電子放出素子の作製方法について詳細に説明する。
【0027】
ダイオード型電子放出素子の作製方法においては、まず、ガラス基板上にカソード電極を形成する。カソード電極は、ITOやクロム等の導電性膜をスパッタ法などによってガラス基板上に成膜することができる。カソード電極上には、前述の方法によって本発明の電子放出源用ペーストを用いて電子放出源を作製し、ダイオード型電子放出素子用の背面板が得られる。次にガラス基板上にアノード電極を形成する。アノード電極はITO等の透明導電性膜をスパッタ法などによってガラス基板上に成膜することができる。ガラス基板上に形成されたアノード電極上に蛍光体を印刷し、ダイオード型電子放出素子の前面板が得られる。ダイオード型電子放出素子用背面板および前面板は、電子放出源と蛍光体が対向するようにスペーサーを挟んで貼り合わせ、容器に接続した排気管で真空排気して、内部の真空度が1×10−3Pa以下の状態で融着することによりダイオード型電子放出素子が得られる。電子放出状態を確認するために、アノード電極に1〜5kVの電圧を供給することで、電子放出材料から電子が放出されて蛍光体にぶつかり、蛍光体の発光を得ることができる。
【0028】
トライオード型電子放出素子の作製方法においては、まず、ガラス基板上にカソード電極を作製する。カソード電極は、ITOやクロム等の導電性膜をスパッタ法などによって成膜することができる。次いで、カソード電極上に絶縁層を作製する。絶縁層は絶縁材料を印刷法または真空蒸着法などにより、膜厚3〜20μm程度で作製することができる。次いで、絶縁層上にゲート電極層を作製する。ゲート電極層はクロムなどの導電性膜を真空蒸着法などにより形成することで得られる。次いで、絶縁層にエミッタホールを作製する。エミッタホールの作製方法は、まずゲート電極上にレジスト材料をスピンコーター法などで塗布、乾燥し、フォトマスクを通じて紫外線を照射してパターンを転写した後、アルカリ現像液などで現像する。現像によって開口した部分からゲート電極および絶縁層をエッチングすることで、絶縁層にエミッタホールを形成することができる。次いで、前述の方法によって本発明の電子放出源用ペーストを用いてエミッタホール内部に電子放出源を作製し、トライオード型電子放出素子用の背面板が得られる。次にガラス基板上にアノード電極を形成する。アノード電極はITO等の透明導電性膜をスパッタ法などによってガラス基板上に成膜することができる。ガラス基板上に形成されたアノード電極上に蛍光体を印刷し、トライオード型電子放出素子の前面板が得られる。トライオード型電子放出素子用背面板および前面板は、電子放出源と蛍光体が対向するようにスペーサーを挟んで貼り合わせ、容器に接続した排気管で真空排気して、内部の真空度が1×10−3Pa以下の状態で融着することによりダイオード型電子放出素子が得られる。電子放出状態を確認するために、アノード電極に1〜5kV、ゲート電極に20〜150Vの電圧を供給することで、電子放出材料から電子が放出されて蛍光体にぶつかり、蛍光体の発光を得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。電子放出源用ペーストに用いた原料、各実施例および比較例における評価方法は以下の通りである。
【0030】
電子放出源用ペーストに用いた原料
CNT:多層CNT(東レ(株)製)
ガラス粉末:SnO−P系ガラス“KF9079”(旭硝子(株)製)、軟化点340℃、平均粒径0.2μm
導電性金属酸化物:白色導電性粉末“ET−500W”(石原産業(株)製、球状の酸化チタンを核として、SnO/Sb導電層を被覆したもの)、比表面積6.9m/g、密度4.6g/cm、平均粒径0.19μm
バインダー:オリコックス KC−1700P(共栄社化学(株)製)
溶媒:テルピネオール(和光純薬工業(株)製)。
【0031】
[ハンダ粉末]
ハンダ粉末I:Sn(96.5重量%)−Ag(3重量%)−Cu(0.5重量%) 粒径3μm
ハンダ粉末II:Sn(96.5重量%)−Ag(3重量%)−Cu(0.5重量%) 粒径20μm
ハンダ粉末III:Sn(100重量%) 粒径10μm
ハンダ粉末IV:Sn(97重量%)−Ag(3重量%) 粒径10μm
ハンダ粉末V:Sn(95重量%)−Cu(5重量%) 粒径10μm
ハンダ粉末VI:Sn(93重量%)−Ag(3.5重量%)−Bi(0.5重量%)−In(3重量%) 粒径10μm
ハンダ粉末VII:Sn(89重量%)−Zn(8重量%)−Bi(3重量%) 粒径10μm
ハンダ粉末VIII:Sn(96.5重量%)−Ag(3重量%)−Cu(0.5重量%) 粒径0.8μm
ハンダ粉末IX:Sn(96.5重量%)−Ag(3重量%)−Cu(0.5重量%) 粒径60μm
ハンダ粉末X:Sn(50重量%)−Pb(50重量%) 粒径10μm。
【0032】
<接着性の評価>
本実施例、比較例を通じての接着性評価は、以下のように行った。得られた厚さ1μmの電子放出源に剥離接着強さ0.5N/20mmのテープを貼り、約180°の角度を保ちながら速度300mm/分で引き剥がすことで電子放出源とカソード電極との接着性を評価した。電子放出源とカソード電極面との接着力が弱く、1回のテープ剥離で電子放出源ごと剥離してカソード電極の全面が見えてしまうものを×、電子放出源の一部が剥離したものを△、電子放出源が剥離せずカソード電極面が見えないものを○とした。
【0033】
<0.1mA/cmに達する電界強度の測定>
本実施例、比較例を通じての0.1mA/cmに達する電界強度の測定は、以下のように行った。真空度を5×10−4Paにした真空チャンバー内に、電子放出源が形成された基板と、ITO薄膜を形成したソーダライムガラス基板上に厚み5μmの蛍光体層(P22)を形成した基板を、100μmのスペーサーを挟んで対向させ、電圧印可装置(菊水電子工業(株)製耐電圧/絶縁抵抗試験器TOS9201)によって10V/秒で電圧印加した。得られた電流電圧曲線(最大電流値10mA/cm)から電流密度が0.1mA/cmに達する電界強度を求めた。
【0034】
<発光の均一性の評価>
本実施例、比較例を通じての発光の均一性観察は、以下のように行った。0.1mA/cmに達する電界強度の測定と同時に蛍光体層の発光状態を目視で確認し、5mm×5mmの角型パターンのほぼ全領域(80%以上)にわたって発光しているものを○、一部領域(30%以上80%未満)が発光するものを△、全く発光しないか、わずかな領域(30%未満)しか発光しないものを×とした。
【0035】
<電子放出源の寿命評価方法>
本実施例、比較例を通じての電子放出源の寿命評価は、以下のように行った。電子放出源を有するカソード電極基板とアノード電極基板を厚さ100μmのスペーサーを介して張り合わせ、真空チャンバー内にセットした。チャンバー内の真空度を1.0×10−4Paにし、アノード電極への印荷電圧を0.5kVに保ち続けたときの電流値の変化を、耐電圧・絶縁抵抗試験器(TOS9201、菊水電子工業(株)製)を用いて測定した。電子放出源の寿命は、初期電流値を1として、測定電流値が0.3を下回るまでの時間とした。
【0036】
実施例1〜24(表1〜表2)
本発明の電子放出源用ペーストは以下の要領で作製した。容積500mlのジルコニア製容器にCNT、バインダー、ハンダ粉末、導電性金属酸化物、ガラス粉末、溶媒をそれぞれ表1に示す組成で秤量し、0.3mmφのジルコニアビーズ(東レ(株)製トレセラム(商品名))をそこに加え、遊星式ボールミル(フリッチュ・ジャパン(株)製遊星型ボールミルP−5)にて100rpmで予備分散した。ジルコニアビーズを取り除いた混合物を3本ローラーにて混練した。
【0037】
次に、電子放出源を作製した。電子放出源用ペーストを、ITO薄膜を形成したソーダライムガラス基板に、SUS325メッシュのスクリーン版を用いて、5mm×5mmの角型パターンになるように印刷した。100℃で10分乾燥後、大気中にて450℃で焼成した。
【0038】
この電子放出源用ペースト塗膜を剥離接着強さ0.5N/20mmのテープにより起毛処理し、電子放出源を作製した。電子放出源の厚さは1μmであった。接着性、0.1mA/cmに達する電界強度、発光の均一性、寿命の評価結果を表1〜表2に示す。
【0039】
比較例1〜2(表2)
比較例1では、ハンダ粉末としてSn(50重量%)−Pb(50重量%)のものを添加して作製した電子放出源用ペーストを用いて、電子放出源の作製および各評価を行った。比較例2ではハンダ粉末を添加せず、CNT、バインダー、導電性金属酸化物、溶媒のみを添加した電子放出源用ペーストを用いて電子放出源の作製および各評価を行った。
【0040】
比較例1では、焼成によりCNTの大半が消失してしまい、16V/μmの電界強度を加えても電子放出が得られなかった。比較例2は、焼成後の電子放出源の接着性が低くなり、テープ剥離した際にCNT膜の一部が剥がれてしまった。また、電界強度は2.5V/μmと実施例と比較して高くなってしまった。発光の均一性にもばらつきが目立ち、寿命も80時間と実施例と比較して低くなった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子放出材料、無機粉末および有機成分を含む電子放出源用ペーストであって、無機粉末として鉛を含有しないハンダ粉末を含む電子放出源用ペースト。
【請求項2】
前記ハンダ粉末が、スズ、銀、銅、インジウム、亜鉛、ビスマスおよびアルミニウムからなる群より選ばれる1種以上を含む請求項1記載の電子放出源用ペースト。
【請求項3】
無機粉末として、さらに導電性の金属酸化物およびガラス粉末のうちいずれか一方、もしくは両方を含む請求項1または2記載の電子放出源用ペースト。
【請求項4】
電子放出材料の含有量が、ペースト中の固形分において0.1〜20重量%である請求項1〜3のいずれか記載の電子放出源用ペースト。
【請求項5】
ハンダ粉末の含有量が、ペースト中の固形分において0.1〜20重量%である請求項1〜4のいずれか記載の電子放出源用ペースト。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の電子放出源用ペーストを用いて作製した電子放出源。
【請求項7】
請求項1〜5に記載の電子放出源用ペーストを用いて作製した電子放出素子。
【請求項8】
請求項1〜5に記載の電子放出源用ペーストを用いた電子放出源の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5に記載の電子放出源用ペーストを用いた電子放出素子の製造方法。

【公開番号】特開2012−74270(P2012−74270A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218500(P2010−218500)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】