説明

電子楽器および電子楽器のプログラム

【課題】 メロディの大枠のみをガイドすることで、メロディの大枠を演奏者に演奏させる。
【解決手段】 CPU21は、ROM22の曲データエリアに格納された音符データを参照して、音符データが示す音符が装飾音に該当するか否かを判断し、装飾音に該当しないと判断された音符データを、ガイドデータとして、RAM23のガイドデータエリアに格納する。また、CPU21は、ガイド演奏のときに、ガイドデータエリアに格納された音符データを読み出して、読み出された音符データに基づき、鍵盤11の鍵に配置されたLEDを発光させて、演奏者に押鍵すべき鍵を知らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メロディをガイドすることができる電子楽器および電子楽器のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子楽器においては、鍵の近傍(通常は、演奏者の反対側の鍵の端部付近)や、鍵の内部にLEDを配置し、楽曲の音符にしたがって、演奏者に押鍵すべき鍵を示すためにLEDを点灯させる技術が従前より知られている。このような機能は、「ガイド」と称され、たとえば、演奏レベルのあまり高くない演奏者が、メロディや伴奏の演奏を練習するために利用される。
【0003】
このようなガイド機能においては、メモリ中に格納された音符データの発音時刻(発音開始時刻)および発音時間とに基づいて、発音開始時刻が到来した音符の音高に対応する鍵のLEDを点灯し、その後、当該音符の発音時間が経過すると、LEDを消灯する。演奏者は、LEDが点灯した鍵を押鍵することで、楽曲の演奏を進めることができる。
【0004】
たとえば、特許文献1には、上記ガイド機能において、コードの弾き方を段階的に取得できるように、設定されたレベルに応じてコード構成音のうち所定の音(たとえば、ルート音のみ、三和音のみなど)について、LEDを点灯する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−156308号公報
【特許文献2】特開2002−175072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に提案されているように、伴奏パートについては、演奏レベルが高くなるのにしたがって、和音構成音を増やすようにすることで、演奏レベルに応じた伴奏演奏のガイドが実現できる。その一方、メロディ音については、基本的に、演奏レベルに応じて音を省略することが容易ではないという問題点がある。したがって、メロディ音については、細かい音符、特に、装飾音も含めて、楽譜のとおりに演奏する必要があった。初心者にとって、細かい音符を楽譜のとおりに弾くことは容易ではない。たとえば、特許文献2には、所定の範囲のミスタッチを許容するような技術が提案されている。これにより、所定範囲のミスタッチを許容することで、上記細かい音符を楽譜どおりに弾かなくても良くすることで、演奏を進ませる、或いは、レッスンを進ませることを優先させている。しかしながら、本来ミスタッチは無い方が望ましく、また、楽曲において、装飾音を省略しても、曲の大枠は変化せず、たとえば、その楽曲の雰囲気が損なわれることはない。
【0007】
そこで、本発明は、装飾音をガイドせず、メロディの大枠のみをガイドすることで、メロディの大枠を演奏者に演奏させる電子楽器および電子楽器のプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、予め定められた楽曲を構成する音符のそれぞれについて、発音時刻と、音高或いは休符であることを示す情報と、を含む音符データを格納した音符データ記憶手段と、
演奏操作子の操作に基づいて、所定の音高の楽音データを生成する楽音データ生成手段と、
前記演奏操作子のそれぞれの近傍に配置され、当該演奏操作子の操作を指示する複数の発光素子と、を備えた電子楽器であって、
前記音符データ記憶手段に格納された音符データを参照して、当該音符データが示す音符が装飾音に該当するか否かを判断し、装飾音に該当しないと判断された音符データを、ガイドデータとして、ガイドデータ記憶手段に格納するガイドデータ生成手段と、
前記ガイドデータ記憶手段に格納された音符データを読み出して、前記音符データに基づく演奏操作子の発光素子を発光させる発光制御手段と、を備えたことを特徴とする電子楽器により達成される。
【0009】
好ましい実施態様においては、前記音符データが、前記音符のそれぞれについて発音時間を含み、
前記発光制御手段が、前記発光素子を、前記発音時刻に点灯し、発音時刻だけ継続して発光させる。
【0010】
また、好ましい実施態様においては、前記ガイドデータ生成手段が、
(1)後続する音符が休符ではない、
(2)同時発音すべき音符がない、
(3)音長が所定値以下である、および、
(4)その音符は休符ではない
ときに、前記音符が装飾音に該当すると判断する。
【0011】
別の好ましい実施態様においては、前記ガイドデータ生成手段が、
(1)後続する音符が休符ではない
(2)同時発音すべき音符がない
(4)その音符は休符ではない、および、
(5)音長が、当該音符の前後所定数の音符の音長と比較して短い
ときに、前記音符が装飾音に該当すると判断する。
【0012】
また、本発明の目的は、予め定められた楽曲を構成する音符のそれぞれについて、発音時刻と、音高或いは休符であることを示す情報と、を含む音符データを格納した音符データ記憶手段と、操作子のそれぞれの近傍に配置され、当該操作子の操作を指示する複数の発光素子とを備えたコンピュータに、
前記操作子の操作に基づいて、所定の音高の楽音データを生成する楽音データ生成ステップと、
前記音符データ記憶手段に格納された音符データを参照して、当該音符データが示す音符が装飾音に該当するか否かを判断し、装飾音に該当しないと判断された音符データを、ガイドデータとして、ガイドデータ記憶手段に格納するガイドデータ生成ステップと、
前記ガイドデータ記憶手段に格納された音符データを読み出して、前記音符データに基づく操作子の発光素子を発光させる発光制御ステップと、を実行させることを特徴とする電子楽器のプログラムにより達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装飾音をガイドせず、メロディの大枠のみをガイドすることで、メロディの大枠を演奏者に演奏させる電子楽器および電子楽器のプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施の形態にかかる電子楽器の外観を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかる電子楽器の構成を示すブロックダイヤグラムである。
【図3】図3は、本実施の形態にかかる電子楽器のメインフローの概略を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本実施の形態にかかるタイマインタラプト処理の例を示す図である。
【図5】図5は、本実施の形態にかかるスイッチ処理の例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施の形態にかかるガイドデータ作成処理の例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本実施の形態にかかる曲データおよびガイドデータを説明する図である。
【図8】図8は、本実施の形態にかかるガイド処理の例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本実施の形態にかかる鍵盤処理の例を示すフローチャートである。
【図10】図10は、本実施の形態にかかる発音処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる電子楽器の外観を示す図である。図1に示すように、本実施の形態にかかる電子楽器10は、61個の鍵(C2〜C7)を含む鍵盤11を有する。また、鍵盤11の上部には、音色の指定、ガイドデータの作成、ガイドの有無などを指定するためのスイッチ(たとえば、符号17参照)や、演奏される楽曲に関する種々の情報、たとえば、音色、リズムパターン、コードネームなどを表示する液晶表示装置14を有する。
【0016】
図2は、本発明の実施の形態にかかる電子楽器の構成を示すブロックダイヤグラムである。図2に示すように、本実施の形態にかかる電子楽器10は、CPU21、ROM22、RAM23、サウンドシステム24、鍵盤11、スイッチ群12および表示部13を備える。
【0017】
表示部13は、液晶表示装置14およびLED群15を有する。LED群15を構成するLEDは、鍵盤11の鍵盤(たとえば、図1の符号16−1、16−2)の内部にそれぞれ配置されている。
【0018】
CPU21は、電子楽器10全体の制御、鍵盤11の鍵(たとえば、図1の符号16−1、16−2参照)の押鍵や入力部12を構成するスイッチ(たとえば、図1の符号17)の操作の検出、鍵やスイッチの操作にしたがったサウンドシステム24の制御、ガイドデータにしたがったLEDの点灯など種々の処理を実行する。
【0019】
ROM22は、CPU21に実行させる種々の処理、たとえば、鍵盤の鍵のオン(押鍵)・オフ(離鍵)、スイッチの操作、押鍵に応じた楽音の発音、ガイドデータにしたがったLEDの点灯などのプログラムを格納する。また、ROM22は、ピアノ、ギター、バスドラム、スネアドラム、シンバルなどの楽音を生成するための波形データを格納した波形データエリア、および、楽曲を構成する音符の音符データを格納した曲データエリアを有する。RAM23は、ROM22から読み出されたプログラムや、処理の過程で生成されたデータを記憶する。後述するように、本実施の形態においては、曲データエリアに格納された音符データに基づいて、演奏者に次に押鍵すべき鍵を示すガイドデータを生成する。生成されたガイドデータは、RAM23に格納される。
【0020】
サウンドシステム24は、音源部26、オーディオ回路27およびスピーカ28を有する。音源部26は、たとえば、押鍵された鍵に関するノートオンイベントをCPU21から受信すると、ROM22の波形データエリアから所定の波形データを読み出して、所定の音高の楽音データを生成して出力する。また、音源部26は、波形データ、特に、スネアドラム、バスドラム、シンバルなど打楽器の音色の波形データを、そのまま楽音データとして出力することもできる。オーディオ回路27は、楽音データをD/A変換して増幅する。これによりスピーカ28から音響信号が出力される。
【0021】
本実施の形態にかかる電子楽器10は、通常モードの下においては、鍵盤11の鍵の押鍵に基づいて楽音を発生することができる。その一方、電子楽器10は、ガイドスイッチ(図示せず)が操作されることにより、ガイドモードとなる。ガイドモードの下では、ガイドデータにしたがって所定の鍵のLEDが点灯し、演奏者に対して、次に押鍵すべき鍵を示すことができる。
【0022】
図3は、本実施の形態にかかる電子楽器のメインフローの概略を示すフローチャートである。また、図4は、本実施の形態にかかるタイマインタラプト処理の例を示す図である。電源の投入とともに、メインフローは起動し、後述する各処理が繰り返し実行される。また、タイマインタラプト処理は、メインフローが実行されているときに、所定の時間間隔で割り込み処理として実行され、タイマのインクリメントなどが行なわれる。
【0023】
図3に示すように、電子楽器10のCPU21は、電子楽器10の電源が投入されると、RAM23中のデータや、液晶表示装置14の画像のクリアクリアおよびLED群15のクリアを含むイニシャル処理(初期化処理)を実行する(ステップ301)。イニシャル処理(ステップ301)が終了すると、CPU21は、入力部12を構成するスイッチのそれぞれの操作を検出し、検出された操作にしたがった処理を実行するスイッチ処理を実行する(ステップ302)。図5は、本実施の形態にかかるスイッチ処理の例を示すフローチャートである。
【0024】
図5に示すように、スイッチ処理において、CPU21は、ガイドデータ作成スイッチがオンされたかを判断する(ステップ501)。ステップ501においてYesと判断された場合には、ガイドデータ作成処理を実行する(ステップ502)。ガイドデータ作成処理については後に詳述する。また、CPU21は、ガイドスイッチがオンされたかを判断する(ステップ503)。ステップ503でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM23中のガイドフラグを反転させる(ステップ504)。CPU21は、RAM23中のガイドフラグが「1」であれば「0」にリセットし、ガイドフラグが「0」であれば「1」にセットする。本実施の形態においては、ガイドスイッチ(図示せず)は単一のスイッチであり、最初にガイドスイッチがオンされることにより、動作モードはガイドモードとなり、ガイドが「オン」状態となる。また、ガイドモードのときに、ガイドスイッチがオンされることにより、ガイドが「オフ」状態となる。
【0025】
次いで、CPU21は、ガイドフラグが「1」であるかを判断する(ステップ505)。ステップ505でYesと判断された場合には、CPU21は、内蔵するタイマをスタートさせる(ステップ506)。それに対して、ステップ505でNoと判断された場合には、CPU21は、ガイドを停止させる(ステップ507)とともに、タイマを停止する(ステップ508)。
【0026】
その後、CPU21は、他のスイッチ処理を実行する(ステップ509)。他のスイッチ処理(ステップ509)においては、音色指定スイッチなど種々のスイッチの操作が検出され、スイッチの操作に応じた処理が実行される。
【0027】
ステップ506でスタートされ、また、ステップ508で停止されるタイマは、タイマインタラプト処理においてインクリメントされる。図4に示すように、タイマインタラプト処理が開始されると、CPU21は、ガイドフラグが「1」であるかを判断する(ステップ401)。ステップ401でNoと判断された場合には処理を終了する。ステップ401でYesと判断された場合には、CPU21は、タイマをインクリメントし、かつ、鍵盤の番号(鍵番号)を示すパラメータnを「0」に初期化する。鍵番号nは、最低音の鍵盤が「0」であり、鍵の音高が高くなるのにしたがって、「1」ずつ大きくなる。
【0028】
CPU21は、鍵番号nが示す鍵におけるLEDの発光時間を示す発光残り時間On[n]が「0」であるか否かを判断する(ステップ404)。発光残り時間On[n]が「0」ではない場合(ステップ404でNo)、CPU21は、発光残り時間On[n]をデクリメントする(ステップ405)。ステップ404でYesと判断された場合、或いは、ステップ405が実行された後、CPU21は、鍵番号を示すパラメータnをインクリメントして(ステップ406)、パラメータnが鍵盤総数を超えたか否かを判断する(ステップ407)。ステップ407でNoと判断された場合には、ステップ404に戻る。その一方、ステップ407でYesと判断された場合には処理を終了する。上述したように、タイマインタラプト処理においては、ガイドモードであるときに、タイマがインクリメントされるとともに、対応するLEDを発光中の鍵について、発光残り時間を減算する処理が実行される。
【0029】
次に、図5のステップ502のガイドデータ作成処理についてより詳細に説明する。図6は、本実施の形態にかかるガイドデータ作成処理の例を示すフローチャートである。図6に示すように、CPU21は、ROM22の曲データエリアから音符データを読み出す(ステップ601)。
【0030】
図7は、本実施の形態にかかる曲データおよびガイドデータを説明する図である。図7において、曲データエリア700は、ROM22に設けられ、ガイドデータエリア701は、RAM23中に設けられる。曲データエリアには、楽曲を構成する音符のそれぞれについて、音符データが含まれる(たとえば、符号710、711参照)。音符データ(たとえば、音符データ(0))は、それぞれ、発音時刻(符号721参照)、音高情報または休符情報(符号722参照)、および、発音時間(符号723参照)を有する。音高情報は、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)のノートナンバーに相当する。また、休符情報として、ノートナンバーに含まれない所定の値が割り当てられる。
【0031】
ガイドデータエリアには、以下に述べるガイドデータ作成処理により、音符データから選択されたものが、ガイドデータとして格納される。したがって、ガイドデータエリアに格納されたガイドデータの構成は音符データと同様である。また、ガイドデータエリアは複数の音符データを含むことになるが、音符データの数は、曲データエリアにおける音符データの数以下となる。以下、ガイドデータもその構成自体は音符データと同様であるため、ガイドデータエリアに格納されたデータについて、音符データとも称する。
【0032】
CPU21は処理対象となる音符データ(たとえば、音符データ(i))について、後続する音符(たとえば、音符データ(i+1))が休符であるか否かを判断する(ステップ602)。音符が休符に相当するか否かは、音符データ中の音高情報または休符情報の項を参照することにより実現できる。ステップ602でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM23のガイドデータエリアに、当該音符データ(音符データ(i))をガイドデータとして格納する(ステップ606)。
【0033】
ステップ602でNoと判断された場合には、CPU21は、処理対象となる音符データが示す音符と同時発音すべき音符が存在するか否かを判断する(ステップ603)。CPU21は、曲データエリアにおいて、処理対象となる音符データ(音符データ(i))と同一の発音時刻を持つ他の音符データが存在するか否かを調べる。ステップ603でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM23のガイドデータエリアに、当該音符データ(音符データ(i))をガイドデータとして格納する(ステップ606)。その一方、ステップ603でNoと判断された場合には、CPU21は、処理対象となる音符データが示す音符の音長が、予め定められた所定値より大きいかを判断する(ステップ604)。
【0034】
音長は、当該音符データの発音時間に対応する。本実施の形態にかかるステップ604では、たとえば、音長が、64分音符より大きいかが判断される。ステップ604でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM23のガイドデータエリアに、当該音符データ(音符データ(i))を格納する(ステップ606)。その一方、ステップ604でNoと判断された場合には、CPU21は、処理対象となる音符データが示す音符が休符であるか否かを判断する(ステップ605)。ステップ605でYesと判断された場合には、CPU21は、RAM23のガイドデータエリアに、当該音符データ(音符データ(i))をガイドデータとして格納する(ステップ606)。
【0035】
ステップ605でNoと判断された場合、或いは、ステップ606が終了した後に、CPU21は、曲データエリアに次の音符の音符データが存在するかを判断する(ステップ607)。ステップ607でYesと判断された場合には、ステップ601に戻る。その一方、ステップ607でNoと判断された場合には処理を終了する。
【0036】
本実施の形態にかかるガイドデータ作成処理においては、曲データエリアにおける音符データが示す音符において、装飾音であると考えられる音符を除き、装飾音が除かれた音符から構成される音符データをガイドデータとして、ガイドデータエリアに格納している。ここで、装飾音と考えられる音符は以下のものとしている。
(1)後続する音符が休符ではない。
(2)同時発音すべき音符がない(和音構成音ではない)。
(3)音長が所定値以下である。
(4)その音符は休符ではない。
【0037】
すなわち、上記(1)〜(4)の全てが成立したものを装飾音と判断している。
【0038】
このように、楽曲の音符を、装飾音を除去したものから構成し、その音符のみを、対応する鍵に配置されたLEDを発光することでガイドすることにより、楽曲の雰囲気を損なうことなく、初心者であっても演奏可能な音符をガイドすることが可能となる。
【0039】
スイッチ処理(図3のステップ302)が終了すると、CPU21は、ガイド処理を実行する(ステップ303)。図8は、本実施の形態にかかるガイド処理の例を示すフローチャートである。図8に示すように、CPU21は、ガイドフラグが「1」であるかを判断する(ステップ801)。ステップ801でNoと判断された場合には処理を終了する。ステップ801でYesと判断された場合には、CPU21は、ガイドデータエリアに格納された音符データを読み出し(ステップ802)、読み出された音符データの発音時刻およびタイマの値(タイマ時刻)を参照して、タイマ時刻が発音時刻に達したかを判断する(ステップ803)。ステップ803でNoと判断された場合には、CPU21は、ガイドデータエリアから次の音符データを読み出して(ステップ806)、ガイドデータエリアから全ての音符データの読み出しが終了したかを判断する(ステップ807)。ステップ807でNoと判断された場合には、ステップ803に戻る。
【0040】
ステップ803でYesと判断された場合には、CPU21は、処理対象となる音符データ(音符データ(i))中の音高情報が示す鍵番号kに対応する鍵を発光すべく、LED群15に信号を出力する(ステップ804)。次いで、CPU21は、当該鍵番号kについての、発光残り時間On[k]に、当該音符データの発音時間をセットする(ステップ805)。これにより、ガイドデータエリア中の音符データが示す音符の発音時刻が到来すると、その音符に対応する鍵のLEDが点灯し、かつ、LEDは、その音符データ中の発音時間に相当する時間だけ発光する。
【0041】
ステップ807でYesと判断された場合には、CPU21は、鍵番号を示すパラメータnを初期化して(ステップ808)、発光残り時間On[n]が「0」であるかを判断する(ステップ809)。なお、発光残り時間On[n]は前述したタイマインタラプト処理において、所定の時間間隔でデクリメントされている。ステップ809でYesと判断された場合には、CPU21は、鍵番号nに対応する鍵を消灯するようにLED群15に信号を出力する(ステップ810)。ステップ809でNoと判断された場合、或いは、ステップ810が実行された後に、CPU21は、パラメータnをインクリメントして(ステップ811)、パラメータnが鍵盤総数を超えたか否かを判断する(ステップ812)。ステップ811でNoと判断された場合には、ステップ809に戻る。その一方、ステップ811でYesと判断された場合には処理を終了する。
【0042】
ガイド処理(図3のステップ303)が終了すると、CPU21は、鍵盤処理を実行する(ステップ304)。図9は、本実施の形態にかかる鍵盤処理の例を示すフローチャートである。図9に示すように、CPU21は、鍵盤11の鍵を所定の順で(たとえば、音高の低い鍵から)走査して(ステップ901)、処理対象となる鍵の状態に変化があったか否かを判断する(ステップ902)。ステップ902で鍵がオン状態となった場合には、CPU21は、当該鍵の押鍵に基づき、鍵に対応する音高の楽音を発音することを示すノートオンイベントを生成する(ステップ903)。また、処理対象となる鍵がオフ状態となった場合には、CPU21は、離鍵された鍵に対応する音高の楽音を消音することを示すノートオフイベントを生成する(ステップ904)。ノートオンイベントおよびノートオフイベントは、RAM23のイベントエリアに格納される。
【0043】
ステップ903、904が実行された後、或いは、ステップ902で鍵の状態に変化がないと判断された場合には、CPU21は、すべての鍵について処理が終了したかを判断する(ステップ905)。ステップ905でNoと判断された場合には、ステップ901に戻る。その一方、ステップ905でYesと判断された場合には処理を終了する。
【0044】
鍵盤処理(ステップ304)の後に、発音処理が実行される(ステップ305)。図10は、本実施の形態にかかる発音処理の例を示すフローチャートである。CPU21は、RAM23のイベントエリアを参照して(ステップ1001)、未処理のイベントが存在するかを判断する(ステップ1002)。ステップ1002でNoと判断された場合には処理を終了する。ステップ1002でYesと判断された場合には、CPU21は、イベントがノートオンイベントであるかを判断する(ステップ1003)。ステップ1003でYesと判断された場合には、CPU21は、音源部26に対して、ノートオンイベントが示す音高の楽音を、所定の音色で発音するように指示を与える(ステップ1004)。音源部26は、指示に応答して、指定された音色の波形データを、指定された音高に基づいて読み出して、かつ、読み出された波形データに、エンベロープに基づく乗算値を乗算して楽音データを生成し、オーディオ回路27に出力する。
【0045】
ステップ1003でNoと判断された場合、つまり、イベントがノートオフイベントであった場合には、CPU21は、ノートオフイベントが示す音高の楽音を消音するように音源部26に指示を与える。音源部26は、指示に応答して、読み出された波形データに、徐々に減少するリリースのエンベロープを乗算して楽音データを生成してオーディオ回路27に出力する。
【0046】
本実施の形態によれば、CPU21は、曲データエリアに格納された音符データを参照して、音符データが示す音符が装飾音に該当するか否かを判断し、装飾音に該当しないと判断された音符データを、ガイドデータとして、ガイドデータエリアに格納している。また、CPU21は、ガイドデータエリアに格納された音符データを読み出して、前記音符データに基づく鍵盤のLEDを発光させる。これにより、装飾音に該当しない音符についてのみ、音符に対応する鍵のLEDを発光させて、演奏者に押鍵を促す。したがって音符自体は簡素化されつつ、メロディの大枠に影響を与えず、かつ、楽曲の雰囲気を損なうことない演奏が可能となる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、CPU21は、音符データにしたがって、LEDを発音時刻に点灯し、発音時刻だけ継続して発光させる。音符の音長にしたがってLEDの発光を継続することで、演奏者に音符の長短を知らせることが可能となる。
【0048】
さらに、本実施の形態によれば、CPU21は、
(1)後続する音符が休符ではない、
(2)同時発音すべき音符がない、
(3)音長が所定値以下である、および、
(4)その音符は休符ではない
ときに、音符が装飾音に該当すると判断する。これにより比較的簡単なロジックで適切に装飾音を特定することができる。
【0049】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0050】
たとえば、前記実施の形態においては、
(1)後続する音符が休符ではない。
(2)同時発音すべき音符がない(和音構成音ではない)。
(3)音長が所定値以下である。
(4)その音符は休符ではない。
という4つの条件が全てが成立した場合に、音符を装飾音と判断している。しかしながらこれに限定されるものではなく、たとえば、
(1)後続する音符が休符ではない。
(2)同時発音すべき音符がない(和音構成音ではない)。
(4)その音符は休符ではない。
(5)音長が、当該音符の前後所定数の音符の音長と比較して短い。
という4つの条件が全てが成立した場合に、音符を装飾音と判断しても良い。ここで、前後所定数の音符の音長は、たとえば、所定数の音符の音長の平均値を算出し、判断対象となった音符の音長と、算出された平均値とを比較すれば良い。或いは、判断対象となった音符の音長の、算出された平均値に対する比を算出し、比が所定値以下(たとえば、1/2以下)であった場合に、当該音符を装飾音であると判断しても良い。
【0051】
この例によれば、楽曲において判断対象となった音符の前後の音符の音長に比較して短い音符を装飾音として除去しえる。したがって、メロディ中のフレーズの大枠に与える影響の小さな短い音長の音符のみを省略することで、楽曲の雰囲気を損なわずに音符の省略が可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10 電子楽器
11 鍵盤
12 入力部
13 表示部
14 液晶表示装置
15 LED群
16 鍵
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 サウンドシステム
26 音源部
27 オーディオ回路
28 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた楽曲を構成する音符のそれぞれについて、発音時刻と、音高或いは休符であることを示す情報と、を含む音符データを格納した音符データ記憶手段と、
演奏操作子の操作に基づいて、所定の音高の楽音データを生成する楽音データ生成手段と、
前記演奏操作子のそれぞれの近傍に配置され、当該演奏操作子の操作を指示する複数の発光素子と、を備えた電子楽器であって、
前記音符データ記憶手段に格納された音符データを参照して、当該音符データが示す音符が装飾音に該当するか否かを判断し、装飾音に該当しないと判断された音符データを、ガイドデータとして、ガイドデータ記憶手段に格納するガイドデータ生成手段と、
前記ガイドデータ記憶手段に格納された音符データを読み出して、前記音符データに基づく演奏操作子の発光素子を発光させる発光制御手段と、を備えたことを特徴とする電子楽器。
【請求項2】
前記音符データが、前記音符のそれぞれについて発音時間を含み、
前記発光制御手段が、前記発光素子を、前記発音時刻に点灯し、発音時刻だけ継続して発光させることを特徴とする請求項1に記載の電子楽器。
【請求項3】
前記ガイドデータ生成手段は、
(1)後続する音符が休符ではない、
(2)同時発音すべき音符がない、
(3)音長が所定値以下である、および、
(4)その音符は休符ではない
ときに、前記音符が装飾音に該当すると判断することを特徴とする請求項1または2に記載の電子楽器。
【請求項4】
前記ガイドデータ生成手段が、
(1)後続する音符が休符ではない
(2)同時発音すべき音符がない
(4)その音符は休符ではない、および、
(5)音長が、当該音符の前後所定数の音符の音長と比較して短い
ときに、前記音符が装飾音に該当すると判断することを特徴とする請求項1または2に記載の電子楽器。
【請求項5】
予め定められた楽曲を構成する音符のそれぞれについて、発音時刻と、音高或いは休符であることを示す情報と、を含む音符データを格納した音符データ記憶手段と、操作子のそれぞれの近傍に配置され、当該操作子の操作を指示する複数の発光素子とを備えたコンピュータに、
前記操作子の操作に基づいて、所定の音高の楽音データを生成する楽音データ生成ステップと、
前記音符データ記憶手段に格納された音符データを参照して、当該音符データが示す音符が装飾音に該当するか否かを判断し、装飾音に該当しないと判断された音符データを、ガイドデータとして、ガイドデータ記憶手段に格納するガイドデータ生成ステップと、
前記ガイドデータ記憶手段に格納された音符データを読み出して、前記音符データに基づく操作子の発光素子を発光させる発光制御ステップと、を実行させることを特徴とする電子楽器のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−190942(P2010−190942A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32380(P2009−32380)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】