説明

電子機器の冷却方法及び冷却システム

【課題】冷媒自然循環方式の冷却システムにおける蒸発器の冷媒流量をバルブ制御しても、冷媒の自然循環を安定に維持することができると共に蒸発器表面の結露発生を防止できる。
【解決手段】サーバ14からの排熱空気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該排熱空気を冷却する蒸発器20X,20Yと、蒸発器20X,20Yよりも高所に配置され、気化された冷媒を液化させる冷却塔22との間に、冷媒を自然循環させると共に、蒸発器20X,20Yで熱交換されて冷却された後の空気温度がサーバ14の動作環境に適した温度になるように蒸発器20X,20Yに供給する冷媒液体の流量をバルブ制御する電子機器の冷却方法において、蒸発器20X,20Yに供給する冷媒液体の流量をバルブ制御しても、冷却塔22での冷媒ガスの凝縮温度又は凝縮圧力が変動しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器の冷却方法及び冷却システムに係り、特に、サーバルームに配設されたコンピュータやサーバ等の電子機器を、蒸発器と冷却塔(又は凝縮器)との間で冷媒を自然循環させることにより局所的に冷却するための電子機器の冷却方法及び冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバルームには、コンピュータやサーバ等の電子機器が集約された状態で多数設置される。電子機器は一般にラックマウント方式、すなわち、電子機器を機能単位別に分割して収納するラック(筐体)をキャビネットに段積みする方式で設置され、キャビネットはサーバルームの床上に多数整列配置される。
【0003】
これらの電子機器は、正常な動作をするために一定の温度環境が必要とされ、高温状態になるとシステム停止等のトラブルを引き起こすおそれがある。このため、サーバルームは空調機によって一定の温度環境に管理されている。しかし、近年では、電子機器の処理速度や処理能力の急激な上昇に伴い、電子機器からの発熱量が上昇の一途をたどっており、空調機のランニングコストも大幅に増加している。
【0004】
このような背景から、電子機器を効率的に冷却するための様々な技術が提案されている。たとえば特許文献1には、電子機器を通る閉ループ流を形成し、この閉ループ流を熱交換器で冷却することによって、電子機器を局所的に冷却する方法が提案されている。
【0005】
また、パッケージ空調機を用いた床吹き出し空調でサーバルームを冷却する方法も行われているが、電子機器からの排熱による局所的な温度上昇を抑制するためにサーバルーム内全体を空調することになるので、冷却効率が悪いという問題がある。そのため、空調動力のうち熱搬送に要する送風動力の占める割合が大きい。したがって、熱搬送動力を如何に低減するかの手法が省エネ対策にとっては重要となる。
【0006】
そこで、特許文献2に示すような冷媒の自然循環方式を用いた冷却システムが提案されている。特許文献2では、各蒸発器が個別の熱負荷に対応できるように蒸発器ごとに流量調整バルブを設け、蒸発器に供給される冷媒液体の供給量をバルブ制御し、蒸発器の能力を個別に調整することで省エネを図ることが提案されている。このように、蒸発器に供給される冷媒液体の供給量をバルブ制御することにより、サーバからの高温な排熱空気は蒸発器で適切に冷却されてサーバルームに放出させることができる。これによりサーバルームが設定温度条件に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2006−507676号公報
【特許文献2】特開平1−121641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、バルブ制御は、冷媒が流れる配管の配管抵抗を変化させることによって冷媒流量を調整するメカニズムであるため、配管抵抗が冷却システムの運転状態を大きく左右する冷媒自然循環方式では、バルブ制御によって蒸発温度の変動を招くという問題がある。例えば、バルブ制御により蒸発器内部の蒸発圧力が低下し、必要以上に蒸発温度の低下を招いて蒸発器出口温度の大幅な低下を生じることがある。この蒸発器出口温度の大幅な低下によって蒸発器表面に結露が発生する虞がある。蒸発器表面に結露が発生すると、結露水が電子機器に悪影響を与え信頼性が低下するだけでなく、結露防止のためのエネルギーロスが発生するという問題がある。
【0009】
更には、蒸発器と冷却塔(又は凝縮器)との間に冷媒を自然循環させる場合、低圧力側の冷媒凝縮側(冷却塔又は凝縮器側)と高圧力側の冷媒蒸発側(蒸発器側)との圧力差を適切に維持することが自然循環を安定化させる上で重要であり、凝縮圧力及び蒸発圧力は凝縮温度及び蒸発温度に連動している。
【0010】
したがって、蒸発温度が変動すると蒸発圧力も変動するので、冷媒の自然循環が安定しなくなるという問題が生じる。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、冷媒自然循環方式の冷却システムにおける蒸発器の冷媒流量をバルブ制御しても、冷媒の自然循環を安定に維持することができると共に蒸発器表面の結露発生を防止できる電子機器の冷却方法及び冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、電子機器からの排熱空気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該排熱空気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に配置され、前記気化された冷媒を液化させる冷却塔又は凝縮器との間に、前記冷媒を自然循環させると共に、前記蒸発器で熱交換されて冷却された後の空気温度が前記電子機器の動作環境に適した温度になるように前記蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御する電子機器の冷却方法において、前記蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御しても、前記冷却塔又は凝縮器での冷媒ガスの凝縮温度又は凝縮圧力が変動しないようにしたことを特徴とする電子機器の冷却方法を提供する。
【0013】
本発明の請求項1によれば、蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御しても、冷却システムの低圧力側である冷却塔又は凝縮器での冷媒ガスの凝縮温度又は凝縮圧力が変動しないようにした。このように、蒸発器側でのバルブ制御に並行して、冷却塔側又は凝縮器側の凝縮温度又は凝縮圧力が変動しないように制御することで、蒸発器側の蒸発圧力の変動が抑制される。これにより、冷媒の自然循環を安定に維持することができると共に蒸発器表面の結露発生を防止することができる。
【0014】
冷媒自然循環方式における蒸発器内部の蒸発圧力は、凝縮器での凝縮圧力と、蒸発器と凝縮器との高低差とにより支配されます。即ち、蒸発器内部圧力=凝縮圧力+ヘッド差圧)となる。これにより、蒸発器内部圧力はヘッド差圧が一定であれば、凝縮圧力の変動により変動することになる。したがって、蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御しても、冷却システムの低圧力側である冷却塔又は凝縮器での冷媒ガスの凝縮圧力が変動しないようにすることで、冷媒の自然循環を安定に維持することができる。また、凝縮温度は凝縮圧力と連動するので、凝縮温度が変動しないようにすることで、冷媒の自然循環を安定に維持することができる。
【0015】
また、蒸発器は凝縮器よりも下方に配置されているので、蒸発器内部圧力は凝縮圧力よりも必ず高い値になる。これにより、凝縮器内部圧力を室内の露点温度より冷媒飽和温度に設定すれば、蒸発器の蒸発温度は必ず室内空気の露点温度以上になる。したがって、蒸発器表面の結露発生を防止することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は前記目的を達成するために、電子機器からの排熱空気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該排熱空気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に配置され、前記気化された冷媒を液化させる冷却塔との間に、前記冷媒を自然循環させると共に、前記蒸発器で熱交換されて冷却された後の空気温度が前記電子機器の動作環境に適した温度になるように前記蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御する電子機器の冷却システムにおいて、前記冷却塔は、外気の取込口と排気口とが形成された冷却塔本体と、前記冷却塔本体内に設けられ、入口が前記蒸発器から戻る冷媒ガスが流れるガス配管に接続し、出口が前記蒸発器に供給する冷媒液体が流れる液配管に接続する熱交換コイルと、前記熱交換コイルに散水する散水機と、前記取込口から外気を取り込んで前記熱交換コイルに送風すると共に前記排気口から排気させる送風機と、前記送風機の送風量を調整する送風量調整手段と、前記熱交換コイル出口の冷媒液体温度を測定する冷媒液体温度センサと、前記冷媒液体温度センサの測定温度に基づいて前記送風量調整手段を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記冷媒液体温度センサの測定温度が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定温度に維持されるように、前記送風機の送風量を前記送風量調整手段によって制御することを特徴とする電子機器の冷却システムを提供する。
【0017】
請求項2は、蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御しても、冷却塔又は凝縮器での冷媒ガスの凝縮温度が変動しないようにするための具体的な装置構成を示したものである。
【0018】
請求項2の発明によれば、蒸発器へ供給される冷媒液体の供給量をバルブ制御することによって蒸発器の蒸発温度が変動しても、コントローラは、冷却システムの低圧力側である冷却塔における熱交換コイルを冷却する送風機の送風量を制御することで、冷却塔の熱交換コイル出口の冷媒液体温度が変動せずに所定温度に維持されるようにした。
【0019】
これにより、冷媒自然循環方式の冷却システムにおける蒸発器の冷媒流量をバルブ制御しても、冷媒の自然循環を安定に維持することができると共に蒸発器表面の結露発生を防止できる。
【0020】
請求項3は請求項2において、前記冷媒液体温度センサを冷媒液体圧力センサに代えると共に、前記コントローラは、前記冷媒液体圧力センサの測定圧力が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定圧力に維持されるように、前記送風機の送風量を前記送風量調整手段によって制御することを特徴とする。
【0021】
請求項3は、熱交換コイル出口の冷媒液体温度に代えて、熱交換コイル出口の凝縮圧力が所定圧力になるように制御するようにしたものである。
【0022】
請求項4に記載の発明は前記目的を達成するために、電子機器からの排熱空気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該排熱空気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に配置され、前記気化された冷媒を液化させる冷却塔との間に、前記冷媒を自然循環させると共に、前記蒸発器で熱交換されて冷却された後の空気温度が前記電子機器の動作環境に適した温度になるように前記蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御する電子機器の冷却システムにおいて、前記冷却塔は、外気の取込口と排気口とが形成された冷却塔本体と、前記冷却塔本体内に設けられ、入口が前記蒸発器から戻る冷媒ガスが流れるガス配管に接続し、出口が前記蒸発器に供給する冷媒液体が流れる液配管に接続する熱交換コイルと、前記熱交換コイルに散水する散水機と、前記取込口から外気を取り込んで前記熱交換コイルに送風すると共に前記排気口から排気させる送風機と、前記熱交換コイル出口の冷媒液体温度を測定する冷媒液体温度センサと、前記排気口から排気される排気外気の一部を前記取込口近傍に戻して前記取込口からの取込み外気と混合させる循環ダクトと、前記循環ダクトを流れる排気外気の風量を調節する循環風量調節手段と、前記冷媒液体温度センサの測定温度に基づいて前記循環風量調整手段を制御するコントローラと、を備え、 前記コントローラは、前記冷媒液体温度センサの測定温度が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定温度に維持されるように、前記循環ダクトを流れる排気外気の循環風量を前記循環風量調整手段によって制御することを特徴とする電子機器の冷却システムを提供する。
【0023】
請求項4は、蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御しても、冷却塔での冷媒ガスの凝縮温度が変動しないようにするための具体的な装置構成を示した別態様である。
【0024】
請求項4の発明によれば、蒸発器へ供給される冷媒液体の供給量をバルブ制御することによって蒸発器の蒸発温度が変動しても、コントローラは、循環ダクトを循環する排出外気の循環風量を制御することで、冷却塔の熱交換コイル出口の冷媒液体温度が前記変動に連動して変動せずに所定温度に維持されるようにした。即ち、循環ダクトを設けることで、熱交換コイルでの熱交換で温度上昇した排出外気の一部が冷却塔本体の取込口近傍に戻され、取込口から取り込まれた取込み外気と混合する。これにより、熱交換コイルに送風する送風温度が変わる。また、循環ダクトの循環風量を調整することで、送風温度を調整できる。これにより、冷却システムの低圧力側である冷却塔での凝縮温度を所定温度に一定に維持できる。
【0025】
したがって、冷媒自然循環方式の冷却システムにおける蒸発器の冷媒流量をバルブ制御しても、冷媒の自然循環を安定に維持することができると共に蒸発器表面の結露発生を防止できる。
【0026】
請求項5は請求項4において、前記冷媒液体温度センサを冷媒液体圧力センサに代えると共に、前記コントローラは、前記冷媒液体圧力センサの測定圧力が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定圧力に維持されるように、前記循環ダクトを流れる排気外気の循環風量を前記循環風量調整手段によって制御することを特徴とする。
【0027】
請求項5は、熱交換コイル出口の冷媒液体温度に代えて、熱交換コイル出口の凝縮圧力が所定圧力になるように制御するようにしたものである。
【0028】
請求項6に記載の発明は前記目的を達成するために、電子機器からの排熱空気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該排熱空気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に配置され、前記気化された冷媒を液化させる冷水型凝縮器との間に、前記冷媒を自然循環させると共に、前記蒸発器で熱交換されて冷却された後の空気温度が前記電子機器の動作環境に適した温度になるように前記蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御する電子機器の冷却システムにおいて、前記冷水型凝縮器は、入口が前記蒸発器から戻る冷媒ガスが流れるガス配管に接続され、出口が前記蒸発器に供給する冷媒液体が流れる液配管に接続されると共に、前記冷水型凝縮器に冷水供給配管を介して供給される冷水によって前記冷媒ガスを前記冷媒液体に凝縮するための冷熱を得る凝縮器であって、前記冷水供給配管に設けられ、前記冷水型凝縮器に供給する冷水流量を調整する冷水量調整手段と、前記冷水型凝縮器出口の冷媒液体温度を測定する冷媒液体温度センサと、前記冷媒液体温度センサの測定温度に基づいて前記冷水量調整手段を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記冷媒液体温度センサの測定温度が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定温度に維持されるように、前記冷水型凝縮器に供給する冷水流量を前記冷水量調整手段によって制御することを特徴とする電子機器の冷却システムを提供する。
【0029】
請求項6は、蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御しても、冷水型凝縮器での冷媒ガスの凝縮温度が変動しないようにするための具体的な装置構成を示した更に別の態様である。
【0030】
請求項6の発明によれば、蒸発器へ供給される冷媒液体の供給量をバルブ制御することによって蒸発器の蒸発温度が変動しても、コントローラは、冷却システムの低圧力側である冷水型凝縮器に冷水を供給する冷水流量を制御することで、冷水型凝縮器出口の冷媒液体温度が前記変動に連動して変動しないようにした。
【0031】
したがって、冷媒自然循環方式の冷却システムにおける蒸発器の冷媒流量をバルブ制御しても、冷媒の自然循環を安定に維持することができると共に蒸発器表面の結露発生を防止できる。
【0032】
請求項7は請求項6において、前記冷媒液体温度センサを冷媒液体圧力センサに代えると共に、前記コントローラは、前記冷媒液体圧力センサの測定圧力が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定圧力に維持されるように、前記冷水供給流路の冷水流量を前記冷水量調整手段によって制御することを特徴とする。
【0033】
請求項7は、冷水型凝縮器出口の冷媒液体温度に代えて、冷水型凝縮器出口の凝縮圧力が所定圧力になるように制御するようにしたものである。
【0034】
請求項8は請求項6において、外気温が10℃以下の場合には、前記冷水型凝縮器に供給する水は、外気を用いて冷却されることを特徴とする電子機器の冷却システムである。
【0035】
この構成によれば、外気温が10度以下の場合にはいわゆるチラーを用いず、外気のみで冷水を冷却することができる「フリークーリング」を活用でき、空調システムにかかる電力コストをさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように本発明の電子機器の冷却方法及び冷却システムによれば、冷媒自然循環方式の冷却システムにおける蒸発器の冷媒流量をバルブ制御しても、冷媒の自然循環を安定に維持することができると共に蒸発器表面の結露発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の電気機器の冷却システムの第1の実施の形態の全体構成を説明する概念図
【図2】本発明の電気機器の冷却システムの第2の実施の形態の全体構成を説明する概念図
【図3】循環ダクト型冷却塔の構造を説明する説明図
【図4】本発明の電気機器の冷却システムの第3の実施の形態の全体構成を説明する概念図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面に従って本発明に係る電子機器の冷却方法及び冷却システムの好ましい実施の形態について詳説する。
【0039】
本実施の形態では、電子機器としてサーバルームに配置されたサーバの例で説明する。
【0040】
[本発明の第1の実施の形態]
図1は、電子機器の冷却システム10の第1の実施の形態の全体構成を示す概念図である。
【0041】
同図に示す冷却システム10は、上下2階のサーバルーム12X、12Yに設けられたサーバ14の近傍を局所的に冷却するシステムである。尚、以下の説明で符号に付すXは下層階の冷却システムに係わる部材であり、Yは上層階の冷却システムに係わる部材である。また、図1では、各サーバルーム12X、12Yに、1台のサーバ14を図示しているが、実際には、多数のサーバ14が配置されている。更に、サーバ14は通常、サーバラック(図示せず)に段積み収納されることによって、サーバルーム12X、12Y内に設置される。
【0042】
サーバ14は、エアの吸引口14A及び排気口14Bを備えるとともに、内部にファン14Cを備え、このファン14Cを駆動することによって、吸引口14Aからエアが吸引され、排気口14Bからサーバ14の排熱を伴った排熱空気が排気される。これにより、サーバ14を冷却することができる。一方、排熱空気をそのままサーバルーム12X、12Yに排気すると、サーバルーム12X、12Yの室温が上昇し、サーバ14に吸い込む空気温度が高くなってしまう。したがって、排熱空気を蒸発器20X、20Yで冷却してからサーバルーム12X、12Yに排気する必要がある。
【0043】
各サーバルーム12X、12Yの床面13の下には床下チャンバ18X、18Yが形成されており、床面13に形成された複数の吹出口(不図示)を介して床下チャンバ18X、18Yとサーバルーム12X、12Yが連通される。床下チャンバ18X、18Yには、パッケージ空調機等(不図示)で冷却された空調エアが給気され、この空調エアが吹出口からサーバルーム12X、12Yに吹き出される。尚、吹出口は、サーバ14の吸引口14Aの近傍に形成されており、この空調エアがサーバ14に吸引されることによって、サーバ14を効率よく冷却することができる。
【0044】
更に、サーバ14は、冷却システム10によって局所的に冷却される。
【0045】
冷却システム10は、主として蒸発器20X、20Y、凝縮器としての冷却塔22、冷媒液体が流れる液配管24、冷媒ガスが流れるガス配管26からなる冷媒の自然循環サイクルを構成する。
【0046】
蒸発器20X、20Yはそれぞれ、サーバ排気口14Bの近傍に設けられ、蒸発器20X、20Yの内部には不図示のコイルが設けられる。このコイルの外側を、サーバ排気口14Bから排出された排熱空気が流れ、コイルの内側を冷媒液体が流れて熱交換される。この結果、コイル内の冷媒液体が排熱空気から気化熱を奪って蒸発するので、サーバルーム12X、12Yに排気される排気空気が冷却される。これにより、吹出口からサーバルーム12X、12Yに吹き出される空調エアと相まって、サーバルーム12X、12Yの温度環境を、サーバ14が正常に動作をするために必要な温度環境に設定できる。
【0047】
冷却塔22は、蒸発器20X、20Yで気化した冷媒ガスを冷却して凝縮させる装置であり、蒸発器20X、20Yよりも高い位置、例えばサーバルーム12の建屋屋上等に設置される。
【0048】
蒸発器20X、20Yと冷却塔22は、液配管24(分岐管24X、24Yを含む)とガス配管26(分岐管26X、26Yを含む)によって接続される。ガス配管26の上端は冷却塔22内の熱交換コイル28の入口に接続されており、ガス配管26の下端は、分岐管26X、26Yに分岐され、その分岐管26X、26Yが蒸発器20X、20Yのコイル(不図示)の一端に接続されている。一方、液配管24の上端は、冷却塔22内の熱交換コイル28の出口に接続されており、液配管24の下端は、分岐管24X、24Yに分岐され、その分岐管24X、24Yが蒸発器20X、20Yのコイル(不図示)の他端に接続されている。したがって、蒸発器20X、20Yで気化された冷媒ガスはガス配管26を上昇して冷却塔22に自然に送られ、この冷却塔22で液化された後、液化された冷媒は液配管24を流下して蒸発器20X、20Yに自然に送られる。これにより、冷媒の自然循環が行われる。
【0049】
循環する冷媒としては、フロン、あるいは代替フロンとしてのHFC(ハイドロフロロカーボン)等を使用することができる。また、大気圧よりも低い圧力で使用するならば、水を使用することも可能である。
【0050】
そして、蒸発器20X、20Yに供給される冷媒液体の供給量を制御することにより、サーバ14から排気された高温空気を蒸発器20X、20Yで冷却した後の空気温度(サーバ14から蒸発器20X、20Yを介してサーバルーム12X,12Yに排気される排気空気の温度)を冷却し、サーバルーム12X,12Yをサーバ14に適した温度環境に維持する。すなわち、各蒸発器20X、20Yからサーバルーム12X,12Yに排気される排気空気21の出口近傍には、温度センサ23X,23Yが設けられると共に、液配管24の分岐管24X、24Yには、冷媒液体の流量を調整する流量調整バルブ25X,25Yが設けられる。そして、温度センサ23X,23Yで測定された測定温度はコントローラ17に入力され、コントローラ17は測定温度に基づいて流量調整バルブ25X,25Yの開度をそれぞれ個別に制御する。これにより、上層階と下層階の高さの異なる蒸発器20X、20Yに対して排気空気温度が同じになるための適切な冷媒流量を供給することができる。この結果、サーバ14から蒸発器20X、20Yを介してサーバルーム12X,12Yに排気される排気温度をサーバ14の運転に適した温度環境に調整することができる。
【0051】
次に、冷却塔22について説明する。
【0052】
図1に示すように、冷却塔22は、冷却塔本体(ケーシング)30が横型に配設され、冷却塔本体30の一端側に外気を取り込む取込口30Aが形成され、他端側に外気の排気口30Bが形成される。冷却塔本体30内には熱交換コイル28が設けられ、熱交換コイル28の入口が蒸発器20X,20Yから戻る冷媒ガスが流れるガス配管26に接続し、熱交換コイル28の出口が蒸発器20X,20Yに供給する冷媒液体が流れる液配管24に接続する。
【0053】
また、熱交換コイル28の取込口30A側には散水機34が設けられると共に、散水機34の更に取込口30A側には送風ファン36が設けられる。そして、送風ファン36によって冷却塔本体30の取込口30Aから取り込まれた取込み外気Xを熱交換コイル28に送風すると共に、散水機34から熱交換コイル28に散水する。これにより、熱交換コイル28を流れる冷媒ガスが外気や散水により冷却されて凝縮し、冷媒液体に液化される。一方、冷却塔本体30内に取り込まれた取込み外気Xは、熱交換コイル28を流れる冷媒ガスから熱を奪って温度が上昇し、排気口30Bから排気外気Yとして排出される。
【0054】
この冷媒自然循環方式の冷却システムを,データセンタのサーバ冷却に適用する場合には,サーバ14の排気を冷却する蒸発器20X・20Yの出口空気温度は一般的なサーバ室の設定温度22℃〜28℃に設定される場合が多く,蒸発器20X・20Y内部の冷媒蒸発温度は18℃〜24℃程度が必要となる。
【0055】
冷媒自然循環方式では,蒸発器20X・20Yの温度に対し,凝縮器である冷却塔22内部の熱交換コイル28の温度が2〜6℃程度低温である必要があり,凝縮器である熱交換コイル28内部の冷媒凝縮温度は12℃〜18℃程度が必要となる。
【0056】
一方,この冷却塔22では,冬季および中間期の低温外気を用い,さらに低温外気に散水することにより,低温の外気を散水の気化熱でより低温の外気とした上で,冷却塔22内部の熱交換コイル28に通風して冷媒を冷却する。ここで,熱交換コイル28で要求される冷媒凝縮温度より低温の外気であれば,冷水を製造する熱源設備を用いずに冷媒を冷却することが可能となる。一般的な設計では,冷媒凝縮温度は12℃〜18℃程度で,熱交換コイルでの熱交換効率も考慮すれば,外気温度が15℃以下であれば外気のみで十分冷却が可能となる。
【0057】
また、冷却塔22には、熱交換コイル28出口の冷媒液体の温度を所定値に一定に維持するための制御機構42が設けられる。
【0058】
制御機構42は、熱交換コイル28出口における冷媒液体の温度を測定する冷媒液体温度センサ44と、送風ファン36の回転数を変えることにより、送風ファン36から熱交換コイル28に送風する送風量を調整する送風量調整手段36Aと、冷媒液体温度センサ44の測定温度に基づいて送風量調整手段36Aを制御するコントローラ46とで構成される。なお、コントローラ46は、コントローラ17を兼用してもよく、図1のように、冷却塔22のためのコントローラ46を別途設けてもよい。本実施の形態では、別途設けた場合で説明する。
【0059】
次に、上記のごとく構成された電子機器の冷却システム10の作用について説明する。
【0060】
蒸発器20X,20Yで冷媒液体が気化することにより、サーバ14からの高温な排熱
空気を冷却する。一方、冷却塔22では蒸発器20X,20Yからの冷媒ガスを冷却して凝縮することにより液化し、液化した冷媒液体が重力により蒸発器20X,20Yに流下する。これにより、冷媒の自然循環が形成される。そして、コントローラ17は、温度センサ23X,23Yで測定される空気温度、即ちサーバ14からの排熱空気を蒸発器20X,20Yで冷却した後の空気温度をモニタリングし、空気温度がサーバ14の動作環境に適した温度になるように流量調整バルブ25X,25Yを制御して液配管を流れる冷媒ガスの流量を調整する。このバルブ制御によって、蒸発器20X,20Yで冷却した後の空気温度は適切に制御される。
【0061】
しかし、バルブ制御は液配管の抵抗を調整する操作であるため、蒸発器20X,20Y内部の蒸発圧力が変動する。この蒸発圧力の変動により、冷媒の自然循環が不安定になると共に、必要以上に蒸発温度の低下を招いて蒸発器20X,20Y出口の冷媒ガス温度の大幅な低下を生じる問題がある。また、蒸発温度の低下にともない蒸発器20X,20Yの表面に結露が発生し、精密機器であるサーバ14への悪影響が懸念される。
【0062】
そこで、本発明では、蒸発器20X,20Yに供給する冷媒液体の流量を流量調整バルブ25X,25Yでバルブ制御しても、冷却塔22での冷媒ガスの凝縮温度が変動しないようにした。
【0063】
即ち、コントローラ46は、熱交換コイル28出口の冷媒液体温度センサ44で測定された凝縮温度が所定温度に対して変動しているかをモニタリングする。ここで、所定温度とは、例えば冷媒が安定に自然循環するために必要な凝縮温度とすることができる。
【0064】
そして、測定温度が所定温度に対して変動している場合、コントローラ46は、冷却塔22の送風量調整手段36Aを制御して送風ファン36の回転数を変え、冷媒液体温度センサ44の測定温度が所定温度になるように熱交換コイル28を冷却する送風量を調整する。
【0065】
このように、蒸発器20X,20Y側でのバルブ制御に並行して、冷却塔22側の凝縮温度が変動しないように制御することで、蒸発器20X,20Y側の蒸発圧力の変動が抑制される。即ち、冷却塔22側の温度変動がなくなることで、冷媒の自然循環における高圧力側の圧力を安定に維持することができ、冷媒の自然循環を安定化させることができる。
【0066】
これにより、冷媒自然循環方式の冷却システムにおける蒸発器20X,20Yの冷媒流量をバルブ制御しても、冷媒の自然循環を安定に維持することができると共に蒸発器表面の結露発生を防止できる。
【0067】
なお、冷媒液体温度センサ44の測定温度が所定温度に対して何度変動したら、コントローラ46が制御駆動するかは、適宜設定することができるが、例えば変動温度を設定温度±1℃以内とすることが好ましい。以下に示す本発明の態様も同様である。
【0068】
[本発明の第2の実施の形態]
図2は、電子機器の冷却システム10の第2の実施の形態の全体構成を示す概念図であり、冷媒ガスを凝縮する装置として、循環ダクト型冷却塔を設けた場合である。
【0069】
なお、第1の実施の形態と共通する部分には同符号を付すと共に、説明は省略する。
【0070】
図2及び図3に示すように、冷却塔本体30の取込口30A側の側面に連結孔30Cが開口されると共に、排気口30Bの一部と連結孔30Cとが循環ダクト38によって連結される。これにより、排気口30Bから排気される温度上昇した排気外気Yの一部が循環ダクト38を通って取込口30A近傍に循環されるので、排気外気Yと取込み外気Xとが混合される。この結果、送風ファン36によって、熱交換コイル28に送風される送風外気Zの外気温度が上昇する。
【0071】
この場合、蒸発器20X,20Yから冷却塔22に戻るガス配管26は、循環ダクト38の側壁を貫通し、循環ダクト38内を通って熱交換コイル28の入口に連結されることが好ましい。これにより、ガス配管26の一部が循環ダクト38内に収納されるので、循環ダクト38を流れる排気外気Yと、ガス配管26を流れる冷媒ガスとの間で熱交換が効率的に行われる。したがって、排気外気Yが熱交換コイル28から奪う熱量を多くできるので、排気口30Bから排気される排気外気Yよりも高い温度の排気外気Yを取込み外気Xに混合することができる。
【0072】
また、循環ダクト38の途中にはダンパー装置40が設けられ、ダンパー装置40の開度を調節(開度ゼロも含む)することにより、取込み外気Xに混合される排気外気Yの混合量(混合量ゼロも含む)が調整される。
【0073】
更に、冷却塔22には、熱交換コイル28で凝縮される冷媒ガスの凝縮温度が所定温度になるように、ダンパー装置40により循環ダクト38を流れる排気外気Yの風量を制御するコントローラ46が設けられる。ここで、所定温度とは、例えば、本発明の冷却システムにおいて、蒸発器20X,20Yと冷却塔22との間を冷媒が安定して循環するのに必要な凝縮温度とすることができる。
【0074】
そして、コントローラ46は、熱交換コイル28出口に設けられた冷媒液体温度センサ44からの測定温度に基づいて、冷媒液体温度センサ44の測定温度が所定温度になるようにダンパー装置40の開度を制御する。
【0075】
上記の如く構成された本発明の第2の実施の形態の作用について説明する。
【0076】
なお、上述したように、取込み外気X、排気外気Y、送風外気Zの3種類の外気が登場するが、以下のように使い分けることにする。すなわち、取込み外気Xは、取込口30Aから取り込まれたままの外気を言う。送風外気Zは、送風ファン36で熱交換コイル28に送風される外気を言い、取込み外気Xのみと、取込み外気Xと排気外気Yとの混合された外気との両方を含む。排気外気Yとは、送風外気Zが熱交換コイル28に接触して熱交換した後の温度上昇した外気を言う。
【0077】
冷却システム10の運転開始前は、ダンパー装置40の開度をゼロ(閉成状態)の状態にしておき、この状態で運転を開始する。すなわち、ガス配管26によって蒸発器20X,20Yから冷却塔22に戻る冷媒ガスは、冷却塔22内の熱交換コイル28を流れつつ、送風ファン36によって取込口30Aから取り込まれた取込み外気Xと散水機34からの散水によって冷却されて凝縮する。これにより、冷媒ガスは液化して冷媒液体となり、液配管24を流れて蒸発器20X,20Yに供給される。一方、熱交換コイル28に接触した送風外気Zは、冷媒ガスから熱を奪って温度上昇し、排気外気Yとなって排気口30Bから排気される。
【0078】
また、熱交換コイル28で液化した冷媒液体は、熱交換コイル28出口で冷媒液体温度センサ44により測定され、測定温度がコントローラ46に逐次送信される。コントローラ46は、冷媒液体の測定温度が所定温度よりも低い場合には、ダンパー装置40を開いて、温度上昇した排気外気Yの一部を循環ダクト38を介して取込口30A近傍に循環して取込み外気Xに混合すると共に、ダンパー装置40の開度制御により、冷媒液体温度セ
ンサ44により測定される測定温度が所定温度になるように、循環ダクト38を流れる排気外気Yの風量を制御する。
【0079】
そして、冷媒液体温度センサ44の測定温度が所定温度に対して変動している場合、コントローラ46は、冷却塔22に形成された循環ダクト38のダンパー装置40を制御して、冷媒液体温度センサ44の測定温度が所定温度になるように熱交換コイル28に送風する送風外気の温度を調整する。
【0080】
このように、蒸発器20X,20Y側でのバルブ制御に並行して、冷却塔22側の凝縮温度が変動しないように制御することで、蒸発器20X,20Y側の蒸発圧力の変動が抑制される。即ち、循環ダクト型冷却塔22側の温度変動がなくなることで、冷媒の自然循環における高圧力側の圧力を安定に維持することができ、冷媒の自然循環を安定化させることができる。
【0081】
これにより、冷媒自然循環方式の冷却システムにおける蒸発器20X,20Yの冷媒流量をバルブ制御しても、冷媒の自然循環を安定に維持することができると共に蒸発器表面の結露発生を防止できる。
【0082】
[本発明の第3の実施の形態]
図4は、電子機器の冷却システム10の第3の実施の形態の全体構成を示す概念図であり、冷媒ガスを凝縮する装置として第1及び第2の実施の形態における冷却塔22を冷水型凝縮器48に代えた場合である。
【0083】
なお、第1及び第2の実施の形態と共通する部分には同符号を付すと共に、説明は省略する。
【0084】
図4に示すように、冷水型凝縮器本体49(ケーシング)内には、ガス配管26及び液配管24に連結される熱交換コイル28と、図示しない冷水供給装置に連結された冷水供給コイル50とが設けられる。そして、熱交換コイル28を流れる冷媒ガスと冷水供給コイル50を流れる冷水とが熱交換することにより、冷媒ガスが冷却されて凝縮し、冷媒液体に液化する。
【0085】
この冷媒自然循環方式の冷却システムを,データセンタのサーバ冷却に適用する場合には,サーバ14の排気を冷却する蒸発器20X・20Yの出口空気温度は一般的なサーバ室の設定温度22℃〜28℃に設定される場合が多く,蒸発器20X・20Y内部の冷媒蒸発温度は18℃〜24℃程度が必要となる。
【0086】
冷媒自然循環方式では,蒸発器20X・20Yの温度に対し,凝縮器である冷却塔22内部の熱交換コイル28の温度が2〜6℃程度低温である必要があり,凝縮器である熱交換コイル28内部の冷媒凝縮温度は12℃〜18℃程度が必要となる。
【0087】
一方,この冷水型凝縮器本体49では,通常冷水を製造する熱源設備で7℃〜12℃程度の冷水を製造して冷水供給コイル50内部に流通させることで冷媒を凝縮している。ここで,冷水供給コイル50内部に流通させる冷水に,冬期および中間期の低温外気を用いて冷水を製造するいわゆるフリークーリングシステムにより製造した冷水を用いることで,熱源設備の運転が不要な省エネルギー運転が実現可能となる。この場合,冷媒の凝縮に必要な温度の冷水を効率よく製造できる外気温度は一般的な設計において10℃以下である。
【0088】
また、熱交換コイル28出口には、冷水型凝縮器48で凝縮された冷媒の凝縮温度を測定する冷媒液体温度センサ44が設けられると共に、冷水供給コイル50の出口には冷水供給コイル50を流れる冷水の流量を調整する冷水量調整バルブ52が設けられる。
【0089】
冷媒液体温度センサ44で測定された冷媒温度はコントローラ46に逐次に入力され、冷媒温度が所定温度に対して変動していないかがモニタリングされる。更に、コントローラ46は、冷媒液体温度センサ44の測定温度が、蒸発器20X,20Y側のバルブ制御に起因する蒸発器20X,20Yの蒸発温度変動に連動して変動せずに所定温度に維持されるように、冷水型凝縮器48に供給する冷水流量を冷水量調整バルブ52によって制御する。
【0090】
これにより、本発明の第3の実施の形態の場合も、冷媒自然循環方式の冷却システムにおける蒸発器20X,20Yの冷媒流量をバルブ制御しても、冷媒の自然循環を安定に維持することができると共に蒸発器表面の結露発生を防止できる。
【0091】
なお、第1の実施の形態から第3の実施の形態では、冷却塔22(循環ダクト型も含む)又は冷水型凝縮器48の熱交換コイル28出口に温度センサを配置したが、圧力センサ(図示せず)を配置し、コントローラ46は、圧力センサの測定圧力が、蒸発器20X,
20Y側のバルブ制御に起因する蒸発器20X,20Yの蒸発温度変動に連動して変動せずに所定圧力に維持されるように制御するようにしてもよい。
【0092】
ここで、所定圧力とは、例えば冷媒が安定に自然循環するために必要な凝縮圧力とすることができる。
【符号の説明】
【0093】
10…電子機器の冷却システム、12X、12Y…サーバルーム、13…床面、14…サーバ、15…冷却装置、17…コントローラ、18X、18Y…床下チャンバ、20X、20Y…蒸発器、22…凝縮器、23X,23Y…温度センサ、24…液配管、24X、24Y…分岐管、25X、25Y…流量調整バルブ、26…ガス配管、26X、26Y…分岐管、28…熱交換コイル、30…冷却塔本体、32…連結手段、34…散水機、36…送風ファン、36A…送風量調整手段、38…循環ダクト、40…ダンパー装置、42…制御機構、44…冷媒液体温度センサ、46…コントローラ、48…冷水型凝縮器、50…冷水供給コイル、52…冷水量調整バルブ、X…取込み外気、Y…排気外気、Z…送風外気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器からの排熱空気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該排熱空気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に配置され、前記気化された冷媒を液化させる冷却塔又は凝縮器との間に、前記冷媒を自然循環させると共に、前記蒸発器で熱交換されて冷却された後の空気温度が前記電子機器の動作環境に適した温度になるように前記蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御する電子機器の冷却方法において、
前記蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御しても、前記冷却塔又は凝縮器での冷媒ガスの凝縮温度又は凝縮圧力が変動しないようにしたことを特徴とする電子機器の冷却方法。
【請求項2】
電子機器からの排熱空気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該排熱空気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に配置され、前記気化された冷媒を液化させる冷却塔との間に、前記冷媒を自然循環させると共に、前記蒸発器で熱交換されて冷却された後の空気温度が前記電子機器の動作環境に適した温度になるように前記蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御する電子機器の冷却システムにおいて、
前記冷却塔は、
外気の取込口と排気口とが形成された冷却塔本体と、
前記冷却塔本体内に設けられ、入口が前記蒸発器から戻る冷媒ガスが流れるガス配管に接続し、出口が前記蒸発器に供給する冷媒液体が流れる液配管に接続する熱交換コイルと、前記熱交換コイルに散水する散水機と、
前記取込口から外気を取り込んで前記熱交換コイルに送風すると共に前記排気口から排気させる送風機と、
前記送風機の送風量を調整する送風量調整手段と、
前記熱交換コイル出口の冷媒液体温度を測定する冷媒液体温度センサと、
前記冷媒液体温度センサの測定温度に基づいて前記送風量調整手段を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記冷媒液体温度センサの測定温度が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定温度に維持されるように、前記送風機の送風量を前記送風量調整手段によって制御することを特徴とする電子機器の冷却システム。
【請求項3】
前記冷媒液体温度センサを冷媒液体圧力センサに代えると共に、前記コントローラは、前記冷媒液体圧力センサの測定圧力が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定圧力に維持されるように、前記送風機の送風量を前記送風量調整手段によって制御することを特徴とする請求項2の電子機器の冷却システム。
【請求項4】
電子機器からの排熱空気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該排熱空気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に配置され、前記気化された冷媒を液化させる冷却塔との間に、前記冷媒を自然循環させると共に、前記蒸発器で熱交換されて冷却された後の空気温度が前記電子機器の動作環境に適した温度になるように前記蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御する電子機器の冷却システムにおいて、
前記冷却塔は、
外気の取込口と排気口とが形成された冷却塔本体と、
前記冷却塔本体内に設けられ、入口が前記蒸発器から戻る冷媒ガスが流れるガス配管に接続し、出口が前記蒸発器に供給する冷媒液体が流れる液配管に接続する熱交換コイルと、前記熱交換コイルに散水する散水機と、
前記取込口から外気を取り込んで前記熱交換コイルに送風すると共に前記排気口から排気させる送風機と、
前記熱交換コイル出口の冷媒液体温度を測定する冷媒液体温度センサと、
前記排気口から排気される排気外気の一部を前記取込口近傍に戻して前記取込口からの取込み外気と混合させる循環ダクトと、
前記循環ダクトを流れる排気外気の風量を調節する循環風量調節手段と、
前記冷媒液体温度センサの測定温度に基づいて前記循環風量調整手段を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記冷媒液体温度センサの測定温度が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定温度に維持されるように、前記循環ダクトを流れる排気外気の循環風量を前記循環風量調整手段によって制御することを特徴とする電子機器の冷却システム。
【請求項5】
前記冷媒液体温度センサを冷媒液体圧力センサに代えると共に、前記コントローラは、前記冷媒液体圧力センサの測定圧力が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定圧力に維持されるように、前記循環ダクトを流れる排気外気の循環風量を前記循環風量調整手段によって制御することを特徴とする請求項4の電子機器の冷却システム。
【請求項6】
電子機器からの排熱空気との熱交換によって冷媒を気化させると共に該排熱空気を冷却する蒸発器と、前記蒸発器よりも高所に配置され、前記気化された冷媒を液化させる冷水型凝縮器との間に、前記冷媒を自然循環させると共に、前記蒸発器で熱交換されて冷却された後の空気温度が前記電子機器の動作環境に適した温度になるように前記蒸発器に供給する冷媒液体の流量をバルブ制御する電子機器の冷却システムにおいて、
前記冷水型凝縮器は、
入口が前記蒸発器から戻る冷媒ガスが流れるガス配管に接続され、出口が前記蒸発器に供給する冷媒液体が流れる液配管に接続されると共に、前記冷水型凝縮器に冷水供給配管を介して供給される冷水によって前記冷媒ガスを前記冷媒液体に凝縮するための冷熱を得る凝縮器であって、
前記冷水供給配管に設けられ、前記冷水型凝縮器に供給する冷水流量を調整する冷水量調整手段と、
前記冷水型凝縮器出口の冷媒液体温度を測定する冷媒液体温度センサと、
前記冷媒液体温度センサの測定温度に基づいて前記冷水量調整手段を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記冷媒液体温度センサの測定温度が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定温度に維持されるように、前記冷水型凝縮器に供給する冷水流量を前記冷水量調整手段によって制御することを特徴とする電子機器の冷却システム。
【請求項7】
前記冷媒液体温度センサを冷媒液体圧力センサに代えると共に、前記コントローラは、前記冷媒液体圧力センサの測定圧力が、前記蒸発器側のバルブ制御に起因する前記蒸発器の蒸発温度変動に連動して変動せずに所定圧力に維持されるように、前記冷水供給流路の冷水流量を前記冷水量調整手段によって制御することを特徴とする請求項6の電子機器の冷却システム。
【請求項8】
請求項6において、外気温が10℃以下の場合には、前記冷水型凝縮器に供給する水は、外気を用いて冷却されることを特徴とする電子機器の冷却システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−237887(P2011−237887A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106788(P2010−106788)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】