説明

電子機器及びその動作制御方法

【課題】 開閉状態の検出機能を備える電子機器の軽量化、小型化を実現する。
【解決手段】 第1及び第2の筐体100A、100Bと、第1及び第2の筐体100A、100Bを相互に回動可能に連結するヒンジ部100Cと、を備える電子機器100である。第1の筐体100Aの内部からヒンジ部100Cの内部を介して第2の筐体100Bの内部に亘って配設され、第1の筐体100Aの内部と第2の筐体100Bの内部とを相互に電気的に接続する可撓性基板3を備える。可撓性基板3に伴って屈曲するよう該可撓性基板3に設けられて一定の電流が流され、第1及び第2の筐体100A、100Bの相対角度に応じた強さの磁界を発生する磁界発生用通電部材6を備える。磁界発生用通電部材6から発生される磁界の強さを検出する磁界強度検出手段8を備える。磁界強度検出手段8により検出された磁界の強さに応じて制御信号を出力する制御信号出力手段9を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及びその動作制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機或いはその他の折り畳み式移動通信装置には、開閉動作に連動して作動する機能を有するタイプのものがある。
【0003】
そのような機能の具体例としては、例えば、閉状態ではディスプレイをOFFする一方で閉状態から開状態に移行したときにディスプレイをONする機能や、開閉動作に受話、終話動作を連動させた機能が挙げられる。
【0004】
また、電波の送受信を行うアンテナの特性は装置の形状に大きく左右される。このため、開閉動作にアンテナのマッチング回路の切替動作を連動させることにより、通信品質を向上する技術もある。
【0005】
このように開閉動作に連動する機能を実現させるためには、装置の開閉状況を検出する回路を備える必要がある。
【0006】
このような従来の技術としては、例えば、特許文献1、2に開示された技術がある。
【0007】
特許文献1には、スイッチにより開閉状態を検出する機構を備える折り畳み式装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、磁石と、この磁石から発生される磁界の強さを検出するホールICとにより開閉状態を検出する折り畳み式携帯電話機が開示されている。
【特許文献1】特開2003−158573号公報
【特許文献2】特開2004−297453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、折り畳み式移動通信装置は軽量化、小型化が進んでいるが、特許文献1、2の技術では磁石及びホールIC、或いは、スイッチなどの機構部品を備える必要があり、サイズや重量の制約には限界があるため、軽量化、小型化が困難であるという問題がある。
【0010】
そこで、新たな部品の追加は最小限に抑えて装置の開閉検出が可能になる技術が求められている。
【0011】
また、データ通信やTV電話での使用時には全開状態(例えば、160°程度)で手に持つのではなく、ある程度の開角度(例えば、90°程度)に設定して机などの上に置いて使用することが考えられるため、全開状態と閉状態との中間の角度を検出する技術も求められている。
【0012】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、第1及び第2の筐体と、前記第1及び第2の筐体を相互に回動可能に連結するヒンジ部と、を備える電子機器の開閉状態などを検出するに際し、軽量化、小型化を好適に実現することが可能であり、全開状態と閉状態との中間の角度の検出も容易に行うことが可能な電子機器及びその動作制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の電子機器は、第1及び第2の筐体と、前記第1及び第2の筐体を相互に回動可能に連結するヒンジ部と、前記第1の筐体の内部から前記ヒンジ部の内部を介して前記第2の筐体の内部に亘って配設され、前記第1の筐体の内部と前記第2の筐体の内部とを相互に電気的に接続する可撓性基板と、前記可撓性基板に伴って屈曲するよう該可撓性基板に設けられて一定の電流が流され、前記第1及び第2の筐体の相対角度に応じた強さの磁界を発生する磁界発生用通電部材と、前記磁界発生用通電部材から発生される磁界の強さを検出する磁界強度検出手段と、前記磁界強度検出手段により検出された磁界の強さに応じて制御信号を出力する制御信号出力手段と、を備えることを特徴としている。
【0014】
本発明の電子機器においては、前記磁界強度検出手段は、磁界発生用通電部材から発生される磁界の強さを検出し、その検出値に応じた電圧を出力するホールICであり、前記制御信号出力手段は、前記ホールICより出力された電圧の値に応じて前記制御信号を出力することが好ましい。
【0015】
本発明の電子機器においては、前記磁界発生用通電部材は、前記第1及び第2の筐体のうちの一方の筐体内に配設された電源から他方の筐体内へと電力を供給する電気配線であることが好ましい。
【0016】
本発明の電子機器においては、前記可撓性基板は、前記第1の筐体内に配設された第1の回路基板と前記第2の筐体内に配設された第2の回路基板とを相互に電気的に接続するものであることが好ましい。
【0017】
本発明の電子機器においては、前記可撓性基板は、前記ヒンジ部内において巻回された巻回部を備え、前記磁界発生用通電部材は、前記可撓性基板の巻回部における巻回方向に沿って配設されていることが好ましい。
【0018】
本発明の電子機器においては、表示装置と、前記制御信号出力手段からの前記制御信号に従って前記表示装置の表示制御を行う表示制御手段と、を備えることが好ましい。
【0019】
本発明の電子機器においては、無線通信用の電波を送受信するアンテナと、前記制御信号出力手段からの前記制御信号に従って前記アンテナのマッチング定数を複数の値のうちの何れかの値に選択的に切り替えるアンテナマッチング切替回路と、を備えることが好ましい。
【0020】
本発明の電子機器においては、前記制御信号出力手段は、前記第1及び第2の筐体の少なくとも3段階の相対角度に応じた前記制御信号をそれぞれ出力することが好ましい。
【0021】
本発明の電子機器においては、前記制御信号に応じてどのような動作を行うかを使用者が任意に設定可能であることが好ましい。
【0022】
本発明の電子機器においては、前記第1及び第2の筐体を相互に折り畳み可能であることが好ましい。
【0023】
本発明の電子機器は、無線通信機能を備える移動通信端末装置であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の電子機器の動作制御方法は、第1及び第2の筐体と、前記第1及び第2の筐体を相互に回動可能に連結するヒンジ部と、前記第1の筐体の内部から前記ヒンジ部の内部を介して前記第2の筐体の内部に亘って配設され、前記第1の筐体の内部と前記第2の筐体の内部とを相互に電気的に接続する可撓性基板と、を備える電子機器の動作制御を行う方法において、前記可撓性基板に伴って屈曲するよう該可撓性基板に設けられた磁界発生用通電部材に一定の電流を流し、前記第1及び第2の筐体の相対角度に応じた強さの磁界を前記磁界発生用通電部材から発生させる第1の過程と、前記磁界発生用通電部材から発生される磁界の強さを検出する第2の過程と、前記第2の過程により検出された磁界の強さに応じて制御信号を出力する第3の過程と、前記制御信号に従った動作を行う第4の過程と、を備えることを特徴としている。
【0025】
本発明の電子機器の動作制御方法においては、前記第2の過程では、前記磁界発生用通電部材から発生される磁界の強さをホールICにより検出し、その検出値に応じた電圧を前記ホールICから出力し、前記第3の過程では、前記ホールICより出力された電圧の値に応じて前記制御信号を出力することが好ましい。
【0026】
本発明の電子機器の動作制御方法においては、前記電子機器は表示装置を備え、前記第4の過程では、前記表示装置の表示制御を前記制御信号に従って行うことが好ましい。
【0027】
本発明の電子機器の動作制御方法においては、前記電子機器は、無線通信用の電波を送受信するアンテナと、前記アンテナのマッチング定数を複数の値のうちの何れかの値に選択的に切り替えるアンテナマッチング切替回路と、を備え、前記第4の過程では、前記マッチング定数を前記制御信号に従って切り替えることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0029】
第一の効果は電子機器の小型化及び軽量化が図れる点である。
【0030】
その理由は、従来は開閉検出には機構的なスイッチ部品を組み込む方法や磁石とホールICを利用し検知する方法があるが、本発明ではホールICなどの磁界強度検出手段を1個備えるだけで実現可能であり、磁石或いは機構的なスイッチ部品は不要であるので、従来よりも小型化及び軽量化できるためである。
【0031】
第二の効果は、電子機器の状態を開、閉以外にも任意の角度で検出可能となる点である。
【0032】
磁石とホールICを使用した開閉検出の場合は、磁石をホールICから大きく離すことにより検知を行う為、磁界の有り無しの2つの状態しか検出を行うことができなかった。
【0033】
対して、本発明では磁界発生源である可撓性基板の近傍にホールICなどの磁界強度検出手段を配置することにより磁界の変化をより詳細に検出することができるので、第二の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明する。
【0035】
本実施形態では、本発明に係る電子機器の好適な一例としての折り畳み式携帯電話機について説明する。
【0036】
図1は本実施形態に係る折り畳み式携帯電話機100を開いた(全開した)状態を示す斜視図、図2は折り畳み式携帯電話機100を開いた(全開した)状態を示す側断面図、図3は折り畳み式携帯電話機100の主要なブロック構成を示すブロック図である。
【0037】
図1及び図2に示すように、折り畳み式携帯電話機100は、第1及び第2の筐体100A、100Bと、これら第1及び第2の筐体100A、100Bを相互に回動自在に連結したヒンジ部100Cと、を備えて構成されている。
【0038】
ヒンジ部100Cの回動軸を中心として第1の筐体100Aと第2の筐体100Bとを相対的に回動させることにより、折り畳み式携帯電話機100を開いたり閉じたり(折り畳んだり)することができるようになっている。
【0039】
なお、折り畳み式携帯電話機100を全開した状態では、第1の筐体100Aと第2の筐体100Bとの角度が90°よりも大きい(例えば、160°程度)。
【0040】
第1の筐体100Aにはディスプレイ(表示装置)4が設けられ、該ディスプレイ4の表示画面4Aは、第1の筐体100Aにおいて、例えば、折り畳み式携帯電話機100を折り畳んだ際に内側となる面に配設されている。
【0041】
他方、第2の筐体100Bにおいて、例えば、折り畳み式携帯電話機100を折り畳んだ際に内側となる面には、複数の操作キーなどを備えて構成された操作部5が配設されている。
【0042】
また、第2の筐体100Bには、例えば、無線通信用の電波を送受信するアンテナ11(図3)が設けられている。
【0043】
図2に示すように、第1の筐体100Aの内部には第1の回路基板1が設けられ、第2の筐体100Bの内部には第2の回路基板2が設けられている。
【0044】
また、第1の回路基板1と第2の回路基板2とを相互に電気的に接続するフレキシブル基板(可撓性基板)3が、第1の筐体100Aの内部からヒンジ部100Cの内部を介して第2の筐体100Bの内部に亘って配設されている。
【0045】
このフレキシブル基板3は、可撓性のものであり、図2に示すように、ヒンジ部100C内において、例えば1周だけ螺旋状に巻回された巻回部3Aを有している。
【0046】
この巻回部3Aは、第1及び第2の筐体100A、100Bを折り畳んだり開いたりする際に生じる経路差を吸収するためのものである。
【0047】
フレキシブル基板3内には、該フレキシブル基板3の屈曲に応じた磁界を発生する磁界発生用配線(磁界発生用通電部材、電気配線)6が設けられている。
【0048】
この磁界発生用配線6は、例えば、フレキシブル基板3の巻回部3Aにおける巻回方向(周方向)に沿って配設されている。
【0049】
ここで、例えば、第2の筐体100B内には、折り畳み式携帯電話機100の電源7が設けられており、磁界発生用配線6は、例えば、電源7から第1の筐体100A内の第1の回路基板1上に設けられたIC15に対して電力を供給するためのものである。
【0050】
IC15の消費電力は、常時ほぼ一定となっており、折り畳み式携帯電話機100の電源がオン状態の場合には、磁界発生用配線6には、常時ほぼ一定の電流が流れる。また、この電流に基づき、磁界発生用配線6の周囲には磁界が発生する。
【0051】
図4乃至図6は、折り畳み式携帯電話機100の開角度に応じたフレキシブル基板3の巻回部3Aの内径を示す図であり、このうち図4は折り畳み式携帯電話機100を閉じた状態を、図5は折り畳み式携帯電話機100を90°開いた状態を、図6は折り畳み式携帯電話機100を全開した状態を、それぞれ示す。
【0052】
図4乃至図6に示すように、フレキシブル基板3の巻回部3Aの内径rは折り畳み式携帯電話機100の開閉状態に応じて変化し、閉状態(図4)で最も小さく、全開状態(図6)で最も大きくなる。
【0053】
磁界発生用配線6は、フレキシブル基板3の屈曲に伴って屈曲するため、磁界発生用配線6が発生する磁界の強さは、折り畳み式携帯電話機100の開閉状態に応じて変化する。
【0054】
また、図3に示すように、例えば、第2の制御基板2には、フレキシブル基板3の屈曲に応じて磁界発生用配線6より発生される磁界の変化を検出し、その検出値に応じた電圧を出力するホールIC8と、このホールIC8より出力される電圧を基準値と比較し、その比較結果に応じた制御信号を出力する電圧比較回路(制御信号出力手段)9と、この電圧比較回路9による比較に使用される基準値を記憶保持した基準値メモリ部10と、電圧比較回路9からの制御信号に従ってアンテナ11のマッチング定数を切り替えるアンテナマッチング切替回路12と、電圧比較回路9からの制御信号に従ってディスプレイ4の表示制御を行うディスプレイ表示制御回路(表示制御手段)14と、が設けられている。
【0055】
ホールIC8は、磁界発生用配線6の近傍に配設され、該磁界発生用配線6に電流が流れたときに発生する磁界を検知し、その磁界の強度(磁束密度)に応じた電圧を電圧比較回路9へ出力する。
【0056】
電圧比較回路9は、ホールIC8から入力される電圧と、基準値メモリ部10より取得した基準値と、を比較し、その比較結果に応じて制御信号を出力する。
【0057】
図7は電圧比較回路9とディスプレイ表示制御回路14及びアンテナマッチング切替回路12との接続関係と、アンテナ11のマッチング回路16(アンテナマッチング切替回路12を含む)の詳細と、を示す図である。
【0058】
図7に示すように、電圧比較回路9は、例えば、第1の比較器91と第2の比較器92とを備えている。
【0059】
このうち第1の比較器91は、ホールIC8から入力される電圧を基準値aと比較し、その比較結果に応じた制御信号Xをディスプレイ表示制御回路14並びにアンテナマッチング切替回路12に出力する。
【0060】
また、第2の比較器92は、ホールIC8から入力される電圧を基準値bと比較し、その比較結果に応じた制御信号Yをディスプレイ表示制御回路14並びにアンテナマッチング切替回路12に出力する。
【0061】
これら2つの制御信号X、Yに応じて、ディスプレイ表示制御回路14はディスプレイ4の表示制御を行い、アンテナマッチング切替回路12はマッチング定数の切り替え行う。
【0062】
図7に示すように、アンテナ11のマッチング回路16は、メインマッチング回路17と、アンテナマッチング切替回路14と、を備えて構成されている。
【0063】
このうちメインマッチング回路17は、アンテナ11に一端が接続されたコイルL1と、このコイルL1の他端に一端が接続され他端が接地されたコンデンサC1と、アンテナ11とコイルL1との接続点に一端が接続され他端が接地されたコイルL4と、を備えて構成されている。
【0064】
他方、アンテナマッチング切替回路14は、抵抗R1、R2、ダイオードD1、D2、コンデンサC2、C3、コイルL2、L3を備えて構成されている。
【0065】
抵抗R1の一端には制御信号Xの信号線が接続され、抵抗R1の他端にはダイオードD1のアノードが接続され、ダイオードD1のカソードにはコンデンサC2の一端が接続され、コンデンサC2の他端にはコイルL2の一端が接続され、コイルL2の他端はアンテナ11とコイルL1との接続点に接続されている。
【0066】
同様に、抵抗R2の一端には制御信号Yの信号線が接続され、抵抗R2の他端にはダイオードD2のアノードが接続され、ダイオードD2のカソードにはコンデンサC3の一端が接続され、コンデンサC3の他端にはコイルL3の一端が接続され、コイルL3の他端はアンテナ11とコイルL1との接続点に接続されている。
【0067】
次に、動作を説明する。
【0068】
図8はホールIC8が検出する磁束密度BとホールIC8の出力電圧Vとの関係を示す図である。
【0069】
図8に示すように、第1の筐体100Aと第2の筐体100Bとの角度が大きくなるほど磁界発生用配線6から発生される磁界が強くなり、ホールIC8が検出する磁束密度Bが大きく(高く)なる。
【0070】
また、ホールIC8が検出する磁束密度Bが大きく(高く)なるほど、ホールIC8の出力電圧Vは大きくなる。
【0071】
電圧比較回路9の第1の比較器91は、ホールIC8の出力電圧Vと図8に示す値aとの大小判定を行い、電圧Vがaより大きい場合はL(ロー)、a以下の場合はH(ハイ)を制御信号Xとして出力する。
【0072】
また、第2の比較器92は、ホールIC8の出力電圧Vと図8に示す値b(b>a)との大小判定を行い、電圧Vがbより大きい場合はL(ロー)、a以下の場合はH(ハイ)を制御信号Yとして出力する。
【0073】
よって、電圧比較回路9からの出力は、折り畳み式携帯電話機100が閉状態の場合には制御信号X、Lは共にHとなり、全開状態の場合は制御信号X、Lは共にLとなり、90°開状態の場合は制御信号XはH、制御信号YはLとなり、それぞれディスプレイ表示制御回路14並びにアンテナマッチング切替回路12に出力される。
【0074】
このように、電圧比較回路9は、第1及び第2の筐体100A、100Bの少なくとも3段階の相対角度(例えば、全開、閉、90°開)に応じた組み合わせで制御信号X、Yを出力する。
【0075】
ディスプレイ表示制御回路14は、電圧比較回路9からの制御信号X、Yに従って、例えば、以下の制御を行う。
【0076】
ディスプレイ表示制御回路14は、折り畳み式携帯電話機100が閉状態の場合、すなわち、制御信号X、Yが共にHの場合には、ディスプレイ4の表示を常時オフにさせる制御を行う。
【0077】
また、折り畳み式携帯電話機100が全開状態の場合、すなわち、制御信号X、Yが共にLの場合には、ディスプレイ4の表示をオンにさせる制御を行う。ただし、制御信号X、Yが共にLの場合であっても、キー操作が所定時間の間行われない場合はディスプレイ4の表示をオフにさせる。
【0078】
また、折り畳み式携帯電話機100が90°開状態の場合、すなわち、制御信号XがL、制御信号YがHの場合の動作は、例えば、予めユーザが任意に設定することが可能となっている。つまり、制御信号X、Yに応じて折り畳み式携帯電話機100がどのような動作を行うかをユーザ(使用者)が任意に設定可能となっている。
【0079】
具体的には、例えば、データ通信などの機能を使用する際は90°に開いた状態で机などに載置していてもディスプレイ4の表示を頻繁に確認しない場合が多いので、常時オフとなるように設定することも可能である。但し、その場合にはキー操作や着呼があった時にはディスプレイ4の表示をオンにすることとする。或いは、90°開状態の場合も全開状態と同様の動作となるように設定することも可能とする。
【0080】
また、アンテナマッチング切替回路12は、電圧比較回路9からの制御信号X、Yに従って、折り畳み式携帯電話機100が閉、全開、90°開のそれぞれの状態での最適なマッチング回路となるようにマッチング定数の切替を行う。
【0081】
折り畳み式携帯電話機100は、全開状態で電圧比較回路9からの制御信号X、Yの出力が共にLの場合は、メインマッチング回路17のコイルL1とコンデンサC1によりアンテナ11のマッチングをとる。
【0082】
また、折り畳み式携帯電話機100が閉状態で制御信号X、Yの出力が共にHの場合は、ダイオードD1、D2がオンし、コイルL2、L3とコンデンサC2、C3がアンテナ11に接続されることにより、マッチング定数が最適化される。
【0083】
また、折り畳み式携帯電話機100が90°開状態の場合は制御信号XはH、YはLとなるので、ダイオードD1、D2のうちダイオードD1のみがオンとなり、コイルL2、L3、コンデンサC2、C3のうちコイルL2とコンデンサC2のみがアンテナ11に接続されることにより、やはりマッチング定数が最適化される。
【0084】
このように、制御信号X、YでダイオードD1、D2オン/オフを行い折り畳み式携帯電話機100の開閉状態に応じてアンテナ11のマッチング定数を最適化させる。
【0085】
以上のような実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0086】
第一の効果は折り畳み式携帯電話機100の小型化及び軽量化が図れる点である。
【0087】
その理由は、従来は開閉検出には機構的なスイッチ部品を組み込む方法や磁石とホールICを利用し検知する方法があるが、本実施形態ではホールIC8を1個備えるだけで実現可能であり、磁石或いは機構的なスイッチ部品は不要であるので、従来よりも小型化及び軽量化できるためである。
【0088】
第二の効果は、折り畳み式携帯電話機100の状態を開、閉以外にも任意の角度で検出可能となる点である。
【0089】
磁石とホールICを使用した開閉検出の場合は、磁石をホールICから大きく離すことにより検知を行う為、磁界の有り無しの2つの状態しか検出を行うことが困難であった。また、機構的なスイッチ部品を用いる場合、検出すべき開閉角度の段階数が多くなるほど、小型化、軽量化が困難となるというデメリットがあった。
【0090】
対して、本実施形態では磁界発生源であるフレキシブル基板3の近傍にホールIC8を配置することにより磁界の変化をより詳細に検出することができる。そのため適宜な閾値を設定することにより開閉以外にも例えば90°での検出が可能となる。また、閾値を適宜に変更することによりその他の任意の角度の検出も可能となる。また、検出すべき開閉角度の段階数に関わらず、装置の重量は変化しないというメリットもある。
【0091】
なお、上記の実施形態では、本発明に係る電子機器の好適な一例としての折り畳み式携帯電話機100についてのみ説明したが、本発明は、この例に限らず、第1及び第2の筐体と、第1及び第2の筐体を相互に回動可能に連結するヒンジ部と、を備えるタイプの電子機器全般に適用可能である。
【0092】
また、折り畳み式の電子機器に限らず、第1の筐体と第2の筐体とを所定の角度範囲で相対的に回動可能な電子機器であれば、同様に本発明を適用可能である。
【0093】
また、本発明を移動通信端末装置に適用する場合の好適な一例として、上記では折り畳み式携帯電話機100を例示したが、例えば、PHS(Personal Handy Phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)など、その他の移動通信端末装置にも同様に適用可能である。
【0094】
また、上記の実施形態では、磁界発生用通電部材の好適な一例として、磁界発生用配線6を例示したが、通電により磁界を発生する部材であればその他であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施形態に係る折り畳み式携帯電話機を開いた状態を示す斜視図である。
【図2】図1の折り畳み式携帯電話機を開いた状態を示す側断面図である。
【図3】図1の折り畳み式携帯電話機の主要なブロック構成を示すブロック図である。
【図4】図1の折り畳み式携帯電話機の開角度に応じたフレキシブル基板の巻回部の内径を示す図であり、特に、折り畳み式携帯電話機を閉じた状態を示す。
【図5】図1の折り畳み式携帯電話機の開角度に応じたフレキシブル基板の巻回部の内径を示す図であり、特に、折り畳み式携帯電話機を90°開いた状態を示す。
【図6】図1の折り畳み式携帯電話機の開角度に応じたフレキシブル基板の巻回部の内径を示す図であり、特に、折り畳み式携帯電話機を全開した状態を示す。
【図7】アンテナマッチング切替回路の詳細を示す回路図である。
【図8】磁束密度とホールICの出力電圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
100 折り畳み式携帯電話機(電子機器、移動通信端末装置)
100A 第1の筐体
100B 第2の筐体
100C ヒンジ部
1 第1の回路基板
2 第2の回路基板
3 フレキシブル基板(可撓性基板)
3A 巻回部
4 ディスプレイ(表示装置)
6 磁界発生用配線(磁界発生用通電部材、電気配線)
8 ホールIC(磁界強度検出手段)
9 電圧比較回路(制御信号出力手段)
11 アンテナ
12 アンテナマッチング切替回路
14 ディスプレイ表示制御回路(表示制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の筐体と、
前記第1及び第2の筐体を相互に回動可能に連結するヒンジ部と、
前記第1の筐体の内部から前記ヒンジ部の内部を介して前記第2の筐体の内部に亘って配設され、前記第1の筐体の内部と前記第2の筐体の内部とを相互に電気的に接続する可撓性基板と、
前記可撓性基板に伴って屈曲するよう該可撓性基板に設けられて一定の電流が流され、前記第1及び第2の筐体の相対角度に応じた強さの磁界を発生する磁界発生用通電部材と、
前記磁界発生用通電部材から発生される磁界の強さを検出する磁界強度検出手段と、
前記磁界強度検出手段により検出された磁界の強さに応じて制御信号を出力する制御信号出力手段と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記磁界強度検出手段は、磁界発生用通電部材から発生される磁界の強さを検出し、その検出値に応じた電圧を出力するホールICであり、
前記制御信号出力手段は、前記ホールICより出力された電圧の値に応じて前記制御信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記磁界発生用通電部材は、前記第1及び第2の筐体のうちの一方の筐体内に配設された電源から他方の筐体内へと電力を供給する電気配線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記可撓性基板は、前記第1の筐体内に配設された第1の回路基板と前記第2の筐体内に配設された第2の回路基板とを相互に電気的に接続するものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記可撓性基板は、前記ヒンジ部内において巻回された巻回部を備え、
前記磁界発生用通電部材は、前記可撓性基板の巻回部における巻回方向に沿って配設されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
表示装置と、
前記制御信号出力手段からの前記制御信号に従って前記表示装置の表示制御を行う表示制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
無線通信用の電波を送受信するアンテナと、
前記制御信号出力手段からの前記制御信号に従って前記アンテナのマッチング定数を複数の値のうちの何れかの値に選択的に切り替えるアンテナマッチング切替回路と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御信号出力手段は、前記第1及び第2の筐体の少なくとも3段階の相対角度に応じた前記制御信号をそれぞれ出力することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記制御信号に応じてどのような動作を行うかを使用者が任意に設定可能であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記第1及び第2の筐体を相互に折り畳み可能であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項11】
当該電子機器は、無線通信機能を備える移動通信端末装置であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項12】
第1及び第2の筐体と、前記第1及び第2の筐体を相互に回動可能に連結するヒンジ部と、前記第1の筐体の内部から前記ヒンジ部の内部を介して前記第2の筐体の内部に亘って配設され、前記第1の筐体の内部と前記第2の筐体の内部とを相互に電気的に接続する可撓性基板と、を備える電子機器の動作制御を行う方法において、
前記可撓性基板に伴って屈曲するよう該可撓性基板に設けられた磁界発生用通電部材に一定の電流を流し、前記第1及び第2の筐体の相対角度に応じた強さの磁界を前記磁界発生用通電部材から発生させる第1の過程と、
前記磁界発生用通電部材から発生される磁界の強さを検出する第2の過程と、
前記第2の過程により検出された磁界の強さに応じて制御信号を出力する第3の過程と、
前記制御信号に従った動作を行う第4の過程と、
を備えることを特徴とする電子機器の動作制御方法。
【請求項13】
前記第2の過程では、前記磁界発生用通電部材から発生される磁界の強さをホールICにより検出し、その検出値に応じた電圧を前記ホールICから出力し、
前記第3の過程では、前記ホールICより出力された電圧の値に応じて前記制御信号を出力することを特徴とする請求項12に記載の電子機器の動作制御方法。
【請求項14】
前記電子機器は表示装置を備え、
前記第4の過程では、前記表示装置の表示制御を前記制御信号に従って行うことを特徴とする請求項12又は13に記載の電子機器の動作制御方法。
【請求項15】
前記電子機器は、無線通信用の電波を送受信するアンテナと、前記アンテナのマッチング定数を複数の値のうちの何れかの値に選択的に切り替えるアンテナマッチング切替回路と、を備え、
前記第4の過程では、前記マッチング定数を前記制御信号に従って切り替えることを特徴とする請求項12乃至14の何れか一項に記載の電子機器の動作制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−67506(P2007−67506A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247515(P2005−247515)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】