説明

電子装置、及び電子部品の放熱方法

【課題】電子部品から発生する熱が効率良く放散され、かつ製造コストを抑えることができる電子装置、及び電子部品の冷却方法を提供する。
【解決手段】回路基板に設けられた電子部品4と、この電子部品4に発生する熱を放熱させる放熱部5とを備えた電子装置1であり、放熱部5が、電子部品4に一部を接合させかつその接合面S以外の表面が全て外気に露出された金属製多孔質材6よりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を搭載した電子装置及び電子部品の放熱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子装置では、多機能化及びコンパクト化が進み、筐体内に複数の回路基板や電源などが詰め込まれる傾向にある。そのため、詰め込まれた電子部品で発生する熱により、装置の動作不良や故障、あるいは熱が装置表面に伝わり人に傷害を与えることが問題となっており、冷却装置が設けられた電子装置が使用されている。当該冷却装置として、例えば、演算素子等の電子部品の上面に密着するヒートパイプ、及びこのヒートパイプで運ばれた熱を放散させる放熱フィンからなるものが知られている。同ヒートパイプは、電子部品が接触する加熱部、放熱フィンが設けられる放熱部、及び側壁部からなるコンテナの内部に、作動流体が封入されると共に多孔性の発泡金属が充填されて構成されており、発泡性金属の毛細管圧力により作動流体を放熱部から加熱部に還流させ、放熱フィンから熱を放散させている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−303979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された冷却装置では、ヒートパイプで電子部品の熱を放熱フィンに良好に輸送することはできても、その熱を放散させるのは全て放熱フィンで行われる。
しかし、放熱フィンの放熱面積だけでは、電子部品から発生する熱を効率よく放散させることはできず、熱が蓄熱されることで電子部品の許容上限温度に近くなるまでの温度上昇を招いてしまう。また、上記冷却装置では、電子装置に搭載する構成部材が多くなるため、作業工数が増えて製造コストが高くなるという問題もある。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、電子部品から発生する熱が効率良く放散され、製造コストを抑えることができる電子装置、及び電子部品の冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じた。
すなわち本発明は、回路基板に設けられた電子部品と、この電子部品に接合されて当該電子部品に発生する熱を放熱させる放熱部とを備えた電子装置において、前記放熱部は、前記電子部品に一部を接合させかつその接合面以外の表面が全て外気に露出された金属製多孔質材よりなることを特徴とする。
上記本発明の電子装置によれば、放熱部が電子部品に一部を接合させかつその接合面以外の表面が全て外気に露出された金属製多孔質材よりなるため、電子部品で発生した熱を放熱させるための放熱面積を、従来使用されている放熱フィンに比べて格段に増大させることができる。従って、電子部品で発生する熱を効率よく放散させることができる。また、大量生産に向く材料である金属製多孔質材を接合させるだけで製作でき、材料コストが安くかつ作業工数が少ないので製造コストを抑えることができる。
【0005】
上記本発明において、前記金属製多孔質材は、当該金属製多孔質材に融着された半田、或いは高熱伝導性の樹脂・接着剤を介して前記電子部品に接合されていることが好ましい。この場合、金属製多孔質材の接合面の凹凸が半田或いは高熱伝導性の樹脂・接着剤によって埋められ、電子部品で発生する熱を金属製多孔質材に効率良く伝えることができる。
【0006】
また、上記本発明において、前記金属製多孔質材に、前記電子部品の側方に突出するオーバーハング部が形成されていることが好ましい。
この場合、同じ接合面積であっても、金属製多孔質材による放熱面積をさらに増大させることができため、当該オーバーハング部が形成された金属製多孔質材を、半田或いは高熱伝導性の樹脂・接着剤を介して電子部品に接合すれば、電子部品で発生する熱を金属製多孔質材に効率良く伝え、効率良く放散させることができる。
【0007】
本発明は、回路基板に設けられた電子部品に放熱部材を接合させることにより、当該電子部品から発生する熱を放熱させる電子部品の放熱方法であって、前記電子部品に、金属製多孔質材よりなる放熱部材を当該電子部品との接合面以外の表面が全て外気に露出された状態で接合させることを特徴とする。
上記本発明の電子部品の放熱方法によれば、電子部品に金属製多孔質材よりなる放熱部材を当該電子部品との接合面以外の表面が全て外気に露出された状態で接合させるので、電子部品で発生した熱を放熱させるための放熱面積を、従来使用されている放熱フィンに比べて格段に増大させることができる。従って、電子部品で発生する熱を効率よく放散させることができる。
【発明の効果】
【0008】
上記の通り、本発明によれば、金属製多孔質材を用いることにより電子部品で発生した熱を放熱させるための放熱面積を、従来使用されている放熱フィンに比べて格段に増大させたので、電子部品から発生する熱が効率良く放散され、それと共に大量生産に向く材料である金属製多孔質材を接合させるだけなので製造コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1及び図2は、本発明に係る電子装置の一実施形態を示している。この電子装置1は、筐体2と、筐体2内に設けられた方形状の回路基板3と、回路基板3上に配置されたCPU(半導体素子からなる中央演算処理ユニット)等の電子部品4と、電子部品4から発生する熱を放熱させる放熱部5とを備えている。このうち放熱部5は、回路基板3上に配置された電子部品4の上部に構成されており、電子部品4の温度をその許容上限温度以下に抑えることができる。なお、図2では、一つの電子部品4のみに放熱部5が設けられた例を示している。
【0010】
上記放熱部5は、電子部品4の上面にその一部を接合させた合金製の金属製多孔質材6で構成されている。金属製多孔質材6は、連続空孔による90%の気孔率を備えており、この高い気孔率により、従来用いられてきた放熱フィンよりも格段に大きい放熱面積を有している(図3参照)。以下に、金属製多孔質材6、及び従来の放熱フィンのモデルケースでの放熱面積を示す。
(金属製多孔質材の場合)
10mm×10mmの面上に、高さ10mmの立方体の金属製多孔質材が設けられているケースを、下記の考え方により模擬的に試算すると放熱面積は約37500mm2となる。
厚さ0.01mm、幅・高さ10mmの薄い金属箔に、ギンガムチェック模様に0.5mm角の穴が開いているとし、その隣接間隔が0.04mmとした場合の表面積を算出。
[放熱フィンの場合]
10mm×10mmの面上に、1mm角、高さ10mmの角柱状の放熱フィンが、1mm間隔で合計25本配置されているケースで算出すると、下記式により放熱面積は1025mm2となる。
41mm2(1本の放熱フィンの表面積)×25本=1025mm2
【0011】
上記より、同じ占有面積において、金属製多孔質材6を用いることで放熱フィンの約30倍の放熱面積を確保できることが解る。なお、本実施形態の金属製多孔質材6としては、住友電気工業製のセルメット(商品名)や三菱マテリアル製の発泡金属等を使用できる。セルメットは、Fe−Cr−Ni−Mo系のCr及びMoを多く含む組成からなり、孔径分布が均一であり、電気抵抗が低く圧縮や曲げ等の加工を施しても破断や座屈などの破壊が生じにくいに優れた特性を有する。また、三菱マテリアル製の発泡金属は、銅、ニッケル、貴金属(Au、Ag)や、ニッケル合金製のものがある。
【0012】
放熱部5を構成する上記金属製多孔質材6は、電子部品4との接合面S以外の表面が全て外気である空気に露出されている。従って、金属製多孔質材6を構成する六面のうち、電子部品4との接合面S以外の五面は、全て空気に露出されている。また、金属製多孔質材6と電子部品4との接合部分には、金属製多孔質材6の接合面Sに融着された半田7と、この半田7に融着されている銅板8が介在している(図4参照)。従って、金属製多孔質材6の接合面Sの凹凸が半田7で埋められ、電子部品4で発生する熱を金属製多孔質材6に効率良く伝えることができる。
【0013】
また、金属製多孔質材6の接合面Sに、半田の替わりに高熱伝導性の樹脂や接着剤を融着することで、上記接合部分に当該樹脂・接着剤と銅板8を介在させてもよい。この場合、金属製多孔質材6の接合面Sの凹凸が当該樹脂・接着剤で埋められ、電子部品4で発生する熱を金属製多孔質材6に効率良く伝えることができる。なお、上記接着剤としては、ザイニクス社製やダイマット社製の高熱伝導性接着剤を使用することができる。
【0014】
金属製多孔質材6の接合方法は、まず電子部品4の接合面Sと同じ大きさの銅板8の上に半田を載せ、銅板8の下から加熱して半田を融かす。銅板8上の融解した半田に金属製多孔質材6の接合面Sを押し付け、半田を硬化させることで、金属製多孔質材6を銅板8に接合する。樹脂・接着剤を使用する場合には、接着させたい両者の一方に樹脂・接着剤を厚めに塗布し、他方を接触させ所定の時間保持する等の方法で、金属製多孔質材6を接合することができる。その後、銅板8又は電子部品4に熱伝導性の高い接着剤9を塗布し、一体的となった金属製多孔質材6及び銅板8を電子部品4に押し付けて接合する。
【0015】
本実施形態の電子装置1によれば、電子部品4に金属製多孔質材6を接合させることにより、電子部品4から発生する熱を放熱させる方法を採用しているので、放熱フィンを用いた場合よりも約30倍の放熱面積を確保することができる。従って、空気に対する熱伝導率が放熱フィンと同じとすると、放熱フィンの約30倍という格段に高い放熱性能を有している。また、放熱面積が大きいことは、空気への熱伝導性が高くなるというだけでなく、熱の輻射という点からも熱を逃がすために有利に働く。従って、金属製多孔質材6を用いることで、電子部品4で発生する熱を非常に効率よく放散させることができ、電子部品4の許容上限温度(例えば105℃)に至るような温度上昇を招かず、それと共に電子装置1の表面温度を人が触って火傷を起こさない例えば60℃程度の温度に抑えることができる。また、大量生産に向く材料である金属製多孔質材6を接合させるだけで製作でき、材料コストが安くかつ作業工数が少ないので、製造コストを抑えることができる。
【0016】
また、電子部品4で発生した熱は、筐体2内の空気と熱交換されるが、金属製多孔質材6を用いた場合、金属製多孔質材6の気孔内の空気でも熱交換される。従って、放熱フィンを使用する場合よりも、筐体2内における放熱部を除く空間体積を小さくすることができ、筐体2を小型化することができる。また、放熱フィンを用いた場合は、フィン形状に起因する空気の対流方向を考慮して電子部品を配置する必要があるが、金属製多孔質材6を用いた場合には、その形状に起因する空気の対流方向を考慮しなくてもよいので、電子部品4を配置する位置の自由度が上がる。
【0017】
図5(a)及び(b)に、金属製多孔質材の変形例を示す。図5(a)の金属製多孔質材10は、電子部品4の接合面よりも大きい底面10tを有する立方体に形成されたものであり、電子部品4の側方に突出するオーバーハング部101を有している。図5(b)の金属製多孔質材11は、電子部品4の接合面と同じ大きさの底面11tと、上方に向かうに従って外方に傾斜する四つの傾斜側面11sとを有する逆角錐体に形成されたものであり、電子部品4の側方に突出するオーバーハング部111を有している。金属製多孔質材に、上記のようなオーバーハング部101、111を形成することにより、より大きい放熱面積を確保できる。これにより、電子部品4で発生した熱の放熱性を向上させることができる。なお、オーバーハング部の形状は限定されるものではない。
【0018】
ここで、筐体には、通常、内外に空気を循環させるためのスリット等の換気孔が設けられており、この換気孔から空気を取り入れて放熱フィン等の放熱部と熱交換させている。しかしながら、例えばCEマークを取得するためのEU向け規格では、筐体を樹脂で構成した場合、換気孔を底辺部に設けてはならず、電子装置の設置の仕方に制約を受ける。その対策として、本実施形態において、筐体2の一部を上記金属製多孔質材で構成することを検討した。図6は、筐体2の斜視図である。この筐体2は、上辺部21及び側辺部22からなる蓋体fと、回路基板3が設けられた図2の底辺部23とからなものである。また、上辺部21、側辺部22、底辺部23は、それぞれ中抜きの樹脂製ベース材13と、各辺のベース材13に嵌め込まれた方形板状の金属製多孔質材14とからなるものである。金属製多孔質材14には、上記放熱部5を構成する素材と同じセルメットが使用されている。なお、図2の底辺部23における金属製多孔質材の図示は省略している。
【0019】
金属製多孔質材14は、その高い気孔率により空気を通すため、各辺の一部に金属製多孔質材14が嵌め込まれていることにより、スリット等の換気孔を設けなくても、筐体2の内外に空気を循環させることができる。すなわち、底辺部23にスリットを設けなくても、筐体2内の金属製多孔質材6から放散された熱を、底辺部23から電子装置1外へ逃がすことができる。上記筐体2を用いることで、EU向け規格を満たし、かつ電子装置1の設置の仕方に制約を受けない。
【0020】
なお、EU向け規格では、空気の取り入れ口として許容される開口の大きさは、幅が1mmまでのスリットであり、1mmよりも小さい気孔で形成された当該金属製多孔質材であれば、同規格を満たす。また、電子部品4の上部に設けられた金属製多孔質材6の上面に、蓋体fの上辺部21に嵌め込まれた金属製多孔質材14の下面が当接している。そのため、電子部品4で発生した熱は、放熱部5としての金属製多孔質材6から、空気及び蓋体fの金属製多孔質材14へ放散されるため、電子部品4で発生した熱を非常に効率良く、電子装置1外へ放散させることができる。
【0021】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。金属製多孔質材の気孔率は、50%〜98%であれば大きな放散面積を確保できる。気孔率が50%より小さくなると、放熱面積が小さくなり電子部品で発生した熱を効率よく放散できなくなる。また、上記実施形態では、電子部品と金属製多孔質材との間に半田、銅板、接着剤を介在させたが、金属製多孔質材を熱伝導性の高い接着剤で、直接的に電子部品に接着してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電子部品近傍の斜視図である。
【図2】電子装置(蓋無し)の全体模式図である。
【図3】金属製多孔質材の拡大図である。
【図4】電子部品と金属製多孔質材との境界部近傍の拡大断面図である。
【図5】(a)は金属製多孔質材の変形例を示す電子部品近傍の斜視図であり、(b)は金属製多孔質材の他の変形例を示す電子部品近傍の斜視図である。
【図6】電子装置の全体斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 電子装置
2 筐体
3 回路基板
4 電子部品
5 放熱部
6 金属製多孔質材
7 半田
8 銅板
9 接着剤
101、111 オーバーハング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に設けられた電子部品と、この電子部品に接合されて当該電子部品に発生する熱を放熱させる放熱部とを備えた電子装置において、
前記放熱部は、前記電子部品に一部を接合させかつその接合面以外の表面が全て外気に露出された金属製多孔質材よりなることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記金属製多孔質材は、当該金属製多孔質材に融着された半田、或いは高熱伝導性の樹脂・接着剤を介して前記電子部品に接合されている請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記金属製多孔質材に、前記電子部品の側方に突出するオーバーハング部が形成されている請求項1又は2に記載の電子装置。
【請求項4】
回路基板に設けられた電子部品に放熱部材を接合させることにより、当該電子部品から発生する熱を放熱させる電子部品の放熱方法であって、
前記電子部品に、金属製多孔質材よりなる放熱部材を当該電子部品との接合面以外の表面が全て外気に露出された状態で接合させることを特徴とする電子部品の放熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−41861(P2008−41861A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212969(P2006−212969)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】