説明

電子装置

【課題】 ESLを低減することができる電子装置を提供する。
【解決手段】 複数の四角形状の誘電体層が積層されて成る積層体2と積層体2の誘電体層間に形成された内部電極3と積層体2の両端部に形成されて内部電極3に接続されている端子電極4とを具備しているコンデンサ5が、実装基板6の上面に形成された接続パッド7に端子電極4を接続して実装されており、接続パッド7に実装基板6の内部に形成された貫通導体8が接続されている電子装置1であって、内部電極3は、端部が積層体2の端面から側面の途中にかけて露出しており、貫通導体8は、平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部の端面から最も離れている部位の直下に位置している電子装置1である。電流経路が短くなるので、電子装置1のESLを低減させることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装基板上にコンデンサが実装されている構成の電子装置に関するものであり、特に、インダクタンスを低減するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の通信機器やパーソナルコンピュータ等の情報処理機器では、大量の情報を処理するために信号の高速化が進んでおり、使用されるCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)のクロック周波数も高周波化が進んでいるため、高調波のノイズが発生しやすくなっている。また、前述の情報処理機器の周辺の機器および回路等による外来ノイズ等も存在することから、CPUへ供給される電圧には、ノイズが多く含まれやすくなっている。
【0003】
また、CPU等に電圧を供給するための電源ラインやグラウンドにインピーダンスが存在するので、CPU等に供給される電圧にノイズが含まれている場合には、電源ラインでの電圧変動が生じ、CPU等に安定した電圧が供給されなくなる。よって、CPU等が搭載されている回路の動作が不安定になったり、CPU等に電圧を供給している回路を経由して他の回路間の干渉が起こったり、発振を起こしたりする問題点があった。
【0004】
そこで、通常、電源ラインおよびグラウンドの間には、デカップリングコンデンサが接続されている。また、デカップリング効果を高めるためには、インピーダンス周波数特性の優れたコンデンサを用いることが有効である。この点で、積層セラミックコンデンサは、電解コンデンサに比べて、ESR(Equivalent Series Resistance:等価直列抵抗)が小さいことに加えて、ESL(Equivalent Series Inductance(L):等価直列インダクタンス)が小さいことから、デカップリングコンデンサに適している。ESLが小さい場合には、電源ラインやグラウンドに存在するインピーダンスを低下させることができるので、電圧変動を生じさせないことができるからである。また、コンデンサのESLが小さい場合には、広い周波数帯域にわたってノイズ吸収効果に優れている。
【0005】
また、さらにコンデンサのデカップリング効果を高めるためには、ESLをより低減させる必要がある。
【0006】
これに関して、特許文献1に記載された電子装置は、積層された複数の絶縁体層をもって構成された積層体と、積層体の内部に形成された内部電極と、積層体の外表面上に形成されかつ内部電極と電気的に接続された端子電極とを備える、コンデンサと、実装面を有する基板本体と、実装面上に形成された接続パッドと、基板本体の内部に形成されかつ接続パッドと電気的に接続された貫通導体とを備える、実装基板とを含み、コンデンサの内部電極と実装基板の接続パッドとが互いに面対向するように配置されるとともに、端子電極と接続パッドとが電気的に接続された状態で、実装基板上にコンデンサが実装された、電子装置であって、コンデンサの内部電極の引出し方向であって実装面と垂直な方向に延びる仮想平面に投影したとき、内部電極を流れる電流の方向と、接続パッドから貫通導体に向かって流れる電流または貫通導体から接続パッドに向かって流れる電流の方向とが逆向きとなるように、貫通導体が配置されている。
【0007】
このような電子装置においては、内部電極を流れる電流の周りに生じる磁界と接続パッドを流れる電流の周りに生じる磁界とが効果的に相殺されることにより、その結果、ESLが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−192808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に開示されたような電子装置においては、平面視で、内部電極を流れる電流の方向と、接続パッドを流れる電流の方向とが逆向きになるような構成とするために、貫通導体を、平面視での接続パッドにおける、その貫通導体が接続されている接続パッドに実装されている端子電極の端面の側の辺と対向する辺(以下、内側の辺という。)の、できるだけ近傍に位置させるように貫通導体を形成することとなる。
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されたような電子装置において、貫通導体を平面視で接続パッドにおける内側の辺の近傍に形成した場合には、接続パッドにおける、内側の辺の近傍から、平面視で、積層体の端面における内部電極の積層体からの露出端部の直下の地点までの電流経路を余分に設けられることとなり、磁界が相殺されたとしても電流の経路長が長くなる影響は避けられず、電子装置のESLが大きくなるという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記のような従来の技術における課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ESLを低くすることが可能な電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電子装置は、複数の四角形状の誘電体層が積層されて成る積層体と該積層体の前記誘電体層間に形成された内部電極と前記積層体の両端部に形成されて前記内部電極に接続されている端子電極とを具備しているコンデンサが、実装基板の上面に形成された接続パッドに前記端子電極を接続して実装されており、前記接続パッドに前記実装基板の内部に形成された貫通導体が接続されている電子装置であって、前記内部電極は、端部が前記積層体の端面から側面の途中にかけて露出しており、前記貫通導体は、平面視で前記積層体の前記側面における前記内部電極の露出端部の前記端面から最も離れている部位の直下に位置していることを特徴とするものである。以下、これを本発明の第1の電子装置という。
【0013】
本発明の電子装置は、複数の絶縁体層が積層されて成る絶縁基体、複数の前記絶縁体層の層間に形成された内部導体、および複数の前記絶縁体層の異なる層間に形成された前記内部導体同士を電気的に接続するように前記絶縁体層を貫通して形成された貫通導体を含み、四角形状の貫通孔が形成された第2多層回路ブロック、該第2多層回路ブロックの下側に配置された第1多層回路ブロック、および前記第2多層回路ブロックの上側に配置された、下面に接続パッドが形成された第3多層回路ブロックから成る多層回路基板と、該多層回路基板の前記貫通孔に収容されたコンデンサとを含む電子装置であって、前記コンデンサは、複数の四角形状の誘電体層が積層されて成る積層体、該積層体の前記誘電体層間に端部が前記積層体の端面から側面の途中にかけて露出するように形成された内部電極、および前記積層体の両端部に形成されて前記内部電極に接続されている端子電極を具備しており、前記コンデンサの前記端子電極は、上側が前記接続パッドに接続されており、前記第3多層回路ブロックの、前記接続パッドに電気的に接続されている前記貫通導体は、平面視で前記積層体の前記側面における前記内部電極の露出端部の前記端面から最も離れている部位の直上に位置していることを特徴とするものである。以下、これを本発明の第2の電子装置という。
【0014】
また、本発明の電子装置は、上記構成において、前記第1多層回路ブロックの上面に第2の接続パッドが形成されており、前記コンデンサの前記端子電極は、下側が前記第2の接続パッドに接続されており、前記第1多層回路ブロックの、前記第2の接続パッドに電気的に接続されている前記貫通導体は、平面視で前記積層体の前記側面における前記内部電極の露出端部の前記端面から最も離れている部位の直下に位置していることを特徴とするものである。以下、これを本発明の第3の電子装置という。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の電子装置によれば、コンデンサが、実装基板の上面に実装されている電子装置において、内部電極は、端部が積層体の端面から側面の途中にかけて露出しており、貫通導体は、平面視で積層体の側面における内部電極の露出端部の端面から最も離れている部位の直下に位置していることから、貫通導体から接続パッドに流入した電流は、既に平面視で内部電極の露出端部の直下の位置を通過していることとなるので、端子電極を経て内部電極に流入するまでの電流の経路長が短くなる。また、電流が内部電極に流入する地点と、内部電極へ流入するまでに通った端子電極と反対側の端子電極との距離が短くなる。その結果、全体の経路長が短くなるため、電子装置のESLが小さくなる。
【0016】
本発明の第2の電子装置によれば、複数の絶縁体層が積層されて成る絶縁基体、複数の絶縁体層の層間に形成された内部導体、および複数の絶縁体層の異なる層間に形成された内部導体同士を電気的に接続するように絶縁体層を貫通して形成された貫通導体を含み、四角形状の貫通孔が形成された第2多層回路ブロック、第2多層回路ブロックの下側に配置された第1多層回路ブロック、および第2多層回路ブロックの上側に配置された、下面に接続パッドが形成された第3多層回路ブロックから成る多層回路基板と、多層回路基板の貫通孔に収容されたコンデンサとを含む電子装置であって、コンデンサは、複数の四角形状の誘電体層が積層されて成る積層体、積層体の誘電体層間に端部が積層体の端面から側面の途中にかけて露出するように形成された内部電極、および積層体の両端部に形成されて内部電極に接続されている端子電極を具備しており、コンデンサの端子電極は、上側が接続パッドに接続されており、第3多層回路ブロックの、接続パッドに電気的に接続されている貫通導体は、平面視で積層体の側面における内部電極の露出端部の端面から最も離れている部位の直上に位置していることから、本発明の第1の電子装置と同様に、貫通導体からコンデンサの内部電極に流入するまでの経路長が短くなるため、電子装置のESLを小さくすることが可能となる。
【0017】
また、コンデンサを、多層回路基板の上面ではなく、多層回路基板の内部の貫通孔に収容することができる。従って、多層回路基板の上面には、他の電子部品を実装することができ、より電子部品の実装の高密度化を図ることができる。
【0018】
また、本発明の第3の電子装置によれば、上記本発明の第2の電子装置の構成において、第1多層回路ブロックの上面に第2の接続パッドが形成されており、コンデンサの端子電極は、下側が第2の接続パッドに接続されており、第1多層回路ブロックの、第2の接続パッドに電気的に接続されている貫通導体は、平面視で積層体の側面における内部電極の露出端部の端面から最も離れている部位の直下に位置していることから、第1多層回路ブロックの上面の第2の接続パッドと、第3多層回路ブロックの下面の接続パッドとが、コンデンサの端子電極を介して電気的に接続されていることとなる。従って、第2多層回路ブロック中に貫通導体を形成する必要がなくなる。その結果、電子装置の小型化および低コスト化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の電子装置の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すコンデンサのA−A線における断面図である。
【図3】図1に示す電子装置および図2に示すコンデンサのB−B線における電子装置の断面図である。
【図4】本発明の第2の電子装置の実施の形態の一例を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第3の電子装置の実施の形態の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の電子装置の実施の形態の例について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1の電子装置の実施の形態の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示すコンデンサ5のA−A線における断面図である。図3は、図1に示す電子装置1および図2に示すコンデンサ5のB−B線における電子装置1の断面図である。
【0022】
図1に示す本例の電子装置1は、複数の四角形状の誘電体層が積層されて成る積層体2と積層体2の誘電体層間に形成された内部電極3と積層体2の両端部に形成されて内部電極3に接続されている端子電極4とを具備しているコンデンサ5が、実装基板6の上面に形成された接続パッド7に端子電極4を接続して実装されており、接続パッド7に実装基板6の内部に形成された貫通導体8が接続されている電子装置である。そして、内部電極3は、端部が積層体2の端面から側面の途中にかけて露出しており、貫通導体8は、平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部の端面から最も離れている部位の直下に位置している。
【0023】
このような構成により、貫通導体8から接続パッド7に流入した電流は、既に平面視で内部電極3の積層体2からの露出端部の直下の位置を通過していることとなるので、電流が端子電極4を経て内部電極3に流入するまでの経路長が短くなる。また、電流が内部電極3に流入する地点と、内部電極3へ流入するまでに通った端子電極4とは反対側の端子電極4との間隔が短くなる。結果として、全体の経路長が短くなるため、ESLが低減されることとなる。
【0024】
コンデンサ5は、複数の誘電体層が積層されて成る積層体2、積層体2の誘電体層間に形成された内部電極3、および内部電極3に接続されており積層体2の両端部に形成されている端子電極4を具備している。
【0025】
コンデンサ5の積層体2は、1層当たり1〜5μmの厚みに形成された矩形状の複数の誘電体層を、例えば20〜2000層積層して成る直方体状の誘電体ブロックである。
【0026】
また、積層体2の寸法は、例えば、積層体2の長辺の長さが0.2〜5mm程度で、長辺と短辺との比が通常は2:1程度である。
【0027】
誘電体層の材料としては、例えば、チタン酸バリウム,チタン酸カルシウム,チタン酸ストロンチウム等の比較的誘電率が高いセラミックスを主成分とする誘電体材料を用いる。
【0028】
コンデンサ5の内部電極3は、積層体2の誘電体層間に、20〜2000層形成されている。この内部電極3の材料としては、例えばニッケル,銅,銀,パラジウム等の金属を主成分とする導体材料が用いられ、0.5〜2μmの厚みでそれぞれ形成されている。
【0029】
また、内部電極3は、端部が積層体2の端面から側面の途中にかけて露出している。つまり、図2に示すように、内部電極3は平面視でT字形状となっており、積層体2の端面および側面から露出した部分が端子電極4に接続されている。ちなみに、図2においては、図示した内部電極3は図2の右側の端子電極4と接続されているが、図2の内部電極3の1層上または下の内部電極3は、図2の内部電極3と左右反対の向きで反対の端部側に形成されており、図2の左側の端子電極4と接続されているものである。
【0030】
なお、内部電極3は、積層体2の両側の端部に形成された各々の端子電極4にそれぞれ少なくとも1つずつ接続されているものである。つまり、内部電極3は、積層体2の両側の端部に少なくとも1対存在するものである。
【0031】
また、内部電極3の概略の寸法を以下に示す。
【0032】
図2に示す例の積層体2を平面視したときの長辺(側面側の辺)の方向を横とし、短辺(端面側の辺)の方向を縦とした場合に、例えば、横が0.2〜5mm程度である。また、端子電極4に接続されている部分においては、縦が0.19〜4.9mm程度である。また、積層体2内の中央部付近においては、縦が0.1〜2.5mm程度である。また、内部電極3のうち、積層体2の側面のみから露出している端部の長さは、前述した横の方向に0.1〜4mm程度である。
【0033】
コンデンサ5の端子電極4は、積層体2の両端部に形成されて内部電極3に接続されているものである。端子電極4は、コンデンサ5を外部の回路に電気的に接続するためのものである。図1における本発明の電子装置1のコンデンサ5の端子電極4は、実装基板6上の接続パッド7に実装され接続されている。また、図2に示すように、端子電極4は、内部電極3の積層体2から露出している端部と接続されている。
【0034】
また、端子電極4は、積層体2の両端部にそれぞれ対になって形成されているものである。
【0035】
なお、端子電極4は、内部電極3の積層体2から露出している端部を覆うように、内部電極3と接続されているものである。このような構成によって、内部電極3が積層体2から露出している部分を消失させることができる。従って、外部の機器との電気的絶縁性を確保することができる。
【0036】
端子電極4は銅粉とバインダ樹脂からなるペーストをディップ法などで磁器素体に膜厚10〜50μmで印刷し、約900℃の温度で1時間加熱して焼き付けて形成する。
【0037】
以上のような構成のコンデンサ5は、以下に示すようなセラミックグリーンシート積層法により作製される。
【0038】
具体的には、まずセラミック原料粉末に適当な有機溶剤等を添加し混合して泥漿状のセラミックスラリーにするとともに、ドクターブレード法等を用いることによってセラミックグリーンシートを形成する。
【0039】
次に、得られたセラミックグリーンシートにスクリーン印刷法等によって、内部電極3のパターンを形成して、これらを積層し圧着して積層体2の成形体を作製する。
【0040】
次に、この積層体2の成形体を所定の大きさに分割して、800〜1050℃で焼成することによって、焼結した積層体2が得られる。
【0041】
次に、得られた積層体2の角部に、マイクロクラックの除去および欠けの発生を防止する目的で、バレル研磨等による面取りを施す。
【0042】
次に、銅粉とバインダ樹脂からなるペーストを使用してディップ法などで積層体2の両端面に膜厚10〜50μmの導電性ペーストを塗布し、これを約900℃で1時間加熱して焼き付けて端子電極4を形成する。
【0043】
次に、端子電極4の表面に、必要に応じてニッケル(Ni)メッキ層,金(Au)メッキ層,スズ(Sn)メッキ層あるいは半田メッキ層等のメッキ層を形成して、コンデンサ5を得る。
【0044】
実装基板6の上面には接続パッド7が形成されており、内部には貫通導体8が形成されている。
【0045】
実装基板6は、例えばガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて形成した、あるいはエポキシ樹脂にガラスフィラーを添加して形成したプリント配線基板により構成されている。
【0046】
接続パッド7および貫通導体8は、実装基板6上に実装されたコンデンサ5と他の異なる部品等の端子とを電気的に接続するためのものである。具体的には、接続パッド7および貫通導体8の一端部は実装基板6の表面部において接続されており、貫通導体8の他端部は実装基板6内部の内部導体9に接続されている(内部導体は、図3中の9に該当する。)。また、この内部導体9の別の地点において、内部導体9は他の異なる貫通導体8の一端部と接続され、この貫通導体8の他端部が実装基板6上に形成された、他の異なる接続パッド7に接続される。この接続パッド7にコンデンサ5以外の他の部品等の端子が接続されることによって、コンデンサ5は他の電子部品と電気的に接続されることとなる。
【0047】
また、接続パッド7の寸法は、積層体2を平面視したときの長辺(側面側の辺)の方向を横とし、短辺(端面側の辺)の方向を縦とした場合に、例えば、横が0.1〜5mm程度で、縦が0.1〜5mm程度である。
【0048】
また、貫通導体8の直径は、平面視で30〜200μm程度である。
【0049】
また、接続パッド7,貫通導体8および内部導体9はAgもしくは銀−白金(Ag−Pt)合金等のAgを主成分とする合金などから成る導体材料、または銅(Cu)もしくは銅−亜鉛(Cu−Zn)合金,銅−スズ(Cu−Sn)合金,銅−銀(Cu−Ag)合金,銅−ニッケル(Cu−Ni)合金等のCuを主成分とする合金などから成る導体材料を用いることができる。また、接続パッド7の表面には、必要に応じてめっき膜が形成されていてもよいものである。
【0050】
また、接続パッド7および内部導体9は、Cu,Ag等の導電性金属をメッキ法により形成する方法、あるいは予め配線導体およびグランド配線のパターン形状に形成した金属箔を接着する方法、あるいは全面に金属箔を被着した基板からエッチングにより不要な部分を除去して形成する方法等を用いることにより、プリント配線基板の表面および内部に形成される。
【0051】
このような実装基板6は、例えば市販の表裏全面に銅箔を被着した銅貼基板を準備し、この銅貼基板を所望の大きさに切断するとともに、表面に被着した銅箔を希塩酸等の酸性溶液で所望のパターンとなるようにエッチングすることにより製作される。なお、必要に応じてレーザ光またはドリルを用いて貫通孔を実装基板6に形成し、この貫通孔に金属ペーストを充填し加熱して硬化させることによって貫通導体8を形成することができる。
【0052】
また、貫通導体8は、図2および図3で示すように、平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部のうちで端面から最も離れている部位の直下に位置している。
【0053】
なお、図2は、図1に示すコンデンサ5のA−A線における断面図である。ここで、図2において、破線の円で示される貫通導体8は、図2の断面図上に存在するのではなく、図3に示されるように、実装基板6の内部に形成されているものである。また、図2において、接続パッド7は、図2の断面図上に存在するものではなく、実装基板6上に存在するものであるが、説明のため同じ図面に記載したものである。また、図3は、図1に示す電子装置1および図2に示すコンデンサ5のB−B線における電子装置1の断面図である。
【0054】
このような構成により、貫通導体8から接続パッド7に流入した電流は、既に平面視で内部電極3の積層体2からの露出端部の直下の位置を通過していることとなるので、接続パッド7において余分な経路長が存在せず、端子電極4を経て内部電極3に流入するまでの流入経路が短くなる。また、電流が内部電極3に流入する地点と、内部電極3へ流入するまでに通った端子電極4と反対側の端子電極4との距離が短くなる。例えば、図2および図3に示すように、コンデンサ5の両端部の端子電極4が実装される一対の接続パッド7にそれぞれ貫通導体8が接続されている場合には、貫通導体8同士の平面視の間隔が短くなる。結果として、電子装置1の電流の経路長が短くなるため、ESLが小さくなる。
【0055】
また、ここで貫通導体8が、平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部の端面から最も離れている部位の直下に位置しているという場合の、最も離れているという状態は、例えば、平面視で貫通導体8の一部が、内部電極3と重複するように位置する程度に端面から離れている、という状態を示すものである。
【0056】
なお、特に、図2に示す例のように貫通導体8の中心点が平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部の部位の直下に位置しており、貫通導体8の半分の面積が、平面視で内部電極3に覆われるように位置することが好ましい。この場合には、貫通導体8から接続パッド7および端子電極4を通った電流が、最短経路で内部電極3に流入することとなるので好ましい。
【0057】
また、例えば、図2に示す例の積層体2を平面視したときの長辺(側面側の辺)の方向を横とし、短辺(端面側の辺)の方向を縦とした場合に、積層体2の寸法が、縦が0.5mmで横が1mmであり、接続パッド7の寸法が、縦が0.5mmで横が0.4mmであり、内部電極3において、積層体2の側面のみから露出している端部の長さが横の方向に0.25mmであり、貫通導体8の直径が平面視で80μmであり、端子電極4の厚みが25μmであり、平面視で端子電極4の端面および接続パッド7の辺を一致させるように両者を形成した場合には、貫通導体8の中心点は、平面視で、一対の接続パッド7間の中心点(平面視での積層体2の重心点)から横に0.265mmであり、縦に0.185mm離れた地点に位置するものである。
【0058】
また、図2に示す例においては、積層体2の長辺を有する2つの側面のうち一方の側面の側において、2つの貫通導体8が平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部の端面から最も離れている部位の直下に位置している。ここで、図2に示す例と異なり、積層体2の長辺を有する両側面において、前述したような位置に、2つの貫通導体8が形成されていることが好ましい。この場合には、電流の経路が2つとなり、並列の関係となるので、電子装置1の全体のESLを2〜5割に低減させることが可能となる。
【0059】
次に、本発明の第2の電子装置の実施の形態の一例について、図4を参照しつつ説明する。
【0060】
図4は、本発明の第2の電子装置の実施の形態の一例を示す縦断面図である。なお、図4には、本例の電子装置10について、前述のコンデンサ5を含むような縦断面図の様子が示されている。また、図4において、18は電極パッドを示している。例えば、多層回路基板17の上面、すなわち第3多層回路ブロック16の上面にICチップ等の電子部品を実装する際に、ICチップ等の端子がこの電極パッド18に接続される。
【0061】
図4に示すように、本例の電子装置10は、複数の絶縁体層11が積層されて成る絶縁基体12、複数の絶縁体層11の層間に形成された内部導体9、および複数の絶縁体層11の異なる層間に形成された内部導体9同士を電気的に接続するように絶縁体層11を貫通して形成された貫通導体8を含み、四角形状の貫通孔13が形成された第2多層回路ブロック14、第2多層回路ブロック14の下側に配置された第1多層回路ブロック15、および第2多層回路ブロック14の上側に配置された、下面に接続パッド7が形成された第3多層回路ブロック16から成る多層回路基板17と、多層回路基板17の貫通孔13に収容されたコンデンサ5とを含む電子装置10であって、コンデンサ5は、複数の四角形状の誘電体層が積層されて成る積層体2、積層体2の誘電体層間に端部が積層体2の端面から側面の途中にかけて露出するように形成された内部電極9、および積層体2の両端部に形成されて内部電極9に接続されている端子電極4を具備しており、コンデンサ5の端子電極4は、上側が接続パッド7に接続されており、第3多層回路ブロック16の、接続パッド7に電気的に接続されている貫通導体8は、平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部の端面から最も離れている部位の直上に位置している。
【0062】
この構成により、前述したように、貫通導体8からコンデンサ5の内部電極3に流入するまでの経路長が短くなるため、電子装置10のESLを小さくすることが可能となる。
【0063】
また、コンデンサ5を、多層回路基板17の上面ではなく、多層回路基板17の内部の貫通孔13に収容することができる。従って、多層回路基板17の上面には、他の電子部品を実装することができ、電子部品の実装のより高密度化を図ることができる。
【0064】
また、多層回路基板17の絶縁基体12の材質は、前述した実装基板6と同様の材質でもよいが、絶縁体層材料として熱硬化樹脂に無機フィラ−を含浸させたものを使用してもよい。例えば、熱硬化樹脂としては、ポリフェニレンエーテル系樹脂またはエポキシ系樹脂等が使用され、無機フィラ−としては、二酸化ケイ素またはアルミナ等が使用される。
【0065】
次に、図4に示すような、コンデンサ5を内蔵した電子装置10の製造方法の例を以下に示す。
【0066】
まず、第1多層回路ブロック15,第2多層回路ブロック14および第3多層回路ブロック16を作製する。
【0067】
最初に、絶縁体層11を形成するため、ポリフェニレンエーテル系樹脂またはエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂と、二酸化ケイ素またはアルミナ等の不定形の無機質フィラーとの混合材料からなる厚さ80〜150μmの未硬化状態の絶縁シートを、例えばドクターブレード法により作製する。
【0068】
次に、この絶縁シートの表面に、内部導体9を形成する。これらの内部導体9は、例えば、銅箔、Al箔等の金属箔を絶縁シートの表面に転写した後、レジスト塗布→露光→現像→エッチング→レジスト除去の工程によって、所定のパターンの内部導体9を形成する方法が採用される。
【0069】
次に、絶縁体層11となる絶縁シートに複数の貫通導体用の孔を炭酸ガスレーザーまたはパンチング等によって形成する。なお、図2で示す貫通導体8用の孔は、第3多層回路ブロック16となる絶縁シートのみに形成した。
【0070】
また、第2多層回路ブロック14を作製する場合には、コンデンサ5を収容するための四角形状の貫通孔13も形成した。
【0071】
次に、絶縁シートにおける貫通導体8用の孔等に、Cu粉末を含有する導電性ペーストを充填して、貫通導体8等を形成する。
【0072】
次に、こうして作製された絶縁シートを複数積層させて、第1多層回路ブロック15,第2多層回路ブロック14および第3多層回路ブロック16をそれぞれ作製する。その際、絶縁シートを複数積層させて成る積層物を、170〜240℃および圧力120〜400kPaで加熱・加圧する。これによって、複数の絶縁シート同士を積層圧着させることができる。
【0073】
次に、こうして作製された第3多層回路ブロック16の下面に、接続パッド7を形成する。また、接続パッド7は、第3多層回路ブロック16の貫通導体8と電気的に接続されているものである。なお、第3多層回路ブロック16の貫通導体8は、平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部の端面から最も離れている部位の直上に位置するように形成される。
【0074】
次に、この接続パッド7に端子電極4の上側が電気的に接続されるように、半田によってコンデンサ5を、第3多層回路ブロック16に実装する。
【0075】
次に、このコンデンサ5を、四角形状の貫通孔13に収容するように第2多層回路ブロック14を、第3多層回路ブロック16の下側に配置する。
【0076】
次に、第1多層回路ブロック15を、第2多層回路ブロック14の下側に配置して、コンデンサ5を貫通孔13の内部に完全に収容する。
【0077】
しかる後に、第1多層回路ブロック15,第2多層回路ブロック14および第3多層回路ブロック16を加熱・加圧することにより、それぞれを接続させることによって、本発明の電子装置10を得る。
【0078】
また、図5に、本発明の第3の電子装置の実施の形態の一例を示す。図5は、本発明の第3の電子装置の実施の形態の一例を示す縦断面図である。また、図5において、図4と同様の部位には同じ符号を付しており、18は電極パッドを示している。例えば、多層回路基板17の上面、すなわち第3多層回路ブロック16の上面にICチップ等の電子部品を実装する際に、ICチップ等の端子が、この電極パッド18に接続される。
【0079】
本例の電子装置20は、第1多層回路ブロック15の上面に第2の接続パッド19が形成されており、コンデンサ5の端子電極4は、下側が第2の接続パッド19に接続されており、第1多層回路ブロック15の、第2の接続パッド19に電気的に接続されている貫通導体8は、平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部の端面から最も離れている部位の直下に位置している。
【0080】
この構成により、例えば、多層回路基板17の上面、すなわち第3多層回路ブロック16の上面に、貫通導体8と電気的に接続されるように電極パッド18が形成され、端子が電極パッド18と接続されるようにICチップ等の電子部品が第3多層回路ブロック16の上面に実装されており、第1多層回路ブロック15から、このICチップ等の電子部品に電流を供給する場合に、第1多層回路ブロック15の上面の第2の接続パッド19と、第3多層回路ブロック16の下面の接続パッド7とが、コンデンサ5の端子電極4を介して電気的に接続されることとなる。従って、第2多層回路ブロック14中に余分な貫通導体を形成する必要がなくなる。その結果、電子装置20の小型化および低コスト化を図ることが可能となる。
【実施例1】
【0081】
本発明の電子装置の実施例を以下に説明する。なお、本実施例においては、図1〜図3に示す例の電子装置1を作製した。
【0082】
まず、以下に本発明の実施例の電子装置1におけるコンデンサ5について説明する。
【0083】
まず、TiO−Nd−BaTiO粉末を用いてセラミックスラリーを作製し、そのセラミックスラリーを用いてドクターブレード法によって、誘電体層となるセラミックグリーンシートを作製した。誘電体層の厚さは5μmとなるように設定し、誘電体層の積層数は50層とした。
【0084】
次に、得られたセラミックグリーンシートに、Ag−Pd合金を含む導体性ペーストを用いてスクリーン印刷法によって、内部電極3ならびに貫通導体8を形成して、これらを積層し圧着して、積層体2の成形体を作製した。なお、積層体2の成形体は、いわゆる多数個取りの形態で作製したものを個々に分割することによって作製した。
【0085】
また、積層体2の成形体の寸法は、積層体2における上下方向(積層方向)を高さとし、平面視したときの長辺(側面側の辺)の方向を横とし、短辺(端面側の辺)の方向を縦とした場合に、例えば、高さが0.5mmであり、横が1mm程度で縦が0.5mm程度である。
【0086】
また、内部電極3の厚さは、焼成後に2μmとなるように設定した。また、内部電極3は端部が積層体2の端面から側面の途中にかけて露出しており、積層体2の長手方向の両端部のうち一方はT字形状であるものとした。また、内部電極3のうち、積層体2の側面から露出している端部の長さは、前述した横方向に0.2mm程度であった。
【0087】
次に、この積層体2の成形体を1200℃で焼成することにより、焼結した複数の積層体2を得た。
【0088】
次に、得られた積層体2のそれぞれの角部にバレル研磨によって面取りを施した。
【0089】
次に、ディップ法によって、積層体2の両端部に、膜厚10〜50μmで導電性ペーストを塗布し、これを約900℃で1時間加熱して焼き付けて端子電極4を形成した。導電性ペーストは、銅粉とバインダ樹脂からなるものとした。また、端子電極4の厚さは25μmとした。
【0090】
次に、端子電極4の表面にNiメッキ層を被着させて、コンデンサ5を得た。
【0091】
次に、以上のようにして得られたコンデンサ5を、実装基板6に実装した。この実装基板6の上面には接続パッド7が形成されており、この接続パッド7にコンデンサ5の端子電極4を接続させるようにして、コンデンサ5を実装基板6上に実装するものとした。なお、その際には、平面視で端子電極4の端面および接続パッド7の辺を一致させるように両者を形成するものとした。また、実装基板6の内部には貫通導体8および内部導体9が形成されているものを用いた。
【0092】
なお、貫通導体8の直径は80μmであり、図2における積層体2を平面視したときの長辺(側面側の辺)の方向を横とし、短辺(端面側の辺)の方向を縦とした場合に、その中心点が、平面視で、一対の接続パッド7間の中心点(平面視での積層体2の重心点)から横方向に0.265mmであり、縦方向に0.185mm離れた地点に位置するものとした。
【0093】
また、接続パッド7の寸法は、横方向が0.4mm程度で縦方向が0.5mm程度であるものとした。
【0094】
また、実装基板6は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて形成した。また、接続パッド7,貫通導体8および内部導体9は、Cu−Zn合金から成るものとした。
【0095】
また、比較例として、貫通導体8を、平面視での接続パッド7における、その貫通導体8が接続されている接続パッド7に実装されている端子電極の端面の側の辺(以下、外側の辺という。)と対向する辺(以下、内側の辺という。)から、平面視で0.04mm離れた地点に位置させるものとした。つまり、貫通導体8の中心点が、平面視で、一対の接続パッド7間の中心点から横方向に0.14mmであり、縦方向に0mm離れた地点に位置するものとした。
【0096】
また、比較例の電子装置におけるコンデンサの内部電極の長手方向の両端部のうち一方は、それぞれT字形状となっておらず、内部電極全体の形状は矩形状であるものとする。また、矩形状の内部電極のうち、長手方向の両端部のうち一方の端部は端子電極に接続されている。
【0097】
また、貫通導体8の位置および内部電極の形状以外は、全て本実施例の電子装置1の構成および寸法と同様であるものとした。
【0098】
そして、実施例の電子装置1および比較例の電子装置にそれぞれ定格電圧が1Vで周波数が1kHz〜1MHzの高周波電圧を流し、測定器(インピーダンスアナライザ)を使用して、ESL値を測定した。
【0099】
その測定結果は、実施例の電子装置1においてはESL値が0.36nHであり、比較例の電子装置においてはESL値が0.84nHであった。また、実施例の電子装置1における両貫通導体8間の経路長は0.8mmであり、比較例の電子装置における両貫通導体間の経路長は2.1mmであった。
【0100】
この結果より、本発明の実施例の電子装置1は、内部電極3は、端部が積層体2の端面から側面の途中にかけて露出しており、貫通導体8は、平面視で積層体の側面における内部電極3の露出端部の端面から最も離れている部位の直下に位置していることから、電子装置1全体における経路長が短くなるため、ESLが低減されることが分かった。
【0101】
なお、一般的な電子装置において、ESLが低減されればされるほどデカップリング効果が高まるので好ましいとされている。
【実施例2】
【0102】
本発明の電子装置の他の実施例を以下に説明する。なお、本実施例においては、図4に示す例の電子装置10を作製した。また、本発明の実施例の電子装置10に使用するコンデンサ5は、実施例1で示したものを用いた。
【0103】
最初に、絶縁体層11を形成するため、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂と、無機質フィラーとしての二酸化ケイ素との混合材料からなる厚さ100μmの未硬化状態の絶縁シートを、ドクターブレード法により作製した。
【0104】
次に、この絶縁シートの表面に銅箔を転写した後、レジスト塗布→露光→現像→エッチング→レジスト除去の工程によって、内部導体9を形成した。
【0105】
次に、絶縁体層11となる絶縁シートに複数の貫通導体用の孔を炭酸ガスレーザーによって形成した。なお、図4で示す貫通導体8用の孔は、第3多層回路ブロック16となる絶縁シートのみに形成した。
【0106】
また、第2多層回路ブロック14を作製する際には、コンデンサ5を収容するための四角形状の貫通孔13も形成した。
【0107】
次に、絶縁シートにおける貫通導体8用の孔等に、Cu粉末を含有する導電性ペーストを充填して、貫通導体8等を形成した。また、図4において、21は電源供給用の貫通導体を示している。
【0108】
次に、こうして作製した絶縁シートを複数積層して、第1多層回路ブロック15,第2多層回路ブロック14および第3多層回路ブロック16をそれぞれ作製した。その際、絶縁シートを複数積層して成る積層物を、200℃および圧力300kPaで加熱・加圧して、複数の絶縁シート同士を積層圧着した。なお、第1多層回路ブロック15は絶縁シートを3枚積層して、第2多層回路ブロック14は絶縁シートを6枚積層して、第3多層回路ブロック16は絶縁シートを3枚積層したものである。
【0109】
次に、こうして作製した第3多層回路ブロック16の下面に、接続パッド7を形成した。また、接続パッド7を、第3多層回路ブロック16の貫通導体8と電気的に接続した。なお、第3多層回路ブロック16の貫通導体8を、平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部の端面から最も離れている部位の直上に位置するように形成した。
【0110】
次に、この接続パッド7が端子電極4の上側と電気的に接続するように、半田によってコンデンサ5を、第3多層回路ブロック16に実装した。
【0111】
次に、このコンデンサ5を、四角形状の貫通孔13に収容するように第2多層回路ブロック14を、第3多層回路ブロック16の下側に配置した。
【0112】
次に、第1多層回路ブロック15を、第2多層回路ブロック14の下側に配置して、コンデンサ5を貫通孔13の内部に完全に収容した。
【0113】
しかる後に、第1多層回路ブロック15,第2多層回路ブロック14および第3多層回路ブロック16を加熱・加圧することにより、それぞれを接続することによって、本発明の電子装置10を得た。
【0114】
なお、四角形状の貫通孔13の寸法は、図4における上下方向(絶縁体層11の積層方向)を高さとし、平面視したときのコンデンサ5の長辺の方向を横とし、コンデンサ5の短辺の方向を縦とした場合に、高さが0.55mmで、横が1.05mmで、縦が0.55mmであるものとした。
【0115】
また、接続パッド7の寸法は、横方向が0.4mmで縦方向が0.6mmであるものとした。
【0116】
なお、貫通導体8の直径は80μmであり、接続パッド7に対する位置は、実施例1と同じものとした。
【0117】
以上のようにして作製された電子装置10により、実施例1で前述したように、貫通導体8からコンデンサ5の内部電極3に流入するまでの経路長が短くなるため、電子装置10のESLを小さくすることが可能となることが分かった。
【0118】
また、コンデンサ5を、多層回路基板17の上面ではなく、多層回路基板17の内部の貫通孔13に収容することができる。従って、多層回路基板17の上面には、他の電子部品を実装することができるスペースが増大することが分かった。
【実施例3】
【0119】
本発明の電子装置の他の実施例を以下に説明する。なお、本実施例においては、図5に示す例の電子装置20を作製した。また、本発明の実施例の電子装置20に使用したコンデンサ5は、実施例1で示したものを用いた。
【0120】
まず、絶縁体層11を形成するため、熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂と、無機質フィラーとしての二酸化ケイ素との混合材料からなる厚さ100μmの未硬化状態の絶縁シートを、ドクターブレード法により作製した。
【0121】
次に、この絶縁シートの表面に銅箔を転写した後、レジスト塗布→露光→現像→エッチング→レジスト除去の工程によって、内部導体9を形成した。
【0122】
次に、絶縁体層11となる絶縁シートに複数の貫通導体用の孔を炭酸ガスレーザーによって形成した。また、図5で示す貫通導体8用の孔は、第1多層回路ブロック15および第3多層回路ブロック16となる絶縁シートのみに形成した。
【0123】
また、第2多層回路ブロック14を作製する際には、コンデンサ5を収容するための四角形状の貫通孔13も形成した。
【0124】
次に、絶縁シートにおける貫通導体8用の孔等に、Cu粉末を含有する導電性ペーストを充填して、貫通導体8等を形成した。なお、本実施例の電子装置20においては、第1多層回路ブロック15の上面の第2の接続パッド19と、第3多層回路ブロック16の下面の接続パッド7とが、コンデンサ5の端子電極4を介して電気的に接続されることから、電源供給用の貫通導体21は形成しなかった。
【0125】
次に、こうして作製された絶縁シートを複数積層して、第1多層回路ブロック15,第2多層回路ブロック14および第3多層回路ブロック16をそれぞれ作製した。その際、絶縁シートを複数積層して成る積層物を、200℃および圧力300kPaで加熱・加圧して、複数の絶縁シート同士を積層圧着した。なお、第1多層回路ブロック15は絶縁シートを3枚積層して、第2多層回路ブロック14は絶縁シートを6枚積層して、第3多層回路ブロック16は絶縁シートを3枚積層したものである。
【0126】
次に、こうして作製した第3多層回路ブロック16の下面に、接続パッド7を形成した。また、接続パッド7を、第3多層回路ブロック16の貫通導体8と電気的に接続した。なお、第3多層回路ブロック16の貫通導体8は、平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部の端面から最も離れている部位の直上に位置するように形成した。
【0127】
次に、この接続パッド7に端子電極4の上側が電気的に接続するように、半田によってコンデンサ5を、第3多層回路ブロック16に実装した。
【0128】
次に、このコンデンサ5を、四角形状の貫通孔13に収容するように第2多層回路ブロック14を、第3多層回路ブロック16の下側に配置した。
【0129】
次に、第1多層回路ブロック15の上面に、第2の接続パッド19を形成した。また、第2の接続パッド19を、第1多層回路ブロック15の貫通導体8と電気的に接続した。なお、第1多層回路ブロック15の貫通導体8を、平面視で積層体2の側面における内部電極3の露出端部の端面から最も離れている部位の直下に位置するように形成した。
【0130】
次に、この第2の接続パッド19がコンデンサ5の端子電極4の下側に電気的に接続するように、第1多層回路ブロック15を、第2多層回路ブロック14の下側に配置して、コンデンサ5を貫通孔13の内部に完全に収容した。
【0131】
しかる後に、第1多層回路ブロック15,第2多層回路ブロック14および第3多層回路ブロック16を加熱・加圧することにより、それぞれを接続することによって、本発明の電子装置20を得た。
【0132】
なお、四角形状の貫通孔13の寸法は、図4における上下方向(絶縁体層11の積層方向)を高さとし、平面視したときのコンデンサ5の長辺の方向を横とし、コンデンサ5の短辺の方向を縦とした場合に、高さが0.55mmで、横が1.05mmで、縦が0.55mmであるものとした。
【0133】
また、接続パッド7の寸法は、横方向が0.4mmで縦方向が0.6mmであるものとした。また、第2の接続パッド19の寸法は、横方向が0.4mmで縦方向が0.6mmであるものとした。
【0134】
なお、第1多層回路ブロック15および第3多層回路ブロック16の貫通導体8の直径は80μmであり、接続パッド7に対する位置は、実施例1と同じものとした。
【0135】
以上のようにして作製した電子装置20により、実施例1で前述したように、貫通導体8からコンデンサ5の内部電極3に流入するまでの経路長が短くなるため、電子装置10のESLを小さくすることが可能となることが分かった。
【0136】
また、実施例3の電子装置20は、実施例2の電子装置10と比較して、図4で示した電源供給用の貫通導体21を形成する必要がないため、実施例3の電子装置20は、実施例2の電子装置10と比較して小型化できることが分かった。
【0137】
従って、第1多層回路ブロック15の上面の第2の接続パッド19と、第3多層回路ブロック16の下面の接続パッド7とが、コンデンサ5の端子電極4を介して電気的に接続されることとなるので、第1多層回路ブロック15から第3多層回路ブロック16へ電源を供給するために電源供給用の貫通導体21を形成する必要がなくなり、電子装置20の小型化および低コスト化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0138】
1:電子装置
2:積層体
3:内部電極
4:端子電極
5:コンデンサ
6:実装基板
7:接続パッド
8:貫通導体
9:内部導体
10,20:電子装置
11:絶縁体層
12:絶縁基体
13:貫通孔
14:第2多層回路ブロック
15:第1多層回路ブロック
16:第3多層回路ブロック
17:多層回路基板
18:電極パッド
19:第2の接続パッド
21:電源供給用の貫通導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の四角形状の誘電体層が積層されて成る積層体と該積層体の前記誘電体層間に形成された内部電極と前記積層体の両端部に形成されて前記内部電極に接続されている端子電極とを具備しているコンデンサが、実装基板の上面に形成された接続パッドに前記端子電極を接続して実装されており、前記接続パッドに前記実装基板の内部に形成された貫通導体が接続されている電子装置であって、
前記内部電極は、端部が前記積層体の端面から側面の途中にかけて露出しており、前記貫通導体は、平面視で前記積層体の前記側面における前記内部電極の露出端部の前記端面から最も離れている部位の直下に位置していることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
複数の絶縁体層が積層されて成る絶縁基体、複数の前記絶縁体層の層間に形成された内部導体、および複数の前記絶縁体層の異なる層間に形成された前記内部導体同士を電気的に接続するように前記絶縁体層を貫通して形成された貫通導体を含み、四角形状の貫通孔が形成された第2多層回路ブロック、該第2多層回路ブロックの下側に配置された第1多層回路ブロック、および前記第2多層回路ブロックの上側に配置された、下面に接続パッドが形成された第3多層回路ブロックから成る多層回路基板と、該多層回路基板の前記貫通孔に収容されたコンデンサとを含む電子装置であって、
前記コンデンサは、複数の四角形状の誘電体層が積層されて成る積層体、該積層体の前記誘電体層間に端部が前記積層体の端面から側面の途中にかけて露出するように形成された内部電極、および前記積層体の両端部に形成されて前記内部電極に接続されている端子電極を具備しており、
前記コンデンサの前記端子電極は、上側が前記接続パッドに接続されており、
前記第3多層回路ブロックの、前記接続パッドに電気的に接続されている前記貫通導体は、平面視で前記積層体の前記側面における前記内部電極の露出端部の前記端面から最も離れている部位の直上に位置していることを特徴とする電子装置。
【請求項3】
前記第1多層回路ブロックの上面に第2の接続パッドが形成されており、前記コンデンサの前記端子電極は、下側が前記第2の接続パッドに接続されており、前記第1多層回路ブロックの、前記第2の接続パッドに電気的に接続されている前記貫通導体は、平面視で前記積層体の前記側面における前記内部電極の露出端部の前記端面から最も離れている部位の直下に位置していることを特徴とする請求項2に記載の電子装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−49515(P2011−49515A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247278(P2009−247278)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】