説明

電子部品の実装構造

【課題】導電性接着剤による抵抗値変化のない電子部品の実装構造を提供する。
【解決手段】電子部品の端子電極35a,35bとしての金属層の表面に、イミダゾール系プレフラックスにより電極保護膜を形成する。そして、この保護膜が形成された電子部品の端子電極を、回路基板の実装用ランド40a,40bに供給した導電性接着剤33a,33bにより固着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤を用いて電子部品の端子電極を基板上の実装用ランドに固着させる電子部品の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の産業界における環境への影響に対する意識の高まりから、例えば、エレクトロニクス分野において、鉛を含まない材料を使用した電子部品を実装するための技術開発が進められている。この鉛フリー実装技術として、例えば、鉛フリーハンダや導電性接着剤を用いた実装が検討されている。特に、導電性接着剤は耐応力性があり、実装工程における加熱温度の低温化が可能となる等のメリットが期待され、注目されている。
【0003】
一般的な導電性接着剤は、樹脂成分中に導電フィラーとしての金属粒子を分散させたものである。電子部品の実装は、基板に設けたランドに導電性接着剤を供給し、その上に電子部品を搭載した後、樹脂を加熱硬化することにより行なわれる。この工程により、樹脂の収縮に伴って樹脂中の金属粒子同士の接触、あるいは、金属粒子と部品電極や基板電極との接触により導通が得られるとともに、接続部は樹脂で接着される。この工程において、導電性接着剤に使用される樹脂の硬化温度は、一般的に150℃程度であり、230〜240℃程度の溶融温度が必要なはんだと比較すると、かなり低い。そのため、実装部品や電子回路製品を構成している他の部材として、耐熱性の低い、安価なものを使用でき、総合的に見た場合、製品コストを削減することができる。
【0004】
従来のはんだに替えて、導電性接着剤を用いて電子部品を実装するための技術として、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1は、スズメッキ電極を有する電子部品を、導電性接着剤を用いて接続したところ、導電性接着剤とスズメッキ電極との界面で剥離が生じるという問題に対して、端子電極にCr,Co等の合金の層を形成する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−343668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した導電性接着剤による電子部品の実装体については、従来技術によるハンダメッキ電極やスズメッキ電極の電子部品を用いた実装体よりも、その接続強度を向上できるとされるが、スズ(Sn)コーティングを施した電極と樹脂Ag系導電性接着剤との接続において、抵抗値変化が生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電子部品等を導電性接着剤で回路基板に実装しても抵抗値変化が発生せず、低コストで実装できる電子部品の実装構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として以下の構成を備える。すなわち、本発明は、実装用ランドと配線パターンが形成された回路基板に、導電フィラーを含有した樹脂からなる導電性接着剤を供給し、その導電性接着剤によって前記実装用ランドに電子部品の端子電極を接続した構成をとる電子部品の実装構造であって、前記端子電極は、銅からなる金属層と、イミダゾール系プレフラックスにより前記金属層の表面に形成された電極保護膜とを備えることを特徴とする。
例えば、前記電子部品は、絶縁性基板と、その絶縁性基板上に形成され所定の電気的特性を発現する電気素子と、その電気素子と接続された内部電極と、前記電気素子を覆う素子保護膜とを備え、前記端子電極と前記内部電極とが電気的に接続されていることを特徴とする。また、例えば、前記金属層は電解メッキにより形成されていることを特徴とする。さらには、例えば、前記電気素子は抵抗体であり、前記電子部品は抵抗器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電性接着剤で回路基板に電子部品を実装しても抵抗値が変化せず、同時に、コストを抑えた電子部品の実装構造が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態例に係る電子部品の実装構造により実装される電子部品の製造工程の一部(その1)を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態例に係る電子部品の実装構造により実装される電子部品の製造工程の一部(その2)を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態例に係る電子部品の実装構造の具体例を示す図である。
【図4】Snメッキ端面電極を有する従来の抵抗器を、導電性接着剤を使用して回路基板に実装したときの抵抗値変化を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態例に係る電子部品の温度サイクル試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施の形態例について詳細に説明する。最初に、本発明の実施の形態例に係る電子部品の実装構造において、実装に供される電子部品について説明する。図1および図2は、本実施の形態例に係る電子部品の実装構造で実装される電子部品の製造工程を示している。図1の(a)に示す最初の工程において、アルミナ等の絶縁基板1の表裏に、例えば、AgやAg−Pdの導電ペーストをスクリーン印刷して、上内部電極2a,2b、下内部電極3a,3bを形成する。さらに、上内部電極2a,2b間に、例えば、RuO2等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して、それら上内部電極間に抵抗体4を形成する。
【0012】
図1の(b)に示す工程では、抵抗体4の上にガラスペーストをスクリーン印刷して、抵抗体4を被覆する一次保護膜5を形成する。これに続く工程において、レーザーを照射して、一次保護膜5とともに抵抗体4をカットして抵抗値を調整する。このようなカット工程により、図1の(c)に示すように、部品素子にトリミング痕6が形成される。さらに、図1の(d)に示す工程で、例えば、エポキシ系樹脂により二次保護膜7を形成する。そして、図1の(e)に示すように、部品素子の端面に内部端面電極8a,8bを形成して、これらの電極と上内部電極2a,2bおよび下内部電極3a,3bとを接続する。内部端面電極8a,8bは、スパッタリング等の方法で形成されたNi−Cr膜であるが、これに限定されず、例えば、電極ペーストへ浸漬する等の方法によりNi−Cr膜を形成してもよい。なお、素子保護膜とは、一次保護膜5、二次保護膜7のいずれか、または双方を意味する。
【0013】
図2の(a)に示す工程では、部品素子の端部に、例えば、電解メッキによりNiからなる一次端子電極10a,10bを形成する。続く図2の(b)に示す工程において、電解メッキによりCuの二次端子電極12a,12bを形成する。電解メッキとしては、例えば、硫酸銅浴、ホウフッ化銅浴、シアン化銅浴、ピロリン酸銅浴等のいずれかを採用することができる。また、これら二次端子電極12a,12bの厚さは、例えば、3〜12μm程度である。
【0014】
図2の(c)に示す工程において、電子部品の素子を、例えばプレフラックスに浸漬して、二次端子電極12a,12bの表面に電極保護膜13a,13bを形成する。このプレフラックスは、イミダゾール系の水溶性プレフラックスであり、イミダゾール化合物とその他の添加物からなる水溶液である。プレフラックスとしては、銅に対する選択性を有しているものを用いることが好ましい。本実施の形態例では、四国化成工業株式会社製の水溶性プレフラックス「タフエースF2」(「タフエース」は、四国化成工業株式会社の登録商標)を用いた。なお、二次端子電極12a,12bへのプレフラックスの接触は、浸漬の他、スプレー法や塗布等がある。
【0015】
このように、二次端子電極(銅)12a,12bへプレフラックスを接触させることによって、銅とイミダゾール化合物とが錯体結合し、二次端子電極12a,12bの表面に、例えば、厚さ0.1〜0.5μm程度の電極保護膜13a,13bが形成される。これらの電極保護膜13a,13bには、防錆効果がある。
【0016】
次に、本実施の形態例に係る電子部品の実装構造について説明する。図3は、本実施の形態例に係る電子部品の実装構造の具体的な例を示している。図3に示すように回路基板31上に配した配線パターン41a,41bに接続された実装用ランド40a,40bの上に、例えば、ディスペンス等により導電性接着剤33a,33bを供給する。その後、上述した電極保護膜13a,13bが形成された端子電極35a,35bを、実装用ランド40a,40bのそれぞれの位置に合わせて電子部品30を搭載し、固定する。導電性接着剤33a,33bは、例えば、エポキシ樹脂と、酸無水物およびフェノール樹脂と、硬化促進剤、導電フィラーとを含んでおり、導電フィラーは、例えばAgからなる。
【0017】
このように電子部品30を搭載した後、100℃〜200℃の温度で加熱して、導電性接着剤33a,33bを硬化させる。なお、Cuの酸化をさらに抑制するためには、窒素(N2)雰囲気で加熱処理することも有効である。
【0018】
次に、本実施の形態例に係る電子部品の実装構造における電極部分における電気的性能の測定結果を説明する。図4は、端面電極をSnメッキした従来の構成をとる抵抗器を、Ag系フィラーを含有した導電性接着剤を用いて回路基板に実装し、温度サイクル(−40/125℃)を与えたときの抵抗値変化を示している。この場合、図4に示すような抵抗値変化が生じ、最終的には導通が切れてオープン状態となった。このような抵抗値変化は、導電性接着剤に含まれるAgフィラー中へのSnの拡散、樹脂成分中への吸水によるガルバニック腐食等が原因として考えられる。
【0019】
図5は、本実施の形態例に係る電子部品の実装構造について、図4の場合と同様の温度サイクル試験を行った結果を示している。本実施の形態例に係る電子部品の構造、すなわち、図3に示す電子部品の実装構造について電気的な性能試験をしたところ、図5に示すように際立った抵抗値変化は認められず、電気的に安定した導通特性が得られることを確認できた。
【0020】
なお、上述した実施の形態例では、面実装タイプの抵抗器(特に環境変化に対する抵抗値変化の少ない固定抵抗器)について説明したが、本発明に係る電子部品の実装構造は、これに限定されず、例えば、コンデンサ、インダクタ、バリスタ、サーミスタ、ヒューズ等、その他の面実装タイプの電子部品にも適用可能である。
【0021】
これらの電子部品のうち、インダクタ、サーミスタ、ヒューズについては、上述した抵抗器における抵抗体を、インダクタの場合、導電膜により基板上に形成されたコイルパターンに、サーミスタの場合、温度変化に応じて抵抗値が変化するサーミスタ素子に、ヒューズの場合、電流負荷集中等による溶断部を備えた導電膜にそれぞれ置き換えることで、それらの基本的な構成とすることができる。ここで、電気素子とは、基板上に形成された抵抗体、導電膜により形成されたスパイラル状等のコイルパターン、温度変化に応じて抵抗値が変化するサーミスタ素子、電流負荷集中等による溶断部を備えた導電膜等、所定の電気的特性を発現するものを指している。
【0022】
他方、コンデンサやバリスタについては、コンデンサ素体、バリスタ素体の端面を、Cuを含有する導電ペーストに浸漬し、800℃程度の温度で焼成することで、端面電極を形成できる。このような構成においても、端面電極の表面にイミダゾール系プレフラックスにより金属層の表面に電極保護膜を形成することで、本願発明と同様の効果が得られる。ただし、抵抗器に関しては、抵抗体形成後の工程において高温に晒した場合、抵抗変化等の問題が生じる。そのため、上述した実施の形態例と同様、端面電極を電解メッキにより形成することが好ましい。なお、端面電極は、無電解メッキで形成してもよい。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態例によれば、端面電極(金属層)の表面にイミダゾール系プレフラックスにより電極保護膜を形成した電子部品を、導電性接着剤を使用して、回路基板に配したランドに位置を合わせて実装することで、接続部において抵抗値変化が発生しないという効果が得られる。また、導電性接着剤を含め、部品実装に係る部材として耐熱性の低いものを使用できるため、全体として低コストな電子部品の実装構造を提供できる。
【符号の説明】
【0024】
2a,2b 上内部電極
3a,3b 下内部電極
4 抵抗体
5 一次保護膜
6 トリミング痕
7 二次保護膜
8a,8b 内部端面電極
10a,10b 一次端子電極
12a,12b 二次端子電極
13a,13b 電極保護膜
30 電子部品
31 回路基板
33a,33b 導電性接着剤
35a,35b 端子電極
40a,40b 実装用ランド
41a,41b 配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装用ランドと配線パターンが形成された回路基板に、導電フィラーを含有した樹脂からなる導電性接着剤を供給し、その導電性接着剤によって前記実装用ランドに電子部品の端子電極を接続した構成をとる電子部品の実装構造であって、
前記端子電極は、銅からなる金属層と、イミダゾール系プレフラックスにより前記金属層の表面に形成された電極保護膜とを備えることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項2】
前記電子部品は、絶縁性基板と、その絶縁性基板上に形成され所定の電気的特性を発現する電気素子と、その電気素子と接続された内部電極と、前記電気素子を覆う素子保護膜とを備え、前記端子電極と前記内部電極とが電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の実装構造。
【請求項3】
前記金属層は電解メッキにより形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品の実装構造。
【請求項4】
前記電気素子は抵抗体であり、前記電子部品は抵抗器であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子部品の実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−129696(P2011−129696A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286587(P2009−286587)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000105350)コーア株式会社 (201)
【Fターム(参考)】