説明

電子部品実装モジュールの製造方法および電子部品実装モジュール

【課題】配線パターンの配置自由度を制限することなく、はんだブローホールの発生を防止可能であるとともに、はんだによるショートを防止する。
【解決手段】一実施形態に係る凹部を有する電解コンデンサ1がはんだ付けされた電子部品実装モジュールの製造方法は、電解コンデンサ1のリード線1aを挿通孔11に挿通し、電解コンデンサ1をプリント配線板10の実装領域Aに搭載する工程と、プリント配線板10を治具板20に固定し、挿通孔11を治具板20の開口部22に露出させるとともに、実装領域A内側の貫通孔12および実装領域A外側の貫通孔13が、治具板20の流路部23と連通することにより凹部1bをプリント配線板10の上側の空間と連通させる工程と、プリント配線板10が固定された治具板20を、開口部22に露出したプリント配線板10の裏面が溶融はんだと接触するように溶融はんだ槽に浸漬する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面に凹部を有する挿入型の電子部品がはんだ付けされた電子部品実装モジュールの製造方法、および該製造方法により製造された電子部品実装モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板にはんだ付けされる電子部品の中には、底面に凹部を有するものがある。例えば、大容量の電解コンデンサの場合、円柱状の本体部の底面に凹部が設けられている。この凹部は本体部の側面によって包囲されているため、電解コンデンサをプリント配線板に載置すると、凹部はプリント配線板によって蓋をされた状態となる。
【0003】
従来、電解コンデンサは以下の工程によりプリント配線板にはんだ付けされる。
【0004】
まず、電解コンデンサの2本のリード線をプリント配線板の挿通孔に挿通し、電解コンデンサをプリント配線板の実装面に搭載する。リード線が鉤爪状に形成されている場合には、電解コンデンサはリード線の曲がりによりプリント配線板に固定される。そうでない場合には、リード線を挿通孔に通した後、リード線の先端を曲げて電解コンデンサをプリント配線板に固定する。このように電解コンデンサがプリント配線板に固定された状態では、凹部はプリント配線板によって蓋をされる。このため、凹部は挿通孔のみを介して外部の空間と連通することになる。
【0005】
次いで、電解コンデンサが搭載されたプリント配線板を所定のリフローはんだ用の治具に固定し、その後、プリント配線版のはんだ面(裏面)が溶融はんだと接するようにプリント配線板を溶融はんだ槽に浸漬してはんだ付けを行う。この際、凹部内の気体が溶融はんだにより加熱されて膨張し、挿通孔を通ってプリント配線板のはんだ面側に噴出し、はんだブローホールが発生するという問題があった。
【0006】
これに対し、特許文献1に記載された方法では、細長いスリット孔8をプリント基板2に貫通して設けておき、電解コンデンサ1を、スリット孔8の一部が電解コンデンサ1の底に位置するように搭載してはんだ付けを行う。この方法によれば、膨張した凹部内の気体はスリット孔8を通って外部に排出されるため、はんだブローホールの発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−339149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の場合、スリット孔はプリント基板を貫通しているため、溶融はんだがスリット孔8を通ってプリント配線板の実装面に達し、実装部品のリード線やプリント配線板上の配線パターンをショートさせるおそれがある。また、細長いスリット孔8を設ける必要があるため、配線パターンの配置に対して大きな制限を加えることがある。特に、大容量の電解コンデンサを実装する場合には、大電流に対応するため比較的幅の広い配線パターンを設ける必要があり、配線パターンがスリット孔と干渉する可能性が高い。
【0009】
本発明は、上述の技術的認識に基づいてなされたものであり、配線パターンの配置自由度を制限することなく、はんだブローホールの発生を防止可能であるとともに、はんだによるショートを防止することが可能な電子部品実装モジュールの製造方法、および該方法による電子部品実装モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る、底面に凹部を有する挿入型の電子部品がはんだ付けされた電子部品実装モジュールを製造する方法は、
前記電子部品のリード線をプリント配線板の挿通孔に挿通し、前記電子部品を前記プリント配線板の実装領域に搭載する、電子部品搭載工程と、
前記プリント配線板を治具板に固定し、前記プリント配線板の前記挿通孔を、前記治具板を厚さ方向に貫通する開口部に露出させるとともに、前記プリント配線板の前記実装領域の内側に設けられた第1の貫通孔および前記実装領域の外側に設けられた第2の貫通孔が、前記プリント配線板が載置される前記治具板の上面から凹むように形成された流路部と連通することにより前記凹部を前記プリント配線板の上側の空間と連通させる、プリント配線板固定工程と、
前記プリント配線板が固定された前記治具板を、前記開口部に露出した前記プリント配線板の裏面が溶融はんだと接触するように溶融はんだ槽に浸漬して、前記電子部品を前記プリント配線板にはんだ付けする、はんだ付け工程と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
前記電子部品実装モジュールの製造方法において、
前記プリント配線板には、前記第2の貫通孔に代えて、前記プリント配線板の端部に、前記治具板の流路部と、前記プリント配線板の上側の空間とを連通させる切り欠き部が設けられていてもよい。
【0012】
前記電子部品実装モジュールの製造方法において、
前記プリント配線板の前記第2の貫通孔に代えて、前記治具板に、前記流路部と、前記プリント配線板の上側の空間とを連通させるための気体放出手段が設けられていてもよい。
【0013】
前記電子部品実装モジュールの製造方法において、
前記プリント配線板には、前記実装領域の外側に樹脂注入口が設けられ、かつ前記実装領域の内側に第3の貫通孔がさらに設けられ、
前記第3の貫通孔と前記樹脂注入口との間の距離は、前記第1の貫通孔と前記樹脂注入口との間の距離よりも長く、
前記はんだ付け工程の後、前記プリント配線板を前記治具板から取り外して前記電子部品が実装された面を上側にして樹脂注入用容器内に配置し、前記樹脂注入口を介して溶融樹脂を前記プリント配線板の上側から前記プリント配線板と前記容器の底面との間の隙間に注入することにより、前記プリント配線板の裏面を前記溶融樹脂で覆うとともに、前記第3の貫通孔を介して前記電子部品の前記凹部内の気体を外部に放出させながら前記第1の貫通孔を介して前記溶融樹脂を前記凹部に注入する樹脂封止工程をさらに備えてもよい。
【0014】
前記電子部品実装モジュールの製造方法において、
前記プリント配線板には、前記実装領域の内側に第3の貫通孔がさらに設けられ、前記第3の貫通孔と前記第2の貫通孔との間の距離は、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との間の距離よりも長く、
前記はんだ付け工程の後、前記プリント配線板を前記治具板から取り外して前記電子部品が実装された面を上側にして樹脂注入用容器内に配置し、前記第2の貫通孔を介して溶融樹脂を前記プリント配線板の上側から前記プリント配線板と前記容器の底面との間の隙間に注入することにより、前記プリント配線板の裏面を前記溶融樹脂で覆うとともに、前記第3の貫通孔を介して前記電子部品の前記凹部内の気体を外部に放出させながら前記第1の貫通孔を介して前記溶融樹脂を前記凹部に注入する樹脂封止工程をさらに備えてもよい。
【0015】
前記電子部品実装モジュールの製造方法において、
前記電子部品搭載工程の前に、表面実装型の電子部品を、前記プリント配線板が前記治具板に固定された状態において前記治具板の前記流路部によって蓋をされる前記プリント配線板の裏面の領域にはんだ付けする工程をさらに備えてもよい。
【0016】
前記電子部品実装モジュールの製造方法において、
前記挿入型の電子部品は、電解コンデンサ、または、トランスの上面および側面がカバー体により覆われ、前記カバー体と前記トランスとの間に樹脂が充填されているカバー付きトランスであってもよい。
【0017】
前記電子部品実装モジュールの製造方法において、
前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔のうち少なくともいずれか一方として、前記プリント配線板の異なる層に設けられた配線パターンを電気的に接続するビアホールを利用してもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る電子部品実装モジュールは、
実装領域の内側に挿通孔および第1の貫通孔が設けられ、かつ前記実装領域の外側に第2の貫通孔が設けられたプリント配線板と、
前記プリント配線板の前記実装領域にはんだ付けされた挿入形の電子部品であって、前記挿通孔に挿通されたリード線を有するとともに、底面に設けられた凹部が前記プリント配線板により蓋をされた挿入形の電子部品と、
を備える電子部品実装モジュールであって、
前記電子部品を前記プリント配線板にはんだ付けする際に、前記プリント配線板は、厚さ方向に貫通する開口部と、前記プリント配線板が載置される面から凹むように形成された流路部とを有する治具板に固定され、その状態において、前記挿通孔は前記治具板の前記開口部に露出するとともに、前記第1および第2の貫通孔は前記治具板の前記流路部と連通することを特徴とする。
【0019】
前記電子部品実装モジュールにおいて、
前記治具板に固定された状態において前記流路部により蓋をされる前記プリント配線板の裏面の領域に、表面実装形の電子部品が実装されていてもよい。
【0020】
前記電子部品実装モジュールにおいて、
前記電子部品は、電解コンデンサ、または、トランスの上面および側面がカバー体により覆われ、前記カバー体と前記トランスとの間に樹脂が充填されているカバー付きトランスであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様に係る電子部品実装モジュールの製造方法では、プリント配線板を治具に固定した際に、プリント配線板の実装領域の内側に設けられた第1の貫通孔および実装領域の外側に設けられた第2の貫通孔が治具板の流路部と連通し、これにより、電子部品の底面の凹部はプリント配線板の上側の空間と連通する。
【0022】
したがって、はんだ付け工程において、溶融はんだにより加熱され、膨張した凹部内の気体は、挿通孔からでなく、第1の貫通孔、流路部、第2の貫通孔の順に通って、プリント配線板の上側の空間に放出される。その結果、はんだブローホールの発生を防止することができる。
【0023】
また、第1および第2の貫通孔は互いに独立して配置可能であるため、配線パターンと干渉しないように配置することが容易である。
【0024】
さらに、第1および第2の貫通孔は治具板で覆われるため、はんだ付け工程において溶融はんだがこれらの貫通孔を通ってプリント配線板の表面側に上がってくることがない。したがって、配線パターンや電子部品のリード線が溶融はんだによりショートすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る電子部品実装モジュールのプリント配線板の平面図である。
【図2】電解コンデンサが搭載されたプリント配線板の断面図である。
【図3】治具板および該治具板に固定されたプリント配線板の断面図である。
【図4】端部に切り欠き部が設けられたプリント配線板、および該プリント配線板が固定された治具板の平面図である。
【図5】切り欠き部が設けられた治具板の平面図である。
【図6】樹脂封止用容器および該樹脂封止用容器に固定されたプリント配線板の断面図である。
【図7】ビアホールが設けられたプリント配線板、および該プリント配線板が固定された治具板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
まず、本実施形態に係る電子部品実装モジュールのプリント配線板10について説明する。図1はプリント配線板10の平面図である。図1において破線で示す実装領域Aは、電解コンデンサが実装される領域を示している。2つの挿通孔11は、電解コンデンサの2本のリード線を挿通するための挿通孔である。
【0028】
また、貫通孔12および貫通孔13はプリント配線板を貫通する貫通孔であり、貫通孔12は実装領域Aの内側に、貫通孔13は実装領域Aの外側にそれぞれ設けられている。
【0029】
次に、図2〜図6を参照して本実施形態に係る電子部品実装モジュールの製造方法について説明する。図2は、電解コンデンサが搭載されたプリント配線板の断面図である。図3は、治具板と、該治具板に固定されたプリント配線板の断面図である。図4は、端部に切り欠き部が設けられたプリント配線板と、該プリント配線板が固定された治具板の平面図である。図5は、切り欠き部が設けられた治具板の平面図である。図6は、樹脂封止用容器と、該樹脂封止用容器に固定されたプリント配線板の断面図である。
【0030】
(1)まず、図2に示すように、底面に凹部1bを有する電解コンデンサ1のリード線1aをプリント配線板10の挿通孔11に挿通し、電解コンデンサ1をプリント配線板10の実装領域Aに搭載する。これにより、電解コンデンサ1の凹部1bはプリント配線板10で閉塞される。
【0031】
なお、電解コンデンサ1等の挿入型の電子部品を搭載する前に、図2に示すように、治具板20の流路部23(後述)によって蓋をされるプリント配線板10の裏面の領域に、チップ抵抗などの表面実装型の電子部品14をはんだ付けしておいてもよい。
【0032】
(2)次に、電解コンデンサ1が搭載されたプリント配線板10を、はんだ付け用の治具板20に固定する。この治具板20の構成について、図3を用いて説明する。治具板20には、プリント配線板10を格納可能なように凹設された格納部21が設けられている。また、治具板20を厚さ方向に貫通するように開口部22が設けられている。図3に示すように、プリント配線板10が治具板20に固定された状態では、プリント配線板10の挿通孔11が開口部22に露出する。
【0033】
さらに、治具板20には、治具板20の上面(プリント配線板10が載置される面)から凹むように形成された溝状の流路部23が設けられている。図3に示すように、プリント配線板10が治具板20に固定された状態では、貫通孔12および貫通孔13が流路部23と連通することにより、電解コンデンサ1の凹部1bをプリント配線板10の上側の空間と連通させる。
【0034】
このように、本工程では、プリント配線板10の挿通孔11が治具板20の開口部22に露出し、かつプリント配線板10の貫通孔12および貫通孔13が治具板20の流路部23と連通するように、プリント配線板10を治具板20に固定する。これにより、凹部1bは、プリント配線板10の上側(実装面側)の空間と連通する。
【0035】
なお、貫通孔13を設けない構成も可能である。例えば、図4に示すように、貫通孔13に代えて、プリント配線板10の端部に、凹部1b内の気体を外部に放出するための切り欠き部17を設ける。この切り欠き部17は、流路部23と、プリント配線板10の上側の空間とを連通させる。その他、貫通孔13に代えて、治具板20に、流路部23と、プリント配線板10の上側の空間とを連通させるための気体放出手段を設けてもよい。例えば、図5に示すように、治具板20の収納部21に、流路部23とプリント配線板10の上側の空間とを連通させるための切り欠き部24を設けてもよい。
【0036】
上記のように、本工程では、電解コンデンサ1が搭載されたプリント配線板10を治具板20に固定し、プリント配線板10の挿通孔11が治具板20を厚さ方向に貫通する開口部21に露出させるとともに、貫通孔12および貫通孔13が治具板20の流路部22と連通することにより電解コンデンサ1の凹部1bをプリント配線板10の上側の空間と連通させる。
【0037】
(3)次に、プリント配線板10が固定された治具板20を、開口部22に露出したプリント配線板10の裏面が溶融はんだと接触するように溶融はんだ槽に浸漬して、電解コンデンサ1をプリント配線板10にはんだ付けする。これにより、電解コンデンサ1は、図6に示すように、はんだ18によりプリント配線板10に接合される。
【0038】
本工程において、凹部1b内の気体は溶融はんだにより加熱され膨張するが、膨張した気体は、挿通孔11からでなく、貫通孔12、流路部23、貫通孔13の順に通って、プリント配線板10の上側に空間に放出される。したがって、はんだブローホールの発生を防止することができる。
【0039】
また、貫通孔12,13は互いに独立してプリント配線板10に配置可能であるため、配線パターンと干渉しないように配置することが容易である。
【0040】
さらに、図3からわかるように、貫通孔12,13は治具板20で覆われるため、はんだ付けの際に溶融はんだが貫通孔12,13を通ってプリント配線板10の表面側に上がってくることがない。したがって、配線パターンや電子部品のリード線が溶融はんだによりショートすることや、電解コンデンサ1外周の樹脂被膜が溶融はんだで溶けることに起因する不具合を防止できる。
【0041】
上記の工程を経て、本実施形態に係る電子部品実装モジュールが作製される。この電子部品実装モジュールは、実装領域Aの内側に挿通孔11および貫通孔12が設けられ、かつ実装領域Aの外側に貫通孔13が設けられたプリント配線板10と、実装領域Aにはんだ付けされた挿入形の電子部品である電解コンデンサ1とを備える。この電解コンデンサ1は挿通孔11に挿通されたリード線1aを有するとともに、底面に設けられた凹部1bがプリント配線板10により蓋をされている。さらに、プリント配線板10は、電解コンデンサ1をプリント配線板10にはんだ付けする際に、厚さ方向に貫通する開口部22と流路部23とを有する治具板20に固定され、その状態において、挿通孔11は治具板20の開口部22に露出するとともに、貫通孔12および貫通孔13は治具板20の流路部23と連通する。
【0042】
次に、電解コンデンサ1がはんだ付けされたプリント配線板10を樹脂封止する場合について説明する。
【0043】
この場合、図6に示すように、プリント配線板10には、実装領域Aの外側に樹脂注入口15が設けられ、かつ実装領域Aの内側に貫通孔16がさらに設けられる。樹脂注入口15および貫通孔16は、貫通孔16と樹脂注入口15との間の距離が貫通孔12と樹脂注入口15との間の距離よりも長くなるように設けられる。
【0044】
前述のはんだ付け工程の後、プリント配線板10を治具板20から取り外し、図6に示すように、電解コンデンサ1が実装された面を上側にして樹脂封止用容器30内にプリント配線板10を配置する。そして、樹脂注入口15を介して溶融樹脂31をプリント配線板10の上側からプリント配線板10と樹脂封止用容器30の底面との間の隙間Sに注入する。これにより、プリント配線板10の裏面を溶融樹脂31で覆うとともに、貫通孔16を介して凹部1b内の気体を外部に放出させながら貫通孔12を介して溶融樹脂31を凹部1bに注入する。なお、プリント配線板10の裏面に放出された凹部1b内の気体は、プリント配線板10と樹脂封止用容器30との間の隙間(図示せず)を通って外部に放出される。
【0045】
このように貫通孔16を設けておくことにより、樹脂封止後に凹部1b内に気体が残留することを防止できる。その結果、熱硬化性の溶融樹脂31を硬化させるための加熱工程において、凹部1b内に残留した気体が電解コンデンサ1の底面とプリント配線板10の実装面との間を通って外部に出ることで発生するモールドボイドを防ぐことが可能となる。その結果、モールドボイドを樹脂で埋めるリペア工程が不要になり、製造工数・コストを削減することができる。
【0046】
なお、樹脂注入口15を設けずに、貫通孔13から溶融樹脂を注入してもよい。この場合、貫通孔16は、貫通孔16と貫通孔13との間の距離が貫通孔12と貫通孔13との間の距離よりも長くなる位置に設けられる。
【0047】
上述した実施形態では、底面に凹部を有する挿入型の電子部品として電解コンデンサを挙げたが、本発明はこれに限らず、底面に凹部を有する他の挿入型の電子部品を実装する場合にも適用可能である。そのような電子部品として、例えば、下面からリード線が突出したトランスの上面および側面がカバー体により覆われ、カバー体とトランスとの間に樹脂が充填されているカバー付きトランスが挙げられる。このようなカバー付きトランスでは、下面に露出した樹脂が凹んで、電解コンデンサ1の凹部1bに相当する凹部が形成される。
【0048】
また、ビアホールを上述の貫通孔として利用してもよい。例えば、図7に示すように、プリント配線板10の異なる層に設けられた配線パターン41,42を電気的に接続するビアホール19を、凹部1b内の気体を放出する貫通孔として利用してもよい。この例では、ビアホール19は実装領域Aの内側に設けられており、前述の貫通孔12の機能を果たす。このような手法は、実際のプリント配線板の設計の観点から言えば、ビアホールを実装領域A内に設けて前述の貫通孔12として機能させることに相当する。なお、同様に、実装領域Aの外側にビアホールを設けて、前述の貫通孔13として機能させてもよい。
【0049】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 電解コンデンサ
1a リード線
1b 凹部
10 プリント配線板
11 挿通孔
12,13 貫通孔
14 電子部品
15 樹脂注入口
16 貫通孔
17 切り欠き部
18 はんだ
19 ビアホール
20 治具板
21 格納部
22 開口部
23 流路部
24 切り欠き部
30 樹脂封止用容器
31 溶融樹脂
41,42 配線パターン
A 実装領域
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に凹部を有する挿入型の電子部品がはんだ付けされた電子部品実装モジュールを製造する方法であって、
前記電子部品のリード線をプリント配線板の挿通孔に挿通し、前記電子部品を前記プリント配線板の実装領域に搭載する、電子部品搭載工程と、
前記プリント配線板を治具板に固定し、前記プリント配線板の前記挿通孔を、前記治具板を厚さ方向に貫通する開口部に露出させるとともに、前記プリント配線板の前記実装領域の内側に設けられた第1の貫通孔および前記実装領域の外側に設けられた第2の貫通孔が、前記プリント配線板が載置される前記治具板の上面から凹むように形成された流路部と連通することにより前記凹部を前記プリント配線板の上側の空間と連通させる、プリント配線板固定工程と、
前記プリント配線板が固定された前記治具板を、前記開口部に露出した前記プリント配線板の裏面が溶融はんだと接触するように溶融はんだ槽に浸漬して、前記電子部品を前記プリント配線板にはんだ付けする、はんだ付け工程と、
を備えることを特徴とする電子部品実装モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記プリント配線板には、前記第2の貫通孔に代えて、前記プリント配線板の端部に、前記治具板の流路部と、前記プリント配線板の上側の空間とを連通させる切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記プリント配線板の前記第2の貫通孔に代えて、前記治具板に、前記流路部と、前記プリント配線板の上側の空間とを連通させるための気体放出手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記プリント配線板には、前記実装領域の外側に樹脂注入口が設けられ、かつ前記実装領域の内側に第3の貫通孔がさらに設けられ、
前記第3の貫通孔と前記樹脂注入口との間の距離は、前記第1の貫通孔と前記樹脂注入口との間の距離よりも長く、
前記はんだ付け工程の後、前記プリント配線板を前記治具板から取り外して前記電子部品が実装された面を上側にして樹脂注入用容器内に配置し、前記樹脂注入口を介して溶融樹脂を前記プリント配線板の上側から前記プリント配線板と前記容器の底面との間の隙間に注入することにより、前記プリント配線板の裏面を前記溶融樹脂で覆うとともに、前記第3の貫通孔を介して前記電子部品の前記凹部内の気体を外部に放出させながら前記第1の貫通孔を介して前記溶融樹脂を前記凹部に注入する樹脂封止工程をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子部品実装モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記プリント配線板には、前記実装領域の内側に第3の貫通孔がさらに設けられ、前記第3の貫通孔と前記第2の貫通孔との間の距離は、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との間の距離よりも長く、
前記はんだ付け工程の後、前記プリント配線板を前記治具板から取り外して前記電子部品が実装された面を上側にして樹脂注入用容器内に配置し、前記第2の貫通孔を介して溶融樹脂を前記プリント配線板の上側から前記プリント配線板と前記容器の底面との間の隙間に注入することにより、前記プリント配線板の裏面を前記溶融樹脂で覆うとともに、前記第3の貫通孔を介して前記電子部品の前記凹部内の気体を外部に放出させながら前記第1の貫通孔を介して前記溶融樹脂を前記凹部に注入する樹脂封止工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電子部品実装モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記電子部品搭載工程の前に、表面実装型の電子部品を、前記プリント配線板が前記治具板に固定された状態において前記治具板の前記流路部によって蓋をされる前記プリント配線板の裏面の領域にはんだ付けする工程をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電子部品実装モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記挿入型の電子部品は、電解コンデンサ、または、トランスの上面および側面がカバー体により覆われ、前記カバー体と前記トランスとの間に樹脂が充填されているカバー付きトランスであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電子部品実装モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記第1の貫通孔および前記第2の貫通孔のうち少なくともいずれか一方として、前記プリント配線板の異なる層に設けられた配線パターンを電気的に接続するビアホールを利用することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電子部品実装モジュールの製造方法。
【請求項9】
実装領域の内側に挿通孔および第1の貫通孔が設けられ、かつ前記実装領域の外側に第2の貫通孔が設けられたプリント配線板と、
前記プリント配線板の前記実装領域にはんだ付けされた挿入形の電子部品であって、前記挿通孔に挿通されたリード線を有するとともに、底面に設けられた凹部が前記プリント配線板により蓋をされた挿入形の電子部品と、
を備える電子部品実装モジュールであって、
前記挿入形の電子部品を前記プリント配線板にはんだ付けする際に、前記プリント配線板は、厚さ方向に貫通する開口部と、前記プリント配線板が載置される面から凹むように形成された流路部とを有する治具板に固定され、その状態において、前記挿通孔は前記治具板の前記開口部に露出するとともに、前記第1および第2の貫通孔は前記治具板の前記流路部と連通することを特徴とする電子部品実装モジュール。
【請求項10】
前記治具板に固定された状態において前記流路部により蓋をされる前記プリント配線板の裏面の領域に、表面実装形の電子部品が実装されていることを特徴とする請求項9に記載の電子部品実装モジュール。
【請求項11】
前記電子部品は、電解コンデンサ、または、トランスの上面および側面がカバー体により覆われ、前記カバー体と前記トランスとの間に樹脂が充填されているカバー付きトランスであることを特徴とする請求項9または10に記載の電子部品実装モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−105893(P2013−105893A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248790(P2011−248790)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】