説明

電子部品実装装置及びその方法

【課題】熱溶融する接合金属を介して電子部品と基板とを接合する電子部品実装装置において、ボンディング品質を向上させる。
【解決手段】基板42と接離方向に駆動され、電子部品31を基板42に熱圧着するボンディングツール28と、ボンディングツール28の基板42との接離方向の位置を検出するリニアスケール61、リニアスケールヘッド62と、制御部50と、を備え、制御部50は、電子部品31を加熱しながらボンディングツール28が基準位置から所定の距離だけ基板42に近づいた場合、電子部品31の電極と基板42の電極との間のはんだ皮膜44が熱溶融したと判断し、その際のボンディングツール28の基板42に対する接離方向の位置を保持するボンディングツール位置保持プログラム55を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を基板等に実装する電子部品実装装置の構造及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電極にはんだバンプを形成した、はんだバンプ付電子部品を熱圧着によって基板に実装する方法が多く用いられている。この方法は、圧着ツールによって電子部品を基板に押圧するとともに、電子部品を加熱してはんだを溶融させ、基板の電極にはんだ接合するものである。この熱圧着工程において、はんだバンプ溶融した後も押圧を続けると、溶融したはんだを押しつぶしてしまうこととなるため、はんだバンプの溶融前に熱圧着ツールの位置を固定し、はんだバンプのつぶれを防止することが行われている。しかし、熱圧着ツールが固定された状態でも押圧荷重を検出するロードセルには荷重による変形ひずみが残っており、この残留しているひずみが開放される際に熱圧着ツールが下方向に移動し、溶融したはんだバンプを押しつぶすことがあった。
【0003】
そこで、はんだバンプの溶融前に熱圧着ツールの押圧荷重を低減し、熱圧着ツールではんだバンプを有する電子部品を基板に押圧し、電子部品の加熱を開始した後、押圧荷重が所定の値以下に減少した場合に、はんだが溶融したと判断して熱圧着ツールを上昇させる方法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
また、熱圧着ツールによって電子部品の温度の上昇を開始した後、ヘッドツールの電子部品の押圧荷重を一定制御とし、ロードセルによって測定している荷重の減少を検出してはんだが溶融したものと判断し、ヘッドツールの荷重を一定荷重制御から吸着ノズル先端高さの位置を一定とする位置制御に切り替えて、はんだ溶融時にも電子部品の背面高さの管理を確実に行う方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3399323号明細書
【特許文献2】特許第3399324号明細書
【特許文献3】特開2003−31993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年、電子部品の電極に金バンプを成形し、基板の銅電極の表面に薄いはんだの皮膜を設け、金バンプの金とはんだとを熱溶融接合する金はんだ溶融接合が用いられることが多い。この場合、基板の電極の表面に形成される皮膜の厚さは10から30μm程度と薄いので、特許文献1から3に記載された従来技術では荷重が減少した直後の熱圧着ツールの沈みこみ量がはんだの皮膜厚さよりも大きく、電子部品の実装の際に電子部品の電極に形成された金バンプの先端が基板の銅電極の表面に接触してしまう場合があった。この際、熱圧着ツールを上昇させる前に電子部品や金バンプに荷重がかかり、その荷重で電子部品が損傷を受けたり、金バンプと銅電極との接触により金バンプが変形して隣接する金バンプ同士が接触したりして良好なボンディング品質を維持できない場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、熱溶融する接合金属を介して電子部品と基板とを接合する電子部品実装装置において、ボンディング品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子部品実装装置は、熱溶融する接合金属を介して電子部品の電極と基板の電極とを接合し、電子部品を基板の上に実装する電子部品実装装置であって、基板と接離方向に駆動され、電子部品を基板に熱圧着するボンディングツールと、ボンディングツールの基板との接離方向に駆動する駆動部と、ボンディングツールの基板との接離方向の位置を検出する位置検出部と、駆動部によってボンディングツールの基板との接離方向の位置を変化させる制御部と、を備え、制御部は、電子部品を加熱しながらボンディングツールが基準位置から所定の距離だけ基板に近づいた場合、電子部品の電極と基板の電極との間の接合金属が熱溶融したと判断し、その際のボンディングツールの基板に対する接離方向の位置を保持するボンディングツール位置保持手段を有すること、を特徴とする。
【0009】
本発明の電子部品実装装置において、電子部品は電極の上にバンプが形成され、基板は電極に接合金属の皮膜が形成され、制御部は、さらに、位置検出部からの信号に基づいてバンプと皮膜との当接を判断する当接検出手段と、当接検出手段によってバンプと皮膜とが当接したと判断した場合に、ボンディングツールの基板に対する位置を基準位置として設定する基準位置設定手段を有すること、としても好適である。
【0010】
本発明の電子部品実装装置において、制御部は、さらに、基準位置設定手段によって基準位置を設定した後、ボンディングツールの基板との接離方向の距離が増加から減少に変化した場合、ボンディングツールの基板に対する位置を第2の基準位置として設定する第2の基準位置設定手段と、電子部品を加熱しながらボンディングツールが第2の基準位置から第2の所定の距離だけ基板に近づいた場合、電子部品の電極と基板の電極との間の接合金属が熱溶融したと判断し、その際のボンディングツールの基板に対する接離方向の位置を保持する第2のボンディングツール位置保持手段と、を有すること、としても好適である。
【0011】
本発明の電子部品実装方法は、熱溶融する接合金属を介して電子部品の電極と基板の電極とを接合し、電子部品を基板の上に実装する電子部品実装方法であって、基板と接離方向に駆動され、電子部品を基板に熱圧着するボンディングツールと、ボンディングツールの基板との接離方向に駆動する駆動部と、ボンディングツールの基板との接離方向の位置を検出する位置検出部と、を備える電子部品実装装置を準備する工程と、電子部品を加熱しながらボンディングツールが基準位置から所定の距離だけ基板に近づいた場合、電子部品の電極と基板の電極との間の接合金属が熱溶融したと判断し、その際のボンディングツールの基板に対する接離方向の位置を保持するボンディングツール位置保持工程とを有すること、を特徴とする。
【0012】
本発明の電子部品実装方法において、電子部品は電極の上にバンプが形成され、基板は電極に接合金属の皮膜が形成され、位置検出部からの信号に基づいてバンプと皮膜との当接を判断する当接検出工程と、当接検出工程によってバンプと皮膜とが当接したと判断した場合に、ボンディングツールの基板に対する位置を基準位置として設定する基準位置設定工程をさらに有すること、としても好適である。
【0013】
本発明の電子部品実装方法において、さらに、基準位置設定工程によって基準位置を設定した後、ボンディングツールの基板との接離方向の距離が増加から減少に変化した場合、ボンディングツールの基板に対する位置を第2の基準位置として設定する第2の基準位置設定工程と、電子部品を加熱しながらボンディングツールが第2の基準位置から第2の所定の距離だけ基板に近づいた場合、電子部品の電極と基板の電極との間の接合金属が熱溶融したと判断し、その際のボンディングツールの基板に対する接離方向の位置を保持する第2のボンディングツール位置保持工程と、を有すること、としても好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、熱溶融する接合金属を介して電子部品と基板とを接合する電子部品実装装置において、ボンディング品質を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態である電子部品実装装置の構成を示す系統図である。
【図2】本発明の実施形態である電子部品実装装置にセットされた電子部品と基板とを示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態である電子部品実装装置に用いられるリニアスケールを示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態である電子部品実装装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態である電子部品実装装置の動作中のボンディングツールの位置と、押圧荷重と、はんだ層の温度変化を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態である電子部品実装装置によって金バンプとはんだ皮膜とが金はんだ溶融接合する工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように本発明の電子部品実装装置100は、ベース10と、ベース10から上部に向かって延びるフレーム11と、フレーム11の上部から張り出した上部フランジ12と、フレーム11の側面に上下方向に設けられたガイド14と、ガイド14に上下方向にスライド自在に取り付けられたスライダ16と、スライダ16に固定されてスライダ16と共に上下方向に移動可能な昇降ブロック15と、昇降ブロック15に固定されたナット17と、ナット17にねじ込まれる送りねじ18と、上部フランジ12に固定されて送りねじ18を回転させるモータ13と、昇降ブロック15の下部に取り付けられたボイスコイルモータ20と、ボイスコイルモータ20によって上下方向に移動するロッド26と、ロッド26の先端に取り付けられたセラミックヒータ27と、セラミックヒータ27の下端に取り付けられて電子部品31を吸着するボンディングツール28と、基板42を吸着固定するボンディングステージ41と、制御部50とを備えている。モータ13とボイスコイルモータ20とはボンディングツール28を上下方向に駆動する駆動部である。
【0017】
ボイスコイルモータ20は、ケーシング21と、ケーシング21の内周に沿って固定される永久磁石の固定子22と、固定子22の内周に配置される可動子であるコイル23と、を含んでいる。ロッド26は、ケーシング21に板ばね25を介して取り付けられている。また、ロッド26にはL字形でその垂直部分に細かな目盛りが設けられたリニアスケール61が固定されている。また、リニアスケール61と対向するケーシング21の外面には、リニアスケール61に設けられた目盛りを読み取るリニアスケールヘッド62が取り付けられている。リニアスケール61とリニアスケールヘッド62とはボンディングツール28の高さ方向の位置を検出する位置検出部を構成する。ボイスコイルモータ20のコイル23には電源19から駆動用電源が供給されている。ボンディングステージ41は内部にボンディングステージ41に吸着固定された基板42を加熱するステージヒータ48を備えている。
【0018】
制御部50は、内部に信号処理を行うCPU51とメモリ52とを含むコンピュータであり、メモリ52の中には、ボンディングの制御を行うボンディングプログラム53と、制御用データ58と、基準位置設定プログラム54と、ボンディングツール位置保持プログラム55と、第2の基準位置設定プログラム56と、第2のボンディングツール位置保持プログラム57と、当接検出プログラム59とを含んでいる。
【0019】
モータ13は制御部50に接続され、制御部50の指令によって回転方向、回転角度が制御されるよう構成され、電源19は制御部50に接続され、制御部50の指令によってコイル23に出力する電流、電圧を変化させるように構成され、セラミックヒータ27、ステージヒータ48は制御部50に接続され、制御部50の指令によってその発熱状態が制御されるよう構成されている。
【0020】
図2に示すように、ボンディングツール28の先端に上下反転されて吸着された電子部品31は、表面に複数の電極32が設けられており、その各電極32の上に各金バンプ33が形成されている。金バンプ33は、電極32側の円板型の基部34と円錐形で基部から突き出した突部35とを有している。また、ボンディングステージ41に吸着固定された基板42は、表面に銅電極43が形成され、銅電極43の表面にはんだ皮膜44が形成されている。このはんだ皮膜44の厚さは非常に薄く、10から30μm程度である。電極32、金バンプ33と、基板の銅電極43はそれぞれ対向するように配置されている。
【0021】
図3に示すようにリニアスケール61はリニアスケール本体61aの上に非常に細かいピッチLで目盛り61bが設けられたものである。リニアスケールヘッド62は内部にリニアスケール61の目盛り61bを照射する光源と、光源からの光を透過させる格子と、リニアスケール61の目盛り61bで反射した光を検出する受光デバイスと、受光デバイスから入力された信号を処理する信号処理部とを含んでいる。光源から出射した光は格子を通ってリニアスケール61の目盛り61bで反射し、フォトダイオードのような受光デバイスの上で干渉縞を生成する。リニアスケール61が目盛り61bの長手方向に向かってリニアスケールヘッド62と相対的に移動すると、その干渉縞が移動し、受光デバイスから目盛り61bのピッチLあるいは、ピッチLの1/2の周期の正弦波信号が出力される。正弦波信号は、その位相が90度ずれた二相正弦波である。リニアスケールヘッド62は信号処理部で上記の二相正弦波の出力差に基づいてリニアスケール61とリニアスケールヘッド62との相対的な移動量を出力する。移動量の検出精度は目盛り61bのピッチLが例えば、数μmの場合には1nm程度となる。
【0022】
以上のように構成された電子部品実装装置100によって図2に示した電子部品31を基板42に接合するボンディング動作について図4から図6を参照しながら説明する。ここで、電子部品は半導体チップ、トランジスタ、ダイオード等を含むものである。図2に示すように、電子部品31の電極32と基板42の銅電極43との位置合わせができたら、制御部50は図4のステップS101、図5の時間tからtに示すように、ボンディングツールを初期高さHから降下させる降下動作を開始する。この降下動作は、図1に示すモータ13を回転させて送りねじ18を回転させ、送りねじ18がねじ込まれているナット17が固定されている昇降ブロック15を下方向に移動させることによって行う。制御部50は、モータ13の回転角度によって降下位置を検出し、図4のステップS102に示すように図5に示す所定の高さHまで降下したかどうかを判断する。高さHまで降下すると、金バンプ33とはんだ皮膜44、銅電極43とは図6(a)に示すようにかなり接近しているが、まだ金バンプ33の突部35とはんだ皮膜44との間には隙間が開いている。降下動作ではボイスコイルモータ20、ロッド26、ボンディングツール28とが一体となって降下していくので、ロッド26に取り付けられているリニアスケール61とボイスコイルモータ20のケーシング21との間には高さの差が発生せず、リニアスケールヘッド62からの検出信号は初期出力から変動しない。
【0023】
そして、制御部50は、所定の高さHまで降下したと判断したらモータ13を停止させて降下動作を停止し、図4のステップS103に示すように、図2に示す金バンプ33の先端が基板42の銅電極43のはんだ皮膜44に当接する位置を検出するサーチ動作を開始する。図5の時間tからtに示すようにサーチ動作は金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44の表面に当接するまでボンディングツール28の高さを少しずつ下げて行く動作である。この、動作は例えば、次のようにボイスコイルモータ20のコイル23への通電電流を変化させることによって行う。
【0024】
制御部50がサーチ動作の降下位置の指令を出力すると、電源19はその降下位置の指令値に基づいてボイスコイルモータ20のコイル23に電流を通電する。すると、コイル23は下方向に移動し、その先端24がロッド26の上端に接触する。ロッド26は板ばね25によってケーシング21に取り付けられているので、コイル23に流れる電流が増加してコイル23の先端24がロッド26を押し下げ、その押し下げ力に応じて板ばね25がたわむと、ロッド26が下方向に移動してボンディングツール28の先端がしだいに降下していく。ロッド26が下方向に移動すると、ロッド26に固定されているリニアスケール61とボイスコイルモータ20のケーシング21との間の相対高さに差ができてくるため、リニアスケールヘッド62はリニアスケール61の移動量を検出する。制御部50はこのリニアスケールヘッド62の検出する信号の変化に基づいてボンディングツール28の降下位置を取得し、降下位置の指令値にフィードバックをかけて電源から出力する電流を調整する。そして、コイル23に流す電流を少しずつ増加させてボンディングツール28の先端を少しずつ降下させるサーチ動作を行うことができる。
【0025】
サーチ動作の間、制御部50は、図4のステップS104に示すように、当接検出手段によって金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44の表面に当接しているかどうかを監視している。金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44に当接すると、コイル23の下方向への移動が停止し、リニアスケールヘッド62によって検出する降下位置とサーチ動作の際の降下位置の指令値との間に差ができてくる。制御部50は、この降下位置の指令値とリニアスケールヘッド62によって検出した降下位置との差が所定の閾値を超えた場合に、金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44に当接したと判断する(当接検出工程)。なお、リニアスケール61の上下方向の位置は金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44に当接した際に目盛り61bの長手方向の中央がリニアスケールヘッド62の正面に来るように調整されているので、リニアスケールヘッド62は金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44に当接した位置を中心に上下方向の移動量を測定することができる。
【0026】
図4のステップS105、図5の時間tに示すように、制御部50は、金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44に当接したと判断したら、ボンディングツール28が基準位置の高さHに達したと判断し、その際のリニアスケールヘッド62によって検出した高さHをボンディングツール28の基準高さ(基準位置)として設定する(基準位置設定)。また、図6(b)に金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44に当接した状態を示す。
【0027】
制御部50は、基準高さを設定したら、図4のステップS106に示すように、ボンディングツール28が基板42を押し下げる押圧荷重が一定となる荷重一定動作を行う。この動作は、たとえば、ボイスコイルモータ20のコイル23に通電する電流の値が略一定となるようにして、コイル23の先端24がロッド26を押し下げる力が一定となるようにすることとしてもよい。また、先に述べたように、ボンディングツール28が基板42を押し下げる押圧荷重を検出する荷重センサを設け、この荷重サンサによって検出する押圧荷重が一定となる様にコイル23の電流を変化させるように制御してもよい。図4のステップS107に示すように、制御部50は、リニアスケールヘッド62によって検出した高さ方向の移動量と基準高さHとの差をとって金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44に当接した際のボンディングツール28の高さH(基準高さ)から基板42に近づいた距離、つまり基準高さHからの下向きの移動距離を沈み込み量Dとして計算する。制御部50は、図4のステップS108に示す様に沈み込み量Dが所定の閾値を超えるかどうかの監視を開始する。
【0028】
図5の時間tから時間tの間は金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44に当接してないので、はんだ皮膜44の温度は図1に示すステージヒータ48によって基板42の温度と同じ温度Tとなっている。一方、電子部品31はボンディングツール28の上部に配置されたセラミックヒータ27によってより高温に加熱されている。このため、図5の時間tに金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44に当接すると、金バンプ33の突部35の先端からはんだ皮膜44に熱が伝わり始める。そして、図5の時間tになると、はんだ皮膜44の温度が上昇し始める。そして、図5の時間tから時間tにかけてはんだ皮膜44の温度が上昇していくと、それにつれて銅電極43の温度も上昇し、その結果、銅電極43とはんだ皮膜44とが熱膨張する。この間、押し下げ荷重は一定なので、ボンディングツール28の位置は、金バンプ33の先端がはんだ皮膜44に当接した際の基準高さHからしだいに上昇し、時間tには高さHまで上昇する。この際、ボンディングツール28の位置は基準高さHより高い高さHであるから、図5に示すように、基準高さHからの下向きの移動量D(=H−H)はマイナスとなるので沈み込み量Dは所定の閾値を超えていない。
【0029】
図5に示す時間tにはんだ皮膜44の温度がはんだの溶融温度である温度Tまで上昇すると、はんだ皮膜44の溶融が始まる。この際、ボンディングツール28は押圧荷重一定となるように制御されているので、図6(c)に示すように、金バンプ33の突部35が溶融したはんだ皮膜44の中に沈み込んでいく。つまり、図4に示す時間t、高さHでボンディングツール28の高さが上昇から降下に変化する。そして、降下した突部35の周囲は溶融したはんだ45によって取り囲まれる。この様に、金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44の中に沈み込んで行くと、ボンディングツール28の高さは基準高さHよりも低い位置となり、基準高さHから下方向への移動量である沈み込み量Dがプラスとなっていく。そして、図5の時間tに示すように、ボンディングツールの高さが高さHとなって沈み込み量D(=H―H)が所定の値となると、図6(c)に示すように、金バンプ33の突部35の先端と基板42の銅電極43との間にははんだ皮膜44が数μmの厚みで存在した状態となる。そして、沈み込み量Dが所定の閾値を超えると、図4のステップS109に示すように、制御部50は、はんだ皮膜44が熱溶融したと判断して荷重一定制御を停止し、ボンディングツール28の高さが時間tの高さHで一定に保持するボンディングツール位置保持動作を開始する。
【0030】
この動作は、一例を挙げれば、ボンディングツール28の高さが高さHの状態のリニアスケールヘッド62によって検出する上下方向の移動量を検出し、基準高さHとの差が所定の閾値以下となるようにボイスコイルモータ20のコイル23への通電電流を変化させるようにしてもよい。はんだ皮膜44の厚さは10から30μmであることから、ボンディングツール28の上下方向の位置をリニアスケールヘッド62によって1nm程度で計測、制御することによって、図6(c)に示すように、金バンプ33の突部35の先端と基板42の銅電極43との間にはんだ皮膜44による厚さ数μmの状態を維持することができる。
【0031】
制御部50は、ボンディングツール位置保持動作を開始すると同時に図4のステップS110に示すように、冷却動作を開始する。この冷却動作は、たとえば、ボンディングツール28を加熱しているセラミックヒータ27をオフとするとともに、セラミックヒータ27に冷却空気を供給して冷却し、セラミックヒータ27とともにボンディングツール28およびその先に吸着されている電子部品31を冷却するものである。これによって、図6(c)に示すように、金バンプ33の突部35の先端と基板42の銅電極43との間にはんだ皮膜44の厚さが数μmの状態を維持したまま、はんだ45が冷却されていく。そして、図5の時間tに示すように、はんだ皮膜44の温度がはんだの凝固温度Tまで低下すると、はんだが凝固し、図6(d)に示すように金バンプ33の突部35の先端と基板42の銅電極43との間にははんだ皮膜44の厚さが数μmの状態ではんだ45が凝固して接合金属46となる。制御部50は、図4のステップS111に示すように、所定の時間が経過したら、冷却が完了したものと判断し、ボンディングツール28による電子部品31の吸着を解除し、図4のステップS112に示すようにモータ13によって送りねじ18を回転させてボンディングツール28を初期高さHまで上昇させて電子部品31のボンディングを終了する。
【0032】
以上述べたように、本実施形態の電子部品実装装置100は、はんだ皮膜44の溶融をボンディングツール28の沈み込み量Dによって判断して、荷重一定制御からボンディングツール位置保持制御に移行するので、はんだ溶融による微小な沈み込み量Dの位置にボンディングツール28の高さを維持することができる。これによって、薄いはんだ皮膜44の厚さの中に金バンプ33の突部35の先端が位置し、金バンプ33の突部35の先端が基板42の銅電極43に接触しない状態ではんだを凝固させて電子部品31の実装を行うことができる。そして、金バンプ33の突部35と銅電極43とが接触することを抑制することができ、金バンプ33が変形して隣接する金バンプ33と接触して不良となったり、接触による荷重で電子部品が損傷したりすることを抑制することができ、ボンディングの品質を向上させることができる。
【0033】
以上述べた実施形態では、金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44に当接した状態の高さを、ボンディングツール28が基準高さHとして設定することとして説明したが、図5に示す時間tに示すように、金バンプ33の突部35の先端がはんだ皮膜44に当接した後、ボンディングツール28の高さが上昇から降下に変化した際の高さHを第2の基準高さとしてもよい(第2の基準位置設定)。この場合、先に説明した実施形態と同様に、沈み込み量が図5に示すD=H−H、となった際に荷重一定制御からボンディングツール位置保持制御に切り替える(第2のボンディングツール位置保持動作)。この場合も先に述べた実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0034】
10 ベース、11 フレーム、12 上部フランジ、13 モータ、14 ガイド、15 昇降ブロック、16 スライダ、17 ナット、18 送りねじ、19 電源、20 ボイスコイルモータ、21 ケーシング、22 固定子、23 コイル、24 先端、25 板ばね、26 ロッド、27 セラミックヒータ、28 ボンディングツール、31 電子部品、32 電極、33 金バンプ、34 基部、35 突部、41 ボンディングステージ、42 基板、43 銅電極、44 はんだ皮膜、45 はんだ、46 接合金属、48 ステージヒータ、50 制御部、51 CPU、52 メモリ、53 ボンディングプログラム、54 基準位置設定プログラム、55 ボンディングツール位置保持プログラム、56 第2の基準位置設定プログラム、57 第2のボンディングツール位置保持プログラム、58 制御用データ、59 当接検出プログラム、61 リニアスケール、61a リニアスケール本体、61b 目盛り、62 リニアスケールヘッド、100 電子部品実装装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶融する接合金属を介して電子部品の電極と基板の電極とを接合し、前記電子部品を前記基板の上に実装する電子部品実装装置であって、
前記基板と接離方向に駆動され、前記電子部品を前記基板に熱圧着するボンディングツールと、
前記ボンディングツールの前記基板との接離方向に駆動する駆動部と、
前記ボンディングツールの前記基板との接離方向の位置を検出する位置検出部と、
前記駆動部によって前記ボンディングツールの前記基板との接離方向の位置を変化させる制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記電子部品を加熱しながら前記ボンディングツールが基準位置から所定の距離だけ前記基板に近づいた場合、前記電子部品の電極と前記基板の電極との間の前記接合金属が熱溶融したと判断し、その際の前記ボンディングツールの前記基板に対する接離方向の位置を保持するボンディングツール位置保持手段を有すること、
を特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品実装装置であって、
前記電子部品は電極の上にバンプが形成され、
前記基板は電極に接合金属の皮膜が形成され、
前記制御部は、さらに、
前記位置検出部からの信号に基づいて前記バンプと前記皮膜との当接を判断する当接検出手段と、
前記当接検出手段によって前記バンプと前記皮膜とが当接したと判断した場合に、前記ボンディングツールの前記基板に対する位置を前記基準位置として設定する基準位置設定手段を有すること、
を特徴とする電子部品実装装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子部品実装装置であって、
前記制御部は、さらに、
前記基準位置設定手段によって前記基準位置を設定した後、前記ボンディングツールの前記基板との接離方向の距離が増加から減少に変化した場合、前記ボンディングツールの前記基板に対する位置を第2の基準位置として設定する第2の基準位置設定手段と、
前記電子部品を加熱しながら前記ボンディングツールが前記第2の基準位置から第2の所定の距離だけ前記基板に近づいた場合、前記電子部品の電極と前記基板の電極との間の前記接合金属が熱溶融したと判断し、その際の前記ボンディングツールの前記基板に対する接離方向の位置を保持する第2のボンディングツール位置保持手段と、を有すること、
を特徴とする電子部品実装装置。
【請求項4】
熱溶融する接合金属を介して電子部品の電極と基板の電極とを接合し、前記電子部品を前記基板の上に実装する電子部品実装方法であって、
前記基板と接離方向に駆動され、前記電子部品を前記基板に熱圧着するボンディングツールと、
前記ボンディングツールの前記基板との接離方向に駆動する駆動部と、前記ボンディングツールの前記基板との接離方向の位置を検出する位置検出部と、を備える電子部品実装装置を準備する工程と、
前記電子部品を加熱しながら前記ボンディングツールが基準位置から所定の距離だけ前記基板に近づいた場合、前記電子部品の電極と前記基板の電極との間の前記接合金属が熱溶融したと判断し、その際の前記ボンディングツールの前記基板に対する接離方向の位置を保持するボンディングツール位置保持工程とを有すること、
を特徴とする電子部品実装方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電子部品実装方法であって、
前記電子部品は電極の上にバンプが形成され、
前記基板は電極に接合金属の皮膜が形成され、
前記位置検出部からの信号に基づいて前記バンプと前記皮膜との当接を判断する当接検出工程と、
前記当接検出工程によって前記バンプと前記皮膜とが当接したと判断した場合に、前記ボンディングツールの前記基板に対する位置を前記基準位置として設定する基準位置設定工程をさらに有すること、
を特徴とする電子部品実装方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電子部品実装方法であって、
さらに、
前記基準位置設定工程によって前記基準位置を設定した後、前記ボンディングツールの前記基板との接離方向の距離が増加から減少に変化した場合、前記ボンディングツールの前記基板に対する位置を第2の基準位置として設定する第2の基準位置設定工程と、
前記電子部品を加熱しながら前記ボンディングツールが前記第2の基準位置から第2の所定の距離だけ前記基板に近づいた場合、前記電子部品の電極と前記基板の電極との間の前記接合金属が熱溶融したと判断し、その際の前記ボンディングツールの前記基板に対する接離方向の位置を保持する第2のボンディングツール位置保持工程と、を有すること、
を特徴とする電子部品実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−254032(P2011−254032A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128480(P2010−128480)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000146722)株式会社新川 (128)
【Fターム(参考)】