説明

電子部品搭載用基板および電子装置

【課題】金属製端子ならびにボンディングワイヤの反射損失を低減させることで、高周波信号で駆動しても電子部品を誤動作させず、それにより外部電気回路を誤動作させ難くすることができる電子部品搭載用基板および電子装置を提供すること。
【解決手段】上面に電子部品Sの載置部1aを有する基板1と、基板1の上面から下面にかけて形成された貫通孔1bに挿通されるとともに貫通孔1bに封止材2を介して固定された金属製端子3とを具備した電子部品搭載用基板において、絶縁基板4の上面に配線導体6を形成して成る配線基板を基板1の上面に設け、絶縁基板4の側部に金属製端子3を取り囲む溝を形成するとともに溝の内面に接地導体層5bを形成し、金属製端子3と配線導体6とを電気的に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野等に用いられる光半導体素子等の電子部品を収納するための電子部品搭載用基板およびそれを用いた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、40km以下の伝送距離における高速通信に対する需要が急激に増加しており、高速大容量な情報伝送に関する研究開発が進められている。とりわけ、光通信装置を用いて光信号を受発信する半導体装置等の電子装置の高速化が注目されており、電子装置による光信号の高出力化と高速化が伝送容量を向上させるための課題として研究開発されている。
【0003】
従来の半導体装置に代表される電子装置の光出力は0.2〜0.5mW程度であり、電子部品として用いられる半導体素子の駆動電力は5mW程度であった。しかし、より大出力の半導体装置では、光出力が1mWのレベルになってきており、また、半導体素子の駆動電力も10mW以上が要求されている。さらに、従来の半導体装置による伝送容量は2.5Gbps(Giga bit per second)程度であったが、近年10Gbps程度まで向上してきており、半導体装置をより高出力化させ、高速化させることが要求されている。
【0004】
従来の光通信装置に用いられているLD(Laser Diode:レーザダイオード)やPD(Photo Diode:フォトダイオ−ド)等の光半導体素子を含む電子部品を搭載する電子部品搭載用基板およびこれを用いた電子装置を図5に示す。ここで図5は、電子装置の蓋体を外した状態での電子装置内側から見た斜視図である。
【0005】
従来の電子装置は、上面の中央部に電子部品(半導体素子)S’の搭載部11aを有するとともにこの搭載部11aの周辺に上面から下面にかけて形成された直径0.5〜2mmの貫通孔11bを有する鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金やFe−マンガン(Mn)合金等の金属から成る円板状の基板11と、貫通孔11bに挿通され、少なくとも下端部が貫通孔11bから突出するように封止材12を介して固定され、上端部が半導体素子S’の電極に電気的に接続されるFe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属から成る金属製端子13を具備している。
【0006】
なお、基板11と金属製端子13との接合はホウケイ酸を主成分とする絶縁ガラスを介して行なわれ、絶縁ガラスによって基板11と金属製端子13とが電気的に絶縁されている。基板11は、外部電気回路(図示せず)の接地導体層と電気的に接続されている。また、半導体素子S’は、基板11に200〜400℃の融点を有する金(Au)−Sn等の低融点ロウ材によりロウ付け固定され、半導体素子S’の電極がボンディングワイヤ17を介して金属製端子13に電気的に接続される。
【0007】
また、基板11の上面には、外周端から幅1mm以内の外周部に、半導体素子S’の保護を目的として、Fe−Ni−Co合金等から成る蓋体(図示せず)がYAGレーザ溶接、シーム溶接またはロウ付け等接合されることにより製品としての電子装置(半導体装置)となる。
【0008】
なお、この蓋体には半導体素子S’と対向する部分に光ファイバを固定したり、半導体素子S’と対向する部分に光を透過させる窓を設けたりすることもある。
【0009】
この半導体装置は大容量の光通信等に使用され、例えば半導体素子S’がLDの場合、外部電気回路(図示せず)から供給される駆動信号によって半導体素子S’を発光させ、発光された光を戻り光防止用の光アイソレータ(図示せず)を介して光ファイバ(図示せず)に入力させるとともに伝達させる。そして、40km以下の伝送距離における2.5Gbps以下の伝送容量の通信に多用されている。
【特許文献1】特開平8−130266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来のパッケージに、10GHz以上の高周波信号で駆動される電子部品S’を搭載し、駆動しようとすると、基板11より上面側に突出した金属製端子13及び電子部品S’のボンディングワイヤ17の誘導成分が大きくなり、基板11より上面側に突出した金属製端子13ならびにボンディングワイヤ17における反射損失が増大し、電子部品S’が誤動作するという問題点があった。
【0011】
これは、従来のパッケージでは、基板11より上面側に突出した金属製端子13とボンディングワイヤ17における特性インピーダンスが容量成分より誘導成分の方が大きいことから他の部位における特性インピーダンスの値から大きめにずれているためである。
【0012】
従って、本発明は上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、金属製端子ならびにボンディングワイヤの反射損失を低減させることで、高周波信号で駆動しても電子部品を誤動作させず、外部電気回路の誤動作を防ぐことができる電子部品搭載用基板および電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電子部品搭載用基板は、上面に電子部品の載置部を有する基板と、該基板の上面から下面にかけて形成された貫通孔に挿通されるとともに該貫通孔に封止材を介して固定された金属製端子とを具備した電子部品搭載用基板において、絶縁基板の上面に配線導体を形成して成る配線基板を前記基板の上面に設け、前記絶縁基板の側部に前記金属製端子を取り囲む溝を形成するとともに該溝の内面に接地導体層を形成し、前記金属製端子と前記配線導体とを電気的に接続したことを特徴とする。
【0014】
本発明の電子部品搭載用基板において、好ましくは、前記接地導体層は、前記基板から離れるに従って、前記金属製端子との距離が小さくなることを特徴とする。
【0015】
本発明の電子部品搭載用基板において、好ましくは、前記接地導体層の下端が前記貫通孔の開口縁よりも内側に位置していることを特徴とする。
【0016】
本発明の電子部品搭載用基板において、好ましくは、前記金属製端子の上端が前記接地導体層の上端よりも前記基板側に位置していることを特徴とする。
【0017】
本発明の電子部品搭載用基板において、好ましくは、前記接地導体層の前記前記基板に平行な断面において、前記接地導体層の前記金属製端子側の主面が凹曲面となっていることを特徴とする。
【0018】
本発明の電子装置は上記本発明の電子部品搭載用基板の前記載置部に電子部品を載置し、該電子部品の電極と前記配線導体とを電気的に接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電子部品搭載用基板は、絶縁基板の上面に配線導体を形成して成る配線基板を基板の上面に設け、絶縁基板の側部に金属製端子を取り囲む溝を形成するとともに溝の内面に接地導体層を形成し、金属製端子と配線導体とを電気的に接続したことよって、基板から上面側に突出している金属製端子を取り囲むように接地用電極の電位と近似した接地導体層を形成することができる。それによって容量成分を増加させ特性インピーダンスを整合させることで反射損失を低減できる。ゆえに、高周波信号で駆動しても電子部品を誤動作させ難くし、良好な伝送を可能にすることができる。
【0020】
さらに、電子部品と金属製端子とを直接ワイヤボンディング等で電気的に接続した場合に比べ、本発明では絶縁基板に形成され、インピーダンス整合された配線導体で損失なく信号を伝送することが可能となり、さらに電子部品と配線導体および配線導体と金属性端子を電気的に接続するボンディングワイヤを短くできるので、インピーダンスの整合していない距離を短くすることで、特性インピーダンスの不整合が無視できる距離となり、反射損失を低減できる。
【0021】
本発明の電子部品搭載用基板は、接地導体層が基板から離れるに従って、金属製端子との距離が小さくなることから、金属製端子の先端部のボンディングワイヤとの接続部においてインピーダンスが高くなるのを、接地導体層を金属製端子に近づけてインピーダンスを低減することにより、金属製端子およびボンディングワイヤのトータルとしてのインピーダンス変化を低減でき、インピーダンスの整合がより良好になり、反射損失をさらにいっそう低減できる。
【0022】
本発明の電子部品搭載用基板は、接地導体層の下端が基板に形成した貫通孔の開口縁よりも内側に位置していることから、金属製端子の封止材で覆われた部位と空気で覆われた部位との境界でのインピーダンス変化をより有効に低減できる。
【0023】
本発明の電子部品搭載用基板は、金属製端子の上端が接地導体層の上端よりも基板側に位置していることから、インダクタ成分が大きくなってインピーダンスが高くなりやすい金属製端子とボンディングワイヤとの接続部に対し、接地導体層により容量成分を増加させてインピーダンスを低減することができ、インピーダンスの急激な変化が生じるのを有効に防止して電気特性を向上できる。
【0024】
本発明の電子部品搭載用基板は、接地導体層の基板に平行な断面において、接地導体層の金属製端子側の主面が凹曲面となっていることから、金属製端子を接地導体層で良好に囲むことにより、接地電位を強化することができ、電気特性をより向上できる。
【0025】
本発明の電子装置は、上記本発明の電子部品搭載用基板の載置部に電子部品を載置し、電子部品の電極と配線導体とを電気的に接続したことから、絶縁基板の上面に形成された配線導体と金属製端子を密接した状態でボンディングワイヤにて電気的に接続し、配線導体を経由して光半導体素子などの電子部品へ信号伝送が可能となる。それによって、金属製端子と電子部品とを電気的に接続するボンディングワイヤにて発生する誘導成分を低減し、ボンディングワイヤでの特性インピーダンスを他の部位の特性インピーダンスの値に近づけることができ、ボンディングワイヤにおける反射損失を低減できる。それによって、高周波信号で駆動しても、電子部品が誤動作し難くなり、伝送特性をきわめて高くすることができるようになると共に、反射ノイズが減少するので、外部電気回路を誤動作させない電子装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明の電子部品搭載用基板およびそれを用いた電子装置について添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の電子装置の実施の形態の一例として、電子部品に光半導体素子を用いた光半導体装置を示す斜視図であり、内側が分かるように金属蓋体は外している。図2は配線基板の上面図およびA−A’での断面図である。
【0028】
図1、図2において、1は基板、1aは電子部品の搭載部、2は封止材、3は金属製端子、4は絶縁基板、5aは絶縁基板4の上面の接地導体層、5bは絶縁基板4の側面の溝の内面に形成された接地導体層、5cは絶縁基板4の下面の接地導体層、6は絶縁基板4の上面の配線導体、8は絶縁基板4に接地導体層5a〜5c、配線導体6を形成した配線基板であり、これらで主に本発明の電子部品搭載用基板が基本的に構成される。また、これに電子部品(半導体素子)Sを搭載するとともに配線導体6にボンディングワイヤ7で電気的に接続することで本発明の電子装置(半導体装置)が基本的に構成される。なお、この基板1に電子部品Sを覆うように金属蓋体(不図示)を接合してもよい。
【0029】
なお、図1には、1個の電子部品Sを搭載し、4つの貫通孔1bを形成した例を示しているが、複数の電子部品Sを搭載してもよい。また、貫通孔1bも4つに限らず、4つ以上あるいは4つ以下でもよい。
【0030】
基板1は、上面の中央部に電子部品Sの搭載部1aを有するとともに搭載された電子部品Sが発生する熱をパッケージの外部に放散する機能を有し、搭載部1aの周辺には上面から下面にかけて形成された直径0.6〜2.65mmの貫通孔1bを有する。また、基板1の形状は、例えば直径3.0〜6.0mmの円板状,半径1.5〜8.0mmの円周の一部を切り取った半円板状,一辺3.0〜15mmの四角板状等で、厚みが0.5〜2mmの平板状である。
【0031】
このような基板1は、Fe−Ni−Co合金やFe−Mn合金等の金属から成り、例えば基板1がFe−Mn合金から成る場合は、このインゴット(塊)に圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工方法を施すことによって所定形状に製作される。
【0032】
また、基板1の表面には耐食性に優れ、ロウ材との濡れ性に優れた厚さ0.5〜9μmのNi層と厚さ0.5〜5μmのAu層とをめっき法により順次被着させておくのがよい。これにより、基板1が酸化腐食するのを有効に防止するとともに各部品を基板1に良好にロウ付けすることができる。
【0033】
なお、基板1の厚みは0.5mm以上2mm以下が好ましい。厚みが0.5mm未満の場合、電子部品Sを保護するための金属蓋体を金属基体1の上面に接合する際に、接合温度等の接合条件により基板1が曲がったりして変形し易くなり、厚みが2mmを超えると、電子部品搭載用基板や電子装置の厚みが不要に厚いものとなり小型化し難くなる。
【0034】
基板1に形成された貫通孔1bには、金属製端子3が挿通され、少なくとも下端部が貫通孔1bから突出するように封止材2を介して固定される。金属製端子3の基板1の上端部は、絶縁基板4の電極にボンディングワイヤ7を介して電気的に接続され、出力側の電極と電子部品Sをさらにボンディングワイヤ7を介して電気的に接続することによって、金属製端子3は電子部品Sと外部電気回路(図示せず)との間の入出力信号を伝送する機能をなす。なお、金属製端子3は、少なくとも下端部が貫通孔1bから1〜20mm程度突出するように封止材2を介して固定され、上端部は貫通孔1bから0〜2mm程度突出させる。
【0035】
金属製端子3の上端部は配線基板8の配線導体6に電気的に接続されるので、金属製端子3の高さと絶縁基板4の高さを同じにすることで、絶縁基板4の電極に接続するボンディングワイヤ7の長さを短くでき、ボンディングワイヤ7での誘導成分の影響を小さくすることができる。
【0036】
金属製端子3は、Fe−Ni−Co合金やFe−Ni合金等の金属から成り、例えば金属製端子3がFe−Ni−Co合金から成る場合は、このインゴット(塊)を圧延加工や打ち抜き加工等の従来周知の金属加工方法を施すことによって、長さが1.5〜22mm、直径が0.1〜1mmの線状に製作される。
【0037】
封止材2は、ガラスやセラミックスなどの無機材料から成り、金属製端子3と基板1との絶縁間隔を確保するとともに、金属製端子3を基板1の貫通孔1bに固定する機能を有する。
【0038】
封止材2がガラスから成る場合は、内径が金属製端子3の外径より大きく、外径が基板1の貫通孔1bの内径より小さい筒状になるように、従来周知の粉体プレス法や押し出し成形法等で成形されたガラスの封止材2を貫通孔1bに挿入し、金属製端子3をこの封止材2に挿通し、しかる後、所定の温度に加熱して封止材2を溶融させることにより、金属製端子3が同軸状とされて封止材2に埋め込まれるとともに貫通孔1bに挿通された金属製端子3が貫通孔1bに気密に固定された本発明の電子部品搭載用基板が製作される。
【0039】
絶縁基板4は、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)質焼結体,窒化アルミニウム(AlN)質焼結体等のセラミックス絶縁材料等から成り、絶縁基板4が例えば酸化アルミニウム質焼結体から成る場合、先ずアルミナ(Al)やシリカ(SiO),カルシア(CaO),マグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤,溶媒を添加混合して泥漿状と成し、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等によりシート状に成形してセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を得る。その後、グリーンシートを所定形状に打ち抜き加工するとともに必要に応じて複数枚積層し、これを約1600℃の温度で焼成することにより製作される。また、その後、必要に応じて絶縁基板4の主面に研磨加工を施す場合もある。
【0040】
絶縁基板4の上面に配線導体6を、およびその両脇に接地導体層5aを蒸着法およびフォトリソグラフィ法を用いて形成する。また、基板1に配線基板8を搭載した場合に金属製端子3と対向することになる絶縁基板4の側面に金属製端子3を取り囲むように形成された溝を形成し、その溝の内面に接地導体層5bを、上面の接地導体層5aと電気的に接続するように蒸着法およびフォトリソグラフィ法を用いて形成する。さらに、絶縁基板4の下面に接地導体層5cを側面の溝の内面に形成された接地導体層5bと電気的に接続するように蒸着法およびフォトリソグラフィ法を用いて形成する。
【0041】
なお、接地導体層5a、5b、5cおよび、配線導体6は、例えば密着金属層、拡散防止層および主導体層が順次積層された3層構造の導体層から成る。
【0042】
密着金属層は、セラミックス等から成る絶縁基板4との密着性を良好とするという観点からは、チタン(Ti),クロム(Cr),タンタル(Ta),ニオブ(Nb),ニッケル−クロム(Ni−Cr)合金,窒化タンタル(TaN)等の熱膨張率がセラミックスと近い金属のうち少なくとも1種より成るのが好ましく、その厚みは0.01〜0.2μm程度が好ましい。密着金属層の厚みが0.01μm未満では、密着金属層を絶縁基板4に強固に密着することが困難となる傾向があり、0.2μmを超えると、成膜時の内部応力によって密着金属層が絶縁基板4から剥離し易くなる傾向がある。
【0043】
また、拡散防止層は、密着金属層と主導体層との相互拡散を防ぐという観点からは、白金(Pt),パラジウム(Pd),ロジウム(Rh),ニッケル(Ni),Ni−Cr合金,Ti−W合金等の熱伝導性の良好な金属のうち少なくとも1種より成ることが好ましく、その厚みは0.05〜1μm程度が好ましい。拡散防止層の厚みが0.05μm未満では、ピンホール等の欠陥が発生して拡散防止層としての機能を果たしにくくなる傾向があり、1μmを超えると、成膜時の内部応力により拡散防止層が密着金属層から剥離し易く成る傾向がある。なお、拡散防止層にNi−Cr合金を用いる場合は、Ni−Cr合金は絶縁基板4との密着性が良好なため、密着金属層を省くことも可能である。
【0044】
さらに、主導体層は、電気抵抗の小さい金(Au),Cu,Ni,銀(Ag)の少なくとも1種より成ることが好ましく、その厚みは0.1〜5μm程度が好ましい。主導体層の厚みが0.1μm未満では、電気抵抗が大きなものとなり配線導体6に要求される電気抵抗を満足できなくなる傾向があり、5μmを超えると、成膜時の内部応力により主導体層が拡散防止層から剥離し易く成る傾向がある。なお、Auは貴金属で高価であることから、低コスト化の点でなるべく薄く形成することが好ましい。また、Cuは酸化し易いので、その上にNiおよびAuからなる保護層を被覆してもよい。
【0045】
上面の接地導体層5aと側面の溝の内面に形成された接地導体層5bと下面の接地導体層5cは互いに電気的に接続されている。
【0046】
また、配線基板8は、下面の接地導体層5c表面に温度が200〜400℃に融点を有する半田や金(Au)−錫(Sn)等の低融点ろう材を従来周知のスクリーン印刷法を用いて印刷したり、フォトリソグラフィ法によって低融点ろう材を形成したり、低融点ろう材のプレフォームを用いて200〜400℃の温度で加熱することにより基板1に固定される。
【0047】
このようにして作成した本発明の電子部品搭載用基板は、基板1の上面で、基板1の上面側へ突出した金属製端子3の近傍に、接地電位に接続された配線基板8の側面の溝の内面に形成された接地導体層5bを形成することにより、容量成分を増加させることにより、金属製端子3の誘導成分を低減させ特性インピーダンスを整合させることで反射損失を低減できる。それによって、高周波信号で駆動しても電子部品を誤動作させ難くし、それにより外部電気回路を誤動作させ難くすることができる。
【0048】
本発明の電子部品搭載用基板は、図4に示すように、接地導体層5bが基板1から離れるに従って、金属製端子3との距離が小さくなるのが好ましい。これにより、金属製端子3の先端部のボンディングワイヤ7との接続部においてインピーダンスが高くなるのを、接地導体層5bを金属製端子3に近づけてインピーダンスを低減することにより、金属製端子3およびボンディングワイヤ7のトータルとしてのインピーダンス変化を低減でき、インピーダンスの整合がより良好になり、反射損失をさらにいっそう低減できる。
【0049】
また、好ましくは、図4に示すように、接地導体層5bの下端が基板1に形成した貫通孔1bの開口縁よりも内側に位置しているのがよい。これにより、金属製端子5bの封止材2で覆われた部位と空気で覆われた部位との境界でのインピーダンス変化をより有効に低減できる。
【0050】
より好ましくは、図4に示すように、金属製端子3の上端が絶縁基板4の側面の接地導体層5bの上端よりも基板1側に位置しているのがよい。これにより、インダクタ成分が大きくなってインピーダンスが高くなりやすい金属製端子3とボンディングワイヤ7との接続部に対し、接地導体層5bにより容量成分を増加させてインピーダンスを低減することができ、インピーダンスの急激な変化が生じるのを有効に防止して電気特性を向上できる。
【0051】
また、図1に示すように、接地導体層5bの基板1に平行な断面において、接地導体層5bの金属製端子3側の主面が凹曲面となっているのがよい。これにより、金属製端子3を接地導体層5bで良好に囲むことにより、接地電位を強化することができ、電気特性をより向上できる。
【0052】
電子部品Sは、搭載部1aに200〜400℃の融点を有するAu−Sn等のロウ材によりロウ付けされて固定され、しかる後、その電極をボンディングワイヤ17を介して絶縁基板4の配線導体6に電気的に接続される。電子部品Sとしては、LD(レーザーダイオード)やPD(フォトダイオ−ド)等の光半導体素子、半導体集積回路素子を含む半導体素子、水晶振動子や弾性表面波素子等の圧電素子、圧力センサー素子、容量素子、抵抗器等が挙げられる。
【0053】
このようにして作成した本発明の電子装置は、上記の本発明電子部品搭載用基板を具備することから、10GHz以上の高周波信号において電子装置が駆動されても、金属製端子3の誘導成分を低減させ特性インピーダンスを小さくさせることができ、金属性端子部の反射損失を低減できる。それによって、高周波信号で駆動しても、電子部品を誤動作させ難くすると共に、外部電気回路を誤動作させ難い電子装置となる。
【実施例】
【0054】
本発明の電子装置と比較用の試料とを作製して結果を比較した。
【0055】
本発明の電子装置としての評価用の半導体装置を以下のように作製した。まず、サンプルとしてFe99.6wt%−Mn0.4wt%系のSPC(Steel Plate Cold)材から成る厚み1.0mm×直径5.6mmの板材に厚み1.5mm×直径3.0mmの円柱状の搭載部1aを切削加工により設けた基板1の中央部に、打ち抜き加工により直径0.7mmの貫通孔1bを形成した。そして、基板1の貫通孔1bに長さ1.0mm×内径0.3mm×外径0.7mmの筒状に成形した低融点ガラスから成る封止材2にFe58wt%−Ni42wt%合金から成る長さ15mm×直径0.3mmの金属製端子3を挿入し、700℃の炉中にてガラスを溶融させることにより金属製端子3の上端が基板1から0.5mmの高さになるようにして貫通孔1bを気密封止した。
【0056】
さらに、基板1および金属製端子3の露出した表面には、厚さ2μmのNi層と厚さ2μmのAu層とをめっき法により順次被着させた。
【0057】
さらに、長さ幅共に1mm角、厚み0.5mmの酸化アルミニウムからなる絶縁基板4の端面の中心部に直径0.3mmの半円状の溝をレーザー加工にて形成した。その後絶縁基板4上面に幅0.3mmの配線導体6、その両側に配線導体6と0.04mmの間隔をおいて接地導体層5a、金属製端子3に対向する側面部及び溝の内面全面に接地導体層5b、下面全面に下面の接地導体層5cを蒸着およびフォトリソグラフィ法を用いて密着金属層、拡散防止層および主導体層が順次積層された3層構造の導体層で形成することで、配線基板8を形成した。
【0058】
密着金属層はチタン(Ti)を用い、その厚みは0.1μmとした。拡散防止層は白金(Pt)を用い、その厚みは0.1μmとした。主導体層は金(Au)を用い、厚みは1μmとした。
【0059】
その後、配線基板8を、金属製端子3から0.1mm離れた箇所へ溝部の接地導体層5bが金属製端子3を取り囲むようにAu−Snロウ材にてロウ付けして搭載し、配線基板8の金属製端子3と反対側に配線基板8から0.1mm離れた箇所にレーザーダイオード素子SをAu−Snロウ材にてロウ付けして搭載し、金属製端子3と配線基板8の配線導体6、配線基板8の配線導体6とレーザーダイオード素子Sの電極をボンディングワイヤ7にて電気的に接続し、サンプルとしての半導体装置を作製した。
【0060】
次に、比較用サンプルとして従来の半導体装置を準備した。従来の半導体装置は、サンプルと同様に基板1に形成された0.7mmの貫通孔に金属製端子が封止材を介して接合固定されている。サンプルとは異なり配線基板8を用いずに金属製端子3から1mm離れた箇所にレーザーダイオード素子SをAu−Snロウ材にてロウ付けして搭載し、金属製端子3とレーザーダイオード素子Sの電極をボンディングワイヤ7にて電気的に接続し比較用サンプルの半導体装置を作成した。配線基板8が設けられていない他は、上記の本発明の半導体装置と同じものである。
【0061】
上記2種の試料をシミュレータ(アンソフト(株)製、HFSS)にてシミュレーションを行い、その際の反射損失(S11)を比較した。この反射損失により半導体素子ならびに外部電気回路へ良好な伝送ができるかどうか確認することができる。その結果を図5に示す。
【0062】
図5に示されるように、本発明のサンプルは反射損失が15GHz程度まで従来の比較サンプルより大幅に低減され−15dB以下となっている。実用上は10GHz以上の高周波信号で駆動しても、反射損失が−10dB以下であれば、半導体素子を誤動作無く動作させることができると共に、反射ノイズが減少することで、外部に漏れ出るノイズが減少することで、外部電気回路を誤動作させない半導体装置となることが分かる。
【0063】
なお、本発明は、上述の実施の形態の例および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更は可能である。例えば、2.5Gbpsといった低速通信でも使用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の電子装置の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1の電子装置における配線基板部分の要部平面図、(b)は(a)のA−A’線における断面図である。
【図3】従来の電子装置の斜視図である。
【図4】本発明の電子部品搭載用基板の実施の形態の他の例を示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明の電子装置の評価結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1・・・・・・・基板
1a・・・・・・搭載部
1b・・・・・・貫通孔
2・・・・・・・封止材
3・・・・・・・金属製端子
4・・・・・・・絶縁基板
5b・・・・・・接地導体層
6・・・・・・・配線導体
S・・・・・・・電子部品(半導体素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に電子部品の載置部を有する基板と、該基板の上面から下面にかけて形成された貫通孔に挿通されるとともに該貫通孔に封止材を介して固定された金属製端子とを具備した電子部品搭載用基板において、絶縁基板の上面に配線導体を形成して成る配線基板を前記基板の上面に設け、前記絶縁基板の側部に前記金属製端子を取り囲む溝を形成するとともに該溝の内面に接地導体層を形成し、前記金属製端子と前記配線導体とを電気的に接続したことを特徴とする電子部品搭載用基板。
【請求項2】
前記接地導体層は、前記基板から離れるに従って、前記金属製端子との距離が小さくなることを特徴とする請求項1記載の電子部品搭載用基板。
【請求項3】
前記接地導体層の下端が前記貫通孔の開口縁よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電子部品搭載用基板。
【請求項4】
前記金属製端子の上端が前記接地導体層の上端よりも前記基板側に位置していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電子部品搭載用基板。
【請求項5】
前記接地導体層の前記前記基板に平行な断面において、前記接地導体層の前記金属製端子側の主面が凹曲面となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電子部品搭載用基板。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の電子部品搭載用基板の前記載置部に電子部品を載置し、該電子部品の電極と前記配線導体とを電気的に接続したことを特徴とする電子装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−123805(P2007−123805A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87290(P2006−87290)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】