説明

電子部品用パッケージおよびこれを用いた圧電振動デバイス

【課題】 小型化に対応し、確実な気密封止を行うことができる電子部品用パッケージおよび、これを用いた圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】 平板状の第1の絶縁層2aの上部に、枠状の第2の絶縁層2bが積層され、前記第2の絶縁層2b上に、枠状の第3の絶縁層2cが積層された構成で、凹部24を有する平面視矩形状のベース2と、封止材6が形成された平面視矩形状の蓋体4とからなる電子部品用パッケージであって、前記ベース2は、前記第2の絶縁層2bの内周の4角の一部が、前記凹部24の内側方向へ張り出し、平面視で露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる電子部品用パッケージ(べース)および、これを用いた圧電振動デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
低融点ガラスなどのガラス封止材を介して、絶縁体から成る蓋体とパッケージ(以下ベースと称す)とを気密封止する形態の圧電振動デバイスが従来より知られており、前記圧電振動デバイスとして、例えば表面実装型の水晶振動子が挙げられる(特許文献1)。前記特許文献1は封止材としてガラス材を使用しており、ベースよりも小さな外形の蓋体を用いて、蓋体の外周側に封止材によるインナーメニスカスを形成することによって蓋体とベースとの接合強度を向上させた電子部品用パッケージとなっている。
【0003】
ところで、近年の携帯電話等の各種通信デバイスに用いられる圧電振動デバイスにおける小型化・低背化に伴い、水晶振動子においても小型化が進行している。しかしながら、表面実装型水晶振動子の外形寸法が、2520サイズ(縦×横=2.5mm×2.0mm)以下になってくると、前記水晶振動子の内部空間に収容される水晶振動片の大きさも小さくする必要があるが、水晶振動子の特性確保の為にはある程度の大きさを確保する必要性がある。そのため、前記内部空間を包囲する環状の堤部の幅も、ベース本体の強度維持の点では厚い方が好ましいものの、前記理由により制限を受けることになる。以上のように、ベースの小型化に伴う堤部の幅の狭小化によって、不適切な封止条件(封止材の厚みバラツキや平坦度等)となった場合、雰囲気加熱によって前記インナーメニスカスが形成され難く、溶融した封止材が、ベース上面の4つの角部からベースの内部空間(蓋体とベースとの接合によって形成される閉空間)に流入することがあった(図6参照)。このように封止材がベースの内部空間に流入して、例えばベース内底部に搭載された圧電振動素子にまで到達した場合、その後の水晶振動子の製造工程中の熱履歴によって水晶振動片に熱応力が発生し、発振周波数の変動等の不具合が発生していた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−104766号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、小型化に対応し、確実な気密封止を行うことができる電子部品用パッケージおよび、これを用いた圧電振動デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明によれば、平板状の第1の絶縁層の上に、枠状の第2の絶縁層が積層され、前記第2の絶縁層上に、枠状の第3の絶縁層が積層された構成で、上部に開口部を有する平面視矩形状のベースと、封止材が形成された平面視矩形状の蓋体とからなる電子部品用パッケージであって、前記ベースは、前記第2の絶縁層の内周の4角の一部が、前記開口部の内側方向へ張り出し、平面視で露出した構成となっている。前記構成により、雰囲気加熱によって溶融した前記封止材が、前記ベースの角部から、前記開口部を包囲する環状のベース堤部の内壁を伝って、ベース内底面(開口部底面)に向って流下しても、前記第2の絶縁層の内周4角部の、平面視で露出した部分(水平面)に溶融封止材が表面張力によって滞留するため、さらに下側にあるベース内底面まで流入しなくなる。これにより、溶融封止材のベース内底面への流入を防止することができる。なお、前記第2の絶縁層の露出した部分は必ずしも4角全てに形成されている必要はなく、例えば1つの角部に形成されていてもよい。また、電子部品素子とベースとの接合領域に近い側の角部(例えば2箇所)に形成すると、前記接合領域への悪影響を抑制できるので好ましい。
【0007】
上記構成によると、前記第2の絶縁層の、開口部の内側方向へ張り出した(露出した)部分は、前記第2の絶縁層の内周の4角だけであるので、前記第2の絶縁層の内周全体に亘って張り出した場合と比較して、内部キャビティ(開口空間)を大きくとることができる。
【0008】
また、請求項2の発明によれば、前述した構成のベースを用いて、前記開口部内に圧電振動素子を収納し、封止材が形成された平板状の蓋体で前記開口部を気密封止した圧電振動デバイスであるので、封止材のベース内部空間への流入を防止して確実な気密封止を行うことができる、信頼性の高い圧電振動デバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、小型化に対応し、耐衝撃性に優れた圧電振動デバイス用パッケージおよび圧電振動デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による実施形態について、図1乃至図5を参照して説明する。
なお、本発明の実施形態において、圧電デバイスとして表面実装型の水晶振動子を例に挙げている。図1は本発明の実施形態を示す水晶振動子の断面図であり、図2は本発明の実施形態を示すベースの上面図である。図3は図2のA−A線に沿った断面図であり、図4は図2のB部の拡大斜視図、図5は本発明の実施形態を示す蓋体の下面図である。なお、図1および図3において、水晶振動片の表裏面に形成される電極または、ベース底面(裏面)に形成される外部接続端子、当該外部接続端子とベース内部の搭載パッドとを電気的に接続するための接続手段の記載は省略している。また、図2において水晶振動片の表裏面に形成される引出電極と接続電極の記載は省略している。
【0011】
本実施形態で適用される水晶振動子1は、図1に示すように断面視凹状のベース2と、平面視矩形状の水晶振動片3と、平板状の蓋体4とから構成されている。そして前記水晶振動片3は、一端側がベース内部で片持ち支持接合される形態となっている。まず前記各構成部材について説明した後、本実施形態で適用される水晶振動子の製造方法について説明する。
【0012】
図2は本発明の実施形態を示すベースの平面図であり、当該ベース内部に水晶振動片3が収容された状態を表している。図2においてベース2は、アルミナセラミック材料から成る3枚のセラミックグリーンシートから構成され、図3に示すように、平板状の第1の絶縁層2aの上に、枠状の第2の絶縁層2bが積層され、さらにその上部に枠状の第3の絶縁層2cが積層されて、焼成によって一体的に成形されている。そして、前記ベース2は凹部24を有する、上部が開口した平面視矩形状の容器体であり、枠状の前記第3の絶縁層2cの上面は平坦な状態となっている。本実施形態では、前記ベース2の外形寸法は、長辺×短辺=2.5mm×2.0mmで、高さは約0.5mmとなっている。なお、前記外形寸法は一例であり、ベース外形寸法はこれに限定されるものではない。
【0013】
前記第2の絶縁層2bと前記第3の絶縁層2cは、それぞれ、内周の4角部分は円弧状になっている。そして前記第2の絶縁層2bの内周の4角部分は、円弧の曲率が、前記第3の絶縁層2cの内周の4角部分の円弧の曲率よりも大きくなるように形成されている。つまり、前記第1〜第3の3つの絶縁層を積層して一体焼成すると、前記曲率の差異により、第2の絶縁層2bの、内周の4角の一部は内側(凹部24)方向へ張り出して、平面視で露らになった露出部21が形成される。したがって、枠状の堤部25の内周の4つの角部それぞれを断面で見たとき、段部(前記露出部21)が凹部24へ内向した階段状の形状となり、前記4つの角部以外の辺部における堤部の断面形状は矩形状となっている。
【0014】
上記構成によると、前記露出部21の形成位置は、前記第2の絶縁層2bの、内周の4角の一部だけであるので、露出部が前記第2の絶縁層2bの内周全体に亘って形成さている場合と比較して、内部キャビティ(開口空間)を大きくとることができ、水晶振動片をベース内部へ搭載する際の作業性が向上する。
【0015】
図7に示すように、従来のベースの堤部25は断面視矩形状であり、蓋体とベースの気密封止の際に、溶融した封止材が前記堤部上面の4角部から凹部24へ横溢すると、重力によって堤部25の内壁面を伝って流下し、ベース内底部にまで到達することがある。そして、前記溶融封止材が水晶振動片に到達した場合、その後の水晶振動子製造工程中の熱履歴によって水晶振動片に熱応力が発生し、発振周波数の変動等の不具合が発生してしまう。また、従来ベースにおいて堤部25は1層で形成されていたが、本発明のベースでは前記堤部は2層化(2bと2c)されている(図4参照)。さらに、4角部における堤部25の断面形状が階段状であるため、前記堤部上面の4角部から溶融封止材が横溢して堤部25の最上層(2c)の内壁面を伝って流下しても、その下部にある段部(前記露出部21)上に表面張力によって滞留する。すなわち前記露出部21は溶融封止材の、ベース内底面への流入を防止するための“堤防”の役割を果たしている。
【0016】
なお、前記露出部21の表面に工夫を加えることによって、前述の、封止材のベース内底部への流入防止効果の向上が期待できる。例えば、前記露出部の表面を前記封止材と密着力の高い(濡れ性が良い)材料で被覆したり、前記露出部の表面を粗面化して表面積を拡大することで密着性を高める等によって、前記効果の向上が期待できる。
【0017】
前記凹部24の長手方向一端側の、前記第1の絶縁層2a上面には一対の搭載パッド22が並列して形成されている。前記搭載パッド22は、前記第1の絶縁層2aの上面にタングステンメタライズを施し、その上部にニッケルメッキが、さらにその上部に金メッキが施されている。そして、前記搭載パッド22は、ベース2の底面(裏面)に形成されている外部接続端子(図示せず)と、ベース2の外周上下部の4角にキャスタレーション(C1、C2、C3、C4)を介して電気的に接続されている。なお、前記搭載パッド22と前記外部接続端子との電気的接続は、ビアホールを形成することによって行ってもよい。
【0018】
そして、前記一対の搭載パッド22と対向し、凹部24の長手方向他端側の、前記第1の絶縁層2a上面には水晶振動子片の自由端側と近接する位置に、枕部23が形成されている。ここで、前記枕部23はタングステンメタライズによって形成されている。ここで前記枕部23は、後述する水晶振動片が外的要因による衝撃(例えば水晶振動子1の落下など)を受けた際に自由端側が当該枕部23と接触することで、自由端側の変位量を抑制して水晶振動子の特性を安定化させるために形成されている。
【0019】
次に、本実施形態で使用される水晶振動片3について説明する。図2で水晶振動片3は、平面視矩形状のATカット水晶板であり、前記水晶振動片3の表裏面には、当該水晶振動片を駆動させるための励振電極(図示せず)と、前記励振電極から引き出される引出電極(図示せず)と、前記引出電極と接続し,水晶振動片の一端部両側に形成された一対の接続電極(図示せず)とが形成されている。これらの電極は水晶振動板の上に、クロム(Cr)−金(Au)−クロム(Cr)の順序で蒸着法等によって成膜される。なお、前記電極の膜構成は、これに限定されるものではなく、例えば水晶振動板の上に、Cr−Auの順に、あるいは水晶振動板の上に、Cr−Ag(銀)の順に、または水晶振動板の上に、Cr−Ag−Crの順で膜構成されたものであってもよい。
【0020】
本実施形態で使用される蓋体4は、平面視矩形状のセラミック材料から成り、当該蓋体の下面、すなわちベース2の堤部25の上面には周状に封止材6が形成されている。本実施形態では前記封止材として低融点ガラスが使用されている。前記封止材6は、予め枠状に型取りされた封止材をセラミック材料の蓋体基体の表面に位置決めして載置した後、加熱処理して前記封止材を溶融させることによって、前記枠状の封止材と蓋体基体とが一体化される。(参考として前記加熱処理前の状態を図5に示す。)しかし、前記加熱処理をすると、溶融した前記封止材は辺部から4角部へ向って流動し、最終的には4角部における封止材の幅が、辺部における封止材の幅よりも大きくなる傾向が見られる。その結果、4角部は封止材の量が辺部よりも多くなり、蓋体とベースとの加熱雰囲気での気密封止時に、4角部からベースの凹部へ流入しやすくなる。なお、前記蓋体材料として、セラミック材料以外に、コバールを母材として、その上部にニッケルめっき層、金めっき層が形成された金属性材料から構成されていてもよい。この場合、封止材としてAn−Sn合金等の金属ロウ材が使用される。以上が水晶振動子の各構成部材についての説明である。
【0021】
次に本発明における水晶振動子の製造方法について説明を行う。
まず、前記電極が形成された水晶振動片3の一端側に形成された前記一対の接続電極を、導電性接合材5を介して一対の搭載パッド22と一対一で接合する。前記接合は、所定温度プロファイルに制御された雰囲気下で前記導電性接合材5を硬化させることによって行われる。前記導電性接合材として、例えばシリコーン系の導電性樹脂接合材が使用される。なお、導電性接合材はシリコーン系の導電性樹脂接合材に限定されるものではなく、シリコーン系以外にもエポキシ系などの導電性樹脂接合材を使用してもよい。
【0022】
前記水晶振動片3と前記搭載パッド22とを接合して、周波数の微調整を行った後、前記ベース2の堤部25の上面に、蓋体4を当該蓋体の外周が略一致するようにして被せ、所定温度に加熱することにより、蓋体4に形成された封止材6を溶融させて蓋体4とベース2との気密封止を行う。以上により表面実装型の水晶振動子1の完成となる。
【0023】
本発明の実施形態において、前記露出部21は、第3の絶縁層2cと第2の絶縁層2bの内周の4角部の円弧の曲率に差異を持たせることによって形成しているが、これに限定されるものではなく、例えば4つの角部の曲線を直線に替えてもよい。要は、前記第2の絶縁層の、内周4角部に形状に工夫を加えて、平面視で、第3の絶縁層の内周4角部よりも、前記第2の絶縁層の内周4角部の方が内側(凹部寄り)に張り出している(露出している)状態となるようにすればよく、形状は問わない。
【0024】
また、前述した構成のベース2を用いて、前記凹部24内に水晶振動片3を収納し、封止材6が形成された平板状の蓋体4で前記開口部を気密封止した水晶振動子であるので、封止材6のベース内部空間への流入を防止して確実な気密封止を行うことができる、よって信頼性の高い水晶振動子を得ることができる。
【0025】
なお、本発明の実施形態では蓋体側にだけ封止材が形成され、ベース側には封止材が形成されていない構成となっているが、前記構成に限定されるものではなく、例えばベースの堤部上面にだけ封止材が形成された構成や、蓋体とベースの両方に封止材が形成された構成であってもよい。
【0026】
本発明の実施形態では、封止材としてガラス材を例にしているが、セラミックベースと金属製の蓋体を用い、封止材に銀ロウ等のロウ材を用いた雰囲気加熱による封止でも適用できる。さらに本発明の実施形態では表面実装型水晶振動子を例にしているが、水晶フィルタ、水晶発振器など電子機器等に用いられる他の表面実装型の圧電振動デバイスにも適用可能である。
【0027】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
圧電振動デバイスの量産に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態を示す水晶振動子の断面図。
【図2】本発明の実施形態を示すベースの上面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】図2のB部の拡大斜視図。
【図5】本発明の実施形態を示す蓋体の下面図。
【図6】従来のベースの上面図。
【図7】従来のベースの断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 水晶振動子
2 ベース
3 水晶振動片
4 蓋体
5 導電性接合材
6 封止材
21 露出部
22 搭載パッド
23 枕部
24 凹部
25 堤部
2a 第1の絶縁層
2b 第2の絶縁層
2c 第3の絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の第1の絶縁層の上に、枠状の第2の絶縁層が積層され、前記第2の絶縁層上に、枠状の第3の絶縁層が積層された構成で、上部に開口部を有する平面視矩形状のベースと、封止材が形成された平面視矩形状の蓋体とからなる電子部品用パッケージであって、
前記ベースは、前記第2の絶縁層の内周の4角の一部が、前記開口部の内側方向へ張り出し、平面視で露出していることを特徴とする電子部品用パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載のベースを用いて、前記開口部内に圧電振動素子を収納し、封止材が形成された平板状の蓋体で前記開口部を気密封止した圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−60260(P2009−60260A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224405(P2007−224405)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】