説明

電気ヒータ

【課題】 電気ヒータ内の微小な液体浸漬でも漏電検知を可能とし、漏電事故、感電事故、火災事故を防止する。
【解決手段】 電気ヒータ1は、絶縁体からなる絶縁体筐体3の内部に、絶縁体からなるヒータ線巻付け部5と、このヒータ線巻付け部5に巻かれたヒータ線7と、このヒータ線7に電源を供給する電力供給電線9と、この電力供給電線9を前記ヒータ線7に接続する接続部11と、漏電を検出する接地線電極13と、この接地線電極13に接続する接地線15とを気密的に設けると共に、前記接地線電極13から接地線15に流れる漏電を検知して電力供給電線9への電力供給を遮断する漏電遮断器を設けている。前記接地線電極13を、前記ヒータ線7や接続部11などの充電露出部より低い位置に配置すると共に前記ヒータ線7や接続部11などの充電露出部から絶縁物で絶縁した構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気ヒータに関し、特に電気ヒータとしての例えば石英管内にヒータ線を備えた石英管ヒータ内に液体が浸入したときに電気ヒータの漏電を高感度に検知する漏電検知装置を備えた電気ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
メッキ装置およびその他の設備において薬品溶液等の液体を加熱するために、電気ヒータが多く使用されている。この電気ヒータの中には、耐薬品性および絶縁性などから石英管などの絶縁体を外部筐体に使用した石英管ヒータが多く使用されている。
【0003】
特に、電解メッキ装置などのメッキ装置では、メッキ槽内を絶縁物で構成することは製品品質に悪影響を与える迷走電流を防止根絶するためにも重要であり、石英管等の絶縁体を外部筐体に使用する電気ヒータが多く用いられる重要な理由でもある。
【0004】
他方、従来の石英管等の絶縁体を外部筐体に使用する電気ヒータ、所謂石英管ヒータは、金属および導電性の外部筐体を使用する電気ヒータに比べて、漏電検出目的の接地線電極の構成が非常に困難であり、高感度の漏電検出が困難であった。
【0005】
この漏電検出は、感電事故および火災事故の防止目的であり、電気ヒータを含めた電気機器にとっては非常に重要な品質要求事項である。
【0006】
図6を参照するに、従来の電気ヒータとしての例えば石英管ヒータ101では、石英管筐体103の内部に、スパイラル状の溝部を外周に備えたセラミックからなる巻き芯105(あるいはボビン)と、この巻き芯105に巻かれたヒータ線107(ニクロム線)と、このヒータ線107に電源を供給する電力供給電線109と、この電力供給電線109を前記ヒータ線107に接続する接続部111(「導体露出部」ともいう)と、漏電を検出する接地線電極113と、この接地線電極113に接続する接地線115が気密的に設けられている。
【0007】
例えば、図6では石英管筐体103がL字形状をなしており、上記の巻き芯105、ヒータ線107、接続部111、電力供給電線109、接地線電極113及び接地線115が石英管筐体103の内部に投入されると共に、前記電力供給電線109及び接地線115はそれぞれ絶縁被覆部で保護され、かつ延長用絶縁被覆管117内に挿通されて外部から保護されており、前記延長用絶縁被覆管117が石英管筐体103の上部で気密シールされている。
【0008】
なお、上記のヒータ線107が例えば三相のU,V,Wの各線から構成されている場合、前記巻き芯105の外周には図示しない3つのヒータ用溝部がスパイラル状に形成されており、三相のヒータ線107が前記各ヒータ用溝部に巻かれている。また、前記巻き芯105の両端にはフランジ部119が備えられている。さらに、上記の各ヒータ線107は図6のようにほぼ点線で図示されているが、実際には螺旋状に巻かれた露出導体線であり、このヒータ線107とは電力供給電線109が露出した導体の接続部111(所謂、導体露出部)で接続される構成である。なお、上記のヒータ線107は単相の場合もある。
【0009】
また、上記の延長用絶縁被覆管117から石英管筐体103の内部へ挿通された接地線115の先端は、石英管筐体103のL字形状の上部付近までしか伸びておらず、この接地線115の先端に接地線電極113が接続されている構成である。すなわち、接地線電極113は石英管筐体103のL字形状の上部付近に位置している。
【0010】
上記の石英管ヒータ101は、図7に示されているように、通常は薬液あるいはその他の液体を入れた槽121(液体容器)の中に投入して前記液体を加熱するものである。なお、メッキ装置である場合は槽121(液体容器)が例えば樹脂製絶縁物で構成されている。
【0011】
このとき、図8の矢印で示されているように、石英管ヒータ101の石英管筐体103に破損あるいはピンホール等のために石英管筐体103の内部に導電性の液体が浸漬した場合、ヒータ線107から漏電が生じる。この漏電を検知するために石英管ヒータ101には上述した接地線電極113及び接地線115を含む漏電検知装置123が設けられている。
【0012】
例えば、前記漏電検知装置123としては、図8の電気回路図に示されているように、三相のヒータ線107に電力供給している電力供給電線109には接地線電極113から接地線115に流れる漏電を検知するZCT125(零相電流検出変成器)を備えた漏電遮断器127が設けられている。
【0013】
したがって、液体が石英管筐体103の内部に浸入して拡散もしくは充満すると、充電部が露出しているヒータ線107と接地線電極113が液体により短絡(電気的に導通する状態)し、接地線電極113から接地線115を介して漏洩電流が対地に流れることになる。この漏洩電流により発生する零相電流が上記の漏電遮断器127のZCT125(ゼロ相電流検出変成器)で検知され、この検知により同時に漏電遮断器127が石英管ヒータ101へ電力供給を停止する。
【0014】
また、従来の電気ヒータとしては、例えば特許文献1ではセラミックヒータが示されており、2つのセラミック層の間にヒータ配線を配置し、前記セラミック層の上面に割れ検出用配線及び別のセラミック層を配設する。ここで、前記別のセラミック層が割れてヒータ配線が露出するようになると、前記割れ検出用配線が断線する。この割れ検出用配線の断線が検出回路で検出されと、前記ヒータ配線への給電を停止する構成である。
【0015】
また、特許文献2では電気ヒータとしての液体加熱用ヒータ装置が示されており、ヒータ全体を覆う耐熱性の外側部材に対して、中間部材を介してカンタル線を卷回した耐熱性の内側部材が取り付けられており、上記カンタル線が外側部材に接触しないように両者の間隔が空けられている。また、上記外側部材内には、漏水検出用導線が配設されており、この導線のショート状態で漏水状態を検出することにより、浸食状態が把握できる構成である。
【特許文献1】特開平9−266060号公報
【特許文献2】実開平5−75995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、従来の電気ヒータにおいては、微小な液体浸漬に対しては、漏電検知が不可能であるという問題点があった。
【0017】
図6及び図8に示された電気ヒータとしての石英管ヒータ101では、ヒータ線107や接続部111の導体露出部など充電露出部では導体が露出しているので、これらの充電露出部に漏電検知用の接地線電極113が接近して配置されると、ヒータ線107や接続部111などの充電露出部に印加された電圧が接地線電極113との間で地絡事故を起こす危険が考えられた。このため、接地線電極113はヒータ線107や接続部111などの充電露出部から上記の地絡事故を起こさないほどに離れた位置まで後退して設置されている。
【0018】
したがって、例えば図9及び図10に示されているように石英管筐体103に生じた微小な損傷やピンホールから液体が石英管筐体103の内部に浸入した状態では、液体がヒータ線107の近傍のみに浸漬して上記の接地線電極113まで到達しないことになる。このために、図10に示されているように、漏洩電流の経路が形成されないために漏電遮断器127が作動せず、漏電検知が行えないという問題点があった。
【0019】
なお、石英管筐体103の内部に浸入してヒータ線107や接続部111の充電露出部に達した液体は前記充電露出部と同じ電位となる。そのために、図10に示されているように漏電遮断器127が動作しない状態では、液体の電位が最大でヒータ線107に印加されている電位まで上昇する危険がある。
【0020】
したがって、微小な液体浸漬が発生している状況においては、図11に示されているように人間が例えばメッキ装置の槽121内の液体に接触した場合、漏洩電流が人体を介して流れるため、感電事故の危険がある。さらには、上記の漏洩電流が長期間にわたって高抵抗の経路を経由して流れた場合は、火災発生の危険があるという問題点があった。
【0021】
また、特許文献1では、ヒータ配線が2つのセラミック層の間にラミネートされていると共に割れ検出用配線が前記セラミック層の上面に配設して絶縁され、割れ検出用配線の外側にさらに別のセラミック層を配設した複雑な構造であるので、製造工程が複雑となるために製造効率の低下で製造コストが高くなることや3つのセラミック層を要するので高価になるという問題点があった。
【0022】
また、特許文献2では、2本の漏水検出用導電線の間のショート状態(短絡)を検知するシステムであるので、この導通(短絡)の測定に使用する電圧が低い場合は、カンタル線(ヒータ線107に該当)から外部への微小な漏洩電流を測定できないという問題点があった。そこで、カンタル線の対地電圧に相当する電圧を加えれば、微小な漏洩電流を検知することが可能であるが、この場合であっても検出機器までの間に2本の漏水検出用導電線を必要とし、また、別途に測定用の電圧発生装置も必要とするので高価になるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記発明が解決しようとする課題を達成するために、この発明の電気ヒータは、絶縁体からなる絶縁体筐体の内部に、絶縁体からなるヒータ線巻付け部と、このヒータ線巻付け部に巻かれたヒータ線と、このヒータ線に電源を供給する電力供給電線と、この電力供給電線を前記ヒータ線に接続する接続部と、漏電を検出する接地線電極と、この接地線電極に接続する接地線とを気密的に設けると共に、前記接地線電極から接地線に流れる漏電を検知して電力供給電線への電力供給を遮断する漏電遮断器を設けた電気ヒータにおいて、
前記接地線電極を、前記ヒータ線や接続部などの充電露出部より低い位置に配置すると共に前記ヒータ線や接続部などの充電露出部から絶縁物で絶縁した構成であることを特徴とするものである。
【0024】
また、この発明の電気ヒータは、前記電気ヒータにおいて、前記ヒータ線巻付け部に、前記ヒータ線や接続部などの充電露出部の水平高さよりも低くなる位置まで達する絶縁体構造物を少なくとも1箇所以上設けると共に、前記各絶縁体構造物に前記接地線電極を設けることが好ましい。
【0025】
また、この発明の電気ヒータは、前記電気ヒータにおいて、前記接地線電極を、前記絶縁体筐体の内面の底面に配置した金属もしくは耐熱性の導電物で構成し、且つ前記接地線電極とヒータ線との間を絶縁体で絶縁していることが好ましい。
【0026】
また、この発明の電気ヒータは、前記電気ヒータにおいて、前記絶縁体が絶縁性繊維の編組テープであることが好ましい。
【0027】
この発明の電気ヒータは、絶縁体からなる絶縁体筐体の内部に、絶縁体からなるヒータ線巻付け部と、このヒータ線巻付け部に巻かれたヒータ線と、このヒータ線に電源を供給する電力供給電線と、この電力供給電線を前記ヒータ線に接続する接続部と、漏電を検出する接地線電極と、この接地線電極に接続する接地線とを気密的に設けると共に、前記接地線電極から接地線に流れる漏電を検知して電力供給電線への電力供給を遮断する漏電遮断器を設けた電気ヒータにおいて、
前記接地線電極を、前記ヒータ線巻付け部に前記ヒータ線と絶縁した状態で巻付けた構成であることを特徴とするものである。
【0028】
また、この発明の電気ヒータは、前記電気ヒータにおいて、前記接地線電極と前記ヒータ線を同じピッチで巻付けた構成であることが好ましい。
【0029】
また、この発明の電気ヒータは、前記電気ヒータにおいて、前記接地線電極を、絶縁物を介して前記ヒータ線巻付け部に巻付けた構成であることが好ましい。
【0030】
また、この発明の電気ヒータは、前記電気ヒータにおいて、前記絶縁物を複数の短尺の中空円筒体で構成し、且つ前記中空円筒体に前記接地線電極を挿通していることが好ましい。
【0031】
また、この発明の電気ヒータは、前記電気ヒータにおいて、前記絶縁物を絶縁性繊維の編組もしくは織物で構成し、且つ前記編組もしくは織物で前記接地線電極を被覆していることが好ましい。
【0032】
また、この発明の電気ヒータは、前記電気ヒータにおいて、前記絶縁物の材質が耐熱性を有する石英ガラス又はセラミックスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の電気ヒータによれば、接地線電極がヒータ線や接続部などの充電露出部より低い位置に配置すると共に前記ヒータ線や接続部などの充電露出部から絶縁物で絶縁されているので、簡単な構造であるために安価であると共に微小な液体浸漬に対してもヒータ線と接地線電極が短絡して漏洩電流を検知可能となり、漏電事故、感電事故、火災事故を防止できる。
【0034】
しかも、1本の接地線とヒータ線の間では、前記ヒータ線の対地電圧で漏洩電流を測定するので、微小な漏洩電流を検知できる。また、接地線が1本だけで漏電検知可能であるので、電気ヒータ内でのスペース確保という点においても効果がある。
【0035】
また、接地線電極がヒータ線や接続部などの充電露出部とは絶縁物で絶縁された状態で接地線と接続されているので、絶縁体筐体の外部から液体の浸入がない状態では地絡事故が発生せず、且つ液体浸入時には一線地絡事故の前に、漏電遮断器により電源を遮断することができる。
【0036】
また、この発明の他の電気ヒータによれば、上述した電気ヒータとほぼ同様の効果を奏するが、異なる点は、接地線電極がヒータ線巻付け部にヒータ線と絶縁した状態で撚り合わされているので、液体が絶縁体筐体の内部に浸入した場合、ヒータ線と接地線電極の間で導通となるレベルまで液が溜まると、ヒータ線と接地線電極が液体により確実に短絡し、接地線を介して漏洩電流が漏電遮断器で検知されてヒータ線への電力供給を確実に停止できる。
【0037】
この場合は、接地線電極が、従来の幾つものセラミック層の絶縁物で絶縁する構造に比べて、より簡単な構造でヒータ線と並列に配線することができるので安価となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0039】
図1(A)を参照するに、第1の実施の形態に係る電気ヒータとしての例えば石英管ヒータ1は、絶縁体である石英管からなる絶縁体筐体としての例えば石英管筐体3の内部に、スパイラル状の溝部を外周に備えた絶縁体としての例えばセラミックからなるヒータ線巻付け部としての例えば巻き芯5(あるいはボビン)と、この巻き芯5に巻かれた例えばニクロム線などのヒータ線7と、このヒータ線7に電源を供給する電力供給電線9と、この電力供給電線9を前記ヒータ線7に接続する接続部11(「導体露出部」ともいう)と、漏電を検出する接地線電極13と、この接地線電極13に接続する接地線15が気密的に設けられている。
【0040】
例えば、図1(A)では石英管筐体3がL字形状をなしており、上記の巻き芯5、ヒータ線7、接続部11、電力供給電線9、接地線電極13及び接地線15が石英管筐体3の内部に投入されると共に、前記電力供給電線9及び接地線15はそれぞれ絶縁被覆部で保護され、かつ延長用絶縁被覆管17内に挿通されて外部から保護されており、前記延長用絶縁被覆管17が石英管筐体3の上部で気密シールされている。
【0041】
なお、上記のヒータ線7が例えば三相のU,V,Wの各線から構成されている場合、前記巻き芯5の外周には図1(B)に示されているように3つのヒータ用溝部19がスパイラル状に形成されており、三相のヒータ線7がそれぞれ各ヒータ用溝部19に巻かれている。また、前記巻き芯5の両端には巻き芯5の直径より大きな径の左右フランジ部21,23が備えられている。さらに、上記の各ヒータ線7は図1(A)のようにほぼ点線で図示されているが、実際には螺旋状に巻かれた露出導体線であり、このヒータ線7とは電力供給電線9が露出した導体の接続部11(所謂、導体露出部)で接続される構成である。なお、上記のヒータ線7は単相の場合もある。
【0042】
また、上記の両側の左右フランジ部21,23は巻き芯5と同じ材質のセラミックからなり、所謂、絶縁体構造物である。この両側の左右フランジ部21,23のうちの一方側の右フランジ部23(この実施の形態では、接地線15が配置されている側に近い右側のフランジ部)の外周には、銅テープのような接地線電極13が全周に亘って巻き付けられている。前記接地線電極13には、上記の延長用絶縁被覆管17から石英管筐体3の内部へ挿通された接地線15が接続されている。
【0043】
なお、上記の接地線電極13は前記ヒータ線7や接続部11(導体露出部)などの充電露出部より低い位置に配置されていることが必要な構成要件であるので、接地線電極13が上記の右フランジ部23の全周に亘って巻き付けられてなくとも、上記の右フランジ部23の下部で前記ヒータ線7や接続部11などの充電露出部の水平高さより低い位置に部分的に取り付け固定されていても良い。あるいは、接地線電極13が設けられる絶縁体構造物が上記の右フランジ部23でなくとも、上記の巻き芯5に固定した絶縁体からなるスペーサ、あるいはその他の絶縁体構造物であっても良い。
【0044】
上記の石英管ヒータ1は、通常は薬液あるいはその他の液体を入れた槽(液体容器)の中に投入して前記液体を加熱するものである。なお、メッキ装置である場合は槽(液体容器)が樹脂製絶縁物で構成されている。
【0045】
このとき、図1(C)の矢印で示されているように、石英管ヒータ1の石英管筐体3に破損あるいはピンホール等のために石英管筐体3の内部に導電性の液体が浸漬した場合、ヒータ線7から漏電が生じる。この漏電を検知するために石英管ヒータ1には上述した接地線電極13と接地線15を含む漏電検知装置25が設けられている。
【0046】
例えば、前記漏電検知装置25としては、図1(C)の電気回路図に示されているように、三相のヒータ線7に電力供給している電力供給電線9には接地線電極13から接地線15に流れる漏電を検知するZCT27(零相電流検出変成器)を備えた漏電遮断器29が設けられている。
【0047】
上記構成により、石英管筐体3に破損あるいはピンホール等のために、液体が石英管筐体3の内部に浸入した場合、充電部が露出しているヒータ線7や接続部11などの充電露出部と接地線電極13との間で導通となるレベルまで液が溜まると、前記充電露出部と接地線電極13が液体により短絡し、接地線電極13から接地線15を介して漏洩電流が対地に流れることになる。この漏洩電流により発生する零相電流が上記の漏電遮断器29のZCT27(零相電流検出変成器)で検知され、この検知により同時に漏電遮断器29が石英管ヒータ1へ電力供給を停止する。
【0048】
なお、この第1の実施の形態の場合は、石英管筐体3のL字形状の下辺側部分を右フランジ23の側が下方になるように水平より傾斜角θとして例えば約5°程度傾斜するか、あるいはL字部分を直角より例えば5°程度、右フランジ23の側に液が溜まりやすいように曲げると、漏電検知が早くなる。
【0049】
以上のことから、接地線電極13が絶縁体構造物である右フランジ部23にヒータ線7や接続部11などの充電露出部の水平高さよりも低くなる位置に設けられているので、簡単な構造であるために安価であると共に微小な液体浸漬に対しても漏洩電流を検知可能となり、漏電事故、感電事故、火災事故を防止できる。
【0050】
しかも、1本の接地線15であっても、ヒータ線7と接地線15の間の電圧(ヒータ線7の対地電圧)で漏洩電流を測定するので、微小な漏洩電流を検知できる。また、接地線15が1本だけで漏電検知可能であるので、石英管ヒータ1の内部でのスペース確保においても有利である。
【0051】
また、接地線電極13がヒータ線7や接続部11などの充電露出部とは絶縁体構造物である右フランジ部23で絶縁された状態で接地線15と接続されているので、石英管筐体3の外部から液体の浸入がない状態では地絡事故が発生せず、且つ液体浸入時には一線地絡事故の前に、漏電遮断器29の零相電流増加により電源を遮断することができる。
【0052】
次に、この発明の第2の実施の形態に係る電気ヒータとしての例えば石英管ヒータ31について説明する。なお、前述した第1の実施の形態の石英管ヒータ1と同様の部材は同符号を付して詳しい説明は省略し、主として異なる部分のみを説明する。
【0053】
図2を参照するに、石英管ヒータ31は、前述した第1の実施の形態の石英管ヒータ1の巻き芯5の両側の左右フランジ部21,23の外周に銅テープのような接地線電極13A,13Bが全周に亘って巻き付けられており、前記接地線電極13A,13Bには上記の延長用絶縁被覆管17から石英管筐体3の内部へ挿通された接地線15が接続されている。
【0054】
すなわち、右フランジ部23の接地線電極13Bには第1の実施の形態と同様に接地線15が直接接続されているが、左フランジ部21の接地線電極13Aには巻き芯5の中心部分を貫通している金属棒33を利用して、この金属棒33の図2において左端に接続すると共に前記金属棒33の右端には前記接地線15から分岐して接続されている。
【0055】
なお、上記の左右フランジ部21,23の接地線電極13A,13Bのその他の構成は前述した第1の実施の形態の右フランジ部23の接地線電極13と同様である。さらに、上記の左右フランジ部21,23のように、ヒータ線7や接続部11などの充電露出部の水平高さよりも低くなる位置まで達する絶縁体構造物を2箇所以上設けると共に、これらの各絶縁体構造物に接地線電極13A,13Bのような接地線電極を設けることができる。
【0056】
上記構成により、巻き芯5の両側の左右フランジ部21,23に接地線電極13A,13Bを設けたので、例えば石英管筐体3のL字形状の水平部分の先端側で破損あるいはピンホール等のために、液体が石英管筐体3の内部に浸入した場合、第1の実施の形態よりも早い漏電検知が可能となる。また、巻き芯5のヒータ線7が水平に配置されていない場合でも、左右フランジ部21,23の接地線電極13A,13Bのいずれかで確実に漏電検知が可能となる。なお、その他の効果は、前述した第1の実施の形態とほぼ同様である。
【0057】
次に、この発明の第3の実施の形態に係る電気ヒータとしての例えば石英管ヒータ35について説明する。なお、前述した第1の実施の形態の石英管ヒータ1と同様の部材は同符号を付して詳しい説明は省略し、主として異なる部分のみを説明する。
【0058】
図3(A),(B)を参照するに、石英管ヒータ35は、第1の実施の形態の石英管ヒータ1の右フランジ部23の接地線電極13に替えて、湾曲した平板状の金属もしくは耐熱性の導電物からなる接地線電極37が、第1の実施の形態の石英管ヒータ1と同様の石英管筐体3の内面の底面に配置されている。さらに、前記接地線電極37とヒータ線7との間が絶縁体としての例えばガラス繊維等の絶縁性繊維の編組テープ39で絶縁されている。なお、絶縁性繊維の編組テープ39はガラス繊維に限らず、他の材質の繊維でも良い。編組テープ39にした理由は、単純に水が浸入した場合に、編組テープ39の隙間に水が伝わり、早く漏電検出できるためである。
【0059】
また、上記の接地線電極37には、前述した延長用絶縁被覆管17から石英管筐体3の内部へ挿通された接地線15が接続されている。なお、前記湾曲した平板状の接地線電極37は、石英管筐体3の底面のほぼ全長に亘って設けられていることが望ましい。
【0060】
上記構成により、接地線電極37が石英管筐体3の内面の底面に配置されているので、液体が石英管筐体3の内部に浸入した場合、より早い漏電検知が可能となる。また、前記接地線電極37が石英管筐体3の底面のほぼ全長に亘って設けられていれば、巻き芯5のヒータ線7が水平に配置されていない場合でも、確実に漏電検知が可能となる。なお、その他の効果は、前述した第1の実施の形態とほぼ同様である。
【0061】
次に、この発明の第4の実施の形態に係る電気ヒータとしての例えば石英管ヒータ41について説明する。なお、前述した第1の実施の形態の石英管ヒータ1と同様の部材は同符号を付して詳しい説明は省略し、主として異なる部分のみを説明する。
【0062】
図4を参照するに、石英管ヒータ41は、第1の実施の形態の石英管ヒータ1の右フランジ部23の接地線電極13に替えて、接地線電極としての例えば接地線電極用電線43が、ヒータ線巻付け部としての例えば巻き芯5に前記ヒータ線7としての例えば三相のU,V,Wの各線と絶縁した状態で撚り合わされている。
【0063】
この場合は、巻き芯5の外周には図1(B)に示されているような4つのヒータ用溝部19がスパイラル状に形成されており、三相のヒータ線7と接地線電極用電線43が絶縁体である巻き芯5の各ヒータ用溝部19に巻かれているので、三相のヒータ線7と接地線電極用電線43は互いに絶縁された状態である。
【0064】
また、上記の接地線電極用電線43には、前述した延長用絶縁被覆管17から石英管筐体3の内部へ挿通された接地線15が接続されている。
【0065】
上記構成により、接地線電極としての例えば接地線電極用電線43が巻き芯5にヒータ線7の三相のU,V,Wの各線と絶縁した状態で巻かれているので、液体が石英管筐体3の内部に浸入した場合、充電部が露出しているヒータ線7と接地線電極用電線43の間で導通となるレベルまで液が溜まると、ヒータ線7と接地線電極用電線43が液体により確実に短絡し、前記接地線電極用電線43から接地線15を介して漏洩電流が対地に流れて漏電遮断器29のZCT27(零相電流検出変成器)で検知され、漏電遮断器29で石英管ヒータ1へ電力供給を確実に停止できる。
【0066】
この場合は、接地線電極用電線43が、従来の特許文献1のように幾つものセラミック層の絶縁物で絶縁する構造に比べて、より簡単な構造でヒータ線7と並列に配線することができるので安価となる。なお、その他の効果は、前述した第1の実施の形態とほぼ同様である。
【0067】
なお、上記の接地線電極用電線43とヒータ線7の三相のU,V,Wの各線が巻き芯5に同じピッチで巻かれていることは、この巻かれた接地線電極用電線43とヒータ線7のどの箇所に液体が浸入してもヒータ線7と接地線電極用電線43で短絡して漏電検知できるという点で望ましいが、必ずしも同じピッチで巻かれていなくても良い。
【0068】
また、上記の第4の実施の形態の石英管ヒータ41に対する他の実施の形態としては、図5に示されているように、前記接地線電極用電線43が絶縁物としての例えば複数の短尺の中空円筒体45に挿通された状態で前記巻き芯5に巻かれることもできる。中空円筒体45を短尺にすることにより、中空円筒体45で絶縁された接地線電極用電線43を曲げることが可能となり、巻き芯5に巻付けることができる。この場合は、接地線電極用電線43が複数の短尺の中空円筒体45によりヒータ線7の三相のU,V,Wの各線と確実に絶縁されるという点で望ましい。
【0069】
また、上記の絶縁物は、複数の短尺の中空円筒体45に替えて、図示しない絶縁性繊維の編組もしくは織物で構成することができる。すなわち、前記接地線電極用電線43が絶縁性繊維の編組もしくは織物で被覆された状態で前記巻き芯5に巻かれる。この場合も上述した複数の短尺の中空円筒体45と同様に、接地線電極用電線43が絶縁性繊維の編組もしくは織物によりヒータ線7の三相のU,V,Wの各線と確実に絶縁されるという点で望ましい。また、接地線電極用電線43を絶縁性繊維の編組もしくは織物で被覆した状態にすることは、単純に水が浸入した場合に、編組もしくは織物の隙間から水が伝わって、早く漏電検出できるためである。
【0070】
なお、上記の絶縁物としての中空円筒体45や絶縁性繊維の材質は、耐熱性を有する石英ガラス又はセラミックスであれば、絶縁性に加えて耐熱性が備えられるという点で望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】(A)はこの発明の第1の実施の形態の電気ヒータの内部を示す概略的な斜視図で、(B)は巻き芯の部分的な斜視図で、(C)は電気ヒータの概略的な電気回路図である。
【図2】この発明の第2の実施の形態の電気ヒータの内部を示す概略的な斜視図である。
【図3】(A)はこの発明の第3の実施の形態の電気ヒータの内部を示す概略的な斜視図で、(B)は石英管筐体の底面付近の要部断面図である。
【図4】この発明の第4の実施の形態の電気ヒータの内部を示す概略的な斜視図である。
【図5】ヒータ線及び接地線電極用電線が巻かれた巻き芯の部分的な斜視図である。
【図6】従来の電気ヒータの内部を示す概略的な斜視図である。
【図7】電気ヒータを槽内の液体中に投入している状態の概略的な説明図である。
【図8】従来の電気ヒータの概略的な電気回路図である。
【図9】従来の電気ヒータの内部に微小な液体浸漬が生じたときの状態を示す概略的な斜視図である。
【図10】図9のときの概略的な電気回路図である。
【図11】感電事故の危険性を示す概略的な説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 石英管ヒータ(第1の実施の形態の電気ヒータ)
3 石英管筐体(絶縁体筐体)
5 巻き芯(ヒータ線巻付け部)
7 ヒータ線
9 電力供給電線
11 接続部(導体露出部)
13 接地線電極
15 接地線
17 延長用絶縁被覆管
19 ヒータ用溝部
21 左フランジ部
23 右フランジ部
25 漏電検知装置
27 ZCT(零相電流検出変成器)
29 漏電遮断器
31 石英管ヒータ(第2の実施の形態の電気ヒータ)
33 金属棒
35 石英管ヒータ(第3の実施の形態の電気ヒータ)
37 接地線電極
39 編組テープ
41 石英管ヒータ(第4の実施の形態の電気ヒータ)
43 接地線電極用電線(接地線電極)
45 中空円筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体からなる絶縁体筐体の内部に、絶縁体からなるヒータ線巻付け部と、このヒータ線巻付け部に巻かれたヒータ線と、このヒータ線に電源を供給する電力供給電線と、この電力供給電線を前記ヒータ線に接続する接続部と、漏電を検出する接地線電極と、この接地線電極に接続する接地線とを気密的に設けると共に、前記接地線電極から接地線に流れる漏電を検知して電力供給電線への電力供給を遮断する漏電遮断器を設けた電気ヒータにおいて、
前記接地線電極を、前記ヒータ線や接続部などの充電露出部より低い位置に配置すると共に前記ヒータ線や接続部などの充電露出部から絶縁物で絶縁した構成であることを特徴とする電気ヒータ。
【請求項2】
前記ヒータ線巻付け部に、前記ヒータ線や接続部などの充電露出部の水平高さよりも低くなる位置まで達する絶縁体構造物を少なくとも1箇所以上設けると共に、この各絶縁体構造物に前記接地線電極を設けたことを特徴とする請求項1記載の電気ヒータ。
【請求項3】
前記接地線電極を、前記絶縁体筐体の内面の底面に配置した金属もしくは耐熱性の導電物で構成し、且つ前記接地線電極とヒータ線との間を絶縁体で絶縁してなることを特徴とする請求項1記載の電気ヒータ。
【請求項4】
前記絶縁体が絶縁性繊維の編組テープであることを特徴とする請求項3記載の電気ヒータ。
【請求項5】
絶縁体からなる絶縁体筐体の内部に、絶縁体からなるヒータ線巻付け部と、このヒータ線巻付け部に巻かれたヒータ線と、このヒータ線に電源を供給する電力供給電線と、この電力供給電線を前記ヒータ線に接続する接続部と、漏電を検出する接地線電極と、この接地線電極に接続する接地線とを気密的に設けると共に、前記接地線電極から接地線に流れる漏電を検知して電力供給電線への電力供給を遮断する漏電遮断器を設けた電気ヒータにおいて、
前記接地線電極を、前記ヒータ線巻付け部に前記ヒータ線と絶縁した状態で巻付けた構成であることを特徴とする電気ヒータ。
【請求項6】
前記接地線電極と前記ヒータ線を同じピッチで巻付けた構成であることを特徴とする請求項5記載の電気ヒータ。
【請求項7】
前記接地線電極を、絶縁物を介して前記ヒータ線巻付け部に巻付けた構成であることを特徴とする請求項5記載の電気ヒータ。
【請求項8】
前記絶縁物を複数の短尺の中空円筒体で構成し、且つ前記中空円筒体に前記接地線電極を挿通してなることを特徴とする請求項7記載の電気ヒータ。
【請求項9】
前記絶縁物を絶縁性繊維の編組もしくは織物で構成し、且つ前記編組もしくは織物で前記接地線電極を被覆してなることを特徴とする請求項7記載の電気ヒータ。
【請求項10】
前記絶縁物の材質が耐熱性を有する石英ガラス又はセラミックスであることを特徴とする請求項8又は9記載の電気ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−130365(P2008−130365A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314259(P2006−314259)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】