電気光学装置、電気光学装置の製造方法、電子機器
【課題】狭額縁化を実現可能な電気光学装置、電気光学装置の製造方法、電子機器を提供すること。
【解決手段】本適用例の電気光学装置100は、素子基板10上に対向配置された一対の電極としての画素電極21と陰極27と、一対の電極間に配置された発光層23を含む機能層25とを有する発光素子30と、複数の発光素子30が配置された画素領域107と、素子基板10上において画素領域107の外側に配置され、一対の電極のうちの一方の電極としての陰極27に電気的に接続される接続配線106と、接続配線106に重なると共に接続配線106より画素領域107側に延在して配置された接続部105と、を備え、陰極27は、画素領域107に亘って設けられると共に、画素領域107の外側にて接続部105の画素領域107に近い側の一方の端部105aに重なって設けられている。
【解決手段】本適用例の電気光学装置100は、素子基板10上に対向配置された一対の電極としての画素電極21と陰極27と、一対の電極間に配置された発光層23を含む機能層25とを有する発光素子30と、複数の発光素子30が配置された画素領域107と、素子基板10上において画素領域107の外側に配置され、一対の電極のうちの一方の電極としての陰極27に電気的に接続される接続配線106と、接続配線106に重なると共に接続配線106より画素領域107側に延在して配置された接続部105と、を備え、陰極27は、画素領域107に亘って設けられると共に、画素領域107の外側にて接続部105の画素領域107に近い側の一方の端部105aに重なって設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、電気光学装置の製造方法、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置として、基板上において、一対の電極と、該一対の電極間に有機膜からなる発光層を含む機能層を備えた有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を有する有機EL装置が知られている。
【0003】
上記有機EL装置において、上記機能層は、水分や気体の吸収により発光寿命が低下するおそれがあるので、外部からの水分や気体の浸入から有機EL素子を保護する封止構造が採用されている。
例えば、特許文献1には、バンク層によって分離された複数の表示素子と配線層とを有する基板と、該基板の外周の封止領域で接合され該基板を覆う封止基板とを備え、該封止領域において複数の表示素子とバンク層とを覆う電極層の外周部と配線層とが接続された表示装置が開示されている。この表示装置は、封止基板の四辺に沿った部分で表示素子が設けられた基板を封止する所謂缶封止構造が示されており、この封止領域で電極層と配線層とを接続しているので、封止領域と、電極層と配線層との接続領域と、平面的にことなる部分に配置する場合に比べて表示に寄与しない額縁領域を狭くできるとしている。
【0004】
また、特許文献2では、表示領域の周囲に配置され且つ有機発光層を挟持する一対の電極のうちの一方の電極と接続される第1接続配線と、該第1接続配線の端面を覆い、該第1接続配線および表示領域に設けられた複数の発光素子の表面を覆うガスバリア層とを備えた有機EL装置が開示されている。この有機EL装置によれば、第1接続配線を経由した水分侵入をガスバリア層で防ぐことができ、長い発光寿命を実現できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2003/69858号パンフレット
【特許文献2】特開2009−117079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の技術思想を特許文献1の封止構造に反映させようとすると、特許文献1の表示装置における額縁領域の幅が広がるおそれがあり、額縁領域の幅を狭くできるという所期の目的の達成が困難になるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例の電気光学装置は、基板上に対向配置された一対の電極と前記一対の電極間に配置された発光層を含む機能層とを有する発光素子と、複数の前記発光素子が配置された画素領域と、前記基板上において前記画素領域の外側に配置され、前記一対の電極のうちの一方の電極に電気的に接続される接続配線と、前記接続配線に重なると共に前記接続配線より前記画素領域側に延在して配置された接続部と、を備え、前記一方の電極は、前記画素領域に亘って設けられると共に、前記画素領域の外側にて前記接続部の前記画素領域に近い側の一方の端部に重なって設けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、接続配線と一方の電極とが接続部を介して電気的に接続されている。したがって、接続配線と一方の電極とを直接接触させて接続させる場合に比べて、一方の電極の平面的な配置精度が低くても、それを考慮して接続部を設けておけばよいので、接続配線と一方の電極とを電気的に安定した状態で接続させることができる。言い換えれば、接続配線と一方の電極とを画素領域の外側にて電気的に接続させる領域を狭くすることが可能となる。
【0010】
[適用例2]上記適用例の電気光学装置において、前記接続配線と前記画素領域との間に配置され、前記発光素子を駆動制御する周辺回路を有し、前記接続部は、前記周辺回路が設けられた領域に対して平面的に少なくとも一部が重なって設けられているとしてもよい。
この構成によれば、基板上において画素領域の外側の領域すなわち額縁領域に接続配線と周辺回路とを設けたとしても、周辺回路が設けられた領域に対して少なくとも一部が重なるように接続部を設けることにより、平面的に接続部を独立して配置する場合に比べて、額縁領域を狭くすることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例の電気光学装置において、前記画素領域を囲む隔壁部を有し、前記接続部は、前記隔壁部における前記画素領域側と反対側の壁面に掛かるように設けられ、前記一方の電極は、前記画素領域に亘って設けられると共に、前記画素領域の外側にて前記隔壁部の前記壁面に掛かった部分の前記接続部に重なって設けられているとしてもよい。
この構成によれば、画素領域を囲む隔壁部が設けられた領域が平面的に狭い領域であっても隔壁部の壁面を利用して、接続部と一方の電極とを安定的に接続することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例の電気光学装置において、前記接続配線および前記接続部は、前記基板上において平面的に前記画素領域を覆った前記一方の電極の一の方向の両端側に配置されていることが好ましい。
この構成によれば、一方の電極における一の方向の電気的な抵抗を小さくして、発光素子間の発光特性のばらつきを低減できる。なお、一の方向とは、一方の電極における長手方向であることが好ましい。一方の電極における長手方向の抵抗上昇を抑えることができる。
【0013】
[適用例5]上記適用例の電気光学装置において、前記接続部と前記一方の電極とが異なる導電性材料で構成されているとしてもよい。
この構成によれば、一方の電極は、発光層を含む機能層からの発光をどのように取り出すかによって、様々な材料選択が考えられるが、接続部は電気的な接続を可能とすればよいので、材料選択の自由度が一方の電極の材料によって制約されない。
【0014】
[適用例6]上記適用例の電気光学装置において、前記一方の電極に比べて前記接続部のほうが比抵抗が低いことが好ましい。
この構成によれば、接続配線と一方の電極とを低抵抗な接続部を介して接続させることができる。
【0015】
[適用例7]上記適用例の電気光学装置において、前記一方の電極を覆うと共に、前記接続部の前記画素領域から遠い方の他方の端部を覆う少なくとも1つのガスバリア層を備えることが好ましい。
この構成によれば、接続部が設けられた基板上の界面から水分などが画素領域に設けられた発光素子に侵入することをガスバリア層によって防止することができる。すなわち、長い発光寿命を有する電気光学装置を提供できる。
【0016】
[適用例8]本適用例の電気光学装置の製造方法は、基板上に対向配置された一対の電極と前記一対の電極間に配置された発光層を含む機能層とを有する発光素子を備えた電気光学装置の製造方法であって、複数の前記発光素子が配置された画素領域の外側に前記一対の電極に接続される接続配線を形成する第1工程と、前記接続配線に重なると共に前記接続配線より前記画素領域側に延在する接続部を形成する第2工程と、前記一対の電極のうちの一方の電極を、前記画素領域の外側にて前記接続部の前記画素領域に近い側の一方の端部に重なると共に前記画素領域に亘って形成する第3工程と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、接続配線と一方の電極とが接続部を介して電気的に接続される。したがって、接続配線と一方の電極とを直接接触させて接続させるように一方の電極を形成する場合に比べて、一方の電極の平面的な配置精度が低くても、それを考慮して接続部を形成すればよいので、接続配線と一方の電極とを電気的に安定した状態で接続させることができる。言い換えれば、接続配線と一方の電極とを画素領域の外側にて電気的に接続させる領域を狭くすることが可能な電気光学装置の製造方法を提供できる。
【0018】
[適用例9]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記接続部を形成する方法がフォトリソグラフィ法であり、前記一方の電極を形成する方法がマスク蒸着法であることを特徴とする。
この方法によれば、一方の電極を形成位置精度がフォトリソグラフィ法に比べて劣るマスク蒸着法で形成しても、一方の電極と重なり合う接続部がフォトリソグラフィ法で形成されているので、電気光学装置における画素領域の周辺領域つまり額縁領域の位置精度を高い状態で実現できる。
【0019】
[適用例10]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記接続部と前記一方の電極とを異なる導電性材料で形成するとしてもよい。
この方法によれば、一方の電極と接続部との材料選択の幅を広げて、トップエミッションおよびボトムエミッションの電気光学装置のいずれにも対応可能とすることができる。
【0020】
[適用例11]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記一方の電極に対して前記接続部は比抵抗が低い導電性材料を用いて形成されることが好ましい。
この方法によれば、接続配線と一方の電極とを直接接続させる場合に比べて、接続領域の形成精度を向上させると共により低抵抗な状態で電気的に接続できる。
【0021】
[適用例12]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記接続配線と前記画素領域との間に、前記発光素子を駆動制御する周辺回路を形成する工程を有し、前記第2工程は、前記周辺回路が形成された領域に対して平面的に少なくとも一部が重なるように前記接続部を形成するとしてもよい。
この方法によれば、基板上において画素領域の外側の領域すなわち額縁領域に接続配線と周辺回路とを形成したとしても、周辺回路が形成された領域に対して少なくとも一部が重なるように接続部を形成することにより、平面的に接続部を独立して形成する場合に比べて、額縁領域を狭くすることができる。
【0022】
[適用例13]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記画素領域を囲む隔壁部を形成する工程を有し、前記第2工程は、前記隔壁部における前記画素領域側と反対側の壁面に掛かるように前記接続部を形成し、前記第3工程は、前記一方の電極を前記画素領域に亘ると共に、前記画素領域の外側にて前記隔壁部の前記壁面に掛かった部分の前記接続部に重なるように形成するとしてもよい。
この方法によれば、画素領域を囲む隔壁部が形成された領域が平面的に狭い領域であっても隔壁部の壁面を利用して、接続部と一方の電極とを安定的に接続することができる。
【0023】
[適用例14]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記一方の電極を覆うと共に、前記接続部の前記画素領域から遠い方の他方の端部を覆う少なくとも1つのガスバリア層を形成する第4工程を、さらに備えることが好ましい。
この方法によれば、接続部が形成された基板上の界面から水分などが画素領域に配置された発光素子に侵入することをガスバリア層によって防止することができる。すなわち、長い発光寿命を有する電気光学装置を製造できる。
【0024】
[適用例15]本適用例の電子機器は、上記適用例の電気光学装置または上記適用例の電気光学装置の製造方法を用いて製造された電気光学装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、画素領域を囲む額縁領域を従来よりも狭くして、コンパクトで見栄えがよい電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】電気光学装置の構成を示す概略平面図。
【図2】電気光学装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】図1のA−A’線で切った電気光学装置の構造を示す概略断面図。
【図4】電気光学装置の要部拡大断面図。
【図5】電気光学装置の製造方法を示すフローチャート。
【図6】(a)〜(d)は電気光学装置の製造方法を示す概略断面図。
【図7】(e)〜(h)は電気光学装置の製造方法を示す概略断面図。
【図8】保護層を備えた電気光学装置の一例を示す概略断面図。
【図9】(a)〜(c)は電子機器の実施例を示す斜視図。
【図10】変形例1の電気光学装置を示す概略平面図。
【図11】変形例2の電気光学装置を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0027】
(第1実施形態)
<電気光学装置>
まず、本実施形態の電気光学装置について、図1〜図4を参照して説明する。
図1は電気光学装置の構成を示す概略平面図、図2は電気光学装置の電気的な構成を示す等価回路図、図3は図1のA−A’線で切った電気光学装置の構造を示す概略断面図、図4は電気光学装置の要部拡大断面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の電気光学装置100は、発光素子を備えたサブ画素SGがスイッチング素子としての薄膜トランジスター(Thin Film Transistor)によって駆動制御されるアクティブ駆動型の発光装置である。上記薄膜トランジスター(TFT)が設けられた素子基板10上において、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色に対応したサブ画素SGと、複数のサブ画素SGがマトリックス状に配置された画素領域107とを有している。
画素領域107におけるサブ画素SGの配置を基準として、行方向をX方向とし、列方向をY方向として説明する。
X方向における画素領域107の外側の領域に、一対の走査線駆動回路101がY方向に沿って配置されている。
また、一対の走査線駆動回路101のそれぞれに平面的に重なるように同じく一対の接続部105がY方向に沿って設けられている。接続部105は、素子基板10に設けられた接続配線106と、サブ画素SGの発光素子における一対の電極のうちの一方の電極との電気的な接続を図るために設けられた導電体であって、詳しくは後述する。
【0029】
Y方向における画素領域107の外側の領域のうち、図面上において上方の領域に検査回路103と、一対の走査線駆動回路101を結ぶ配線104とが該上方の辺部に沿って配置されている。また、検査回路103が設けられた該上方の領域に対して反対側の領域は、外部駆動回路との接続を図る端子部を有しており、該端子部には、フレキシブルな中継基板110が設けられている。
【0030】
中継基板110は、所謂FPCであって、ドライバーIC102が平面実装されている。ドライバーIC102は、データ線駆動回路を含むものである。中継基板110には、ドライバーIC102に外部駆動回路からの信号が伝達される複数の入力配線112と、ドライバーIC102からの制御信号が出力される複数の出力配線111とが設けられている。複数の出力配線111は、素子基板10の上記端子部において、上記接続部105に繋がる接続配線106と走査線駆動回路101やサブ画素SGの発光素子に接続する配線108とに接続されている。
【0031】
本実施形態では、サブ画素SGに設けられた発光素子を駆動制御する周辺回路のうち、走査線駆動回路101と検査回路103とを素子基板10上に設けているが、ドライバーIC102に含まれたデータ線駆動回路なども素子基板10上に設ける構成としてもよい。
【0032】
図2に示すように、電気光学装置100は、複数の走査線101aと、複数の走査線101aに対して絶縁された状態で交差(直交)する複数のデータ線102aおよび複数の電源線102bとを有している。
【0033】
複数の走査線101aは、シフトレジスターおよびレベルシフターを備える走査線駆動回路101に接続されている。複数のデータ線102aは、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるドライバーIC102のデータ線駆動回路に接続されている。
【0034】
複数の走査線101aおよび複数のデータ線102a、複数の電源線102bによってマトリックス状に区分された領域にサブ画素SGが設けられている。
【0035】
サブ画素SGは、走査線101aを介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用のTFT121と、このスイッチング用のTFT121を介してデータ線102aから供給される画素信号を保持する保持容量123と、該保持容量123によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用のTFT122とを有している。また、駆動用のTFT122を介して電源線102bに電気的に接続したときに該電源線102bから駆動電流が流れ込む一対の電極のうちの他方の電極としての画素電極(陽極)21と、一対の電極のうちの一方の電極としての陰極27と、画素電極21と陰極27との間に挟み込まれた発光層を含む機能層25とを有している。画素電極21と機能層25と陰極27とにより、発光素子(有機EL素子)30が構成されている。
【0036】
なお、図2において検査回路103を省略しているが、検査回路103は、電気光学装置100の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段を備え、製造途中や出荷時の表示品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されたものである。
【0037】
走査線駆動回路101および検査回路103への駆動制御信号および駆動電圧の印加は、電気光学装置100の作動制御を行うドライバーIC102などから送出されるようになっている。この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路101および検査回路103が信号を出力する際の制御に関連する指令信号である。
【0038】
このような電気光学装置100によれば、走査線101aが駆動されてスイッチング用のTFT121がオン状態になると、そのときのデータ線102aの電位(画素信号)が保持容量123に保持され、該保持容量123の状態に応じて、駆動用のTFT122のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用のTFT122のチャネルを介して、電源線102bから画素電極21に電流が流れ、さらに機能層25を介して陰極27に電流が流れる。機能層25は、これを流れる電流量に応じて発光して、画素信号に基づいた表示が行われる。
【0039】
図3に示すように、素子基板10上には、駆動用のTFT122や電源線102bなどの配線類を含む回路部17が設けられ、該回路部17上に赤(R)、緑(G)、青(B)に対応して形成された発光素子30R,30G,30Bが設けられている。さらに、これらの発光素子30R,30G,30Bを覆うようにガスバリア層40が設けられている。
【0040】
各発光素子30R,30G,30Bは、回路部17上において隔壁部32により区画されている。これらの隔壁部32のうち、複数の発光素子30(発光素子30R,30G,30B)が設けられた画素領域107の外周部分に設けられたものを隔壁部31として区分して説明する。また、画素領域107の外側で素子基板10の端部との間の領域を額縁領域109として説明する。
【0041】
額縁領域109には、走査線駆動回路101などの周辺回路や接続配線106、接続部105が設けられている。
【0042】
各発光素子30R,30G,30Bは、それぞれ画素電極21と画素電極21上に形成された機能層25とを有し、機能層25を挟む一対の電極のうちの一方の電極である陰極27は、機能層25と隔壁部32とを覆うように設けられている。
【0043】
接続配線106は回路部17において厚み方向に導通して、回路部17の表面に露出するように設けられおり、接続部105は露出した接続配線106に重なるように配置されている。また、接続部105は、回路部17上において接続配線106側から走査線駆動回路101が設けられた領域を越え、隔壁部31の壁面に至る領域に跨って設けられている。すなわち、接続部105は接続配線106に接続すると共に、走査線駆動回路101に対して平面的に重なり、画素領域107に向かって延在している。隔壁部31の壁面に掛かった部分を接続部105の一方の端部105aと呼び、接続配線106と重なり合った部分を他方の端部105bと呼ぶ。
なお、接続配線106は、図1に示すように平面的には走査線駆動回路101に沿ってY方向に延在している。接続配線106と接続部105とは、平面的に接続配線106の延在方向(Y方向)において連続的に接続しているが、これに限定されない。接続配線106の延在方向において例えばコンタクトホールを介して接続配線106と接続部105とが部分的に接続している構造としてもよい。これによれば、走査線駆動回路101などの周辺回路やこれに繋がる配線等の平面的な配置を考慮して、接続配線106と接続部105とを電気的に接続できる。
【0044】
陰極27は、画素領域107内において機能層25と隔壁部32とを覆うように設けられ、額縁領域109において隔壁部31の壁面に沿った上記一方の端部105aを覆うように設けられている。これにより、接続配線106と陰極27とは接続部105を介して電気的に接続されている。平面的に隔壁部31の幅が他の隔壁部32よりも狭くても、壁面に設けられた上記一方の端部105aと陰極27とが重なっているので、壁面において接続面積が確保され安定した導通抵抗が実現されている。
【0045】
ガスバリア層40は、画素領域107において陰極27を覆うように設けられ、且つ額縁領域109において接続部105の他方の端部105bを覆うように設けられている。これにより、陰極27および接続部105と回路部17(接続配線106)との界面から画素領域107へ酸素や水分などが侵入することを防いでいる。
【0046】
詳細は後述するが、本実施形態の発光素子30(発光素子30R,30G,30B)はトップエミッション構造が採用されており、機能層25で発光した光は陰極27側に取り出される。したがって、陰極27は透光性を有する材料で構成されることが必要であり、透明導電材料が用いられる。透明導電材料としてはITO(Indium Tin Oxide)が好適とされるが、これ以外にも、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide:IZO/アイ・ゼット・オー)(登録商標))(出光興産社製)などを用いることができる。なお、本実施形態ではITOを用いている。
【0047】
陰極27と接続配線106とを結ぶ接続部105は、額縁領域109に設けられているので透光性を有する必要はなく、陰極27に対して比抵抗が低いAlなどの金属材料やその合金などを用いることができる。
【0048】
接続配線106は、回路部17を構成する薄膜トランジスターや配線類を形成する工程で同時に形成されることが好ましい。次に、接続配線106の構成に関連する回路部17と発光素子30について説明する。
【0049】
図4に示すように、素子基板10上には回路部17が設けられ、さらに回路部17上に発光素子30が設けられている。回路部17側から順に説明する。
【0050】
素子基板10には、まず、その表面を覆うように例えば酸化シリコンなどの無機絶縁材料からなる下地絶縁膜11が設けられている。下地絶縁膜11上にTFT122が設けられている。TFT122は、下地絶縁膜11上に島状に設けられた例えばポリシリコンからなる半導体層122hと、半導体層122hを覆う例えば酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機絶縁材料からなるゲート絶縁膜12と、ゲート絶縁膜12上に設けられたゲート電極122gとを有する。
【0051】
半導体層122hのうち、ゲート絶縁膜12を挟んでゲート電極122gと重なる領域がチャネル領域122aとされている。なお、このゲート電極122gは、図示しないが走査線101aの一部である。一方、半導体層122hを覆い、ゲート電極122gが設けられたゲート絶縁膜12を覆って例えば酸化シリコンを主体とする第1層間絶縁膜13が設けられている。
【0052】
また、半導体層122hのうち、チャネル領域122aのソース側には、低濃度ソース領域122bおよび高濃度ソース領域122sが設けられる一方、チャネル領域122aのドレイン側には低濃度ドレイン領域122cおよび高濃度ドレイン領域122dが設けられ、いわゆるLDD(Light Doped Drain)構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域122sは、ゲート絶縁膜12と第1層間絶縁膜13とにわたって開孔するコンタクトホール13aを介して、ソース電極122eに接続されている。このソース電極122eは、前述した電源線102b(図2参照、図4においてはソース電極122eの位置に紙面垂直方向に延在する)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域122dは、ゲート絶縁膜12と第1層間絶縁膜13とにわたって開孔するコンタクトホール13bを介して、ソース電極122eと同じ材料からなるドレイン電極122fに接続されている。
【0053】
ソース電極122eおよびドレイン電極122fが設けられた第1層間絶縁膜13の上層は、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする第2層間絶縁膜14によって覆われている。この第2層間絶縁膜14は、アクリル系の有機絶縁材料以外の材料、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機絶縁材料を用いることもできる。そして、例えばITOからなる画素電極21が、この第2層間絶縁膜14の表面上に設けられると共に、該第2層間絶縁膜14に設けられたコンタクトホール14aを介してドレイン電極122fに接続されている。すなわち、画素電極21は、ドレイン電極122fを介して、半導体層122hの高濃度ドレイン領域122dに接続されている。
【0054】
ソース電極122eおよびドレイン電極122f、ならびにゲート電極122gは、例えばAlなどの低抵抗配線材料を用いて構成することができる。
【0055】
なお、走査線駆動回路101および検査回路103に含まれる、例えばシフトレジスターのインバーターを構成するNチャネル型またはPチャネル型のTFTは、画素電極21と接続されていない点を除いて上記駆動用のTFT122と同様の構造とされている。
【0056】
回路部17上に設けられた発光素子30は、前述したように画素電極21と、陰極27と、両電極間に配置された機能層25とを含んで構成されている。また、各発光素子30は、隔壁部32により区画されている。具体的には、隔壁部32は、画素電極21の外縁部を覆い、画素電極21上において開口32cを有する下層隔壁部32aと、下層隔壁部32a上に設けられ実質的に機能層25が設けられる膜形成領域を区画する上層隔壁部32bとにより構成されている。下層隔壁部32aは、例えば酸化シリコンなどの無機絶縁材料からなる。上層隔壁部32bは、例えばエポキシ系あるいはポリイミド系などの有機絶縁材料からなる。
【0057】
機能層25は、画素電極21側に設けられた正孔注入輸送層22と、正孔注入輸送層22に重ねて設けられた発光層23とを有する。本実施形態では、機能層形成材料を含む液状体を上記膜形成領域に塗布して乾燥させることにより、機能層25(正孔注入輸送層22、発光層23)を形成している。
【0058】
正孔注入輸送層22の形成材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、またはそれらのドーピング体などが用いられる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)[商品名;バイトロン−p(Bytron−p):バイエル社製]の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液などが用いられる。
【0059】
発光層23の形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。
また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
なお、上記高分子材料に代えて、従来公知の低分子材料を用いることもできる。
【0060】
機能層25の構成は、これに限定されるものではなく、発光層23を主体として、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などのキャリア注入層またはキャリア輸送層を含んでもよい。さらには、正孔阻止層(ホールブロッキング層)、電子阻止層(エレクトロン阻止層)を含んでもよい。
【0061】
機能層25を覆うように設けられた陰極27は、前述したようにトップエミッション構造であることから、ITOなどの透明導電膜材料を用いて構成されている。
【0062】
陰極27を覆うように設けられたガスバリア層40は、例えば無機化合物からなるもので、好ましくは珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物、珪素酸化物などによって構成されている。ただし、珪素化合物以外でも、例えばアルミナや酸化タンタル、酸化チタン、さらには他のセラミックスなどから構成されていてもよい。このようにガスバリア層40が無機化合物で形成されていれば、ITOなどの無機透明導電膜材料からなる陰極27との密着性がよく、ガスバリア層40が欠陥のない緻密な層となって酸素や水分に対するバリア性がより良好になる。
【0063】
また、このガスバリア層40としては、上記珪素化合物のうちの異なる材料層を積層した構造としてもよく、例えば、陰極27側から珪素窒化物、珪素酸窒化物の順に形成し、あるいは陰極27側から珪素酸窒化物、珪素酸化物の順に形成してガスバリア層40を構成するのが好ましい。また、このような組み合わせ以外にも、組成比の異なる珪素酸窒化物を2層以上積層した場合に、陰極27側の層の酸素濃度がこれより外側の層の酸素濃度より低くなるように構成するのが好ましい。
このようにすれば、陰極27側がその反対側より酸素濃度が低くなることから、ガスバリア層40中の酸素が陰極27を通ってその内側の発光層23に到り、発光層23を劣化させてしまうといったことを防止することができ、これにより発光層23の長寿命化を図ることができる。
【0064】
また、ガスバリア層40としては、積層構造とすることなく、その組成を不均一にして特にその酸素濃度が連続的に、あるいは非連続的に変化するような構成としてもよく、その場合にも、陰極27側の酸素濃度が外側の酸素濃度より低くなるように構成するのが、前述した理由により好ましい。
また、このようなガスバリア層40の厚さとしては、10nm以上、500nm以下であるのが好ましい。10nm未満であると、膜の欠陥や膜厚のバラツキなどによって部分的に貫通孔が形成されてしまい、ガスバリア性が損なわれてしまうおそれがあるからであり、500nmを越えると、応力による割れが生じてしまうおそれがあるからである。
また、本実施形態ではトップエミッション型としていることから、ガスバリア層40は透光性を有する必要があり、したがってその材質や膜厚を適宜に調整することにより、本実施形態では可視光領域における光線透過率を例えば80%以上にしている。
【0065】
<電気光学装置の製造方法>
次に、本実施形態の電気光学装置100の製造方法について、図5〜図8を参照して説明する。図5は電気光学装置の製造方法を示すフローチャート、図6(a)〜(d)および図7(e)〜(h)は電気光学装置の製造方法を示す概略断面図、図8は保護層を備えた電気光学装置の一例を示す概略断面図である。なお、図6および図7では、回路部17の主たる構成がわかるように表示して、詳細な構造(構成)は図示を省略している。
【0066】
図5に示すように、本実施形態の電気光学装置100の製造方法は、回路部形成工程(ステップS1)と、画素電極形成工程(ステップS2)と、隔壁部形成工程(ステップS3)と、接続部形成工程(ステップS4)と、機能層形成工程(ステップS5)と、陰極形成工程(ステップS6)と、ガスバリア層形成工程(ステップS7)とを備えている。
【0067】
ステップS1の回路部形成工程では、図6(a)に示すように、素子基板10上に回路部17を形成する。回路部17の構成は前述したとおりであって、公知の方法を用いて形成することができる。例えば、駆動用のTFT122における半導体層122h(図4参照)は、下地絶縁膜11上に、ICVD法、プラズマCVD法などを用いてアモルファスシリコン層を形成した後、レーザアニール法または急速加熱法により結晶粒を成長させてポリシリコン層とする。そして、該ポリシリコン層を島状にパターニングして、ボロンなどの不純物を注入することにより、不純物濃度が異なる各領域を形成する方法が挙げられる。このような回路部形成工程において、走査線駆動回路101や後に接続配線106を構成するところの配線部106aも同時に形成する。
配線部106aの形成方法としては、例えば、上記ポリシリコン層をパターニングして不純物を注入し導電性を付与する方法が挙げられる。さらに形成された配線部106aに対してゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を形成する工程で、導電層を重ねて形成してもよい。
また、回路部17の最表面を構成する第2層間絶縁膜14は、例えばアクリル系の高分子有機絶縁材料をスピンコート法などを用いて塗布して乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。後に形成される画素電極21とTFT122とを接続させるためのコンタクトホール14aや配線部106a上のコンタクトホール14bは、第2層間絶縁膜14をエッチングすることによって形成する。これらのコンタクトホール14a,14bは、第2層間絶縁膜14として感光性樹脂材料を用い、塗布された該感光性樹脂膜を露光・現像することによって形成してもよい。そして、ステップS2へ進む。
【0068】
ステップS2の画素電極形成工程では、図6(b)に示すように、コンタクトホール14a,14bを埋めると共に第2層間絶縁膜14を覆って例えばITO膜を成膜し、これをパターニングすることによって画素電極21と配線部106bとを形成する。配線部106bは配線部106a上に形成されて接続配線106を構成する。そして、ステップS3へ進む。
【0069】
ステップS3の隔壁部形成工程では、図6(c)に示すように、まず、画素電極21の外縁部を覆う下層隔壁部32aを形成する。下層隔壁部32aの形成方法としては、画素電極21上において開口32cに相当する部分をマスキングして、酸化シリコンなどの無機絶縁膜を減圧CVD法などにより成膜する方法が挙げられる。膜厚は、およそ100nm〜200nmである。続いて、画素電極21、下層隔壁部32aを覆うように例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのレジストを溶媒に溶解したものを、スピンコート法、ディップコート法などの塗布法により塗布して有機質層を形成する。なお、有機質層の構成材料は、後の機能層形成工程において用いられる液状体の溶媒に溶解せず、パターニングし易く絶縁性を示すものであればどのようなものでもよい。
【0070】
続いて、有機質層をフォトリソグラフィ技術、エッチング技術を用いてパターニングし、有機質層に開口部32dを形成することにより、開口部32dに壁面を有した上層隔壁部32bを下層隔壁部32a上に形成する。本工程で、画素領域107の外周部分に位置する隔壁部31も同時に形成する。この隔壁部31の形成にあたっては、画素領域107の外側となる壁面31aが回路部17の表面に対して緩やかに傾斜するように形成することが好ましい。後に壁面31aに対して形成される各種の導電膜やこれを覆うガスバリア層40のカバレージ性を確保することができる。本実施形態では、壁面31aの傾斜角度θをおよそ110度とした。また、回路部17上における隔壁部31,32の高さは、およそ1μm〜2μmである。そして、ステップS4へ進む。
【0071】
ステップS4の接続部形成工程では、図6(d)に示すように、画素領域107内をマスキングしてAlなどの低抵抗配線材料を用いて導電膜を形成する。そして、該導電膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングして、画素領域107側の一方の端部105aが隔壁部31の壁面31aを覆い、他方の端部105bが接続配線106と重なる接続部105を形成する。平面的には、図1に示したように、画素領域107の外側において走査線駆動回路101が形成された領域に重なるように略矩形状の一対の接続部105を形成する。接続部105の厚みはおよそ100nm〜200nmである。そして、ステップS5へ進む。
【0072】
ステップS5の機能層形成工程では、まず、隔壁部32により区画された膜形成領域に表面処理を施す。具体的には、酸素を処理ガスとするプラズマ処理を施して、上層隔壁部32bの壁面を含む表面および画素電極21の表面ならびに画素電極21の外縁部を覆って膜形成領域内にはみ出した下層隔壁部32aの表面をそれぞれに親液性を付与する。続いて、大気雰囲気中で例えばCF4(四フッ化メタン)を処理ガスとするプラズマ処理を施し、有機絶縁材料で構成された上層隔壁部32bの壁面を含む表面に撥液性を付与する。
【0073】
なお、このCF4によるプラズマ処理においては、親液性が付与された画素電極21の表面や下層隔壁部32aの一部についても多少の影響を受けるが、これらを構成する無機材料であるITOや酸化シリコンなどはフッ素に対する親和性に乏しいため、親液性が保たれる。
【0074】
次に、正孔注入輸送層形成材料を含む液状体を隔壁部32により区画された膜形成領域に塗布して乾燥することにより、図7(e)に示すように正孔注入輸送層22を形成する。該液状体の塗布方法としては、例えば吐出ヘッドのノズルから液状体を液滴として吐出する液滴吐出法や、スピンコート法などが挙げられる。上記膜形成領域に選択的に無駄なく所定量の液状体を塗布できるという点で、上記液滴吐出法を採用することが好ましい。
【0075】
上記ノズルから吐出された液滴は、親液性を有する画素電極21の表面において濡れ広がり、上記膜形成領域内に満たされる。その一方で、撥液性を有する上層隔壁部32bの表面に着弾した液滴は、はじかれて上記膜形成領域内に収容される。上記膜形成領域内に充填された液状体を乾燥させて形成した正孔注入輸送層22の膜厚はおよそ50nm〜100nmである。
なお、正孔注入輸送層22を形成した後は、正孔注入輸送層22およびこの後に形成される発光層23の酸化を防止すべく、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で成膜を行うのが好ましい。
【0076】
続いて、発光層形成材料を含む液状体を隔壁部32により区画された膜形成領域に塗布して乾燥することにより、図7(f)に示すように発光層23を形成する。該液状体の塗布による正孔注入輸送層22の再溶解を防止するため、該液状体の溶媒として、正孔注入輸送層22に対して不溶な無極性溶媒を用いる。
なお、発光層23は、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光が得られる発光層形成材料を含む液状体を塗布して形成する。つまり、赤(R)の発光層形成材料を含む液状体を所定の膜形成領域内に塗布することによって赤の発光層23Rを形成する。他の発光色の発光層23G,23Bについても同様である。上記膜形成領域内に充填された液状体を乾燥させて形成した各発光層23R,23G,23Bの膜厚はおよそ100nm〜300nmである。
【0077】
なお、本実施形態では、機能層25を機能層形成材料を含む液状体を膜形成領域に塗布することによって形成したが、これに限定されない。例えば、正孔注入輸送層22は液滴吐出法を用いて形成し、発光層23はマスク蒸着法を用いて形成してもよい。あるいは、異なる発光色が得られる発光層23R,23G,23Bのうち例えば発光層23Bのみをマスク蒸着して形成してもよい。そして、ステップS6へ進む。
【0078】
ステップS6の陰極形成工程では、図7(g)に示すように、少なくとも画素領域107の平面的な大きさよりもやや大きな開口50aを有するマスク50を用いて陰極27をマスク蒸着して形成する。このときマスク蒸着では、陰極形成材料としてITOを成膜する。陰極27は、発光層23と隔壁部32を覆うように成膜される。マスク蒸着によって成膜された陰極27の外形位置精度は、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする場合に比べて低いものの、画素領域107の外側では、隔壁部31の壁面31aに形成された接続部105の一方の端部105aを覆うように陰極27が形成される。接続部105は他方の端部105bにおいてすでに接続配線106と電気的に接続しているので、接続部105の一方の端部105aを覆うように陰極27を形成すれば、結果的に接続配線106と陰極27とを接続部105を介して電気的に接続させることができる。画素領域107における陰極27の厚みはおよそ100nm〜200nmである。そして、ステップS7へ進む。
【0079】
ステップS7のガスバリア層形成工程では、図7(h)に示すように画素領域107内では陰極27を覆い、画素領域107の外側の額縁領域109では接続部105の他方の端部105bを覆うようにガスバリア層40を形成する。ガスバリア層40の形成方法としては、スパッタリング法やイオンプレーティング法などの物理的気相蒸着法やプラズマCVD法などの化学的気相蒸着法で成膜を行うのが好ましい。スパッタリング法やイオンプレーティング法などの物理的気相蒸着法は、一般に異質な基板表面に対しても比較的密着性の良い膜が得られるものの、得られる膜に関しては粒塊状で欠陥が発生しやすく、また応力の大きい被膜になり易いなどの欠点がある。一方、化学的気相蒸着法では、応力が少なくステップカバーレッジ性に優れた欠陥が少なく緻密で良好な膜質のものが得られるものの、一般に異質な基板表面に対する密着性や造膜性が得られにくいといった欠点がある。そこで、初期の成膜については物理的気相蒸着法を採用して例えば必要な膜厚の半分あるいはそれ以上を形成し、後期の成膜において化学的気相蒸着法を用いることにより、先に形成した膜の欠陥を補うようにすれば、全体としてガスバリア性(酸素や水分に対するバリア性)に優れたガスバリア層40を比較的短時間で形成することができる。
【0080】
ガスバリア層40の形成については、前述したように同一の材料によって単層で形成してもよく、また異なる材料で複数の層に積層して形成してもよく、さらには、単層で形成するものの、その組成を膜厚方向で連続的あるいは非連続的に変化させるようにして形成してもよい。
異なる材料で複数の層に積層して形成する場合、例えば、前述したように物理的気相蒸着法で形成する内側の層(陰極27側の層)を珪素窒化物あるいは珪素酸窒化物などとし、化学的気相蒸着法で形成する外側の層を珪素酸窒化物あるいは珪素酸化物などとするのが好ましい。
【0081】
また、物理的気相蒸着法で内側の層を形成する際、成膜装置内に供給する酸素量を最初は少なくし、以下、連続的あるいは非連続的に増やすことにより、形成するガスバリア層40中の酸素濃度を陰極27側(内側)で低くし、外側ではこれより高くなるように形成してもよい。
なお、ガスバリア層40の形成については単一の成膜法で行ってもよいのはもちろんであり、その場合にも、前述したように酸素濃度を陰極27側(内側)で低くなるように形成するのが好ましい。この場合のガスバリア層40の総厚はおよそ400nmである。
【0082】
このような電気光学装置100の製造方法によれば、フォトリソグラフィ法によるパターニングに比べて形成位置精度が劣るマスク蒸着法を用いて陰極27を形成しても、額縁領域109では、接続部105の一方の端部105aと重なるように陰極27が形成されるので、結果的に回路部17に設けられた接続配線106と陰極27とを接続部105を介して安定的に接続することができる。
【0083】
また、回路部17に形成された接続配線106と陰極27とが直接に接続するように陰極27をマスク蒸着する場合には、マスク蒸着による陰極27の形成位置精度におけるばらつきを考慮して、接続配線106との接触面積を予め大きくしておく必要がある。言い換えれば、接続配線106が形成される額縁領域109を上記接触面積を考慮して確保しておく必要がある。これに対して、本実施形態は、接続配線106と陰極27とを接続させる接続部105をフォトリソグラフィ法で位置精度よく形成し、画素領域107側の一方の端部105aに重なるように陰極27をマスク蒸着するので、実質的な額縁領域109の幅を狭くすることができる。
さらには、接続部105の一方の端部105aは画素領域107の外周部に設けられた隔壁部31の壁面31aに沿って形成されるので、額縁領域109を狭くしても陰極27との接触面積を立体的に確保して安定的な接続を図ることができる。
【0084】
なお、本実施形態では、電気光学装置100をトップエミッション構造を採用したものとして説明したが、これに限定されることなく、機能層25における発光を素子基板10側から取り出すボトムエミッション構造を採用したものにも適用可能である。ボトムエミッション構造とした場合、陰極27は透明電極を用いる必要はないが、素子基板10自体が透光性を有する必要がある。
また、発光を素子基板10側から効率的に取り出すため、素子基板10に形成するスイッチング用のTFT121や駆動用のTFT122およびこれらに接続される配線類は、発光素子30の直下ではなく、隔壁部32の直下に形成するようにして、開口率を高めるのが好ましい。
【0085】
電気光学装置100は、発光素子30をガスバリア層40で覆った状態でこのまま用いてもよいが、とりわけトップエミッション構造では、発光が得られるガスバリア層40側に例えば人体などが繰り返し接触することで発光素子30が損傷するおそれがある。そこで、図8に示すように、少なくともガスバリア層40を覆う透明な緩衝層131を介して同じく透明な保護層132を設けることが好ましい。
【0086】
緩衝層131としては、ガスバリア層40に密着し、かつ外部からの機械的衝撃に対して緩衝機能を有するもので、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ポリオレフィン系などの樹脂で、後述する保護層132より柔軟でガラス転移点の低い材料からなる接着剤によって形成されたものである。なお、このような接着剤には、シランカップリング剤またはアルコキシシランを添加しておくのが好ましく、このようにすれば、形成される緩衝層131とガスバリア層40との密着性がより良好になり、機械的衝撃に対する緩衝機能が高くなる。また、ガスバリア層40が珪素化合物で形成されている場合などでは、シランカップリング剤やアルコキシシランによってこのガスバリア層40との密着性を向上させることができ、ガスバリア性を高めることができる。
【0087】
保護層132は、緩衝層131上に設けられることにより、耐圧性や耐摩耗性、外部光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能の少なくとも一つを有してなる層である。具体的には、高分子層(プラスチックフィルム)やDLC(ダイアモンドライクカーボン)層、ガラスなどによって形成されるものである。
なお、トップエミッション構造の電気光学装置100では、保護層132、緩衝層131を共に透光性のものにする必要があるが、ボトムエミッション構造とする場合にはその必要はない。
【0088】
このようにガスバリア層40上に保護層132を設ければ、保護層132が耐圧性や耐摩耗性、光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能を有していることにより、機能層25や陰極27、さらにはガスバリア層40もこの保護層132によって保護することができ、発光素子30の長寿命化を図ることができる。
また、緩衝層131が機械的衝撃に対して緩衝機能を発揮するので、外部から機械的衝撃が加わった場合に、ガスバリア層40やこの内側の発光素子30への機械的衝撃を緩和し、機械的衝撃による発光素子30の機能劣化を防止することができる。
【0089】
(第2実施形態)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器について図9(a)〜(c)を参照して説明する。
図9(a)は、電子機器としての携帯型電話機を示す斜視図である。図9(a)に示すように、電子機器の一例としての携帯型電話機1000は、折畳み式の本体の一方に表示部1001が設けられている。表示部1001には、上記実施形態の電気光学装置100が搭載されている。
図9(b)は、電子機器としての腕時計型情報端末を示す斜視図である。図9(b)に示すように、電子機器の一例としての腕時計型情報端末1100は、ベルトが装着された本体に表示部1101が設けられている。表示部1101には、上記実施形態の電気光学装置100が搭載されている。
図9(c)は、電子機器としての携帯型情報処理装置を示す斜視図である。図9(c)に示すように、電子機器の一例としての携帯型情報処理装置1200は、キーボー1202を有する本体1204と、本体1204に重ねて折り畳むことが可能な表示部1206とを有している。表示部1206には、上記実施形態の電気光学装置100が搭載されている。
図9(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、表示部に額縁領域109を狭くすることが可能な電気光学装置100を搭載しているので、それぞれの電子機器全体をよりコンパクトにすることが可能である。すなわち、すぐれた携帯性を有する電子機器を提供することができる。
【0090】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0091】
(変形例1)上記第1実施形態の電気光学装置100において、接続部105の平面的な配置は、これに限定されない。例えば、図1に示したように第1実施形態では、X方向において画素領域107を挟んで一対の接続部105を設けたが、少なくとも一方の接続配線106に平面的に重なるように接続部105を設けてもよい。これによれば、電気光学装置100の平面的な中心線と画素領域107の中心線とがX方向においてずれるものの、画素領域107の外側の額縁領域を小さくすることができる。
図10は変形例1の電気光学装置を示す概略平面図である。また例えば、図10に示すように、変形例1の電気光学装置200は、上記実施形態の電気光学装置100に対して、画素領域107の外側において設けられた検査回路103に対して平面的に重なり合うと共に、一対の接続部105に架橋するように設けられた接続部205を有する。これによれば、接続部205に重なるように陰極27を形成すれば、画素領域107を覆う陰極27の電気的な抵抗をより低減することができ、陰極27の電気抵抗により発光素子30における発光むらを低減できる。
【0092】
(変形例2)上記第1実施形態の電気光学装置100における画素領域107の構成は、これに限定されない。図11は変形例2の電気光学装置を示す概略断面図である。例えば、図11に示すように、変形例2の電気光学装置300は、画素領域107の周縁部において、実際の表示には寄与しないダミー画素を有している。ダミー画素は、サブ画素SGと同様に画素電極21および陰極27と、これらの電極間に設けられた機能層25とを有しているが、画素電極21は駆動用のTFT122と電気的に接続していない。接続部105は、一方の端部105aがダミー画素の外側に位置する隔壁部31に掛かるように設けられている。このようなダミー画素を設けることにより、液滴吐出法やマスク蒸着法を用いて機能層25を形成する場合の上記周縁部における成膜ばらつきが実際の表示に用いるサブ画素SGに影響を及ぼすことを低減して、輝度むらが少ない表示品質を実現することができる。
【0093】
(変形例3)上記第1実施形態における保護層132を備えた電気光学装置100の構成は、これに限定されない。例えば、額縁領域109内に保護層132と素子基板10とを接合するシール部材を配置して、緩衝層131を封止しつつ保護層132を支持する構成としてもよい。これによれば、電気光学装置100の外周部からの酸素や水分などの侵入をより低減可能な構造とすることができる。
【0094】
(変形例4)上記第1実施形態の電気光学装置100の構成は、これに限定されない。例えば、発光素子30から得られる発光は、赤(R)、緑(G)、青(B)の三色に限定されず、白色などの単色としてもよい。これによれば、単色の発光による情報表示だけでなく、照明装置としても活用できる。また、発光素子30を白色発光が得られる構成とし、保護層132を透明なガラスなどを用い、発光素子30の平面的な配置に対応させて赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルターを保護層132と発光素子30との間に設けた構成として、フルカラー表示を可能としてもよい。
【0095】
(変形例5)上記第1実施形態の電気光学装置100を搭載可能な電子機器は、上記第2実施形態の携帯型電話機1000、腕時計型情報端末1100、携帯型情報処理装置1200に限定されない。例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、DVDビューワー、カーナビゲーション装置などの車載用ディスプレイ、電子手帳、POS端末、デジタルサイネージと呼ばれる電子広告媒体などが挙げられる。
【符号の説明】
【0096】
10…基板としての素子基板、21…一対の電極のうちの画素電極、23…発光層、25…機能層、27…一対の電極のうちの一方の電極としての陰極、30…発光素子、31…隔壁部、31a…隔壁部の壁面、40…ガスバリア層、100,200…電気光学装置、101…周辺回路としての走査線駆動回路、103…周辺回路としての検査回路、105…接続部、105a…接続部の一方の端部、105b…接続部の他方の端部、106…接続配線、107…画素領域、1000…電子機器としての携帯型電話機、1100…電子機器としての腕時計型情報端末、1200…電子機器としての携帯型情報処理装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置、電気光学装置の製造方法、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置として、基板上において、一対の電極と、該一対の電極間に有機膜からなる発光層を含む機能層を備えた有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を有する有機EL装置が知られている。
【0003】
上記有機EL装置において、上記機能層は、水分や気体の吸収により発光寿命が低下するおそれがあるので、外部からの水分や気体の浸入から有機EL素子を保護する封止構造が採用されている。
例えば、特許文献1には、バンク層によって分離された複数の表示素子と配線層とを有する基板と、該基板の外周の封止領域で接合され該基板を覆う封止基板とを備え、該封止領域において複数の表示素子とバンク層とを覆う電極層の外周部と配線層とが接続された表示装置が開示されている。この表示装置は、封止基板の四辺に沿った部分で表示素子が設けられた基板を封止する所謂缶封止構造が示されており、この封止領域で電極層と配線層とを接続しているので、封止領域と、電極層と配線層との接続領域と、平面的にことなる部分に配置する場合に比べて表示に寄与しない額縁領域を狭くできるとしている。
【0004】
また、特許文献2では、表示領域の周囲に配置され且つ有機発光層を挟持する一対の電極のうちの一方の電極と接続される第1接続配線と、該第1接続配線の端面を覆い、該第1接続配線および表示領域に設けられた複数の発光素子の表面を覆うガスバリア層とを備えた有機EL装置が開示されている。この有機EL装置によれば、第1接続配線を経由した水分侵入をガスバリア層で防ぐことができ、長い発光寿命を実現できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2003/69858号パンフレット
【特許文献2】特開2009−117079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の技術思想を特許文献1の封止構造に反映させようとすると、特許文献1の表示装置における額縁領域の幅が広がるおそれがあり、額縁領域の幅を狭くできるという所期の目的の達成が困難になるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例の電気光学装置は、基板上に対向配置された一対の電極と前記一対の電極間に配置された発光層を含む機能層とを有する発光素子と、複数の前記発光素子が配置された画素領域と、前記基板上において前記画素領域の外側に配置され、前記一対の電極のうちの一方の電極に電気的に接続される接続配線と、前記接続配線に重なると共に前記接続配線より前記画素領域側に延在して配置された接続部と、を備え、前記一方の電極は、前記画素領域に亘って設けられると共に、前記画素領域の外側にて前記接続部の前記画素領域に近い側の一方の端部に重なって設けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、接続配線と一方の電極とが接続部を介して電気的に接続されている。したがって、接続配線と一方の電極とを直接接触させて接続させる場合に比べて、一方の電極の平面的な配置精度が低くても、それを考慮して接続部を設けておけばよいので、接続配線と一方の電極とを電気的に安定した状態で接続させることができる。言い換えれば、接続配線と一方の電極とを画素領域の外側にて電気的に接続させる領域を狭くすることが可能となる。
【0010】
[適用例2]上記適用例の電気光学装置において、前記接続配線と前記画素領域との間に配置され、前記発光素子を駆動制御する周辺回路を有し、前記接続部は、前記周辺回路が設けられた領域に対して平面的に少なくとも一部が重なって設けられているとしてもよい。
この構成によれば、基板上において画素領域の外側の領域すなわち額縁領域に接続配線と周辺回路とを設けたとしても、周辺回路が設けられた領域に対して少なくとも一部が重なるように接続部を設けることにより、平面的に接続部を独立して配置する場合に比べて、額縁領域を狭くすることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例の電気光学装置において、前記画素領域を囲む隔壁部を有し、前記接続部は、前記隔壁部における前記画素領域側と反対側の壁面に掛かるように設けられ、前記一方の電極は、前記画素領域に亘って設けられると共に、前記画素領域の外側にて前記隔壁部の前記壁面に掛かった部分の前記接続部に重なって設けられているとしてもよい。
この構成によれば、画素領域を囲む隔壁部が設けられた領域が平面的に狭い領域であっても隔壁部の壁面を利用して、接続部と一方の電極とを安定的に接続することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例の電気光学装置において、前記接続配線および前記接続部は、前記基板上において平面的に前記画素領域を覆った前記一方の電極の一の方向の両端側に配置されていることが好ましい。
この構成によれば、一方の電極における一の方向の電気的な抵抗を小さくして、発光素子間の発光特性のばらつきを低減できる。なお、一の方向とは、一方の電極における長手方向であることが好ましい。一方の電極における長手方向の抵抗上昇を抑えることができる。
【0013】
[適用例5]上記適用例の電気光学装置において、前記接続部と前記一方の電極とが異なる導電性材料で構成されているとしてもよい。
この構成によれば、一方の電極は、発光層を含む機能層からの発光をどのように取り出すかによって、様々な材料選択が考えられるが、接続部は電気的な接続を可能とすればよいので、材料選択の自由度が一方の電極の材料によって制約されない。
【0014】
[適用例6]上記適用例の電気光学装置において、前記一方の電極に比べて前記接続部のほうが比抵抗が低いことが好ましい。
この構成によれば、接続配線と一方の電極とを低抵抗な接続部を介して接続させることができる。
【0015】
[適用例7]上記適用例の電気光学装置において、前記一方の電極を覆うと共に、前記接続部の前記画素領域から遠い方の他方の端部を覆う少なくとも1つのガスバリア層を備えることが好ましい。
この構成によれば、接続部が設けられた基板上の界面から水分などが画素領域に設けられた発光素子に侵入することをガスバリア層によって防止することができる。すなわち、長い発光寿命を有する電気光学装置を提供できる。
【0016】
[適用例8]本適用例の電気光学装置の製造方法は、基板上に対向配置された一対の電極と前記一対の電極間に配置された発光層を含む機能層とを有する発光素子を備えた電気光学装置の製造方法であって、複数の前記発光素子が配置された画素領域の外側に前記一対の電極に接続される接続配線を形成する第1工程と、前記接続配線に重なると共に前記接続配線より前記画素領域側に延在する接続部を形成する第2工程と、前記一対の電極のうちの一方の電極を、前記画素領域の外側にて前記接続部の前記画素領域に近い側の一方の端部に重なると共に前記画素領域に亘って形成する第3工程と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、接続配線と一方の電極とが接続部を介して電気的に接続される。したがって、接続配線と一方の電極とを直接接触させて接続させるように一方の電極を形成する場合に比べて、一方の電極の平面的な配置精度が低くても、それを考慮して接続部を形成すればよいので、接続配線と一方の電極とを電気的に安定した状態で接続させることができる。言い換えれば、接続配線と一方の電極とを画素領域の外側にて電気的に接続させる領域を狭くすることが可能な電気光学装置の製造方法を提供できる。
【0018】
[適用例9]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記接続部を形成する方法がフォトリソグラフィ法であり、前記一方の電極を形成する方法がマスク蒸着法であることを特徴とする。
この方法によれば、一方の電極を形成位置精度がフォトリソグラフィ法に比べて劣るマスク蒸着法で形成しても、一方の電極と重なり合う接続部がフォトリソグラフィ法で形成されているので、電気光学装置における画素領域の周辺領域つまり額縁領域の位置精度を高い状態で実現できる。
【0019】
[適用例10]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記接続部と前記一方の電極とを異なる導電性材料で形成するとしてもよい。
この方法によれば、一方の電極と接続部との材料選択の幅を広げて、トップエミッションおよびボトムエミッションの電気光学装置のいずれにも対応可能とすることができる。
【0020】
[適用例11]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記一方の電極に対して前記接続部は比抵抗が低い導電性材料を用いて形成されることが好ましい。
この方法によれば、接続配線と一方の電極とを直接接続させる場合に比べて、接続領域の形成精度を向上させると共により低抵抗な状態で電気的に接続できる。
【0021】
[適用例12]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記接続配線と前記画素領域との間に、前記発光素子を駆動制御する周辺回路を形成する工程を有し、前記第2工程は、前記周辺回路が形成された領域に対して平面的に少なくとも一部が重なるように前記接続部を形成するとしてもよい。
この方法によれば、基板上において画素領域の外側の領域すなわち額縁領域に接続配線と周辺回路とを形成したとしても、周辺回路が形成された領域に対して少なくとも一部が重なるように接続部を形成することにより、平面的に接続部を独立して形成する場合に比べて、額縁領域を狭くすることができる。
【0022】
[適用例13]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記画素領域を囲む隔壁部を形成する工程を有し、前記第2工程は、前記隔壁部における前記画素領域側と反対側の壁面に掛かるように前記接続部を形成し、前記第3工程は、前記一方の電極を前記画素領域に亘ると共に、前記画素領域の外側にて前記隔壁部の前記壁面に掛かった部分の前記接続部に重なるように形成するとしてもよい。
この方法によれば、画素領域を囲む隔壁部が形成された領域が平面的に狭い領域であっても隔壁部の壁面を利用して、接続部と一方の電極とを安定的に接続することができる。
【0023】
[適用例14]上記適用例の電気光学装置の製造方法において、前記一方の電極を覆うと共に、前記接続部の前記画素領域から遠い方の他方の端部を覆う少なくとも1つのガスバリア層を形成する第4工程を、さらに備えることが好ましい。
この方法によれば、接続部が形成された基板上の界面から水分などが画素領域に配置された発光素子に侵入することをガスバリア層によって防止することができる。すなわち、長い発光寿命を有する電気光学装置を製造できる。
【0024】
[適用例15]本適用例の電子機器は、上記適用例の電気光学装置または上記適用例の電気光学装置の製造方法を用いて製造された電気光学装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、画素領域を囲む額縁領域を従来よりも狭くして、コンパクトで見栄えがよい電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】電気光学装置の構成を示す概略平面図。
【図2】電気光学装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図3】図1のA−A’線で切った電気光学装置の構造を示す概略断面図。
【図4】電気光学装置の要部拡大断面図。
【図5】電気光学装置の製造方法を示すフローチャート。
【図6】(a)〜(d)は電気光学装置の製造方法を示す概略断面図。
【図7】(e)〜(h)は電気光学装置の製造方法を示す概略断面図。
【図8】保護層を備えた電気光学装置の一例を示す概略断面図。
【図9】(a)〜(c)は電子機器の実施例を示す斜視図。
【図10】変形例1の電気光学装置を示す概略平面図。
【図11】変形例2の電気光学装置を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0027】
(第1実施形態)
<電気光学装置>
まず、本実施形態の電気光学装置について、図1〜図4を参照して説明する。
図1は電気光学装置の構成を示す概略平面図、図2は電気光学装置の電気的な構成を示す等価回路図、図3は図1のA−A’線で切った電気光学装置の構造を示す概略断面図、図4は電気光学装置の要部拡大断面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の電気光学装置100は、発光素子を備えたサブ画素SGがスイッチング素子としての薄膜トランジスター(Thin Film Transistor)によって駆動制御されるアクティブ駆動型の発光装置である。上記薄膜トランジスター(TFT)が設けられた素子基板10上において、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色に対応したサブ画素SGと、複数のサブ画素SGがマトリックス状に配置された画素領域107とを有している。
画素領域107におけるサブ画素SGの配置を基準として、行方向をX方向とし、列方向をY方向として説明する。
X方向における画素領域107の外側の領域に、一対の走査線駆動回路101がY方向に沿って配置されている。
また、一対の走査線駆動回路101のそれぞれに平面的に重なるように同じく一対の接続部105がY方向に沿って設けられている。接続部105は、素子基板10に設けられた接続配線106と、サブ画素SGの発光素子における一対の電極のうちの一方の電極との電気的な接続を図るために設けられた導電体であって、詳しくは後述する。
【0029】
Y方向における画素領域107の外側の領域のうち、図面上において上方の領域に検査回路103と、一対の走査線駆動回路101を結ぶ配線104とが該上方の辺部に沿って配置されている。また、検査回路103が設けられた該上方の領域に対して反対側の領域は、外部駆動回路との接続を図る端子部を有しており、該端子部には、フレキシブルな中継基板110が設けられている。
【0030】
中継基板110は、所謂FPCであって、ドライバーIC102が平面実装されている。ドライバーIC102は、データ線駆動回路を含むものである。中継基板110には、ドライバーIC102に外部駆動回路からの信号が伝達される複数の入力配線112と、ドライバーIC102からの制御信号が出力される複数の出力配線111とが設けられている。複数の出力配線111は、素子基板10の上記端子部において、上記接続部105に繋がる接続配線106と走査線駆動回路101やサブ画素SGの発光素子に接続する配線108とに接続されている。
【0031】
本実施形態では、サブ画素SGに設けられた発光素子を駆動制御する周辺回路のうち、走査線駆動回路101と検査回路103とを素子基板10上に設けているが、ドライバーIC102に含まれたデータ線駆動回路なども素子基板10上に設ける構成としてもよい。
【0032】
図2に示すように、電気光学装置100は、複数の走査線101aと、複数の走査線101aに対して絶縁された状態で交差(直交)する複数のデータ線102aおよび複数の電源線102bとを有している。
【0033】
複数の走査線101aは、シフトレジスターおよびレベルシフターを備える走査線駆動回路101に接続されている。複数のデータ線102aは、シフトレジスター、レベルシフター、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるドライバーIC102のデータ線駆動回路に接続されている。
【0034】
複数の走査線101aおよび複数のデータ線102a、複数の電源線102bによってマトリックス状に区分された領域にサブ画素SGが設けられている。
【0035】
サブ画素SGは、走査線101aを介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用のTFT121と、このスイッチング用のTFT121を介してデータ線102aから供給される画素信号を保持する保持容量123と、該保持容量123によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用のTFT122とを有している。また、駆動用のTFT122を介して電源線102bに電気的に接続したときに該電源線102bから駆動電流が流れ込む一対の電極のうちの他方の電極としての画素電極(陽極)21と、一対の電極のうちの一方の電極としての陰極27と、画素電極21と陰極27との間に挟み込まれた発光層を含む機能層25とを有している。画素電極21と機能層25と陰極27とにより、発光素子(有機EL素子)30が構成されている。
【0036】
なお、図2において検査回路103を省略しているが、検査回路103は、電気光学装置100の作動状況を検査するための回路であって、例えば検査結果を外部に出力する検査情報出力手段を備え、製造途中や出荷時の表示品質、欠陥の検査を行うことができるように構成されたものである。
【0037】
走査線駆動回路101および検査回路103への駆動制御信号および駆動電圧の印加は、電気光学装置100の作動制御を行うドライバーIC102などから送出されるようになっている。この場合の駆動制御信号とは、走査線駆動回路101および検査回路103が信号を出力する際の制御に関連する指令信号である。
【0038】
このような電気光学装置100によれば、走査線101aが駆動されてスイッチング用のTFT121がオン状態になると、そのときのデータ線102aの電位(画素信号)が保持容量123に保持され、該保持容量123の状態に応じて、駆動用のTFT122のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用のTFT122のチャネルを介して、電源線102bから画素電極21に電流が流れ、さらに機能層25を介して陰極27に電流が流れる。機能層25は、これを流れる電流量に応じて発光して、画素信号に基づいた表示が行われる。
【0039】
図3に示すように、素子基板10上には、駆動用のTFT122や電源線102bなどの配線類を含む回路部17が設けられ、該回路部17上に赤(R)、緑(G)、青(B)に対応して形成された発光素子30R,30G,30Bが設けられている。さらに、これらの発光素子30R,30G,30Bを覆うようにガスバリア層40が設けられている。
【0040】
各発光素子30R,30G,30Bは、回路部17上において隔壁部32により区画されている。これらの隔壁部32のうち、複数の発光素子30(発光素子30R,30G,30B)が設けられた画素領域107の外周部分に設けられたものを隔壁部31として区分して説明する。また、画素領域107の外側で素子基板10の端部との間の領域を額縁領域109として説明する。
【0041】
額縁領域109には、走査線駆動回路101などの周辺回路や接続配線106、接続部105が設けられている。
【0042】
各発光素子30R,30G,30Bは、それぞれ画素電極21と画素電極21上に形成された機能層25とを有し、機能層25を挟む一対の電極のうちの一方の電極である陰極27は、機能層25と隔壁部32とを覆うように設けられている。
【0043】
接続配線106は回路部17において厚み方向に導通して、回路部17の表面に露出するように設けられおり、接続部105は露出した接続配線106に重なるように配置されている。また、接続部105は、回路部17上において接続配線106側から走査線駆動回路101が設けられた領域を越え、隔壁部31の壁面に至る領域に跨って設けられている。すなわち、接続部105は接続配線106に接続すると共に、走査線駆動回路101に対して平面的に重なり、画素領域107に向かって延在している。隔壁部31の壁面に掛かった部分を接続部105の一方の端部105aと呼び、接続配線106と重なり合った部分を他方の端部105bと呼ぶ。
なお、接続配線106は、図1に示すように平面的には走査線駆動回路101に沿ってY方向に延在している。接続配線106と接続部105とは、平面的に接続配線106の延在方向(Y方向)において連続的に接続しているが、これに限定されない。接続配線106の延在方向において例えばコンタクトホールを介して接続配線106と接続部105とが部分的に接続している構造としてもよい。これによれば、走査線駆動回路101などの周辺回路やこれに繋がる配線等の平面的な配置を考慮して、接続配線106と接続部105とを電気的に接続できる。
【0044】
陰極27は、画素領域107内において機能層25と隔壁部32とを覆うように設けられ、額縁領域109において隔壁部31の壁面に沿った上記一方の端部105aを覆うように設けられている。これにより、接続配線106と陰極27とは接続部105を介して電気的に接続されている。平面的に隔壁部31の幅が他の隔壁部32よりも狭くても、壁面に設けられた上記一方の端部105aと陰極27とが重なっているので、壁面において接続面積が確保され安定した導通抵抗が実現されている。
【0045】
ガスバリア層40は、画素領域107において陰極27を覆うように設けられ、且つ額縁領域109において接続部105の他方の端部105bを覆うように設けられている。これにより、陰極27および接続部105と回路部17(接続配線106)との界面から画素領域107へ酸素や水分などが侵入することを防いでいる。
【0046】
詳細は後述するが、本実施形態の発光素子30(発光素子30R,30G,30B)はトップエミッション構造が採用されており、機能層25で発光した光は陰極27側に取り出される。したがって、陰極27は透光性を有する材料で構成されることが必要であり、透明導電材料が用いられる。透明導電材料としてはITO(Indium Tin Oxide)が好適とされるが、これ以外にも、例えば酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(Indium Zinc Oxide:IZO/アイ・ゼット・オー)(登録商標))(出光興産社製)などを用いることができる。なお、本実施形態ではITOを用いている。
【0047】
陰極27と接続配線106とを結ぶ接続部105は、額縁領域109に設けられているので透光性を有する必要はなく、陰極27に対して比抵抗が低いAlなどの金属材料やその合金などを用いることができる。
【0048】
接続配線106は、回路部17を構成する薄膜トランジスターや配線類を形成する工程で同時に形成されることが好ましい。次に、接続配線106の構成に関連する回路部17と発光素子30について説明する。
【0049】
図4に示すように、素子基板10上には回路部17が設けられ、さらに回路部17上に発光素子30が設けられている。回路部17側から順に説明する。
【0050】
素子基板10には、まず、その表面を覆うように例えば酸化シリコンなどの無機絶縁材料からなる下地絶縁膜11が設けられている。下地絶縁膜11上にTFT122が設けられている。TFT122は、下地絶縁膜11上に島状に設けられた例えばポリシリコンからなる半導体層122hと、半導体層122hを覆う例えば酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機絶縁材料からなるゲート絶縁膜12と、ゲート絶縁膜12上に設けられたゲート電極122gとを有する。
【0051】
半導体層122hのうち、ゲート絶縁膜12を挟んでゲート電極122gと重なる領域がチャネル領域122aとされている。なお、このゲート電極122gは、図示しないが走査線101aの一部である。一方、半導体層122hを覆い、ゲート電極122gが設けられたゲート絶縁膜12を覆って例えば酸化シリコンを主体とする第1層間絶縁膜13が設けられている。
【0052】
また、半導体層122hのうち、チャネル領域122aのソース側には、低濃度ソース領域122bおよび高濃度ソース領域122sが設けられる一方、チャネル領域122aのドレイン側には低濃度ドレイン領域122cおよび高濃度ドレイン領域122dが設けられ、いわゆるLDD(Light Doped Drain)構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域122sは、ゲート絶縁膜12と第1層間絶縁膜13とにわたって開孔するコンタクトホール13aを介して、ソース電極122eに接続されている。このソース電極122eは、前述した電源線102b(図2参照、図4においてはソース電極122eの位置に紙面垂直方向に延在する)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域122dは、ゲート絶縁膜12と第1層間絶縁膜13とにわたって開孔するコンタクトホール13bを介して、ソース電極122eと同じ材料からなるドレイン電極122fに接続されている。
【0053】
ソース電極122eおよびドレイン電極122fが設けられた第1層間絶縁膜13の上層は、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする第2層間絶縁膜14によって覆われている。この第2層間絶縁膜14は、アクリル系の有機絶縁材料以外の材料、例えば、酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機絶縁材料を用いることもできる。そして、例えばITOからなる画素電極21が、この第2層間絶縁膜14の表面上に設けられると共に、該第2層間絶縁膜14に設けられたコンタクトホール14aを介してドレイン電極122fに接続されている。すなわち、画素電極21は、ドレイン電極122fを介して、半導体層122hの高濃度ドレイン領域122dに接続されている。
【0054】
ソース電極122eおよびドレイン電極122f、ならびにゲート電極122gは、例えばAlなどの低抵抗配線材料を用いて構成することができる。
【0055】
なお、走査線駆動回路101および検査回路103に含まれる、例えばシフトレジスターのインバーターを構成するNチャネル型またはPチャネル型のTFTは、画素電極21と接続されていない点を除いて上記駆動用のTFT122と同様の構造とされている。
【0056】
回路部17上に設けられた発光素子30は、前述したように画素電極21と、陰極27と、両電極間に配置された機能層25とを含んで構成されている。また、各発光素子30は、隔壁部32により区画されている。具体的には、隔壁部32は、画素電極21の外縁部を覆い、画素電極21上において開口32cを有する下層隔壁部32aと、下層隔壁部32a上に設けられ実質的に機能層25が設けられる膜形成領域を区画する上層隔壁部32bとにより構成されている。下層隔壁部32aは、例えば酸化シリコンなどの無機絶縁材料からなる。上層隔壁部32bは、例えばエポキシ系あるいはポリイミド系などの有機絶縁材料からなる。
【0057】
機能層25は、画素電極21側に設けられた正孔注入輸送層22と、正孔注入輸送層22に重ねて設けられた発光層23とを有する。本実施形態では、機能層形成材料を含む液状体を上記膜形成領域に塗布して乾燥させることにより、機能層25(正孔注入輸送層22、発光層23)を形成している。
【0058】
正孔注入輸送層22の形成材料としては、例えばポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体など、またはそれらのドーピング体などが用いられる。具体的には、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)[商品名;バイトロン−p(Bytron−p):バイエル社製]の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液などが用いられる。
【0059】
発光層23の形成材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料を用いることができる。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。
また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
なお、上記高分子材料に代えて、従来公知の低分子材料を用いることもできる。
【0060】
機能層25の構成は、これに限定されるものではなく、発光層23を主体として、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層などのキャリア注入層またはキャリア輸送層を含んでもよい。さらには、正孔阻止層(ホールブロッキング層)、電子阻止層(エレクトロン阻止層)を含んでもよい。
【0061】
機能層25を覆うように設けられた陰極27は、前述したようにトップエミッション構造であることから、ITOなどの透明導電膜材料を用いて構成されている。
【0062】
陰極27を覆うように設けられたガスバリア層40は、例えば無機化合物からなるもので、好ましくは珪素化合物、すなわち珪素窒化物や珪素酸窒化物、珪素酸化物などによって構成されている。ただし、珪素化合物以外でも、例えばアルミナや酸化タンタル、酸化チタン、さらには他のセラミックスなどから構成されていてもよい。このようにガスバリア層40が無機化合物で形成されていれば、ITOなどの無機透明導電膜材料からなる陰極27との密着性がよく、ガスバリア層40が欠陥のない緻密な層となって酸素や水分に対するバリア性がより良好になる。
【0063】
また、このガスバリア層40としては、上記珪素化合物のうちの異なる材料層を積層した構造としてもよく、例えば、陰極27側から珪素窒化物、珪素酸窒化物の順に形成し、あるいは陰極27側から珪素酸窒化物、珪素酸化物の順に形成してガスバリア層40を構成するのが好ましい。また、このような組み合わせ以外にも、組成比の異なる珪素酸窒化物を2層以上積層した場合に、陰極27側の層の酸素濃度がこれより外側の層の酸素濃度より低くなるように構成するのが好ましい。
このようにすれば、陰極27側がその反対側より酸素濃度が低くなることから、ガスバリア層40中の酸素が陰極27を通ってその内側の発光層23に到り、発光層23を劣化させてしまうといったことを防止することができ、これにより発光層23の長寿命化を図ることができる。
【0064】
また、ガスバリア層40としては、積層構造とすることなく、その組成を不均一にして特にその酸素濃度が連続的に、あるいは非連続的に変化するような構成としてもよく、その場合にも、陰極27側の酸素濃度が外側の酸素濃度より低くなるように構成するのが、前述した理由により好ましい。
また、このようなガスバリア層40の厚さとしては、10nm以上、500nm以下であるのが好ましい。10nm未満であると、膜の欠陥や膜厚のバラツキなどによって部分的に貫通孔が形成されてしまい、ガスバリア性が損なわれてしまうおそれがあるからであり、500nmを越えると、応力による割れが生じてしまうおそれがあるからである。
また、本実施形態ではトップエミッション型としていることから、ガスバリア層40は透光性を有する必要があり、したがってその材質や膜厚を適宜に調整することにより、本実施形態では可視光領域における光線透過率を例えば80%以上にしている。
【0065】
<電気光学装置の製造方法>
次に、本実施形態の電気光学装置100の製造方法について、図5〜図8を参照して説明する。図5は電気光学装置の製造方法を示すフローチャート、図6(a)〜(d)および図7(e)〜(h)は電気光学装置の製造方法を示す概略断面図、図8は保護層を備えた電気光学装置の一例を示す概略断面図である。なお、図6および図7では、回路部17の主たる構成がわかるように表示して、詳細な構造(構成)は図示を省略している。
【0066】
図5に示すように、本実施形態の電気光学装置100の製造方法は、回路部形成工程(ステップS1)と、画素電極形成工程(ステップS2)と、隔壁部形成工程(ステップS3)と、接続部形成工程(ステップS4)と、機能層形成工程(ステップS5)と、陰極形成工程(ステップS6)と、ガスバリア層形成工程(ステップS7)とを備えている。
【0067】
ステップS1の回路部形成工程では、図6(a)に示すように、素子基板10上に回路部17を形成する。回路部17の構成は前述したとおりであって、公知の方法を用いて形成することができる。例えば、駆動用のTFT122における半導体層122h(図4参照)は、下地絶縁膜11上に、ICVD法、プラズマCVD法などを用いてアモルファスシリコン層を形成した後、レーザアニール法または急速加熱法により結晶粒を成長させてポリシリコン層とする。そして、該ポリシリコン層を島状にパターニングして、ボロンなどの不純物を注入することにより、不純物濃度が異なる各領域を形成する方法が挙げられる。このような回路部形成工程において、走査線駆動回路101や後に接続配線106を構成するところの配線部106aも同時に形成する。
配線部106aの形成方法としては、例えば、上記ポリシリコン層をパターニングして不純物を注入し導電性を付与する方法が挙げられる。さらに形成された配線部106aに対してゲート電極、ソース電極、ドレイン電極を形成する工程で、導電層を重ねて形成してもよい。
また、回路部17の最表面を構成する第2層間絶縁膜14は、例えばアクリル系の高分子有機絶縁材料をスピンコート法などを用いて塗布して乾燥させることにより形成する方法が挙げられる。後に形成される画素電極21とTFT122とを接続させるためのコンタクトホール14aや配線部106a上のコンタクトホール14bは、第2層間絶縁膜14をエッチングすることによって形成する。これらのコンタクトホール14a,14bは、第2層間絶縁膜14として感光性樹脂材料を用い、塗布された該感光性樹脂膜を露光・現像することによって形成してもよい。そして、ステップS2へ進む。
【0068】
ステップS2の画素電極形成工程では、図6(b)に示すように、コンタクトホール14a,14bを埋めると共に第2層間絶縁膜14を覆って例えばITO膜を成膜し、これをパターニングすることによって画素電極21と配線部106bとを形成する。配線部106bは配線部106a上に形成されて接続配線106を構成する。そして、ステップS3へ進む。
【0069】
ステップS3の隔壁部形成工程では、図6(c)に示すように、まず、画素電極21の外縁部を覆う下層隔壁部32aを形成する。下層隔壁部32aの形成方法としては、画素電極21上において開口32cに相当する部分をマスキングして、酸化シリコンなどの無機絶縁膜を減圧CVD法などにより成膜する方法が挙げられる。膜厚は、およそ100nm〜200nmである。続いて、画素電極21、下層隔壁部32aを覆うように例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂などのレジストを溶媒に溶解したものを、スピンコート法、ディップコート法などの塗布法により塗布して有機質層を形成する。なお、有機質層の構成材料は、後の機能層形成工程において用いられる液状体の溶媒に溶解せず、パターニングし易く絶縁性を示すものであればどのようなものでもよい。
【0070】
続いて、有機質層をフォトリソグラフィ技術、エッチング技術を用いてパターニングし、有機質層に開口部32dを形成することにより、開口部32dに壁面を有した上層隔壁部32bを下層隔壁部32a上に形成する。本工程で、画素領域107の外周部分に位置する隔壁部31も同時に形成する。この隔壁部31の形成にあたっては、画素領域107の外側となる壁面31aが回路部17の表面に対して緩やかに傾斜するように形成することが好ましい。後に壁面31aに対して形成される各種の導電膜やこれを覆うガスバリア層40のカバレージ性を確保することができる。本実施形態では、壁面31aの傾斜角度θをおよそ110度とした。また、回路部17上における隔壁部31,32の高さは、およそ1μm〜2μmである。そして、ステップS4へ進む。
【0071】
ステップS4の接続部形成工程では、図6(d)に示すように、画素領域107内をマスキングしてAlなどの低抵抗配線材料を用いて導電膜を形成する。そして、該導電膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングして、画素領域107側の一方の端部105aが隔壁部31の壁面31aを覆い、他方の端部105bが接続配線106と重なる接続部105を形成する。平面的には、図1に示したように、画素領域107の外側において走査線駆動回路101が形成された領域に重なるように略矩形状の一対の接続部105を形成する。接続部105の厚みはおよそ100nm〜200nmである。そして、ステップS5へ進む。
【0072】
ステップS5の機能層形成工程では、まず、隔壁部32により区画された膜形成領域に表面処理を施す。具体的には、酸素を処理ガスとするプラズマ処理を施して、上層隔壁部32bの壁面を含む表面および画素電極21の表面ならびに画素電極21の外縁部を覆って膜形成領域内にはみ出した下層隔壁部32aの表面をそれぞれに親液性を付与する。続いて、大気雰囲気中で例えばCF4(四フッ化メタン)を処理ガスとするプラズマ処理を施し、有機絶縁材料で構成された上層隔壁部32bの壁面を含む表面に撥液性を付与する。
【0073】
なお、このCF4によるプラズマ処理においては、親液性が付与された画素電極21の表面や下層隔壁部32aの一部についても多少の影響を受けるが、これらを構成する無機材料であるITOや酸化シリコンなどはフッ素に対する親和性に乏しいため、親液性が保たれる。
【0074】
次に、正孔注入輸送層形成材料を含む液状体を隔壁部32により区画された膜形成領域に塗布して乾燥することにより、図7(e)に示すように正孔注入輸送層22を形成する。該液状体の塗布方法としては、例えば吐出ヘッドのノズルから液状体を液滴として吐出する液滴吐出法や、スピンコート法などが挙げられる。上記膜形成領域に選択的に無駄なく所定量の液状体を塗布できるという点で、上記液滴吐出法を採用することが好ましい。
【0075】
上記ノズルから吐出された液滴は、親液性を有する画素電極21の表面において濡れ広がり、上記膜形成領域内に満たされる。その一方で、撥液性を有する上層隔壁部32bの表面に着弾した液滴は、はじかれて上記膜形成領域内に収容される。上記膜形成領域内に充填された液状体を乾燥させて形成した正孔注入輸送層22の膜厚はおよそ50nm〜100nmである。
なお、正孔注入輸送層22を形成した後は、正孔注入輸送層22およびこの後に形成される発光層23の酸化を防止すべく、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で成膜を行うのが好ましい。
【0076】
続いて、発光層形成材料を含む液状体を隔壁部32により区画された膜形成領域に塗布して乾燥することにより、図7(f)に示すように発光層23を形成する。該液状体の塗布による正孔注入輸送層22の再溶解を防止するため、該液状体の溶媒として、正孔注入輸送層22に対して不溶な無極性溶媒を用いる。
なお、発光層23は、赤(R)、緑(G)、青(B)の発光が得られる発光層形成材料を含む液状体を塗布して形成する。つまり、赤(R)の発光層形成材料を含む液状体を所定の膜形成領域内に塗布することによって赤の発光層23Rを形成する。他の発光色の発光層23G,23Bについても同様である。上記膜形成領域内に充填された液状体を乾燥させて形成した各発光層23R,23G,23Bの膜厚はおよそ100nm〜300nmである。
【0077】
なお、本実施形態では、機能層25を機能層形成材料を含む液状体を膜形成領域に塗布することによって形成したが、これに限定されない。例えば、正孔注入輸送層22は液滴吐出法を用いて形成し、発光層23はマスク蒸着法を用いて形成してもよい。あるいは、異なる発光色が得られる発光層23R,23G,23Bのうち例えば発光層23Bのみをマスク蒸着して形成してもよい。そして、ステップS6へ進む。
【0078】
ステップS6の陰極形成工程では、図7(g)に示すように、少なくとも画素領域107の平面的な大きさよりもやや大きな開口50aを有するマスク50を用いて陰極27をマスク蒸着して形成する。このときマスク蒸着では、陰極形成材料としてITOを成膜する。陰極27は、発光層23と隔壁部32を覆うように成膜される。マスク蒸着によって成膜された陰極27の外形位置精度は、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする場合に比べて低いものの、画素領域107の外側では、隔壁部31の壁面31aに形成された接続部105の一方の端部105aを覆うように陰極27が形成される。接続部105は他方の端部105bにおいてすでに接続配線106と電気的に接続しているので、接続部105の一方の端部105aを覆うように陰極27を形成すれば、結果的に接続配線106と陰極27とを接続部105を介して電気的に接続させることができる。画素領域107における陰極27の厚みはおよそ100nm〜200nmである。そして、ステップS7へ進む。
【0079】
ステップS7のガスバリア層形成工程では、図7(h)に示すように画素領域107内では陰極27を覆い、画素領域107の外側の額縁領域109では接続部105の他方の端部105bを覆うようにガスバリア層40を形成する。ガスバリア層40の形成方法としては、スパッタリング法やイオンプレーティング法などの物理的気相蒸着法やプラズマCVD法などの化学的気相蒸着法で成膜を行うのが好ましい。スパッタリング法やイオンプレーティング法などの物理的気相蒸着法は、一般に異質な基板表面に対しても比較的密着性の良い膜が得られるものの、得られる膜に関しては粒塊状で欠陥が発生しやすく、また応力の大きい被膜になり易いなどの欠点がある。一方、化学的気相蒸着法では、応力が少なくステップカバーレッジ性に優れた欠陥が少なく緻密で良好な膜質のものが得られるものの、一般に異質な基板表面に対する密着性や造膜性が得られにくいといった欠点がある。そこで、初期の成膜については物理的気相蒸着法を採用して例えば必要な膜厚の半分あるいはそれ以上を形成し、後期の成膜において化学的気相蒸着法を用いることにより、先に形成した膜の欠陥を補うようにすれば、全体としてガスバリア性(酸素や水分に対するバリア性)に優れたガスバリア層40を比較的短時間で形成することができる。
【0080】
ガスバリア層40の形成については、前述したように同一の材料によって単層で形成してもよく、また異なる材料で複数の層に積層して形成してもよく、さらには、単層で形成するものの、その組成を膜厚方向で連続的あるいは非連続的に変化させるようにして形成してもよい。
異なる材料で複数の層に積層して形成する場合、例えば、前述したように物理的気相蒸着法で形成する内側の層(陰極27側の層)を珪素窒化物あるいは珪素酸窒化物などとし、化学的気相蒸着法で形成する外側の層を珪素酸窒化物あるいは珪素酸化物などとするのが好ましい。
【0081】
また、物理的気相蒸着法で内側の層を形成する際、成膜装置内に供給する酸素量を最初は少なくし、以下、連続的あるいは非連続的に増やすことにより、形成するガスバリア層40中の酸素濃度を陰極27側(内側)で低くし、外側ではこれより高くなるように形成してもよい。
なお、ガスバリア層40の形成については単一の成膜法で行ってもよいのはもちろんであり、その場合にも、前述したように酸素濃度を陰極27側(内側)で低くなるように形成するのが好ましい。この場合のガスバリア層40の総厚はおよそ400nmである。
【0082】
このような電気光学装置100の製造方法によれば、フォトリソグラフィ法によるパターニングに比べて形成位置精度が劣るマスク蒸着法を用いて陰極27を形成しても、額縁領域109では、接続部105の一方の端部105aと重なるように陰極27が形成されるので、結果的に回路部17に設けられた接続配線106と陰極27とを接続部105を介して安定的に接続することができる。
【0083】
また、回路部17に形成された接続配線106と陰極27とが直接に接続するように陰極27をマスク蒸着する場合には、マスク蒸着による陰極27の形成位置精度におけるばらつきを考慮して、接続配線106との接触面積を予め大きくしておく必要がある。言い換えれば、接続配線106が形成される額縁領域109を上記接触面積を考慮して確保しておく必要がある。これに対して、本実施形態は、接続配線106と陰極27とを接続させる接続部105をフォトリソグラフィ法で位置精度よく形成し、画素領域107側の一方の端部105aに重なるように陰極27をマスク蒸着するので、実質的な額縁領域109の幅を狭くすることができる。
さらには、接続部105の一方の端部105aは画素領域107の外周部に設けられた隔壁部31の壁面31aに沿って形成されるので、額縁領域109を狭くしても陰極27との接触面積を立体的に確保して安定的な接続を図ることができる。
【0084】
なお、本実施形態では、電気光学装置100をトップエミッション構造を採用したものとして説明したが、これに限定されることなく、機能層25における発光を素子基板10側から取り出すボトムエミッション構造を採用したものにも適用可能である。ボトムエミッション構造とした場合、陰極27は透明電極を用いる必要はないが、素子基板10自体が透光性を有する必要がある。
また、発光を素子基板10側から効率的に取り出すため、素子基板10に形成するスイッチング用のTFT121や駆動用のTFT122およびこれらに接続される配線類は、発光素子30の直下ではなく、隔壁部32の直下に形成するようにして、開口率を高めるのが好ましい。
【0085】
電気光学装置100は、発光素子30をガスバリア層40で覆った状態でこのまま用いてもよいが、とりわけトップエミッション構造では、発光が得られるガスバリア層40側に例えば人体などが繰り返し接触することで発光素子30が損傷するおそれがある。そこで、図8に示すように、少なくともガスバリア層40を覆う透明な緩衝層131を介して同じく透明な保護層132を設けることが好ましい。
【0086】
緩衝層131としては、ガスバリア層40に密着し、かつ外部からの機械的衝撃に対して緩衝機能を有するもので、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ポリオレフィン系などの樹脂で、後述する保護層132より柔軟でガラス転移点の低い材料からなる接着剤によって形成されたものである。なお、このような接着剤には、シランカップリング剤またはアルコキシシランを添加しておくのが好ましく、このようにすれば、形成される緩衝層131とガスバリア層40との密着性がより良好になり、機械的衝撃に対する緩衝機能が高くなる。また、ガスバリア層40が珪素化合物で形成されている場合などでは、シランカップリング剤やアルコキシシランによってこのガスバリア層40との密着性を向上させることができ、ガスバリア性を高めることができる。
【0087】
保護層132は、緩衝層131上に設けられることにより、耐圧性や耐摩耗性、外部光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能の少なくとも一つを有してなる層である。具体的には、高分子層(プラスチックフィルム)やDLC(ダイアモンドライクカーボン)層、ガラスなどによって形成されるものである。
なお、トップエミッション構造の電気光学装置100では、保護層132、緩衝層131を共に透光性のものにする必要があるが、ボトムエミッション構造とする場合にはその必要はない。
【0088】
このようにガスバリア層40上に保護層132を設ければ、保護層132が耐圧性や耐摩耗性、光反射防止性、ガスバリア性、紫外線遮断性などの機能を有していることにより、機能層25や陰極27、さらにはガスバリア層40もこの保護層132によって保護することができ、発光素子30の長寿命化を図ることができる。
また、緩衝層131が機械的衝撃に対して緩衝機能を発揮するので、外部から機械的衝撃が加わった場合に、ガスバリア層40やこの内側の発光素子30への機械的衝撃を緩和し、機械的衝撃による発光素子30の機能劣化を防止することができる。
【0089】
(第2実施形態)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器について図9(a)〜(c)を参照して説明する。
図9(a)は、電子機器としての携帯型電話機を示す斜視図である。図9(a)に示すように、電子機器の一例としての携帯型電話機1000は、折畳み式の本体の一方に表示部1001が設けられている。表示部1001には、上記実施形態の電気光学装置100が搭載されている。
図9(b)は、電子機器としての腕時計型情報端末を示す斜視図である。図9(b)に示すように、電子機器の一例としての腕時計型情報端末1100は、ベルトが装着された本体に表示部1101が設けられている。表示部1101には、上記実施形態の電気光学装置100が搭載されている。
図9(c)は、電子機器としての携帯型情報処理装置を示す斜視図である。図9(c)に示すように、電子機器の一例としての携帯型情報処理装置1200は、キーボー1202を有する本体1204と、本体1204に重ねて折り畳むことが可能な表示部1206とを有している。表示部1206には、上記実施形態の電気光学装置100が搭載されている。
図9(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、表示部に額縁領域109を狭くすることが可能な電気光学装置100を搭載しているので、それぞれの電子機器全体をよりコンパクトにすることが可能である。すなわち、すぐれた携帯性を有する電子機器を提供することができる。
【0090】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0091】
(変形例1)上記第1実施形態の電気光学装置100において、接続部105の平面的な配置は、これに限定されない。例えば、図1に示したように第1実施形態では、X方向において画素領域107を挟んで一対の接続部105を設けたが、少なくとも一方の接続配線106に平面的に重なるように接続部105を設けてもよい。これによれば、電気光学装置100の平面的な中心線と画素領域107の中心線とがX方向においてずれるものの、画素領域107の外側の額縁領域を小さくすることができる。
図10は変形例1の電気光学装置を示す概略平面図である。また例えば、図10に示すように、変形例1の電気光学装置200は、上記実施形態の電気光学装置100に対して、画素領域107の外側において設けられた検査回路103に対して平面的に重なり合うと共に、一対の接続部105に架橋するように設けられた接続部205を有する。これによれば、接続部205に重なるように陰極27を形成すれば、画素領域107を覆う陰極27の電気的な抵抗をより低減することができ、陰極27の電気抵抗により発光素子30における発光むらを低減できる。
【0092】
(変形例2)上記第1実施形態の電気光学装置100における画素領域107の構成は、これに限定されない。図11は変形例2の電気光学装置を示す概略断面図である。例えば、図11に示すように、変形例2の電気光学装置300は、画素領域107の周縁部において、実際の表示には寄与しないダミー画素を有している。ダミー画素は、サブ画素SGと同様に画素電極21および陰極27と、これらの電極間に設けられた機能層25とを有しているが、画素電極21は駆動用のTFT122と電気的に接続していない。接続部105は、一方の端部105aがダミー画素の外側に位置する隔壁部31に掛かるように設けられている。このようなダミー画素を設けることにより、液滴吐出法やマスク蒸着法を用いて機能層25を形成する場合の上記周縁部における成膜ばらつきが実際の表示に用いるサブ画素SGに影響を及ぼすことを低減して、輝度むらが少ない表示品質を実現することができる。
【0093】
(変形例3)上記第1実施形態における保護層132を備えた電気光学装置100の構成は、これに限定されない。例えば、額縁領域109内に保護層132と素子基板10とを接合するシール部材を配置して、緩衝層131を封止しつつ保護層132を支持する構成としてもよい。これによれば、電気光学装置100の外周部からの酸素や水分などの侵入をより低減可能な構造とすることができる。
【0094】
(変形例4)上記第1実施形態の電気光学装置100の構成は、これに限定されない。例えば、発光素子30から得られる発光は、赤(R)、緑(G)、青(B)の三色に限定されず、白色などの単色としてもよい。これによれば、単色の発光による情報表示だけでなく、照明装置としても活用できる。また、発光素子30を白色発光が得られる構成とし、保護層132を透明なガラスなどを用い、発光素子30の平面的な配置に対応させて赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルターを保護層132と発光素子30との間に設けた構成として、フルカラー表示を可能としてもよい。
【0095】
(変形例5)上記第1実施形態の電気光学装置100を搭載可能な電子機器は、上記第2実施形態の携帯型電話機1000、腕時計型情報端末1100、携帯型情報処理装置1200に限定されない。例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、DVDビューワー、カーナビゲーション装置などの車載用ディスプレイ、電子手帳、POS端末、デジタルサイネージと呼ばれる電子広告媒体などが挙げられる。
【符号の説明】
【0096】
10…基板としての素子基板、21…一対の電極のうちの画素電極、23…発光層、25…機能層、27…一対の電極のうちの一方の電極としての陰極、30…発光素子、31…隔壁部、31a…隔壁部の壁面、40…ガスバリア層、100,200…電気光学装置、101…周辺回路としての走査線駆動回路、103…周辺回路としての検査回路、105…接続部、105a…接続部の一方の端部、105b…接続部の他方の端部、106…接続配線、107…画素領域、1000…電子機器としての携帯型電話機、1100…電子機器としての腕時計型情報端末、1200…電子機器としての携帯型情報処理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に対向配置された一対の電極と前記一対の電極間に配置された発光層を含む機能層とを有する発光素子と、
複数の前記発光素子が配置された画素領域と、
前記基板上において前記画素領域の外側に配置され、前記一対の電極のうちの一方の電極に電気的に接続される接続配線と、
前記接続配線に重なると共に前記接続配線より前記画素領域側に延在して配置された接続部と、を備え、
前記一方の電極は、前記画素領域に亘って設けられると共に、前記画素領域の外側にて前記接続部の前記画素領域に近い側の一方の端部に重なって設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記接続配線と前記画素領域との間に配置され、前記発光素子を駆動制御する周辺回路を有し、
前記接続部は、前記周辺回路が設けられた領域に対して平面的に少なくとも一部が重なって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記画素領域を囲む隔壁部を有し、
前記接続部は、前記隔壁部における前記画素領域側と反対側の壁面に掛かるように設けられ、
前記一方の電極は、前記画素領域に亘って設けられると共に、前記画素領域の外側にて前記隔壁部の前記壁面に掛かった部分の前記接続部に重なって設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記接続配線および前記接続部は、前記基板上において平面的に前記画素領域を覆った前記一方の電極の一の方向の両端側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記接続部と前記一方の電極とが異なる導電性材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記一方の電極に比べて前記接続部のほうが比抵抗が低いことを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記一方の電極を覆うと共に、前記接続部の前記画素領域から遠い方の他方の端部を覆う少なくとも1つのガスバリア層を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
基板上に対向配置された一対の電極と前記一対の電極間に配置された発光層を含む機能層とを有する発光素子を備えた電気光学装置の製造方法であって、
複数の前記発光素子が配置された画素領域の外側に前記一対の電極に接続される接続配線を形成する第1工程と、
前記接続配線に重なると共に前記接続配線より前記画素領域側に延在する接続部を形成する第2工程と、
前記一対の電極のうちの一方の電極を、前記画素領域の外側にて前記接続部の前記画素領域に近い側の一方の端部に重なると共に前記画素領域に亘って形成する第3工程と、
を備えたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
前記接続部を形成する方法がフォトリソグラフィ法であり、
前記一方の電極を形成する方法がマスク蒸着法であることを特徴とする請求項8に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項10】
前記接続部と前記一方の電極とを異なる導電性材料で形成することを特徴とする請求項8または9に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
前記一方の電極に対して前記接続部は比抵抗が低い導電性材料を用いて形成されることを特徴とする請求項10に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項12】
前記接続配線と前記画素領域との間に、前記発光素子を駆動制御する周辺回路を形成する工程を有し、
前記第2工程は、前記周辺回路が形成された領域に対して平面的に少なくとも一部が重なるように前記接続部を形成することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項13】
前記画素領域を囲む隔壁部を形成する工程を有し、
前記第2工程は、前記隔壁部における前記画素領域側と反対側の壁面に掛かるように前記接続部を形成し、
前記第3工程は、前記一方の電極を前記画素領域に亘ると共に、前記画素領域の外側にて前記隔壁部の前記壁面に掛かった部分の前記接続部に重なるように形成することを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項14】
前記一方の電極を覆うと共に、前記接続部の前記画素領域から遠い方の他方の端部を覆う少なくとも1つのガスバリア層を形成する第4工程を、さらに備えたことを特徴する請求項8乃至13のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気光学装置または請求項8乃至14のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法を用いて製造された電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板上に対向配置された一対の電極と前記一対の電極間に配置された発光層を含む機能層とを有する発光素子と、
複数の前記発光素子が配置された画素領域と、
前記基板上において前記画素領域の外側に配置され、前記一対の電極のうちの一方の電極に電気的に接続される接続配線と、
前記接続配線に重なると共に前記接続配線より前記画素領域側に延在して配置された接続部と、を備え、
前記一方の電極は、前記画素領域に亘って設けられると共に、前記画素領域の外側にて前記接続部の前記画素領域に近い側の一方の端部に重なって設けられていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記接続配線と前記画素領域との間に配置され、前記発光素子を駆動制御する周辺回路を有し、
前記接続部は、前記周辺回路が設けられた領域に対して平面的に少なくとも一部が重なって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記画素領域を囲む隔壁部を有し、
前記接続部は、前記隔壁部における前記画素領域側と反対側の壁面に掛かるように設けられ、
前記一方の電極は、前記画素領域に亘って設けられると共に、前記画素領域の外側にて前記隔壁部の前記壁面に掛かった部分の前記接続部に重なって設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記接続配線および前記接続部は、前記基板上において平面的に前記画素領域を覆った前記一方の電極の一の方向の両端側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記接続部と前記一方の電極とが異なる導電性材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記一方の電極に比べて前記接続部のほうが比抵抗が低いことを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記一方の電極を覆うと共に、前記接続部の前記画素領域から遠い方の他方の端部を覆う少なくとも1つのガスバリア層を備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
基板上に対向配置された一対の電極と前記一対の電極間に配置された発光層を含む機能層とを有する発光素子を備えた電気光学装置の製造方法であって、
複数の前記発光素子が配置された画素領域の外側に前記一対の電極に接続される接続配線を形成する第1工程と、
前記接続配線に重なると共に前記接続配線より前記画素領域側に延在する接続部を形成する第2工程と、
前記一対の電極のうちの一方の電極を、前記画素領域の外側にて前記接続部の前記画素領域に近い側の一方の端部に重なると共に前記画素領域に亘って形成する第3工程と、
を備えたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項9】
前記接続部を形成する方法がフォトリソグラフィ法であり、
前記一方の電極を形成する方法がマスク蒸着法であることを特徴とする請求項8に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項10】
前記接続部と前記一方の電極とを異なる導電性材料で形成することを特徴とする請求項8または9に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
前記一方の電極に対して前記接続部は比抵抗が低い導電性材料を用いて形成されることを特徴とする請求項10に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項12】
前記接続配線と前記画素領域との間に、前記発光素子を駆動制御する周辺回路を形成する工程を有し、
前記第2工程は、前記周辺回路が形成された領域に対して平面的に少なくとも一部が重なるように前記接続部を形成することを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項13】
前記画素領域を囲む隔壁部を形成する工程を有し、
前記第2工程は、前記隔壁部における前記画素領域側と反対側の壁面に掛かるように前記接続部を形成し、
前記第3工程は、前記一方の電極を前記画素領域に亘ると共に、前記画素領域の外側にて前記隔壁部の前記壁面に掛かった部分の前記接続部に重なるように形成することを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項14】
前記一方の電極を覆うと共に、前記接続部の前記画素領域から遠い方の他方の端部を覆う少なくとも1つのガスバリア層を形成する第4工程を、さらに備えたことを特徴する請求項8乃至13のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気光学装置または請求項8乃至14のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法を用いて製造された電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−232482(P2011−232482A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101773(P2010−101773)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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