説明

電気光学装置および電子機器

【課題】表示不良と品質低下が防止された電気光学装置と、このような電気光学装置を備えた電子機器とを提供する。
【解決手段】一対の基板と、一対の基板間に配置された電気光学材料層と、電気光学材料層と一対の基板のうちの一方の基板との間に設けられたカラーフィルタ層32と、一方の基板とカラーフィルタ層32との間に設けられたバリア層26と、バリア層26とカラーフィルタ層32との間に設けられ、バリア層26とカラーフィルタ層32との間隔を一定に保持する樹脂層28と、樹脂層28の電気光学材料層側に電気光学材料層の周囲を囲むように設けられたシール材24と、樹脂層28の端面を覆って、樹脂層28のシール材24に囲まれた領域の外側に配置された面を少なくとも被覆しているガスバリア層30と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の視点で異なる画像を見ることができる多重画像表示装置が注目されており、例えば、両眼視差を利用した立体画像表示装置や、運転席と助手席で異なる情報を見ることができるカーナビゲーションシステム等への応用開発が成されている。
【0003】
多重画像表示の一例として、所定の方向への画像を遮るバリア層を用いて画像を分離し、2視点表示を行う場合について説明する。まず異なる観察者視点に対応した第1観察者用画像と第2観察者用画像を用意し、例えば縦ストライプ状に交互に表示する。次に、表示画像を表示画像と同一周期のバリア層に通すと、例えば第1観察者側では、不要な第2観察者用画像がバリア層で遮られ、必要な第1観察者用画像がバリア層の透光部を透過することにより、第1観察者には第1観察者用画像が視認可能となる。第2観察者側でも同様に第2観察者用画像が視認可能となる。このように、縦ストライプ状に交互に表示された画像はバリア層の機能により元の2つの画像に分離され、分離されたそれぞれの画像を第1観察者と第2観察者が視認することで、観察者ごとに異なる画像を認識させることができる。このような2視点表示が可能な表示装置を備えたカーナビゲーションシステムでは、例えば第1観察者である運転手には道路情報を、第2観察者である助手席に乗車している者にはテレビ画像を、それぞれ提供することができる。
【0004】
図8には、バリア層を用いた2視点表示装置の概略図を示す。ここでは液晶表示装置を想定する。図8(a)に示すように、表示画面Wには、第1観察者H1用の画像G1と第2観察者H2用の画像G2とが1列毎に交互に表示されている。画面Wと観察者H1,H2との間には、画像G1と画像G2とを空間的に分離するバリア層Bが距離L1だけ離間させて配置されている。バリア層Bは、画像G1と画像G2に対応した複数の開口部を有する遮光膜であり、画像G1が第2観察者H2へ導かれるのを防ぐと共に、画像G2が第1観察者H1へ導かれるのを防ぐ。バリア層Bには、縦ストライプ状のスリットSが設けられており、このスリットSを介して画像G1は第1観察者H1へ、画像G2は第2観察者H2へ導かれ、それぞれの観察者により別々の画像が認識される。第1観察者H1の観察方向と第2観察者H2の観察方向は、角度θ1だけ異なる。
【0005】
図8(b)には、図7(a)で示した2視点表示装置のバリア層Bと表示画面Wとの離間距離のみを変更し、距離L2だけ離間させた構成を示す。距離L2は距離L1よりも広い離間距離である。この場合、第1観察者H1の観察方向と第2観察者H2の観察方向の違いは角度θ2となり、距離L1だけ離間させた場合の角度θ1よりも角度が小さくなる。
【0006】
このように、バリア層Bと表示画面Wとの離間距離によって画像を導く方向が変化するため、2視点表示装置の製造においては離間距離の制御は非常に重要である。また、一般に2視点表示装置では、それぞれの観察者にかかる観察方向の違いの角度が広いため離間距離を例えば100μm程度に狭く制御する必要がある。
【0007】
そこで特許文献1では、バリア層上に樹脂製の距離調整層を形成し、この距離調整層の厚みで離間距離を制御する方法が提案されている。このように樹脂材料で形成された層にて離間距離を制御することは、層厚を制御することが容易であることに加えて、表示装置を軽量化することや、製造コストを低減すること、生産性を向上させること等にも有効であると考えられる。また、バリア層を有する表示装置では、基板とバリア層との間に段差が生じているため、距離調整層を形成すると基板とバリア層との間の段差を平坦化することができ、層間の密着性を向上させる上で有利であると考えられる。
【特許文献1】特開2005−321449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般に樹脂材料はガラス等に比べてガス透過性が高いため、特許文献1で提案されている方法では、樹脂材料で形成された距離調整層を介して水蒸気や酸素等のガスが液晶層に浸透するおそれがある。浸透した水分やガスは液晶層に溶け込むが、温度上昇等で液晶層に溶け込んだガスが過飽和となった際には、液晶層に気泡を生じて表示不良を生じさせる。また、浸透したガスが液晶層を劣化させてしまうこともある。
【0009】
一方、通常の構成の液晶表示装置では、液晶層の周囲には透湿性が低く防水性に富んだシール材が配置されている。したがって、このシール材で囲まれた領域の内部に距離調整層を配置すると、距離調整層での離間距離の制御と距離調整層からの水分の浸透防止とを両立させることができるということが考えられる。
【0010】
しかしながら、この場合には他の問題が顕在化する。一般に、シール材には、液晶層を挟持する基板間に所望の液晶層の厚み(セルギャップ)に等しい直径を有する球状のスペーサが混合されている。そのため、シール材によって基板を貼り合わせる場合には、シール材による基板同士の貼り合わせと、スペーサによるセルギャップ管理を同時に行っている。したがって、距離調整層をシール材で囲まれた領域の内部に配置しようとする場合には、スペーサの直径は離間距離にセルギャップを加えた長さ以上である必要がある。
【0011】
通常、液晶層のセルギャップは数μm程度であり、バリア層と表示画面との離間距離(100μm程度)とは大きな差がある。離間距離とセルギャップの両方に対応した直径のスペーサを異なる設計の多重画像表示装置ごとに用意し、且つ液晶層のセルギャップを均一に保って表示画像の画質を担保することは非常に困難である。したがって、シール材は距離調整層の上に形成する必要がある。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、水蒸気等のガスが液晶層などの電気光学材料層に浸透することを防止することによって、表示不良と品質低下が防止された電気光学装置と、このような電気光学装置を備えた電子機器とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の第1の電気光学装置は、一対の基板と、前記一対の基板間に配置された電気光学材料層と、前記電気光学材料層と前記一対の基板のうちの一方の基板との間に設けられたカラーフィルタ層と、前記一方の基板と前記カラーフィルタ層との間に設けられたバリア層と、前記バリア層と前記カラーフィルタ層との間に設けられ、前記バリア層と前記カラーフィルタ層との間隔を一定に保持する樹脂層と、前記樹脂層の前記電気光学材料層側に前記電気光学材料層の周囲を囲むように設けられたシール材と、前記樹脂層の端面を覆って、前記樹脂層の前記シール材に囲まれた領域の外側に配置された面を少なくとも被覆しているガスバリア層と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、樹脂層の端面およびシール材に囲まれた領域の外側に配置されている樹脂層の上面にはガスバリア層が形成されている。そのため、基板上に形成されたバリア層を覆って樹脂層を設け、この樹脂層の厚みによってバリア層と樹脂層上に形成されるカラーフィルタ層との間隔(離間距離)を制御しようとする場合に、外部環境の水蒸気や酸素などのガスが樹脂層端面等から樹脂層に浸透し、樹脂層を介して電気光学材料層へ浸透することを防ぐことができる。したがって、外部環境から浸透する水蒸気等のガスに起因した品質低下を防ぎ、信頼性の高い電気光学装置を提供することができる。
【0015】
本発明においては、前記ガスバリア層は、前記樹脂層の前記電気光学材料層に対向する面に形成されていることが望ましい。
樹脂層の端面等にガスバリア層を形成していたとしても、樹脂層端面等に形成されたガスバリア層が破損した場合には、樹脂層への水蒸気等のガスの浸透を防ぐことが出来なくなる。しかし本構成によれば、電気光学材料層に平面的に重なる領域に形成された第2のガスバリア層の機能により、樹脂層に浸透したガスの電気光学材料層への浸透を防止することが出来る。したがって、より信頼性の高い電気光学装置とすることができる。
【0016】
本発明においては、前記ガスバリア層が、前記樹脂層の表面を覆って前記一方の基板の全面に形成されていることが望ましい。
この構成によれば、ガスバリア層がいくつもの部分に分かれておらず一体となって形成されるため、より強固な層を形成することができる。また、ガスバリア層の形成においてパターニングが不要であるためガスバリア層の形成工程が簡素化できる。そのため、容易に信頼性の高いガスバリア層を備えた電気光学装置を提供することが出来る。
【0017】
本発明においては、前記ガスバリア層は、無機材料によって形成されていることが望ましい。
無機材料はガスの透過性が極めて低いため、ガスバリア層として必要なガス遮断性を十分に確保し、優れたガスバリア層を形成することができる。
【0018】
本発明においては、前記ガスバリア層は、絶縁性を備えることが望ましい。
この構成によれば、装置が備える他の電極との短絡をすることなく表示品質を維持することができる。
【0019】
本発明においては、前記電気光学装置は、少なくとも前記樹脂層の前記シール材に囲まれた領域の外側に配置された面と、前記樹脂層の端面と、を被覆する前記ガスバリア層の一部分を覆う保護膜を備えていることが望ましい。
ガスバリア層と樹脂層とは互いに異なる材料で形成されており、熱膨張率や表面硬度等が異なる。そのため環境条件が変化すると、例えば熱膨張率の差により形成したガスバリア層が樹脂層からはがれたり、ひび割れが生じたりするおそれがある。また、製造や使用の過程において何かがガスバリア層に接触しガスバリア層が破損することも考えられる。しかしこの構成によれば、ガスバリア層上に形成した保護膜により破損を防ぐことが出来るため、ガスバリア層の品質を維持することで品質低下を防ぎ、信頼性の高い電気光学装置を提供することができる。
【0020】
本発明においては、前記保護膜は、前記ガスバリア層を覆って前記樹脂層の全面に形成されていることが望ましい。
この構成によれば、保護膜がいくつもの部分に分かれておらず一体となって形成されるため、より強固にガスバリア層を保護することができる。また、保護膜の形成においてパターニングが不要であるため保護膜の形成工程が簡素化できる。そのため、容易に高品質の電気光学装置とすることが出来る。
【0021】
本発明においては、前記樹脂層は、前記一方の基板の前記電気光学材料層側の面の外周よりも内側に形成されていることが望ましい。
一般に、画像表示装置が備える基板は、一枚の大きな原板の上に幾つもの基板構成を形成した後に所定の大きさの基板に切り分ける多面取りで作成される。そのため、原板上に基板構成を形成する際に基板の端部に重なる箇所にまで樹脂層を形成すると、たとえ樹脂層上にガスバリア層を形成していたとしても、原板の分断において樹脂層やガスバリア層も切断することになる。そのような場合には、切断時にガスバリア層が破損し、樹脂層にはガスバリア層を形成していない新たな端面(切断面)が形成されるため、切断面からガスが浸透することが考えられる。しかし本構成によれば、樹脂層は基板の面の内側に形成されているため、多面取り時にガスバリア層が破損することなく高品質の電気光学装置を提供することができる。
【0022】
本発明においては、前記樹脂層は、光硬化性樹脂で形成されていることが望ましい。
この構成によれば、容易に多面取りでの原板分断箇所を避けて樹脂層を形成することができ、信頼性の高い電気光学装置を提供することができる。
【0023】
本発明においては、前記電気光学材料は液晶材料であることが望ましい。
電気光学材料に液晶材料を用いた電気表示装置では、水蒸気等のガスの浸透により表示性能が劣化する程度が大きいが、本発明により高品質の液晶表示装置とすることができる。
【0024】
本発明の電子機器は、上述の電気光学装置を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、表示不良が少なく高品質であり且つ長寿命である電子機器とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第1実施形態]
以下、図1〜図3を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置について説明する。ここでは電気光学材料として液晶材料を用いた液晶表示装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0026】
図1は液晶表示装置(電気光学装置)1の配線構造を示すブロック図である。液晶表示装置1は、走査信号を供給する走査線100と、画像信号を供給する信号線110と、走査線と同数であり並列に配置されている容量線120と、を備えている。
【0027】
信号線110は走査線100および容量線120と交差して配置されており、走査線100と信号線110の交点にはサブ画素を形成している。このサブ画素は、液晶素子60と、液晶素子60の駆動を制御するための薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)素子である駆動用TFT70と、液晶素子60で表示された画像を安定させるための保持容量80と、を備えている。
【0028】
サブ画素が備える駆動用TFT70は、ゲート部に走査線100が接続し、ソース部に信号線110が接続し、ドレイン部に液晶素子60の画素電極が接続している。また、サブ画素Pが備える保持容量80は、駆動用TFT70のドレインと容量線120との間に設けられている。
【0029】
サブ画素Pが備える液晶素子60では、画素電極が駆動用TFT70のドレインと接続され、共通電極が走査線120と接続されている。
【0030】
このような液晶表示装置1では、走査線100に対して走査信号G1、G2、…、Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で印加される。これらの走査信号が走査線100を介して駆動用TFT70に伝わると、駆動用TFT70が一定期間だけ順次オンとなる。一方で、信号線110に対してはデータ信号S1、S2、…Snが、この順もしくは所定のグループ毎に供給される。駆動用TFT70がオンのときに信号線110から供給されるデータ信号は、駆動用TFT70を介して画素電極に伝わり、データ信号は液晶素子60で一定期間保持される。液晶素子60ではデータ信号の電位に応じて液晶分子が駆動し、データ信号に応じて光を変調させ、階調表示を行う。それと同時に、供給されるデータ信号は保持容量80にも供給されるため、データ信号がリークすることが防止され、液晶素子60は画像を安定に表示する。
【0031】
次に、液晶表示装置1の構成について図2を用いて説明する。図2(a)は、本実施形態の液晶表示装置1を示す概略断面図であり、(b)は概略平面図である。
【0032】
図2(a)に示すように、本実施形態の液晶表示装置1は、基板20Lと、基板20Lと対向配置された素子基板22と、基板20Lと素子基板22との間に挟持された液晶層34と、液晶層34の周囲を囲むように基板20Lと素子基板22との間に設けられ、基板20Lと素子基板22を貼り合わせるシール材24とを備えている。この液晶表示装置1は、素子基板22側から照明光が照射される構成となっている。以下の説明においては、液晶層34から基板20L側の方向を下側、素子基板22側の方向を上側として各部材の位置を示す。
【0033】
また、通常知られている製造工程では、基板20Lと素子基板22と一部に隙間を開けたシール部24aとに囲まれた空間に液晶層34を構成する液晶分子を注入し、その後シール部24aの隙間を封止材24bで閉じる。この封止材24bはシール部24aと一体となってシール材24の一部を構成し、液晶層34が漏れ出さないようにする機能を備える。本実施形態では上記のような製造方法で液晶層を製造しているものとし、また、本実施形態の説明においては、「シール材」とはシール材と封止材とを合わせて表現しているものとする。
【0034】
基板20Lは、光透過性を備えた基板本体(基板)20を備えている。基板本体20を形成する材料には、例えばガラス、石英ガラス、窒化ケイ素等の無機物を用いることができる。また、基板本体20には、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機高分子(樹脂)を用いることも可能ではあるが、その場合少なくとも基板本体20の液晶層34側の面が、好ましくは基板本体20の表面全面が無機材料で覆われていることが望ましい。
【0035】
基板本体20の液晶層34側の面上には、表示する画像に応じた所定のピッチで遮光部および透光部を有するバリア層26が形成されている。バリア層26は、たとえば黒色顔料を混ぜたアクリル樹脂などを基板本体20上に塗布して成膜し、その後フォトリソグラフィ方等でパターニングすることにより透光部となる部分を除去することで形成することができる。この他にもアルミニウム(Al)やクロム(Cr)等を材料に用い蒸着法等で薄膜を形成し、同様にパターニングすることで形成することもできる。
【0036】
また、基板本体20上には、バリア層26を覆って透光性を備えた樹脂層28が形成されている。樹脂層28は、バリア層26の透光部を埋めて形成されている。また、樹脂層28の基板本体20と対向する面の反対側の面は、基板本体20のバリア層26が形成されている面と略平行になっている。この樹脂層28は、バリア層26と後述のカラーフィルタ層との間隔(離間距離)を一定に保つ機能を備えている。また、バリア層26が備える遮光部と透光部との凹凸を埋めて平坦化する機能も兼ね備えている。本実施形態では基板本体20表面からの樹脂層28の厚みは80μmである。
【0037】
この樹脂層28の形成材料としては、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などを用いることができる。これらは複数混合させて形成しても良い。また、これらの中でも光硬化性を備えた樹脂は、樹脂層の形成時間の短縮や位置精度の向上が可能であり好ましい。本実施形態では光硬化性のアクリル樹脂を用いて形成している。
【0038】
また、樹脂層28を形成するこれらの材料に、必要に応じて樹脂層28の硬度を調整するための架橋剤や、硬質材料を添加しても構わない。架橋剤としては、例えばメラミン系やグアナミン系の架橋剤を挙げることができる。硬質材料としては、ポリマー微粒子などの有機物やガラス微粒子などの無機物を挙げることができる。これら硬質材料は添加した結果として樹脂層28の透明性が低下しない程度に加えることは言うまでもない。
【0039】
樹脂層28の上には、樹脂層28の全面を覆ってガスバリア層30が形成されている。ガスバリア層30は、樹脂層28を覆いつつ基板本体20の一端から他端に至るまで形成されている。このガスバリア層30の形成材料としては、例えば絶縁性を備えた無機物である酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどを用いることができる。このガスバリア層30と基板本体20とにより樹脂層28は周囲を覆われ包み込まれている。本実施形態では酸化ケイ素にてガスバリア層30を形成している。
【0040】
ガスバリア層30の上面には平坦化層36が形成されている。平坦化層36は、樹脂層28によって埋められたバリア層26による凹凸を更に平坦化する機能を有する。平坦化層36の形成材料としては、前述の樹脂層28の形成材料と同様の材料を挙げることができる。本実施形態の平坦化膜36の厚みは約1μmである。
【0041】
平坦化層36の上面には、入射光を赤色、緑色、青色に変調するカラーフィルタ32aと、カラーフィルタ32aの間と端部に配置されたブラックマトリクス32bと、を備えたカラーフィルタ層32が形成されている。これらカラーフィルタ32aを透過した各色の光を混色することでフルカラー表示が可能となる。ブラックマトリクス32bの形成材料には、黒色顔料を混ぜたアクリル樹脂や、低反射クロム等を用いることができる。本実施形態では、ブラックマトリクス32bは黒色顔料を混ぜたアクリル樹脂で形成している。
【0042】
カラーフィルタ層32の上には、カラーフィルタ層32の全面を覆って共通電極38が形成されている。共通電極38は、ITO(Indium Thin Oxide:インジウム錫酸化物)等の光透過性を備えた導電性材料にて形成されている。
【0043】
共通電極38の上には、共通電極38を覆って配向膜40が形成されている。配向膜40は、例えばポリイミドなどの有機材料やシリコン酸化物などの無機材料で構成されており、無印加状態において液晶層34に含まれる液晶分子を一定方向に配列させる役割を備える。本実施形態では、配向膜40はポリイミドの形成材料を塗布してこれを乾燥・硬化させた後、その上面に所定の方向にラビング処理を施すことによって得られる。
【0044】
その他、基板20Lには偏光板や必要に応じて各層を接着するための接着層などがあるが図示を省略している。
【0045】
また素子基板22は、光透過性を備えガラス、石英ガラス、窒化ケイ素等で形成される基板本体を備えている。また、素子基板22には、図1に示した不図示の駆動用TFTや走査線、信号線、容量線などの各種の配線、更には画素電極、配向膜、偏光板などを備えている。
【0046】
基板20Lと素子基板22との間には液晶層34が挟持され、この液晶層34の周囲にはシール材24が配置され基板20Lと素子基板22とを貼り合わせている。シール材24は、透湿性が低く接着性に優れた樹脂材料で形成されており、本実施形態ではエポキシ樹脂で形成されている。エポキシ樹脂には熱硬化性のものや光硬化性のものがあり、シール材24にはいずれも用いることができるが、光硬化性のエポキシ樹脂は硬化時間が短く硬化収縮が少ないなど製造上有利な点が多いためよりシール材24の形成材料としてより好ましい。シール材24は、基板20Lと素子基板22との離間距離を一定に保つ機能を備えた不図示のスペーサを含んでいる。このシール材24は、基板20Lとの接着部分(シール材24の下側の端部)において平坦化層36の端部と重なって配置している。カラーフィルタ層32と共通電極38と配向膜40とは、シール材24で囲まれた領域の内部に(平坦化層36と液晶層34に周囲を囲まれて)配置されている。本実施形態では基板20Lと素子基板22との離間距離は略4μmである。
【0047】
図2(b)には、液晶表示装置1の素子基板22側からの平面図を示す。ここでは説明を容易にするために、素子基板22側の構成を省略して図示している。
【0048】
液晶表示装置1が備える平面視矩形の基板本体20の上には、平面視略矩形の樹脂層28が形成されている。樹脂層28は、樹脂層28が形成されている基板本体20の一辺の中央部に接し、残る三辺には接しないように形成されている。
【0049】
樹脂層28の上には、図2(a)に示す液晶層34が配置され、液晶層34の周囲を囲むようにシール材24が形成されている。シール材24は、両端が近接はしているが繋がっておらず開環部を備えるシール部24aと、開環部に配置されるシール部24aの両端同士を接続しシール部24aと一体となって液晶層34を封止する封止材24bとを備える。シール部24aの備える開環部および封止材24bは基板本体20の一辺に接する樹脂層28上に形成されており、シール部24aの両端部は基板本体20の一辺に接して形成されている。シール部24aの開環部は、製造工程において液晶層34を構成する液晶分子を注入する注入口として使用され、液晶分子34を注入後、封止材24bにより封止される。封止材24bはシール部24aの開環部に配置されて開環部を接続し、更にシール部24aと樹脂層28の基板本体20の一辺に接する端部を覆って形成されている。したがって、樹脂層28の基板本体20の一辺に接する端部は、封止材24bにより更に覆われることとなり、強固に水分の浸入を防ぐことが出来る構造となっている。
【0050】
更に樹脂層28の上には、液晶層34と平面的に重なる領域に平坦化層36が形成されている。平坦化層36は、外周部がシール材24と平面的に重なって形成されている。
【0051】
更に平坦化層36の上には共通電極38が配置されている。共通電極38は、液晶層34の配置されている領域に平面的に重なる平面視矩形の主要部38aと、主要部38aの四隅から樹脂層28の四隅近傍にまで延在する4つの接続部38bと、を備えている。
【0052】
樹脂層28の四隅に配置されている各々の接続部38bの端部では、それぞれ導電接続材料42が平面的に重なって配置され接続されている。導電接続材料42は、通常「銀点」と呼ばれている部材であり、一対の基板間を電気的に導通させる機能を有する。この導電接続材料42は、金属などの導電性材料で表面を被覆された樹脂で形成された部材であり、液晶表示装置1のセルギャップと略同じ直径を備えた球形を備えている。また、シール材24で囲まれた領域(液晶層34が配置されている領域)の外側であって、平面視略矩形の樹脂層28に1つずつ、接続部38bに重なって計4箇所配置されている。このように、シール材24および導電接続材料42は、樹脂層28の上に形成されている。なお、ここでは導電接続材料42は4箇所に配置されているが、導電接続材料42の機能は基板間の導通を確保することであるため、少なくとも1箇所形成されており基板間に導通が得られていれば良い。
【0053】
共通電極38の上には、図2(a)に示す配向膜40や素子基板22等が配置されている。以上のように液晶表示装置1が構成されている。
【0054】
以上のような構成の液晶表示装置(電気光学装置)1によれば、樹脂層28の端面にはガスバリア層30が形成されている。そのため、樹脂層28を設け、樹脂層28の厚みでバリア層26とカラーフィルタ層32との間隔(離間距離)を調整する場合において、外部環境の水蒸気や酸素などのガスが、樹脂層28の端面から浸透し、樹脂層28を介して液晶層34へ浸透することを防ぐことができる。したがって、外部環境から浸透する水蒸気等のガスに起因した品質低下を防ぎ、信頼性の高い電気光学装置1を提供することができる。
【0055】
また、本実施形態では、ガスバリア層30は樹脂層28の全面を覆って形成されていることとしている。そのため、例えば樹脂層28の端面に形成されたガスバリア層30が破損したとしても、樹脂層28の液晶層34に平面的に重なる面に形成されているガスバリア層30で液晶層34への水蒸気等の浸透を防ぐことが出来る。また、ガスバリア層30が全面に一体となって形成されているため、ガスバリア層30の形成においてパターニングが不要である上、強固なガスバリア層30とすることができる。そのため、容易に信頼性の高いガスバリア層30を備えた電気光学装置1を提供することができる。
【0056】
また、本実施形態では、ガスバリア層30は酸化ケイ素で形成されていることとしている。ガスバリア層30にガスの透過性が極めて低い無機材料である酸化ケイ素を用いているため、優れたガスバリア層30を形成することができる。また、酸化ケイ素は絶縁性を備えているため、電気光学装置1が備える他の電極との短絡することなく、表示品質を維持することができる。
【0057】
また、本実施形態では、樹脂層28は光硬化性を備えたアクリル樹脂で形成することとしている。そのため、容易に多面取りでの原板分断時に切断される箇所を避けて樹脂層28を形成することができ、信頼性の高い電気光学装置を提供することができる。
【0058】
また、本実施形態では、電気光学材料に液晶材料を用いている。液晶材料を用いた液晶表示装置では、液晶層34への水蒸気等のガスの浸透により表示性能が劣化する程度が大きいが、本発明により高品質の液晶光学装置とすることができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、ガスバリア層30は樹脂層28の全面を覆って形成されていることとしているとしたが、樹脂層28を介した外部環境からのガスの浸透を防ぐという発明の趣旨から、少なくとも樹脂層28の端面からシール材24に接するに至るまでの面にガスバリア層30を形成しておくこととしても構わない。
【0060】
また、本実施形態においては、ガスバリア層30は無機材料である酸化ケイ素で形成することとしたとしたが、有機材料であっても例えばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂など透湿性が低い樹脂材料を使用することも可能である。樹脂材料を用いることとすれば、成型加工が容易となる。
【0061】
また、本実施形態においては、ガスバリア層30が絶縁性を備えていることとしたが、導電性を備えた材料にてガスバリア層を形成することとしても構わない。その場合は、他の配線との短絡を防ぐために絶縁材料を用いて別途絶縁を施すことが望ましい。
【0062】
また、本実施形態においては、電気光学材料に液晶材料を用いることとしたが、液晶材料の以外にも有機EL材料や電気泳動材料などを用いることとしても構わない。また、カラーフィルタ層32を設けずに白黒画像を表示することとしても良い。
【0063】
また、本実施形態においては、2視点で2つの異なる画像を観察可能であることとしたが、更に多くの視点で異なる画像を観察可能であることとしても良い。例えば、4視点から4つの異なる画像を観察可能としてもよい。
【0064】
また、本実施形態においては、樹脂層28、シール部24aの両端部およびシール部24aの備える開環部が基板本体20の一辺と接して形成されており、封止材24bで封止されているが、樹脂層28は基板本体20のいずれの辺にも接さず、樹脂層28が形成されている面の外周よりも内側に形成されることとしても良い。その場合、基板20Lを多面取りで形成した場合に、樹脂層28上に形成されるガスバリア層30が破損してガスバリア層30に覆われていない樹脂層28の新たな端面が露出することがない。そのため、高品質の電気光学装置1とすることができる。
【0065】
しかしこの場合には、樹脂層28と同様に、樹脂層28上に形成されるシール材24も基板本体20のいずれの辺にも接さずに形成される。シール部24aの開環部が基板本体20の一辺に接していないことから、この開環部を液晶分子の注入口として用いる場合に液晶分子の注入が困難になるおそれがある。そこで、このような構成の場合には、シール部24aを形成する際にシール部24aの端部の樹脂量を多く配置し、樹脂層28の端部と基板本体20の一辺との離間部を埋めて形成することが望ましい。また、ガスバリア層30を形成した樹脂層28の端部と基板本体20の一辺との離間部に新たな樹脂層を形成し、新たに形成した樹脂層の上にシール材24を延在して形成することとしても良い。
【0066】
また、本実施形態においては、シール材24はシール部24aと封止材24bとを備えており、シール部24aが備える開環部から液晶分子を注入した後に封止材24bで閉じる構成としているが、シール部24aが平面視で閉環しており、液晶分子を注入する開環部(注入口)を備えない構成としても良い。この構成では、たとえばシール材24は封止材24bを用いずシール部24aのみで形成される。その場合には、例えば減圧環境下にて、一方の基板上にシール材24を配置し、液晶層34に配置される液晶分子に略等しい量の液晶分子を配置し、他方の基板を貼り合わせる工程を行うことで液晶層34を形成することができる。この場合にも、ガスバリア層30の破損を抑制するために、樹脂層28は基板本体20のいずれの辺にも接さず、樹脂層28が形成されている面の外周よりも内側に形成されることが望ましい。
【0067】
また、本実施形態は、樹脂層28を介した外部環境からのガスの浸透を防ぐという発明の趣旨から、幾つもの変形例が考えられる。以下、本実施形態の変形例について説明する。図3の(a)から(c)は変形例を示す断面図である。図においては、一方側(左側)の端部を省略している。
【0068】
図3(a)に示す電気光学装置2は、樹脂層28の上に平坦化層36を形成した後にガスバリア層30を形成したものである。平坦化層36はシール材24の下側に重なるまで延在している。ガスバリア層30が樹脂層28の端面を覆っているためガスの浸透を防ぐことができる。
【0069】
図3(b)に示す電気光学装置3は、図3(a)で示した電気光学装置2の平坦化層36が基板本体20の端部にまで延在して形成されている例である。この場合には平坦化層36の端部が外部に露出しているため、平坦化膜36の端部から平坦化膜36を介して外部環境のガスが樹脂層28に浸透することが想定される。しかし、ガスバリア層30は装置内部にも形成されているため、平坦化膜36を介して浸透するガスは液晶層34に至ることが無い。
【0070】
図3(c)に示す電気光学装置4は、カラーフィルタ層32を覆って第2平坦化膜50を形成したものである。第2平坦化膜50はカラーフィルタ層32の上面を平坦化する機能を備え、シール材24の下側に重なるまで延在している。ガスバリア層30が樹脂層28の端面を覆っているためガスの浸透を防ぐことができる。
【0071】
いずれにおいても、ガスバリア層30によって外部環境からの水蒸気や酸素などのガスの浸透を効率的に防ぎ表示性能の低下を防ぐことができるため、高品質の電気光学装置とすることができる。
【0072】
[第2実施形態]
図4から図6は、本発明の第2実施形態に係る電気光学装置の説明図である。本実施形態の電気光学装置は、第1実施形態の電気光学装置と一部共通している。異なるのは、形成したガスバリア層を覆って、このガスバリア層を保護する保護膜が形成されていることである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0073】
図4は、本実施形態の電気光学装置(液晶表示装置)5を示す概略断面図であり、第1実施形態の説明に用いた図2に対応するものである。図5および図6は、本実施形態の電気光学装置5の変形例を示す概略断面図である。
【0074】
図4に示すように、本実施形態の液晶表示装置5は、樹脂層28を覆って全面に形成されたガスバリア層30を更に覆って、ガスバリア層30の表面全面に平坦化膜36が形成されている。平坦化膜36は、ガスバリア層30を覆いつつ基板本体20の一端から他端に至るまで延在して形成されている。
【0075】
以上のような構成の液晶表示装置(電気光学装置)5では、平坦化膜36はバリア層26の形成によって生じる凹凸を緩和するという本来の機能に加えて、樹脂層28の端部を覆うガスバリア層30を覆い、ガスバリア層30を保護する保護膜としての役割を兼ね備える。例えば、樹脂層28を樹脂材料で形成し、ガスバリア層30を無機材料である酸化ケイ素で形成すると、両者は熱膨張率や表面硬度が異なる。そのため環境条件が変化すると、例えば熱膨張率の差により形成したガスバリア層30が樹脂層28からはがれたり、ひび割れが生じたりするおそれがある。また、製造や使用の過程における接触によりガスバリア層30が破損することも考えられる。しかし本実施形態の構成によれば、ガスバリア層30上に形成した平坦化膜36により破損を防ぐことが出来るため、ガスバリア層30の品質を維持することで品質低下を防ぎ、信頼性の高い電気光学装置5とすることができる。
【0076】
ここで、前述の通り平坦化膜36は樹脂材料で形成するため、平坦化膜36の端部から平坦化膜36を介して液晶層34に外部環境のガスが浸透するということが考えられる。しかし、樹脂層28の厚みが80μmであるのに対し、平坦化膜36は約1μmと膜厚が非常に薄い。そのため、樹脂層28からのガスの浸透と比較するとガスの浸透にかかる平坦化膜36の端部は非常狭いこと、またこの膜厚の差より樹脂層28からのガスの浸透を防ぐことが品質を担保するために非常に重要であること、から平坦化膜36を保護膜として用いガスバリア層30の破損を防ぐことは電気光学装置5の品質維持に有効である。
【0077】
また、本実施形態では、平坦化膜36はガスバリア層30を覆い樹脂層28の全面に形成されていることとしている。平坦化膜36が一体となって形成されるため、より強固にガスバリア層30を保護することができる。また、ガスバリア層30の形成においてパターニングが不要であるため平坦化膜36の形成工程が簡素化できる。そのため、容易に高品質の電気光学装置5とすることが出来る。
【0078】
なお、本実施形態においては、平坦化膜36はガスバリア層30の全面を覆って形成されていることとしているとしたが、少なくとも樹脂層28の端面からシール材24に接するに至るまでの面に形成されているガスバリア層30を覆うように形成しておくこととしてもよい。
【0079】
また本実施形態は、ガスバリア層30を覆う保護膜を形成してガスバリア層30の破損を防ぐという発明の趣旨から、幾つもの変形例が考えられる。以下、本実施形態の変形例について図5および図6を用いて説明する。図5および図6は変形例を示す断面図である。図においては、一方側(左側)の端部を省略している。
【0080】
図5は、カラーフィルタ層32を覆う第2平坦化膜50を用いてガスバリア層30を保護したものである。いずれの変形例においても第2平坦化膜50は、ガスバリア層30を覆って基板本体20の端部にまで延在して形成されている。図5(a)から図5(c)の各電器光学装置の違いは、カラーフィルタ層32の備えるブラックマトリクス32bが覆う領域の広さの違いである。
【0081】
図5(a)に示す電気光学装置6では、ブラックマトリクス32bは液晶層34に平面的に重なる領域に配置されている。また、図5(b)に示す電気光学装置7では、ブラックマトリクス32bはシール材24の下面にまで延在している。
【0082】
更に、図5(c)に示す電気光学装置8では、ブラックマトリクス32bは樹脂層28の端面に至るまで延在し形成されている。この例においては加えて、樹脂層28の端面にまでブラックマトリクス32bが形成されているため、ブラックマトリクス32bによるガスバリア層30の保護も期待できる。
【0083】
図6は、ガスバリア層30の全面に平坦化膜36を形成し保護したうえに、更に第2平坦化膜50を積層させガスバリア層30の保護を行うこととしたものである。いずれの変形例においても平坦化膜36は、ガスバリア層30を覆って基板本体20の端部にまで延在して形成されている。図6(a)と図6(b)の電器光学装置の違いは、第2保護膜50が覆う領域の広さの違いであり、図6(b)から図6(d)の各電気光学装置の違いは、ブラックマトリクス32bが覆う領域の違いである。
【0084】
図6(a)に示す電気光学装置9では、第2平坦化膜50をシール材24の下面に至るまで形成し保護を行っている。また、図6(b)に示す電気光学装置10では、第2平坦化膜50が基板本体20の端面に至るまで延在し形成されている。更に、図6(c)に示す電気光学装置11では、ブラックマトリクス32bがシール材24の下面に至るまで形成されている。そして、図6(d)に示す電気光学装置12では、ブラックマトリクス32bは樹脂層28の端面に至るまで延在し形成されている。
【0085】
いずれの例においても、第2平坦化膜50がガスバリア層30を覆うことでガスバリア層30の破損を防ぐ効果が期待でき表示性能の低下を防ぐことができるため、高品質の電気光学装置とすることができる。電気光学装置12においては、樹脂層28の端面にまでブラックマトリクス32bが形成されているため、ブラックマトリクス32bによるガスバリア層30の保護も期待できる。
【0086】
[電子機器]
次に、本発明の電気光学装置を備えた電子機器の実施形態について説明する。図7は、本発明にかかる電子機器の一例としてカーナビゲーションシステムを示した概略図である。図7(a)は斜視図を示し、(b)は画像を視認できる仕組みを示す図である。図7(a)に示すように、カーナビゲーションシステム700は画像表示部701を備えている。画像表示部701は、本発明の電気光学装置を備えて構成されている。
【0087】
図7(b)は、本例のカーナビゲーションシステム700によって、運転者DRと助手席乗員PAとが、異なる画像を視認できる仕組みを説明する図である。図7(b)が示すように、液晶表示部701からは、画像VL、VRが異なる方向に向けて出力されており、運転者DRは画像VRのみが、画像V助手席乗員PAには画像VLのみが、それぞれ視認される。このようにして、例えば運転者DRが地図等の画像を視認しつつ、同時に助手席乗員PAが映画等の画像を視認することができる。
【0088】
以上のような構成のカーナビゲーションシステム700では、表示部に上述の本発明の電気光学装置を備えているので、表示品質が高く、かつ長寿命となる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の配線構造を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電気光学装置を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電気光学装置を示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の電子機器の一例を示す説明図である。
【図8】バリア層を用いた2視点表示装置の概略図である。
【符号の説明】
【0091】
1〜12…電気光学装置、20…基板本体(基板)、22…素子基板(基板)、24…シール材、26…バリア層、28…樹脂層、30…ガスバリア層、32…カラーフィルタ層、34…液晶層(電気光学材料層)、36…平坦化膜(保護膜)、50…第2平坦化膜(保護膜)、700…カーナビゲーションシステム(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、
前記一対の基板間に配置された電気光学材料層と、
前記電気光学材料層と前記一対の基板のうちの一方の基板との間に設けられたカラーフィルタ層と、
前記一方の基板と前記カラーフィルタ層との間に設けられたバリア層と、
前記バリア層と前記カラーフィルタ層との間に設けられ、前記バリア層と前記カラーフィルタ層との間隔を一定に保持する樹脂層と、
前記樹脂層の前記電気光学材料層側に前記電気光学材料層の周囲を囲むように設けられたシール材と、
前記樹脂層の端面を覆って、前記樹脂層の前記シール材に囲まれた領域の外側に配置された面を少なくとも被覆しているガスバリア層と、を備えていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記ガスバリア層は、前記樹脂層の前記電気光学材料層に対向する面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記ガスバリア層が、前記樹脂層の表面を覆って前記一方の基板の全面に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記ガスバリア層は、無機材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記ガスバリア層は、絶縁性を備えることを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記電気光学装置は、少なくとも前記樹脂層の前記シール材に囲まれた領域の外側に配置された面と、前記樹脂層の端面と、を被覆する前記ガスバリア層の一部分を覆う保護膜を備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記保護膜は、前記ガスバリア層の表面を覆って前記樹脂層の全面に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記樹脂層は、前記一方の基板の前記電気光学材料層側の面の外周よりも内側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記樹脂層は、光硬化性樹脂で形成されていることを特徴とする請求項8に記載の電気光学装置。
【請求項10】
前記電気光学材料は液晶材料であることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−93058(P2009−93058A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265421(P2007−265421)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】