説明

電気光学装置および電子機器

【課題】右眼用画像と左眼用画像との混在が観察者に知覚されることを抑制しながら表示画像の明度を向上させる。
【解決手段】電気光学装置10は、M行の走査線32とN列の信号線34との各交差に対応して配置された複数の画素PIXを含み、右眼用画像GRと左眼用画像GLとを表示期間P毎に交互に表示する。駆動回路40は、各表示期間P内の準備期間Sにおいて所定階調(例えば黒階調)G0に対応する階調電位X[n]をK行単位(Kは2以上の自然数)で各画素PIXに供給し、各表示期間Pのうち準備期間Sの経過後の書込期間Wにおいて各画素PIXの指定階調に応じた階調電位X[n]を各画素PIXに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者が立体感を知覚するように相互に視差が付与された右眼用画像と左眼用画像とを表示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
右眼用画像と左眼用画像とを時分割で交互に表示するフレームシーケンシャル方式の立体視方法が従来から提案されている。右眼用画像および左眼用画像の一方が他方に変化する期間では右眼用画像と左眼用画像とが混在するから、観察者が画像を視認すると明確な立体感を認識することが困難となる(クロストーク)。以上の問題を解決するために、例えば特許文献1には、右眼用画像および左眼用画像の一方が他方に変化する期間(すなわち右眼用画像と左眼用画像とが混在する期間)において立体視用眼鏡の右眼用シャッターおよび左眼用シャッターの双方を閉状態として観察者に画像を視認させない技術が開示されている。
【0003】
図10に示すように、右眼用画像の表示期間PRと左眼用画像の表示期間PLとが交互に設定される。各表示期間P(PR,PL)は単位期間U1と単位期間U2とに区分される。表示期間PR内の単位期間U1では表示画像が左眼用画像から右眼用画像に更新されるとともに直後の単位期間U2では右眼用画像が表示され、表示期間PL内の単位期間U1では表示画像が右眼用画像から左眼用画像に更新されるとともに直後の単位期間U2では左眼用画像が表示される。各表示期間Pの単位期間U1では、右眼用シャッターおよび左眼用シャッターの双方が閉状態に制御される。したがって、右眼用画像と左眼用画像との混在は観察者に知覚されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−25436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術のもとでは、観察者が実際に画像を視認できる期間が、各表示期間Pの単位期間U2(すなわち約半分)に制限される。したがって、表示画像の明度を充分に確保することが困難であるという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、右眼用画像と左眼用画像との混在が観察者に知覚されることを抑制しながら表示画像の明度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、右眼用画像と左眼用画像とを表示期間毎に交互に表示する電気光学装置であって、複数行の走査線と複数列の信号線との各交差に対応して配置された複数の画素と、各表示期間内の準備期間において所定階調に対応する階調電位をK行単位(Kは2以上の自然数)で各画素に供給し、各表示期間のうち準備期間の経過後の書込期間において各画素の指定階調に応じた階調電位を各画素に供給する駆動回路とを具備する。所定階調は、表示画像の内容とは無関係に選定された階調である。典型的には黒階調(最低階調)が所定階調として好適に選定される。
【0007】
以上の構成では、各表示期間の準備期間において各画素の表示階調が所定階調に設定されるから、右眼用画像と左眼用画像との混在(クロストーク)を防止することが可能である。また、準備期間では、所定階調に応じた階調電位がK行(複数行)単位で各画素に供給されるから、例えば所定階調に応じた階調電位を1行単位で各画素に供給する構成と比較して準備期間の時間長が短縮される。すなわち、例えば各表示期間の時間長を固定した場合、表示期間のうち指定階調に応じた階調電位が各画素に供給される書込期間(すなわち右眼用画像や左眼用画像が表示される期間)が相対的に長時間に設定される。したがって、表示画像の明度を向上させることが可能である。
【0008】
本発明の好適な態様において、複数行の走査線は、交互に配列された第1走査線と第2走査線とを含み、駆動回路は、各表示期間内の準備期間において複数の走査線をK行単位で選択期間毎に順次に選択し、各表示期間のうち書込期間内の第1単位期間では、複数行の走査線を相互に隣合う2行ずつ区分した第1組を選択期間毎に順次に選択し、書込期間のうち第1単位期間の経過後の第2単位期間では、第2走査線を選択期間毎に順次に選択する走査線駆動回路と、各表示期間の準備期間内の選択期間毎に、所定階調に応じた階調電位を各信号線に供給し、各表示期間のうち書込期間内の第1単位期間の選択期間毎に、当該選択期間で選択される第1組のうち第1走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給し、第2単位期間の選択期間毎に、当該選択期間で選択される第2走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給する信号線駆動回路とを含む。以上の態様では、書込期間内の第1単位期間にて走査線を2本ずつ選択して各画素に階調電位を供給するから、例えば第1単位期間にて走査線を1本ずつ順次に選択して各画素に階調電位を供給する構成と比較すると、複数の画素の表示階調が前述の所定階調から表示画像に応じた階調に更新されるまでの時間を短縮する((表示画像が実際に表示される時間長を充分に確保する)ことが可能である。なお、第1単位期間では表示画像の解像度が低下するが、直後の第2単位期間にて1本おきに走査線が選択されて各画素に階調電位が供給されるから、第1単位期間における表示画像の解像度の低下が観察者に知覚され難いという利点がある。
【0009】
本発明に係る電気光学装置の第1態様において、走査線駆動回路は、各表示期間の書込期間のうち第2単位期間の経過後の第3単位期間において、第1組から1本ずらして複数行の走査線を相互に隣合う2行ずつ区分した第2組を選択期間毎に順次に選択し、信号線駆動回路は、第3単位期間の選択期間毎に、当該選択期間で選択される第2組のうち第2走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給する。第1態様の具体例は例えば第1実施形態として後述される。
【0010】
本発明に係る電気光学装置の第2態様において、走査線駆動回路は、各表示期間の書込期間のうち第2単位期間の経過後の第3単位期間において各走査線の選択を停止し、信号線駆動回路は、第3単位期間において各信号線に対する階調電位の供給を停止する。第2態様の具体例は例えば第2実施形態として後述される。
【0011】
第1態様の電気光学装置では、書込期間内の第3単位期間において走査線の第2組が順次に選択されて各画素に表示画像に応じた階調電位が供給される。したがって、第2単位期間の経過後における各画素の印加電圧の変動が第2態様と比較して抑制されるという利点がある。他方、第2態様の電気光学装置では、書込期間内の第3単位期間において駆動回路の動作が停止するから、第1態様と比較して駆動回路の消費電力が削減されるという利点がある。
【0012】
第1組をQ本(Qは2以上の自然数)の走査線の集合として一般化した場合、駆動回路は、各表示期間内の準備期間において複数の走査線をK行単位で選択期間毎に順次に選択し、各表示期間の書込期間内のQ個の単位期間のうち第1番目の単位期間では、複数行の走査線を相互に隣合うQ行ずつ区分した第1組を選択期間毎に順次に選択し、書込期間のうち第q番目(q=2〜Q)の各単位期間では、各第1組の第q番目の走査線を選択期間毎に順次に選択する走査線駆動回路と、各表示期間の準備期間内の選択期間毎に、所定階調に応じた階調電位を各信号線に供給し、各表示期間のうち書込期間内の第1番目の単位期間の選択期間毎に、当該選択期間で選択される第1組のうち第1番目の走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給し、第q番目の単位期間の選択期間毎に、当該選択期間で選択される走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を各信号線に供給する信号線駆動回路とを含む要素として表現される。
【0013】
本発明の好適な態様の電気光学装置は、右眼用シャッターと左眼用シャッターとを含む立体視用眼鏡で立体視される右眼用画像および左眼用画像を表示する電気光学装置であって、各表示期間の準備期間の少なくとも一部を含む期間にて右眼用シャッターおよび左眼用シャッターの双方を閉状態に制御し、右眼用画像の表示期間内の書込期間の少なくとも一部を含む期間にて右眼用シャッターを開状態に制御するとともに左眼用シャッターを閉状態に制御し、左眼用画像の表示期間内の書込期間の少なくとも一部を含む期間にて左眼用シャッターを開状態に制御するとともに右眼用シャッターを閉状態に制御する眼鏡制御回路を具備する。
【0014】
以上の各態様に係る電気光学装置は表示体として各種の電子機器に採用される。例えば、以上の各態様に係る電気光学装置と、眼鏡制御回路が制御する立体視用眼鏡とを具備する立体視表示装置が、本発明の電子機器として例示される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る立体視表示装置のブロック図である。
【図2】画素回路の回路図である。
【図3】立体視表示装置の動作の説明図である。
【図4】走査線駆動回路の動作の説明図である。
【図5】第2実施形態における立体視表示装置の動作の説明図である。
【図6】変形例における動作の説明図である。
【図7】電子機器(投射型表示装置)の斜視図である。
【図8】電子機器(パーソナルコンピュータ)の斜視図である。
【図9】電子機器(携帯電話機)の斜視図である。
【図10】従来の技術における立体視動動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る立体視表示装置100のブロック図である。立体視表示装置100は、観察者に立体感を知覚させる立体視画像をアクティブシャッター方式で表示する電子機器であり、電気光学装置10と立体視用眼鏡20とを具備する。電気光学装置10は、相互に視差が付与された右眼用画像GRと左眼用画像GLとを時分割で交互に表示する。
【0017】
立体視用眼鏡20は、電気光学装置10が表示する立体視画像の視認時に観察者が装着する眼鏡型の器具であり、観察者の右眼の前方に位置する右眼用シャッター22と左眼の前方に位置する左眼用シャッター24とを具備する。右眼用シャッター22および左眼用シャッター24の各々は、照射光を透過させる開状態(透過状態)と照射光を遮断する閉状態(遮光状態)とに制御される。例えば印加電圧に応じて液晶の配向方向を変化させることで開状態および閉状態の一方から他方に変化する液晶シャッターが右眼用シャッター22および左眼用シャッター24として採用され得る。
【0018】
図1の電気光学装置10は、電気光学パネル12と制御回路14とを具備する。電気光学パネル12は、複数の画素(画素回路)PIXが配列された画素部30と、各画素PIXを駆動する駆動回路40とを含む。画素部30には、x方向に延在するM本の走査線32と、x方向に交差するy方向に延在するN本の信号線34とが形成される(MおよびNは自然数)。画素部30内の複数の画素PIXは、走査線32と信号線34との各交差に対応して縦M行×横N列の行列状に配列される。
【0019】
駆動回路40は、各画素PIXの表示階調を規定する階調電位X[n](n=1〜N)を各画素PIXに供給する回路であり、走査線駆動回路42と信号線駆動回路44とを具備する。走査線駆動回路42は、各走査線32に対応する走査信号Y[1]〜Y[M]の供給で各走査線32を順次に選択する。走査信号Y[m](m=1〜M)が所定の選択電位に設定されることで第m行の走査線32が選択される。信号線駆動回路44は、走査線駆動回路42による走査線32の選択に同期してN本の信号線34の各々に階調電位X[1]〜X[N]を供給する。
【0020】
図2は、各画素PIXの回路図である。図2に示すように、各画素PIXは、液晶素子CLと選択スイッチSWとを含む。液晶素子CLは、相互に対向する画素電極62および共通電極64と両電極間の液晶66とで構成された電気光学素子である。画素電極62と共通電極64との間の印加電圧に応じて液晶66の透過率(表示階調)が変化する。選択スイッチSWは、走査線32にゲートが接続されたNチャネル型の薄膜トランジスターで構成され、液晶素子CLと信号線34との間に介在して両者の電気的な接続(導通/絶縁)を制御する。走査信号Y[m]が選択電位に設定されることで第m行の各画素PIXにおける選択スイッチSWが同時にオン状態に遷移する。各画素PIX(液晶素子CL)は、選択スイッチSWがオン状態に制御されたとき(すなわち走査線32の選択時)の信号線34の階調電位X[n]に応じた階調を表示する。なお、液晶素子CLに並列に補助容量を接続した構成も採用され得る。
【0021】
図1の制御回路14は、電気光学パネル12を制御する表示制御回路142と、立体視用眼鏡20を制御する眼鏡制御回路144とを具備する。なお、表示制御回路142と眼鏡制御回路144とを単体の集積回路に搭載した構成や、表示制御回路142と眼鏡制御回路144とを別体の集積回路に分散した構成が採用され得る。表示制御回路142は、相互に視差が付与された右眼用画像GRと左眼用画像GLとが時分割で画素部30に表示されるように駆動回路40を制御する。
【0022】
図3は、電気光学装置10の動作の説明図である。図3に示すように、電気光学装置10の動作期間は、複数の表示期間P(右眼用表示期間PRおよび左眼用表示期間PL)に区分される。右眼用表示期間PRでは右眼用画像GRが画素部30に表示され、左眼用表示期間PLでは左眼用画像GLが画素部30に表示される。右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとは時間軸上に交互に配列する。各表示期間P(PR,PL)は、準備期間Sと書込期間Wとを含んで構成される。書込期間Wは、準備期間に後続する期間であり、3個の単位期間U(U1,U2,UE)に区分される。単位期間U2は単位期間U1に後続し、単位期間UEは単位期間U2に後続する。準備期間Sと3個の単位期間Uの各々とは略同等の時間長に設定される。
【0023】
図4は、各表示期間P(PR,PL)での走査線駆動回路42の動作の説明図である。図4に示すように、各表示期間Pの準備期間Sでは、走査線駆動回路42は、M行の走査線32を相互に隣合う2行ずつ区分した複数の組(以下「第1組」という)の各々を選択期間H毎に順次に選択する。第1組は、偶数行(第2k行)の1行の走査線32と、その走査線32に対してy方向の負側に隣合う奇数行(第(2k-1)行)の1行の走査線32とで構成される。走査線駆動回路42は、準備期間S内の1個の選択期間Hにて走査信号Y[2k-1]および走査信号Y[2k]を選択電位に設定することで第1組の2行の走査線32を同時に選択する。例えば、準備期間S内の第1番目の選択期間Hでは第1行および第2行の2行の走査線32が同時に選択され、準備期間S内の第2番目の選択期間Hでは第3行および第4行の2行の走査線32が同時に選択される。
【0024】
各表示期間Pのうち書込期間W内の単位期間U1では、走査線駆動回路42は、準備期間S内の動作と同様に、選択期間H毎に第1組を順次に選択する。すなわち、走査線駆動回路42は、単位期間U1内の1個の選択期間Hにて走査信号Y[2k-1]および走査信号Y[2k]を選択電位に設定することで第1組の2行の走査線32を同時に選択する。例えば単位期間U1内の第1番目の選択期間Hでは第1行および第2行の計2行の走査線32が同時に選択され、単位期間U1内の第2番目の選択期間Hでは第3行および第4行の計2行の走査線32が同時に選択される。
【0025】
各表示期間Pの書込期間W内の単位期間U2では、走査線駆動回路42は、図4に示すように、M行の走査線32を1行おきに選択期間H毎に順次に選択する。すなわち、第1組の2本の走査線32のうちの一方の走査線32が単位期間U2では順次に選択される。具体的には、走査線駆動回路42は、単位期間U2内の1個の選択期間Hにて走査信号Y[2k]を選択電位に設定することで偶数行の走査線32を選択期間H毎に順次に選択する。例えば、単位期間U2内の第1番目の選択期間Hでは第2行の走査線32が選択され、単位期間U2内の第2番目の選択期間Hでは第4行の走査線32が選択される。奇数行の走査線32は単位期間U2では選択されない。
【0026】
各表示期間Pの書込期間W内の単位期間UEでは、走査線駆動回路42は、図4に示すように、第1組とは相違する組合せでM行の走査線32を相互に隣合う2行ずつ区分した複数の組(以下「第2組」という)の各々を選択期間H毎に順次に選択する。第2組は、偶数行(第2k行)の1本の走査線32と、その走査線32に対してy方向の正側に隣合う奇数行(第(2k+1)行)の1本の走査線32とで構成される。すなわち、第1組と第2組とは、1行分だけy方向にずれた関係にある。走査線駆動回路42は、単位期間UE内の1個の選択期間Hにて走査信号Y[2k]および走査信号Y[2k+1]を選択電位に設定することで第2組の2本の走査線32を同時に選択する。例えば、単位期間UE内の第1番目の選択期間Hでは第2行および第3行の計2本の走査線32が同時に選択され、単位期間UE内の第2番目の選択期間Hでは第4行および第5行の計2本の走査線32が同時に選択される。なお、第1実施形態での説明では便宜的に、単位期間UE内で第1行目の走査線32が選択されない場合を例示するが、単位期間UEにて第1行目の走査線32を選択することも可能である。
【0027】
図3に示すように、信号線駆動回路44は、各表示期間P(PR,PL)内の準備期間Sにおいて所定階調G0に応じた階調電位X[1]〜X[N]を各信号線34に供給する一方、右眼用表示期間PR内の書込期間Wでは右眼用画像GRに応じた階調電位X[1]〜X[N]を各信号線34に供給し、左眼用表示期間PL内の書込期間Wでは左眼用画像GLに応じた階調電位X[1]〜X[N]を各信号線34に供給する。所定階調G0は、右眼用画像GRや左眼用画像GLにおける各画素PIXの指定階調とは無関係に選定された階調である。具体的には黒階調(最低階調)が所定階調G0として好適に選定される。
【0028】
信号線駆動回路44は、各画素PIXの液晶素子CLに対する印加電圧の極性が周期的に反転するように所定の基準電位に対する各階調電位X[n]の極性を順次に反転させる。図3には、所定の基準電位(例えば共通電極64の電位)に対する各階調電位X[n]の極性(書込極性)の時間変化が例示されている。階調電位X[n]は液晶素子CLの画素電極62に供給されるから、図3に例示された書込極性は、液晶素子CLに対する印加電圧の極性と同視され得る。図3に示すように、信号線駆動回路44は、各表示期間P(PR,PL)内の準備期間Sおよび単位期間UEと単位期間U1および単位期間U2とで階調電位X[n](液晶素子CLの印加電圧の極性)を逆極性に設定し、かつ、準備期間Sおよび各単位期間Uでの階調電位X[n]の極性を右眼用表示期間PRと左眼用表示期間PLとで逆極性に設定する。具体的には、階調電位X[n]は、右眼用表示期間PR内の準備期間Sと単位期間UEとで正極性(+)に設定されるとともに単位期間U1と単位期間U2とで負極性(-)に設定され、かつ、左眼用表示期間PL内の準備期間Sと単位期間UEとで負極性に設定されるとともに単位期間U1と単位期間U2とで正極性に設定される。
【0029】
各表示期間P(PR,PL)の準備期間S内の各選択期間Hでは、信号線駆動回路44は、所定階調G0に応じた共通の階調電位X[1]〜X[N]を各信号線34に供給する。したがって、準備期間S内の各選択期間Hでは、図3の部分(R0)および部分(L0)に示す通り、走査線駆動回路42が選択している第1組の第(2k-1)行および第2k行の各画素PIXに対して所定階調G0に応じた共通の階調電位X[n]が供給される。すなわち、準備期間Sでは、所定階調G0に応じた階調電位X[n]が2行単位(第1組毎)で順次に各画素PIXに供給される。例えば、準備期間S内の第1番目の選択期間Hでは、所定階調G0に応じた階調電位X[n]が第1行および第2行の各画素PIXに供給され、第2番目の選択期間Hでは、所定階調G0に応じた階調電位X[n]が第3行および第4行の各画素PIXに供給される。
【0030】
各表示期間P内の書込期間Wでの信号線駆動回路44の動作を以下に説明する。右眼用表示期間PRの書込期間W内の単位期間U1のうち、第1組を構成する第(2k-1)行および第2k行の2本の走査線32が選択される選択期間Hでは、信号線駆動回路44は、右眼用画像GRのうち第(2k-1)行の各画素PIXの指定階調GR[2k-1]に応じた階調電位X[n]を各信号線34に供給する。したがって、図3の部分(R1)に示す通り、第(2k-1)行および第2k行の各画素PIXには、第(2k-1)行の画素PIXの指定階調GR[2k-1]に応じた階調電位X[n]が共通に供給される。例えば、単位期間U1内の第1番目の選択期間Hでは、右眼用画像GRのうち第1行の各画素PIXの指定階調GR[1]に応じた階調電位X[n]が第1行および第2行の各画素PIXに供給され、第2番目の選択期間Hでは、右眼用画像GRのうち第3行の各画素PIXの指定階調GR[3]に応じた階調電位X[n]が第3行および第4行の各画素PIXに供給される。以上のように単位期間U1では、y方向に相互に隣合う2個の画素PIXに共通の階調電位X[n]が供給されるから、単位期間U1が終了する時点では、y方向の解像度を半分に低下させた右眼用画像GRが画素部30に表示される。
【0031】
右眼用表示期間PRの書込期間W内の単位期間U2のうち第2k行の走査線32が選択される選択期間Hでは、信号線駆動回路44は、右眼用画像GRのうちその第2k行の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調GR[2k]に応じた階調電位X[n]を各信号線34に供給する。例えば、図3の部分(R2)に示すように、単位期間U2内の第1番目の選択期間Hでは、右眼用画像GRのうち第2行の各画素PIXの指定階調GR[2]に応じた階調電位X[n]が第2行の各画素PIXに供給され、第2番目の選択期間Hでは、右眼用画像GRのうち第4行の各画素PIXの指定階調GR[4]に応じた階調電位X[n]が第4行の各画素PIXに供給される。他方、奇数行の各画素PIXにおける液晶素子CLの印加電圧は直前の単位期間U1での設定電圧に保持される。したがって、単位期間U1の終点ではy方向に半分の解像度で表示されていた右眼用画像GRが、単位期間U2の終点では所期の解像度(縦M行×横N列)の右眼用画像GRに更新される。
【0032】
右眼用表示期間PRの書込期間W内の単位期間UEのうち第2組を構成する第2k行および第(2k+1)行の2本の走査線32が選択される選択期間Hでは、信号線駆動回路44は、右眼用画像GRのうち第2k行の各画素PIXに対応する指定階調GR[2k]に応じた階調電位X[n]を各信号線34に供給する。したがって、図3の部分(R3)に示すように、第2組を構成する第2k行および第(2k+1)行の各画素PIXには、第2k行の画素PIXの指定階調GR[2k]に応じた階調電位X[n]が共通に供給される。例えば、単位期間UE内の第1番目の選択期間Hでは、右眼用画像GRのうち第2行の各画素PIXの指定階調GR[2]に応じた階調電位X[n]が第2行および第3行の各画素PIXに供給され、第2番目の選択期間Hでは、右眼用画像GRのうち第4行の各画素PIXの指定階調GR[4]に応じた階調電位X[n]が第4行および第5行の各画素PIXに供給される。なお、単位期間UEにて第1行を選択する構成では、例えば第1行が選択される選択期間Hにて所定電位(例えば中間調に対応する電位)の階調電位X[n]が各信号線34に供給される。
【0033】
以上の説明では右眼用表示期間PRの書込期間W内の動作を説明したが、左眼用表示期間PL内の書込期間Wでも信号線駆動回路44は同様に動作する。すなわち、左眼用表示期間PLの書込期間Wのうち単位期間U1内の各選択期間Hでは、図3の部分(L1)に示す通り、第(2k-1)行および第2k行で構成される第1組の各画素PIXに対して第(2k-1)行の各画素PIXの指定階調GL[2k-1]に応じた階調電位X[n]が供給される。また、単位期間U2内の各選択期間Hでは、図3の部分(L2)に示す通り、第2k行の各画素PIXに対してその画素PIXの指定階調GL[2k]に応じた階調電位X[n]が供給される。そして、単位期間UE内の各選択期間Hでは、図3の部分(L3)に示す通り、第2k行および第(2k+1)行で構成される第2組の各画素PIXに第2k行の指定階調GL[2k]が供給される。
【0034】
図1の制御回路14の眼鏡制御回路144は、立体視用眼鏡20の右眼用シャッター22および左眼用シャッター24の各々の状態(開状態/閉状態)を電気光学パネル12の動作に同期して制御する。具体的には、眼鏡制御回路144は、図3に示すように、各表示期間P(PR,PL)の準備期間Sにて右眼用シャッター22および左眼用シャッター24の双方を閉状態に制御する。また、眼鏡制御回路144は、右眼用表示期間PR内の書込期間Wにて右眼用シャッター22を開状態に制御するとともに左眼用シャッター24を閉状態に制御し、左眼用表示期間PL内の書込期間Wにて左眼用シャッター24を開状態に制御するとともに右眼用シャッター22を閉状態に制御する。
【0035】
したがって、右眼用表示期間PR内の書込期間Wで表示される右眼用画像GRは右眼用シャッター22を透過して観察者の右眼に到達するとともに左眼用シャッター24で遮断される。他方、左眼用表示期間PL内の書込期間Wで表示される左眼用画像GLは左眼用シャッター24を透過して観察者の左眼に到達するとともに右眼用シャッター22で遮断される。右眼用シャッター22を透過した右眼用画像GRを右眼で視認するとともに左眼用シャッター24を透過した左眼用画像GLを左眼で視認することで、観察者は表示画像に立体感を知覚する。
【0036】
以上に説明した第1実施形態では、各表示期間Pの準備期間Sにおいて、各画素PIXの表示階調が、右眼用画像GRや左眼用画像GLとは無関係の所定階調G0に制御されるから、右眼用画像GRと左眼用画像GLとの混在(クロストーク)は発生しない。すなわち、右眼用画像GRと左眼用画像GLとが確実に右眼および左眼に分離されるから、観察者に明確な立体感を知覚させることが可能である。
【0037】
また、各表示期間Pの準備期間Sでは、所定階調G0に応じた階調電位X[n]が2行単位で各画素PIXに供給される。したがって、所定階調G0の階調電位X[n]を1行単位で各画素PIXに供給する構成と比較して準備期間Sの時間長(すなわち右眼用シャッター22および左眼用シャッター24の双方を閉状態に維持すべき時間長)が短縮される。すなわち、各表示期間Pのうち右眼用シャッター22または左眼用シャッター24を開状態に維持できる時間長が充分に確保される。したがって、観察者が認識する表示画像の明度を向上することが可能である。
【0038】
第1実施形態では、各表示期間Pの書込期間W内の単位期間U1にて走査線32を2本ずつ選択して各画素PIXに階調電位X[n]を供給する。したがって、例えば単位期間U1にて走査線32を1本ずつ選択して各画素PIXに階調電位X[n]を供給する構成と比較して、M行分の画素PIXの表示階調が所定階調G0から表示画像(GR,GL)に応じた階調に更新されるまでの時間が短縮されるという利点がある。なお、各表示期間Pの単位期間U1では表示画像のy方向の解像度が低下するが、直後の単位期間U2では第2k行の各画素PIXに階調電位X[n]が供給されるから、単位期間U1における表示画像の解像度の低下は観察者に殆ど認識されない。
【0039】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0040】
図5は、第2実施形態の動作の説明図である。第1実施形態では、各表示期間Pの書込期間W内の単位期間UEにて第2組毎に各画素PIXに階調電位X[n]を供給した。他方、第2実施形態では、図5の部分(R3)および部分(L3)に示すように、各表示期間P(PR,PL)のうち書込期間W内の単位期間UEにおいて、駆動回路40が各画素PIXに対する階調電位X[n]の供給動作を停止する。すなわち、各表示期間Pの単位期間UEでは、走査線駆動回路42は各走査線32の選択を停止し、信号線駆動回路44は各信号線34に対する階調電位X[1]〜X[N]の供給を停止する。したがって、各単位期間UEにおいては、各画素PIXの液晶素子CLの印加電圧は直前の書込電圧に保持される。準備期間Sと単位期間U1および単位期間U2とにおける動作は第1実施形態と同様である。
【0041】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、各表示期間Pの単位期間UEにて駆動回路40の動作が停止するから、単位期間UEでも各画素PIXに階調電位X[n]を供給する第1実施形態と比較して駆動回路40の消費電力が削減されるという利点がある。
【0042】
なお、第2実施形態において各画素PIXに対する階調電位X[n]の供給が停止する単位期間UEでは、例えば選択スイッチSWにおける電流のリーク等に起因して液晶素子CLの印加電圧(ひいては各画素PIXの表示階調)が経時的に変動する可能性がある。第1実施形態では単位期間UEにおいても各画素PIXに階調電位X[n]が供給されるから、第2実施形態と比較して単位期間UEでの液晶素子CLの印加電圧の変動が抑制される。したがって、液晶素子CLに対する印加電圧を高精度に制御するという観点からは第1実施形態が好適である。
【0043】
<変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。
【0044】
(1)第1実施形態では、各表示期間Pの単位期間UEにおいて第2組の各画素PIXに偶数行の指定階調(GR[2k],GL[2k])を供給したが、単位期間UEにおける駆動回路40の動作は以上の例示に限定されない。例えば、単位期間UEにて走査線32を第1組毎に順次に選択するとともに奇数行の各画素PIXの指定階調(GR[2k-1],GL[2k-1])に応じた階調電位X[n]を各信号線34に供給する構成や、単位期間UEにて奇数行の走査線32を順次に選択するとともに奇数行の各画素PIXの指定階調に応じた階調電位X[n]を各信号線34に供給する構成も採用され得る。単位期間UEを省略することも可能である。
【0045】
また、前述の各形態では、単位期間U1にて第1組の各画素PIXに階調電位X[n]を供給するとともに単位期間U2にて偶数行の各画素PIXに階調電位X[n]を供給したが、書込期間Wで各画素PIXに階調電位X[n]を供給する方法は以上の例示に限定されない。例えば、書込期間Wにおいて走査線32を1行ずつ順次に選択するとともに各画素PIXの指定階調に応じた階調電位X[n]を各信号線34に供給することも可能である。
【0046】
前述の各形態では、奇数行(第(2k-1)行)の指定階調(GR[2k-1],GL[2k-1])に応じた階調電位X[n]を単位期間U1にて第1組の各画素PIXに供給し、偶数行(第2k行)の指定階調(GR[2k],GL[2k])に応じた階調電位X[n]を単位期間U2にて偶数行の各画素PIXに供給したが、単位期間U2にて階調電位X[n]が供給される各画素PIX(奇数行/偶数行)や、単位期間U1および単位期間U2の各々で階調電位X[n]に反映される指定階調(奇数行/偶数行)は以上の例示に限定されない。例えば、偶数行(第2k行)の指定階調(GR[2k],GL[2k])に応じた階調電位X[n]を単位期間U1にて第1組の各画素PIXに供給し、奇数行(第(2k-1)行)の指定階調(GR[2k-1],GL[2k-1])に応じた階調電位X[n]を単位期間U2にて奇数行の各画素PIXに供給することも可能である。単位期間UEでは、例えば奇数行の指定階調(GR[2k-1],GL[2k-1])に応じた階調電位X[n]が第2組の各画素PIXに供給される。
【0047】
また、前述の各形態では、第(2k-1)行および第2k行を第1組として第2k行および第(2k+1)行を第2組としたが、M本の走査線32の区分の方法は適宜に変更される。例えば第2k行および第(2k+1)行を第1組として第(2k-1)行および第2k行を第2組とした構成も採用される。すなわち、単位期間U1では第2k行および第(2k+1)行を第1組の各画素PIXに階調電位X[n]が供給され、単位期間U2では奇数行の各画素PIXに階調電位X[n]が供給される。
【0048】
以上の説明から理解されるように、各表示期間P内の書込期間Wでの動作は、各画素PIXの指定階調に応じた階調電位X[n]を各画素PIXに供給する動作として包括され、各画素PIXに対する階調電位X[n]の供給の順序や回数は任意である。
【0049】
(2)前述の各形態では、単位期間UEにて第1行の各画素PIXに階調電位X[n]を供給しない場合を便宜的に例示したが、第1行の各画素PIXに当該行の指定階調(GR[1],GL[1])に応じた階調電位X[n]や所定の階調(例えば黒階調や中間調)に応じた階調電位X[n]を供給することも可能である。
【0050】
(3)前述の各形態では、各表示期間Pの準備期間Sにおいて走査線32を2本単位(第1組毎)で選択して各画素PIXに階調電位X[n]を供給したが、準備期間Sにて同時に選択される走査線32の本数(以下「同時選択数」という)は適宜に変更される。具体的には、準備期間S内での同時選択数を、単位期間U1の各選択期間Hでの走査線32の同時選択数と相違させることも可能である。例えば、準備期間S内で3本以上を単位として走査線32を選択期間H毎に選択する構成や、準備期間S内で全部(M本)の走査線32を一斉に選択する構成も採用され得る。すなわち、各表示期間P内の準備期間Sでの動作は、所定階調G0に対応する階調電位X[n]をK行単位(Kは2以上かつM以下の自然数)で各画素PIXに供給する動作として包括される。第1実施形態や第2実施形態は、同時選択数Kを2に設定した形態に相当する。
【0051】
ただし、各選択期間Hの時間長を準備期間Sと単位期間U1とで共通させた構成を前提とすると、準備期間S内の同時選択数と単位期間U1内の同時選択数とを相違させた場合には、準備期間Sの時間長と単位期間U1の時間長とを相違させる必要がある。準備期間S内の同時選択数と単位期間U1内の同時選択数とが相等しい第1実施形態では、準備期間Sの時間長と単位期間U1の時間長(さらには単位期間U2や単位期間UEの時間長)とが一致するから、各表示期間Pでの駆動回路40の動作(表示制御回路142による駆動回路40の制御処理)を簡素化することが可能である。
【0052】
また、例えば準備期間SにてM本の走査線32を同時に選択して全部の画素PIXに一斉に所定階調G0の階調電位X[n]を供給する構成では、各画素PIXの表示階調が準備期間Sにて所定階調G0に設定されてから書込期間W内で表示画像の指定階調に変更されるまでの時間長が行毎に相違する(第1行から第M行に近付くほど長い)から、第1行から第M行に近付くほど階調が低下するというy方向の階調斑が表示画像に発生する可能性がある。前述の各形態のように準備期間Sにて走査線32を2本単位で選択する構成によれば、各画素PIXが準備期間Sにて所定階調G0に設定されてから書込期間Wにて指定階調に変更されるまでの時間長がM行にわたって均一化されるから、前述のy方向の階調斑を防止できるという利点がある。
【0053】
(4)書込期間W(単位期間U1)での走査線32の同時選択数は2本に限定されない。例えば相互に隣合う3本を単位としてM行の走査線32を第1組に区分した場合、図6に示すように、表示期間Pの書込期間W内に3個の単位期間U1〜U3が設定される。単位期間U1では、M行の走査線32が第1組単位(3本単位)で順次に選択されるとともに選択状態の第1組の3本のうち第1番目の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位X[n]が各信号線34に供給される。単位期間U2では、各第1組の3本のうち第2番目の走査線32が順次に選択される(すなわち走査線32が2本おきに選択される)とともに選択状態の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位X[n]が各信号線34に供給される。単位期間U3では、各第1組の3本のうち第3番目の走査線32が順次に選択される(走査線32が2本おきに選択される)とともに選択状態の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位X[n]が各信号線34に供給される。
【0054】
以上の例示から理解されるように、単位期間U1で選択される第1組の走査線32の本数(同時選択数)をQ本と一般化した場合(Qは2以上かつM以下の自然数)、各表示期間Pの書込期間W内にQ個の単位期間U1〜UQが設定される。書込期間W内の第1番目の単位期間U1における駆動回路40の動作は、M本の走査線32をQ本ずつ区分した第1組を選択期間H毎に順次に選択し、各選択期間Hで選択される第1組のQ本の走査線32のうち第1番目の走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位X[n]を各信号線34に供給する動作として包括される。また、書込期間W内の第q番目(q=2〜Q)の単位期間Uqにおける駆動回路40の動作は、各第1組のQ本の走査線32のうち第q番目の走査線32を選択期間H毎に順次に選択し、各選択期間Hで選択される走査線32に対応する各画素PIXの指定階調に応じた階調電位X[n]を各信号線34に供給する動作として包括される。
【0055】
なお、図6では書込期間W内の単位期間UEを省略した場合を例示したが、第1組とは組合せが相違する第2組(相互に隣合うQ本の走査線32の集合)を順次に選択して各画素PIXに階調電位X[n]を供給する第1実施形態の単位期間UEや、各画素PIXに対する階調電位X[n]の供給を停止する第2実施形態の単位期間UEを、書込期間WのうちQ個の単位期間U1〜UQの経過後に設定することも可能である。
【0056】
(5)指定階調に応じた目標電圧を上回る過電圧を各画素PIXの液晶素子CLに印加するオーバードライブ(過電圧駆動)を駆動回路40が実行することも可能である。具体的には、各表示期間P(PR,PL)の単位期間U1にてオーバードライブが実行される。例えば図10のように表示画像が右眼用画像GRおよび左眼用画像GLの一方から他方に直接的に更新される構成のもとで各表示期間Pの単位期間U1にてオーバードライブを実行する場合、相前後する2個の表示画像を比較し、直前の表示画像と比較して表示階調を大きく変化させる必要がある画素PIXのみをオーバードライブの対象とする構成(以下「構成A」という)が想定される。しかし、構成Aでは、相前後する2個の表示画像を記憶する記憶回路(フレームメモリ)が必要である。第1実施形態や第2実施形態では、各表示期間P内の準備期間Sにおいて各画素PIXの表示階調が所定階調G0に制御されてから書込期間Wにて右眼用画像GRまたは左眼用画像GLに更新されるから、オーバードライブに際して相前後する2個の表示画像を比較する必要がない。したがって、第1実施形態や第2実施形態のもとで駆動回路40がオーバードライブを実行する構成では、各画素PIXのオーバードライブに必要な構成(フレームメモリ)が簡素化されるという利点がある。
【0057】
(6)前述の各形態では、右眼用表示期間PRのうち準備期間Sの終点にて右眼用シャッター22を閉状態から開状態に変化させたが、右眼用シャッター22を閉状態から開状態に変化させる時期は適宜に変更される。例えば、右眼用表示期間PRの準備期間Sの終点以前に右眼用シャッター22を開状態に変化させる構成や、右眼用表示期間PRの準備期間Sの終点以降に右眼用シャッター22を開状態に変化させる構成も採用され得る。同様に、右眼用シャッター22を開状態から閉状態に変化させる時期を、書込期間Wの終点以前に設定した構成や書込期間Wの終点以降に設定した構成も採用される。右眼用シャッター22を閉状態から開状態に制御する時期や開状態から閉状態に制御する時期は、準備期間Sにおける左眼用画像GLと所定階調G0との混在が観察者に知覚されることを許容する度合や、立体視用眼鏡20の応答特性と電気光学パネル12の応答特性との関係といった種々の要因を考慮して選定される。なお、以上の説明では右眼用シャッター22に言及したが、左眼用シャッター24の開閉の時期についても同様の事情が妥当する。
【0058】
以上の説明から理解されるように、右眼用シャッター22が開状態に維持される期間は、右眼用表示期間PRの書込期間Wの少なくとも一部を含む期間(直前の準備期間Sの末尾の一部や直後の準備期間Sの先頭を含むか否かは不問)として包括される。同様に、左眼用シャッター24が開状態に制御される期間は、左眼用表示期間PLの書込期間Wの少なくとも一部を含む期間(直前の準備期間Sの末尾の一部や直後の準備期間Sの先頭を含むか否かは不問)として包括される。また、右眼用シャッター22および左眼用シャッター24の双方が閉状態に制御される期間は、各表示期間P(PR,PL)のうち準備期間Sの少なくとも一部を含む期間(直前の書込期間Wの末尾の一部や直後の書込期間Wの先頭の一部を含むか否かは不問)として包括される。
【0059】
(7)所定階調G0は黒階調(最低階調)に限定されない。例えば、中間調や白階調(最高階調)を所定階調G0として選定することも可能である。ただし、高階調側の階調(中間調や白階調)を所定階調G0とした場合、表示画像の黒階調が明るい階調に知覚され、観察者が認識する表示画像のコントラストが低下する可能性がある。したがって、低階調側の階調(典型的には黒階調)が所定階調G0として好適である。
【0060】
(8)電気光学素子は液晶素子CLに限定されない。例えば、電気泳動素子を電気光学素子として利用することも可能である。すなわち、電位光学素子は、電気的な作用(例えば電圧の印加)に応じて光学的な特性(例えば透過率)が変化する表示素子として包括される。
【0061】
<応用例>
以上の各形態に例示した電気光学装置10は、各種の電子機器に利用され得る。図7から図9には、電気光学装置10を採用した電子機器の具体的な形態が例示されている。
【0062】
図7は、電気光学装置10を適用した投射型表示装置(3板式のプロジェクター)4000の模式図である。投射型表示装置4000は、相異なる表示色(赤色,緑色,青色)に対応する3個の電気光学装置10(10R,10G,10B)を含んで構成される。照明光学系4001は、照明装置(光源)4002からの出射光のうち赤色成分rを電気光学装置10Rに供給し、緑色成分gを電気光学装置10Gに供給し、青色成分bを電気光学装置10Bに供給する。各電気光学装置10は、照明光学系4001から供給される各単色光を表示画像に応じて変調する光変調器(ライトバルブ)として機能する。投射光学系4003は、各電気光学装置10からの出射光を合成して投射面4004に投射する。観察者は、投射面4004に投射された立体視画像を立体視用眼鏡20(図7では図示略)で視認する。
【0063】
図8は、電気光学装置10を採用した可搬型のパーソナルコンピューターの斜視図である。パーソナルコンピューター2000は、各種の画像を表示する電気光学装置10と、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。
【0064】
図9は、電気光学装置10を適用した携帯電話機の斜視図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する電気光学装置10とを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置10に表示される画面がスクロールされる。
【0065】
なお、本発明に係る電気光学装置が適用される電子機器としては、図7から図9に例示した機器のほか、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants),デジタルスチルカメラ,テレビ,ビデオカメラ,カーナビゲーション装置,車載用の表示器(インパネ),電子手帳,電子ペーパー,電卓,ワードプロセッサ,ワークステーション,テレビ電話,POS端末,プリンター,スキャナー,複写機,ビデオプレーヤー,タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【符号の説明】
【0066】
100……立体視表示装置、10……電気光学装置、12……電気光学パネル、14……制御回路、142……表示制御回路、144……眼鏡制御回路、20……立体視用眼鏡、22……右眼用シャッター、24……左眼用シャッター、30……画素部、PIX……画素、CL……液晶素子、SW……選択スイッチ、32……走査線、34……信号線、40……駆動回路、42……走査線駆動回路、44……信号線駆動回路。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
右眼用画像と左眼用画像とを表示期間毎に交互に表示する電気光学装置であって、
複数行の走査線と複数列の信号線との各交差に対応して配置された複数の画素と、
前記各表示期間内の準備期間において所定階調に対応する階調電位をK行単位(Kは2以上の自然数)で各画素に供給し、前記各表示期間のうち前記準備期間の経過後の書込期間において前記各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各画素に供給する駆動回路と
を具備する電気光学装置。
【請求項2】
前記複数行の走査線は、交互に配列された第1走査線と第2走査線とを含み、
前記駆動回路は、
前記各表示期間内の前記準備期間において前記複数の走査線をK行単位で選択期間毎に順次に選択し、前記各表示期間のうち前記書込期間内の第1単位期間では、前記複数行の走査線を相互に隣合う2行ずつ区分した第1組を選択期間毎に順次に選択し、前記書込期間のうち前記第1単位期間の経過後の第2単位期間では、前記第2走査線を選択期間毎に順次に選択する走査線駆動回路と、
前記各表示期間の準備期間内の選択期間毎に、前記所定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給し、前記各表示期間のうち前記書込期間内の前記第1単位期間の選択期間毎に、当該選択期間で選択される第1組のうち第1走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給し、前記第2単位期間の選択期間毎に、当該選択期間で選択される前記第2走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給する信号線駆動回路とを含む
請求項1の電気光学装置。
【請求項3】
前記走査線駆動回路は、前記各表示期間の前記書込期間のうち前記第2単位期間の経過後の第3単位期間において、前記第1組から1本ずらして前記複数行の走査線を相互に隣合う2行ずつ区分した第2組を選択期間毎に順次に選択し、
前記信号線駆動回路は、前記第3単位期間の選択期間毎に、当該選択期間で選択される第2組のうち前記第2走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給する
請求項2の電気光学装置。
【請求項4】
前記走査線駆動回路は、前記各表示期間の前記書込期間のうち前記第2単位期間の経過後の第3単位期間において前記各走査線の選択を停止し、
前記信号線駆動回路は、前記第3単位期間において前記各信号線に対する階調電位の供給を停止する
請求項2の電気光学装置。
【請求項5】
前記駆動回路は、
前記各表示期間内の前記準備期間において前記複数の走査線をK行単位で選択期間毎に順次に選択し、前記各表示期間の前記書込期間内のQ個(Qは2以上の自然数)の単位期間のうち第1番目の単位期間では、前記複数行の走査線を相互に隣合うQ行ずつ区分した第1組を選択期間毎に順次に選択し、前記書込期間のうち第q番目(q=2〜Q)の各単位期間では、前記各第1組の第q番目の走査線を選択期間毎に順次に選択する走査線駆動回路と、
前記各表示期間の準備期間内の選択期間毎に、前記所定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給し、前記各表示期間のうち前記書込期間内の第1番目の単位期間の選択期間毎に、当該選択期間で選択される第1組のうち第1番目の走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給し、前記第q番目の単位期間の選択期間毎に、当該選択期間で選択される前記走査線に対応する各画素の指定階調に応じた階調電位を前記各信号線に供給する信号線駆動回路とを含む
請求項1の電気光学装置。
【請求項6】
右眼用シャッターと左眼用シャッターとを含む立体視用眼鏡で立体視される右眼用画像および左眼用画像を表示する電気光学装置であって、
前記各表示期間の前記準備期間の少なくとも一部を含む期間にて前記右眼用シャッターおよび前記左眼用シャッターの双方を閉状態に制御し、前記右眼用画像の表示期間内の前記書込期間の少なくとも一部を含む期間にて前記右眼用シャッターを開状態に制御するとともに前記左眼用シャッターを閉状態に制御し、前記左眼用画像の表示期間内の前記書込期間の少なくとも一部を含む期間にて前記左眼用シャッターを開状態に制御するとともに前記右眼用シャッターを閉状態に制御する眼鏡制御回路
を具備する請求項1から請求項5の何れかの電気光学装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかの電気光学装置を具備する電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−47712(P2013−47712A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185669(P2011−185669)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】