説明

電気光学装置の製造方法、透明電極の形成方法、電気光学装置および電気光学装置用基板

【課題】透明電極の形成において異物が付着した場合であっても、良好な表示品質を可能にする電気光学装置の製造方法等を提供することである。
【解決手段】電気光学装置に設けられた透明電極を複数回の透明導電膜成膜工程ST10,ST20によって形成し、複数回の透明導電膜成膜工程ST10,ST20の各工程間の1以上において洗浄工程ST15を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の製造方法、透明電極の形成方法、電気光学装置および電気光学装置用基板に係る。
【背景技術】
【0002】
例えばTN(Twisted Nematic)方式の液晶表示装置では素子基板および対向基板のそれぞれに透明電極が設けられている。一般に透明電極はITO(Indium Tin Oxide)で構成されスパッタ法で形成される。スパッタ法によってITO電極を形成する場合、基板をセットした真空チャンバ内にArとH2Oとの混合ガスを流し、DC放電によってプラズマを発生させる。このプラズマでITOターゲット表面に衝撃を与えることによってターゲットからITO粒子が飛び出し、基板上に堆積してITO膜が形成される。
【0003】
従来の形成方法では1回の成膜で所定膜厚のITO膜すなわち透明電極を形成している。
【0004】
【特許文献1】特開2001−53308号公報
【特許文献2】特開2003−318594号公報
【特許文献3】特開2004−6171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スパッタ法ではターゲット表面にノジュールと呼ばれる突起物が形成される場合がある。ノジュールは例えば次のようにして形成される。ターゲット表面にITO粒子が付着すると、この付着部分ではITO粒子が付着していない部分に比べてスパッタレートが低くなる。このため、ターゲットのスパッタが進むにつれてターゲット表面の浸食に差が生じ、これにより突起部すなわちノジュールが形成される。ノジュールの部分は異常放電(アーキング)が生じやすく、この異常放電によってノジュールが飛び散り新しいノジュール、大きいノジュール等の原因になる。
【0006】
上記の飛び散ったノジュールは基板に付着する場合がある。また、基板とターゲットとの間に設けられるマスクに堆積したITO膜が剥離して基板に付着する場合がある。これらの異物がITO膜中に混入しパターン加工のためのエッチング時にITO膜とともに剥がれると、透明電極において局所的な穴、欠け、剥がれ等の形状不具合が発生する。透明電極の穴等の部分では液晶分子を所望の配向状態に制御できない、すなわち液晶によって入射光を所望の通りに偏光できないので、表示品質が低下してしまう(図7参照)。
【0007】
また、異物が剥がれ落ちずに透明電極中に残った場合、異物が存在する部分では、セルギャップが周囲と異なるので、所望の旋光性が得られず表示品質が低下してしまう。
【0008】
なお、ここでは液晶表示装置の透明電極をスパッタ法で形成する場合を例示したが、他の電気光学装置および他の形成方法の場合においても同様の問題が生じうると考えられる。
【0009】
本発明の目的は、透明電極の形成において異物が付着した場合であっても、良好な表示品質を可能にする電気光学装置の製造方法、透明電極の形成方法、電気光学装置および電気光学装置用基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電気光学装置の製造方法は、透明電極を有する電気光学装置の製造方法であって、前記透明電極を複数回の透明導電膜成膜工程によって形成し、前記複数回の透明導電膜成膜工程の各工程間の1以上において洗浄工程を実施することを特徴とする。上記構成によれば、透明電極の形成において異物が付着した場合であっても、当該異物を洗浄工程によって除去することができる。また、複数回の透明導電膜成膜工程によって透明電極を形成するので、異物により透明電極の一部の層に形状不具合が生じた場合であっても、当該形状不具合を他の層によって覆うことができる。したがって、当該透明電極による表示の品質が良好な電気光学装置を製造することができる。また、歩留まりを向上させることができる。
【0011】
前記洗浄工程を少なくとも1回目の透明導電膜成膜工程後に実施することが好ましい。上記構成によれば、透明電極の形成前に付着した異物であっても除去可能である。このため、透明電極の形成前の洗浄工程を簡略化または省略することができる。
【0012】
前記複数回の透明導電膜成膜工程の各工程間の全てにおいて洗浄工程を実施することが好ましい。上記構成によれば、より確実に異物を除去することができる。また、透明電極中の一部の層に異物による形状不具合が生じた場合であっても、上記の異物除去の確実化に伴って、透明電極の平坦化を図ることができる。これにより、表示品質をさらに良好にすることができる。
【0013】
前記洗浄工程を流水洗浄と超音波洗浄との少なくとも一方を利用して実施することが好ましい。上記構成によれば、効果的な異物除去が可能になる。
【0014】
前記複数回の透明導電膜成膜工程のうちの1以上をスパッタ法と蒸着法との少なくとも一方を利用して実施することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る透明電極の形成方法は、透明電極の形成方法であって、前記透明電極を複数回の透明導電膜成膜工程によって形成し、前記複数回の透明導電膜成膜工程の各工程間の1以上において洗浄工程を実施することを特徴とする。上記構成によれば、透明電極の形成において異物が付着した場合であっても、当該異物を洗浄工程によって除去することができる。また、複数回の透明導電膜成膜工程によって透明電極を形成するので、異物により透明電極の一部の層に形状不具合が生じた場合であっても、当該形状不具合を他の層によって覆うことができる。したがって、当該透明電極による表示の品質が良好な電気光学装置を製造することができる。また、歩留まりを向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る電気光学装置は、透明電極を備えた電気光学装置であって、前記透明電極は透明導電膜が積層されて構成されており、一部の透明導電膜に形成された形状不具合が他の透明導電膜によって覆われていることを特徴とする。上記構成によれば、一部の透明導電膜の形状不具合部分に透明電極を貫通する穴等が形成されるのが回避されている。したがって、当該透明電極による表示の品質が良好な電気光学装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明に係る電気光学装置は、透明電極を備えた電気光学装置であって、前記透明電極は、複数の層が積層された第1の部分と、前記第1の部分よりも積層数が少ないが前記第1の部分と共通の層を有する第2の部分と、を含むことを特徴とする。上記構成によれば、第2の部分に透明電極を貫通する穴等が形成されるのが回避されている。したがって、当該透明電極による表示の品質が良好な電気光学装置を提供することができる。
【0018】
また、本発明に係る電気光学装置用基板は、透明電極を備えた電気光学装置用基板であって、前記透明電極は透明導電膜が積層されて構成されており、一部の透明導電膜に形成された形状不具合が他の導電膜によって覆われていることを特徴とする。上記構成によれば、一部の透明導電膜の形状不具合部分に透明電極を貫通する穴等が形成されるのが回避されている。したがって、当該透明電極による表示の品質を良好にしうる電気光学装置用基板を提供することができる。
【0019】
また、本発明に係る電気光学装置用基板は、透明電極を備えた電気光学装置用基板であって、前記透明電極は、複数の層が積層された第1の部分と、前記第1の部分よりも積層数が少ないが前記第1の部分と共通の層を有する第2の部分と、を含むことを特徴とする。上記構成によれば、第2の部分に透明電極を貫通する穴等が形成されるのが回避されている。したがって、当該透明電極による表示の品質を良好にしうる電気光学装置用基板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。ここでは、本発明の実施の形態に係る電気光学装置の一例として液晶表示装置を例示する。なお、当該液晶表示装置は透過型、反射型または半透過型のいずれであってもよい。
【0021】
図1に本発明の実施の形態に係る液晶表示装置50を説明する断面図を示す。図1には1画素分の構成を簡略化して例示している。なお、以下に説明する液晶表示装置50の構成はあくまでも例示であり、例えば他の各種要素を追加することも可能である。
【0022】
液晶表示装置50は、対向配置された一対の基板110,210と、当該一対の基板110,210の間に挟持された液晶層300とを含んでいる。基板110,210は例えばガラス板等の透明基板で構成可能であるが、反射型の場合は基板110,210の一方は透明基板でなくてもよい。基板110および基板210は以下に例示する種々の要素が設けられて、電気光学装置用基板としての素子基板100および対向基板200をそれぞれ構成する。このため、液晶層300は素子基板100と対向基板200とで挟持されているとも捉えられる。
【0023】
素子基板100は、上記基板110の他に、基板110の液晶層300側に、絶縁層112と、画素電極114とを含んでいる。
【0024】
絶縁層112は、基板110上に配置されており、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、アクリル等の樹脂等で構成可能である。図1では絶縁層112を1層で例示しているが、多層構造にすることも可能である。絶縁層112内には例えば画素トランジスタや各種配線等が埋設されている。
【0025】
画素電極114は、絶縁層112上に配置されており、例えばITO、IZO(Indium Zinc Oxide)等の透明導電材料で構成可能である。画素電極114は各画素に設けられている。画素電極114の厚さは例えば1300〜1600オングストローム(130〜160nm)である。
【0026】
対向基板200は、上記基板210の他に、基板210の液晶層300側に、遮光膜212と、カラーフィルタ214と、オーバーコート層216と、共通電極218とを含んでいる。
【0027】
遮光膜212は、基板210上に配置されており、各画素に開口部を有している。当該各開口部には、その画素の表示色に応じた色相のカラーフィルタ214が配置されている。カラーフィルタ214は画素電極114に対向する位置に配置されている。なお、液晶表示装置50が例えば白黒表示用の場合、カラーフィルタ214は省略可能である。
【0028】
オーバーコート層216は、遮光膜212上およびカラーフィルタ214上に配置されている。オーバーコート層216は例えばアクリル樹脂等の透明絶縁材料で構成可能である。オーバーコート層216は平坦化膜を兼ねることもできる。
【0029】
共通電極218は、オーバーコート層216上に配置されており、例えばITO、IZO等の透明導電材料で構成可能である。共通電極218は各画素に設けられている。図1では隣接する画素の共通電極218が連結した場合を例示しており、この場合、複数の画素にまたがった透明電極のうちで各画素内の部分が、その画素の共通電極218を構成している。共通電極218の厚さは例えば1300〜1600オングストローム(130〜160nm)である。
【0030】
画素電極114および共通電極218には不図示の配線、画素トランジスタ等によって所定の電位がそれぞれ印加される。両電極114,218間の電界によって液晶層300中の液晶分子の配向状態が制御される。すなわち液晶層300の旋光性が制御される。これにより、画素の表示状態が制御される。かかる点に鑑みれば電極114,218をそれぞれ表示電極と呼ぶこともできる。
【0031】
次に、画素電極114と共通電極218との一方または両方に適用可能な透明電極70を例示する。図2および図3〜図5に透明電極70の形成方法の一例を説明するフローチャートおよび断面図を示す。なお、液晶表示装置50のその他の要素は公知の各種形成方法を利用して形成可能である。
【0032】
透明電極70は、図2のフローチャートおよび図5の断面図から分かるように、2回の透明導電膜成膜工程ST10,ST20によって透明導電膜を2層積層して形成される。さらに、2回の成膜工程ST10,ST20の工程間において、基板すなわち透明導電膜の洗浄工程ST15を実施する。2層目の成膜工程ST20の後に、透明導電膜71,72の積層膜を所定の形状にパターニングする(パターニング工程ST30)。
【0033】
透明導電膜71,72の成膜工程ST10,ST20では、例えばスパッタ法を利用することが可能である。
【0034】
ここで、図6にスパッタ法を説明する模式図を示す。スパッタ法では、真空チャンバ502内に基板500と透明導電膜の材料ターゲット504とが向かい合わせにセットされる。ここで、基板500は、透明電極70を形成する対象となる基板であり、例えば基板110上に絶縁層112まで形成された状態の素子基板100、基板210上にオーバーコート層216まで形成された状態の対向基板200等が相当する。図6には基板500とターゲット504との間にマスク506を設けた場合を例示している。チャンバ502内にArとH2Oとの混合ガスを流し例えばDC放電によってプラズマを発生させる。なお、混合ガスの流量等は透明導電膜が所定の膜特性で形成されるように設定される。プラズマ中のArイオン508がターゲット504をスパッタし、飛び出した材料粒子510が基板500上に堆積することによって透明導電膜が形成される。
【0035】
図5では成膜工程ST10,ST20による透明導電膜71,72が同じ膜厚の場合を例示しているが、異なる膜厚で透明導電膜71,72を成膜してもよい。また、1回に成膜する膜厚は、薄い方が、洗浄時に容易に異物を除去できるが、成膜の誤差を考慮して、確実に成膜できる膜厚、例えば、成膜の誤差が100オングストロームであれば、300オングストローム程度に形成すればよい。また、透明導電膜71,72は同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0036】
洗浄工程ST15では、流水洗浄、超音波洗浄、または、流水洗浄と超音波洗浄との組み合わせを利用する。この際、流水洗浄や超音波洗浄で用いる洗浄液には、形成された透明導電膜に影響が少ない洗浄液を用いるのが好ましく、例えばITO膜に利用可能な洗浄液として例えばイソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール、希フッ酸、純水等が挙げられる。なお、洗浄方法としては、上記した純水等の流体を用いる湿式洗浄に加え、UVオゾン洗浄等の光洗浄技術を用いた乾式洗浄を組み合わせて用いることも可能である。
【0037】
パターニング工程ST30では、例えばレジスト膜の形成、露光、現像、エッチング、レジスト膜の剥離等の工程が実施される。なお、エッチング工程はウェットエッチングとドライエッチングとのいずれを利用してもよい。また、他の方法、例えばメタルマスクを用いたスパッタ法によってパターニング工程ST30を実施してもよい。なお、パターニング工程ST30を必要としない場合もある。例えば各画素の共通電極218を全画素にまたがる透明電極で構成する場合、当該透明電極の形成領域は成膜工程ST10,ST20でのマスク506によって画定することも可能である。
【0038】
図2に例示の形成方法によれば、例えば図3に示すように1層目の透明導電膜71の成膜工程ST10において下地層68に異物80が付着した場合であっても、次の洗浄工程ST15によって当該異物80を除去することができる(図4参照)。なお、下地層68は、透明電極70の直下の層であり、例えば素子基板100の絶縁層112、対向基板200のオーバーコート層216等が相当する(図1参照)。透明導電膜71は、1回の成膜工程によって所定膜厚に形成された透明電極に比べて、薄いので、洗浄工程ST15によって容易に異物80を除去することができる。また、上記例示の流水洗浄、超音波洗浄等によれば、流体(洗浄液)が異物80に対して物理的に作用するので、単に静水に浸漬するだけの洗浄方法に比べて効果的である。
【0039】
異物80が除去されると、その部分に透明導電膜71の形状不具合が生じる場合がある。この形状不具合を図4では穴78として例示している。しかし、図2に例示の形成方法によれば、1層目の透明導電膜71の穴78は成膜工程ST20での2層目の透明導電膜72によって覆われる(図5参照)。換言すれば穴78がリペアされる。
【0040】
この場合、完成状態の透明電極70は、図5に示すように、透明導電膜71,72が積層された第1の部分70Aと、透明導電膜71を有さず透明導電膜72で構成される第2の部分70Bとを含んでいる。第2の部分70Bは、1層目の透明導電膜71の穴78の箇所に位置する部分であり、このため第1の部分70Aよりも積層数が少ない。しかし、第2の部分70Bは第1の部分70Aと共通の透明導電膜72の層を有しているので、1回の成膜工程によって所定膜厚に形成される透明電極とは異なり、穴78が、完成状態の透明電極70を貫通する局所的な穴、欠け、剥がれ等を引き起こすのが回避されている。
【0041】
なお、一般的に、透明導電膜の積層構造は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)等の透過型の顕微鏡によって観察することができる。
【0042】
透明電極70によれば、1層目の透明導電膜71が穴78を有している場合であっても、2層目の透明導電膜72によって、液晶層300への印加電界すなわち液晶層300における旋光性を適切に制御することができる。したがって、透明電極70による表示を品質良好にすることができ、透明電極70を適用した素子基板100、対向基板200および液晶表示装置50によれば良好な表示品質が得られる。また、透明電極70の上記形成方法ならびに当該形成方法を含んだ素子基板100、対向基板200および液晶表示装置50の製造方法によれば、歩留まりを向上させることができる。
【0043】
ここで、異物80は例えばターゲット504から飛び散ったノジュール、マスク506から剥離した異物である場合、ターゲット504およびマスク506を定期的に清掃することによって異物80の個数を減らせるかもしれない。しかし、定期的な清掃によっても異物80の発生を完全に抑制することは難しいし、異物80の発生源はターゲット504およびマスク506だけとは限らない。かかる点に鑑みれば、上記の透明電極70の形成方法は効果的である。
【0044】
また、透明電極70が厚いほど、または画素サイズが小さくなり高精細になるほど、異物80による表示品質の低下は大きくなる。このため、画素電極114と共通電極218との一方または両方が比較的厚い場合、液晶表示装置50が高精細タイプである場合等において、上記の透明電極70の形成方法は有用である。
【0045】
上記では各成膜工程ST10,ST20でスパッタ法を利用する場合を例示したが、その他の成膜方法、例えば蒸着法を利用した場合においても異物80の付着は起こりうる。このため、成膜工程ST10,ST20において蒸着法等の他の成膜方法を利用する場合にも上記の透明電極70の形成方法は有用である。
【0046】
また、2層目の成膜工程ST20後、すなわち最後の成膜工程後に洗浄工程を追加してもよく、これによれば最後の成膜工程で付着した異物80を除去することができる。当該洗浄工程は例えばパターニング工程ST30における洗浄工程と兼ねることが可能である。換言すれば最後の成膜工程とパターニング工程ST30との間で洗浄工程を実施しない場合であっても、パターニング工程ST30での洗浄工程、例えばレジスト膜の形成前、剥離後等の洗浄工程によって、最後の成膜工程で付着した異物80を除去することは可能である。洗浄工程の兼用によれば、製造時間を短縮することができる。
【0047】
また、上記では2層構造の透明電極70を例示したが、透明電極70を3層以上で構成することも可能である。この場合、複数の成膜工程の各工程間の1以上において洗浄工程を実施することによって上記の各種効果が得られる。
【0048】
ここで、各工程間の全てにおいて、すなわち毎回の成膜工程後に洗浄工程を実施することによって、より確実に異物を除去することができる。異物の付着は上記例示の1層目のみとは限らないからである。また、例えば2層おきに洗浄工程を実施する場合に比べて、異物除去に伴う形状不具合(図4の穴78を参照)を小さく抑えることができる。このため、透明電極70の平坦化を図ることができる。平坦な透明電極70によれば、透明電極70全体において電界の均質化を図ることができるので、表示品質をさらに良好にすることができる。
【0049】
また、各成膜工程間の一部においてのみ洗浄工程を実施する場合には、上記のように毎回、洗浄工程を実施する場合に比べて、製造時間を短縮することができる。このとき、洗浄工程は、例えば等間隔で(例えば数回の成膜工程終了ごとに)実施してもよいし、例えば全成膜工程を前半と後半に分け前後半で実施回数を異ならせて(例えば前半に多く)実施してもよい。
【0050】
また、洗浄工程を少なくとも1回目の成膜工程ST10後、換言すれば1回目の成膜工程ST10後を含んで実施する場合には、透明電極70の形成前に付着した異物80であっても除去可能である。このため、透明電極70の形成前の洗浄工程を簡略化または省略することができる。
【0051】
なお、3層以上の透明電極70においても、各層の透明導電膜の材質は同じであってもよいし、一部または全部が異なっていてもよい。各透明導電膜の膜厚についても同様である。また、各洗浄工程での条件(例えば洗浄液、洗浄時間等)は同じであってもよいし、一部または全部が異なっていてもよい。
【0052】
上記では画素電極114および共通電極218が基板110および基板210にそれぞれ設けられた構成を例示したが、かかる構成は例えばTN方式等において採用される。これに対して、例えばFFS(Fringe Field Switching)方式やIPS(In-Plane Switching)方式等では画素電極114と共通電極218との両方が一対の基板110,210の一方に設けられる。かかる構成の液晶表示装置においても、画素電極114、共通電極218等に透明電極70を適用することによって、上記の各種効果を得ることができる。
【0053】
また、上記では電気光学装置として液晶表示装置50を例示したが、プラズマディスプレイ装置等の他の電気光学装置にも透明電極70を適用可能であり、上記の各種効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態に係る液晶表示装置を説明する断面図である。
【図2】実施の形態に係る透明電極の形成方法を説明するフローチャートである。
【図3】実施の形態に係る透明電極の形成方法を説明する断面図である。
【図4】実施の形態に係る透明電極の形成方法を説明する断面図である。
【図5】実施の形態に係る透明電極の形成方法を説明する断面図である。
【図6】スパッタ法を説明する模式図である。
【図7】従来の液晶表示装置を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0055】
50 液晶表示装置(電気光学装置)、70 透明電極、71,72 透明導電膜、70A 第1の部分、70B 第2の部分、100 素子基板(電気光学装置用基板)、114 画素電極(透明電極)、200 対向基板(電気光学装置用基板)、218 共通電極(透明電極)、ST10,ST20 透明導電膜成膜工程、ST15 洗浄工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極を有する電気光学装置の製造方法であって、
前記透明電極を複数回の透明導電膜成膜工程によって形成し、
前記複数回の透明導電膜成膜工程の各工程間の1以上において洗浄工程を実施することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記洗浄工程を少なくとも1回目の透明導電膜成膜工程後に実施することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記複数回の透明導電膜成膜工程の各工程間の全てにおいて洗浄工程を実施することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記洗浄工程を流水洗浄と超音波洗浄との少なくとも一方を利用して実施することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電気光学装置の製造方法であって、
前記複数回の透明導電膜成膜工程のうちの1以上をスパッタ法と蒸着法との少なくとも一方を利用して実施することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
透明電極の形成方法であって、
前記透明電極を複数回の透明導電膜成膜工程によって形成し、
前記複数回の透明導電膜成膜工程の各工程間の1以上において洗浄工程を実施することを特徴とする透明電極の形成方法。
【請求項7】
透明電極を備えた電気光学装置であって、
前記透明電極は透明導電膜が積層されて構成されており、一部の透明導電膜に形成された形状不具合が他の透明導電膜によって覆われていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項8】
透明電極を備えた電気光学装置であって、
前記透明電極は、
複数の層が積層された第1の部分と、
前記第1の部分よりも積層数が少ないが前記第1の部分と共通の層を有する第2の部分と、
を含むことを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
透明電極を備えた電気光学装置用基板であって、
前記透明電極は透明導電膜が積層されて構成されており、一部の透明導電膜に形成された形状不具合が他の導電膜によって覆われていることを特徴とする電気光学装置用基板。
【請求項10】
透明電極を備えた電気光学装置用基板であって、
前記透明電極は、
複数の層が積層された第1の部分と、
前記第1の部分よりも積層数が少ないが前記第1の部分と共通の層を有する第2の部分と、
を含むことを特徴とする電気光学装置用基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−299198(P2008−299198A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146984(P2007−146984)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】