説明

電気加熱加圧成形型及び射出成形型

【課題】この発明は、成形型の表面を局部的に加熱して、ワークを加熱し、軟化して変形加工を容易にし、又は射出成形型の表面を加熱して加圧加工を容易にし、又は合成樹脂の流動を円滑にすることを目的としたものである。
【解決手段】この発明は、織布又はシート材を加圧成形する成形型において、上型又は下型の一方又は両方の表面に、電熱加熱層を設けた電気加熱加圧成形型、又は溶融合成樹脂を成形固化する射出成形型において、上型又は下型の一方又は両方の表面又は表面に近接して、面状の電熱加熱層を設けると共に、溶融合成樹脂の射出手段及び前記上型又は下型の一方又は両方へ冷却手段を設けたことを特徴とする射出成形型により、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形型の表面の一部又は全部に電気発熱層を設けて、成形型の表面の一部又は全部を瞬間加熱することにより、被成形物を円滑かつ正確に型成形することを目的とした電気加熱加圧成形型又は、成形型の表面の一部又は全部に電気発熱層を設けると共に、前記成形型の肉厚内に冷却手段を設けて、型内へ射出した素材を加熱し、冷却することを目的とした射出成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来気化器の器壁上又は底部に電熱層を設ける技術は知られている。またカーボン粒(又はカーボン繊維)を発熱層とする定温方式の電熱シートが提案されている。
【0003】
次に加熱加圧成形型として、型本体の肉厚内へ電熱ヒーターを埋設する技術が知られている。
【特許文献1】実用新案登録第3124014号
【特許文献2】特許第3216911号
【特許文献3】特開2000−823
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来プラスチック容器その他のプラスチック製品を成形する時に用いる成形型は、電熱層を型内へ埋設していたので(特許文献3)、型を加熱する場合には、全型が同温度に加熱され、無駄な熱量を消費するのみならず、瞬間加熱(例えば2秒〜5秒)により型の表面を所定の温度とし、溶融プラスチック注入成形後瞬時に冷却することは不可能であった。そこで加工速度の高速化ができない問題点があった。
【0005】
またフィルムなどを加工する為の加工型は、加工度の大きい部分のみを加熱すれば目的を達成することができるが、型内へ電熱層を埋設すると、結果的に型全体を加熱することになり、部分加熱、部分成形加工が困難になる問題点があった。
【0006】
また射出成形型においては、溶融合成樹脂を射出して、合成樹脂容器又は成形シートなどを高速成形する技術であるが、前記射出成形型が冷却していると、前記溶融合成樹脂が流動中に冷却する為に流動性が悪くなるので、高圧の加圧流動を必要とするのみならず、均質製品の製造がむつかしくなる問題点があった。また冷却しないと固化が遅くなって成形効率を損するおそれがあった。そこで瞬時に加熱し、速やかに冷却する工程を繰り返すことは至難とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、成形型の表面へ電熱加熱層を設けることにより、該部のみを瞬時に加熱して、前記従来の加圧成形型の問題点を解決したのである。
【0008】
即ちこの発明は、織布又はシート材を加圧成形する成形型において、上型又は下型の一方又は両方の表面又は表面に近接して、電熱加熱層を設けたことを特徴とする電気加熱加圧成形型であり、電熱加熱層は成形型の被加工材の当接面の全面に均等密度又は不均等密度に設けるものであり、電熱加熱層は、成形型の曲面に設けるものである。
【0009】
また他の発明は、電熱加熱層は、金属型の表面に絶縁層を設け、その上に電熱層を設け、その上に絶縁層を設けたものであり、電熱加熱層は絶縁シートでカーボン粒電熱層を挟着したものであり、成形型の表面へ、耐熱性の絶縁フィルムを貼着し、該絶縁フィルムの上面へカーボン粒又はカーボン繊維によるカーボン電熱層を設け、該カーボン電熱層の上面へ耐熱性の絶縁フィルムを被着したものであり、成形型の表面へ、プラズマ溶射によりアルミナ絶縁層、ニッケル−クロム電熱層及びアルミナ絶縁層を順次層着したものである。
【0010】
また他の発明は、成形型の表面又は表面に近接して電熱加熱層を設けると共に、型の冷却手段を設けることにより、前記従来の問題点を解決したのである。要するに、前記加熱層は成形型の構造上、射出された溶融合成樹脂が冷却し易い部位を加温し、前記溶融合成樹脂のスムースな流動を確保するものである。
【0011】
前記において、電熱層の表面に十分の強度を有する層を設ける場合(例えば金属又はアルミナ層が表面の場合)には、型の表面に設けることができるが、電熱層の表面が絶縁フィルムの場合には強度がないので、金属薄板などの保護層を設ける必要がある。そこで表面、又は表面に近接して電熱加熱層を設けるようにした。前記保護層は、溶融材料の流動、成型圧に耐えると共に、熱伝導の良好な材料が好ましい。
【0012】
また型の内壁面に微小凹凸部を設ける場合には(例えば製品の表面に微小凹凸部を設ける場合などは、型の内壁面に微小凹凸部を設ける)、保護層として表面被覆板が必要となり、電熱層は型の表面に近接して設けられたことになる。
【0013】
即ちこの発明は、溶融合成樹脂を成形固化する射出成形型において、上型又は下型の一方又は両方の表面又は表面に近接して、電熱加熱層を設けると共に、溶融合成樹脂の射出手段(公知の溶融合成樹脂をノズルから加圧流出させること)及び前記上型、下型の冷却手段を設けたことを特徴とする射出成形型であり、電熱加熱層は、型の表面に絶縁材を溶射してなる絶縁層と、電熱材を溶射してなる電熱加熱層と、絶縁材を溶射してなる絶縁層を順次層着して設けたものであり、電熱加熱層は、カーボン電熱層を絶縁層で挟着したものである。
【0014】
また他の発明は、電熱加熱層は、成形型に凹入部を設け(又は凹入部を設けることなく)、該凹入部の下から、セラミック材を塗布して絶縁層を設け、該絶縁層の上へカーボン粒を塗布することにより、電熱層を設け、該電熱層の上へセラミック材を塗布して絶縁層を設け、前記成形型の内面へ無電解メッキ層を設けて、型の内面を一連の平面としたことを特徴とする電気加熱成形型であり、冷却手段は冷却流体(例えば冷水)の流動パイプを敷設したものである。
【0015】
前記において、絶縁材(例えばセラミック材)カーボン粒を塗布するには、スプレー又は静電塗装によるものとする。前記絶縁材のスプレーに際してはシンナーを希釈剤とし、希釈率はスプレーで5〜15wt%、静電塗装で10〜50wt%とするが、絶縁材の粒度などにより異なる(カーボン粒の塗布は、絶縁材に順ずる)。
【0016】
前記塗布の標準膜厚は、20〜40μmであるが、材質及び目的により異なる。例えば発熱の為のカーボン層は、求める温度により異なる。従って塗装回数も1〜2回とする。前記諸元より、標準使用量は200g/m/回であるが、塗膜により前記使用量を前後する。特に発熱用のカーボン層の場合には、求める温度により大差を生じる。前記により塗装したならば、80〜160℃で5分〜15分間予備乾燥し、ついで200℃〜400℃で10分〜20分乾燥した後、無電解メッキを施す。
【0017】
前記カーボン層は0.5秒〜2秒以内に150℃〜200℃に加温される必要がある(型の稼働率の関係から、前記条件が好ましい)。
【0018】
次に他の発明は、溶融合成樹脂を成形固化する射出成形型において、上型又は下型の一方又は両方の表面又は表面に近接して、電熱加熱層と冷却手段とをセットした加熱・冷却ユニットを埋設したことを特徴とする射出成形型であり、加熱・冷却ユニットは、電熱層と冷却パイプとをセットしたものである。
【0019】
前記において、型の表面の電熱加熱層は瞬時(1秒以内位)に所定温度(例えば150℃)に昇温し、瞬時(例えば1秒以内)に冷却(合成樹脂の固化温度まで冷却)する。
【0020】
前記において、型本体は例えば水冷しているので瞬時に冷却することができる。一方加熱に際しても一種の面ヒーターであるから、瞬時に設定温度(例えば150℃)に加熱される。前記において、冷却は型全体を冷却する為に速度が遅くなるおそれがあったので、表面へ冷却パイプを敷設して、冷却を早くさせることもある。
【0021】
前記この発明の電熱加熱層は、例えば厚さ1〜2mm程度のきわめて薄層であるから、型面が湾曲していても、自由かつ正確に層着することができる。
【0022】
また成形型の表面のみ加熱するので、型面よりもむしろワーク側を加熱することになり、加熱、冷却共に素早い(例えば1秒以内)ことに特徴がある。
【0023】
また電熱層としてカーボン粒子を層着する場合には、カーボン粒子の密度の選定によって、自動定温用の電熱加熱成形型とすることもできる。またカーボン繊維による織成シートの場合には、電熱温度を調整することができる(例えば100℃〜300℃の間における設定温度を選定できる)。
【0024】
更には、プラズマ溶射によりアルミナ絶縁層により、ニッケル−クロム層を挟着した電熱加熱層とすれば、耐久性が大きく、長期の連続使用に耐えることができる。
【0025】
この発明の被成形素材は、例えば有機繊維又は無機繊維の織布又はフィルムであるから、適温加熱により、加工時間を短縮化できると共に、成形精度を向上させることができる。また射出成形型による成形素材は従来公知の合成樹脂を使用することができるが、型の加熱によって、流動性を確保することができるので、従来のような数百kg以上のような高圧は必要でなくなる。例えば100kg位の圧力で迅速に充填することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明は、織布又はシート材などのワークを加圧成形する成形型の上型又は下型又は上下両型の表面又は表面付近へ、電熱加熱層を設けたので、加工面を直接加熱し、瞬間加熱、瞬間冷却(0.5秒〜3秒間)ができる効果がある。
【0027】
また加工度の大きい面に高密度の電熱加熱層を設ければ、ワークの成形が合理的かつ効率よく成形できる効果がある。
【0028】
更に加熱成形によって、加工速度を早くする(例えば通常の2倍)ことができると共に、精度がよく、かつ仕上げが綺麗にできるなどの諸効果がある。
【0029】
また射出成形型においては、材料注入時に型を加温するので、材料の流れが良く、高圧にする必要がなく、また大型であっても、温度管理により、材料を均等に加熱冷却するので、製品が均質になり、成形、離脱速度を早くする(高い効率)ことができる効果がある。要するに、比較的低い流入圧力でも加工効率を向上し、製品精度を高く保つことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
この発明は、成形型の上型の表面中非平面部へ電熱加熱層を密に、平面部へ電熱加熱層を疎、又は皆無として、加熱加圧成形型を構成した。
【0031】
また射出成形型の上型と下型の夫々の表面に近接して、面状の電熱加熱層を設けると共に、冷却手段を設け、材料注入時の加熱による固化防止の保温と、溶融合成樹脂を固化温度まで冷却し、その合理化を達成する射出成形型を構成した。
【実施例1】
【0032】
この発明の実施例を図1について説明すれば、上型1と下型2により、シートなどのワーク3を曲面成形する成形型5において、下型2の内面に、電熱加熱層4の厚さと、同一深さの溝6を設け、該溝6内へ電熱加熱層4を嵌入固定して加工面を面一に成形する。前記電熱加熱層4は、絶縁層4a、4aにより電熱層4bを挟着したものである。
【0033】
前記電熱加熱層4は、シートなどワークの加工度に対応して粗密に配置してあるが、各電熱加熱層4、4に夫々リード線7、7を設け、該リード線7、7をコード8に接続する。
【0034】
例えば上型1にコード8の孔を設け、この孔にコード8を挿通した後、軸付近で電源と接続すれば、上型が連続的かつ早く移動しても電気的に問題はない。
【0035】
前記実施例によれば、例えばコード8を介して通電することにより、電熱加熱層4を100℃〜200℃の任意の設定温度とすることにより、目的を達成することができる。前記実施例は、溝6へ電熱加熱層4を埋設したが、型面へ層着することもできる。
【0036】
前記における電熱加熱層4は(伝熱材と、絶縁材を夫々溶射により重ね成形でも、カーボン電熱層を用いる成形でも)従来公知のものを使用することができる。
【0037】
この発明は、電熱加熱層の材質又は特性を利用するもので、これ自体に発明の技術がある訳でなく、金属型に電熱加熱層を設けること自体に特質がる。
【実施例2】
【0038】
この発明の他の実施例を図2(a)について説明すれば、上型1の内面の加工度の大きい面に電熱加熱層4を密に設けたものである。
【0039】
この実施例においても電熱加熱層4は上型1の溝に夫々嵌入設置してあるので、上型1の加工面は面一である。
【0040】
この発明の他の実施例を図2(b)について説明すれば、上型1と、下型2の夫々の表面に電熱加熱層4の厚さと同一深さの溝を設け、各溝へ夫々電熱加熱層4を嵌入設置したものである。従って上型と下型の表面は何れも面一に形成されており、ワークを両面から加熱し、成形を容易にしている。前記において、電熱加熱層4の外面の強度が不十分の場合には、保護板で覆い補強することもある。
【実施例3】
【0041】
この発明の他の実施例を図3について説明すれば、上型11と、下型12の表面へ、電熱加熱層4、4を設ける。前記電熱加熱層4、4は、絶縁層4a、4a(例えばアルミナ絶縁層)の間に短冊状の電熱層4b(例えばニッケルクロム)を挟着し、前記電熱層4bをリード線7、7と、コード8、8で接続したものである。
【0042】
前記における短冊状の電熱層4bは、通電により瞬時(0.5秒位)に加熱され、遮断により速やかに冷却されるので、樹脂溶融液を注入する際に加熱し、注入終了後直ちに冷却することができる。従って、合成樹脂材の射出成形時に加熱し、充填終了後直ちに冷却することができる。
【0043】
この型を使用すれば、射出時には速やかに材料を充填し、速やかに冷却する。
【実施例4】
【0044】
この発明の他の実施例を図5、6について説明すれば、射出成形型と同質の金属函9(平面形状は、型の底面と相似形)に仕切板13、13を立設し、各仕切板13、13の間へ電熱加熱層4、4と、冷却パイプ14、14を交互に敷設し、前記金属函9に蓋板15を被冠して、冷・熱ユニット10を構成した。前記冷・熱ユニット10は、前記下型12の底面12aの形状と相似形であって、下型12の底部に設けた凹部16へ収容し、前記蓋板15の周縁を下型の底面と面一に成形加工する。前記下型12の一側部には、ヘッドパイプ17と、これに連結する給送パイプ18とが設けてある。図中21は注入孔である。
【0045】
前記実施例において、電熱加熱層4に通電すれば、設定温度(例えば150℃)に加熱されるので、射出された合成樹脂は、冷却されることなくスムースに流動し、型の空間に充填される。そこで給送パイプ18へ矢示19のように冷媒(冷却空気、冷却水その他)を給送すれば、前記冷媒が型12内の冷却パイプに入り、型の底部を冷却し、矢示20のように排出されるので、射出されている溶融合成樹脂は瞬時に冷却固化される。
【0046】
前記のように、合成樹脂の射出時には型を加熱して、固化乃至粘度上昇を防止し、溶融合成樹脂の流動をスムースにすると共に変質を防止し、ついで冷却して固化する。
【0047】
従来型は加熱していないので、溶融合成樹脂の高粘度化又は変質(一部固化)を生じるおそれがあり、かつ狭い場合又は薄い場合に、高速流動させるには高圧を要する問題点があった。然るに前記のように、使用合成樹脂に適正な加熱をすれば、変質を生じるおそれがないことは勿論、高圧不用となる利点がある。例えば、給送圧力は10分の1以下にできるので、使用方法、使用器機を大幅に改善することができる。
【0048】
前記において、射出成形型を用いる場合には、短時間に多数の製品を成形しなければならないので、加熱と冷却は瞬時に変わる必要がある。そこで冷媒給送パイプを配置し、冷却時に冷媒を給送することにより、目的を達成したのである。
【0049】
即ち発熱カロリーと、冷却すべきカロリーとは既知であるから、これを満足すべく、電熱加熱層を設け又は必要量の冷媒を給送すれば、瞬時加熱と冷却の目的を達成することができる。
【0050】
前記実施例は、冷・熱ユニット10を採用したので、従来の型に、必要な凹入部16を設け、この凹部16に前記冷・熱ユニット10をセットすればよいことになり、型の成製について特別の労力と技術を要するおそれはない。
【0051】
次に図5(b)について他の実施例を説明すれば、下型12の底面部に設けた凹部16へ、仕切板13、13を設け、該仕切板13、13の間に電熱加熱層4と、冷却パイプ14を交互に設置し、上部へ蓋板15を被冠して、この発明の冷・熱部を構成した。
【0052】
前記実施例は、冷・熱ユニット10を使用しないので、型の成形時にセットするものである。従って型の形状に応じ、目的とする加温度(又は冷却度)に対応する能力の冷・熱層を設けることができる。
【0053】
前記実施例によれば、型の表面を適宜、加熱、冷却することができるので、熱経済裡に射出成形を進行させることができる。
【実施例5】
【0054】
この発明の他の実施例を図7、8について説明すると、型21の内面へ、絶縁層23、電熱層24、絶縁層23を順次設けて電熱層とし、上面の絶縁層上へメッキ層25を設ける(凹入部のない場合、図7(a))。また型21の内面の任意の位置へ、凹入部22を設け、該凹入部22の内へ、セラミックス粉塗料による絶縁層23(厚さ0.2m〜0.5mm)を設け、該絶縁層23の上面へ、カーボン粒子よりなる電熱層24(厚さ0.5mm)を設け、該電熱層24の上面へセラミックス粉塗料よりなる絶縁層23(厚さ0.2mm〜0.5mm)を設ける。また前記絶縁層23の上面と、型21の上面とに、メッキ層25(厚さ0.4mm〜0.8mm)を設ける。
【0055】
前記絶縁層23をセラミックス粉に代えて耐熱性合成樹脂フィルム(例えばテフロン(登録商標)、シリコンフィルム)を用いることもできる。
【0056】
前記希釈剤は通常シンナーを用いるが、カーボン粒の場合には通電性接着剤を用いる場合もある。
【0057】
前記カーボン層及び絶縁層は、塗布(スプレー)後夫々乾燥し、次工程に移る。例えば絶縁層(セラミックス粉)を設けた後、150℃で10分間予備乾燥し、ついで380℃で15分間乾燥する。
【0058】
前記処理を終了し、絶縁層が所定の厚さで所定の平面性を有することを確認後、カーボン粒をスプレーして通電層を設ける。ついで150℃で10分間予備乾燥し、350℃で15分〜20分間本乾燥する。前記カーボン層の上面へ、前記と同一要領により絶縁層を設ける。
【0059】
前記絶縁層の上へ無電解メッキ層を設けるのであるが、絶縁層との関係で被膜形成が不十分の際には、前処理として無電解メッキ(例えばニッケルメッキ)と親和性のある材料(公知の材料)を塗布する場合もある。
【0060】
また前記において、電熱層はカーボン粒子に通電性の希釈剤を混合した混合材を薄層(例えば0.5mm)に塗布する。また絶縁層(厚さ0.2mm〜0.5mm)は、セラミック粉末に希釈剤(例えばシンナー)を混合して、この混合材を塗布する。
【0061】
従って電熱層と、2つの絶縁層を積層しても、厚さは2mm以下となる。前記各層の厚さは一例であって、更に厚くすることもある。また型表面全域に亘って無電解メッキ層(厚さ0.5mm〜1mm)を設け、前記メッキ層の表面へ微小凹凸部を設けることにより、被成形物の表面に微小凹凸部を設ける。
【0062】
前記実施例において、図8中電熱層24の上面両側に銀箔26、26aを層着し、各銀箔26、26aにリード線27、27aを夫々連結し、各リード線27、27a、銀箔26、26a及び電熱層(カーボン粒子)24によって発熱回路を構成することができる。
【0063】
前記メッキ層は無電解メッキ層であって、例えばニッケルメッキとする。
【0064】
無電解メッキは公知の方法によるものであるが、形の表面を均一表面とすると共に、微小凹凸部を設ける為に設ける。またメッキ層によって、加熱、冷却温度の均一性を図り、製品(例えば合成樹脂シート)の品質の均一性を図ることができる。
【0065】
前記における無電解メッキにつき、Niメッキの一例を示すと次のとおりである。金属の表面が触媒となり、次亜リン酸イオンの脱水素反応が起こり、原子状水素Hとメタ亜リン酸イオンPOになる。
【0066】
[HPO→[PO+2H(cat)・・・・・・・・(1)
【0067】
そこでメタ亜リン酸イオンは水と結合して亜リン酸イオンとなる。
【0068】
[PO+HO→[HPO]・・・・・・・・・・・・・(2)
【0069】
原子状水素Hの一部は直接結合して水素ガスになり、一部はニッケルイオンの還元剤となり、ニッケルを析出させ、一部は次亜リン酸を還元してリンとなり、これはニッケルと合金をつくる。
【0070】
2H(cat)→H↑・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
【0071】
Ni2++2H(cat)→NiO+2H・・・・・・・・・・・(4)
【0072】
[HPO+H(cat)→PO+DH+HO・・・・・・(5)
【0073】
前記式(3)の反応は式(4)の2倍の反応速度で進行するため、酸性浴の場合便宜なメッキ状態における次亜リン酸塩の利用効率は約33%である。即ちニッケル1モルのメッキに対して、次亜リン酸3モルが必要である。
【0074】
前記無電解メッキのNi−Pメッキ皮膜には次の特性がある。
【0075】
化学組成・・・・・・・Ni:90%〜96%、P:4%〜10%
結晶構造・・・・・・・析出状態はアモルファスであるが、熱処理により結
晶質となる。
比重・・・・・・・・・析出状態で7.9、熱処理で7.8となる。
硬度・・・・・・・・・ビッカース硬さ(HV)500〜700であって、
リン含有率が少ない方が硬度が高い。400℃で熱
処理すればHV950以上になる。
電気抵抗・・・・・・・析出状態で60μΩ/cm、熱処理を行うことによ
り1/3に低下。
熱膨張係数・・・・・・13.0〜14.5μm/m
【0076】
無電解ニッケルメッキは次のような複合メッキとすることができる。
【0077】
耐摩耗性皮膜・・・・・炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al
)、BCダイヤモンドなどを共析させることがで
きる。
耐食性皮膜・・・・・・Cr、Mo、W、Tiなどの金属粉末を共析させる
こともできる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】(a)この発明の加圧成形型の実施例の一部を断面した正面図、(b)同じく一部拡大断面図、(c)同じく各電熱加熱層の電気的接続を示す説明図。
【図2】(a)同じく他の実施例の一部断面図、(b)同じく他の実施例の一部断面図。
【図3】(a)同じく射出成形型の一部を省略し、断面した斜視図、(b)同じく一部拡大断面図。
【図4】同じく図3における電熱加熱層の電気接続例を示す説明図。
【図5】(a)同じく加熱冷却ユニットの一部断面拡大図、(b)同じく型の表面へ加熱・冷却手段を埋設した一部断面拡大図。
【図6】(a)同じく下型の実施例の斜視図、(b)同じく一部断面した平面図。
【図7】(a)同じく他の実施例の一部を省略した断面拡大図、(b)同じく他の実施例の一部を省略した断面拡大図。
【図8】(a)同じく他の実施例の一部を省略した平面図、(b)同じく図(a)中一部を省略したA−A断面拡大図。
【符号の説明】
【0079】
1 上型
2 下型
3 ワーク
4 電熱加熱層
5 成形型
6 溝
7 リード線
8 コード
9 金属函
10 冷・熱ユニット
11 仕切板
12 下型
13 仕切板
14 冷却パイプ
15 蓋板
16 凹部
17 ヘッドパイプ
18 給送パイプ
23 絶縁層
24 電熱層
25 メッキ層
26 銀箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布又はシート材を加圧成形する成形型において、上型又は下型の一方又は両方の表面又は表面に近接して、電熱加熱層を設けたことを特徴とする電気加熱加圧成形型。
【請求項2】
電熱加熱層は成形型の被加工材の当接面の全面に均等密度又は不均等密度に設けることを特徴とした請求項1記載の電気加熱加圧成形型。
【請求項3】
電熱加熱層は、成形型の曲面に設けることを特徴とした請求項1記載の電気加熱加圧成形型。
【請求項4】
電熱加熱層は、成形型の表面に絶縁層を設け、その上に電熱層を設け、その上に絶縁層を設けたことを特徴とする請求項1記載の電気加熱加圧成形型。
【請求項5】
電熱加熱層は絶縁シートでカーボン粒電熱層を挟着したことを特徴とする請求項1記載の電気加熱加圧成形型。
【請求項6】
溶融合成樹脂を成形固化する射出成形型において、上型又は下型の一方又は両方の表面又は表面に近接して、面状の電熱加熱層を設けると共に、溶融合成樹脂の射出手段及び前記上型又は下型の一方又は両方へ冷却手段を設けたことを特徴とする射出成形型。
【請求項7】
電熱加熱層は、射出成形型に凹入部を設け、該凹入部の下から、セラミック材を塗布して絶縁層を設け、該絶縁層の上にカーボン粒又はカーボン繊維により、電熱層を設け、該電熱層の上へセラミック材を塗布して絶縁層を設け、前記成形型の内面へ無電解メッキ層を設けて、一連の平面としたことを特徴とする請求項6記載の射出成形型。
【請求項8】
射出成形型の表面へ、耐熱性の絶縁フィルムを貼着し、該絶縁フィルムの上面へカーボン粒又はカーボン繊維によるカーボン電熱層を設け、該カーボン電熱層の上面へ耐熱性の絶縁フィルムを被着し、該絶縁フィルム上へ保護板を被着したことを特徴とする請求項6記載の射出成形型。
【請求項9】
射出成形型の表面へ、プラズマ溶射によりアルミナ絶縁層、ニッケル−クロム電熱層及びアルミナ絶縁層を順次層着したことを特徴とする請求項6記載の射出成形型。
【請求項10】
電熱加熱層は、型の表面に絶縁材を溶射してなる絶縁層と、電熱材を溶射してなる電熱加熱層と、絶縁材を溶射してなる絶縁層を順次層着して設けたことを特徴とする請求項6記載の射出成形型。
【請求項11】
電熱加熱層は、カーボン電熱層を絶縁層で挟着したことを特徴とする請求項6記載の射出成形型。
【請求項12】
冷却手段は冷却流体の流動パイプを型内へ埋設したことを特徴とする請求項6記載の射出成形型。
【請求項13】
溶融合成樹脂を成形固化する射出成形型において、上型又は下型の一方又は両方の表面又は表面に近接して、電熱加熱層と冷却手段とをセットした加熱・冷却ユニットを埋設したことを特徴とする射出成形型。
【請求項14】
加熱・冷却ユニットは、電熱層と冷却パイプとをセットしたことを特徴とする請求項13記載の射出成形型。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−119847(P2009−119847A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139282(P2008−139282)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(391014376)
【Fターム(参考)】