説明

電気回路部品の樹脂封止成形方法及び装置

【課題】コネクタ部10と基板40及び外部接続端子50等の各部品を型20のキャビティ30・60に効率良く嵌装し、成形品の端子50aの表面に樹脂バリが付着するのを防止する。
【解決手段】コネクタ部10を型20に設けたガイド部材70を介して嵌装キャビティ30に案内し、基板40及び外部接続端子50を型20に設けたガイド部材80を介して成形キャビティ60に案内する。また、外部接続端子50に形成されたくびれ部51を型20に設けた固定部材91に押圧状に支持させることにより、端子50aのくびれ部51に樹脂バリが付着するのを確実に防止する。
更に、押圧部材(93a) における押圧面(93c) を弾性力を加えながら端子50aの表面に圧接させることにより、端子50aの表面に樹脂バリが付着するのを確実に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、既に樹脂成形されているコネクタ部と、ガラスエポキシ基板及び金属製の外部接続端子等の各部品を一体的に樹脂封止成形する電気回路部品の樹脂封止成形方法と、この方法を実施するための樹脂封止成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の電子制御装置、例えば、エンジン用電子制御装置をエンジンルーム内に取付けると共に、自動変速機用制御装置を自動変速機に取り付けるような場合においては、それらの設置場所が低温及び高温の温度環境下に置かれること、また、水や油にて汚損されること等から、基板上に実装した電子部品等をケース内に収容して保護する必要がある。
このため、基板上に電子部品を実装し、その基板と外部接続端子とを電気的に接続し、その後に、該基板の全体を樹脂材料にて一体的に封止成形することが行われている。
このような基板全体を樹脂封止成形する技術としては、トランスファモールド等の樹脂成形技術が用いられている。また、この場合は、該基板の全体はトランスファモールド型の所定位置に嵌装される必要があるため、該基板の全体をリードフレーム上に装着しておくと共に、該リードフレームを該型キャビティ内に嵌装させることにより、該基板の全体を該キャビティ内の所定位置にセットするようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記した車載用電子制御装置は、基板全体の樹脂封止成形時においてリードフレームが用いられているため、リードフレーム上に装着した基板の全体を、該リードフレームを介して、型キャビティ内の所定位置に嵌装セットすることができる。
しかしながら、上記したリードフレームを用いない基板全体の樹脂封止成形の場合、例えば、樹脂成形済のコネクタ部と、ガラスエポキシ基板及びバッテリー機器側と接続される金属製の外部接続端子等の各部品を型におけるキャビティ内の所定位置に、個々に、且つ、直接的に嵌装セットするようなときは、各々の嵌装セット作業が困難で非効率であるのみならず、各部品が型キャビティ内の所定位置に確実に嵌装セットされていない場合は各部品の一体的な樹脂封止成形を効率良く且つ確実に行うことができない。
【0004】
上記した各部品の一体的な樹脂封止成形を効率良く且つ確実に行うことができない場合は、樹脂封止成形体の外部に突設される外部接続端子の表面に樹脂バリが付着形成されてその電気的接続機能を損なうことになる等の弊害が発生する。
例えば、図8(1) に示すように、樹脂成形済のコネクタ部1を型2の型面に設けた嵌装キャビティ3内に嵌装セットすると共に、このコネクタ部1に電気的に接続されたガラスエポキシ基板4及び金属製の外部接続端子5等を該型面に設けた成形キャビティ6内に嵌装セットする場合において、上記各部品が該各キャビティ内の所定位置に確実に嵌装セットされていないときは、上記型の型合わせ(型締作業)に不具合が生じる。
従って、この状態で、成形キャビティ6内に熱硬化性の溶融樹脂材料(流動性樹脂)Rを注入充填させて該成形キャビティ形状に対応した樹脂封止成形体を成形すると、図8(2) 及び図8(3) に示すように、上記樹脂封止成形体7の外部に突設された端子5aの表面に樹脂バリ8が付着形成されてその電気的接続機能を損なうことになる。特に、上記外部接続端子のくびれ部5bには樹脂塊(硬化樹脂)8aが付着一体化されることがあり、従って、この端子5aに接続される他の機器との着脱機能を損なうと云った樹脂封止成形上の重大な弊害がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−37241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、リードフレームを用いない基板全体の樹脂封止成形においては、その
各部品を型キャビティ内に嵌装セットするのが困難で非効率であるのみならず、各部品が型キャビティ内の所定位置に確実に嵌装セットされていない場合は各部品の一体的な樹脂封止成形を効率良く且つ確実に行うことができない。
そこで、本発明は、樹脂成形済のコネクタ部や該コネクタ部に電気的に接続された状態にある基板及び金属製の外部接続端子等の各部品を、リードフレームを用いることなく、型キャビティ内に直接的に嵌装するような場合でも、各部品を型キャビティに確実に嵌装すると共に、樹脂封止成形体(成形品)の外部に突設される外部接続端子の両側面に形成されたくびれ部やその表面に樹脂バリが付着形成されるのを効率良く且つ確実に防止することができる電気回路部品の樹脂封止成形方法とこの方法を実施するための樹脂封止成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、樹脂成形品と、前記樹脂成形品に電気的に接続された基板及び外部接続端子とを含む複数の電気回路部品を樹脂材料にて一体的に封止成形する電気回路部品の樹脂封止成形方法であって、
前記樹脂成形品を樹脂成形型の型面に設けた嵌装キャビティに嵌装すると共に、前記基板及び外部接続端子を前記樹脂成形型の型面に設けた成形キャビティに嵌装する複数部品の嵌装セット工程と、
前記複数部品の嵌装セット工程を行う時に、前記樹脂成形品を前記樹脂成形型に設けたガイド部材を介して前記嵌装キャビティの所定位置に案内すると共に、前記基板及び外部接続端子を前記樹脂成形型に設けたガイド部材を介して前記成形キャビティに案内する複数部品の嵌装補助工程と、
前記複数部品の嵌装補助工程を行った後に、前記外部接続端子を所定位置に案内すると共に、その側面に形成されたくびれ部を前記樹脂成形型に設けた固定部材に押圧状に支持させる外部接続端子の押圧支持工程と、
前記外部接続端子の押圧支持工程を行った後に、前記樹脂成形型の型面を閉じ合わせる型締工程を行うと共に、この型面間に構成される前記成形キャビティ内に流動性樹脂を注入充填させて成形キャビティ内に嵌装セットされた前記基板及び外部接続端子を樹脂封止成形することにより、この樹脂封止成形体と前記樹脂成形品とを一体的に接続一体化させる基板及び外部接続端子の樹脂封止成形工程と、
前記基板及び外部接続端子の樹脂封止成形工程を行った後に、前記樹脂成形型の型面を開く型開工程を行うと共に、この型面間から前記電気回路部品の樹脂封止成形品を外部へ取り出す製品取出工程とを含むことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明における前記した型締工程において、押圧部材における押圧面を弾性力を加えながら前記外部接続端子の表面に圧接する外部接続端子表面の樹脂バリ付着防止工程を更に行うことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、樹脂成形品と、前記樹脂成形品に電気的に接続された基板及び外部接続端子とを含む複数の電気回路部品を樹脂材料にて一体的に封止成形するための樹脂成形型を備えた電気回路部品の樹脂封止成形装置であって、
前記樹脂成形型の型面に、前記樹脂成形品を嵌装する嵌装キャビティと、前記基板及び外部接続端子を嵌装する成形キャビティとを備え、
また、前記樹脂成形型の型面に、前記樹脂成形品を前記嵌装キャビティの所定位置に案内するガイド部材と、前記基板及び外部接続端子を前記成形キャビティに案内するガイド部材とを備え、
更に、前記外部接続端子の側面に形成されたくびれ部を前記樹脂成形型に設けた固定部材に押圧状に支持させる外部接続端子の押圧支持機構を備えたことを特徴としている。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明における前記した樹脂成形型の型締め直前に、押圧部材における押圧面を弾性力を加えながら前記外部接続端子の表面に圧接するように構成した外部接続端子表面の樹脂バリ付着防止機構を更に備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び請求項3に記載の発明によれば、前記した複数部品における樹脂成形品を樹脂成形型に設けたガイド部材を介して前記嵌装キャビティに案内すると共に、前記基板及び外部接続端子を樹脂成形型に設けたガイド部材を介して前記成形キャビティに案内することができるので、各部品を樹脂成形型における所定のキャビティに効率良く且つ確実に嵌装することができる。
また、各部品を樹脂成形型における所定のキャビティに嵌装した後に、前記外部接続端子を所定位置に案内すると共に、その両側面に形成されたくびれ部を前記型に設けた固定部材に押圧状に支持させることにより、該外部接続端子を所定位置に確実にセットすることができる。
このとき、該外部接続端子を所定位置に確実にセットすることができるので樹脂成形型の型締作用を確実に行うことができる。従って、該樹脂成形型の型面から封止用の溶融樹脂材料(流動性樹脂)の一部がキャビティの外部に流出して該外部接続端子の表面に樹脂バリが付着形成されるのを確実に防止することができる。
更に、該外部接続端子のくびれ部は型の固定部材に押圧状(密接状)に支持された状態にあるため、仮に、型面から封止用の溶融樹脂材料の一部がキャビティの外部に流出した場合であっても、くびれ部への樹脂付着が防止されるため、該くびれ部に樹脂バリが付着形成されるのを確実に防止することができる。
【0012】
また、請求項2及び請求項4に記載の発明によれば、押圧部材における押圧面を弾性力を加えながら前記外部接続端子の表面に圧接することにより、該外部接続端子の表面(上下両面)に樹脂バリが付着形成されるのを、より確実に防止することができる。
【0013】
従って、本発明によれば、樹脂成形済のコネクタ部(樹脂成形品)や該コネクタ部に電気的に接続されたガラスエポキシ基板及びバッテリー機器側と接続される金属製の外部接続端子等の各部品を樹脂成形型における所定のキャビティに個々に且つ直接的に嵌装するような場合でも、リードフレームを用いることなく、各部品を前記所定のキャビティに確実に嵌装することができる。また、各部品を一体的に樹脂封止成形した電気回路部品の樹脂封止成形体(製品)の外部に突設された状態にある外部接続端子の両側面に形成されたくびれ部やその表面に樹脂バリが付着形成されるのを効率良く且つ確実に防止することができると云った実用的な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明に係る電気回路部品の樹脂封止成形装置で、図1(1) は該装置における下型の型面を示す概略平面図、図1(2) は図1(1) のA−A線における上下両型の概略縦断面図、図1(3) は図1(1) のB−B線における下型部分の概略縦断面図である。
【図2】図2は図1(2) に対応する概略縦断面図で、図2(1) 及び図2(2) は上下両型の型開状態を示している。
【図3】図3は図1(1) のC−C線における上下両型の概略縦断面図で、図3(1) は上下両型の型開状態を、図3(2) は上下両型の型締状態を示している。
【図4】図4は図1(1) のB−B線における上下両型の概略縦断面図で、図4(1) は上下両型の型開状態を、図4(2) は上下両型の型締め直前の状態を示している。
【図5】図5は図4(2) に対応する概略縦断面図で、図5(1) 及び図5(2) は外部接続端子を所定位置に案内セットする外部接続端子の押圧支持工程の作用説明図である。
【図6】図6は本発明による電気回路部品の樹脂封止成形品を示しており、図6(1) はその平面図、図6(2) はその正面図である。
【図7】図7は図3に対応する概略縦断面図で、図7(1) は上下両型の型開状態を、図7(2) は上下両型の型締状態を示している。
【図8】図8は従来例を示しており、図8(1) は樹脂封止成形装置における下型の型面を示す概略平面図、図8(2) 及び図8(3) は該装置にて成形した成形品の平面図及び正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1乃至図6に示す本発明の実施例1について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明に係る電気回路部品の樹脂封止成形装置の要部を示している。
この装置は、樹脂成形品(コネクタ部)10と、この樹脂成形品に電気的に接続されたガラスエポキシ基板40及びバッテリー機器側と接続される金属製の外部接続端子50とを含む複数の部品から構成される電気回路部品を樹脂材料にて一体的に封止成形するための樹脂成形型20とを備えている。
【0017】
また、樹脂成形型20における下型21の型面には、樹脂成形品10の下半部分を嵌装するための嵌装キャビティ30と、ガラスエポキシ基板40及び外部接続端子50の下半部分を嵌装するための成形キャビティ60とが設けられている。
また、下型21の型面には、樹脂成形品10を嵌装キャビティ30の所定位置に案内するためのテーパ面71が形成されたガイド部材70(図例では、嵌装キャビティ30の前後の二個所に配置)と、ガラスエポキシ基板40及び外部接続端子50を成形キャビティ60に案内するためのテーパ面81が形成されたガイド部材80(図例では、外部接続端子50の先端部における両側面に接合する左右の二個所に配置)とが設けられている。
更に、外部接続端子50の両側面に形成されたくびれ部51を、下型21の所定位置に設けた固定部材91(図例では、左右のくびれ部51の位置に対応する下型21の左右二個所に配置)に押圧状に支持させる外部接続端子の押圧支持機構90が設けられている。
【0018】
また、下型21の上方位置には、図1(2) に示すように、上型22が対設されている。 この下型21と上型22とは、対向する両者の型面を接合させ或は離反させることが可能な状態に配設されている。なお、樹脂成形作業時において、この両型の型面を図1(2) に示すように接合させたときは「型締め」と称され、逆に、両型の型面を離反させたとき(図2参照)は「型開き」と称されている。
そして、下型21の嵌装キャビティ30と対向する上型22の型面の位置には樹脂成形品10の上半部分を嵌装するための嵌装キャビティ31が設けられている。
更に、下型21の成形キャビティ60と対向する上型22の型面の位置には基板40及び外部接続端子50の上半部分を嵌装するための成形キャビティ61が設けられている。
【0019】
また、外部接続端子50の押圧支持機構90は、外部接続端子50の両側面に形成されたくびれ部、即ち、図1(1) に示すように、前記した各部品を一体的に樹脂封止して電気回路部品の樹脂封止成形体(製品)を成形したときに、その外部に突設されることになる外部接続端子50aの両側面に形成されたくびれ部51(図6参照)に封止用の溶融樹脂材料(流動性樹脂)の一部が付着して樹脂塊(図8の樹脂塊8a参照)が形成されるのを防止するために配設されている。
【0020】
押圧支持機構90は、図1(3) に示すように、下型21に設けた固定部材91と、外部接続端子50をこの固定部材91側に押動させるための押動部材92とを備えている。
また、固定部材91は、図1(1) に示すように、外部接続端子50の両側面に形成されたくびれ部51と嵌合される位置に設けられており、図例においては、外部接続端子50の左右二個所のくびれ部51の各位置に対応する下型21の左右二個所の位置に配設されている。
また、押動部材92は、下型21の型面にセットされた外部接続端子50の先端近傍位置における上型22側に配置(図例では、左右二個所の位置に配置)されており、更に、上型22側において上下動可能な状態に配設されている。そして、下型21と上型22との型締め直前(上下両型の型面が接合される直前)の状態において、押動部材92を押し下げたときに、その底面部が外部接続端子50の先端部に接合すると共に、その底面部に形成したテーパ面92aが外部接続端子50の先端部を押動し、且つ、該外部接続端子を固定部材91側に押動するように設けられている。
なお、このとき、外部接続端子50の左右両側面は下型21の左右二個所に配設されたガイド部材80に接合されているため、該外部接続端子はこの左右のガイド部材80に案内されて固定部材91側にスムーズに摺動されることになる。
【0021】
図において、符号23は下型21及び上型22における嵌装キャビティ30・31の部位に配設した電気回路部品の樹脂封止成形体(製品)の突出ピンであり、また、符号24は下型21及び上型22における成形キャビティ60・61の部位に配設した電気回路部品の樹脂封止成形体の突出ピンである。
【0022】
なお、押圧支持機構90における押動部材92は、下型21に設けた左右のガイド部材80の前方位置となる上型22側に左右一対として配置した場合を図示しているが、例えば、押動部材を押し下げたときにその底面部が外部接続端子の先端部に接合すると共に、その底面部に形成したテーパ面が外部接続端子の先端部を押動し、且つ、該外部接続端子を固定部材側に押動するように設定した単数の押動部材を配設した構成であってもよい。
また、上記した各突出ピン23・24は、その各先端部分を各キャビティ30・31・60・61内に突出させることにより、樹脂封止成形時において該各キャビティ内に嵌装された各部品を所定の高さ位置に保持することができる。従って、該各ピンを各部品の支持ピンとして利用することができる。
【0023】
次に、図2乃至図6を参照して、前記した各部品を一体的に樹脂封止して電気回路部品の樹脂封止成形体(製品)を成形する場合について詳述する。
【0024】
まず、樹脂成形品(コネクタ部)10を樹脂成形型20における下型21の型面に設けた嵌装キャビティ30に嵌装すると共に、ガラスエポキシ基板40及び外部接続端子50を該樹脂成形型における下型21の型面に設けた成形キャビティ60に嵌装する複数部品の嵌装セット工程を行う。
この複数部品の嵌装セット工程は、例えば、適宜な搬送装置(図示なし)を介して、図2に示すように、複数部品を型開きした上下両型22・21間に自動的に搬入して行うようにしてもよく、或は、これを人為的に行うようにしても差し支えない。
【0025】
次に、又は、上記した複数部品の嵌装セット工程を行うと同時に、樹脂成形品を樹脂成形型に設けたガイド部材を介して嵌装キャビティの所定位置に案内すると共に、基板及び外部接続端子を樹脂成形型に設けたガイド部材を介して成形キャビティに案内する複数部品の嵌装補助工程を行う。
即ち、下型21に設けたガイド部材70のテーパ面71を介して、樹脂成形品10を嵌装キャビティ30に嵌設させると共に、その下半部分を嵌装キャビティ30の所定位置に案内する。
また、下型21に設けたガイド部材80のテーパ面81を介して、外部接続端子50を成形キャビティ60に嵌設させると共に、その下半部分を成形キャビティ60の所定位置に案内する。
また、外部接続端子50にガラスエポキシ基板40が接続一体化された構造のものである場合、ガラスエポキシ基板40は上記した外部接続端子50の嵌装補助作用に伴って同時にその下半部分が成形キャビティ60に嵌装される。
しかしながら、例えば、ガラスエポキシ基板40と外部接続端子50との両者が電気的に接続されてはいるが一体化されていない構造のものである場合において、上記した樹脂成形品10を嵌装キャビティ30に嵌装させるときに、或は、外部接続端子50を成形キャビティ60に嵌装させるときに、その嵌装作用に伴って、各々の下半部分が成形キャビティ60に順次に嵌装されることになる。
更に、外部接続端子50の下半部分を成形キャビティ60に嵌装させるとき、該外部接続端子50の両くびれ部51・51は樹脂成形型(下型21)に設けた両固定部材91・91と各々嵌合された状態となる(図1(1) 参照)。
【0026】
上記した複数部品の嵌装補助工程を行った後に、外部接続端子50を所定位置に案内すると共に、その両くびれ部51・51を樹脂成形型(下型21)の両固定部材91・91に押圧状に支持させる外部接続端子の押圧支持工程を行う。
複数部品の嵌装補助工程を行ったとき、図4(1) に示すように、外部接続端子50は下型21の型面上に載置されると共に、その両くびれ部51・51は該下型に設けた両固定部材91・91と各々嵌合された状態にある。
この状態で、図4(2) に示すように、上型22の型面が下型21の型面と接合される型締め直前の位置Hにまで下動させる。このとき、外部接続端子50には該上下両型による型締圧力が加えられていないため、この状態において押動部材92を押し下げると、図5(1) に示すように、その底面部が外部接続端子50の先端部に接合すると共に、その底面部に形成したテーパ面92aが外部接続端子50の先端部を押動して該外部接続端子を固定部材91側に押動する。
従って、外部接続端子50は下型21に設けた左右のガイド部材80に案内されて固定部材91側にスムーズに摺動されると共に、該外部接続端子の左右のくびれ部51は下型21に設けた左右の固定部材91に押圧状に各々支持されることになる。
【0027】
上記した外部接続端子の押圧支持工程を行った後に、上下両型22・21の型面を閉じ合わせる型締工程を行うと共に、この型面間に構成される成形キャビティ60・61内に熱硬化性の溶融樹脂材料(流動性樹脂)Rを注入充填させて(図1(1) 参照)、該成形キャビティ内に嵌装セットされたガラスエポキシ基板40及び外部接続端子50を樹脂封止成形することにより、この樹脂封止成形体(固化樹脂)と樹脂成形品(コネクタ部)10とを一体的に接続一体化させる基板及び外部接続端子の樹脂封止成形工程を行う。
【0028】
上記した基板及び外部接続端子の樹脂封止成形工程を行った後に、上下両型22・21の型面を離反させる型開工程を行うと共に、この型面間から電気回路部品の樹脂封止成形品を外部へ取り出す製品取出工程とを行う。
【0029】
電気回路部品の樹脂封止成形品は、図6に示すように、樹脂成形品(コネクタ部)10とガラスエポキシ基板及び外部接続端子の樹脂封止成形体77とが一体的に接続一体化された状態にある。
また、樹脂封止成形体77の外部に突設された端子50aの両くびれ部51・51、及び、該端子の上下両面には樹脂塊や樹脂バリが付着形成されていない。
これは、基板及び外部接続端子の樹脂封止成形工程において、両くびれ部51・51が下型21に設けた左右の固定部材91・91に押圧状に各々支持されており、更に、端子50aの上下両面が上下両型22・21による所定の(適正な)型締圧力を受けることにより、上下両型面間において密接状に支持されていたことに基づいている。
【0030】
上述した第一実施例によれば、コネクタ部(樹脂成形品)10や該コネクタ部に電気的に接続された状態にあるガラスエポキシ基板40及び金属製の外部接続端子50等の各部品を、リードフレームを用いることなく、樹脂成形型20のキャビティ内に直接的に嵌装するような場合でも、各部品を該キャビティの所定位置に確実に嵌装セットすることができる。従って、樹脂成形型20の型締作用を確実に行うことができるため、該樹脂成形型の型面から封止用の溶融樹脂材料の一部がキャビティの外部に流出して、樹脂封止成形品の外部に突設される端子50aのくびれ部51やその表面に樹脂バリが付着形成されるのを効率良く且つ確実に防止することができると云った実用的な効果を奏する。
【0031】
次に、本発明に係る実施例2の形態を図7に基づいて説明する。
【実施例2】
【0032】
この実施例では、上記した樹脂封止成形体77の外部に突設される端子50aの表面に樹脂バリが付着形成されるのを、より確実に防止することができる構成を示している。
なお、この実施例において前実施例と異なる点は次のとおりであり、その他の点については前実施例について説明した事項と同様である。従って、説明の重複を避けるため、両者に共通する構成については同じ符号を付している。
【0033】
ところで、上下両型22・21の成形キャビティ61・60の範囲内に嵌装されない外部接続端子50の先端部は、該上下両型の型締時において上下両型面間に挟圧状にセットされることになる。このため、この先端部は、樹脂成形後において、樹脂封止成形体77の外部に突設された外部接続用の端子50aとなる(図6参照)。
この端子50aの部位に対して上下両型22・21による型締め圧力が適正に加えられている場合はその表面に封止用の熱硬化性の溶融樹脂材料(流動性樹脂)の一部が付着して樹脂バリが形成されるのを防止することができる。しかしながら、外部接続端子50の厚みにはバラツキがあり、例えば、該外部接続端子が所定の厚みよりも薄い場合は、上下両型の型締時において端子50aと上下両型の型面との間に間隙が生じることになり、これに基因して、端子50aの表面に溶融樹脂材料の一部が付着して樹脂バリを形成することがある。
【0034】
この実施例では、上下両型22・21の型締時において、押圧部材の押圧面を弾性力を加えながら樹脂封止成形体77の外部に突設される端子50aの表面に圧接することにより、端子50aの表面と上下両型22・21の型面との間に間隙が生じないように構成して、端子50aの表面に溶融樹脂材料の一部が付着しないように改善したものである。
即ち、この樹脂バリ付着防止機構93は、図7に示すように、上型22に上下動可能に嵌装された押圧部材93aと、該押圧部材を下方へ押動させるための弾性部材93bとを含み、この押圧部材93aは、弾性部材93bの弾性によって、下方へ押動されるように設けられている。
従って、上下両型22・21の型締時において、押圧部材93aの下端面に設けられた押圧面93cが、下方の下型21面上にセットされた端子50aの表面(上面)に弾性力を加えながら圧接されるように構成されている。
【0035】
なお、図7では、樹脂バリ付着防止機構93を上型22側にのみ設けた場合を示しているが、同様の機能を備えた樹脂バリ付着防止機構を下型21側にも配設する(図示なし)ことにより、上下両型22・21の型締時において、両者の押圧部材(93a)における押圧面(93c)が弾性力を加えながら、端子50aの表裏(上下)両面に圧接されるように構成してもよい。
【0036】
上述した第二実施例によれば、前実施例における型締め直前に、押圧部材における押圧面を弾性力を加えながら外部接続端子の表面に圧接する外部接続端子表面の樹脂バリ付着防止工程を更に行うことができる。
従って、樹脂封止成形体77の外部に突設される端子50aの表面に樹脂バリが付着形成されるのを、より確実に防止することができると云った実用的な効果を奏する。
【0037】
本発明は、上述した実施例のものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて任意に且つ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できる。
【0038】
また、前記した各実施例において、熱硬化性の樹脂材料を用いて説明したが、本発明においては、熱可塑性の樹脂材料を用いても良い。
【0039】
また、前記した各実施例において、例えば、顆粒状の樹脂材料(顆粒樹脂)、液状の樹脂材料(液状樹脂)、所要の粒径分布を有するパウダー状の樹脂材料(パウダー樹脂)、粉末状の樹脂材料(粉末樹脂)、ペースト状の樹脂材料(ペースト樹脂)、タブレット状の樹脂材料(タブレット樹脂)などの種々の形状の樹脂材料を採用することができる。
【0040】
また、前記した各実施例において、例えば、エポキシ系の樹脂材料(エポキシ樹脂)、或いは、シリコン系の樹脂材料(シリコーン樹脂)を用いることができる。
【0041】
また、前記した各実施例において、成形キャビティ60・61内に流動性樹脂Rを注入充填する構成して既知の注入充填方法を用いることができる。例えば、トランスファモールド法、インジェクションモールド法などを用いることができる。
また、前記した各実施例において、例えば、トランスファモールド法を用いた場合、ポット内に供給した樹脂タブレット(エポキシ系の樹脂材料)を加熱して溶融化し、ポット内に嵌装したプランジャで溶融樹脂材料(流動性樹脂)を加圧することにより、樹脂通路(カル部、ランナ、ゲート)を通して成形キャビティ60・61内に流動性樹脂Rを注入充填することができる。
従って、硬化に必要な所要時間の経過後、樹脂成形型(上型、下型)を型開きすることにより、電気回路部品の樹脂封止成形品を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 コネクタ部(樹脂成形品)
2 樹脂成形型
3 嵌装キャビティ
4 ガラスエポキシ基板
5 金属製の外部接続端子
5a 端子
5b くびれ部
6 成形キャビティ
7 樹脂封止成形体
8 樹脂バリ
8a 樹脂塊
10 樹脂成形品(コネクタ部)
20 樹脂成形型
21 下 型
22 上 型
23 突出ピン
24 突出ピン
30 嵌装キャビティ
31 嵌装キャビティ
40 ガラスエポキシ基板
50 金属製の外部接続端子
50a 端 子
51 くびれ部
60 成形キャビティ
61 成形キャビティ
70 ガイド部材
71 テーパ面
77 樹脂封止成形体
80 ガイド部材
81 テーパ面
90 押圧支持機構
91 固定部材
92 押動部材
92a テーパ面
93 樹脂バリ付着防止機構
93a 押圧部材
93b 弾性部材
93c 押圧面
H 型締め直前の位置
R 溶融樹脂材料(熱硬化性溶融樹脂材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品と、前記樹脂成形品に電気的に接続された基板及び外部接続端子とを含む複数の電気回路部品を樹脂材料にて一体的に封止成形する電気回路部品の樹脂封止成形方法であって、
前記樹脂成形品を樹脂成形型の型面に設けた嵌装キャビティに嵌装すると共に、前記基板及び外部接続端子を前記樹脂成形型の型面に設けた成形キャビティに嵌装する複数部品の嵌装セット工程と、
前記複数部品の嵌装セット工程を行う時に、前記樹脂成形品を前記樹脂成形型に設けたガイド部材を介して前記嵌装キャビティの所定位置に案内すると共に、前記基板及び外部接続端子を前記樹脂成形型に設けたガイド部材を介して前記成形キャビティに案内する複数部品の嵌装補助工程と、
前記複数部品の嵌装補助工程を行った後に、前記外部接続端子を所定位置に案内すると共に、その側面に形成されたくびれ部を前記樹脂成形型に設けた固定部材に押圧状に支持させる外部接続端子の押圧支持工程と、
前記外部接続端子の押圧支持工程を行った後に、前記樹脂成形型の型面を閉じ合わせる型締工程を行うと共に、この型面間に構成される前記成形キャビティ内に流動性樹脂を注入充填させて成形キャビティ内に嵌装セットされた前記基板及び外部接続端子を樹脂封止成形することにより、この樹脂封止成形体と前記樹脂成形品とを一体的に接続一体化させる基板及び外部接続端子の樹脂封止成形工程と、
前記基板及び外部接続端子の樹脂封止成形工程を行った後に、前記樹脂成形型の型面を開く型開工程を行うと共に、この型面間から前記電気回路部品の樹脂封止成形品を外部へ取り出す製品取出工程とを含む電気回路部品の樹脂封止成形方法。
【請求項2】
前記した型締工程において、押圧部材における押圧面を弾性力を加えながら前記外部接続端子の表面に圧接する外部接続端子表面の樹脂バリ付着防止工程を更に行うことを特徴とする請求項1に記載の電気回路部品の樹脂封止成形装置。
【請求項3】
樹脂成形品と、前記樹脂成形品に電気的に接続された基板及び外部接続端子とを含む複数の電気回路部品を樹脂材料にて一体的に封止成形するための樹脂成形型を備えた電気回路部品の樹脂封止成形装置であって、
前記樹脂成形型の型面に、前記樹脂成形品を嵌装する嵌装キャビティと、前記基板及び外部接続端子を嵌装する成形キャビティとを備え、
また、前記樹脂成形型の型面に、前記樹脂成形品を前記嵌装キャビティの所定位置に案内するガイド部材と、前記基板及び外部接続端子を前記成形キャビティに案内するガイド部材とを備え、
更に、前記外部接続端子の側面に形成されたくびれ部を前記樹脂成形型に設けた固定部材に押圧状に支持させる外部接続端子の押圧支持機構を備えたことを特徴とする電気回路部品の樹脂封止成形装置。
【請求項4】
前記した樹脂成形型の型締め直前に、押圧部材における押圧面を弾性力を加えながら前記外部接続端子の表面に圧接するように構成した外部接続端子表面の樹脂バリ付着防止機構を更に備えたことを特徴とする請求項3に記載の電気回路部品の樹脂封止成形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−99628(P2012−99628A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245906(P2010−245906)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(390002473)TOWA株式会社 (192)
【Fターム(参考)】