説明

電気接点部品用金属材料

【課題】電気接点部品であるスイッチの操作性を改善し、高温熱処理後における貴金属被覆層の密着性および接触抵抗値が向上する電気接点部品用金属材料を提供する。
【解決手段】導電性基材と貴金属層との間に、少なくとも2層の中間金属層が設けられ、導電性基材は1.5〜4.2質量%のNiと0.3〜1.4質量%のSiを含み、導電性基材の圧延方向に対して、0°、45°、90°の3つの引張強さの関係について、最大値が600MPa以上かつ最大値と最小値との比が85%以上100%以下であり、中間金属層は、前記導電性基材に近い順に、ニッケル、コバルトまたはこれらの合金で形成される第1中間金属層と、銅または銅合金で形成される第2中間金属層を含み、300℃15分間の大気中における加熱後に導電性基材と貴金属層との密着状態が維持され、400℃15分間の大気中における加熱後の接触抵抗値が10mΩ以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器などに用いられる各種スイッチ等の電気接点部品に好適に用いられる電気接点部品用金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
スライドスイッチ、タクトスイッチ、多機能スイッチ(例えば多方向スイッチ等)に代表される、各種スイッチ等の電気接点部品には、古くは電気伝導性に優れた銅又は銅合金が利用されてきた。しかし、近年では接点特性の向上の要求が高まり、裸の銅又は銅合金を用いるケースは減少し、銅又は銅合金上に各種表面処理を施した製品が製造・利用されつつある。特に電気接点部品材料として多く利用されているものとして、貴金属被覆が電気接点部に施されるものがある。なかでも、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、などの貴金属は、その材料の持つ安定性や優れた電気伝導率を持つことなどから、各種電気接点部品材料として利用されている。
【0003】
ところで、近年では携帯電話機をはじめとする電子機器には操作用押しボタンスイッチ(例えばテンキー)や多機能スイッチ(例えば4方向スイッチ)が使用されるようになった(特許文献1参照)。このようなスイッチの接点部を構成するバネ部材の基材として、ステンレス鋼、リン青銅、黄銅、純銅などの圧延板をプレス打抜きしたものが用いられている。そして、信頼性を高めるためにAu、Ag、Pdなどのめっきが施されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−229783号公報
【特許文献2】特開2005−2400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各特許文献に開示された従来のバネ部材には、スイッチ操作時のストローク感(スイッチを押したという感覚)や、クリック時のソフトさが、スイッチ方向によって異なることがあり、スイッチの操作性が良くないという問題があった。
【0006】
また、リン青銅、黄銅などの銅合金に銀めっきを施すと、300℃程度の熱処理を施したとき、めっきが剥離するという現象がみられた。これは、例えば50℃以上の高温下において使用される電気接点部品や、例えば半田付け工程や溶融工程(リフロー工程等)のような300℃程度の熱処理を伴う製造工程を経て生産される各種スイッチ等における耐熱信頼性が満足されるものではなく、特に貴金属被覆層の密着性の改善が急務とされていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するため、電気接点部品であるスイッチの操作性を改善し、高温熱処理後における貴金属被覆層の密着性および接触抵抗値が向上する電気接点部品用金属材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の解決手段は、銅合金材料を導電性基材とし、かつその最表面の少なくとも一部に貴金属層が被覆された電気接点部品用金属材料であって、前記導電性基材を構成する銅合金は、銅基析出型合金であって、前記導電性基材の圧延方向の引張強さと、圧延方向となす角度が45°方向の引張強さと、圧延方向となす角度が90°方向の引張強さの3つの引張強さの関係について、最大値が600MPa以上、かつ引張強度の最大値と最小値との比が85%以上100%以下であり、前記導電性基材と前記貴金属層との間に、少なくとも2層の中間金属層が設けられ、前記中間金属層は、前記導電性基材に近い順に第1中間金属層および第2中間金属層を含み、前記第1中間金属層は、ニッケルまたはその合金、もしくはコバルトまたはその合金により0.005〜1.0μmの厚さに形成され、前記第2中間金属層は、銅またはその合金により0.005〜1.0μmの厚さに形成されており、300℃15分間の大気中における加熱後に前記導電性基材と前記貴金属層との密着状態が維持され、400℃15分間の大気中における加熱後の接触抵抗値が10mΩ以下であることを特徴としている。
【0009】
本発明の第2の解決手段は、第1の解決手段において、前記貴金属層が、金またはその合金、銀またはその合金、パラジウムまたはその合金、白金またはその合金、ルテニウムまたはその合金のいずれかを含むことを特徴としている。
【0010】
本発明の第3の解決手段は、第1または第2の解決手段において、前記貴金属層の厚さは、0.05〜5.0μmであることを特徴としている。
【0011】
本発明の第4の解決手段は、第1〜第3のいずれかの解決手段において、前記銅基析出型合金は、1.5〜4.2質量%のニッケルと0.3〜1.4質量%の珪素を含むことを特徴としている。
【0012】
本発明の第5の解決手段は、第4のいずれかの解決手段において、前記銅合金材料は、0.05〜0.2質量%のマグネシウム、0.1〜0.5質量%のスズ、0.1〜1.0質量%の亜鉛、0.05〜0.5質量%のクロムの群から選ばれる、少なくとも1つをさらに含有することを特徴としている。
【0013】
本発明の第6の解決手段は、第1〜第5のいずれかの解決手段において、前記導電性基材の表面側に設けられる金属層が、めっきにより設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記導電性基材を構成する銅合金が銅基析出型合金であり、前記導電性基材の圧延方向の引張強さと、圧延方向となす角度が45°方向の引張強さと、圧延方向となす角度が90°方向の引張強さの3つの引張強さの関係について、最大値が600MPa以上、かつ最小値が最大値の85%以上100%以下であり、300℃15分間の大気中における加熱後に前記導電性基材と前記貴金属層との密着状態が維持され、400℃15分間の大気加熱試験後における接触抵抗値が10mΩ以下となるため、電気接点部品であるスイッチの操作性が改善され、高温熱処理後の貴金属被覆層の密着性および接触抵抗値が向上する電気接点部品用金属材料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の望ましい実施形態を説明する。本発明における電気接点部品用材料とは、特定の形状を有する銅基析出型合金材料(板材、条材、棒材、線材等)の導電性基材に貴金属被覆層が施された電気接点部品用金属材料全般を意味する。
【0016】
本発明に用いられるの銅基析出型合金には、ベリリウム銅(例えばC17200、C17530など)、チタン銅(例えばC19900)、クロム銅、鉄添加銅合金(例えばC19400)などが適用できるが、特にニッケル(Ni)と珪素(Si)を含有するコルソン合金は強度および導電性に優れ推奨される。前記コルソン合金において、NiとSiは金属間化合物として析出して強度を高める。
【0017】
貴金属層は、必要に応じて耐食性を上げるための防錆処理や、潤滑性を付与するための処理(例えば有機皮膜の形成)等がされたものでもよく、これらの処理前(例えば有機皮膜の形成前)の最表面に貴金属またはその貴金属を主成分とする合金が現れていることを意味する。
【0018】
貴金属層は、1層以上形成されていれば良く、例えば銀被覆層上の金被覆層、パラジウム被覆層上の金被覆層など、複数層設けられていてもよいが、層数が多くなると製造工程が煩雑となり、かつ層数を増やす効果が飽和するので、多くとも3層までが好ましい。被覆の形態は、条表面全体が覆われているものや、電気接点材としてプレス形成されたときに接点材として有効に作用する箇所のみ被覆されたものでも良く、例えばストライプ状やスポット状に形成されたものなどが含まれる。
【0019】
ここで、電気接点部品が各種スイッチ接点部品のように、平板状の材料を加工して形成することが望ましい形状の場合は、電気接点部品用材料の形状は、条状(リボン状・フープ状とも言う)または板状が好ましく、材料板厚や板幅などは、特に制限なく利用できるが、好ましくは板厚0.03〜0.5mm、板幅3〜200mmが適当である。もしくは広幅に製造した後、スリットを行って必要な幅に切断する方法も可能である。なお、電気接点部品が形状を問わない場合は、電気接点部品用材料の形状も、板材、条材、棒材、線材等の形状を問わない。
【0020】
本発明の実施形態に係る電気接点部品用金属材料によれば、銅基析出型合金の導電性基材と、この最表面に形成された貴金属層との間には、2層以上の中間金属層が設けられる。具体的には、基材側からニッケル(Ni)またはその合金もしくはコバルト(Co)またはその合金の第1中間金属層が設けられ、さらにその上層に銅またはその合金の第2中間金属層が設けられる。図1は第1の実施形態に係る電気接点部品用金属材料の一例を示す断面図、図2は第2の実施形態に係る電気接点部品用金属材料の一例を示す断面図である。図1および図2において、1は導電性基材、2は第1中間金属層、3は第2中間金属層、4は貴金属層である。
【0021】
導電性基材を構成する銅合金は、1.5〜4.2質量%のニッケル(Ni)と0.3〜1.4質量%の珪素(Si)を含むコルソン系(Cu−Ni−Si系)合金であることが好ましい。また、NiとSiの質量比については、3〜5の範囲が好ましく、3.5〜4.5の範囲がより好ましい。さらに、代表的な析出物であるNiSiの質量比(約4.2)に近いほど好ましい。導電性基材を構成する銅合金を、上記組成のコルソン系合金とすると、導電性、バネ性、耐久性に優れるので、電気接点部品の小形化および薄肉化が図れる。Niが1.5質量%未満(Siが0.3質量%未満)の場合は、導電性基材としての強度が不十分となり、Niが4.2質量%を超える(Siが1.4質量%を超える)と導電性基材に割れが発生しやすくなるため好ましくない。
【0022】
また、導電性基材の引張強さに関して、以下の関係が成立している。すなわち、(1)圧延方向の引張強さ、(2)圧延方向となす角度が45°方向の引張強さ、(3)圧延方向となす角度が90°方向の引張強さ、の3つの引張強さの関係について、(1)〜(3)の最大値が600MPa以上、かつ(1)〜(3)の引張強度の最大値と最小値との比が85%以上100%以下であることである。なお、引張強度の最大値と最小値との比は、90%以上100%以下が好ましく、95%以上100%以下がさらに好ましい。引張強度の最大値と最小値との比は、電気接点部品用金属材料を電気接点部品として加工する際の機械的異方性と密接に関連し、例えば電気接点部品が多方向スイッチである場合の操作性などに直接影響を与える。このため、引張強度の最大値と最小値との比は、極力100%に近いことが好ましいといえる。この関係を満足しない場合、(1)〜(3)の最大値が600MPa未満となる場合は導電性基材としての強度が不十分となるため好ましくない。また、(1)〜(3)の最大値と最小値との比が85%未満の場合は、電気接点部品が用いられるスイッチの操作性を損ねるだけでなく、例えば半田付け工程や溶融工程(リフロー工程等)のような300℃程度の熱処理を伴う製造工程後に、貴金属層が導電性基材から剥離する割合が急激に高まるため好ましくない。この観点については、本出願人が特願2007−237213において既に提案している。
【0023】
第1中間金属層の厚さは、0.005〜1.0μmに規定される。これは、0.005μm未満であると、第1中間金属層にピンホールと呼ばれる孔が著しく生じ、そこより浸入した酸素が基材表面を酸化して密着性低下の原因となるためであり、逆に1.0μmを超えると、電気接点部品材料をプレスした際に第1中間金属層にクラックが生じ、結果的に第2中間金属層および貴金属層にクラックが生じてしまうため、クラックから基材成分が拡散して接触抵抗上昇や腐食発生等の問題が起こる。このように、第1中間金属層を上記規定厚さ範囲内に形成することで耐熱密着性向上の効果を発揮するが、0.05〜1.0μmの範囲が好ましく、0.1〜0.5μmの範囲がさらに好ましい。
【0024】
上記第1中間金属層の表面に形成される第2中間金属層の厚さは、0.005〜1.0μmに規定される。0.005μm未満であると、酸素の捕捉剤として働くCuまたはその合金の量が不十分であり、容易に第1中間金属層の成分を酸化して、耐熱密着性が不十分となる。また、1.0μmを超えると、酸素の捕捉剤量としては十分であるが、加熱時にCuが貴金属接点表面にまで拡散して表面に露出し、表層で酸化物を形成して接触抵抗を増大させてしまうため、不適当である。このように、第2中間金属層を上記規定厚さ範囲内に形成することで耐熱密着性向上の効果を発揮するが、0.05〜0.5μmの範囲が好ましく、0.1〜0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【0025】
また、導電性基材の最表面に形成される貴金属層は、貴金属の中でも安定性や低接触抵抗の観点から、金(Au)またはその合金、銀(Ag)またはその合金、パラジウム(Pd)またはその合金、白金(Pt)またはその合金、ルテニウム(Ru)またはその合金のいずれかを含むことが好ましい。特にAu、Ag、Pdまたはこれらを含む以下の合金(Au−Co、Au−Pd、Au−Ag、Ag−Pd、Ag−Cu、Ag−Sn、Ag−Se、Ag−Sb、Pd−Ni)が好ましい。
【0026】
これら貴金属層の厚さは、0.05〜5.0μmで規定される。これは、0.05μm未満であると貴金属層にピンホールと呼ばれる孔が生じるため、貴金属層と中間層とで電位差が生じ、腐食が発生して接触抵抗が増大してしまう。逆に5.0μmを超えると、プレス加工や曲げ加工によりめっきに割れが発生しやすくなるため好ましくない。また、高価な貴金属を使用するために製造コスト上昇につながる点でも好ましくない。このように、貴金属層は上記規定厚さ範囲内に形成することで接点部品材料としての効果を十分発揮するが、0.05〜2.0μmであることが好ましく、0.2〜1.0μmで形成するのがさらに好ましい。
【0027】
また、導電性基材を構成する銅合金として、1.5〜4.2質量%のニッケル(Ni)と0.3〜1.4質量%の珪素(Si)を含み、残部が不可避的不純物および銅からなるコルソン系(Cu−Ni−Si系)合金のほか、前記銅合金に、さらにマグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)の群から選ばれる少なくとも1つを適量含有させることにより強度を向上させることができる。その含有量はそれぞれ、Mgは0.05〜0.2質量%、Snは0.1〜0.5質量%、Znは0.1〜1.0質量%、Crは0.05〜0.5質量%であることが好ましい。
【0028】
これらの電気接点部品用金属材料の各金属層(第1中間金属層、第2中間金属層、貴金属層等)は、クラッド法やスパッタ・蒸着等による手法で形成することができるが、薄膜でかつ均一に、生産性よく製造するためには、めっき法によって形成することが望ましい。中でも湿式めっき法が最も低コストであり、生産性も良いことから最も望ましい。
【実施例】
【0029】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
(試料の説明)
導電性基材として、厚さ0.1mm、幅180mmのコルソン合金条を用いた。この条に電解脱脂、酸洗の前処理を行った後、めっき構成材を作製し、表1に示す本発明および比較例の電気接点部品用金属材料を得た。表1には、導電性基材の引張強さの最大値、および引張強さの最大値と最小値との比をあわせて示す。引張強さは、板材の圧延方向、圧延方向となす角度が45°方向、圧延方向となす角度が90°方向の3つの方向を引張方向とする引張試験片(JIS Z 2201−5号試験片)を切り出し、JIS Z 2241に準じて引張強さを測定した。また、このように各方向の引張強さを各3本ずつ測定して平均値を算出し、3つの方向の引張強さ(平均値)の最大値および最大値と最小値との比を求めた。
【0031】
ここで、表1に示される導電性基材の組成について示す。組成X,Yは、組成としての比較例である。なお、数字は質量%で、残部は銅(Cu)および不可避的不純物である。
組成A:Cu−2.3Ni−0.55Si−0.15Sn−0.5Zn−0.1Mg
組成B:Cu−3.75Ni−0.9Si−0.15Sn−0.5Zn−0.1Mg
組成C:Cu−2.0Ni−0.4Si
組成D:Cu−3.0Ni−0.65Si−0.1Mg
組成E:Cu−2.5Ni−0.56Si−0.5Zn
組成F:Cu−2.5Ni−0.56Si−0.15Sn−0.5Zn−0.1Mg
組成G:Cu−4.2Ni−1.4Si−0.15Sn−0.5Zn−0.1Mg
組成H:Cu−1.5Ni−0.3Si−0.15Sn−0.5Zn−0.1Mg
組成X:Cu−1.2Ni−0.3Si
組成Y:Cu−4.2Ni−1.6Si
【0032】
【表1】

【0033】
(試験条件)
上記の電気接点部品用金属材料に関して、耐熱密着性を求めるために、300℃〜450℃の範囲内の加熱温度で15分間の大気加熱試験を実施し、その密着性について、テープ剥離試験(JIS−H8504)における試験を実施した。その耐熱密着性評価、常態と400℃15分間の大気加熱試験後の接触抵抗値測定、プレス性評価について表2に示した。なお、表2には参考として製造コストの比較も◎○△▲×の5段階で表記し、◎ほど良好であることを示しており、△〜◎が実際の量産に有用なレベルを意味する。具体的には、◎はコスト最小値〜最小値の2倍、○はコスト最小値の2倍〜4倍、△はコスト最小値の4〜8倍、▲はコスト最小値の8倍〜16倍、×はコスト最小値の16倍より高いことをそれぞれ意味する。
【0034】
めっき条件および評価方法を下記に示す。
【0035】
(めっき条件)
[Niめっき]
めっき液・・・Ni(NHSOH):500g/l、NiCl:30g/l、HBO:30g/l
めっき条件・・・電流密度:15A/dm、温度:50℃
【0036】
[Coめっき]
めっき液・・・CoSO:400g/l、NaCl:20g/l、HBO:40g/l
めっき条件・・・電流密度:5A/dm、温度:30℃
【0037】
[Cuめっき]
めっき液・・・CuSO・5HO:250g/l、HSO:50g/l、NaCl:0.1g/l
めっき条件・・・電流密度:6A/dm、温度:40℃
【0038】
[Agめっき]
めっき液・・・AgCN:50g/l、KCN:100g/l、KCO:30g/l
めっき条件・・・電流密度:0.5〜3A/dm、温度:30℃
【0039】
[光沢Agめっき]
めっき液・・・AgCN:50g/l、KCN:100g/l、KCO:30g/l、Na:1.58g/l
めっき条件・・・電流密度:1A/dm、温度:30℃
【0040】
[Pd−Ni合金めっき:Pd/Ni(%) 80/20]
めっき液・・・Pd(NHCl:40g/l、NiSO:45g/l、NHOH:90ml/l、(NHSO:50g/l
めっき条件・・・電流密度:1A/dm、温度:30℃
【0041】
[Pdめっき]
めっき液・・・Pd(NHCl:45g/l、NHOH:90ml/l、(NHSO:50g/l
めっき条件・・・電流密度:1A/dm、温度:30℃
【0042】
[Au−Coめっき]
めっき液・・・KAu(CN):14.6g/l、C:150g/l、K:180g/l、EDTA−Co(II):3g/l、ピペラジン:2g/l
めっき条件・・・電流密度:1A/dm、温度:40℃
【0043】
[Ruめっき]
めっき液・・・RuNOCl・5HO:10g/l、NHSOH:15g/l
めっき条件・・・電流密度:1A/dm、温度:50℃
【0044】
[耐熱密着性試験]
恒温層(エスペック(株)製 STPH−100)において、300℃、350℃、400℃、450℃のそれぞれについて、15分間の加熱試験を実施後、テープ剥離試験を実施した。テープ剥離試験に用いるテープとして、(株)寺岡製作所製の「#631S」を用いた。試験片サイズは、幅30mm、長さ50mm(長さ方向が導電性基材の圧延方向)とした。評価結果は、○を剥離なし、△を部分剥離、×を全面剥離とした。結果を表2に示す。
【0045】
[接触抵抗測定]
4端子法を用いて、被覆初期(常態)のサンプル及び400℃15分間の大気加熱試験後のサンプルについて、それぞれ接触抵抗測定を行った。測定条件は、AgプローブR=2mm、荷重10g(=約0.1N)、10mA通電時の抵抗値を測定した。結果を表2に示す。
【0046】
[加工性評価]
得られた試料を幅10mm、長さ30mm(長さ方向が導電性基材の圧延方向)に切断後、圧延方向と直角な方向にV曲げ(90°)を行い、頂点部についてマイクロスコープ((株)キーエンス製 VH8000)にて、450倍で観察し、割れの有無を確認した。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
本発明の実施例1〜26は、いずれも耐熱密着性、接触抵抗、加工性とも良好となった。これに対して、比較例1は、第1中間金属層が存在しないため、耐熱密着性と接触抵抗が劣った。比較例2は、第2中間金属層が存在しないため、耐熱密着性が劣った。比較例3は、第1中間金属層が薄すぎるため、耐熱密着性と接触抵抗が劣った。比較例4は、第1中間金属層が厚すぎるため、曲げ加工後に割れが発生した。比較例5は、第2中間金属層が厚すぎるため、接触抵抗が劣った。比較例6〜7は、貴金属層が厚すぎるため、曲げ加工後に割れが発生した。比較例8は、導電性基材の3方向の引張強さの最大値と最小値との比が85%未満のため、耐熱密着性、接触抵抗、曲げ加工性のいずれも劣った。比較例9は、導電性基材に含有されるNiの量が少ないため、耐熱密着性、接触抵抗、曲げ加工性のいずれも劣った。比較例10は、導電性基材に含有されるSiの量が多いため、耐熱密着性、接触抵抗、曲げ加工性のいずれも劣った。
【0049】
すなわち、本発明の各実施例は、いずれも耐熱密着性、接触抵抗、加工性に優れ、電気接点部品であるスイッチの操作性が改善され、高温熱処理後における貴金属被覆層の密着性および接触抵抗値が向上した電気接点部品用金属材料であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電気接点部品用金属材料の一例を示す断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る電気接点部品用金属材料の一例を示す断面図。
【符号の説明】
【0051】
1 導電性基材
2 第1中間金属層
3 第2中間金属層
4 貴金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅合金材料を導電性基材とし、かつその最表面の少なくとも一部に貴金属層が被覆された電気接点部品用金属材料であって、
前記導電性基材を構成する銅合金は、銅基析出型合金であって、
前記導電性基材の圧延方向の引張強さと、圧延方向となす角度が45°方向の引張強さと、圧延方向となす角度が90°方向の引張強さの3つの引張強さの関係について、最大値が600MPa以上、かつ引張強度の最大値と最小値との比が85%以上100%以下であり、
前記導電性基材と前記貴金属層との間に、少なくとも2層の中間金属層が設けられ、
前記中間金属層は、前記導電性基材に近い順に第1中間金属層および第2中間金属層を含み、前記第1中間金属層は、ニッケルまたはその合金、もしくはコバルトまたはその合金により0.005〜1.0μmの厚さに形成され、前記第2中間金属層は、銅またはその合金により0.005〜1.0μmの厚さに形成されており、
300℃15分間の大気中における加熱後に前記導電性基材と前記貴金属層との密着状態が維持され、
400℃15分間の大気中における加熱後の接触抵抗値が10mΩ以下であることを特徴とする電気接点部品用金属材料。
【請求項2】
前記貴金属層が、金またはその合金、銀またはその合金、パラジウムまたはその合金、白金またはその合金、ルテニウムまたはその合金のいずれかを含むことを特徴とする、請求項1記載の電気接点部品用金属材料。
【請求項3】
前記貴金属層の厚さは、0.05〜5.0μmであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の電気接点部品用金属材料。
【請求項4】
前記銅基析出型合金は、1.5〜4.2質量%のニッケルと0.3〜1.4質量%の珪素を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電気接点部品用金属材料。
【請求項5】
前記銅合金材料は、0.05〜0.2質量%のマグネシウム、0.1〜0.5質量%のスズ、0.1〜1.0質量%の亜鉛、0.05〜0.5質量%のクロムの群から選ばれる、少なくとも1つをさらに含有することを特徴とする、請求項4記載の電気接点部品用金属材料。
【請求項6】
前記導電性基材の表面側に設けられる金属層が、めっきにより設けられていることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電気接点部品用金属材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−215632(P2009−215632A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62854(P2008−62854)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】