説明

電気機器およその制御方法

【課題】 保守サービス員による手間と時間のかかる面倒な作業を要することなく、割込み信号の発生に起因する障害を容易かつ的確にしかも効率よく究明することが可能な電気機器を提供する。
【解決手段】 割込みコントローラ30は、ハードウェアからの割込み信号の有無を割込み要因として保持するとともに、その割込み信号の有効または無効を指定するための有効/無効指定条件を保持する。この割込みコントローラ30に保持内容が定期的に読出され、それが履歴情報として不揮発性メモリ25に記憶される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、POSターミナルや電子レジスタなどの電気機器およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗で使用される商品販売処理装置たとえばPOS(Point Of Sales)ターミナルや電子レジスタは、キーボード、モードスイッチ、プリンタなど種々のハードウェアを付属して備えている。これらハードウェアのうち、たとえばキーボードが操作されると、そのキーボードから割込み信号が発せられる。この割込み信号を受けた制御部は、キーボードが操作されたことを把握する。モードスイッチが操作された場合や、プリンタが動作した場合にも、それぞれ割込み信号が発せられる。これら割込み信号を受けた制御部は、モードスイッチに操作があったこと、プリンタが動作したことをそれぞれ把握する。
【0003】
一方、電気機器の一般的な傾向として、割込み信号の発生時に、フリーズやロックなどの障害が発生することがある。
【0004】
このような障害が発生した場合、簡単な対処として再起動があるが、それでも障害が回復しない場合は専門の作業員による保守サービスが必要となる。この保守サービスに際しては、電気機器が設置されている現場において、障害の要因となったと思われる割込み信号の発生を再現し、その割込み信号のタイミングやレベルを計測したり、制御部の動作を確認するなどの処置がとられる。このような処置は、原因が分かるまで何度も繰り返されることになり、保守サービス員にとって手間と時間のかかる面倒な作業となっている。
【0005】
なお、携帯端末において、電源電圧を計測してその計測値をログ情報として記憶し、記憶したログ情報を電源障害の原因究明に利用する例がある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平11―191026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
割込み信号の発生に起因する障害への対処は、上記のような保守サービス員による手間と時間のかかる面倒な作業に依存しているのが現状である。
【0007】
この発明は、上記の事情を考慮したもので、その目的は、保守サービス員による手間と時間のかかる面倒な作業を要することなく、割込み信号の発生に起因する障害を容易かつ的確にしかも効率よく究明することが可能な電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の電気機器は、ハードウェアから発せられる割込み信号の有無を保持するとともに、その割込み信号の有効または無効を指定するための有効/無効指定条件を保持する割込みコントローラと、この割込みコントローラで有効と指定される割込み信号から上記ハードウェアの状態を把握する機能を有する制御部と、不揮発性の記憶手段と、上記割込みコントローラの保持内容を定期的に読出し、それを履歴情報として前記記憶手段に記憶する制御手段と、を備える。
【0009】
請求項3に係る発明の電気機器の制御方法は、ハードウェアから発せられる割込み信号の有無を保持するとともに、その割込み信号の有効または無効を指定するための有効/無効指定条件を保持するステップと、この有効/無効指定条件により有効と指定される割込み信号から上記ハードウェアの状態を把握するステップと、上記保持内容を定期的に読出し、それを履歴情報として記憶するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
この発明の電気機器およびその制御方法によれば、保守サービス員による手間と時間のかかる面倒な作業を要することなく、割込み信号の発生に起因する障害を容易かつ的確にしかも効率よく究明することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、電気機器たとえばPOS(Point Of Sales)ターミナルの外観図である。
【0012】
POSターミナル1は、現金等を収容するための引出し2aを有するドロワ2、およびそのドロワ2上に設けられた本体からなり、店舗の例えばレジカウンタに設置される。このPOSターミナル1の本体には、キーボード3、モードスイッチ4、カードリーダ5、タッチパネル式オペレータ表示部6、客面表示部7、ジャーナルを電子媒体に保存する電子ジャーナル8、およびレシート及びジャーナルをプリントするプリンタ9などが設けられている。
【0013】
さらに、POSターミナル1の本体から商品情報入力手段として手持式スキャナ11が導出されている。この手持式スキャナ11は、商品に付されている情報、すなわち商品のラベル等に印刷されているバーコードを、光学的に読取る。
【0014】
上記キーボード3は、預かり金額などを置数するための置数キー、1取引として販売登録された商品の合計出力を指示する小計キー、1取引の代金を現金決済することを宣言して当該取引の締めを指示する預/現計キー、置数データのクリアを指示するクリアキー等を備えている。上記モードスイッチ4は、「登録」,「点検」,「精算」,「設定」などの各種業務モードを選択するためのスイッチで、専用の鍵で操作される。
【0015】
上記カードリーダ5は、非現金決済に用いるカードが挿入されてスライド操作されることにより、そのカードに記録されているデータを読取る。上記タッチパネル式オペレータ表示部6は、商品情報入力用の各種商品名が記載された入力用釦、手持式スキャナ11により入力された商品の品名・価格、合計金額、預かり金額、釣り銭額などを表示する。上記客面表示部7は、カラー写真やカラー動画によるコマーシャル情報、たとえば『いらっしゃいませ』などの顧客案内情報、取引明細(商品名、単価、個数)、取引結果(合計金額,預かり金額、釣り銭額)等を表示する。
【0016】
このPOSターミナル1の制御回路を図2に示す。
制御部であるCPU20に、オペレーティングシステム(OS)およびアプリケーションプログラムを記憶したハードディスクドライブ(HDD)21、各種制御用プログラムを記憶したROM22、データ記憶用のRAM23、日時データを発生するRTC(リアルタイムクロック)24、後述の履歴情報を記憶するための不揮発性メモリ25、客面表示部7、および割込みコントローラ30が接続されている。そして、割込みコントローラ30に、キーボード3、モードスイッチ4、カードリーダ5、タッチパネル式オペレータ表示部6、電子ジャーナル8、プリンタ9、手持式スキャナ11、ネットワークインターフェース(I/F)19などのハードウェアが接続されている。
【0017】
割込みコントローラ30は、図3に示すように、各ハードウェアから発せられる割込み信号の有無を割込み要因として保持するとともに、その割込み信号の有効または無効を指定するための有効/無効指定条件を保持するレジスタ機能を有し、割込み要因が“あり”で、有効/無効指定条件が“有効”の場合に、ハードウェアから受けた割込み信号をCPU20へ供給する。有効/無効指定条件は、CPU20の制御の状況変化に基づく所定のタイミングで、CPU20により適宜に更新設定される。
【0018】
例えば、キーボード3が操作されて、キーボード3から割込み信号が発せられると、キーボード3に関する割込み要因が“なし”から“あり”に変わる。このとき、キーボード3の割込み信号に対する有効/無効指定条件が“有効”となっていれば、キーボード3から発せられた割込み信号が直ちにCPU20へ供給される。この供給に伴い、キーボード3に関する割込み要因が“なし”に戻る。
【0019】
ただし、キーボード3に関する割込み要因が“あり”に変わっても、その時点でキーボード3の割込み信号に対する有効/無効指定条件が“無効”となっていれば、キーボード3から発せられた割込み信号はCPU20に供給されずに待機状態となる。その後の制御により、キーボード3の割込み信号に対する有効/無効指定条件が“有効”に変わると、待機状態にあった割込み信号がCPU20へ供給される。この供給に伴い、キーボード3に関する割込み要因が“なし”に戻る。
【0020】
モードスイッチ4については、図3の場合、割込み要因が“なし”、有効/無効指定条件が“無効”となっている。この場合、モードスイッチ4から割込み信号が発せられていない状態であるから、有効/無効指定条件にかかわらず、CPU20への割込み信号の供給はない。
【0021】
モードスイッチ4が操作され、そのモードスイッチ4から割込み信号が発せられると、モードスイッチ4に関する割込み要因が“なし”から“あり”に変わる。このとき、モードスイッチ4に関する有効/無効指定条件が“無効”のままであれば、モードスイッチ4から発せられた割込み信号はCPU20へ供給されずに待機となる。その後の制御により、モードスイッチ4に対する有効/無効指定条件が“有効”に変わるとき、待機状態にあった割込み信号がCPU20へ供給される。この供給に伴い、モードスイッチ4に関する割込み要因が“なし”に戻る。
【0022】
他のハードウェアから発せられる割込み信号に対しても、同様のコントロールが実行される。
【0023】
CPU20は、POSターミナル1の全体を制御するもので、割込み信号に関わる主要な機能として次の(1)(2)の手段を有する。
(1)割込みコントローラ30から供給される割込み信号を取込んでハードウェアの状態を把握する手段。
(2)割込みコントローラの割込み要因および有効/無効指定条件を定期的に読出し、それを割込み信号の発生に起因する障害の究明用履歴情報として不揮発性メモリ25に記憶する制御手段。定期的な読出しタイミングの設定手段として、キーボード3等のハードウェアの割込みよりも優先順位の高いシステム管理割込み(SMIという)が利用される。
【0024】
つぎに、上記の構成の作用について説明する。
キーボード3から割込み信号が発せられると、その割込み信号が割込みコントローラ30に取込まれ、キーボード3に関する割込み要因が“なし”から“あり”に変わる。このとき、キーボード3の割込み信号に対する有効/無効指定条件が“有効”となっていれば、取込まれた割込み信号が直ちにCPU20へ供給される。ただし、キーボード3に関する割込み要因が“あり”に変わっても、その時点で、キーボード3の割込み信号に対する有効/無効指定条件が“無効”となっていれば、キーボード3から発せられた割込み信号はCPU20に供給されずに待機状態となる。その後、有効/無効指定条件が“有効”に変わると、待機状態にあった割込み信号がCPU20へ供給される。
【0025】
モードスイッチ4から割込み信号が発せられると、その割込み信号が割込みコントローラ30に取込まれ、モードスイッチ4に関する割込み要因が“なし”から“あり”に変わる。このとき、モードスイッチ4に関する有効/無効指定条件が“有効”となっていれば、取込まれた割込み信号が直ちにCPU20へ供給される。ただし、モードスイッチ4に関する割込み要因が“あり”に変わっても、その時点で、モードスイッチ4の割込み信号に対する有効/無効指定条件が“無効”となっていれば、モードスイッチ4から発せられた割込み信号はCPU20に供給されずに待機状態となる。その後、有効/無効指定条件が“有効”に変わると、待機状態にあった割込み信号がCPU20へ供給される。
【0026】
他のハードウェアから発せられる割込み信号についても、同様に、供給と待機がコントロールされる。
【0027】
CPU20では、割込みコントローラ30から供給される割込み信号が取込まれ、その割込み信号からハードウェアの状態が把握される。また、CPU20では、図4のフローチャートに示すように、キーボード3等のハードウェアの割込みよりも優先順位の高いシステム管理割込み(SMI)のタイミングにおいて(ステップ101のYES)、割込みコントローラ30に保持されている割込み要因および有効/無効指定条件が読出され(ステップ102)、それが障害究明用の履歴情報として不揮発性メモリ25に記憶される(ステップ103)。
【0028】
一方、ハードウェアからの割込み信号の発生時、それまで正常に動作していたPOSターミナル1にフリーズやロックなどの障害が発生することがある。このような障害が発生した場合、簡単な対処として再起動があるが、それでも障害が回復しなければ専門の作業員による保守サービスが必要となる。この保守サービスに際し、作業員は、不揮発性メモリ25に記憶されている履歴情報を読出し、その履歴情報を見ることで、どのハードウェアからどのようなタイミングで割込み信号が発せられたかを容易に把握することができる。
【0029】
したがって、作業員は、障害の要因と思われる割込み信号の発生を再現したり、再現した割込み信号のタイミングやレベルを計測するなど、手間と時間のかかる面倒な作業をナンドも繰り返すことなく、割込み信号の発生に起因する障害を容易かつ的確にしかも効率よく究明することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、電気機器としてPOSターミナルを例に説明したが、他の電気機器についても同様に実施可能である。その他、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変えない範囲で種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一実施形態の外観を示す斜視図。
【図2】一実施形態の制御回路を示すブロック図。
【図3】一実施形態における割込みコントローラにおける割込み要因および有効/無効指定条件の例を示す図。
【図4】一実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0032】
1…POSターミナル、2…ドロワ、3…キーボード、6…オペレーティング表示部、7…客面表示部、11…バーコードスキャナ、20…CPU、21…ハードディスクドライブ装置、25…不揮発性メモリ(不揮発性の記憶手段)、30…割込みコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードウェアから発せられる割込み信号の有無を保持するとともに、その割込み信号の有効または無効を指定するための有効/無効指定条件を保持する割込みコントローラと、
前記割込みコントローラで有効と指定される割込み信号から前記ハードウェアの状態を把握する機能を有する制御部と、
不揮発性の記憶手段と、
前記割込みコントローラの保持内容を定期的に読出し、それを履歴情報として前記記憶手段に記憶する制御手段と、
を備えることを特徴とする電気機器。
【請求項2】
前記有効/無効指定条件は、前記制御部の制御により更新されることを特徴とする請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
ハードウェアから発せられる割込み信号の有無を保持するとともに、その割込み信号の有効または無効を指定するための有効/無効指定条件を保持するステップと、
前記有効/無効指定条件により有効と指定される割込み信号から前記ハードウェアの状態を把握するステップと、
前記保持内容を定期的に読出し、それを履歴情報として記憶するステップと、
を備えることを特徴とする電気機器の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−129175(P2009−129175A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303278(P2007−303278)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】