説明

電気機械変換素子の製造方法

【課題】複合酸化物を生成させる回数が増加しても、電極を疎水化させることが可能な電気機械変換素子の製造方法、電気機械変換素子並びに吐出ヘッド及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】複合酸化物膜12が形成されている共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域に自己組織化単分子膜13を形成して疎水化し、共通電極11上の自己組織化単分子膜13が形成されていない領域にゾルゲル液14を塗布、仮焼して複合酸化物膜14'を形成し、複合酸化物膜の積層体15を形成し、複合酸化物膜の積層体15が形成された共通電極11を酸洗浄し、複合酸化物膜の積層体15が形成されていない領域に自己組織化単分子膜を形成して疎水化させ、共通電極11上の自己組織化単分子膜が形成されていない領域にゾルゲル液を塗布し、ゾルゲル液が塗布された共通電極11を仮焼して複合酸化物膜を形成し、複合酸化物膜の積層体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械変換素子の製造方法、電気機械変換素子、吐出ヘッド及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、騒音が極めて小さく、高速で印字することが可能であり、さらには、インクの自由度があり、安価な普通紙を使用することができるために、プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像形成装置として、広く展開されている。
【0003】
インクジェット記録装置の吐出ヘッドは、インクを吐出するノズルと、ノズルが連通する液室と、液室内のインクを吐出させる圧力発生手段を有し、圧力発生手段としては、電気機械変換素子が知られている。
【0004】
特許文献1には、電気機械変換素子の製造方法として、電極の所定の領域に自己組織化膜を形成して疎水化させる第1の工程と、電極の自己組織化膜が形成されていない領域にゾルゲル液を塗布する第2の工程と、ゾルゲル液が塗布された電極を乾燥、熱分解、結晶化して複合酸化物を生成させる第3の工程を有し、第1の工程、第2の工程及び第3の工程を繰り返す方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、複合酸化物を生成させる回数が増加すると、電極を疎水化させにくくなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、複合酸化物を生成させる回数が増加しても、電極を疎水化させることが可能な電気機械変換素子の製造方法、該電気機械変換素子の製造方法により製造されている電気機械変換素子並びに該電気機械変換素子を有する吐出ヘッド及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気機械変換素子の製造方法は、所定の領域に複合酸化物膜が形成されている電極上の該複合酸化物膜が形成されていない領域に自己組織化単分子膜を形成して疎水化させる第一の工程と、該電極上の自己組織化単分子膜が形成されていない領域に該複合酸化物を生成することが可能なゾルゲル液を塗布する第二の工程と、該ゾルゲル液が塗布された電極を仮焼して該複合酸化物を生成させる第三の工程と、該複合酸化物が生成した電極を酸洗浄する第四の工程と、該酸洗浄された電極上の該複合酸化物膜が形成されていない領域に自己組織化単分子膜を形成して疎水化させる第五の工程と、該電極上の自己組織化単分子膜が形成されていない領域に該複合酸化物を生成することが可能なゾルゲル液を塗布する第六の工程と、該ゾルゲル液が塗布された電極を仮焼して該複合酸化物を生成させる第七の工程を有する。
【0008】
本発明の電気機械変換素子は、本発明の電気機械変換素子の製造方法により製造されている。
【0009】
本発明の吐出ヘッドは、本発明の電気機械変換素子を有する。
【0010】
本発明のインクジェット記録装置は、本発明の吐出ヘッドを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複合酸化物を生成させる回数が増加しても、電極を疎水化させることが可能な電気機械変換素子の製造方法、該電気機械変換素子の製造方法により製造されている電気機械変換素子並びに該電気機械変換素子を有する吐出ヘッド及びインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電気機械変換素子の製造方法の一例を示す断面図である。
【図2】自己組織化単分子膜形成装置の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の吐出ヘッドの一例を示す断面図である。
【図4】本発明の吐出ヘッドの他の例を示す断面図である。
【図5】本発明のインクジェット記録装置の一例を示す図である。
【図6】X線光電子分光分析によるO1sピークの分析結果を示す図である。
【図7】実施例1の複合酸化物膜の積層体のP−Eヒステリシス曲線である。
【図8】複合酸化物膜を形成し、複合酸化物膜の積層体を形成するプロセスの回数に対する自己組織化単分子膜を形成した共通電極上の複合酸化物膜が形成されていない領域の水に対する接触角の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0014】
図1に、本発明の電気機械変換素子の製造方法の一例を示す。
【0015】
まず、所定の領域に複合酸化物膜12が形成されている共通電極11(図1(a)参照)上の複合酸化物膜12が形成されていない領域に自己組織化単分子膜(SAM)13を形成して疎水化させる(図1(b)参照)。
【0016】
共通電極11を構成する材料としては、自己組織化単分子膜13を形成することが可能であれば、特に限定されないが、白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム等の白金族金属、白金−ロジウム合金等の白金族合金等が挙げられる。中でも、白金が好ましい。
【0017】
なお、共通電極11は、導電性金属酸化物膜上に白金族金属膜又は白金族合金膜が形成されている積層体であってもよい。
【0018】
導電性金属酸化物としては、特に限定されないが、SrRuO、CaRuO、(Sr1−xCa)RuO、LaNiO、SrCoO、(La1−ySr)(Ni1−yCo)O、IrO、RuO等が挙げられる。
【0019】
共通電極11の厚さは、通常、0.05〜2μmである。
【0020】
なお、共通電極11は、通常、シリコンウェハ等の基板上に形成されているが、共通電極11は、基板を兼ねていてもよい。
【0021】
基板上に共通電極11を形成する方法としては、特に限定されないが、スパッタ法、蒸着法等が挙げられる。
【0022】
共通電極11上の所定の領域に複合酸化物膜12を形成する方法としては、特に限定されないが、全領域に複合酸化物膜が形成されている共通電極11上にフォトレジストのパターンを形成した後、不要な複合酸化物膜をエッチングして複合酸化物膜12を形成する方法、共通電極11上にフォトレジストのパターンを形成した後、複合酸化物膜12を形成する方法等が挙げられる。
【0023】
共通電極11上に複合酸化物膜を形成する方法としては、特に限定されないが、スパッタ法、蒸着法等が挙げられる。
【0024】
なお、共通電極11上の全領域に複合酸化物膜を形成する場合は、スピンコート法を用いて、後述するゾルゲル液を塗布した後、仮焼してもよい。
【0025】
フォトレジストとしては、特に限定されないが、ポリケイ皮酸ビニル、環化ゴム−ビスアジド系レジスト、ポリビニルフェノール/メラミン等の架橋剤/酸発生剤からなる架橋タイプの化学増幅系レジスト等のネガ型;キノンジアジド−ノボラック樹脂系レジスト、アセタール化ポリビニルフェノール/酸発生剤等の保護基脱離又は溶解抑止タイプの化学増幅系レジスト等のポジ型が挙げられる。
【0026】
フォトレジストを塗布する方法としては、特に限定されないが、スピンコーティング法、ディッピング法、キャスト法、スプレーコーティング法、ダイコーティング法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法等が挙げられる。
【0027】
フォトレジストの厚さは、通常、0.5〜10μmである。
【0028】
フォトレジストに露光する際に用いる光源としては、特に限定されないが、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、UVランプ、エキシマレーザー等が挙げられる。
【0029】
フォトレジストに露光される光は、波長が100〜500nmであることが好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0030】
フォトレジストを現像する際に用いる現像液としては、特に限定されないが、水、アルカリ水溶液、有機溶剤等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0031】
不要な複合酸化物膜をエッチングする方法としては、特に限定されないが、アルゴンプラズマ処理等が挙げられる。
【0032】
フォトレジストを除去する際に用いる溶媒としては、特に限定されないが、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0033】
なお、特許文献1の図1〜図5に記載されている方法を用いて、共通電極11上の所定の領域に複合酸化物膜12を形成してもよい。
【0034】
また、共通電極11上に複合酸化物膜12を形成した後、後述するように、酸洗浄してもよい。
【0035】
複合酸化物膜12を構成する複合酸化物としては、電気機械変換素子を形成することが可能であれば、特に限定されないが、一般式
ABO
(式中、Aは、Pb、Ba及びSrからなる群より選択される一種以上であり、Bは、Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg及びNbからなる群より選択される一種以上である。)
で表される化合物が挙げられる。中でも、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)が好ましい。
【0036】
チタン酸ジルコン酸鉛は、ジルコン酸鉛(PbZrO)とチタン酸鉛(PbTiO)の固溶体であり、ジルコン酸鉛とチタン酸鉛の比率により特性が異なるが、電気機械変換特性を考慮すると、Pb(Zr0.53,Ti0.47)Oが好ましい。
【0037】
チタン酸ジルコン酸鉛以外の複合酸化物の具体例としては、チタン酸バリウム、(Pb1−xBa)(Zr,Ti)O、(Pb1−xSr)(Zr,Ti)O等が挙げられる。
【0038】
複合酸化物膜12の厚さは、通常、100nmである。複合酸化物膜12が厚くなると、後述する複合酸化物の積層体を焼成する際にクラックが発生することがある。
【0039】
共通電極11上に自己組織化単分子膜13を形成する際には、ノズルから共通電極11に、チオール又はチオールの溶液を噴射することが好ましい。
【0040】
チオールとしては、共通電極11上に自己組織化単分子膜13を形成することが可能であれば、特に限定されないが、炭素数が6〜30の直鎖状のアルカンチオール等が挙げられる。
【0041】
チオールの溶液に含まれる溶媒としては、特に限定されないが、エタノール、イソプロパノール、トルエン等が挙げられる。
【0042】
チオール又はチオールの溶液が噴射された共通電極11は、通常、洗浄液で洗浄する。
【0043】
洗浄液としては、自己組織化単分子膜13を形成していないチオールを除去することが可能であれば、特に限定されないが、エタノール、イソプロパノール、トルエン等が挙げられる。
【0044】
チオール又はチオールの溶液が塗布された共通電極11を洗浄液で洗浄する方法としては、特に限定されないが、ノズルから共通電極11に洗浄液を噴射する方法等が挙げられる。中でも、自己組織化単分子膜13を形成していないチオールを除去しやすいことから、ノズルから共通電極11に、超音波が印加されている洗浄液を噴射する方法が好ましい。
【0045】
洗浄液に印加する超音波の周波数は、通常、20kHz〜1MHzである。
【0046】
次に、共通電極11上の自己組織化単分子膜13が形成されていない領域に複合酸化物を生成することが可能なゾルゲル液14を塗布する(図1(c)参照)。
【0047】
複合酸化物がチタン酸ジルコン酸鉛である場合は、酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド及びチタンアルコキシドをメトキシエタノール中に溶解させることにより、ゾルゲル液14を調製することができる。
【0048】
ゾルゲル液14は、大気中の水分により金属アルコキシドが加水分解することを防止するために、アセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミン等の安定化剤をさらに含んでいてもよい。
【0049】
複合酸化物がチタン酸バリウムである場合は、バリウムアルコキシド及びチタンアルコキシドをメトキシエタノール中に溶解させることにより、ゾルゲル液14を調製することができる。
【0050】
ゾルゲル液14を塗布する方法としては、特に限定されないが、インクジェット法等が挙げられる。
【0051】
次に、ゾルゲル液14が塗布された共通電極11を仮焼して複合酸化物膜14'を形成し、複合酸化物膜の積層体15を形成する(図1(d)参照)。このとき、自己組織化単分子膜13が除去される。
【0052】
ゾルゲル液14が塗布された共通電極11を仮焼する温度は、通常、300〜1400℃であり、450〜1200℃が好ましい。このとき、段階的に昇温してもよい。
【0053】
ゾルゲル液14が塗布された共通電極11を仮焼する時間は、通常、2〜24時間である。
【0054】
ゾルゲル液14が塗布された共通電極11を仮焼する雰囲気は、不活性ガス雰囲気及び空気等の酸素を含む雰囲気のいずれであってもよい。このとき、雰囲気は、常圧であってもよいし、減圧されていてもよい。
【0055】
複合酸化物膜14'の厚さは、通常、100nm程度である。複合酸化物膜14'が厚くなると、後述する複合酸化物膜の積層体を焼成する際にクラックが発生することがある。
【0056】
次に、複合酸化物膜の積層体15が形成されている電極11を酸洗浄する。
【0057】
複合酸化物膜の積層体15が形成されている共通電極11を酸洗浄する際に用いられる酸としては、特に限定されないが、塩化水素、酢酸等が挙げられる。
【0058】
複合酸化物膜の積層体15が形成されている共通電極11を酸洗浄する方法としては、特に限定されないが、ノズルから共通電極11に、酸又は酸の水溶液を噴射する方法等が挙げられる。
【0059】
酸の水溶液の25℃におけるpHは、2〜5であることが好ましく、2〜4がさらに好ましく、3〜4が特に好ましい。酸の水溶液の25℃におけるpHが2未満であると、複合酸化物膜の積層体の誘電損失が増大して、電気機械変換素子の電気機械変換特性が低下することがある。一方、酸の水溶液の25℃におけるpHが5を超えると、共通電極11の表面に酸化物が残留して共通電極11を疎水化させにくくなって、複合酸化物膜の積層体の形状精度が低下することがある。
【0060】
酸洗浄された共通電極11は、通常、洗浄液で洗浄する。
【0061】
洗浄液としては、酸を除去することが可能であれば、特に限定されないが、水、イソプロパノール、エタノール等が挙げられる。
【0062】
酸洗浄された共通電極11を洗浄液で洗浄する方法としては、特に限定されないが、ノズルから共通電極11に洗浄液を噴射する方法等が挙げられる。
【0063】
次に、図1(b)〜(d)と同様にして、複合酸化物膜の積層体15上に、複合酸化物膜14'をさらに積層する。
【0064】
次に、複合酸化物膜の積層体が形成されている共通電極11を酸洗浄した後、複合酸化物膜14'をさらに積層するプロセスを、複合酸化物膜の積層体の厚さが所定の値になるまで繰り返す。このとき、複合酸化物膜の積層体の厚さが所定の値になったタイミングで、焼成する。
【0065】
複合酸化物膜の積層体が形成されている共通電極11を焼成する温度は、通常、300〜1400℃であり、450〜1200℃が好ましい。このとき、段階的に昇温してもよい。
【0066】
複合酸化物膜の積層体が形成されている共通電極11を焼成する時間は、通常、3分〜24時間である。
【0067】
複合酸化物膜の積層体が形成されている共通電極11を焼成する雰囲気は、不活性ガス雰囲気及び空気等の酸素を含む雰囲気のいずれであってもよい。このとき、雰囲気は、常圧であってもよいし、減圧されていてもよい。
【0068】
複合酸化物膜の積層体の厚さは、通常、1〜5μmである。
【0069】
次に、複合酸化物膜の積層体上に個別電極を形成することにより、本発明の電気機械変換素子が得られる。
【0070】
個別電極を構成する材料としては、特に限定されないが、白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム等の白金族金属、白金−ロジウム合金等の白金族合金、SrRuO、CaRuO、(Sr1−xCa)RuO、LaNiO、SrCoO、(La1−ySr)(Ni1−yCo)O、IrO、RuO等の導電性金属酸化物等が挙げられる。
【0071】
個別電極の厚さは、通常、0.05〜2μmである。
【0072】
複合酸化物膜の積層体上に個別電極を形成する方法としては、特に限定されないが、共通電極11の所定の領域に複合酸化物膜12を形成する方法と同様の方法、図1(b)〜(d)と同様の方法等が挙げられる。
【0073】
なお、共通電極11上に複合酸化物膜の積層体を形成した後、個別電極を形成する前に、前述したように、酸洗浄してもよい。
【0074】
図2に、自己組織化単分子膜13を形成する際に用いられる自己組織化単分子膜形成装置の一例を示す。自己組織化単分子膜形成装置20は、酸洗浄用チャンバー21、自己組織化単分子膜形成用チャンバー22、ホットプレート23、アライナー24及びロボットアーム25が設置されている。
【0075】
このとき、酸洗浄用チャンバー21には、スピナーチャック21a、酸用ノズル21b及び洗浄液用ノズル21cが設置されている。また、自己組織化単分子膜形成用チャンバー22には、スピナーチャック22a、自己組織化単分子膜用ノズル22b、洗浄液用ノズル22c及び超音波発生装置22dが設置されている。
【0076】
スピナーチャック21a及び22aに共通電極11を固定する方式としては、特に限定されないが、バキューム方式、ピン止め方式等が挙げられる。中でも、バキューム方式が好ましい。
【0077】
ホットプレート23は、酸洗浄後の共通電極11を乾燥させる際に用いられる。
【0078】
アライナー24は、投入された共通電極11を所定の位置に合わせる際に用いられる。
【0079】
ロボットアーム25は、共通電極11を移動させる際に用いられる。
【0080】
次に、自己組織化単分子膜形成装置20を用いて、複合酸化物膜の積層体15が形成されている共通電極11上の複合酸化物膜の積層体15が形成されていない領域に自己組織化単分子膜13を形成する方法について、説明する。
【0081】
まず、所定の領域に複合酸化物膜12が形成されている共通電極11をアライナー24に投入した後、アライナー24が共通電極11を所定の位置に合わせる。次に、ロボットアーム24が共通電極11を酸洗浄用チャンバー21に移動させ、スピナーチャック21aに固定する。さらに、酸用ノズル21bから共通電極11に酸又は酸の水溶液を噴射して酸洗浄した後、共通電極11を回転させながら洗浄液用ノズル21cから共通電極11に洗浄液を噴射して洗浄する。次に、ロボットアーム24が共通電極11をホットプレート23に移動させ、共通電極11を乾燥させる。さらに、ロボットアーム24が共通電極11を自己組織化単分子膜形成用チャンバー22に移動させ、スピナーチャック22aに固定する。次に、自己組織化単分子膜用ノズル22bから共通電極11にチオール又はチオールの溶液を噴射して自己組織化単分子膜13を形成した後、共通電極11を回転させながら洗浄液用ノズル22cから洗浄液を噴射して洗浄する。このとき、洗浄液には、超音波発生装置22dにより、超音波が印加されている。さらに、ロボットアーム24が共通電極11をアライナー24に移動させた後、共通電極11を取り出す。
【0082】
なお、所定の領域に複合酸化物膜12が形成されている共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域に自己組織化単分子膜13を形成する際に、自己組織化単分子膜形成装置20を用いてもよい。
【0083】
また、共通電極11上に複合酸化物膜の積層体を形成した後、個別電極を形成する前に、酸洗浄する際に、自己組織化単分子膜形成装置20を用いてもよい。
【0084】
本発明の吐出ヘッドとしては、本発明の電気機械変換素子を有していれば、特に限定されないが、インクジェットヘッド、マイクロポンプ等が挙げられる。
【0085】
図3に、本発明の吐出ヘッドの一例として、インクジェットヘッド30を示す。インクジェットヘッド30は、ノズル31aが形成されているノズル板31、液室基板32及び振動板33を順次積層することにより液室34が形成されている。また、インクジェットヘッド30は、振動板33の圧力室34に対応する領域に、密着層35を介して、共通電極11、複合酸化物膜の積層体16及び個別電極17が順次積層されている電気機械変換素子10が形成されている。
【0086】
ノズル基板31を構成する材料としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、ポリイミド等が挙げられる。
【0087】
液室基板32を形成する方法としては、特に限定されないが、振動板33、密着層35及び電気機械変換素子10が形成されているシリコンウェハをエッチングする方法等が挙げられる。
【0088】
液室基板32の厚さは、通常、100〜600μmである。
【0089】
振動板33を構成する材料としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0090】
振動板33を形成する方法としては、特に限定されないが、スパッタ法、蒸着法等が挙げられる。
【0091】
振動板33の厚さは、通常、0.1〜10μmであり、0.5〜3μmが好ましい。
【0092】
密着層35を構成する材料としては、特に限定されないが、チタン、タンタル、酸化チタン、酸化タンタル、窒化チタン、窒化タンタル等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0093】
なお、密着層35は、必要に応じて、省略することができる。
【0094】
図4に、本発明の吐出ヘッドの他の例として、インクジェットヘッド30'を示す。インクジェットヘッド30'は、複数の電気機械変換素子10、ノズル31a及び液室34が一列に設置されている以外は、インクジェットヘッド30と同一の構成である。
【0095】
図5に、本発明のインクジェット記録装置の一例を示す。なお、図5(a)及び(b)は、それぞれ斜視図及び側面図である。
【0096】
インクジェット記録装置100は、本体101の内部に、主走査方向に移動することが可能なキャリッジ102、キャリッジ102に搭載されているインクジェットヘッド30'及びインクカートリッジ103が収納されている。また、インクジェット記録装置100は、本体101の下部の前方から、用紙Pを積載することが可能な給紙カセット104を抜き差し自在に装着することができ、用紙Pを手差しで供給するための手差しトレイ105を開倒することができる。さらに、インクジェット記録装置100は、給紙カセット104又は手差しトレイ105から供給される用紙Pに画像を記録した後、後方に装着されている排紙トレイ106に排出する。
【0097】
キャリッジ102は、左右の側板(不図示)に支持されている主ガイドロッド107と従ガイドロッド108により、主走査方向に摺動自在に保持されている。キャリッジ102には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びブラック(Bk)の各色のインクを吐出するインクジェットヘッド30'がインクを下方に吐出するように装着されている。このとき、インクジェットヘッド30'は、複数の電気機械変換素子10、ノズル31a及び液室34が主走査方向と交差する方向に一列に設置されている。また、キャリッジ102には、インクジェットヘッド30'に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ103が交換可能に装着されている。
【0098】
インクカートリッジ103は、大気と連通する大気口(不図示)が上方に形成されており、インクジェットヘッド30'にインクを供給するための供給口(不図示)が下方に形成されており、インクが充填されている多孔質体(不図示)が内部に設置されている。このとき、多孔質体の毛管力により、インクジェットヘッド30'に供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
【0099】
なお、各色のインクを吐出するインクジェットヘッド30'を配列する代わりに、各色のインクを吐出するインクジェットヘッド30を設置してもよい。
【0100】
ここで、キャリッジ102は、用紙Pを搬送する方向に対して下流側が、主ガイドロッド107により摺動自在に支持されており、用紙Pを搬送する方向に対して上流側が、従ガイドロッド108により摺動自在に支持されている。そして、主走査モーター109により回転駆動される駆動プーリ110と従動プーリ111との間に、タイミングベルト112が支持されており、タイミングベルト112をキャリッジ102に固定している。このため、主走査モーター109を回転させることにより、キャリッジ102を主走査方向に往復移動させることができる。
【0101】
一方、給紙カセット104に積載された用紙Pをインクジェットヘッド30'の下方に搬送するために、給紙カセット104から用紙Pを分離して供給する給紙ローラ113及びフリクションパッド114と、用紙Pを案内するガイド部材115と、供給された用紙Pを反転させて搬送する搬送ローラ116と、搬送ローラ116の周面に押し付けられる搬送コロ117及び搬送ローラ116から用紙Pを送り出す角度を規定する先端コロ118が設置されている。搬送ローラ116は、副走査モーター119によりギヤ列(不図示)を介して回転駆動される。
【0102】
そして、キャリッジ102の主走査方向の移動範囲に対応して、搬送ローラ116により搬送された用紙Pをインクジェットヘッド30'の下方で案内するガイド部材120が設置されている。ガイド部材120の用紙Pを搬送する方向に対して下流側には、用紙Pを排出する方向に搬送するために回転駆動される搬送コロ121及び拍車122が設置されている。さらに、搬送コロ121及び拍車122により搬送された用紙Pを案内するガイド部材123及び124、ガイド部材123及び124により案内された用紙Pを排紙トレイ106に排出する排紙ローラ125及び拍車126が設置されている。
【0103】
用紙Pに画像を記録する時は、キャリッジ102を移動させながら、画像信号に応じてインクジェットヘッド30'を駆動することにより、停止している用紙Pにインクを吐出して1行分を記録した後、用紙Pを搬送する操作を繰り返す。画像の記録が終了した信号又は用紙Pの後端が記録領域に到達した信号を受けると、画像を記録する動作を終了し、用紙Pを排出する。
【0104】
また、キャリッジ102が移動する方向に対して右端の記録領域の外側には、インクジェットヘッド30'の吐出不良を回復するための回復装置127が設置されている。回復装置127は、キャップ手段(不図示)、吸引手段(不図示)及びクリーニング手段(不図示)を有する。キャリッジ102は、待機中に、回復装置127の側に移動してキャッピング手段によりインクジェットヘッド30'がキャッピングされ、ノズルを湿潤状態に保持することにより、インクの乾燥による吐出不良を防止する。また、画像を記録する途中に画像の記録と関係しないインクを吐出することにより、全てのノズルにおけるインクの粘度を一定にして、安定した吐出性能を維持することができる。
【0105】
なお、吐出不良が発生した場合には、キャッピング手段によりインクジェットヘッド30'のノズルを密封し、吸引手段により、チューブを介して、ノズルからインク、気泡等を吸い出し、クリーニング手段により、ノズルに付着したインク、ゴミ等を除去して、吐出不良を回復することができる。このとき、吸引手段により吸引されたインクは、本体101の下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜の内部に設置されているインク吸収体に吸収される。
【実施例】
【0106】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0107】
[実施例1]
厚さが725μmのシリコンウェハ上に、厚さが1μmの熱酸化膜(振動板33)を形成した後、スパッタ法を用いて、厚さが50nmのチタン膜(密着層35)を形成した。次に、スパッタ法を用いて、厚さが200nmの白金膜(共通電極11)を形成した後、ゾルゲル法を用いて、厚さが100nmのPZT膜を形成した。さらに、共通電極11上に、厚さが1.2μmのフォトレジストTSMR8800(東京応化社製)のパターンを形成した後、アルゴンプラズマ処理により、不要なPZT膜をエッチングしてPZT膜(複合酸化物膜12)を形成し、フォトレジストを除去した。
【0108】
次に、自己組織化単分子膜形成装置20(図2参照)を用いて、共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域に自己組織化単分子膜13を形成した。具体的には、まず、自己組織化単分子膜用ノズル22bから共通電極11にドデカンチオールの0.01mol/Lエタノール溶液を噴射して5分間放置した。次に、共通電極11が形成されたシリコンウェハを500rpmで回転させて、ドデカンチオールのエタノール溶液を振り切りながら、洗浄液用ノズル22cからエタノールを600mL/minで2分間噴射して洗浄した。このとき、エタノールには、超音波発生装置22dにより、1MHzの超音波が印加されている。さらに、洗浄液用ノズル22cからエタノールを噴射せずに、1500rpmで回転させて、共通電極11が形成されたシリコンウェハに付着しているエタノールを振り切った。
【0109】
次に、共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域に、自己組織化単分子膜13が形成されていることを確認するため、接触角計を用いて撥液性を評価した。その結果、自己組織化単分子膜13を形成した共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域は、中心部及び外周部のいずれにおいても、水に対する接触角が105°であり、メトキシエタノールに対する接触角が73°であった。一方、自己組織化単分子膜13を形成する前の共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域は、中心部及び外周部のいずれにおいても、水に対する接触角及びメトキシエタノールに対する接触角が5°以下であった。このことから、共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域には、中心部及び外周部のいずれにおいても、自己組織化単分子膜13が形成されていることが確認できた。
【0110】
また、共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されている領域は、水に対する接触角及びメトキシエタノールに対する接触角が5°であった。このことから、共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されている領域に、自己組織化単分子膜13が形成されていないことが確認できた。
【0111】
次に、インクジェット装置を用いて、共通電極11上の自己組織化単分子膜13が形成されていない領域にゾルゲル液14を塗布した。
【0112】
このとき、ゾルゲル液14は、以下のようにして合成した。まず、酢酸鉛三水和物をメトキシエタノール中に溶解させた後、脱水することにより、酢酸鉛のメトキシエタノール溶液を得た。次に、テトライソプロポキシチタン、テトライソプロポキシジルコニウムをメトキシエタノール中に溶解させ、加水分解させた後、酢酸鉛のメトキシエタノール溶液と混合することにより、0.1mol/LのPb(Zr0.53,Ti0.47)Oの前駆体ゾル(ゾルゲル液14)を得た。
【0113】
なお、焼成時のいわゆる鉛抜けによる結晶性の低下を防ぐため、化学量論比に対して、鉛量が10mol%過剰になるように、酢酸鉛を添加した。
【0114】
次に、ゾルゲル液14が塗布されたシリコンウェハを120℃で乾燥させた後、500℃で仮焼し、厚さが90nmの複合酸化物膜14'を形成し、複合酸化物膜の積層体15を形成した。このとき、共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域は、水に対する接触角及びメトキシエタノールに対する接触角が5°以下であった。このことから、共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域に、自己組織化単分子膜13が存在していないことが確認できた。
【0115】
また、X線光電子分光分析装置を用いて、共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域を分析した。
【0116】
図6に、X線光電子分光分析によるO1sピークの分析結果を示す。なお、図6(a)、(b)、(c)及び(d)は、それぞれ共通電極11を形成した後、仮焼した後、後述する酸洗浄した後及び酸洗浄せずに5回仮焼した後の分析結果である。図6(a)及び(b)から、仮焼した後の共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域は、酸素含有量が増加していることがわかる。また、図6(b)及び(d)から、5回仮焼した後の酸素含有量の増加率が低下しているため、酸素含有量には飽和状態があると考えられる。なお、酸素含有量が増加しているのは、白金の表面に酸素が吸着しているためである。
【0117】
次に、自己組織化単分子膜形成装置20(図2参照)を用いて、複合酸化物膜の積層体15が形成されたシリコンウェハを酸洗浄した。具体的には、まず、酸用ノズル21bから共通電極11に、pHが3.3の酢酸水溶液を噴射して1分間放置した。次に、複合酸化物膜の積層体15が形成されたシリコンウェハを500rpmで回転させて、酢酸水溶液を振り切りながら、洗浄液用ノズル21cから水を2分間噴射して洗浄した。さらに、洗浄液用ノズル21cから水を噴射せずに、1500rpmで回転させて、複合酸化物膜の積層体15が形成されたシリコンウェハに付着している水を振り切った。
【0118】
なお、酢酸水溶液のpHは、ガラス電極を用いて、25℃で測定した。
【0119】
次に、自己組織化単分子膜形成装置20(図2参照)を用いて、酸洗浄されたシリコンウェハを乾燥させた。具体的には、酸洗浄されたシリコンウェハをホットプレート23に移動させ、120℃で1分間乾燥させた。このとき、図6(b)及び(c)から、共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域は、酸素含有量が減少していることがわかる。
【0120】
次に、自己組織化単分子膜形成装置20(図2参照)を用いて、上記と同様にして、共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域に自己組織化単分子膜13を形成した。このとき、自己組織化単分子膜13を形成した共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域は、中心部及び外周部のいずれにおいても、水に対する接触角が104°であり、メトキシエタノールに対する接触角が71°であった。一方、共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されている領域は、水に対する接触角及びメトキシエタノールに対する接触角が5°であった。
【0121】
次に、インクジェット装置を用いて、上記と同様にして、共通電極11上の自己組織化単分子膜13が形成されていない領域にゾルゲル液14を塗布した。
【0122】
さらに、ゾルゲル液14が塗布されたシリコンウェハを120℃で乾燥させた後、500℃で仮焼し、厚さが90nmの複合酸化物膜14'をさらに積層した。
【0123】
次に、複合酸化物膜の積層体を、上記と同様にして、酸洗浄した後、複合酸化物膜14'をさらに積層するプロセスを4回繰り返し、厚さが640nmの複合酸化物膜の積層体を形成した。このタイミングで、急速熱処理装置(IRTA)を用いて、700℃で焼成したところ、クラックは発生しなかった。
【0124】
さらに、複合酸化物膜の積層体を、上記と同様にして、酸洗浄した後、複合酸化物膜をさらに積層するプロセスを6回繰り返し、厚さが1180nmの複合酸化物膜の積層体を形成した。このタイミングで、急速熱処理装置(IRTA)を用いて、700℃で焼成したところ、クラックは発生しなかった。
【0125】
次に、イソプロピルアルコールを用いて、複合酸化物膜の積層体が形成されているシリコンウェハを洗浄した後、スパッタ法を用いて、厚さが200nmの白金膜を形成した。さらに、厚さが1.8μmのフォトレジストTSMR8800(東京応化社製)のパターンを形成した後、Ar/Oプラズマ処理により、不要な白金膜をエッチングし、フォトレジストを除去して、電気機械変換素子を得た。
【0126】
図7に、複合酸化物膜の積層体のP−Eヒステリシス曲線に示す。図7から、複合酸化物膜の積層体は、比誘電率が1220、誘電損失が0.03であった。
【0127】
[実施例2]
pHが3.3の酢酸水溶液の代わりに、pHが3.8の酢酸水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、電気機械変換素子を得た。複合酸化物膜の積層体は、比誘電率が983、誘電損失が0.02であった。
【0128】
[実施例3]
pHが3.3の酢酸水溶液の代わりに、pHが3.3の塩酸を用いた以外は、実施例1と同様にして、電気機械変換素子を得た。複合酸化物膜の積層体は、比誘電率が1220、誘電損失が0.03であった。
【0129】
[比較例1]
酸洗浄しなかった以外は、実施例1と同様にして、電気機械変換素子を得た。複合酸化物膜の積層体は、形状精度が低下していたが、比誘電率が1320、誘電損失が0.02であった。
【0130】
表1に、実施例1〜3、比較例1の複合酸化物膜の積層体の比誘電率及び誘電損失の評価結果を示す。
【0131】
【表1】

表1から、実施例1〜3の複合酸化物膜の積層体は、比較例1の複合酸化物膜の積層体と同様に、誘電損失が0.04以下であるため、実施例1〜3の電気機械変換素子は、電気機械変換特性に優れることがわかる。また、実施例1〜3の複合酸化物膜の積層体は、比誘電率も比較例1の複合酸化物膜の積層体と同等であることがわかる。
【0132】
図8に、複合酸化物膜を形成し、複合酸化物膜の積層体を形成するプロセスの回数に対する自己組織化単分子膜13を形成した共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域の水に対する接触角の関係を示す。
【0133】
図8から、実施例1〜3の自己組織化単分子膜13を形成した共通電極11上の複合酸化物膜12が形成されていない領域は、複合酸化物膜を形成し、複合酸化物膜の積層体を形成するプロセスの回数が増加しても、水に対する接触角が90°以上であり、疎水化されていることがわかる。
【0134】
一方、比較例1の自己組織化単分子膜を形成した共通電極上の複合酸化物膜12が形成されていない領域は、複合酸化物膜を形成し、複合酸化物膜の積層体を形成するプロセスの回数が増加すると、水に対する接触角が90°未満となり、疎水化されていないことがわかる。
【符号の説明】
【0135】
11 共通電極
12 複合酸化物膜
13 自己組織化単分子膜
14 ゾルゲル液
14' 複合酸化物膜
15 複合酸化物膜の積層体
30,30' インクジェットヘッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0136】
【特許文献1】特開2011−9726号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域に複合酸化物膜が形成されている電極上の該複合酸化物膜が形成されていない領域に自己組織化単分子膜を形成して疎水化させる第一の工程と、
該電極上の自己組織化単分子膜が形成されていない領域に該複合酸化物を生成することが可能なゾルゲル液を塗布する第二の工程と、
該ゾルゲル液が塗布された電極を仮焼して該複合酸化物を生成させる第三の工程と、
該複合酸化物が生成した電極を酸洗浄する第四の工程と、
該酸洗浄された電極上の該複合酸化物膜が形成されていない領域に自己組織化単分子膜を形成して疎水化させる第五の工程と、
該電極上の自己組織化単分子膜が形成されていない領域に該複合酸化物を生成することが可能なゾルゲル液を塗布する第六の工程と、
該ゾルゲル液が塗布された電極を仮焼して該複合酸化物を生成させる第七の工程を有することを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
【請求項2】
前記第七の工程の後に、前記第四の工程、前記第五の工程、前記第六の工程及び前記第七の工程を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の電気機械変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記第四の工程は、ノズルから前記複合酸化物が生成した電極に、酸又は酸の水溶液を噴射する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気機械変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記酸の水溶液は、25℃におけるpHが2以上5以下であることを特徴とする請求項3に記載の電気機械変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記第一の工程は、ノズルから所定の領域に複合酸化物膜が形成されている電極に、チオール又はチオールの溶液を噴射する工程を含み、
前記第五の工程は、ノズルから前記複合酸化物が生成した電極に、チオール又はチオールの溶液を噴射する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気機械変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記第一の工程及び前記第五の工程は、それぞれ、ノズルから前記チオール又はチオールの溶液が噴射された電極に、超音波が印加されている洗浄液を噴射する工程をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の電気機械変換素子の製造方法。
【請求項7】
前記電極が白金電極であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気機械変換素子の製造方法。
【請求項8】
前記複合酸化物がチタン酸ジルコン酸鉛であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気機械変換素子の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電気機械変換素子の製造方法により製造されていることを特徴とする電気機械変換素子。
【請求項10】
請求項9に記載の電気機械変換素子を有することを特徴とする吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項10に記載の吐出ヘッドを有することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−77793(P2013−77793A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−950(P2012−950)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】