説明

電気機械式装置および電気機械式装置の被駆動構成要素にかかる負荷を求める方法

【課題】装置をより複雑にしたり装置の全体的な信頼性を低下させることなく、装置を確実に保護する過負荷保護装置を提供する。
【解決手段】回転または固定の電気機械式装置の被駆動構成要素(10)にかかる負荷を求める方法は、回転可撓性を有するシャフト部(20)によって、軸を中心に回転可能な駆動ロータ(14)を備える駆動構成要素(12)と被駆動構成要素(10)とを動作可能に連結することを含む。駆動ロータ(14)と被駆動構成要素(10)との角度位置が求められる。被駆動構成要素(10)にかかる負荷の大きさが、駆動ロータ(14)と被駆動構成要素(10)との角度位置の違いと、シャフト部(20)の既知のねじり剛性に基づいて計算される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、電気機械式装置に関し、特に、電気機械式装置におけるトルクの検出に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータおよび電気モータの駆動に関する技術における最近の進歩によって、航空機、宇宙船、船や車両に搭載された従来の機械式、空気圧式、油圧式の装置を電動装置に置き換えることが有利になっている。電動装置は、効率および信頼性が高く、作動液による環境危険や火災危険が少なく、保守費用が安価で、かつ軽量で外装が小さいという利点を有する。電気機械式アクチュエータ、始動発電機、電動ポンプ、などの耐負荷用途では、安全な設計マージンを超える回転トルクや過負荷トルクが一時的に装置に加わることがある。過負荷状態における安全性は大変重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
機械的な過負荷状態を検出する必要性は、装置および外部の環境に機械的または電気的な損傷を与えないように、適切な時間枠内で負荷を検出してこれに対処することを要求する。典型的に、機械的および電気的な負荷/力センサが駆動装置の保護に使用される。しかし、作動装置にセンサを追加すると、信頼性が低下するとともに装置全体がより複雑になる。機械的な作動装置は、設計閾値を超える機械的負荷を取り除く確実な機構を必要とする。シヤーシャフト、ブレーキ、スリップクラッチ、負荷センサなどの安全機能は、従来より過負荷に対する保護を提供してきたが制限がある。同様に、油圧式や空気圧式の作動装置も、装置圧力/装置負荷が設計閾値を超えたときに開くばね付勢された安全弁を典型的に使用する。当該技術では、装置をより複雑にしたり装置の全体的な信頼性を低下させることなく、装置を確実に保護する過負荷保護装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一形態では、電気機械式装置は、軸を中心に回転可能な駆動ロータを備える駆動構成要素と、上記軸を中心に回転可能な被駆動構成要素と、を含む。回転に対して可撓性を有するシャフト部が、駆動ロータおよび被駆動構成要素と動作可能に設けられている。シャフト部は、軸を中心とする駆動ロータの回転によって被駆動構成要素が上記軸を中心に回転駆動されるように、駆動ロータおよび被駆動構成要素と動作可能に連結されている。駆動ロータと被駆動構成要素との回転量の違いが、被駆動構成要素にかかる負荷を示す。
【0005】
本発明の他の形態では、電気機械式装置の被駆動構成要素にかかる負荷を求める方法は、回転に対して可撓性を有するシャフト部によって、軸を中心に回転可能な駆動ロータを備える駆動構成要素と被駆動構成要素とを動作可能に設けることを含む。シャフト部は、これらに動作可能に連結される。駆動ロータと被駆動構成要素との角度位置が求められる。被駆動構成要素にかかる負荷の大きさが、駆動ロータと被駆動構成要素との角度位置の違いおよびシャフト部の既知のねじり剛性に基づいて計算される。
【0006】
上記のおよび他の利点や特徴は、以下の実施形態および図面によってさらに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】電気機械式装置の一実施例の概略説明図である。
【図2】電気機械式装置の一実施例の部分断面図である。
【図3】電気機械式装置の他の実施例の概略説明図である。
【図4】電気機械式装置の部分断面図である。
【図5】電気機械式作動装置の一実施例に加わるトルクを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1には、例えばタービンエンジン10である第1の構成要素と、例えばタービンエンジン10の始動モータ12である第2の構成要素と、を含む電気機械式装置が示されている。いくつかの実施例では、始動モータ12は電気モータである。始動モータ12は、始動ロータ14を含み、この始動ロータ14は、該始動ロータ14とタービンロータ16との間に延在するタービンシャフト18を介してタービンロータ16に連結されている。タービンシャフト18は、始動ロータ14とタービンロータ16との間に設けられ、回転に対して可撓性のあるシャフト部20を含む。
【0009】
タービンロータ16および始動ロータ14の両方の角度位置がいつでも分かっている。いくつかの実施例では、始動モータ12とタービンエンジン10とは、回転位置データを得るために始動ロータ14およびタービンロータ16のそれぞれの角度位置を検出可能な少なくとも1つのロータ位置センサ22をそれぞれ含む。始動モータ12は、スイッチドリラクタンス(SR)モータ、ブラシレスDCモータ、誘導モータ、または始動ロータ14のコミュテーションに使用される既存のロータ位置センサ22を含む他のモータとすることができる。他のモータを使用し、始動ロータ14およびタービンロータ16の一方または両方の角度位置を求めるためにタービンシャフト18に固定されたリゾルバなどの位置センサ22を使用することもできる。他の実施例では、始動ロータ14の位置がロータ位置センサ22を用いずに求められる。このような実施例では、始動ロータ14の角度位置は、始動ロータ14が始動モータ12の軸を中心に回転するときの電圧分布および/または電流などの既知のプロファイルを用いるアルゴリズムによって数学的に求められる。始動モータ12の電圧プロファイルは、始動ロータ14の角度位置の関数として既知なので、所望の点における電圧および/または電流を測定し、測定値を既知のプロファイルと比較することによって始動ロータ14の角度位置を求めることができる。
【0010】
回転可撓性があるシャフト部20は、始動ロータ14とタービンロータ16の間のタービンシャフト18に沿って、実施例によってはタービンシャフト18の2つの回転剛性のある部分の間に設けられている。図2に示すように、シャフト部20は、タービンシャフト18に連結されたねじりばね28とすることができる。ねじりばね28は、既知のばね定数すなわち与えられる単位力当たりのねじりを有する。図2では、シャフト部20としてねじりばね28が示されているが、与えられる単位力当たり既知の回転可撓性すなわちねじりを有する他のシャフト部20の構成も使用することができる。例えば、シャフト部20は、与えられる単位力当たり既知の回転可撓性を有する中実のシャフトとすることもできる。
【0011】
再び図1を参照すると、始動ロータ14およびタービンロータ16の両方の角度位置と、シャフト部20のばね定数が分かっていることにより、始動ロータ14とタービンロータ16との間の公称の関係が定められ、つまり始動ロータ14の回転位置に対するタービンロータ16の公称位置が得られる。このような構成は、多くの状況で有用である。例えば、始動ロータ14およびタービンロータ16の位置とともにシャフト部20のばね定数が分かっていることにより、タービンエンジン10の負荷を求めることができる。さらに、このような構成は、タービンエンジン10の状態監視に利用可能である。始動ロータ14の位置とタービンロータ16の位置とを同時にサンプリングすることで、デルタ位置を計算することができる。始動ロータ14とタービンロータ16との間のばね定数が既知のため、続いてタービンエンジン10のトルク負荷を求めることができる。トルク負荷が与えられた(温度、空気密度などの)運転条件における公称範囲から外れた場合には、タービンエンジン10の整備を許可することができる。
【0012】
図3には、電気機械式装置の他の実施例が示されている。この実施例では、第1の構成要素は、例えば電気機械式アクチュエータ30であり、この電気機械式アクチュエータ30は、実施例によっては直線式または回転式とすることができ、駆動モータ32に接続されてこれにより駆動される。駆動モータ32は、駆動モータ32の駆動モータロータ34の角度位置が検出可能な少なくとも1つのロータ位置センサ22を含む。
【0013】
電気機械式装置は、モータシャフト38の一端に設けられたブレーキ機構36を含む。図4に示すように、ブレーキ機構36は、モータシャフト38に固定されたブレーキギア40と、ラチェットサーボ機構44に取り付けられたラチェットつめ42と、を含んでもよい。ブレーキギア40は、複数のブレーキギア歯46を有し、これらのブレーキギア歯にラチェットつめが係合することにより、所望の点でモータシャフト38の回転を停止して電気機械式アクチュエータ30の作動を停止することができる。ここでは、ラチェットつめとブレーキギアを含むブレーキ機構36を説明したが、他の種類のブレーキ機構36を含む実施例も本開示内容の範囲内に含まれる。
【0014】
モータシャフト38は、駆動モータ32とブレーキ機構36との間に設けられた回転可撓性を有するシャフト部20を含む。上記と同様に、いくつかの実施例では、シャフト部20は、モータシャフト38に連結されたねじりばね28である。ねじりばね28は、既知のばね定数すなわち与えられた単位力当たりのねじりを有する。ねじりばね28は、ブレーキギアのシャフト50を受け入れるキー溝48を有する。図4には、シャフト部20としてねじりばね28が示されているが、他の形態のシャフト部20も利用できる。例えば、シャフト部20は、与えられた単位力当たり既知の回転可撓性を有する中実のシャフトとしてもよい。
【0015】
電気機械式装置の運転時には、駆動モータ32は、モータシャフト38の回転によって電気機械式アクチュエータ30を所望の位置に駆動する。続いて、ブレーキ機構36が、モータシャフト38の回転を停止するために係合される。電気機械式アクチュエータ30に作用する力によって、モータシャフト38にトルクが作用しうる。このトルクは、シャフト部20を有する駆動モータ32によって監視される。既知のばね定数を有するシャフト部20があることにより、ブレーキ機構36の係合時にモータシャフト38に与えられるトルクによって駆動モータロータ34とモータシャフト38の非可撓性部分52の回転が可能となる。この回転は図5に示されており、負荷がかかっていないロータ14aと負荷がかかったロータ14bとの相対位置が図示されている。ロータ14の運動は、位置センサ22または検出アルゴリズムによって検出される。回転運動の量およびシャフト部20のばね定数が既知のため、加わったトルクを計算することができる。いくつかの実施例では、加わったトルクは、電気機械式装置の完全性または安全性のために所定の限度を有しうる。加わったトルクが所定の限度を超えた場合には、ブレーキ機構36を解除してモータシャフト38の回転を許容し、ひいては電気機械式アクチュエータ30を作動させて、モータシャフト38に加わるトルクを取り除くことができる。
【0016】
シャフト部20を有し、ロータ位置センサ22または他の手段によってロータ位置の検出を行う電気機械式装置では、電気機械式装置10に直接的なトルクセンサを設ける必要性がなくなる。
【0017】
制限された数の実施例のみに関連して本発明を詳細に説明したが、本発明は開示された実施例に限定されるものではない。むしろ、本発明は、本発明の趣旨および範囲と同等である上述していない変形物、変更、代替物や相当する構成をいくつでも含むように改良することができる。加えて、本発明の種々の実施例を説明したが、本発明の形態は説明された実施例のいくつかのみを含みうる。従って、本発明は、上述の説明によって限定されるものではなく、請求項の範囲のみによって限定されるものである。
【符号の説明】
【0018】
10…タービンエンジン
12…始動モータ
14…始動ロータ
16…タービンロータ
18…タービンシャフト
20…シャフト部
22…ロータ位置センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を中心に回転可能な駆動ロータを備える駆動構成要素と、
前記軸を中心に回転可能な被駆動構成要素と、
回転に対して可撓性を有するとともに、前記軸を中心とする駆動ロータの回転によって前記軸を中心に被駆動構成要素が回転駆動されるように、駆動ロータと被駆動構成要素とを動作可能に連結するシャフト部と、を有し、
駆動ロータと被駆動構成要素との回転量の違いが、被駆動要素にかかる負荷を示していることを特徴とする電気機械式装置。
【請求項2】
角度位置を求めるために駆動ロータおよび/または被駆動構成要素と動作可能に設けられた少なくとも1つの位置センサをさらに有することを特徴とする請求項1記載の電気機械式装置。
【請求項3】
駆動構成要素は、スイッチドリラクタンスモータ、ブラシレスDCモータまたは誘導モータのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の電気機械式装置。
【請求項4】
シャフト部は、既知のばね定数を有するねじりばねを備えることを特徴とする請求項1記載の電気機械式装置。
【請求項5】
所望の角度位置で駆動ロータの回転を停止するように構成されたブレーキ機構をさらに有することを特徴とする請求項1記載の電気機械式装置。
【請求項6】
ブレーキ機構が係合したときの駆動ロータの回転量は、被駆動構成要素によって駆動モータに作用するトルクの量を示すことを特徴とする請求項5記載の電気機械式装置。
【請求項7】
ブレーキ機構は、シャフト部に動作可能に連結されているとともに複数のブレーキギア歯を有するブレーキギアと、複数のブレーキギア歯と係合可能なつめと、を有することを特徴とする請求項5記載の電気機械式装置。
【請求項8】
前記つめは、つめ車で動かすことができることを特徴とする請求項7記載の電気機械式装置。
【請求項9】
回転に対して可撓性を有するシャフト部によって、軸を中心に回転可能な駆動ロータを備える駆動構成要素と被駆動要素とを動作可能に連結し、
駆動ロータの角度位置を求め、
被駆動構成要素の角度位置を求め、
駆動ロータと被駆動構成要素との角度位置の違いおよびシャフト部の既知のねじり剛性に基づいて、被駆動構成要素にかかる負荷の大きさを計算することを含むことを特徴とする電気機械式装置の被駆動構成要素にかかる負荷を求める方法。
【請求項10】
駆動ロータおよび/または被駆動構成要素の角度位置を求めることは、これらに動作可能に設けられた1つまたは複数ロータ位置センサによって行われることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
駆動構成要素は、電気モータであることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項12】
駆動ロータの角度位置を求めることは、駆動構成要素の測定された電気的特性と既知のプロファイルとの比較によって行われることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記電気的特性は、電圧および/または電流であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記負荷を所定の限度と比較することを含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項15】
ブレーキ機構を係合させて駆動ロータの回転を停止し、
被駆動構成要素を介して駆動ロータに加わるトルクによって、駆動ロータの角度位置を変更し、
駆動ロータの角度位置の変化量とシャフト部の既知のねじり剛性とによってトルクの大きさを計算することをさらに含むことを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項16】
トルクの大きさが所定の限度を超えた場合に、駆動構成要素からトルクを取り除くことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
トルクは、ブレーキ機構の解除によって取り除かれることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
ブレーキ機構の係合は、ブレーキギアに設けられた複数のブレーキギア歯につめを係合させることを含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項19】
駆動構成要素は、スイッチドリラクタンスモータ、ブラシレスDCモータまたは誘導モータのいずれかを含むことを特徴とする請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−180141(P2011−180141A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43468(P2011−43468)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】