説明

電気用積層板用の貯蔵安定性エポキシ樹脂組成物関連出願の相互参照本出願は、2009年11月6日付で出願された米国特許出願第61/258,858号の優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。

少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分と、メチルエチルケトンとグリコールメチルエーテルアセテートを含む溶媒ブレンドとを含むエポキシ樹脂組成物を提供する。この組成物は、プリプレグおよびそれから製造される複合電気用積層板の製造に使用するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂と、低沸点溶媒と高沸点溶媒を含む溶媒ブレンドとを含む組成物に関し、さらにまた前記組成物から作製されるプリプレグおよび複合積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒とエポキシ樹脂の低粘度混合物は、電気用積層板の製造に使用される。あいにく、このような混合物で使用される望ましい幾つかの高機能エポキシや高臭素化エポキシは、溶解させることが困難であり、したがって溶解性を長期間にわたって維持しない。これは、これらの種類のエポキシを含む樹脂溶液を、製造し、貯蔵し、輸送することを困難にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
エポキシ樹脂組成物であって、少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分と、溶媒ブレンドの全重量に基づいて30重量%以下の量のメチルエチルケトンと少なくとも70重量%の量のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを含む溶媒ブレンドとを含むエポキシ樹脂組成物を提供する。前記組成物は、組成物の固形分含有量に基づいて少なくとも70重量%のエポキシ樹脂含有量と、21℃で少なくとも130日の貯蔵安定性を有する。例えば、前記組成物は、組成物の固形分含有量に基づいて少なくとも85重量%のエポキシ樹脂含有量と、21℃で少なくとも200日の貯蔵安定性を有することができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記組成物の1つの実施形態において、溶媒ブレンドは、75〜85重量%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートと15〜25重量%のメチルエチルケトンを含む。この実施形態の組成物は、少なくとも80重量%のエポキシ樹脂含有量を有することができる。
【0005】
1つの実施形態において、前記組成物は、組成物の固形分含有量に基づいて少なくとも75重量%のエポキシ樹脂含有量と、21℃で少なくとも150日の貯蔵安定性を有し、前記溶媒ブレンドは、約25重量%以下のメチルエチルケトンと少なくとも75重量%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを含む。
【0006】
前記組成物の1つの実施形態において、エポキシ樹脂成分は、臭素化エポキシ樹脂と官能性エポキシ樹脂を含む。この実施形態において、前記組成物は、組成物の固形分含有量に基づいて少なくとも85重量%のエポキシ樹脂含有量と、21℃で少なくとも200日の貯蔵安定性を有することができ、前記溶媒ブレンドは、75〜85重量%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートと15〜25重量%のメチルエチルケトンを含有することができる。
【0007】
また、硬化剤、硬化触媒およびエポキシ樹脂組成物を含むワニスも提供する。ワニス中のエポキシ樹脂組成物は、少なくとも1つのエポキシ樹脂と、溶媒ブレンドであってその全重量に基づいて30重量%以下の量のメチルエチルケトンと少なくとも70重量%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを含有する溶媒ブレンドとを含む。前記組成物は、組成物の固形分含有量に基づいて少なくとも70重量%のエポキシ樹脂含有量と、21℃で少なくとも130日の貯蔵安定性を有する。1つの実施形態において、ワニスは、25℃で4000cPs以下の粘度を有する。
【0008】
また、複合材の形成方法も提供する。この方法は、多孔質強化材料にワニスを含浸させ、含浸多孔質強化材料を少なくとも部分的に硬化させることを含み、前記ワニスは、本明細書に記載のように、硬化剤、硬化触媒およびエポキシ樹脂組成物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の1つの態様は、少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分と、溶媒ブレンドであってメチルエチルケトン(MEK)とグリコールメチルエーテルアセテート(PMA)を含む溶媒ブレンドとを含むエポキシ樹脂組成物を提供する。前記組成物は、プリプレグおよびそれから作製される複合電気用積層板の製作に使用するのに適している。これらの特定の溶媒を適切な比率で用いることによって、本発明者らは、高固形分含有量、低粘度及び長期貯蔵安定性を特徴とする組成物を配合することができることを知見した。高固形分含有量は、電気用積層板の製造に付随する廃溶媒焼却に必要なエネルギーを減少させるので都合がよい。低粘度は、組成物がプリプレグおよび電気用積層板に使用される多孔質強化材料を湿らせ、それに吸収されることを可能にするので、望ましい。組成物の長期貯蔵安定性は、広範な条件下で組成物の製造、輸送および貯蔵を容易にする。
【0010】
前述の特性を達成できるようにする他に、本組成物の溶媒ブレンドは、プリプレグ加工中の溶媒除去プロセスにも影響を及ぼし、プリプレグの改善された表面外観をもたらす。具体的には、低沸点溶媒と高沸点溶媒の適切な組み合わせは、Bステージ化プロセス中に溶媒の段階的な除去を可能にする。低沸点溶媒が除去され、プリプレグが硬化し始めるのにつれて、十分な量の高沸点溶媒がプリプレグ中に残り、最終Bステージ材料上に粗い表面を生じさせることがあるバブルまたはクレーターをあとに残さずにプリプレグから空気を除去することを可能にするのに十分に低い粘度および表面張力を保つ。Cステージまたはプレスプロセス中に均一な樹脂分布を促進する滑らかな表面をもつプリプレグを有することが望ましい。
【0011】
エポキシ樹脂成分:
【0012】
前記組成物のエポキシ樹脂成分は、少なくとも1つのエポキシ樹脂を含み、幾つかの実施形態においては、2つまたはそれ以上のエポキシ樹脂のブレンドを含む。エポキシ樹脂は、少なくとも1個の隣接エポキシ基を含有する化合物である。エポキシ樹脂は、飽和または不飽和の脂肪族、脂環式、芳香族または複素環であることができ、置換することができる。エポキシ樹脂は、モノマーまたはポリマーであることができる。
【0013】
幾つかの実施形態において、エポキシ樹脂成分はポリエポキシドを含むことができる。ポリエポキシドとは、2個以上のエポキシ部分を含有する化合物または化合物の混合物を指す。ポリエポキシドとしては、ポリエポキシドと連鎖延長剤の反応生成物である部分改良型(partially advanced)エポキシ樹脂が挙げられ、前記反応生成物は、平均して、分子当たり2個以上の未反応エポキシド単位を有する。脂肪族ポリエポキシドは、エピハロヒドリンとポリグリコールの反応から調製し得る。脂肪族エポキシドのその他の具体例としては、トリメチルプロパンエポキシド、およびジグリシジル−1,2−シクロヘキサンジカルボキシラートが挙げられる。その他の化合物としては、エポキシ樹脂、例えば多価フェノール(すなわち、分子当たり平均して2個以上の芳香族ヒドロキシル基を有する化合物)のグリシジルエーテルが挙げられる。
【0014】
幾つかの実施形態において、本組成物のエポキシ樹脂成分に使用するエポキシ樹脂としては、少なくとも1つのハロゲン化エポキシ樹脂化合物またはハロゲン含有エポキシ樹脂化合物が挙げられる。本組成物の溶媒ブレンドは、高ハロゲン化(例えば、高臭素化)エポキシ樹脂を用いる用途に適している。なぜならば、本組成物の溶媒ブレンドは、これらの難溶性樹脂を溶解し、長期間溶液で提供し、維持することができるからである。したがって、幾つかの実施形態において、本組成物のハロゲン化エポキシ樹脂は、少なくとも35重量%、少なくとも45重量%、さらには少なくとも55重量%のハロゲン含有量を有することができる。
【0015】
ハロゲン含有エポキシ樹脂は、少なくとも1個の隣接エポキシ基と少なくとも1個のハロゲンを含有する化合物である。ハロゲンは、例えば、塩素または臭素であることができ、好ましくは臭素である。本発明に有用なハロゲン含有エポキシ樹脂の例としては、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びその誘導体が挙げられる。本発明に有用な臭素化エポキシ樹脂の例としては、商業的に入手できる樹脂、例えばDow Chemical Companyから商業的に入手できるD.E.R.(商標)500シリーズ(例えば、D.E.R.560およびD.E.R.542)が挙げられる。
【0016】
ハロゲン含有エポキシ樹脂は、単独で使用してもよいし、1つまたはそれ以上の他のハロゲン含有エポキシ樹脂と組み合わせて使用してもよいし、あるいは1つまたはそれ以上の他の異なる非ハロゲン含有エポキシ樹脂と組み合わせて使用してもよい。ハロゲン化エポキシ樹脂と非ハロゲン化エポキシ樹脂の比率は、本組成物に難燃性を付与するために選択することができる。組成物中のハロゲン化エポキシ樹脂の重量は、使用する特定の化学構造(ハロゲン化エポキシ樹脂のハロゲン含有量により)に応じて変化させることができる。それはまた、その他の難燃剤を、硬化剤および任意の添加剤を含む、組成物に存在させてもよいということに依存する。
【0017】
1つの実施形態において、本発明の組成物に使用するハロゲン化エポキシ樹脂と非ハロゲン化エポキシ樹脂との比率は、組成物の全ハロゲン含有量が、固形分(充填剤を除外する)に基づく重量で2%〜40%の間、好ましくは5%〜30%の間、さらに好ましくは10%〜25%の間にあるような比率である。別の実施形態において、本発明の組成物に使用するハロゲン化エポキシ樹脂と非ハロゲン化エポキシ樹脂の比率は、重量で100:0〜2:98の間、好ましくは100:0〜10:90の間、さらに好ましくは90:10〜20:80の間にある。別の実施形態において、本発明の組成物に使用するハロゲン化エポキシ樹脂と非ハロゲン化エポキシ樹脂の比率は、エポキシ樹脂の全ハロゲン含有量が、固形分に基づく重量で2%〜50%の間、好ましくは4%〜40%の間、さらに好ましくは6%〜30%の間にあるような比率である。
【0018】
本組成物に利用するハロゲン含有エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂化合物は、例えば、官能性エポキシ樹脂または官能性エポキシ樹脂の組み合わせであることができる。例えば、官能性エポキシ樹脂は、エピハロヒドリンと、フェノールまたはフェノール型化合物とから調製できる。
【0019】
1つの実施形態において、本発明の組成物に利用するエポキシ樹脂は、エピハロヒドリンと、フェノールまたはフェノール型化合物とから製造される樹脂を含む。フェノール型化合物としては、分子当たり平均で2個以上の芳香族ヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。フェノール型化合物の例としては、ジヒドロキシフェノール、ビフェノール、ビスフェノール、ハロゲン化ビフェノール、ハロゲン化ビスフェノール、水素化ビスフェノール、アルキル化ビフェノール、アルキル化ビスフェノール、トリスフェノール、フェノール−アルデヒド樹脂、ノボラック樹脂(フェノールと、単純アルデヒド、例えばホルムアルデヒドとの反応生成物である)、ハロゲン化フェノール−アルデヒドノボラック樹脂、置換フェノール−アルデヒドノボラック樹脂、フェノール−炭化水素樹脂、置換フェノール−炭化水素樹脂、フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、アルキル化フェノール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、炭化水素−フェノール樹脂、炭化水素−ハロゲン化フェノール樹脂、炭化水素−アルキル化フェノール樹脂、またはこれらの組み合わせが挙げられる。具体的には、フェノール型化合物としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、テトラブロモビスフェノールA、フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン−置換フェノール樹脂、テトラメチルビフェノール、テトラメチル−テトラブロモビフェノール、テトラメチルトリブロモビフェノール、およびテトラクロロビスフェノールAが挙げられる。
【0020】
エポキシ樹脂成分に有用なビスフェノールA型エポキシ樹脂の例としては、商業的に入手できる樹脂、例えばDow Chemical Companyから商業的に入手できるD.E.R.(商標)300シリーズおよびD.E.R.(商標)600シリーズが挙げられる。本組成物に有用なエポキシノボラック樹脂の例としては、商業的に入手できる樹脂、例えばDow Chemical Companyから商業的に入手できるD.E.N.(商標)400シリーズ(例えば、D.E.N.438およびD.E.N.439)が挙げられる。本組成物の溶媒ブレンドは、高官能性エポキシ樹脂を用いる用途に適している。なぜならば、これらの溶媒ブレンドが、これらの難溶性樹脂を溶解し、これらを溶液で長期間提供し、維持することができるからである。したがって、幾つかの実施形態において、本組成物の前記官能性エポキシ樹脂は、少なくとも1.5、少なくとも3、またはさらには少なくとも6の官能価を有することができる。
【0021】
幾つかの実施形態において、エポキシ成分に利用するエポキシ樹脂としては、エピハロヒドリンとアミンから製造されるエポキシ樹脂が挙げられる。適当なアミンとしては、ジアミノジフェニルメタン、アミノフェノール、キシレンジアミン、アニリン類、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
幾つかの実施形態において、エポキシ成分に利用するエポキシ樹脂としては、エピハロヒドリンとカルボン酸から製造されるエポキシ樹脂が挙げられる。適当なカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロおよび/またはヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、イソフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
幾つかの実施形態において、エポキシ樹脂は、上述のような1つまたはそれ以上のエポキシ樹脂と、1つまたはそれ以上のフェノール型化合物および/または分子当たり平均2個以上の脂肪族ヒドロキシル基を有する1つまたはそれ以上の化合物との反応生成物である改良型エポキシ樹脂である。あるいは、エポキシ樹脂は、カルボキシル置換炭化水素(これは、炭化水素主鎖、好ましくはC−C40炭化水素主鎖と、1個またはそれ以上のカルボキシル部分、好ましくは2個以上、最も好ましくは2個のカルボキシル部分とを有する化合物である)と反応させてもよい。C−C40炭化水素主鎖は、場合により酸素を含有する直鎖または分岐鎖アルカンまたはアルケンであることができる。有用なカルボン酸置換炭化水素の中に、脂肪酸および脂肪酸二量体がある。脂肪酸には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、ペンタデカン酸、マルガリン酸、アラキドン酸、およびこれらの二量体が含まれる。
【0024】
幾つかの実施形態において、エポキシ樹脂は、ポリエポキシドと、2個以上のイソシアネート部分を含有する化合物またはポリイソシアネートとの反応生成物である。例えば、このような反応で製造されるエポキシ樹脂は、エポキシ末端ポリオキサゾリドンであることができる。
【0025】
特定の実施形態において、エポキシ樹脂成分は、臭素化エポキシ樹脂とフェノール性ノボラックエポキシ樹脂とのブレンドである。
【0026】
本組成物は、高固形分組成物であることが望ましい。したがって、幾つかの実施形態において、本組成物は、組成物の全重量に基づいて少なくとも70重量%のエポキシ樹脂固形分含有量を有する。これは、組成物の全重量に基づいて、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%および少なくとも85重量%のエポキシ樹脂固形分含有量を有する組成物を含む。例えば、本組成物の幾つかは、70〜85重量%のエポキシ樹脂含有量を有する。これは、75〜85重量%のエポキシ樹脂含有量を有する組成物を含み、さらにまた80〜85重量%のエポキシ樹脂含有量を有する組成物を含む。
【0027】
エポキシ樹脂固形分含有量は、エポキシ樹脂の試料を、171℃に維持した熱板上のアルミニウム鍋で1時間加熱して試料中に存在し得るあらゆる溶媒を除去し、次いで試料を室温まで冷却することによって測定できる。揮発分%(重量/重量)は、加熱時間中に失われた重量から算出する。精度を保証するために、多数の試料(例えば、3個)を測定する。
【0028】
溶媒ブレンド:
【0029】
組成物の貯蔵安定性と粘度は、溶媒ブレンドのMEKとPMAの比と、固形分含有量の両方との関数である。一般に、所定レベルの貯蔵安定性を維持するために、MEKとPMAの最適比は、高固形分含有量の組成物について上昇する。したがって、種々の実施形態において、溶媒ブレンドは、1:1.5〜1:9のMEK:PMAの重量比を有する。これは、溶媒ブレンドが1:3〜1:9のMEK:PMAの重量比を有する実施形態を含み、さらにまた溶媒ブレンドが1:4〜1:9のMEK:PMAの重量比を有する実施形態を含む。
【0030】
幾つかの特定の実施形態において、前記組成物は、少なくとも80重量%のエポキシ固形分含有量を有し、溶媒ブレンドは、40重量%以下のMEKと少なくとも60重量%のPMAを含み、前記組成物は、21℃で少なくとも60日の貯蔵安定性(以下に記載のような貯蔵安定性)を有する。これは、前記組成物が、少なくとも80重量%のエポキシ固形分含有量を有し、溶媒ブレンドが、20重量%以下のMEKと少なくとも80重量%のPMAを含み、前記組成物が、21℃で少なくとも200日の貯蔵安定性を有する実施形態を含む。また、前記組成物が、少なくとも85重量%のエポキシ固形分含有量を有し、溶媒ブレンドが、40重量%以下のMEKと少なくとも60重量%のPMAを含み、前記組成物が、21℃で少なくとも200日の貯蔵安定性を有する実施形態を含む。
【0031】
他の特定の実施形態において、前記組成物は、少なくとも70重量%のエポキシ固形分含有量を有し、溶媒ブレンドは、20重量%以下のMEKと少なくとも80重量%のPMAを含み、前記組成物は、21℃で少なくとも130日の貯蔵安定性を有する。これは、前記組成物が、少なくとも75重量%のエポキシ固形分含有量を有し、溶媒ブレンドが、20重量%以下のMEKと少なくとも80重量%のPMAを含み、前記組成物が、21℃で少なくとも150日の貯蔵安定性を有する実施形態を含む。
【0032】
溶媒ブレンドは、典型的には組成物の5〜30重量%(例えば、10〜30重量%または15〜30重量%)を占める。
【0033】
貯蔵安定性:
【0034】
この開示のために、貯蔵安定性は、所定の温度でまたは温度範囲内での最小の規定された時間、均質性を維持することができる溶液の能力として定義される。貯蔵安定性は、樹脂と溶媒の適切な組み合わせを正確に測定することによって60gの組成物試料を調製することにより測定できる。樹脂の全ての固体成分を溶液に溶解した後に、3〜15gのアリコートを、20gの透明ガラスバイアルに分け、密封することができる。各アリコートにラベルを貼り付け、次いで特定の温度(例えば、37℃、21℃、または3.3℃)に曝す。定期的に、試料を、その温度調節環境から取り出し、沈殿物と溶液の透明度について肉眼で検査する。小さなガラスバイアルは、不良(failure)を検出することを容易にした。不良は、溶媒のみを入れたバイアルと比較した溶液中の任意の目に見える沈殿物または曇りとして定義した。試料バイアルは、一定の溶媒液面を維持するために試験中は蓋を取らない。
【0035】
多くの状況について、長期貯蔵安定性を最大にすることが重要であるが、それよりも幾分短い期間の貯蔵安定性が、他の状況で許容し得る。以下の実施例で例証するように、本組成物は、様々な時間、貯蔵安定性を提供するために設計することができる。例えば、幾つかの実施形態の組成物は、21℃で少なくとも60日の貯蔵安定性を有する。これは、21℃で少なくとも80日、少なくとも100日、少なくとも120日、少なくとも140日、少なくとも160日、少なくとも180日および少なくとも200日の貯蔵安定性を有する組成物を含む。これらの貯蔵安定性の水準は、安定剤を添加せずに達成できる。
【0036】
ワニス:
【0037】
プリプレグ製作中に多孔質強化材料に含浸させるのに使用する硬化性樹脂組成物(ワニスとして知られている)は、本明細書に記載の種類のエポキシ樹脂組成物であることができ、さらに1つまたはそれ以上の硬化剤と、場合により1つまたはそれ以上の硬化触媒とを含む。
【0038】
硬化剤(curing agent)(架橋剤または硬化剤(hardener)としても知られている)は、エポキシ樹脂成分のエポキシ樹脂のエポキシ基と反応することができる少なくとも1個の基を有する化合物である。適当な硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、例えばジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタンおよびジアミノジフェニルスルホン;酸無水物、例えばヘキサヒドロキシフタル酸無水物およびスチレン−無水マレイン酸コポリマー;イミダゾール類;およびフェノール性硬化剤、例えばフェノールノボラック樹脂;ならびにこれらの混合物が挙げられる。このような硬化剤は、ワニスに硬化させる直前に添加することができ、またはこれらが潜伏性である場合にはワニスに最初から含ませることができる。硬化剤とエポキシ樹脂の比率は、完全に硬化した樹脂を提供するのに適したものであるべきである。存在させ得る硬化剤の量は、使用する特定の硬化剤に応じて変化させることができる(硬化化学反応および硬化剤当量による)。使用する硬化剤の量は、例えば、エポキシ樹脂成分のエポキシ当量当たり約0.3〜約1.5当量の範囲に及ぶことができる。
【0039】
硬化触媒(硬化促進剤または硬化活性剤ともいう)は、エポキシ樹脂のエポキシ基と硬化剤の反応を触媒する。このような触媒としては、窒素含有化合物が挙げられる。窒素含有化合物は、硬化剤と作用して最終製品、例えば構造用複合材料または積層板において硬化剤とエポキシ樹脂の間の不融解性反応生成物(infusible reaction product)を形成することができる。不融解性反応生成物とは、エポキシ樹脂が本質的に完全に硬化していることを意味し、例えば2つの連続するT測定値の間の変化(ΔT)がほとんどないか全くない場合であり得ることを意味する。
【0040】
1つの実施形態において、窒素含有化合物は、複素環窒素化合物、アミン化合物またはアンモニウム化合物である。窒素含有触媒化合物は、イミダゾール、イミダゾールの誘導体、またはこれらの混合物であることができる。適当なイミダゾールの例としては、2−メチルイミダゾール(2−MI)、2−フェニルイミダゾール(2−PI)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、およびこれらの組み合わせが挙げられる。また、適当な触媒化合物の例としては、欧州特許第0 954 553B1号明細書に列記されている触媒化合物が挙げられる。
【0041】
他の公知の一般的な分類の硬化触媒化合物としては、以下に限定されないが、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩、イミダゾリウム塩、アンモニウム塩、およびジアザビシクロ化合物ならびにこれらのテトラフェニルホウ酸塩、フェノール塩およびフェノールノボラック塩が挙げられる。
【0042】
エポキシ樹脂組成物に利用する硬化触媒の量は、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を触媒するのに有効な量である。利用すべき触媒の量は、組成物に利用する成分、加工要件、および製造すべき物品の性能目標に依存する。1つの実施形態において、硬化触媒の量は、エポキシ樹脂に対する重量で(固形分に基づいて)0.001%から10%未満までである。これは、硬化触媒を(固形分に基づいて)0.01重量%〜5重量%有するワニスを含み、さらにまた硬化触媒を(固形分に基づいて)0.02重量%〜2重量%有するワニスを含む。
【0043】
ワニスの諸成分は、任意の順序で一緒に混合することができる。例えば、溶媒ブレンド中にエポキシ樹脂を含む第一の組成物は、硬化剤および/または硬化触媒を含む第二の組成物と混合することができる。全てのその他の成分、例えば添加剤は、同一組成物中に存在させることができ、またはその幾つかを、第一の組成物に存在させてもよいし、その幾つかを、第二の組成物に存在させてもよい。
【0044】
その他の添加剤および溶媒:
【0045】
場合により、本発明のエポキシ樹脂組成物は、特にプリプレグおよび積層板を作製するためにエポキシ樹脂組成物に典型的に使用されるその他の成分をさらに含有していてもよく;前記その他の成分は、前記組成物、またはそれから作製される最終硬化製品の特性または性能に悪影響を及ぼさない。例えば、組成物に有用なその他の任意成分としては、強化剤;硬化阻害剤;充填剤;湿潤剤;着色剤;難燃剤;溶媒;熱可塑性樹脂;加工助剤;蛍光化合物;例えばテトラフェノールエタン(TPE)またはその誘導体;UV遮断性化合物;およびその他の添加剤が挙げられる。また、本発明の組成物は、その他の任意成分、例えば無機充填剤およびその他のこのような成分、例えば以下に限定されないが、染料、顔料、界面活性剤、流れ調整剤、および可塑剤も含むことができる。
【0046】
幾つかの実施形態において、前記組成物は、前記組成物から作製される積層板をUL−94 V−0、V−1、またはV−2試験の下で難燃性にするために、十分な量の臭素化エポキシ樹脂および/またはその他の難燃剤を含む。「UL−94」は、機器の部品用のプラスチック材料の難燃性(Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances)についてのUnderwriters’Laboratory(UL)Bulletin 94 Testsである。試験する材料は、以下の場合にはUL94 V−0と分類される:
・5個の試験片のいずれも、バーナ火炎を取り除いた時にいつでも10秒以上燃焼しない。
・10回の点火試験の合計燃焼時間が、50秒を超えない。
・試験片は、クランプまで火炎または残燼のいずれかを伴って燃焼しない。
・いずれの試験片からも真下の脱脂綿を発火させる燃焼滴下物が落下しない。
・試験片の残燼燃焼が、30秒を超えない。
試験する材料は、以下の場合にはUL94 V−1と分類される:
・5個の試験片のいずれも、バーナ火炎を取り除いた時にいつでも30秒以上燃焼しない。
・10回の点火試験の合計燃焼時間が、250秒を超えない。
・試験片は、クランプまで火炎または残燼のいずれかを伴って燃焼しない。
・いずれの試験片からも真下の脱脂綿を発火させる燃焼滴下物が落下しない。
・試験片の残燼燃焼が、60秒を超えない。
試験する材料は、以下の場合にはUL94 V−2と分類される:
・5個の試験片のいずれも、バーナ火炎を取り除いた時にいつでも30秒以上燃焼しない。
・10回の点火試験の合計燃焼時間が、250秒を超えない。
・試験片は、クランプまで火炎または残燼のいずれかを伴って燃焼しない。
・但し、このような燃焼小片(piece)が、試験片から落下してもよく、これはほんの一瞬燃焼し、その幾つかが真下の脱脂綿を若干発火させる。
・試験片の残燼燃焼が、60秒を超えない。
【0047】
粘 度:
【0048】
プリプレグおよび電気用積層板(以下に記載のような)の形成に使用するためのワニスを含め、エポキシ樹脂組成物の粘度は、組成物をポンプ輸送することを可能にし、組成物が線維強化材料を湿らすのに十分に低いものであることが望ましい。したがって、幾つかの実施形態において、前記組成物は、25℃の温度で4000cPs以下の粘度を有する。これは、25℃の温度で3000cPs以下の粘度を有する組成物を含み、さらにまた25℃の温度で2000cPs以下の粘度を有する組成物を含み、なおさらに25℃の温度で1000cPs以下の粘度を有する組成物を含む。
【0049】
この開示のために、粘度は、ASTM D445に記載されている標準試験法で測定する。この方法は、目盛り付きガラス毛細管粘度計で、規定温度での重力下で流れる液体の比体積についての時間を測定する。得られる値を、動粘度と呼び、液体の密度を乗じた場合には、動的粘度が得られる。
【0050】
プリプレグおよび積層板:
【0051】
本発明の別の態様は、本エポキシ樹脂組成物から作製されるプリプレグおよび複合材料を提供する。
【0052】
用語「プリプレグ」は、硬化性樹脂組成物、例えば本明細書に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸させた多孔質強化材料の複合材料を指す。多孔質強化材料の含浸は、種々の方法で、例えば、多孔質強化材料を硬化性樹脂組成物に浸す方法、多孔質強化材料に硬化性樹脂組成物を噴霧する方法、多孔質強化材料を硬化性樹脂組成物の流れに曝す方法および多孔質強化材料に硬化性樹脂組成物を真空浸潤させる方法で行なうことができる。含浸後に、多孔質強化材料表面の任意の過剰の樹脂組成物を、流出させるか、または除去して、「プリプレグ」を得る。プリプレグを製作できる多孔質強化材料の例としては、線維材料、例えば線維、織布、線維メッシュ、線維マット、および不織アラミド強化材料、例えばDuPont(ウイルミントン、デラウエア州)から入手できる商品名THERMOUNTとして販売されている不織アラミド強化材料が挙げられる。このような材料は、例えば、ガラス、ガラス繊維、石英、紙(これは、セルロース系または合成品であってもよい)、熱可塑性樹脂基材、例えばアラミド強化材料、ポリエチレン、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリ(p−フェニレンベンゾビスチアゾール)、シンジオタクチックポリスチレン、カーボン、グラファイト、セラミックまたは金属から作製することができる。
【0053】
用語「Bステージプリプレグ」は、プリプレグが部分硬化を受けているように、高められた温度で加工を受けているプリプレグを指す。
【0054】
用語「エポキシプリプレグ」は、エポキシ樹脂組成物を含浸させた多孔質強化材料の複合材料から作製されたプリプレグを意味する。
【0055】
用語「積層板」は、プリプレグの少なくとも1つの層を含む多層構造物の多数の層を、プリプレグの層が完全にまたは本質的に完全に硬化するように、高められた温度および圧力の下で一緒にプレスすることによって作製される物品を指す。「電気用積層板」とは、その層の1つが導電性材料、例えば金属箔からなる積層板を指す。
【0056】
積層板は、多孔質強化材料とエポキシ樹脂組成物とを、多孔質強化材料がエポキシ樹脂組成物でコーティングされるような条件下で接触させることによって製造できる。その後に、コーティングされた強化材料は、溶媒を蒸発させるのに十分な温度であるが、前記樹脂組成物が熱暴露中に有意な硬化を受ける温度よりも低い温度に加熱することができるが、エポキシ樹脂成分の部分硬化(Bステージ化)が、熱暴露中に生じることができる。
【0057】
プリプレグの1つまたはそれ以上のシートは、場合により導電性材料、例えば銅の1つまたはそれ以上のシートと共に積層板に加工できる。このようなさらなる加工において、コーティングされた強化材料の1つまたはそれ以上のセグメントまたは部分を、相互に接触させるおよび/または導電性材料と接触させる。その後に、接触させた部分を、エポキシ樹脂を硬化させるのに十分な高められた圧力および温度に暴露させ、そこで隣り合った部分の樹脂同士が反応してエポキシ樹脂マトリックスを形成する。硬化させる前に、前記部分は、所望の形状と厚みの部分に切断し、積み重ねることができるか、または折りたたみ、積み重ねることができる。幾つかの実施形態において、積層板または最終製品は、プレスの他に後硬化に供することが望ましい。この工程は、硬化反応を完結させることを目的とする。この後硬化工程は、あらゆる望まれていない揮発性成分を除去するために真空中で行なってもよい。
【実施例】
【0058】
材 料:
【0059】
エポキシ樹脂成分に使用するエポキシ樹脂は、D.E.R.560およびD.E.N.438である(両方共に、Dow Chemical Companyから入手できる)。D.E.R.は、高臭素化エポキシであり、440〜470のエポキシ当量(EEW)および47〜51重量%の臭素含有量までテトラブロモビスフェノールAを用いて改良された(advanced)テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。D.E.N.438は、176〜181のEEWおよび3.6の官能価を有するフェノール−ホルムアルデヒドエポキシノボラックである。
【0060】
溶媒ブレンドに使用する溶媒は、MEKとDow Chemical Companyから入手できるDowanol PMAである。
【0061】
方 法:
【0062】
51.7kgの量のD.E.R.560エポキシ樹脂と、51.7kgの量のD.E.N.438エポキシ樹脂とを、混合圧力容器で120℃(これは、両方の樹脂の融点よりも高いが、DOWANOL PMAの沸点(146℃)よりも低い)で加熱する。溶融し、混合した時点で、十分な量のDowanol PMAを、PMA含有量が17.0kgになるまで加える。次いで、温度をMEKの沸点(80℃)よりも下方に低下させる。次いで、十分な量のMEKを、MEK含有量が5.7kgになるまで加える。得られる溶液を、室温まで冷却し、さらに0.5〜1時間混合する。次いで、試料を、樹脂が溶解したことを目視観察するために採取する。試料が溶解していると思われる場合には、エポキシ樹脂固形分の全てが溶解していることを確認するために分析する。固形分含有量を測定するために、エポキシ樹脂の試料を、171℃に維持した熱板上のアルミニウム鍋で1時間加熱して試料中に存在し得る任意の溶媒を除去し、次いで冷却する。揮発分%(重量/重量)を、加熱時間中に失われた重量から算出する。精度を保証するために、多数の試料を測定する。次いで、生成物を、55ガロンドラムに25ミクロンフィルターで濾過する。
【0063】
得られるエポキシ樹脂組成物は、82.5重量%のエポキシ固形分含有量、3506cPsの室温粘度および263のEEWを有していた。
【0064】
異なるエポキシ樹脂固形分含有量と異なるMEK:PMAの比を有するその他のエポキシ樹脂組成物を、上記と同じ方法を使用して製造した。
【0065】
結 果:
【0066】
前記組成物のそれぞれの貯蔵安定性を、組成物が機能しなくなるまでまたは219日が経過するまで、一定期間にわたって測定した。貯蔵安定性は、3つの温度:37℃、21℃および3.3℃で測定した。貯蔵安定性測定の結果を、表1に示す。25℃での特定の組成物の粘度測定値を、表2に示す。Fは、目に見える沈殿物がガラス試料ビンにおいて明らかであったことを意味する不良を示す。nvは、目に見える沈殿物が観察されなかったことを示す。
【表1】

【表2】

【0067】
表1および2の結果から、MEKとPMAを適切な比率で使用すると、長期貯蔵安定性、高い固形分含有量および低粘度を有するエポキシ樹脂組成物を提供できることが理解できる。
【0068】
定 義:
【0069】
「ポリマー」とは、同じ種類であるかまたは異なる種類であるかに関わらず、モノマーを重合することによって調製される高分子化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、用語ホモポリマー(通常、1種類のモノマーだけから調製されるポリマーを指すのに用いられる)を包含し、また用語インターポリマーも包含する。「インターポリマー」とは、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。この総称は、コポリマー(通常、2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、および3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されるポリマー、例えばターポリマー、テトラポリマーなどを含む。
【0070】
「組成物(composition)」、「配合物(formulation)」などの用語は、2つまたはそれ以上の成分の混合物またはブレンドを意味する。プリプレグまたはその他の製品を製作する混合物またはブレンドとの関連で、組成物は、混合物の成分全てを含む。
【0071】
「含む(comprising)」という用語及びその派生語は、任意の追加の成分、工程または手順の存在を、これらが具体的に開示されているか否かにかかわらず除外することを意図するものではない。あらゆる誤解を避けるために、「含む」という用語を使用することによって特許請求される任意の方法または組成物は、特にそれに反して明記しない限りは、高分子物質であるか否かにかかわらず、任意の追加の工程、装置、添加剤、補助剤、または化合物を含み得る。これと対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、実施可能性に不可欠ではないものを除いて、任意の後続の列挙の範囲から、任意の他の成分、工程または手順を除外する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に記述または列記されていない任意の成分、工程または手順を除外する。用語「または(あるいは)」は、特に明記しない限りは、列記した構成要素を個々におよび任意の組み合わせで指す。
【0072】
元素の周期律表に対する全ての言及は、CRC Press,Inc.によって2003年に刊行され、著作権保護されている元素の周期律表を指す。また、族に対するあらゆる言及は、族に番号付与するためのIUPACシステムを使用してこの元素の周期律表に示されている族に対するものである。特にそれとは反対に、文脈からの暗示について、または当分野での慣習について明記しない限りは、全ての部および%は、重量に基づき、また全ての試験方法は、この開示の出願日の時点で一般に行なわれている。米国特許実務のために、任意の参照する特許、特許出願または刊行物の内容は、これらの全体が、特に合成法、製品および加工デザイン、ポリマー、触媒、定義(この開示において具体的に提供されるいかなる定義とも矛盾しない範囲で)、および当分野における一般知識の開示に関して、参照により組み込まれる(またはこれらの相当するUSバージョンが、参照によりそのように組み込まれる)。
【0073】
数値範囲は、任意の低い値と任意の高い値の間に少なくとも2単位の隔たりがあることを条件として、1単位ずつの増分で、低い値から高い値までおよび低い値と高い値を含む全ての値を含む。例として、組成特性、物理的特性またはその他の特性、例えば粘度、貯蔵安定性などが、100〜1,000である場合には、全ての個々の値、例えば100、101、102など、および部分範囲、例えば100〜144、155〜170、197〜200などが、明確に列挙されていることを意図する。1未満の値を含むかまたは1よりも大きい小数(例えば、1.1、1.5など)を含む範囲について、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなす。10未満の一桁の数字を含む範囲(例えば、1〜5)について、1単位は、典型的には0.1であるとみなす。これらは、具体的に意図することについての単なる例であり、列挙される最小値と最大値の間の数値の全ての可能な組み合わせが、この開示に明確に記載されているとみなされるべきである。数値範囲は、特に、組成物中のエポキシ樹脂、溶媒、硬化剤および添加剤の量、ならびにこれらの成分を規定する種々の特徴及び特性についてこの開示内で提供される。
【0074】
化合物に関連して使用するように、特に具体的に明示しない限りは、単数形は、全ての異性体を含み、その逆も同様である。
【0075】
本発明を先の説明および実施例によりかなり詳細に説明したが、この詳細は、例証を目的とするものである。当業者は、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神および範囲から逸脱することなく多くの改変および変更を行なうことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂組成物であって、
(a)少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂成分、および
(b)溶媒ブレンドの全重量に基づいて、30重量%以下の量のメチルエチルケトンと少なくとも70重量%の量のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを含む溶媒ブレンド、
を含み、前記組成物の固形分含有量に基づいて少なくとも70重量%のエポキシ樹脂含有量と21℃で少なくとも130日の貯蔵安定性を有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂成分が、臭素化エポキシ樹脂と官能性エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記溶媒ブレンドが、75〜85重量%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートと15〜25重量%のメチルエチルケトンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも80重量%のエポキシ樹脂含有量を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の前記固形分含有量に基づいて少なくとも75重量%のエポキシ樹脂含有量と、21℃で少なくとも150日の貯蔵安定性を有し、前記溶媒ブレンドが、約25重量%以下のメチルエーテルケトンと少なくとも75重量%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の前記固形分含有量に基づいて少なくとも85重量%のエポキシ樹脂含有量と、21℃で少なくとも200日の貯蔵安定性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の前記固形分含有量に基づいて少なくとも85重量%のエポキシ含有量と、21℃で少なくとも200日の貯蔵安定性を有し、前記溶媒ブレンドが、少なくとも60重量%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートと40重量%以下のメチルエチルケトンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
75〜85重量%のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートと15〜25重量%のメチルエチルケトンを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ワニスであって、
(a)硬化剤、
(b)硬化触媒、および
(c)請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物
を含むワニス。
【請求項10】
25℃で4000cPs以下の粘度を有する、請求項9に記載のワニス。
【請求項11】
複合材料の形成方法であって、多孔質強化材料に請求項9に記載のワニスを含浸させ、前記含浸多孔質強化材料を少なくとも部分的に硬化させることからなる複合材料の形成方法。

【公表番号】特表2013−510224(P2013−510224A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537890(P2012−537890)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/052023
【国際公開番号】WO2011/056352
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】