説明

電気的接続装置及びその調整方法

【課題】電気的接続装置の組み立て及び位置調整を容易にして、電気的接続装置を廉価にすることにある。
【解決手段】電気的接続装置は、第1、第2及び第3の板状部材を、第1の板状部材が第2及び第3の板状部材の間になるように重ね合わせ、第2の板状部材を調整装置により第1の板状部材に対し変位させることにより、電気的接続装置に取り付けられる光照射装置を位置決めるべく第2の板状部材に設けられた位置決め穴又は位置決めピンと、第3の板状部材の下側に設けられたプローブ組み立て体の針先位置との相対的な位置合わせをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路を備えるウエーハ、TAB、FPC等の電気的試験に用いられる電気的接続装置及びその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハ(すなわち、被検査体)に作り込まれた多数の半導体集積回路は、それぞれがチップに分離されるに先立って仕様書通りに製造されているか否かの試験(すなわち、検査)を受ける。この電気的試験には、半導体集積回路の電極に接続される電気的試験用プローブを備える電気的接続装置が用いられ、被検査体は該電気的接続装置を介して試験装置の電気回路に接続される。
【0003】
前記した半導体集積回路の1つとして、フォトダイオードのような多数の受光素子を有する受光領域をチップ領域に備えるCMOSイメージセンサのような集積回路がある。そのような受光領域を備える集積回路においては、試験すべきチップ領域の受光領域にレーザ光線のような試験用光線を照射した状態での試験、すなわち光照射試験が行われる。
【0004】
電気的接続装置は、これが被検査体の上方に位置するように、予め試験装置に取り付けられている。被検査体と電気的接続装置とは、被検査体が試験装置に配置された後、相寄る方向(上下方向)に相対的に移動されて、電気的接続装置の下側に備えられたプローブの下端、すなわち針先が被検査体の電極に押圧される。
【0005】
このとき針先を被検査体の電極に正確に接触させるべく、電気的接続装置と被検査体との相対的移動に先だって、電気的接続装置及び被検査体は、左右方向と、前後方向と、上下方向を軸線とする回転方向とに、すなわち二次元的に移動される。これにより、プローブの針先位置と被検査体の電極とが二次元的に位置合わせされる。
【0006】
また、光照射試験に用いられる電気的接続装置は、上下方向に貫通した開口を備え、また試験用光線を照射する光照射装置は、前記開口の上方に配置されるように電気的接続装置に予め取り付けられている。これにより、光照射装置の試験用光線は、電気的接続装置の開口を通して、該開口の下方に置かれた被検査体に照射される。このとき試験用光線が各受光領域の全ての受光素子に均一に照射されるように、予め光照射装置が被検査体に対して二次元的に位置決めされる。
【0007】
したがって、光照射装置は、被検査体の電極に対して二次元的に位置合わせされる針先と所定の位置関係を満たすよう二次元的に位置決めて電気的接続装置に取り付けられる。これにより、受光領域と電極とが一定の位置関係でウエーハに作り込まれていることと相まって、前記電極に位置合わせされた針先と所定の位置関係を有する光照射装置から照射される光線は、受光領域に正確に照射される。
【0008】
上記したように、光照射装置が針先と所定の位置関係を満たすように電気的接続装置に取り付けられる必要があることから、光照射装置は下側に複数の位置決めピンを備え、また電気的接続装置はそれらの位置決めピンが嵌合される複数の位置決め穴を備える。光照射装置は、これらの位置決め穴と位置決めピンにより電気的接続装置に対して位置決められる。したがって、針先と光照射装置との二次元的な位置関係は、電気的接続装置において、針先と位置決め穴との位置精度により定まる。
【0009】
電気的接続装置のプローブの針先と、位置決め穴との位置精度を高めるべく、従来の電気的接続装置は、図7に示すように、以下の方法により調整されていた。
【0010】
従来の電気的接続装置200は、図7(A)に示すように、補強板202と、補強板202の下側に取り付けられた配線基板204と、配線基板204の下側に取り付けられたプローブ組立体206とを含む。
【0011】
補強板202は、これを上下方向に貫通する貫通穴208と、開口210とを備える。貫通穴208は、光照射装置(図示しない)が位置決めて取り付けられる位置決め穴として作用し、また開口210は、前記光照射装置からの試験用光線を通す通路として作用する。
【0012】
配線基板204は、これを上下方向に貫通する貫通穴212と、開口214とを備える。貫通穴212は、補強板202の貫通穴208と同一の断面形状を有しかつ2次元的に同一位置に位置している。開口214は、開口210と対向しており、試験用光線を通す通路として作用する。
【0013】
プローブ組立体206は、配線基板204に取り付けられた針押さえ216と、針押さえ216に接着剤により固着された複数のプローブ218とを備える。針押さえ216は開口220を備える。開口220は、開口210及び214と対向しており、試験用光線を通す通路として作用する。プローブ218は、その針先222が下方となる状態に、その後端を配線基板204の下面に設けられた電極(図示しない)に半田付けされている。
【0014】
電気的接続装置の調整には、取り付け治具224と、ガイド治具226とが用いられる。取り付け治具224は、これを上下方向に貫通する貫通穴230と、針先222が嵌合される穴228とを含む。貫通穴230は、貫通穴208及び212と同一の断面形状を有しかつ2次元的に同一位置に位置する。ガイド治具226は、貫通穴208、212、230に挿通されるガイドピン232を含む。
【0015】
電気的接続装置の組み立て及び調整は、図7(B)に示すように、以下のように行われる。
【0016】
先ず、ガイドピン232に取り付け治具224の貫通穴230が通されてガイド治具226に取り付け治具224が配置される。
【0017】
次いで取り付け治具224の穴228に針先222を勘合させた状態に取り付け治具224の斜面にプローブ206が並べられる。
【0018】
次いで、針押さえ216が取り付け治具224及びプローブ206の上に配置されて、プローブ206が針押さえ216に接着されることにより、プローブ組立体206が形成される。
【0019】
次いで、ガイドピン232に貫通穴212及び208が通されるように、配線基板204及び補強板202が支持組立体234としてプローブ組立体206の上に配置される。
【0020】
次いで、プローブ組立体206と支持組立体234とが接着される。次いで、取り付け治具及びガイド治具が取り外された後、プローブが針先と反対の後端において配線基板204に半田付けされる。
【0021】
上記の工程において、ガイドピン232が貫通穴208、212及び230に通されて補強板202、配線基板204及び取り付け治具224が重ね合わされるから、補強板202、配線基板204及び取り付け治具224は2次元的に位置決めされる。
【0022】
このような電気的接続装置おいては、針先222が取り付け治具224の穴228に嵌合された状態で、取り付け治具224が配線基板204及び補強板202に位置決めされて重ね合わされる。したがって、針先222は、配線基板204、ひいては補強板202に対して位置決められて配線基板204に取り付けられる。これにより、針先222と補強板202の貫通穴208とが所定の位置関係を満たす。
【0023】
しかし、上記のように、電気的接続装置の組み立て及び位置調整時に、針先を位置決めして電気的接続装置を組み立てる方法では、ガイドピン及びこれが通される各位置決め穴が高精度に形成される必要があるから、プローブ組立体や配線基板等の各部品、ひいては電気的接続装置を製作する費用及び工数が甚大になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、電気的接続装置の組み立て及び位置調整を容易にして、電気的接続装置を廉価にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る電気的接続装置は、左右方向及び前後方向に延びる第1の板状部材と、左右方向又は前後方向に相対的に移動可能に前記第1の板状部材の上側に配置された第2の板状部材と、前記第1の板状部材の下側に移動不能に配置された第3の板状部材と、前記第3の板状部材の下側に移動不能に配置されたプローブ組立体と、前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材を左右方向又は前後方向に相対的に移動させる調整装置とを含む。
【0026】
前記第2の板状部材は、上方に開放する第1の穴又は上方に突出するピンを備える。前記プローブ組立体は、針先を有する複数のプローブを備え、前記針先が下方となる状態に前記第3の板状部材に配置されている。
【0027】
前記第1、第2及び第3の板状部材及び前記プローブ組立体は、これらを上下方向に貫通する開口を備えていてもよい。前記調整装置は、少なくとも一つの調整機構を備えていてもよく、該調整機構は、前記第2の板状部材を上下方向に貫通する第2の穴と、該第2の穴の内壁の一部に当接された当接部を備える調整部材であって、前記当接部を介して前記穴の内壁を左右方向又は前後方向に押圧すべく下方に押圧される調整部材とを有していてもよい。
【0028】
前記調整機構は、さらに、前記調整部材の下側に配置された弾性部材であって、前記調整部材を上方に付勢する弾性部材と、該弾性部材及び前記調整部材を貫通して前記第1の板状部材に螺合されたねじ部材であって、前記調整部材を下方に押圧するねじ部材とを有していてもよい。
【0029】
前記調整装置は、左右方向及び前後方向のいずれか一方に間隔を置いた一対の第1の調整機構であって、各調整機構が前記第1及び第2の板状部材を相対的に左右方向及び前後方向の他方に移動させる一対の第1の調整機構と、前記第1及び第2の板状部材を相対的に左右方向及び前後方向の一方に移動させる第2の調整機構とを備えていてもよい。さらに、電気的接続装置は、前記第1及び第2の板状部材を移動不能に結合させる複数の結合手段を含んでいてもよい。
【0030】
本発明に係る電気的接続装置の調整方法は、前記したような電気的接続装置を組み立てる組み立て工程と、前記組み立てられた電気的接続装置において、前記第1及び第2の板状部材を左右方向又は前後方向に相対的に移動させる調整工程とを含む。
【0031】
前記第1、第2及び第3の板状部材及び前記プローブ組立体は、これらを上下方向に貫通する開口を備えていてもよく、前記調整工程は、前記開口の中又は開口の上方に置かれる基準部を備える調整治具を前記第1の穴又はピンにより位置決めて、取り外し可能に第2の板状部材に取り付けること、前記基準部と前記プローブのうち少なくとも1つのプローブの前記針先とが所定の位置関係に置かれるように前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材を左右方向又は前後方向に相対的に移動させることを含んでいてもよい。
【0032】
前記調整方法は、前記調整行程の後、前記第1及び第2の板状部材を複数の結合手段により移動不能に及び解除可能に結合させることを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、電気的接続装置に組み立てた後に、プローブの針先と、光照射装置に対する位置決め穴又は位置決めピンとの位置関係を容易に調整することができるから、電気的接続装置の組み立て時に、精度の高い貫通穴のような位置合わせ手段を必要としない。これにより、電気的接続装置を簡易かつ廉価に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る電気的接続装置の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1における電気的接続装置を示す図であって、(A)は電気的接続装置の平面図であり、(B)は(A)の2B−2B線に沿って得た断面図である。
【図3】図2における3の拡大図である。
【図4】電気的接続装置の調整について示す図2(B)と同様の図であって、(A)及び(B)は、それぞれ、調整前の電気的接続装置及び調整後の取り付け治具が取り付けられた電気的接続装置を示す図である。
【図5】図4(B)における取り付け治具を取り付けた電気的接続装置を示す平面図である。
【図6】本発明に係る電気的接続装置の調整機構の他の実施例を示す拡大図である。
【図7】従来の電気的接続装置の調整方法を説明する図であって、(A)は、電気的接続装置、取り付け治具及びガイド治具を示し、(B)は、ガイド治具に取り付け治具、プローブ組立体及び支持組立体を重ねる状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[用語について]
【0036】
本発明においては、図2(A)において、左右方向を左右方向(X方向)といい、上下方向を前後方向(Y方向)といい、紙背方向を上下方向(Z方向)という。
【0037】
しかし、本発明でいう上記の各方向は、それぞれ、電気的接続装置を組み付けた試験装置に受けられる被検査体の姿勢により現実の各方向と異なる。例えば、本発明における上下方向は、試験装置に配置された被検査体の姿勢に応じて、上記上下方向が現実の上下方向、水平方向、水平方向に対し傾斜する斜めの方向、及び上記上下が逆となる方向となるように使用してもよい。また、左右方向及び前後方向は、XY面内で回転して使用してもよい。
【0038】
図1を参照するに、試験装置10は、半導体ウエーハに形成された複数のチップ領域を平板状被検査体12とし、それらの被検査体12を一回で、又は複数回に分けて試験する電気的試験に用いられる。
【0039】
各チップ領域は、複数の撮像素子を備えたCMOSイメージセンサのような集積回路である。また、各チップ領域は、複数の電極12aを上面に有すると共に、前記した複数の受光素子の受光面を上面に露出した受光領域12bを上面中央部に有する。被検査体12は、受光領域を有する集積回路チップが実装されたFPCのような配線シートであってもよい。
【0040】
試験装置10は、電極12a及び受光領域12bが上方に向けられた状態に被検査体12を取り外し可能に保持するチャックトップ14と、チャックトップ14の上方に配置されて、チャックトップ14の上に載置された被検査体12と試験用の電気回路とを電気的に接続する電気的接続装置16と、電気的接続装置16の上方に配置されて、試験用光線を受光領域12bに向けて照射する光照射装置18とを含む。
【0041】
電気的接続装置16は、試験装置(図示せず)と被検査体12に介在して、試験装置及び被検査体12に試験信号を伝達する。試験のための試験信号は、応答信号を得るべく被検査体12(集積回路)に供給する駆動信号(電圧、電流)と、その駆動信号に対する被検査体12(集積回路)からの前記応答信号とを含む。
【0042】
チャックトップ14は、既知の検査ステージに備えられたものであり、また被検査体12を解除可能に保持する上面を有する。チャックトップ14への被検査体12の保持は、例えば真空吸着とすることができる。
【0043】
チャックトップ14と電気的接続装置16とは、X方向及びY方向へ延びるXY面内、並びにXY面に垂直のZ方向の3方向に三次元的に相対的に移動されると共に、Z方向へ伸びるθ軸線の周りに角度的に相対的に回転される。一般的には、チャックトップ14が電気的接続装置16に対し、三次元的に移動されると共に、θ軸線の周りに角度的に回転される。
【0044】
光照射装置18は、電気的接続装置16に支持された門型の光源ホルダ19に取り付けられている。光源ホルダ19は、X方向又はY方向に間隔をおいて下方に延びる複数の位置決めピン21が電気的接続装置16の位置決め穴44に差し込まれていることにより、電気的接続装置に対しXY面内で所定の位置関係に維持されている。このため、光照射装置18も、電気的接続装置に対しXY面内で所定の位置関係に維持されている。
【0045】
電気的接続装置16は、その中央に上下方向に貫通する開口20を備える。光照射装置18は、チャックトップ14に載置された被検査体12の受光領域12bに開口20を通して試験用光線22を照射するように、電気的接続装置16に対し位置決められている。
【0046】
電気的接続装置16は、図2(A)及び(B)に示すように、第1の板状部材、すなわち補強板30と、補強板30の上面に取り付けられた第2の板状部材、すなわち調整板32と、補強板30の下面に取り付けられた第3の板状部材、すなわち配線基板34と、配線基板34の下側に取り付けられたプローブ組立体36と、補強板30に対する調整板32のXY面内における位置を調整する調整装置38とを含む。
【0047】
補強板30及び調整板32は、平坦な上面及び下面を有する。調整板32は、補強板30にXY面内で移動可能に取り付けられている。配線基板34及びプローブ組立体36は、それぞれ、補強板30及び配線基板34に移動不能に取り付けられている。
【0048】
補強板30、調整板32、配線基板34及びプローブ組立体36は、それぞれ上下方向に貫通した第1、第2、第3及び第4の開口を備え、これら第1乃至第4の開口が電気的接続装置16の開口20として作用する。
【0049】
補強板30及び調整板32は、ステンレス板のような金属材料で作製されており、また複数の結合手段40により解除可能に結合されている。各結合手段40は、調整板32を上下方向に貫通した貫通穴40aと、補強板30に設けられたねじ穴40cと、貫通穴40aに挿通されて補強板30に螺合されたねじ部材40bとを備える。
【0050】
図示の例では、ねじ部材40bが締められることにより、補強板30及び調整板32は、移動不能に結合されている。しかし、調整板32及び補強板30は、ねじ部材40bが締められるまでは、XY面内で二次元的に相対的に移動可能である。
【0051】
調整板32は、上方に開放する複数の第1の穴、すなわち位置決め穴44を備え、位置決め穴44は光照射装置18の位置決めピン21が勘合される。これにより、光照射装置18は、調整板32の上側に位置決めて取り付けられる。しかし、位置決めピン21と位置決め穴44とを上記と逆に調整板32及び光照射装置18に設けてもよい。
【0052】
図示の例では、補強板30及び配線基板34は、それぞれ、位置決め穴44よりも大きな貫通穴46及び48を位置決め穴44の下側に備える。貫通穴46及び48は、光照射装置18の位置決めピン21が位置決め穴44の上下方向の長さ寸法より長い場合に、その位置決めピン21の逃げ穴として作用する。
【0053】
配線基板34は、ガラス入りエポキシ樹脂のような電気的絶縁樹脂により円板状に製作された公知の印刷配線基板である。そのような配線基板34は、前記した試験用電気回路に対する試験信号の受け渡しをするように前記試験用電気回路に電気的に接続される複数の第1の端子(図示せず)を上面外周縁部に有し、それらの端子に接続された複数の導電路(図示せず)を内部に有する。また、配線基板34は、プローブ組立体36に電気的に接続される複数の第2の端子(図示せず)を下面に有し、各第2の端子は前記導電路に電気的に接続されている。
【0054】
プローブ組立体36は、配線基板34の下側に移動不能に組み付けられた針押さえ50と、針押さえ50の下側に配置されたプローブ52とを備える。プローブ52は、タングステンのような硬質の金属細線から形成されたニードルタイプの針であり、また電極12aに接触される針先54を先端部に、配線基板34の第2の電極に接続されたプローブ後端部56を後端部に有する。
【0055】
しかし、プローブ組立体36は、配線基板34の下面に配置された円形平板状のプローブ基板と、該プローブ基板の下面に片持ち梁状に取り付けられた複数のプローブとを備えるものであってもよい。そのようなプローブは、板状に形成されたブレードタイプのプローブであってもよい。
【0056】
電気的接続装置16においては、プローブ組立体36及び配線基板34が、それぞれ、配線基板34及び補強板30に移動不能に取り付けられているから、調整板32が補強板30に対して移動すると、調整板32がプローブ組立体36に対してXY面内で移動することになる。
【0057】
すなわち、調整板32が補強板30に対してXY面内で移動されると、調整板32の位置決め穴44がプローブ52の針先54に対し2次元的に移動し、これにより位置決め穴44と針先54との位置関係が2次元的に調整される。
【0058】
調整装置38は、図示の例では、矩形の開口20の左右方向に延びる一辺の外側縁部に左右方向に離間して置かれた一対の第1の調整機構62,62と、矩形の開口20の前後方向に延びる一辺の外側縁部に置かれた第2の調整機構64とを含む。しかし、調整装置38は1つの第1の調整機構62を含むだけでもよい。
【0059】
各第1の調整機構62は、調整板32を補強板30に対し前後方向へ移動させる。したがって、両第1の調整機構62を機能させることにより、補強板30及び調整板32は、相対的に前後方向へ移動され、また第1の調整機構62のいずれか一方のみを機能させることにより、又は両第1の調整機構62の調整量に差を持たせることにより、調整板32を補強板30に対し上下方向へ延びる仮想的な軸線の周りに角度的に回転させることができる。
【0060】
調整装置38は、調整板32を補強板30に対し左右方向へ移動させる1つの第2の調整機構64を含む。しかし、調整装置38が少なくとも2つの調整機構を備えれば、上記した2つの第1の調整機構62と同様に、調整板32を補強板30に対し二次元的に移動させることができる。
【0061】
調整機構62,64は、図3に示すように、上方に開放するように調整板32に形成された第2の穴、すなわち穴66と、穴66の中に配置された調整部材68と、調整部材68の下側に配置された厚い板状の弾性部材70と、調整部材68及び弾性部材70を貫通して補強板30に螺合されたねじ部材72とを含む。
【0062】
穴66は、補強板30に対する調整板32の移動方向(前後方向又は左右方向)へ延びる斜め上向きの傾斜面74を備える。調整部材68は、傾斜面74に平行な斜め下向きの傾斜面76を備える。傾斜面76と傾斜面74とは当接されている。
【0063】
弾性部材70は、エラストマのような弾性材料で製作されているから、調整部材68を上方に付勢する。ねじ部材72は、調整部材68を貫通して、補強板30に設けられたねじ穴71に螺合されている。したがって、ねじ部材72がねじ穴71にねじ込まれると、調整部材68が下方に変位される。弾性部材70は、コイルバネのような弾性部材であってもよく、この場合、ねじ部材72がコイルバネの中央に挿通される。
【0064】
調整機構62(又は64)において、調整部材68がねじ部材72により下方に変位されると、調整部材68は弾性部材70を圧縮変形させつつ、ねじ部材72の軸線に沿って下方に変位される。これにより、調整板32は、穴66の傾斜面74を調整部材68の傾斜面76により、前後方向(又は左右方向)の一方に押圧されて、補強板30に対し移動される。このとき、傾斜面76は、穴66の傾斜面74に当接して調整板32を押圧する当接部として作用する。
【0065】
図示の例では、穴66及び調整部材68が、それぞれ、上向きの傾斜面74及び下向きの傾斜面76を備えるが、穴66及び調整部材68のいずれか一方は前記した傾斜面を備え、他方は傾斜面を備えなくともよい。この場合、穴66及び調整部材68の他方の一部が穴66及び調整部材68のいずれか一方の傾斜面に当接することにより、調整板32は前後方向(又は左右方向)に押圧される。また、そのような傾斜面に代えて、穴66及び調整部材68の一方は、穴66及び調整部材68の他方の一部に線接触する斜め上向き又は斜め下向きの傾斜辺のような凸部を備えていてもよい。
【0066】
補強板30に対する調整板32の移動量は、ねじ穴71へのねじ部材72のねじ込み量により、調整することができる。
【0067】
次に、図4に示す電気的接続装置16の調整方法について以下に説明する。
【0068】
電気的接続装置16の調整には、調整治具80と、カメラ90とを用いる。調整治具80は、治具本体82と、治具本体82の外側に位置する複数の位置決めピン84とを含む。位置決めピン84の間隔及び寸法は、光源ホルダ19の位置決めピン21の間隔及び寸法に正確に一致されている。調整治具80を電気的接続装置16に取り付けるとき、位置決めピン84は調整板32の位置決め穴44に嵌合される。
【0069】
治具本体82は、図示の例では、開口20の中に配置される中央部分86を備えるが、中央部86は、開口20の上方に配置されてもよい。中央部分86は、位置決めピン84に対して所定の位置関係を有する基準部88を備える。基準部88は、例えば、位置決めピン84が位置決め穴44に嵌合されて、治具本体82が電気的接続装置16に取り付けられた状態において、全てのプローブ52の針先54の位置領域の中心に対応する箇所に設けることができる。
【0070】
基準部88は、図示の例では、中央部分86を上下方向に貫通する貫通穴であるが、中央部の下面に形成された十字状のマークのような基準マークであってもよい。
【0071】
調整は、カメラが撮影する画像をディスプレイに映し出して、その画像を見ながら行われる。ディスプレイには、針先54の位置領域の中心を表す十字線であって、基準部88を一致させるための基準となる少なくとも1つの十字線が映し出されている。カメラ90は、電気的接続装置16の開口20の下方におかれ、基準部88及び針先54の位置領域を観察することができる。
【0072】
先ず、図4(A)に示すように、補強板30、調整板32、配線基板34及びプローブ組立体36を結合して電気的接続装置16が組み立てられ、その後、調整治具80が電気的接続装置16に上記したように取り付けられる。
【0073】
次いで、複数のプローブ52のうち、いくつかの針先54の座標位置がカメラ90を介して求められて、その求められた座標位置から針先54の位置領域の中心が導かれる。その針先54の位置領域の中心に対応する箇所が十字線としてディスプレイに映し出される。
【0074】
上記2つの工程に先立って、並行して、又は後、ねじ部材40b及び72のそれぞれが緩められる。これにより、調整板32は補強板30に対し二次元的に移動可能になる。
【0075】
次いで、調整板32が補強板30に対し、図4において左方に移動される。これにより、調整治具80は、基準部88が、いくつかの針先54から導かれる、全てのプローブ52の針先の位置領域の中心(すなわち、前記十字線)を経て上下方向に延びる仮想的な基準線92に対し左方に位置ずれした状態におかれる。
【0076】
次いで、図4(B)及び図5に示すように、基準部88が基準線92(すなわち、前記十字線)と重なるまで、補強板30に対して右方向へ移動される。このとき、調整機構64のねじ部材72がねじ穴71にねじ込まれることにより、調整部材68が傾斜面74を右方向に押圧して、調整板32、ひいては調整治具80を補強板30に対し右方向に移動させる。
【0077】
基準部88と基準線92(すなわち、前記十字線)とが重なる状態になると、基準線92(すなわち、前記十字線)が針先54から導かれているから、針先54と、基準部88を有する調整治具80との位置関係が調整され、ひいては、針先54と、調整治具80の位置決めピン84が勘合された調整板32の位置決め穴44とが位置合わせされる。
【0078】
その後、針先54と、位置決め穴44とが位置合わせされた状態で結合手段40により、調整板32が補強板30に移動不能に結合される。しかし、調整板32と補強板30とは、複数の調整機構64により結合されているから、結合手段40を省略してもよい。
【0079】
図6を参照するに、電気的接続装置100は、調整機構62(又は64)に代えて複数の調整機構102を含む。各調整機構102は、補強板30の端部に取り付けられた板状部材104と、板状部材104を左右方向(又は前後方向)に貫通するねじ穴106と、ねじ穴106に螺合されるねじ部材108とを備える。
【0080】
板状部材104は補強板30から立ち上がる状態に補強板30の端部に取り付けられており、ねじ穴106は調整板32の端部と概ね同一の高さに位置するように板状部材104に形成されている。ねじ部材108をねじ穴106にねじ込むと、ねじ部材108の端部(図示の例では右端)が調整板32の端面を押圧して、調整板32が補強板30に対して右方向に移動される。
【産業上の利用可能性】
【0081】
上記の電気的接続装置16において、調整板32及び調整部材68のいずれか一方をその傾斜面又は傾斜部の傾斜角度が異なる他の調整板32又は調整部材68に変更することにより、下方へのねじ部材72の変位量に対する、補強板30に対する調整板32の移動量を変更することができる。
【0082】
本発明に係る電気的接続装置は、上述した実施例では、CMOSイメージセンサのような受光領域を備える集積回路を被検査体としているが、受光素子を備えない集積回路を被検査体としてもよい。この場合、調整板の位置決め穴は、電気的接続装置を試験装置に位置決めて取り付けるために利用できる。受光素子に試験用光線を照射しない場合に、電気的接続装置は、開口を備えなくてもよい。
【0083】
本発明は、上記実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された趣旨を逸脱しない限り、種々に変更することができる。
【符号の説明】
【0084】
10 試験装置
12 被検査体
12a 電極
12b 受光領域
16、100、200 電気的接続装置
18 光照射装置
22 試験用光線
30 補強板(第1の板状部材)
32 調整板(第2の板状部材)
34 配線基板(第3の板状部材)
36 プローブ組立体
38 調整装置
40 結合手段
44 位置決め穴(第1の穴)
52 プローブ
54 針先
56 プローブ後端部
62、64、102 調整機構
66 穴(第2の穴)
68 調整部材
70 弾性部材
72 ねじ部材
74、76 傾斜面
80 調整治具、
82 治具本体
84 位置決めピン
88 基準部
90 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向及び前後方向に延びる第1の板状部材と、
左右方向又は前後方向に相対的に移動可能に前記第1の板状部材の上側に配置された第2の板状部材であって、上方に開放する第1の穴又は上方に突出するピンを備える第2の板状部材と、
前記第1の板状部材の下側に移動不能に配置された第3の板状部材と、
針先を有する複数のプローブを備えるプローブ組立体であって、前記針先が下方となる状態に前記第3の板状部材の下側に移動不能に配置されたプローブ組立体と、
前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材を左右方向又は前後方向に相対的に移動させる調整装置とを含む、電気的接続装置。
【請求項2】
前記第1、第2及び第3の板状部材及び前記プローブ組立体は、これらを上下方向に貫通する開口を備える、請求項1に記載の電気的接続装置。
【請求項3】
前記調整装置は、少なくとも一つの調整機構を備え、
該調整機構は、前記第2の板状部材を上下方向に貫通する第2の穴と、該第2の穴の内壁の一部に当接された当接部を備える調整部材であって、前記当接部を介して前記穴の内壁を左右方向又は前後方向に押圧すべく下方に押圧される調整部材とを備える、請求項1又は2に記載の電気的接続装置。
【請求項4】
前記調整機構は、さらに、前記調整部材の下側に配置された弾性部材であって、前記調整部材を上方に付勢する弾性部材と、該弾性部材及び前記調整部材を貫通して前記第1の板状部材に螺合されたねじ部材であって、前記調整部材を下方に押圧するねじ部材とを備える、請求項3に記載の電気的接続装置。
【請求項5】
前記調整装置は、左右方向及び前後方向のいずれか一方に間隔をおいた一対の第1の調整機構であって、各調整機構が前記第1及び第2の板状部材を左右方向及び前後方向の他方に相対的に移動させる一対の第1の調整機構と、
前記第1及び第2の板状部材を左右方向及び前後方向の一方に相対的に移動させる第2の調整機構とを備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の電気的接続装置。
【請求項6】
さらに、前記第1及び第2の板状部材を移動不能に結合させる複数の結合手段を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の電気的接続装置。
【請求項7】
左右方向及び前後方向に延びる第1の板状部材と、左右方向又は前後方向に相対的に移動可能に前記第1の板状部材の上側に配置された第2の板状部材であって、上方に開放する第1の穴又は上方に突出するピンを備える第2の板状部材と、前記第1の板状部材の下側に移動不能に配置された第3の板状部材と、針先を有する複数のプローブを備えるプローブ組立体であって、前記プローブ針先が下方となる状態に前記第3の板状部材の下側に移動不能に配置されたプローブ組立体とを含む電気的接続装置を組み立てる組み立て工程と、
組み立てられた前記電気的接続装置において、前記第1及び第2の板状部材を左右方向又は前後方向に相対的に移動させる調整工程とを含む、電気的接続装置の調整方法。
【請求項8】
前記第1、第2及び第3の板状部材及び前記プローブ組立体は、これらを上下方向に貫通する開口を備え、
前記調整工程は、前記開口の中又は開口の上方に置かれる基準部を備える調整治具を、前記第1の穴又はピンにより位置決めて、取り外し可能に第2の板状部材に取り付け、前記基準部と、少なくとも1つのプローブの前記針先とが所定の位置関係に置かれるように前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材を左右方向又は前後方向に相対的に移動させることを含む、請求項7に記載の調整方法。
【請求項9】
前記調整行程の後、前記第1及び第2の板状部材を複数の結合手段により移動不能に及び解除可能に結合させることを含む、請求項7及び8のいずれか1項に記載の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−98198(P2012−98198A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247260(P2010−247260)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000153018)株式会社日本マイクロニクス (349)
【Fターム(参考)】