説明

電気自動車

【課題】車両床下に配置された電気機器の調圧を良好に行うことができる電気自動車を提供すること。
【解決手段】電気自動車1は、車両床下に設けられ、前側第1電気機器41を収納する前側第1密閉ケース42と、車両モータルーム内でかつ前側第1密閉ケース42より高い位置に設けられ、第2電気機器21を収納する第2密閉ケース22と、第2密閉ケース22に設けられる車両前部側調圧弁25と、前側第1密閉ケース42から延び、第2密閉ケース22のうち車両前部側調圧弁25が設けられた位置より低い位置にある部分に接続される第1配管60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に関する。詳しくは、電気機器を収納する密閉ケースの調圧を調圧弁により行う電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気自動車が知られている。
電気自動車には、インバータ、コンバータ、電子制御ユニット(ECU:Electrical Control Unit)、バッテリ均等化回路などの電気機器が多数設けられている。これらの電気機器の中には、筐体に収納され、床下に配置されるものがある。
ところで、この筐体には、筐体内部と外部とを連通して圧力を調整するため、調圧弁が設けられる。この調圧弁は、例えば、逆流防止弁を有する排気孔および外気導入孔である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この調圧弁は、筐体内部の圧力が低下すると、外気導入孔を通して外気を導入し、筐体内部の圧力が上昇すると、排気孔を通して、導入した外気を排出する。このようにして、調圧弁により、電気機器が収納された筐体の内部の圧力を調圧できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−330771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電気自動車に用いられる電気機器を床下に配置すると、電気自動車の床下が浸水した際に、調圧弁より外気を導入したり、空気を排出したりすることができず、調圧できないおそれがある。
【0006】
本発明は、車両床下に配置された電気機器の調圧を良好に行うことができる電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1電気機器(例えば、後述の前側第1電気機器41または後側第1電気機器51)および第2電気機器(例えば、後述の第2電気機器21)を備えた電気自動車(例えば、後述の電気自動車1)であって、車両床下に設けられ、前記第1電気機器を収納する第1密閉ケース(例えば、後述の前側第1密閉ケース42または後側第1密閉ケース52)と、車両モータルーム内でかつ前記第1密閉ケースより高い位置に設けられ、前記第2電気機器を収納する第2密閉ケース(例えば、後述の第2密閉ケース22)と、前記第2密閉ケースに設けられる調圧弁(例えば、後述の車両前部側調圧弁25)と、前記第1密閉ケースから延び、前記第2密閉ケースのうち前記調圧弁が設けられた位置より低い位置にある部分に接続される内部空間連通配管(例えば、後述の第1配管60)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、第1密閉ケースと第2密閉ケースとは、内部空間連通配管で連通しているので、第2密閉ケースに設けた調圧弁で、第2密閉ケース内部を調圧できるだけでなく、内部空間連通配管を介して、車両床下に設けた第1密閉ケース内部も調圧する。
したがって、第1密閉ケースに調圧弁を設ける必要がなくなり、第1密閉ケースが浸水しても、第2密閉ケースに設けた調圧弁が浸水しない限り、車両床下に配置された第1電気機器の調圧を良好に行うことができる。
【0009】
この場合、第3電気機器(例えば、後述の第3電気機器31)と、車両トランク下でかつ前記第1密閉ケースより高い位置に設けられ、前記第3電気機器を収納する第3密閉ケース(例えば、後述の第3密閉ケース32)と、前記第3密閉ケースに設けられる調圧弁(例えば、後述の車両後部側調圧弁35)と、前記第1密閉ケースから延び、前記第3密閉ケースのうち前記調圧弁が設けられた位置より低い位置にある部分に接続される内部空間連通配管(例えば、後述の第3配管80)と、を備えることが好ましい。
【0010】
この発明によれば、第3電気機器を収納する第3密閉ケースを設け、さらに、第1密閉ケースから第3密閉ケースに至る内部空間連通配管を設けた。
よって、第2密閉ケースに加えて、第3密閉ケースも第1密閉ケースに連通するから、熱容量を大きく確保して、それぞれの密閉ケースの内部空間の雰囲気温度の上昇を抑えることができる。
【0011】
この場合、前記内部空間連通配管は、前記第1電気機器、前記第2電気機器および前記第3電気機器同士を接続する導線の周囲を囲む配管であることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、それぞれの電気機器を接続する導線の周囲を囲む配管を内部空間連通配管として使用するので、内部空間連通配管で導線を保護しつつ、密閉ケース同士を連通できるから、導線を保護する配管と密閉ケース同士を連通する配管とを別に設ける場合に比べて、省スペース化を図ることができる。
【0013】
この場合、前記配管は、ノイズ除去作用のある素材により構成されることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、配管をノイズ除去作用のある素材で構成したので、導線より発生するノイズが配管の外に漏れるのを防止できる。
【0015】
この場合、前記内部空間連通配管は、車体フレーム(例えば、後述の車体フレーム6A)内部を通ることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、内部空間連通配管が車体フレーム内部を通るので、内部空間連通配管を車体フレーム内部に通さない場合に比べて、省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両床下に配置された電気機器の調圧を良好に行うことができる電気自動車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気自動車1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電気自動車1の概略構成を示す側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電気自動車1Aの車体フレーム6Aに防水ユニット40Aを当接したときの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気自動車1の構成を示すブロック図である。
電気自動車1は、燃料電池スタック11と、インバータ12と、モータ13と、反応ガス供給装置14と、バッテリ15と、コンバータ16と、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)19と、を含んで構成される。
【0021】
燃料電池スタック(以下、「スタック」という)11は、例えば、数十個から数百個の燃料電池セルが積層されたスタック構造であり、スタック接続回路17を介してインバータ12に接続される。
【0022】
反応ガス供給装置14は、水素ガスやエアなどで構成される反応ガスをスタック11により供給する。より具体的には、水素タンクを備えスタック11に水素ガスを供給する水素供給装置141と、エアポンプを備えスタック11に空気を供給する空気供給装置142と、を含んで構成される。
反応ガス供給装置14からスタック11に供給される水素ガスや空気の供給量は、ECU19から入力される制御信号に基づいて制御される。
【0023】
スタック接続回路17は、スタック11の正極側端子とインバータ12の正極側端子とを接続する正極側電力供給線171と、スタック11の負極側端子とインバータ12の負極側端子とを接続する負極側電力供給線172と、を含んで構成される。
【0024】
正極側電力供給線171には、スタック11側からインバータ12側へ向かって順に、正極側燃料電池コンタクタ173と、逆流防止ダイオード175と、が設けられている。
負極側電力供給線172には、負極側燃料電池コンタクタ174が設けられている。
【0025】
正極側燃料電池コンタクタ173および負極側燃料電池コンタクタ174は、それぞれ、機械接点と、この接点を開閉する駆動コイルとを備えた電磁スイッチである。これら燃料電池コンタクタ173、174は、ECU19からの制御信号に基づいて動作し、スタック11とインバータ12とを接続または遮断する。
逆流防止ダイオード175は、バッテリ15およびインバータ12からスタック11へ電流が逆流するのを防止する。
【0026】
インバータ12は、直流電流を交流電流に変換して出力する。このインバータ12は、スタック接続回路17を介してスタック11に接続されるとともに、コンバータ16とリレー回路18とを介してバッテリ15に接続される。また、インバータ12は、3本の導線を介してモータ13に接続される。
モータ13は、交流電流が供給されることにより車輪を駆動する。
【0027】
バッテリ15は、車両の制動時における回生電力や、スタック11で発電した電力を蓄電しておき、直流電流を出力する。
【0028】
コンバータ16の正極側入力端子は、リレー回路18を介してバッテリ15の正極側端子に接続され、コンバータ16の負極側入力端子は、リレー回路18を介してバッテリ15の負極側端子に接続される。コンバータ16の正極側出力端子は、正極側電力供給線171のうちインバータ12と逆流防止ダイオード175との間に接続され、コンバータ16の負極側出力端子は、負極側電力供給線172のうちインバータ12と負極側燃料電池コンタクタ174との間に接続される。
コンバータ16は、ECU19からの制御信号に基づいて動作し、バッテリ15の端子電圧V1を昇圧し、出力電圧V2を出力端子に出力する。
【0029】
リレー回路18は、バッテリ15の正極側端子とコンバータ16の正極側入力端子とを接続または遮断する正極側バッテリコンタクタ181と、バッテリ15の負極側端子とコンバータ16の負極側入力端子とを接続または遮断する負極側バッテリコンタクタ182と、を備える。
これらバッテリコンタクタ181、182は、それぞれ、機械接点と、この接点を開閉する駆動コイルとを備えた電磁スイッチである。これらバッテリコンタクタ181、182は、ECU19からの制御信号に基づいて動作し、バッテリ15とコンバータ16とを接続または遮断する。
【0030】
ECU19は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定のレベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換するなどの機能を有する入力回路と、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)とを備える。この他、ECU19は、CPUで実行される各種演算プログラムおよび演算結果などを記憶する記憶回路と、反応ガス供給装置14、コンバータ16、燃料電池コンタクタ173、174、およびバッテリコンタクタ181、182などに制御信号を出力し、これらを制御する出力回路と、を備える。
【0031】
上述のように、電気自動車1には、インバータ12、モータ13、バッテリ15、コンバータ16、燃料電池コンタクタ173、174、逆流防止ダイオード175、バッテリコンタクタ181、182およびECU19といった電気機器が多数設けられており、これらの電気機器の中には、筐体に収納され、床下に配置されるものもある。
続いて、これらの電気機器を防水ユニットに収容して電気自動車1に配置したときの構成について説明する。
【0032】
図2は、電気自動車1の概略構成を示す側面図である。
【0033】
電気自動車1は、フロアパネル2と、第1電気機器としての前側第1電気機器41を収納する前側第1防水ユニット40と、第1電気機器としての後側第1電気機器51を収納する後側第1防水ユニット50と、第2電気機器21を収納する第2防水ユニット20と、第3電気機器31を収納する第3防水ユニット30と、内部空間連通配管としての第1配管60と、内部空間連通配管としての第2配管70と、内部空間連通配管としての第3配管80と、を備える。
これら前側第1電気機器41、後側第1電気機器51、第2電気機器21、第3電気機器31としては、上述のインバータ12、モータ13、バッテリ15、コンバータ16、燃料電池コンタクタ173、174、逆流防止ダイオード175、バッテリコンタクタ181、182およびECU19といった電気機器が挙げられる。
【0034】
フロアパネル2は、車両前部に設けられるモータルームから車両後部に設けられるトランクまで連続しており、車両中央部では、車両前部および車両後部に比べて、低くなっている。
【0035】
前側第1防水ユニット40および後側第1防水ユニット50は、車体中央部のフロアパネル2の下面、すなわち、車両床下に配置されている。前側第1防水ユニット40は、後側第1防水ユニット50に比べて、車両の前側に配置されている。
第2防水ユニット20は、モータルーム内でかつ前側第1防水ユニット40および後側第1防水ユニット50より高い位置に、配置されている。
【0036】
第3防水ユニット30は、トランクの下面でかつ前側第1防水ユニット40および後側第1防水ユニット50より高い位置に、配置されている。
したがって、第2防水ユニット20および第3防水ユニット30は、前側第1防水ユニット40および後側第1防水ユニット50よりも高い位置に配置されている。
【0037】
前側第1防水ユニット40は、前側第1電気機器41を収納する第1密閉ケースとしての前側第1密閉ケース42を備える。
図示は省略するが、前側第1密閉ケース42のうち車両前側の面および車両後側の面には、導線貫通孔が形成されている。
【0038】
後側第1防水ユニット50は、後側第1電気機器51を収納する第1密閉ケースとしての後側第1密閉ケース52を備える。
図示は省略するが、後側第1密閉ケース52のうち車両前側の面および車両後側の面には、導線貫通孔が形成されている。
【0039】
第2防水ユニット20は、第2電気機器21と、この第2電気機器21を収納する第2密閉ケース22と、を備える。
第2密閉ケース22には、図示は省略するが、下面に導線貫通孔が形成されている。また、上面に、第2密閉ケース22の内部と外部とを連通して圧力を調整する調圧弁としての車両前部側調圧弁25が設けられている。
車両前部側調圧弁25は、外気を第2密閉ケース22の内部に導入したり、第2密閉ケース22の内部の空気を外部に排出したりする。これにより、第2密閉ケース22の内部の圧力を調整する。
【0040】
第3防水ユニット30は、第3電気機器31と、この第3電気機器31を収納する第3密閉ケース32と、を備える。
第3密閉ケース32には、図示は省略するが、下面に導線貫通孔が形成されている。また、上面に、第3密閉ケース32の内部と外部とを連通して圧力を調整する調圧弁としての車両後部側調圧弁35が設けられている。
車両後部側調圧弁35は、外気を第3密閉ケース32の内部に導入したり、第3密閉ケース32の内部の空気を外部に排出したりする。これにより、第3密閉ケース32の内部の圧力を調整する。
【0041】
第1配管60には、1本の導線61が収容されている。この導線61の一端側は、前側第1密閉ケース42の車両前側の面に形成される導線貫通孔を貫通して、前側第1電気機器41に接続される。導線61と前側第1電気機器41との間には、隙間が形成される。
また、導線61の他端側は、第2密閉ケース22の下面に形成される導線貫通孔を貫通して、第2電気機器21に接続される。導線61と第2電気機器21との間には、隙間が形成される。
【0042】
第1配管60は、銅やアルミニウムなどを含んで構成される金属テープや銅線編組といった、ノイズ除去作用のある素材により構成される。
また、第1配管60の内面と、導線61の外面との間には隙間が形成される。また、第1配管60の一端側は、前側第1密閉ケース42の車両前側の面に形成される導線貫通孔に接続され、第1配管60の他端側は、第2密閉ケース22の下面に形成される導線貫通孔に接続されている。このため、第1配管60により、前側第1密閉ケース42の内部空間と第2密閉ケース22の内部空間とが連通されることになる。
【0043】
第2配管70には、1本の導線71が収容されている。この導線71の一端側は、前側第1密閉ケース42の車両後側の面に形成される導線貫通孔を貫通して、前側第1電気機器41に接続される。導線71と前側第1電気機器41との間には、隙間が形成される。
また、導線71の他端側は、後側第1密閉ケース52の車両前側の面に形成される導線貫通孔を貫通して、後側第1電気機器51に接続される。導線71と後側第1電気機器51との間には、隙間が形成される。
【0044】
第2配管70は、銅やアルミニウムなどを含んで構成される金属テープや銅線編組といった、ノイズ除去作用のある素材により構成される。
また、第2配管70の内面と、導線71の外面との間には隙間が形成される。
また、第2配管70の一端側は、前側第1密閉ケース42の車両後側の面に形成される導線貫通孔に接続され、第2配管70の他端側は、後側第1密閉ケース52の車両前側の面に形成される導線貫通孔に接続されている。このため、第2配管70により、前側第1密閉ケース42の内部空間と後側第1密閉ケース52の内部空間とが連通されることになる。
【0045】
第3配管80には、1本の導線81が収容されている。この導線81の一端側は、後側第1密閉ケース52の車両後側の面に形成される導線貫通孔を貫通して、後側第1電気機器51に接続される。導線81と後側第1電気機器51との間には、隙間が形成される。
また、導線81の他端側は、第3密閉ケース32の下面に形成される導線貫通孔を貫通して、第3電気機器31に接続される。導線81と第3電気機器31との間には、隙間が形成される。
【0046】
第3配管80は、銅やアルミニウムなどを含んで構成される金属テープや銅線編組といった、ノイズ除去作用のある素材により構成される。
また、第3配管80の内面と、導線81の外面との間には隙間が形成される。また、第3配管80の一端側は、後側第1密閉ケース52の車両後側の面に形成される導線貫通孔に接続され、第3配管80の他端側は、第3密閉ケース32の下面に形成される導線貫通孔に接続されている。このため、第3配管80により、後側第1密閉ケース52の内部空間と第3密閉ケース32の内部空間とが連通されることになる。
【0047】
続いて、以上の電気自動車1における空気の流れについて説明する。
図2に示される破線矢印は、前側第1防水ユニット40、後側第1防水ユニット50、第2防水ユニット20、第3防水ユニット30、第1配管60、第2配管70および第3配管80を通流する空気の流れを示すものである。
【0048】
外気は、車両前部側調圧弁25を通して、第2密閉ケース22の内部に流入する。この流入した外気、すなわち、空気は、第2密閉ケース22の内部を通流し、その後、第2密閉ケース22の下面に形成される導線貫通孔を通して第1配管60に流入する。
第1配管60に流入した空気は、この第1配管60を通流し、その後、前側第1密閉ケース42の車両前側の面に形成される導線貫通孔を通して、前側第1密閉ケース42の内部に流入する。
【0049】
前側第1密閉ケース42の内部に流入した空気は、この前側第1密閉ケース42の内部を通流し、その後、この前側第1密閉ケース42の車両後側の面に形成される導線貫通孔を通して、第2配管70に流入する。
第2配管70に流入した空気は、この第2配管70を通流し、その後、後側第1密閉ケース52の車両前側の面に形成される導線貫通孔を通して、後側第1密閉ケース52に流入する。
【0050】
後側第1密閉ケース52の内部に流入した空気は、この後側第1密閉ケース52の内部を通流し、その後、この後側第1密閉ケース52の車両後側の面に形成される導線貫通孔を通して、第3配管80に流入する。
第3配管80に流入した空気は、この第3配管80を通流し、その後、第3密閉ケース32の下面に形成される導線貫通孔を通して、第3密閉ケース32の内部に流入する。
【0051】
第3密閉ケース32の内部に流入する空気は、この第3密閉ケース32の内部を通流し、その後、車両後部側調圧弁35を通して排出される。
【0052】
したがって、外気は、第2密閉ケース22、第1配管60、前側第1密閉ケース42、第2配管70、後側第1密閉ケース52、第3配管80、および第3密閉ケース32を通流して、第2密閉ケース22に収納された第2電気機器21、第1配管60に収納された導線61、前側第1密閉ケース42に収納された前側第1電気機器41、第2配管70に収納された導線71、後側第1密閉ケース52に収納された後側第1電気機器51、第3配管80に収納された導線81、および第3密閉ケース32に収納された第3電気機器31の熱を奪う。よって、第2電気機器21、導線61、前側第1電気機器41、導線71、後側第1電気機器51、導線81、および第3電気機器31は、冷却されることになる。
【0053】
以上の発明によれば、以下のような効果がある。
(1)前側第1密閉ケース42に調圧弁を設ける必要がなくなり、前側第1密閉ケース42が浸水(例えば、図2に示す水位4まで浸水)しても、第2密閉ケース22に設けた車両前部側調圧弁25が浸水しない限り、車両床下に配置された前側第1電気機器41の調圧を良好に行うことができる。
【0054】
(2)第2密閉ケース22が前側第1密閉ケース42に連通するのに加えて、第3密閉ケース32も後側第1密閉ケース52に連通し、第2密閉ケース22、前側第1密閉ケース42、後側第1密閉ケース52、および第3密閉ケース32が連通するから、熱容量を大きく確保して、第2密閉ケース22、前側第1密閉ケース42、後側第1密閉ケース52、および第3密閉ケース32の内部空間の雰囲気温度の上昇を抑えることができる。
【0055】
(3)前側第1電気機器41と第2電気機器21とを接続する導線61の周囲を囲む第1配管60と、前側第1電気機器41と後側第1電気機器51とを接続する導線71の周囲を囲む第2配管70と、後側第1電気機器51と第3電気機器31とを接続する導線81の周囲を囲む第3配管80と、を内部空間連通配管として使用するので、内部空間連通配管で導線61、導線71および導線81を保護しつつ、密閉ケース同士を連通できるから、導線を保護する配管と密閉ケース同士を連通する配管とを別に設ける場合に比べて、省スペース化を図ることができる。
【0056】
(4)第1配管60、第2配管70および第3配管80を、銅やアルミニウムなどを含んで構成される金属テープや銅線編組などのノイズ除去作用のある素材で構成したので、導線61、導線71および導線81より発生するノイズが第1配管60、第2配管70および第3配管80の外に漏れるのを防止できる。
【0057】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態に係る電気自動車1Aの車体フレーム6Aに防水ユニット40Aを当接したときの概略構成を示す図である。
本実施形態の電気自動車1Aでは、中空形状の車体フレーム6Aと、この車体フレーム6Aに当接して設けられた略箱状の防水ユニット40Aと、を備える。
【0058】
車体フレーム6Aには、1本の配管60Aが収納されており、この車体フレーム6Aの車内側の側面には、導線貫通孔63Aが形成されている。
【0059】
防水ユニット40Aの車体フレーム6Aに当接する面46Aには、導線貫通孔63Aに接続される導線貫通孔43Aが形成され、防水ユニット40Aの車体フレーム6Aに当接する面と反対側の面47Aには、導線貫通孔44Aが形成される。
【0060】
配管60Aには、1本の導線61Aが収納されている。この導線61Aの一端側は、図示しないが、導線貫通孔63Aおよび導線貫通孔43Aを貫通して、防水ユニット40Aに収納された電気機器に接続される。また、導線61Aの他端側は、図示しないが、他の防水ユニットに収納された電気機器に接続される。
【0061】
配管60Aの一端側は、導線貫通孔63Aを貫通して、防水ユニット40Aに形成される導線貫通孔43Aに接続されている。また、配管60Aの他端側は、図示しないが、他の防水ユニットに接続されている。
このため、配管60Aにより、防水ユニット40Aの内部空間と他の防水ユニットの内部空間とが連通されることになる。
【0062】
続いて、以上の電気自動車1Aにおける空気の流れについて説明する。
図3に示される破線矢印は、配管60A、防水ユニット40Aを通流する空気の流れを示すものである。
【0063】
空気は、配管60Aを通流し、その後、導線貫通孔43Aを通して、防水ユニット40Aの内部に流入する。この流入した空気は、防水ユニット40Aの内部を通流し、その後、導線貫通孔44Aを通して防水ユニット40Aの外部に排出される。
【0064】
本実施形態によれば、上述した(1)〜(4)の効果に加え、以下のような効果がある。
(5)配管60Aが車体フレーム6A内部を通るので、配管60Aを車体フレーム6A内部に通さない場合に比べて、省スペース化を図ることができる。
【0065】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、第1電気機器と、第2電気機器と、第3電気機器と、を備える電気自動車1について説明したが、これに限らず、モータと、メインバッテリと、充電器と、これらを制御する制御装置と、を備える電気自動車で本発明を実施してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 電気自動車1
21 第2電気機器
22 第2密閉ケース
25 車両前部側調圧弁(調圧弁)
31 第3電気機器
32 第3密閉ケース
35 車両後部側調圧弁(調圧弁)
41 前側第1電気機器(第1電気機器)
42 前側第1密閉ケース(第1密閉ケース)
51 後側第1電気機器(第1電気機器)
52 後側第1密閉ケース(第1密閉ケース)
60 第1配管(内部空間連通配管)
61、71、81 導線
70 第2配管(内部空間連通配管)
80 第3配管(内部空間連通配管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気機器および第2電気機器を備えた電気自動車であって、
車両床下に設けられ、前記第1電気機器を収納する第1密閉ケースと、
車両モータルーム内でかつ前記第1密閉ケースより高い位置に設けられ、前記第2電気機器を収納する第2密閉ケースと、
前記第2密閉ケースに設けられる調圧弁と、
前記第1密閉ケースから延び、前記第2密閉ケースのうち前記調圧弁が設けられた位置より低い位置にある部分に接続される内部空間連通配管と、
を備えることを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
第3電気機器と、
車両トランク下でかつ前記第1密閉ケースより高い位置に設けられ、前記第3電気機器を収納する第3密閉ケースと、
前記第3密閉ケースに設けられる調圧弁と、
前記第1密閉ケースから延び、前記第3密閉ケースのうち前記調圧弁が設けられた位置より低い位置にある部分に接続される内部空間連通配管と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記内部空間連通配管は、前記第1電気機器、前記第2電気機器および前記第3電気機器同士を接続する導線の周囲を囲む配管であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記配管は、ノイズ除去作用のある素材により構成されることを特徴とする請求項3に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記内部空間連通配管は、車体フレーム内部を通ることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−235060(P2010−235060A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87881(P2009−87881)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】