説明

電気自動車

【課題】衝突などの衝撃により二次電池をシステムメインリレーにより遮断した後により適正にシステム起動する。
【解決手段】衝突等によりバッテリが駆動電力系から遮断された後にシステム起動するときには、システムメインリレーの一方だけをオンとすると共に駆動電力系のインバータ,DC/DCコンバータの全てをゲート遮断して絶縁抵抗の低下を検出し(S200〜S220)、絶縁抵抗の低下が検出されないときにはシステムメインリレーをオンとしてインバータやDC/DCコンバータを順にゲート許可して絶縁抵抗の低下を検出すると共に絶縁抵抗の低下が検出された回路だけをゲート遮断し(S250〜S290)、ゲート遮断の機器の駆動を禁止してシステム起動する。これにより、絶縁抵抗の低下が検出されない機器だけを駆動することができる状態としてシステム起動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に関し、詳しくは、走行用の電動機と、電動機を駆動する電動機用駆動回路と、少なくとも一つの補機と、補機を駆動する補機用駆動回路と、電動機用駆動回路および補機用駆動回路が接続された駆動系に電力を供給するる二次電池と、二次電池の正極側と駆動系の正極側との接続および接続の解除を行なう正極側接続解除部と二次電池の負極側と駆動系の負極側との接続および接続の解除を行なう負極側接続解除部とを有する接続解除手段と、車両の加速度を検出する加速度検出手段と、加速度検出手段により検出された加速度が車両の衝突によるとして予め定められた所定加速度範囲内のときに正極側接続解除部による接続および負極側接続解除部による接続が共に解除されるよう接続解除手段を制御する衝突時制御手段と、を備える電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気自動車としては、走行用のモータと、モータを駆動するインバータと、インバータに電力を供給する高電圧バッテリと、高電圧バッテリからの電力を遮断するシステムメインリレーと、インバータやシステムメインリレーを制御する電子制御ユニットと、電子制御ユニットを駆動するための電力を供給する弱電電池と、電子制御ユニットと弱電電池とに介在する電子制御ユニット用ヒューズと、この電子制御ユニット用ヒューズとバスを共通して弱電電池から車両前輪近傍のアクチュエータへの電力供給のためのアクチュエータ用ヒューズと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電気自動車では、車両が衝突すると、衝突による変形によってアクチュエータ用電源ハーネスの被膜が剥がれてアクチュエータ用電源ハーネスが短絡することによりアクチュエータ用ヒューズが溶断する。このときアクチュエータ用ヒューズに大電流が流れるため、バスの電圧が降下して電子制御ユニット用ヒューズに流れる電流が小さくなり、電子制御ユニットの制御電圧が低下する。電子制御ユニットの制御電圧が所定電圧未満に至ると、電子制御ユニットはシステムメインリレーをオフして高電圧バッテリとインバータとを遮断する。このように、車両の衝突によりシステムメインリレーはオフするが、電子制御ユニット用ヒューズは溶断しないので、その後のシステム起動を行なうことができるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−38862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の電気自動車では、車両の衝突後に、高電圧バッテリの電力により予期しない不都合を生じる場合がある。上述の電気自動車では、車両の衝突によっても電子制御ユニット用ヒューズは破断しないから、車両の衝突によりインバータやモータが破損したときでも、システム起動してシステムメインリレーをオンすることができる。このとき、高電圧バッテリからの電力が破損したインバータやモータに印加されてしまい、予期しない事態が生じてしまう。
【0005】
本発明の電気自動車は、衝突などの衝撃により二次電池をシステムメインリレーにより遮断した後により適正にシステム起動することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電気自動車は、
走行用の電動機と、前記電動機を駆動する電動機用駆動回路と、少なくとも一つの補機と、前記補機を駆動する補機用駆動回路と、前記電動機用駆動回路および前記補機用駆動回路が接続された駆動系に電力を供給するる二次電池と、前記二次電池の正極側と前記駆動系の正極側との接続および該接続の解除を行なう正極側接続解除部と前記二次電池の負極側と前記駆動系の負極側との接続および該接続の解除を行なう負極側接続解除部とを有する接続解除手段と、車両の加速度を検出する加速度検出手段と、前記検出された加速度が車両の衝突によるとして予め定められた所定加速度範囲内のときに前記正極側接続解除部による接続および前記負極側接続解除部による接続が共に解除されるよう前記接続解除手段を制御する衝突時制御手段と、を備える電気自動車であって、
前記接続解除手段の前記二次電池側で前記正極側接続解除部および前記負極側接続解除部のうちの一方に接続されて回路の絶縁抵抗の低下を検出する絶縁抵抗低下検出手段と、
前記衝突時制御手段により前記正極側接続解除部による接続および前記負極側接続解除部による接続が共に解除された状態でシステム起動が要請されたときには、前記正極側接続解除部および前記負極側接続解除部のうちの一方の接続解除部だけが接続されており且つ前記電動機用駆動回路および前記補機用駆動回路が全てゲート遮断されている状態である全ゲート遮断状態で前記絶縁抵抗低下検出手段による絶縁抵抗の低下が検出されるよう前記接続解除手段と前記電動機用駆動回路と前記補機用駆動回路と前記絶縁抵抗低下検出手段とを制御し、前記全ゲート遮断状態で前記絶縁抵抗低下検出手段により絶縁抵抗の低下が検出されないときには前記正極側接続解除部および前記負極側接続解除部の双方の接続解除部が接続された状態で前記電動機用駆動回路および前記補機用駆動回路を順次ゲート許可して前記絶縁抵抗低下検出手段により絶縁抵抗の低下を検出して該絶縁抵抗の低下が検出された駆動回路についてはゲート遮断し、順次ゲート許可しての絶縁抵抗の低下の検出が終了した後にいずれかの駆動回路がゲート許可されているときにはゲート遮断された駆動回路の駆動を禁止した状態でのシステム起動を許可するよう前記接続解除手段と前記電動機用駆動回路と前記補機用駆動回路と前記絶縁抵抗低下検出手段とを制御し、前記全ゲート遮断状態で前記絶縁抵抗低下検出手段により絶縁抵抗の低下が検出されたとき又は前記順次ゲート許可しての絶縁抵抗の低下の検出が終了した後に全ての駆動回路がゲート遮断されているときにはシステム起動を禁止する衝突後システム起動制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の電気自動車では、車両の衝突などにより車両の加速度が車両の衝突によるとして予め定められた所定加速度範囲内となったことにより正極側接続解除部による接続と負極側接続解除部による接続が共に解除されて二次電池が駆動系から遮断された後にシステム起動が要請されると、まず、正極側接続解除部および負極側接続解除部のうちの一方の接続解除部だけが接続されており且つ電動機用駆動回路および補機用駆動回路が全てゲート遮断されている状態(全ゲート遮断状態)として絶縁抵抗低下検出手段により絶縁抵抗の低下を検出する。この全ゲート遮断状態で絶縁抵抗低下検出手段により絶縁抵抗の低下が検出されないときには、正極側接続解除部および負極側接続解除部の双方の接続解除部が接続した状態で、電動機用駆動回路および補機用駆動回路を順次ゲート許可して絶縁抵抗低下検出手段により絶縁抵抗の低下を検出し、絶縁抵抗の低下が検出された駆動回路についてはゲート遮断する。そして、順次ゲート許可しての絶縁抵抗の低下の検出が終了した後にいずれかの駆動回路がゲート許可されているときにはゲート遮断された駆動回路の駆動を禁止した状態でのシステム起動を許可する。このように、全ての駆動回路をゲート遮断した後に順次ゲート許可して絶縁抵抗の低下を検出すると共に絶縁抵抗の低下が検出された駆動回路についてはゲート遮断して駆動を禁止した状態でシステム起動するから、絶縁抵抗の低下が検出されなかった駆動回路だけを駆動することができる状態としてシステム起動することができる。これにより、絶縁抵抗の低下が検出された駆動回路に二次電池の電圧が印加されることによって生じる不都合を回避することができる。従って、より適正にシステム起動することができる。一方、全ゲート遮断状態で絶縁抵抗低下検出手段により絶縁抵抗の低下が検出されたときや、全ゲート遮断状態で絶縁抵抗低下検出手段により絶縁抵抗の低下が検出されないときでも順次ゲート許可しての絶縁抵抗の低下の検出が終了した後に全ての駆動回路がゲート遮断されているときには、システム起動を禁止する。これにより、不用意にシステム起動されるのを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例としての電気自動車としても機能可能なハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】絶縁抵抗低下検出器64とこの絶縁抵抗低下検出器64が接続された系の簡易モデル90とを示す説明図である。
【図3】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される衝突時処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される衝突後システム起動処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車としても機能可能なハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力するエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという。)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪38a,38bにデファレンシャルギヤ37を介して連結された駆動軸36にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸36に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42の図示しないスイッチング素子をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという。)40と、インバータ41,42が接続された駆動電力系と電力をやりとりするバッテリ50と、乗員室の空調を行なう空調装置(以下、エアコンという。)60を駆動するために駆動電力系に接続されたエアコン用インバータ61と、補機を駆動する補機バッテリ62側に電力を供給するために駆動電力系に接続されたDC/DCコンバータ63と、バッテリ50と駆動電力系に接続された正極側電力ラインと負極側電力ラインとを個別に接続したり接続を解除(遮断)する正極側リレー52aと負極側リレー52bとからなるシステムメインリレー52と、システムメインリレー52より駆動電力系に取り付けられた平滑コンデンサ54および電圧センサ53と、システムメインリレー52よりバッテリ50側でバッテリ50の負極側端子が接続された負極側電力ラインに接続された絶縁抵抗低下検出器64と、シフトレバーのポジションを検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションやアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキポジション,車速センサ88からの車速,加速度センサ89からの加速度Gなどを入力すると共にエンジンECU24やモータECU40と通信して車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。
【0012】
図2は、実施例の絶縁抵抗低下検出器64とこの絶縁抵抗低下検出器64が接続された系の簡易モデル90とを示す説明図である。図示するように、絶縁抵抗低下検出器64は、一方が接地された発振電源65と、一方の端子が発振電源65に接続された検出抵抗66と、一方の端子が検出抵抗66の他方の端子に接続されると共に他方の端子が簡易モデル90に接続されたカップリングコンデンサ67と、検出抵抗66とカップリングコンデンサ67との接続部の電圧を検出する電圧センサ68と、を備える。ここで、簡易モデル90は、システムメインリレー52の正極側リレー52aや負極側リレー52bのいずれか一方または双方をオンとしたときの回路モデルであり、一方の端子がカップリングコンデンサ67に接続されると共に他方の端子が接地された絶縁抵抗92と、この絶縁抵抗92に並列に接続されたコモンモードコンデンサ93とにより構成される。電圧センサ68から検出される電圧波形は、簡易モデル90のインピーダンスが大きいときには、検出抵抗66にほとんど電流が流れないため、発振電源65とほぼ同じ振幅の電圧波形となるが、簡易モデル90のインピーダンスが小さいときには検出抵抗66に電流が流れるため、検出抵抗66で電圧降下した分だけ小さな振幅の電圧波形となる。従って、絶縁抵抗低下検出器64の電圧センサ68は、簡易モデル90、即ち、駆動電力系の絶縁抵抗が低下していないときには発振電源65とほぼ同じ振幅の電圧波形を出力し、駆動電力系の絶縁抵抗が低下しているときには発振電源65より小さな振幅の電圧波形を出力することになる。実施例の絶縁抵抗低下検出器64では、電圧センサ68から検出される電圧波形の振幅が発振電源65の電圧波形の振幅より若干小さな値として予め設定された判定用閾値より大きいときに絶縁抵抗の低下は検出されない判定し、電圧センサ68から検出される電圧波形の振幅が判定用閾値より小さいときに絶縁抵抗の低下が検出された判定するものとした。
【0013】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸36に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸36に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸36に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸36に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0014】
次に、実施例のハイブリッド自動車20が衝突したときの動作と、衝突後にシステム起動するときの動作について説明する。図3は、実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される衝突時処理の一例を示すフローチャートである。この衝突時処理は、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。衝突時処理が実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、まず、加速度センサ89からの加速度Gを入力し(ステップS100)、加速度Gの絶対値が衝突したときの加速度の絶対値の範囲の下限値として予め設定された閾値Gref以上であるか否かを判定する(ステップS110)。加速度Gの絶対値が閾値Gref未満のときには、衝突は生じていないと判断して本ルーチンを終了し、加速度Gの絶対値が閾値Gref以上のときには、衝突が生じたと判断し、システムメインリレー52の正極側リレー52aも負極側リレー52bも共にオフとすることによりバッテリ50を駆動電力系から遮断し(ステップS120)、衝突履歴を記憶して(ステップS130)、本処理を終了する。このように、車両が衝突したときには、システムメインリレー52によりバッテリ50が駆動電力系から遮断されることにより、車両はシステムダウンする。
【0015】
図4は、図3の衝突時処理により衝突履歴が記憶された後に初めて運転者などによりシステム起動の要請がなされたときにハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される衝突後システム起動処理の一例を示すフローチャートである。衝突後システム起動処理が実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、まず、絶縁抵抗低下検出器64が接続されたシステムメインリレー52の負極側リレー52bだけをオンとすると共に(ステップS200)、インバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63の全てをゲート遮断し(ステップS210)、絶縁抵抗低下検出器64による駆動電力系の絶縁抵抗の低下を検出する(ステップS220)。駆動電力系の絶縁抵抗の低下が検出されたときにはシステム起動を禁止し(ステップS320)、システムメインリレー52をオフとして(ステップS330)、本処理を終了する。この場合、駆動電力系の電力ラインなどに損傷や剥がれが生じて駆動電力系の絶縁抵抗が低下していると判断することができるため、システム起動しても、いずれの機器も駆動することができないからである。
【0016】
ステップS230で駆動電力系の絶縁抵抗の低下が検出されないときには、システムメインリレー52の負極側リレー52bだけでなく正極側リレー52aもオンとして(ステップS240)、インバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63のうちのいずれか1つ(例えば、インバータ41)をゲート許可し(ステップS250)、絶縁抵抗低下検出器64による駆動電力系の絶縁抵抗の低下を検出し(ステップS260,S270)、駆動電力系の絶縁抵抗の低下が検出されないときには、インバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63の全てのゲート許可による駆動電力系の絶縁抵抗の検出が終了するまでステップS250の処理に戻り、駆動電力系の絶縁抵抗の低下が検出されたときにはゲート許可した対象となる回路をゲート遮断し(ステップS280)、インバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63の全てのゲート許可による駆動電力系の絶縁抵抗の検出が終了するまでステップS250の処理に戻る。ここで、ゲート許可は、ゲート許可するだけで電流を流すものではない。このステップS250〜S290の処理は、実施例では、例えば、インバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63の順に4回に亘って繰り返される。ゲート許可して駆動電力系の絶縁抵抗の低下が検出されたときは、ゲート許可したインバータやDC/DCコンバータ,或いはこれに接続されたモータやエアコン,補機などが衝突により損傷したりして短絡している場合が考えられる。従って、上述の処理は、こうした絶縁抵抗の低下が検出された対象だけをゲート遮断して駆動電力系から切り離す処理となる。
【0017】
インバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63の全てのゲート許可による駆動電力系の絶縁抵抗の検出が終了すると、インバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63のいずれかがゲート許可されているか否か、即ち、全てがゲート遮断されているか否かを判定し(ステップS300)、インバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63の全てがゲート遮断されているときには、いずれの機器も駆動することができないため、システム起動を禁止し(ステップS320)、システムメインリレー52をオフとして(ステップS330)、本処理を終了し、インバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63のいずれかがゲート許可されているときには、ゲート遮断されている機器の駆動を禁止してシステム起動を許可して(ステップS310)、本ルーチンを終了する。システム起動されると、ゲート許可された機器だけを駆動することができる。例えば、インバータ41,42に関して考えれば、インバータ41,42が共にゲート許可されているときにはモータMG2によるモータ走行やエンジン22からの動力を用いた走行が可能となり、インバータ41はゲート遮断されているがインバータ42はゲート許可されているときにはモータMG2によるモータ走行が可能となり、インバータ42はゲート遮断されているがインバータ41はゲート許可されているときにはモータMG1を駆動することによりエンジン22からの動力によりモータMG2を駆動することなく走行することが可能となる。また、インバータ61がゲート許可されているときには乗員室の空気調和を行なうことができる。さらに、DC/DCコンバータ63がゲート許可されているときには補機バッテリ62に電力供給することができる結果、補機を駆動することができる。
【0018】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、衝突時処理によりシステムメインリレー52によりバッテリ50が駆動電力系から遮断されて衝突履歴が記憶された後にシステム起動の要請がなされたときには、絶縁抵抗低下検出器64が接続されたシステムメインリレー52の負極側リレー52bだけをオンとしてインバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63の全てをゲート遮断して絶縁抵抗の低下を検出し、絶縁抵抗の低下が検出されないときには、システムメインリレー52の正極側リレー52aもオンとした状態でインバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63を順にゲート許可して駆動電力系の絶縁抵抗の低下を検出して絶縁抵抗の低下が検出された対象の回路だけをゲート遮断し、インバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63のいずれかがゲート許可されているときには、ゲート遮断されている機器の駆動を禁止してシステム起動を許可することにより、絶縁抵抗の低下が検出されない機器だけを駆動することができる状態としてシステム起動することができる。これにより、絶縁抵抗の低下が検出された回路にバッテリ50の電圧が印加されることによって生じる不都合を回避することができる。また、システムメインリレー52の負極側リレー52bだけをオンとしてインバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63の全てをゲート遮断して絶縁抵抗の低下を検出したときに絶縁抵抗の低下が検出されたときや、システムメインリレー52をオンとした状態でインバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63を順にゲート許可して駆動電力系の絶縁抵抗の低下を検出した後にインバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63の全てがゲート遮断されているときにはシステム起動を禁止してシステムメインリレー52をオフとすることにより、いずれの機器も駆動することができない状態のときに不用意にシステム起動されるのを抑止することができる。これらにより、より適正にシステム起動することができる。
【0019】
なお、実施例のハイブリッド自動車20では、衝突後システム起動処理が実行されたときには、絶縁抵抗低下検出器64が接続されたシステムメインリレー52の負極側リレー52bだけをオンとすると共にインバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63の全てをゲート遮断して絶縁抵抗低下検出器64による駆動電力系の絶縁抵抗の低下を検出し、絶縁抵抗の低下が検出されないときには、システムメインリレー52の負極側リレー52bだけでなく正極側リレー52aもオンとしてインバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63を順次ゲート許可して絶縁抵抗の低下を検出するものとしたが、衝突後システム起動処理が実行されたときには、絶縁抵抗低下検出器64が接続されていないシステムメインリレー52の正極側リレー52aだけをオンとすると共にインバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63の全てをゲート遮断して絶縁抵抗低下検出器64による駆動電力系の絶縁抵抗の低下を検出し、絶縁抵抗の低下が検出されないときには、システムメインリレー52の正極側リレー52aだけでなく負極側リレー52bもオンとしてインバータ41,42,61,DC/DCコンバータ63を順次ゲート許可して絶縁抵抗の低下を検出するものとしてもよい。これは、システムメインリレー52の正極側リレー52aだけをオンとしても、絶縁抵抗低下検出器64は正極側リレー52aとバッテリ50とを介して駆動電力系に接続されるから、駆動電力系の絶縁抵抗の低下を検出することができることに基づく。
【0020】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータMG1やモータMG2が「電動機」に相当し、インバータ41やインバータ42が「電動機用駆動回路」に相当し、エアコン60や補機バッテリ62或いは補機バッテリ62に接続された図示しない補機が「補機」に相当し、インバータ61やDC/DCコンバータ63が「補機用駆動回路」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、正極側リレー52aと負極側リレー52bを有するシステムメインリレー52が正極側接続解除部と負極側接続解除部とを有する「接続解除手段」に相当し、加速度センサ89が「加速度検出手段」に相当し、図3の衝突時処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「衝突時制御手段」に相当し、絶縁抵抗低下検出器64が「絶縁抵抗低下検出手段」に相当し、図4の衝突後システム起動処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「衝突後システム起動制御手段」に相当する。
【0021】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0022】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、電気自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、36 駆動軸、37 デファレンシャルギヤ、38a,38b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42,61 インバータ、50 バッテリ、52 システムメインリレー、52a 正極側リレー、52b 負極側リレー、53 電圧センサ、54 平滑コンデンサ、60 空調装置(エアコン)、62 補機バッテリ、63 DC/DCコンバータ、64 絶縁抵抗低下検出器、65 発振電源、66 検出抵抗、67 カップリングコンデンサ、68 電圧センサ、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、82 シフトポジションセンサ、84 アクセルペダルポジションセンサ、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 加速度センサ、90 簡易モデル、92 絶縁抵抗、93 コモンモードコンデンサ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の電動機と、前記電動機を駆動する電動機用駆動回路と、少なくとも一つの補機と、前記補機を駆動する補機用駆動回路と、前記電動機用駆動回路および前記補機用駆動回路が接続された駆動系に電力を供給するる二次電池と、前記二次電池の正極側と前記駆動系の正極側との接続および該接続の解除を行なう正極側接続解除部と前記二次電池の負極側と前記駆動系の負極側との接続および該接続の解除を行なう負極側接続解除部とを有する接続解除手段と、車両の加速度を検出する加速度検出手段と、前記検出された加速度が車両の衝突によるとして予め定められた所定加速度範囲内のときに前記正極側接続解除部による接続および前記負極側接続解除部による接続が共に解除されるよう前記接続解除手段を制御する衝突時制御手段と、を備える電気自動車であって、
前記接続解除手段の前記二次電池側で前記正極側接続解除部および前記負極側接続解除部のうちの一方に接続されて回路の絶縁抵抗の低下を検出する絶縁抵抗低下検出手段と、
前記衝突時制御手段により前記正極側接続解除部による接続および前記負極側接続解除部による接続が共に解除された状態でシステム起動が要請されたときには、前記正極側接続解除部および前記負極側接続解除部のうちの一方の接続解除部だけが接続されており且つ前記電動機用駆動回路および前記補機用駆動回路が全てゲート遮断されている状態である全ゲート遮断状態で前記絶縁抵抗低下検出手段による絶縁抵抗の低下が検出されるよう前記接続解除手段と前記電動機用駆動回路と前記補機用駆動回路と前記絶縁抵抗低下検出手段とを制御し、前記全ゲート遮断状態で前記絶縁抵抗低下検出手段により絶縁抵抗の低下が検出されないときには前記正極側接続解除部および前記負極側接続解除部の双方の接続解除部が接続された状態で前記電動機用駆動回路および前記補機用駆動回路を順次ゲート許可して前記絶縁抵抗低下検出手段により絶縁抵抗の低下を検出して該絶縁抵抗の低下が検出された駆動回路についてはゲート遮断し、順次ゲート許可しての絶縁抵抗の低下の検出が終了した後にいずれかの駆動回路がゲート許可されているときにはゲート遮断された駆動回路の駆動を禁止した状態でのシステム起動を許可するよう前記接続解除手段と前記電動機用駆動回路と前記補機用駆動回路と前記絶縁抵抗低下検出手段とを制御し、前記全ゲート遮断状態で前記絶縁抵抗低下検出手段により絶縁抵抗の低下が検出されたとき又は前記順次ゲート許可しての絶縁抵抗の低下の検出が終了した後に全ての駆動回路がゲート遮断されているときにはシステム起動を禁止する衝突後システム起動制御手段と、
を備える電気自動車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−155743(P2011−155743A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14631(P2010−14631)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】