説明

電気自動車

【課題】電気自動車において航続距離を長くする。
【解決手段】バッテリ11と走行用モータ13とインバータ12と警告表示装置18とを備え、バッテリ11の電力によって走行用モータ13を駆動して走行する電動自動車100であって、走行用モータ13の要求電力またはバッテリ11の出力電力を制限し、警告表示装置18の表示を入り切りする制御部50を備え、制御部50は、バッテリ11の残存容量(SOC)が所定の容量よりも少ない場合には、走行用モータ13の要求電力を制限する要求電力制限手段と、バッテリ11の残存容量(SOC)が所定の容量を超える場合には、バッテリ11の出力特性に応じてバッテリ11の出力電力を制限する出力電圧制限手段と、走行用モータ13の要求電力の制限又はバッテリ11の出力制限が行われている場合に、制限状態を警告表示装置18に表示する警告表示手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、充放電可能なバッテリからの電力をモータに供給し、モータのみで走行する電気自動車が多く用いられるようになって来ている。このような電気自動車は、エンジンとモータとの動力によって走行するハイブリッド車両と異なり、自力でバッテリを充電することができず、バッテリの残存容量(SOC)が低下してきた場合には、いずれかの充電ステーション或いは自宅の電源等によってバッテリを充電することが必要である。また、バッテリの残存容量が少なくなりすぎると、バッテリの寿命に影響することがある。このため、このような電気自動車では従来のハイブリッド車両等エンジンを搭載して自力でバッテリを充電できる車両よりも確実に運転者にバッテリの残存容量等を警告し、バッテリの残存容量(SOC)が低下した際にはバッテリの電力消費を低減する必要がある。そこで、バッテリの端子電圧の低下を検知して運転者に報知手段によって運転者にバッテリ端子電圧の低下を知らせると共に、駆動モータの出力を低下させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−294302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、電気自動車であっても車両のドライバビリティが要求される。特許文献1に記載された従来技術の電気自動車では、バッテリの端子電圧の低下を知らせる警告ランプが点灯されることによって運転者がバッテリの端子電圧が低下していることを認識しても、そのために駆動モータの出力を低下させていることについては報知していないので、バッテリの端子電圧の低下と共にドライバビリティが低下したと感じることが多い。また、バッテリの端子電圧の低下の程度が不明なため、しばらく低速で走行する程度でかなりの距離の走行が可能なのか、直ぐに電気自動車を近くの充電ステーションまで退避走行されなければならないのか等の判断をすることができず、結果としてバッテリの過放電状態となってしまい、バッテリの寿命に影響を及ぼしてしまう場合があった。また、電気自動車では、より長い航続距離が求められている。しかし、特許文献1に記載された従来技術のように、単にバッテリの端子電圧の低下により駆動モータの出力を低下させるのみでは、バッテリの電力消費をあまり低く抑えられない場合があり、電気自動車の航続距離をあまり長くできないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、電気自動車において航続距離を長くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気自動車は、充放電可能な二次電池と、走行用モータと、前記二次電池の直流電力を前記走行用モータ駆動用の交流電力に変換するインバータと、ディスプレイと複数の警告灯とを含む警告表示装置とを備え、前記二次電池の電力によって走行用モータを駆動して走行する電動自動車であって、前記走行用モータの要求電力、又は前記二次電池の出力電力を制限し、前記警告表示装置の表示を入り切りする制御部を備え、前記制御部は、前記二次電池の残存容量が所定の容量よりも少ない場合には、走行用モータの要求電力を制限する要求電力制限手段と、前記二次電池の残存容量が前記所定の容量を超える場合で、前記二次電池又は前記走行用モータ又は前記インバータの何れかの温度が所定の温度を超える場合には、前記二次電池又は前記走行用モータ又は前記インバータの何れかの温度に基づいて前記走行用モータの要求電力、又は前記二次電池の出力電力を制限する出力電圧制限手段と、前記要求電力制限手段または前記出力電圧制限手段によって前記走行用モータの要求電力の制限又は前記二次電池の出力制限が行われている場合に、制限状態に応じて前記各警告灯によって警告表示を行い、前記ディスプレイに制限状態の説明を表示する警告表示手段と、備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、電気自動車において航続距離をより長くすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態における電気自動車の構成を示す系統図である。
【図2】本発明の実施形態における電気自動車に搭載されているディスプレスを示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態における電気自動車の制御部のメモリに格納されているSOCに対する電力制御カーブである。
【図4】本発明の実施形態における電気自動車の制御部のメモリに格納されているSOCに対する上限車速カーブである。
【図5】本発明の実施形態における電気自動車の制御部のメモリに格納されている温度に対する電力制御カーブである。
【図6】本発明の実施形態における電気自動車の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態における電気自動車の他の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本実施形態の電気自動車について説明する。図1に示すように、本実施形態の電気自動車100は、充放電可能な二次電池であるバッテリ11と、バッテリ11の直流電力を3相交流電力に変換するインバータ12と、インバータ12によって変換された3相交流電力で駆動される走行用モータ13と、走行用モータ13の出力軸14によって駆動される駆動軸15と、駆動軸15に取り付けられた駆動輪16を含んでいる。バッテリ11には充電ステーションや家庭の電源に接続する接続プラグ19が取り付けられ、充電ステーションや家庭で充電することができるよう構成されている。また、バッテリ11にはバッテリ11の温度を検出する温度センサ21が取り付けられている。バッテリ11とインバータ12との間の接続線にはバッテリ11の出力電圧を検出する電圧センサ24と、バッテリ11の入出力電流を検出する電流センサ25が取り付けられている。インバータ12は内部に複数のスイッチング素子を含むもので、スイッチング動作をした場合にはこれらのスイッチング素子が発熱する。このスイッチング素子にもその温度を検出する温度センサ22が取り付けられている。走行用モータ13は、ステータにコイルが巻かれ、ロータに永久磁石が取り付けられた同期電動機であり、そのステータのコイルには温度を検出する温度センサ23が取り付けられている。駆動軸15には駆動軸15の回転数を検出することによって電気自動車100の速度を検出する速度センサ26が取り付けられている。電気自動車の運転室に設けられ、運転者が操作するアクセルペダルにはアクセルペダル17の踏み込み量からアクセル開度を検出するアクセル開度センサ27が設けられている。また、電気自動車の運転室には、車速を示す速度計や各種の警告灯が組み込まれたフロントパネル18が設けられている。
【0010】
図2に示すように、フロントパネル18の中央には速度計31が配置され、速度計31の下側には、亀マーク形の走行制限警告灯32、充電ステーション形の充電警告灯33、ヒータ形の過熱警告灯34、温度計形の低温警告灯35が配置されている。速度計31の隣には、速度計31の直径と同等かそれよりも大きい、たとえば、3.5インチのディスプレイ36が配置されている。なお、各警告灯33〜35の形状は例示であり、警告を示す表示灯又は文言表示等であってもよい。
【0011】
図1に示すように、電気自動車100には、その走行や図2に示すフロントパネル18の表示を制御する制御部50が設けられている。制御部50は内部に情報の処理を行うCPU51と各種のデータやプログラムを格納するメモリ53と、各センサ21から27の信号を入力するためのセンサインターフェース52と、フロントパネル18に含まれる速度計31、各警告灯32から35、ディスプレイ36に信号を出力する表示装置インターフェース58とを含むコンピュータである。メモリ53には、後で説明するように、CPU51が実行する電池SOC計算プログラム54、電池出力可能パワー(Wout)計算プログラム55、運転者の操作に基づく要求動力を計算する要求動力計算プログラム56、及び各プログラム54から56が参照する各種の制限カーブデータ57が格納されている。
【0012】
図3は図1に示すメモリ53に格納されているバッテリ11の残存容量(SOC)に対するバッテリ11の出力電力制限カーブ(線a)と走行用モータ13の要求電力制限カーブ(線b)を示している。図3の線aに示すように、バッテリ11の出力電力は、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCよりも高い場合には通常の出力電力制限Wであり、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCより低いSOCよりも小さい場合には通常の出力電力制限Wよりも小さい出力電力制限Wとなり、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCとSOCの間にある場合には、SOCの変化に伴って直線的に出力電力制限Wと出力電力制限Wの間で変化する。また、同様に、図3の線bに示すように、バッテリ11の残存容量(SOC)に対する走行用モータ13の要求電力は、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCよりも高い場合には通常の要求電力制限Pであり、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCより低いSOCよりも小さい場合には通常の要求電力制限Pよりも小さい要求電力制限Pとなり、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCとSOCの間にある場合には、SOCの変化に伴って直線的に要求電力制限Pと要求電力制限Pの間で変化する。
【0013】
図4は図1に示すメモリ53に格納されているバッテリ11の残存容量(SOC)に対する電気自動車100の上限車速の制限カーブである。先に、図3を参照した各カーブと同様、図4に示すように、電気自動車100の上限車速は、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCよりも高い場合には通常の上限車速Vであり、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCより低いSOCよりも小さい場合には通常の上限車速Vよりも小さい上限車速Vとなり、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCとSOCの間にある場合には、SOCの変化に伴って直線的に上限車速Vと上限車速Vの間で変化する。
【0014】
図5には図1に示すメモリ53に格納されているバッテリ温度、インバータ素子温度、走行用モータ13のコイル温度に対するバッテリ11の出力電力制限カーブ、走行用モータ13の要求電力制限カーブを示している。図5の線cに示すように、バッテリ11の出力電力は、バッテリ11の温度が所定の温度Tよりも低く、温度Tよりも高い場合には通常の出力電力制限W、要求電力制限Pであり、バッテリ11の温度が所定の温度Tよりも低い場合には、通常の出力電力制限W、要求電力制限Pよりも低い出力電力制限W、要求電力制限Pに徐々に減少していく。そして、バッテリ11の温度が所定の温度Tを超えた場合には、バッテリ11の温度の上昇に伴って出力電力制限、要求電力制限が小さくなってくる。また、図5の線dに示すように、走行用モータ13のコイル温度が所定の温度Tよりも低く、温度Tよりも高い場合には通常の出力電力制限W、要求電力制限Pであり、走行用モータ13のコイル温度が所定の温度Tを超えた場合には、走行用モータ13のコイル温度の上昇に伴って出力電力とトルク制限、要求電力制限が小さくなってくる。同様に、図5の線eに示すように、インバータ12の素子の温度が所定の温度Tよりも低く、温度Tよりも高い場合には通常の出力電力制限W、要求電力制限Pであり、インバータ12の素子の温度が所定の温度Tを超えた場合には、インバータ12の素子の温度の上昇に伴って出力電力とトルク制限、要求電力制限が小さくなってくる。
【0015】
本実施形態では、通常のバッテリの出力電力制限W、と通常の要求電力制限Pは同じ大きさであり、出力電力制限W、要求電力制限Pも同一であることとして説明したが、図3に示すように、各要求電力制限P、Pをそれぞれバッテリの出力電力制限W、Wよりも低くするようにしてもよい。
【0016】
以上のように構成された本実施形態の電気自動車100の動作について図6のフローチャートを参照しながら説明する。図6のステップS101に示すように、制御部50のCPU51は電圧センサ24からバッテリ11の出力電圧を取得する指令を出力する。この指令によって、制御部50はセンサインターフェース52を通してバッテリ11の出力電圧を取得してメモリ53に格納する。図6のステップS102に示すように、CPU51は電流センサ25からバッテリ11の出力電流を取得する指令を出力する。この指令によって制御部50はセンサインターフェース52を通してバッテリ11の出力電流を取得してメモリ53に格納する。図6のステップS103に示すように、CPU51は、メモリ53に格納している電池SOC計算プログラム54を実行し、電圧センサ24、電流センサ25から取得したバッテリ11の出力電圧と出力電流とからバッテリ11の残存容量(SOC)を計算する。このSOCの計算は、例えば、バッテリの出力電圧と出力電流との関係を示すカーブに基づいて算出するようにしてもよいし、バッテリ11の出力電流がゼロの場合の開放端電圧を取得してSOCを計算するようにしてもよいし、出力電圧と出力電流からバッテリ11の出力電力を計算し、この出力電力を積算して初期のSOCから引くことによって計算するようにしてもよい。
【0017】
CPU51はバッテリ11のSOCの計算が終わったら、図6のステップS104に示すように、バッテリ11の温度センサ21、インバータ12の素子に設けた温度センサ22、走行用モータ13のコイルに設けた温度センサ23からそれぞれバッテリ11、インバータ12の素子の温度、走行用モータ13のコイルの温度を取得する指令を出力する。この指令によって、制御部50は、センサインターフェース52を通して各温度を取得し、メモリ53に格納する。これらの各温度はバッテリ11、インバータ12、走行用モータ13の各ユニットを代表する温度であることからユニット温度という。
【0018】
CPU51は図6のステップS105に示すように、電池SOC計算プログラム54を実行して計算したバッテリ11の残存容量(SOC)が図3に示す所定のSOCよりも低くなっているかどうかを判断する。そして、バッテリ11の残存容量(SOC)が所定のSOCよりも低い場合には、CPU51は図6のステップS106に示すように、電気自動車100の走行制限を行うことが必要と判断し、バッテリ11の残存容量(SOC)が低く、充電が必要となっていることを示すように、図2に示す充電ステーション形の充電警告灯33を点灯させる。そして、図2に示した亀マーク形の走行制限警告灯32(出力低下警告灯)を点灯させる。走行制限警告灯32を点灯させるSOCの閾値は充電が必要となっていること示す充電警告灯33を点灯させる所定のSOCよりも小さくてもよい。更にCPU51は図2に示すディスプレイ36に、例えば、「SOC低下により上限車速を制限中」という文字を表示する指令を出力する。この指令によって表示装置インターフェース58から各警告灯32,33をオンとする信号、及びディスプレイ36に表示する文字の信号が出力される。この信号によって各警告灯32,33がオンとなり、ディスプレイ36に警告文言が表示される。
【0019】
そして、CPU51は図6のステップS107に示すように電気自動車100のパワー制限を行う。このパワー制限は、たとえば、図3の線aに示したように、バッテリ11からの出力電力を制限するような指令を出力する。この指令によってインバータ12のスイッチング素子の動作が変更され、図3の線aで規定されるように、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCよりも低くなったら出力電力制限がWからWに向って低下を始める。そして、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCよりも低くなったら出力電力制限Wより大きな電力がバッテリ11から走行用モータ13に流れないようにする。また、図3の線bに示したように走行用モータ13の要求電力を制限するようにしてもよい。この場合、制御部50のCPU51は、アクセル開度センサ27から取得したアクセル開度等に基づいてメモリ53の電気自動車100の要求動力計算プログラム56を実行して走行用モータ13の要求電力を計算しておく。そして、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCよりも低くなったら、要求電力制限がPからPに向って低下を始め、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCよりも低くなったら運転者がアクセルペダル17を踏み込んでも、走行用モータ13の要求駆動力として要求動力計算プログラム56の計算結果に代えて要求電力制限Pを要求電力として電気自動車100を駆動する。このようにして、走行用モータ13への供給電力が要求電力制限Pよりも大きくならないようにする。いずれのカーブを用いても、バッテリ11の残存容量(SOC)が低下した際にはバッテリ11からの放電電力が抑制され、かつモータ等の損失の少ない、システム効率の良い領域を使った走行に限定することで航続距離を伸ばすことができる。
【0020】
また、図6のステップS107に示すように、CPU51は、図4に示すカーブを適用して電気自動車100の上限速度を制限する。図4に示すように、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCよりも低くなったら電動自動車の上限速度を通常の上限速度VからVに向って低下を始め、バッテリ11の残存容量(SOC)がSOCよりも低くなったら上限速度Vより速く走行することが無い様にする。これによって走行抵抗の低い低速での走行を継続することとなり電気自動車100の航続距離を伸ばすことができる。
【0021】
上記のように電気自動車100の走行が制限されているので、運転者がアクセルペダル17を大きく踏み込んでも、通常の状態よりも加速は遅く、また速度も低い状態となっているが、運転者は各警告灯32,33あるいはディスプレイ36の文字表示によって電気自動車100の走行状態をより詳細に知ることができることから、単なるドライバビリティの低下ではなく、バッテリ11の残存容量(SOC)が充電の必要となる状態まで低下していることによる走行制限であることを明確に認識することができる。このため、運転者がより電力を消費しない運転をすることが期待でき、充電ステーションまでの退避走行をよりスムースにすることができる。また、バッテリ11の残存容量(SOC)の低下を抑制しながら充電ステーションまでの退避走行を行うので、過放電を抑制することができ、バッテリ11の寿命を保持することができる。
【0022】
CPU51は、図6のステップS105において、バッテリ11の残存容量(SOC)が所定のSOCよりも大きい場合には、図6のステップS108に示すように、バッテリ11の特性による出力制限がないかどうかを確認する。例えば、バッテリ11の残存容が所定のSOCよりも大きい場合でも、連続的に大きな出力電力を要求された場合など、劣化と電池の過熱を抑制するためにその出力電力を制限する場合がある。この制限は、バッテリ11の残存容量とピークの要求駆動力と電流(電池出力)の積算値によって決まってくる場合が多い。しかし、ピークの要求駆動力は常に変動していることから、ピークの駆動力によって走行制限警告灯32をオンオフしたのでは、走行制限警告灯32が煩雑にオンオフを繰り返してしまう。そこで、速度や走行状態とバッテリ11の残存容量(SOC)に基づいて、バッテリ11からの出力電力制限の発生が予想される場合に、CPU51は図6のステップS109に示すように、走行制限警告灯32を点灯させる。この表示によって、運転者は実際に走行制限が行われた場合でも、違和感がないようにすることができる。
【0023】
CPU51は、バッテリ11の残存容量(SOC)が所定のSOCよりも大きいので、図6のステップS110に示すように、図3から図4に示した制限カーブを用いたパワー制限、上限速度の制限は行わない。
【0024】
CPU51は、図6のステップS108において、バッテリ11の特性によってバッテリ11からの出力が制限される可能性が低いと判断した場合には、図6のステップS111に示すように、バッテリ11、インバータ12の素子、走行用モータ13のコイルの3つの温度、これらをユニット温度という、がそれぞれ所定の温度範囲内にあるかどうかを判断する。そして、例えば、図5に示すように、バッテリ11の温度がTとTとの間にある場合にはバッテリ11の出力電力の制限を行わず通常の出力電力制限Wとし、図6のステップS112に示すように、バッテリ11の温度がTよりも低い場合には、バッテリ11からの出力電力制限をWよりも低いWとし、バッテリ11の低温状態を示す低温警告灯35を点灯させると共に、ディスプレイ36に、例えば、「バッテリの低温状態により走行制限中」と文字表示を行う。また、バッテリ11の温度がTよりも高い場合には、バッテリ11からの出力電力制限をWよりも図5の線cに示すようにバッテリ11の温度上昇に従って次第に低下させ、バッテリ11の過熱状態を示す過熱警告灯34を点灯させると共に、ディスプレイ36に、例えば、「バッテリの過熱により走行制限中」と文字表示を行う。走行用モータ13のコイルの温度がTよりも低い場合、Tよりも高い場合も同様、図5の線dによって出力電力の制限を行い、低温警告灯35または過熱警告灯34を点灯させ、ディスプレイ36には「モータの低温状態により走行制限中」または、「モータの過熱により走行制限中」の文言を表示する。インバータ12の素子の温度がTよりも低い場合、Tよりも高い場合も同様、図5の線eによって出力電力の制限を行い、低温警告灯35または過熱警告灯34を点灯させ、ディスプレイ36には「インバータ素子の低温状態により走行制限中」または、「インバータ素子の過熱により走行制限中」の文言を表示する。図5の線c,d,eによって走行用モータ13の要求電力の制限を行う場合も同様である。
【0025】
CPU51は、図6のステップS111でユニット温度によるバッテリ11からの出力電力の制限あるいは走行用モータ13の要求電力の制限がない場合には、図6のステップS113に示すように通常の走行を行い、走行制限警告灯32や他の警告灯33,34,35は消灯し、ディスプレイ36の表示も行わない。
【0026】
以上説明したように、本実施形態の電気自動車100は、バッテリ11の残存容量(SOC)の低下等によって走行に制限が必要な場合に適切に走行を制限してバッテリ11の電力消費を抑制することができる上、各警告灯32から35の点灯やディスプレイ36への文字表示によって走行制限状態であることを運転者に知らせることができるので、運転者がドライバビリティに違和感を持つことを抑制し、更に運転者が走行制限中であることを認識して運転することができるので、運転者が電力の消費に気をつけることができ、結果として航続距離を伸ばすことができる。
【0027】
次に、図7を参照しながら本発明の他の実施形態について説明する。図1から図6を参照して説明したことと同様のことについては同様の符号を付して説明は省略する。
【0028】
先に、図6のステップS101からS103と同様、CPU51は、図7のステップS201からS203に示すように、バッテリ11の出力電圧、出力電流を取得し、バッテリ11の残存容量(SOC)を計算する。そして、CPU51は図1に示す電池出力可能パワー計算プログラム55を実行してバッテリ11の出力可能電力(Wout)を計算する。この計算は、取得したバッテリ11の出力電圧、出力電流とバッテリの温度等に基づいて計算される。
【0029】
CPU51はバッテリ11の出力可能電力(Wout)の計算を終了したら、その計算結果をメモリ53に格納する。次に図7のステップS205に示すように、CPU51は、計算したバッテリ11の出力可能電力(Wout)と所定の閾値出力可能電力αとを比較する。この所定の閾値出力可能電力αは、例えば、バッテリ11がフル充電状態での通常の最大出力可能電力(Woutmax)の50%としてもよい。そして、CPU51は先に計算したバッテリ11の出力可能電力(Wout)が所定の閾値出力可能電力α未満の場合には、走行中の電気自動車100がバッテリ11の残存容量(SOC)のり低下等によって走行制限を受ける場合があると判断し、図7のステップS206に示すように、走行制限警告灯32を点灯させるとともに、ディスプレイ36に、例えば、「電池出力可能電力の低下により重度の走行制限中」のような文言を表示する。
【0030】
また、CPU51は、図7のステップS205で計算したバッテリ11の出力可能電力(Wout)が所定の閾値出力可能電力αよりも大きい場合には、図7のステップS207に示すように、計算したバッテリ11の出力可能電力(Wout)と閾値出力可能電力β、例えば、バッテリ11がフル充電状態での通常の最大出力可能電力(Woutmax)の75%とを比較し、計算したバッテリ11の出力可能電力(Wout)が閾値出力可能電力β未満であると判断した場合には、バッテリ11の出力可能電力(Wout)は、閾値出力可能電力αよりも大きく閾値出力可能電力βよりも小さい状態であり、軽度の走行制限を受ける場合があると判断する。そして、CPU51は、図7のステップS208に示すように、走行制限警告灯32を点灯させるとともに、ディスプレイ36に、例えば、「電池出力可能電力の低下により軽度の走行制限中」のような文言を表示する。そして、CPU51は、計算したバッテリ11の出力可能電力(Wout)が閾値出力可能電力β以上であると判断した場合には、バッテリ11による走行制限を受けることはないと判断して図7のステップS209に示すように走行制限警告灯32を消灯し、ディスプレイ36の表示も行わない。
【0031】
次に、図7のステップS210に示すように、CPU51はバッテリ11の残存容量(SOC)が所定の残存容量γ未満かどうかを判断する。そして、バッテリ11の残存容量(SOC)が所定の残存容量γ未満であると判断した場合には、図7のステップS211に示すように、図3、4に示した制限カーブを適用してバッテリ11の出力電力制限或いは走行用モータ13の要求電力制限または上限速度の制限を行うと共に、図7のステップS206で点灯させた走行制限警告灯32は点灯させたまま、充電警告灯33を点滅させ、ディスプレイ36の表示を、例えば、「SOC低下により重度の走行制限中」のような文言に変更表示する。
【0032】
CPU51は、図7のステップS210でバッテリ11の残存容量(SOC)が所定の残存容量γ以上であると判断した場合には、図7のステップS212に示すように、図3、図4の制限カーブを用いたバッテリ11の出力電力の制限、走行用モータ13の要求電力の制限、上限速度の制限は行わず、充電警告灯33は点灯しない。そして、ディスプレイ36には図7のステップS206,S208,S209で表示した状態をそのまま保った表示とする。
【0033】
以上、説明したように、本実施形態の電気自動車100も先に図1から図6を参照して説明した実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0034】
11 バッテリ、12 インバータ、13 走行用モータ、14 出力軸、15 駆動軸、16 駆動輪、17 アクセルペダル、18 フロントパネル、19 接続プラグ、21〜23 温度センサ、24 電圧センサ、25 電流センサ、26 速度センサ、27 アクセル開度センサ、31 速度計、32 走行制限警告灯、33 充電警告灯、34 過熱警告灯、35 低温警告灯、36 ディスプレイ、50 制御部、52 センサインターフェース、53 メモリ、54 電池SOC計算プログラム、55 電池出力可能パワー計算プログラム、56 要求動力計算プログラム、57 制限カーブデータ、58 表示装置インターフェース、100 電気自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な二次電池と、走行用モータと、前記二次電池の直流電力を前記走行用モータ駆動用の交流電力に変換するインバータと、ディスプレイと複数の警告灯とを含む警告表示装置とを備え、前記二次電池の電力によって走行用モータを駆動して走行する電動自動車であって、
前記走行用モータの要求電力、又は前記二次電池の出力電力を制限し、前記警告表示装置の表示を入り切りする制御部を備え、
前記制御部は、
前記二次電池の残存容量が所定の容量よりも少ない場合には、走行用モータの要求電力を制限する要求電力制限手段と、
前記二次電池の残存容量が前記所定の容量を超える場合で、前記二次電池又は前記走行用モータ又は前記インバータの何れかの温度が所定の温度を超える場合には、前記二次電池又は前記走行用モータ又は前記インバータの何れかの温度に基づいて前記走行用モータの要求電力、又は前記二次電池の出力電力を制限する出力電圧制限手段と、
前記要求電力制限手段または前記出力電圧制限手段によって前記走行用モータの要求電力の制限又は前記二次電池の出力制限が行われている場合に、制限状態に応じて前記各警告灯によって警告表示を行い、前記ディスプレイに制限状態の説明を表示する警告表示手段と、
を備えることを特徴とする電気自動車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−147592(P2012−147592A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4633(P2011−4633)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】