説明

電池セル状態検出装置、電池モジュール、および電池セルの状態検出方法

【課題】電池セルのセル温度およびセル電圧の検出構成を簡易化する技術を提供すること。
【解決手段】電池セル状態検出装置10は、直列回路SC1〜SC3、センサTh1〜Th3、および温度検出回路30を備える。各直列回路は、スイッチSW1〜SW3と分圧抵抗R1〜R3との直列回路であって、電圧検出回路20と各電池セルCLの正極とを接続する第1ライン(L1,L2,L3)と、電圧検出回路と各電池セルの負極とを接続する第2ライン(L0,L1,L2)とに接続されるとともに、電池セルCLと並列に接続される。温度検出回路30は、電池セルの温度を検出する際に、各直列回路のスイッチSWをオフさせてセル電圧VCを取得し、検出電池セルに対応する直列回路のスイッチSWをオンさせて、分圧抵抗による分圧電圧VRを取得し、セル電圧VCおよび分圧電圧VRに基づいて電池セルのセル温度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セル状態検出装置、電池モジュール、および電池セルの状態検出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の単位電池(セル)を直列的に接続して、所定の高電圧を得るようにした組電池が広く知られている。この種の組電池では、例えば下記特許文献1にもあるように、通常、各セルの状態を把握するために、各セルの電圧および温度が検出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−236789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1においては、組電池(燃料電池スタック)における温度検出は、電圧検出とは別途の配線を用いて個別に行われる。そのため、検出のために多数の配線が必要とされたり、あるいは検出のための回路構成が複雑になったりするという不都合があった。すなわち、組電池あるいは電池セルのセル温度検出をセル電圧検出と個別に行おうとすると検出に係る構成が複雑化するという不都合があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電池セルのセル温度およびセル電圧の検出に係る構成を簡易化する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される電池セル状態検出装置は、少なくとも一個の電池セルを有する電池に対して、前記電池セルの状態を検出する電池セル状態検出装置であって、電圧を検出する電圧検出回路と、前記電圧検出回路と電池セルの正極とを接続する第1ラインと、前記電圧検出回路と電池セルの負極とを接続する第2ラインと、スイッチと分圧抵抗との直列回路であって、前記第1ラインと前記第2ラインとに接続されるとともに、前記電池セルと並列に接続される少なくとも一個の直列回路と、前記電池セルの近傍の前記第1ライン上において、前記直列回路と前記第1ラインとの接続点と、前記電池セルの正極との間に設けられる少なくとも一個のセンサと、前記各電池セルの温度を検出する際に、前記各直列回路のスイッチをオフさせて温度を検出する検出電池セルのセル電圧を前記電圧検出回路から取得し、前記検出電池セルに対応する直列回路のスイッチをオンさせて、前記分圧抵抗による電圧降下である分圧電圧を前記電圧検出回路から取得し、前記セル電圧および前記分圧電圧に基づいて前記検出電池セルのセル温度を検出する温度検出回路とを備える。
【0006】
本構成によれば、センサと直列回路との配置構成によって、電圧検出回路によるセル電圧と分圧電圧の電圧検知のみによって、セル電圧の計測ができるとともにセル温度の計測もできる。すなわち、セル温度の計測において、例えば、分圧電圧からセル電流およびセンサの電圧降下が算出でき、センサの電圧降下とセル電流からセンサの抵抗値が算出できる。また、センサの抵抗値からセル温度が検出できる。そのため、セル電圧計測およびセル温度計測のために、個別の配線および検出回路が不要となる。その結果、セル電圧検出およびセル温度検出のための検出装置の構成を簡略化でき、それによって検出装置のコストを低減することができる。
【0007】
また、上記電池セル状態検出装置において、前記温度検出回路は、前記セル温度を検出する際に、前記電池セルに対応する前記センサの電圧降下と前記センサに流れるセンサ電流とを算出し、前記電圧降下と前記センサ電流とから前記センサの抵抗値を算出するようにしてもよい。
この場合、センサの抵抗値を算出することによって、センサの抵抗値と温度との関係からセル温度を検出することができる。
【0008】
また、上記電池セル状態検出装置において、前記センサの抵抗値と前記セル温度との関係を示すセンサ特性テーブルを格納するメモリを備え、前記温度検出回路は、前記センサ特性テーブルを参照して、前記セル温度を検出するようにしてもよい。この場合、センサ特性テーブルを参照することによって、セル温度の検出を迅速に行える。
また、上記電池セル状態検出装置において、前記センサは温度センサとしてもよい。
【0009】
また、少なくとも一個の電池セルと、上記いずれかの電池セル状態検出装置とを備えた電池モジュールを構成してもよい。
【0010】
また、本明細書によって開示される電池モジュールは、少なくとも一個の電池セルと、前記少なくとも一個の電池セルを有する電池に対して、各電池セルの状態を検出する電池セル状態検出装置とを備えた電池モジュールであって、前記電池セル状態検出装置は、電圧を検出する電圧検出回路と、前記電圧検出回路と各電池セルの正極とを接続する第1ラインと、前記電圧検出回路と各電池セルの負極とを接続する第2ラインと、スイッチと分圧抵抗との直列回路であって、前記第1ラインと前記第2ラインとに接続されるとともに、前記電池セルと並列に接続される少なくとも一個の直列回路と、前記電池セルの近傍の前記第1ライン上において、前記直列回路と前記第1ラインとの接続点と、前記電池セルの正極との間に設けられる少なくとも一個のセンサと、前記各電池セルの温度を検出する際に、前記各直列回路のスイッチをオフさせて温度を検出する検出電池セルのセル電圧を前記電圧検出回路から取得し、前記検出電池セルに対応する直列回路のスイッチをオンさせて、前記分圧抵抗による電圧降下である分圧電圧を前記電圧検出回路から取得し、前記セル電圧および前記分圧電圧に基づいて前記検出電池セルのセル温度を検出する温度検出回路とを含む。
【0011】
また、本明細書によって開示される電池セルの状態検出方法は、少なくとも一個の電池セルを有する電池に対して、前記電池セルの状態を検出する電池セルの状態検出方法であって、前記電池は、電圧を検出する電圧検出回路と、前記電圧検出回路と電池セルの正極とを接続する第1ラインと、前記電圧検出回路と電池セルの負極とを接続する第2ラインと、スイッチと分圧抵抗との直列回路であって、前記第1ラインと前記第2ラインとに接続されるとともに、前記電池セルと並列に接続される直列回路と、前記電池セルの近傍の前記第1ライン上において、前記直列回路と前記第1ラインとの接続点と、前記電池セルの正極との間に設けられるセンサとを備え、該電池セルの状態検出方法は、前記直列回路のスイッチをオフさせて前記電圧検出回路によって前記電池セルのセル電圧を取得するセル電圧取得ステップと、前記直列回路のスイッチをオンさせて、前記分圧抵抗による電圧降下である分圧電圧を前記電圧検出回路によって取得する分圧取得ステップと、前記セル電圧および前記分圧電圧に基づいて前記センサの電圧降下と前記センサに流れるセンサ電流とを算出し、前記電圧降下と前記センサ電流とから前記センサの抵抗値を算出する算出ステップと、前記センサの抵抗値と前記電池セルのセル温度との関係を示すセンサ特性テーブルを参照して、前記電池セルのセル温度を検出するセル温度検出ステップとを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スイッチと分圧抵抗との直列回路が、第1ライン(電池セルの正極に接続されるライン)と第2ライン(電池セルの負極に接続されるライン)とに接続されるとともに、電池セルと並列に接続される。また、センサが、電池セルの近傍の第1ライン上において、直列回路と第1ラインとの接続点と、電池セルの正極との間に接続される。このような、直列回路とセンサとの配置によって、単に電圧検出回路による電圧検出に基づいて、電池セルのセル温度およびセル電圧の検出を行うことができる。したがって、電池セルのセル温度を検出するために個別の配線および回路を設ける必要がなく、電池セルのセル温度およびセル電圧の検出に係る構成を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係る電池モジュールの電気的構成を概略的に示すブロック図
【図2】セル状態検出処理を概略的に示すフローチャート
【図3】セル状態検出装置のスイッチの状態を示す説明図
【図4】セル状態検出装置のスイッチの状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
図1〜図4を参照して、本発明の一実施形態に係る電池モジュールを説明する。図1は、電池モジュール1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
電池モジュール1は、少なくとも一個の電池セルを有する電池としての組電池Baと、電池セル状態検出装置としての組電池のセル状態検出装置(以下、単に「セル状態検出装置」という)10とを含む。セル状態検出装置10は、複数(本実施形態では3個)の電池セル(以下、単に「セル」と記す)CLが直列に接続されて構成される組電池Baに対して各セルCL1〜CL3の温度TCおよびセル電圧VCを検出する。
【0015】
二次電池、例えば、リチウム電池であるバッテリBaは本発明に係る電池に相当するものである。なお、図1にはバッテリBaが、3つの単位電池であるセルCL1〜CL3を直列的に接続された組電池として示されるが、バッテリBaのセルCLの直列数は任意である。また、電池は二次電池に限られず、例えば、燃料電池であってもよい。
【0016】
1.セル状態検出装置の構成
セル状態検出装置10は、図1に示されるように、電圧検出回路20、CPU30、メモリ40、グラウンドラインL0、電圧検出ラインL1〜L3、直列回路SC1〜SC3、およびサーミスタTh1〜Th3を含む。
【0017】
電圧検出回路20は、セルCLの直列接続段数に応じた段数、すなわち3段の入力端子(入力部に相当)A1〜A3とグラウンド端子G、および3つの出力端子B1〜B3を備える。各出力端子B1〜B3がそれぞれ、CPU30のA/D変換ポートAD1〜AD3に1対1の対応関係で接続されている。
【0018】
電圧検出回路20は、各端子A1〜A3、Gに入力される入力電圧E1〜E3から電圧差V1〜V3を検出し、電圧差V1〜V3を各出力端子B1〜B3を通じてCPU30に出力する。電圧検出回路20は、例えば、複数個の差動アンプ(図略)等を含む。
【0019】
電圧検出ラインL1〜L3は、電圧検出回路20の各端子A1〜A3と各セルCL1〜CL3の正極とを1対1の対応関係で接続する。すなわち、一段目のセルCL1の正極と第1入力端子A1とが、第1電圧検出ラインL1により接続され、二段目のセルCL2の正極と第2入力端子A2とが第2電圧検出ラインL2により接続され、三段目のセルCL3と第3入力端子A3とが第3電圧検出ラインL3により接続されている。そして、一段目のセルCL1の負極と、グラウンド端子Gとの間がグラウンドラインL0により接続されている。
【0020】
この構成により、第1電圧検出ラインL1を通じて第1入力端子A1に印加された第1入力電圧(グラウンドを基準とした電位)E1(V1)が、出力端子B1を通じてCPU30のAD1に入力される。なお、第1入力電圧E1は、第1入力電圧E1とグラウンド電圧の差分に相当する第1電圧V1と等しい。
【0021】
また、第2電圧検出ラインL2を通じて第2入力端子A2に印加された第2入力電圧E2(グラウンドを基準とした電位)と第1入力電圧E1との差分に相当する第2電圧V2が、出力端子B2を通じてCPU30のAD2に入力される。
【0022】
さらに、第3電圧検出ラインL3を通じて第3入力端子A3に印加された第3入力電圧E3(グラウンドを基準とした電位)と第1入力電圧E2の差分に相当する第3電圧V3が出力端子B3を通じてCPU30のAD3に出力される。
【0023】
各直列回路SC1〜SC3は、スイッチSW1〜SW3と分圧抵抗R1〜R3との直列回路である。第1直列回路SC1は第1電圧検出ライン(初段の電圧検出ライン)L1とグラウンドGNDとの間において、第1セルCL1と並列に接続される。第2直列回路SC2は、第1電圧検出ラインL1と第2電圧検出ラインL2との間において、第2セルCL2と並列に接続される。また、第3直列回路SC3は、第2電圧検出ラインL2と第3電圧検出ラインL3との間において、第3セルCL3と並列に接続される。各スイッチSW1〜SW3は、例えば、FET等の半導体スイッチで構成される。
【0024】
ここで、電圧差である第1〜第3電圧V1〜V3は、各直列回路SC1〜SC3のスイッチSW1〜SW3がオフの場合は、セル電圧VC1〜VC2に相当する。また、電圧差V1〜V3は、直列回路SC1〜SC3のいずれかのスイッチSW1〜SW3がオンの場合は、オンされた直列回路の分圧抵抗R1〜R3による電圧降下(分圧電圧)VR1〜VR3に相当する。
【0025】
各サーミスタ(センサおよび温度センサの一例)Th1〜Th3は、各セルCL1〜CL3の近傍の各電圧検出ラインL1〜L3上において、各直列回路SC1〜SC3と各電圧検出ラインL1〜L3との接続点Nd1〜Nd3と、各セルCL1〜CL3の正極との間に設けられる。なお、温度センサはサーミスタに限られず、検出温度とセンサ抵抗との間に相関関係のある温度センサであればよい。
【0026】
具体的には、第1サーミスタTh1は、第1セルCL1の近傍の第1電圧検出ラインL1上において、第1直列回路SC1と第1電圧検出ラインL1との接続点Nd1と、第1セルCL1の正極との間に設けられる。また、第2サーミスタTh2は、第2セルCL2の近傍の第2電圧検出ラインL2上において、第2直列回路SC2と第2電圧検出ラインL2との接続点Nd2と、第2セルCL2の正極との間に設けられる。また、第3サーミスタTh3は、第3セルCL3の近傍の第3電圧検出ラインL3上において、第3直列回路SC3と第3電圧検出ラインL3との接続点Nd3と、第3セルCL3の正極との間に設けられる。
【0027】
CPU(温度検出回路の一例)20は、3つのA/D変換ポートAD1〜AD3を備える。CPU30は、各セルCL1〜CL3の温度TC1〜TC3を検出する際に、対応する直列回路SCのスイッチSWをオフさせて温度TCを検出する検出セルCLのセル電圧VCを電圧検出回路20から取得する。そして、CPU30は、検出セルCLに対応する直列回路SCのスイッチSWをオンさせて、分圧抵抗Rによる電圧降下である分圧電圧VRを電圧検出回路20から取得し、セル電圧VCおよび分圧電圧VRに基づいて検出セルCLのセル温度TCを検出する。
【0028】
また、CPU30は、各スイッチSW1〜SW3のオン・オフを個別に制御するスイッチ信号Ssw1〜Ssw3を生成し、各スイッチ信号Ssw1〜Ssw3によって各スイッチSW1〜SW3のオン・オフを個別に制御する。なお、図1には、便宜上、各スイッチ信号Ssw1〜Ssw3の経路は、単一の破線で示される。
【0029】
なお、本実施形態では、第1セルCL1に対しては、第1電圧検出ラインL1が本発明における「第1ライン」に相当し、グラウンドラインL0が本発明における「第2ライン」に相当する。また、第2セルCL2に対しては、第2電圧検出ラインL2が「第1ライン」に相当し、第1電圧検出ラインL1が「第2ライン」に相当する。また、第3セルCL3に対しては、第3電圧検出ラインL3が「第1ライン」に相当し、第2電圧検出ラインL2が「第2ライン」に相当する。「第1ライン」は、電圧検出回路20と各セルCL1〜CL3の正極とを接続するラインを意味し、「第2ライン」は、電圧検出回路20と各セルの負極とを接続するラインを意味する。そのため、各電圧検出ラインL1〜L3は、「第1ライン」と「第2ライン」の機能を兼ねる。
【0030】
2.セル温度検出処理
次に、図2〜図4を参照して、本実施形態におけるセル温度検出処理を説明する。図2は、セル温度検出処理の各処理を概略的に示すフローチャートであり、図3および図4はセル温度検出処理における各スイッチSW1〜SW3の状態を示す説明図である。セル温度検出処理は、例えば、メモリ40に格納されたプログラムにしたがってCPU30によって、所定時間毎、あるいは処理指示にしたがって適時、実行される。
【0031】
まず、CPU30は、各スイッチSW1〜SW3をオフした状態で第1電圧V1、第2電圧V2および第3電圧V3を電圧検出回路20から取得する(ステップS10)。この時の取得電圧値をそれぞれVM11、VM12、VM13とすると、電圧値VM11は第1セルCL1のセル電圧VC1に相当し、電圧値VM12は第2セルCL2のセル電圧VC2に相当し、電圧値VM13は第3セルCL3のセル電圧VC3に相当する。
【0032】
次いで、CPU30は、第1セルCL1のセル温度TC1を検出するために、第1スイッチSW1のみをオンし(図3参照)、第1スイッチSW1をオンした状態で第1電圧V1を電圧検出回路20から取得する(ステップS12)。この時の取得電圧値をVM21とすると、取得電圧値VM21は第1分圧抵抗R1の分圧電圧VR1に相当する。すなわち、取得電圧値VM21は、第1セル電圧VC1を第1サーミスタTh1の抵抗Rth1と第1分圧抵抗R1とで分圧した値となる。そして、CPU30は、第1サーミスタの抵抗Rth1を、下式1によって算出する(ステップS14)。
【0033】
Rth1=サーミスタの電圧降下Vt1/サーミスタ電流It1
=(VM11−VM21)/(VM21/R1)…… 式1
次いで、CPU30は、例えば、メモリ40に格納された第1サーミスタの抵抗Rth1と温度Tとの関係を示すセンサ特性テーブルから第1セルCL1のセル温度TC1を検出する(ステップS16)。
【0034】
続いて、CPU30は、第2セルCL1のセル温度TC2を検出するために、第2スイッチSW2のみをオンし(図4参照)、第2スイッチSW2をオンした状態で第2電圧V2を電圧検出回路20から取得する(ステップS22)。この時の取得電圧値をVM22とすると、取得電圧値VM22は第2分圧抵抗R2の分圧電圧(電圧降下)VR2に相当する。すなわち、取得電圧値VM22は、第2セル電圧VC2を、第1サーミスタTh1の抵抗Rth1、第2サーミスタTh2の抵抗Rth2および第2分圧抵抗R2とで分圧した際の、第2分圧抵抗R2の分圧電圧VR2に相当する値となる。そして、CPU30は、第2サーミスタの抵抗Rth2を、下式2によって算出する(ステップS24)。
【0035】
Rth2=サーミスタの電圧降下Vt2/サーミスタ電流It2
=(VM12−(Rth1*VM22/R2+VM22))/(VM22/R2)…… 式2
そして、CPU30は、例えば、メモリ40に格納された第2サーミスタの抵抗Rth2と温度Tとの関係を示すセンサ特性テーブルから第2セルCL2のセル温度TC2を検出する(ステップS26)。
【0036】
続いて、CPU30は、第3セルCL3のセル温度TC3を検出するために、セル温度TC2の場合と同様に、第3スイッチSW3のみをオンし、第3スイッチSW3をオンした状態で第3電圧V3を電圧検出回路20から取得する(ステップS32)。この時の取得電圧値をVM23とすると、取得電圧値VM23は第3分圧抵抗R3の分圧電圧(電圧降下)VR3に相当する。すなわち、取得電圧値VM23は、第3セル電圧VC3を、第2サーミスタTh2の抵抗Rth2、第3サーミスタTh3の抵抗Rth3および第3分圧抵抗R3とで分圧した際の、第3分圧抵抗R3の分圧電圧VR3に相当する値となる。そして、CPU30は、第3サーミスタの抵抗Rth3を、式2と同様な下式3によって算出する(ステップS34)。
【0037】
Rth3=サーミスタの電圧降下Vt3/サーミスタ電流It3
=(VM13−(Rth2*VM23/R3+VM23))/(VM23/R3)…… 式3
そして、CPU30は、例えば、メモリ40に格納された第3サーミスタの抵抗Rth3と温度Tとの関係を示すセンサ特性テーブルから第3セルCL3のセル温度TC3を検出する(ステップS36)。
【0038】
3.実施形態の効果
上記したように、本実施形態においては、スイッチSW1〜SW3と分圧抵抗R1〜R3との直列回路SC1〜SC3が、第1ライン(L1,L2,L3)と第2ライン(L0,L1,L3)とに接続されるとともに、セルCL1〜〜CL3と並列に接続される。また、サーミスタTh1〜Th3が、各セルの近傍の第1ライン(L1,L2,L3)上において、直列回路SC1〜SC3と第1ラインとの接続点Nd1〜Nd3と、各セルの正極との間に設けられる。
言いかえれば、直列回路SC1〜SC3は、初段の電圧検出ラインL1とグラウンドGNDとの間、および各電圧検出ライン間(L1−L2,L2−L3)においてセルCL1〜CL3と並列に接続される。また、サーミスタTh1〜Th3が、各セルの近傍の各電圧検出ライン上において、各直列回路SC1〜SC3と各電圧検出ラインとの接続点と、各セルの正極との間に接続される。
このような、直列回路SC1〜SC3とサーミスタTh1〜Th3との配置によって、単に電圧検出回路20による電圧検出に基づいて、電池セルCL1〜CL3のセル温度TC1〜TC3およびセル電圧VC1〜VC3の検出を行うことができる。したがって、セルCLのセル温度TCおよびセル電圧VCを検出するために個別の配線および回路を設ける必要がなく、セルCLのセル温度およびセル電圧の検出、すなわち、セル状態検出に係る構成を簡易化することができる。それは、セル状態検出装置10の低コスト化につながる。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0040】
(1)上記実施形態では、組電池として3つのセル(単位電池)CL1〜CL3を直列接続してなる構成のものを例示したが、セルの接続段数は三段に限定されるものでなく四段、五段あるいはそれ以上であってもよい。あるいは、セルの接続段数は一段であってもよい、すなわち、電池は組電池に限られない。
【0041】
(2)上記実施形態では、温度検出回路をCPU30で構成する例を示したがこれに限られない。温度検出回路は例えば、ASIC(特定用途向け集積回路)によって構成してもよい。また、上記実施形態では電圧検出回路20と温度検出回路30とを個別に構成する例を示したが、これに限られず、電圧検出回路が温度検出回路を兼ねる構成としてもよい。例えば、電圧検出回路と温度検出回路とを一つのASICで構成してもよい。その際、ASICは、電池の他の制御を兼ねるものであってもよい。
【0042】
(3)上記実施形態では、サーミスタの抵抗Rthからセル温度TCを検出する際にセンサ特性テーブルを参照する例を示したが、これに限られない。例えば、サーミスタの抵抗Rthと温度Tとの関係を示す式からセル温度TCを算出するようにしてもよい。また、センサ(温度センサ)としてサーミスタに限られない。センサとしては、センサの抵抗値と電池セル温度とに所定の相関関係を有するセンサであればよい。
【符号の説明】
【0043】
1…電池モジュール
10…セル状態検出装置
20…電圧検出回路
30…CPU(温度検出回路)
L1〜L3…電圧検出ライン
SC1〜SC3…直列回路
R1〜R3…分圧抵抗
SW1〜SW3…スイッチ
Th1〜Th3…サーミスタ(温度センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一個の電池セルを有する電池に対して各電池セルの状態を検出する電池セル状態検出装置であって、
電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路と各電池セルの正極とを接続する第1ラインと、
前記電圧検出回路と各電池セルの負極とを接続する第2ラインと、
スイッチと分圧抵抗との直列回路であって、前記第1ラインと前記第2ラインとに接続されるとともに、前記電池セルと並列に接続される少なくとも一個の直列回路と、
前記電池セルの近傍の前記第1ライン上において、前記直列回路と前記第1ラインとの接続点と、前記電池セルの正極との間に設けられる少なくとも一個のセンサと、
前記各電池セルの温度を検出する際に、前記各直列回路のスイッチをオフさせて温度を検出する検出電池セルのセル電圧を前記電圧検出回路から取得し、前記検出電池セルに対応する直列回路のスイッチをオンさせて、前記分圧抵抗による電圧降下である分圧電圧を前記電圧検出回路から取得し、前記セル電圧および前記分圧電圧に基づいて前記検出電池セルのセル温度を検出する温度検出回路と、
を備える電池セル状態検出装置。
【請求項2】
前記温度検出回路は、前記セル温度を検出する際に、前記電池セルに対応する前記センサの電圧降下と前記センサに流れるセンサ電流とを算出し、前記電圧降下と前記センサ電流とから前記センサの抵抗値を算出する、請求項1に記載の電池セル状態検出装置。
【請求項3】
前記センサの抵抗値と前記セル温度との関係を示すセンサ特性テーブルを格納するメモリを備え、
前記温度検出回路は、前記センサ特性テーブルを参照して、前記セル温度を検出する、請求項2に記載の電池セル状態検出装置。
【請求項4】
前記センサは温度センサである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電池セル状態検出装置。
【請求項5】
少なくとも一個の電池セルと、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電池セル状態検出装置と、
を備えた電池モジュール。
【請求項6】
少なくとも一個の電池セルと、
前記少なくとも一個の電池セルを有する電池に対して、各電池セルの状態を検出する電池セル状態検出装置とを備えた電池モジュールであって、
前記電池セル状態検出装置は、
電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路と各電池セルの正極とを接続する第1ラインと、
前記電圧検出回路と各電池セルの負極とを接続する第2ラインと、
スイッチと分圧抵抗との直列回路であって、前記第1ラインと前記第2ラインとに接続されるとともに、前記電池セルと並列に接続される少なくとも一個の直列回路と、
前記電池セルの近傍の前記第1ライン上において、前記直列回路と前記第1ラインとの接続点と、前記電池セルの正極との間に設けられる少なくとも一個のセンサと、
前記各電池セルの温度を検出する際に、前記各直列回路のスイッチをオフさせて温度を検出する検出電池セルのセル電圧を前記電圧検出回路から取得し、前記検出電池セルに対応する直列回路のスイッチをオンさせて、前記分圧抵抗による電圧降下である分圧電圧を前記電圧検出回路から取得し、前記セル電圧および前記分圧電圧に基づいて前記検出電池セルのセル温度を検出する温度検出回路とを含む、電池モジュール。
【請求項7】
少なくとも一個の電池セルを有する電池に対して、前記電池セルの状態を検出する電池セルの状態検出方法であって、
前記電池は、電圧を検出する電圧検出回路と、前記電圧検出回路と電池セルの正極とを接続する第1ラインと、前記電圧検出回路と電池セルの負極とを接続する第2ラインと、スイッチと分圧抵抗との直列回路であって、前記第1ラインと前記第2ラインとに接続されるとともに、前記電池セルと並列に接続される直列回路と、前記電池セルの近傍の前記第1ライン上において、前記直列回路と前記第1ラインとの接続点と、前記電池セルの正極との間に設けられるセンサとを備え、該電池セルの状態検出方法は、
前記直列回路のスイッチをオフさせて前記電圧検出回路によって前記電池セルのセル電圧を取得するセル電圧取得ステップと、
前記直列回路のスイッチをオンさせて、前記分圧抵抗による電圧降下である分圧電圧を前記電圧検出回路によって取得する分圧取得ステップと、
前記セル電圧および前記分圧電圧に基づいて前記センサの電圧降下と前記センサに流れるセンサ電流とを算出し、前記電圧降下と前記センサ電流とから前記センサの抵抗値を算出する算出ステップと、
前記センサの抵抗値と前記電池セルのセル温度との関係を示すセンサ特性テーブルを参照して、前記電池セルのセル温度を検出するセル温度検出ステップと、
を含む、電池セルの状態検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−68533(P2013−68533A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207534(P2011−207534)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】