電池モジュールおよび電池モジュールの製造方法
【課題】回路基板に設けられた配線層と電池の端子との接続信頼性が向上した電池モジュールを提供する。
【解決手段】電池モジュール10は、絶縁樹脂層24の一方の主表面に形成された配線層26を有する回路基板20とこれに接続された複数個の電池30とを有する。複数個の電池30は配線層26を介して直列接続されている。各電池30の正極端子50の接合面側に設けられた凸部と配線層26、および負極端子60の接合面側に設けられた凸部と配線層26とは拡散接合により接合されている。
【解決手段】電池モジュール10は、絶縁樹脂層24の一方の主表面に形成された配線層26を有する回路基板20とこれに接続された複数個の電池30とを有する。複数個の電池30は配線層26を介して直列接続されている。各電池30の正極端子50の接合面側に設けられた凸部と配線層26、および負極端子60の接合面側に設けられた凸部と配線層26とは拡散接合により接合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の電池が直列接続された電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電池(単セル)の起電力は低く、起電力が高いといわれるリチウムイオン電池においても4V程度である。そのため、より高い電圧が必要な場合には、複数個の電池を直列接続してモジュール化することが行われている。
【0003】
複数個の電池をモジュール化した構造(電池モジュール)として、電池監視用の回路基板に設けられた配線層と、電池の端子とを電圧検出ラインを介してはんだ接続する構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−123299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回路基板に設けられた配線層と、電池の端子とがはんだ接続された構造では、はんだの経年劣化により、配線層と電池の端子との接続信頼性が低下し、十分な耐振動性を得ることができない場合があった。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路基板に設けられた配線層と電池の端子との接続信頼性を向上させることができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、電池モジュールである。当該電池モジュールは、基材と基材に設けられた配線層とを有する回路基板と、電極体と、電極体が収容された筐体と、筐体の外部に設けられ、電極体に電気的に接続されている外部端子とを有する電池と、を備え、外部端子と配線層とが拡散接合により接合されており、当該接合領域において、外部端子または配線層の表面に、接合部分が非接合部分よりも突出した凸部を備えていることを特徴とする。
【0008】
この態様の電池モジュールによれば、回路基板に設けられた配線層と電池の外部端子とが拡散接合により一体化された構造となることで接続信頼性の向上が図られる。さらに、電池の外部端子の接合面に凸部が形成されているため、回路基板全体が反っている場合であっても、回路基板の反りに応じて接合部分が形成されることで電池の外部端子と配線層26とを確実に接続することができる。
【0009】
上記態様の電池モジュールの接合部分において、外部端子、配線層のうち一方の表面が凸部であり、他方の表面が凹部であってもよい。外部端子に接合面側から接合面に対向する表面側に貫通する貫通孔が設けられていてもよい。
【0010】
本発明の他の態様は電池モジュールの製造方法である。当該電池モジュールの製造方法は、銅を主成分とする金属で形成または被覆された凸部を有する外部端子を有する電池と、銅を主成分とする金属で形成された配線層を有する回路基板とを用意する工程と、外部端子の凸部と、配線層との間に、酸化銅を主成分とする酸化物が溶出する溶液を充填し、外部端子および配線層の最表面に銅を主成分とする金属を露出させる工程と、外部端子と配線層との間の距離を縮めるように外部端子と配線層とを加圧する工程と、外部端子と配線層とを加圧した状態で、加熱により外部端子と配線層とを接合する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記態様の電池モジュールの製造方法において、外部端子の接合面側から接合面と対向する面側に貫通する貫通孔が形成された電池を用意してもよい。配線層の接合部分に凹部が形成されている回路基板を用意し、外部端子の凸部と凹部とを接合してもよい。溶液は銅に対して不活性であってもよい。溶液が銅と錯体を形成する配位子を有する物質を含んでもよい。錯体が加熱分解性であってもよい。溶液がアンモニア水またはカルボン酸水溶液であってもよい。
【0012】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路基板に設けられた配線層と電池の端子との接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る電池モジュールの分解斜視図である。
【図2】電池の概略構造を示す断面図である。
【図3】回路基板に接続された電池の配列を示す平面図である。
【図4】図4(A)は、電池の正極端子と回路基板の配線層との接続構造を示す図である。図4(B)は、電池の負極端子と回路基板の配線層との接続構造を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る電池モジュールにおける電池と回路基板の接続方法を示す概略図である。
【図6】図6(A)は、電池の負極端子と配線層との接続構造の変形例1を示す概略図である。図6(B)は、図6(A)のY方向から見た負極端子の側面図である。図6(C)は、図6(A)のX方向から見た負極端子の平面図である。
【図7】図7(A)は、電池の負極端子と配線層との接続構造の変形例2を示す概略図である。図7(B)は、図7(A)のY方向から見た負極端子の側面図である。図7(C)は、図7(A)のX方向から見た負極端子の平面図である。図7(D)は、図7(A)のZ方向から見た配線層の平面図である。
【図8】電池の負極端子と配線層との接続構造の変形例3を示す概略図である。
【図9】電池の負極端子と配線層との接続構造の変形例4を示す概略図である。
【図10】図10(A)は、実施の形態2に係る電池モジュールの外部端子と配線層との接続構造を示す平面図である。図10(B)は、実施の形態2に係る電池モジュールの外部端子と配線層との接続構造を示す、図10(A)のA−A線に沿った断面図である。
【図11】実施の形態2に係る電池モジュールにおける電池と回路基板の接続方法を示す概略図である。
【図12】実施の形態2に係る電池モジュールにおける電池と回路基板の接続方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電池モジュール10の分解斜視図である。電池モジュール10は、回路基板20、複数個の電池30およびハウジング40を有する。
【0017】
回路基板20は、金属基板22、絶縁樹脂層24および配線層26を有する。
【0018】
金属基板22は、絶縁樹脂層24の一方の主表面に配置されている。金属基板22は、熱伝導性に優れたAl、Cuなどの金属を平板状にした部材であり、回路基板20の放熱性を高める機能を担う。
【0019】
絶縁樹脂層24は、回路基板20の「基材」であり、たとえば、BTレジン等のメラミン誘導体、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、PPE樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドビスマレイミド等の熱硬化性樹脂が例示される。回路基板20の放熱性向上の観点から、絶縁樹脂層24は高熱伝導性を有することが望ましい。このため、絶縁樹脂層24は、銀、ビスマス、銅、アルミニウム、マグネシウム、錫、亜鉛およびこれらの合金などを高熱伝導性フィラーとして含有することが好ましい。
【0020】
配線層26は、絶縁樹脂層24の他方の主表面に所定パターンをなして形成されている。本実施の形態の配線層26は銅で形成されている。
【0021】
回路基板20の一方の主表面には、電子部品25が搭載されている。電子部品25は、ICなどの半導体素子や、抵抗、コンデンサなどの受動素子からなる。電子部品25は、電池30の電圧や温度を監視し、電池30の接続状態を制御する回路部をなす。より具体的には、回路部は各電池30の電圧や温度を監視し、電圧や温度が異常を示した場合に、当該電池30のみ、または当該電池30を含む複数の電池の接続を遮断する機能等を備えている。
【0022】
また、回路基板20の一方の主表面には、電池30が接続されている。電池30の外部端子と回路基板20の配線層26との接続構造については後述する。
【0023】
ハウジング40は、電池30を収容可能な容器状の部材であり、ハウジング40の開口部分を塞ぐように、ハウジング40の内部に電池30が設けられた面を向けて回路基板20が組み付けられている。ハウジング40内に電池30を収容することで、電池30が外部環境から保護される。
【0024】
図2は、電池30の概略構造を示す断面図である。電池30は、図2に示すように、外装缶(筐体)31内に、正負極が渦巻状に巻回されてなる電極体32が外装缶31の缶軸方向に対し横向きに収納されており、封口板33により外装缶31の開口が封口されている。封口板33には電池30の外方に突出した正極端子50と負極端子60が設けられている。また、封口板33には、ガス排出弁(図示せず)が形成されている。
【0025】
正極端子50は、ガスケット34に当接された状態で、封口板33の正極用開口に嵌め込まれている。また、正極端子50は、封口板33の電池内側において正極タブ部材53と接続している。なお、封口板33の正極用開口に嵌め込まれた正極端子50の端部には、封口板33の正極用開口に沿って側壁が形成されるような凹部51が設けられている。凹部51の縁部分が広がるようにかしめることで、正極端子50が固定されている。正極端子50の芯部(図示せず)はアルミニウムで形成されており、芯部の周りを銅めっき層(図示せず)が被覆している。正極タブ部材53と封口板33の電池内側面との間に絶縁板35が設けられている。封口板33の正極用開口において、絶縁板35とガスケット34とが当接している。これにより、正極タブ部材53および正極端子50が封口板33から絶縁されている。
【0026】
正極タブ部材53は、電極体32の一方の端面から突出した正極集電板群32aに接続されている。なお、正極集電板群32aは、電極体32の一方の端面から突出した複数の正極集電板を束ねたものである。
【0027】
負極端子60は、ガスケット34に当接された状態で、封口板33の負極用開口に嵌め込まれている。また、負極端子60は、封口板33の電池内側において負極タブ部材62と接続している。なお、封口板33の負極用開口に嵌め込まれた負極端子60の端部には、封口板33の負極用開口に沿って側壁が形成されるような凹部61が設けられている。凹部61の縁部分が広がるようにかしめることで、負極端子60が固定されている。負極端子60は全体が銅で形成されている。負極タブ部材62と封口板33の電池内側面との間に絶縁板35が設けられている。封口板33の負極用開口において、絶縁板35とガスケット34とが当接している。これにより、負極タブ部材62および負極端子60が封口板33から絶縁されている。
【0028】
負極タブ部材62は、電極体32の他方の端面から突出した負極集電板群32bに接続されている。なお、負極集電板群32bは、電極体32の他方の端面から突出した複数の負極集電板を束ねたものである。
【0029】
図3は、回路基板20に接続された電池30の配列を示す平面図である。本実施の形態では、計10個の電池30が5個ずつに分かれてそれぞれ列をなしている。なお、図3においては、前述の電子部品25がなす回路部および監視のための配線の図示は省略している。
【0030】
第1の列をなす5個の電池30aは、電池30の長手方向が略平行になるように所定の間隔で並設されている。電池30aの正極端子50および負極端子60の先端部分は、電池30aの長手方向に電池30aの筐体から突出している。隣接する電池30aの正極端子50および負極端子60は、互いに反対側になるように配列されている。第1の列において、互いに隣接する一方の電池30aの正極端子50と他方の電池30aの負極端子60とが共通の配線層26aに接続されている。すなわち、配線層26aはインターコネクタとして機能している。これにより、第1の列の電池30aが直列接続されている。
【0031】
一方、第2の列をなす5個の電池30bは、電池の長手方向が略平行になるように所定の間隔で並設されている。電池30bの正極端子50および負極端子60の先端部分は、電池30bの長手方向に電池30bの筐体から突出している。隣接する電池30bの正極端子50および負極端子60は、互いに反対側になるように配列されている。第2の列において、互いに隣接する一方の電池30bの正極端子50と他方の電池30bの負極端子60とが共通の配線層26bに接続されている。すなわち、配線層26bはインターコネクタとして機能している。これにより、第2の列の電池30bが直列接続されている。
【0032】
さらに、第1の列をなす電池30aの直列接続の一方の終端となる負極端子60’と、第2の列をなす電池30bの直列接続の一方の終端となる正極端子50’とが共通の配線層26cに接続されている。これにより、第1の列をなす電池30aと第2の列をなす電池30bとが直列接続される。第1の列をなす電池30aの直列接続の一方の終端となる正極端子50’’は、配線層26dに接続されている。また、第2の列をなす電池30bの直列接続の一方の終端となる負極端子60’’は、配線層26eに接続されている。配線層26d、26eからそれぞれ回路基板20の外部に配線が引き回され、外部負荷と接続可能になっている。
【0033】
図4(A)は、電池30の正極端子50と回路基板20の配線層26との接続構造を示す図である。また、図4(B)は、電池30の負極端子60と回路基板20の配線層26との接続構造を示す図である。
【0034】
図4(A)に示すように、正極端子50の接続部分は、アルミニウムからなる芯部52と芯部52の周りを被覆する、銅からなる表層部54からなる。表層部54は、芯部52の周りに形成されたスパッタ層である。芯部52の配線層26側の面には突出部55が形成されている。本実施の形態では、突出部55の形状は中央部分が最も膨らんだドーム状である。表層部54は突出部55の表面にも被覆されており、突出部55とこれを被覆する表層部54とで凸部56が形成されている。突出部55の頂部に被覆された表層部54と配線層26とは、拡散接合により接合されている。表層部54と配線層26とが拡散接合により一体化しているため、両者の間にある接合部には界面が存在しない。
【0035】
一方、図4(B)に示すように、負極端子60の接続部分は銅で形成されている。負極端子60の配線層26側の面には凸部66が形成されている。本実施の形態では、凸部66の形状は中央部分が最も膨らんだドーム状である。負極端子60の凸部66と配線層26とは、拡散接合により接合されている。負極端子60と配線層26とが拡散接合により一体化しているため、両者の間にある接合部には界面が存在しない。
【0036】
以上説明した電池モジュール10によれば、電池30の外部端子(正極端子50および負極端子60)と回路基板20の配線層26とが拡散接合により接合し、一体化した構造を備えることにより、電池30の外部端子と配線層26との接続信頼性の向上を図ることができる。この結果、振動によって電池30の外部端子が配線層26から外れることを抑制することができる。また、電池30の外部端子と配線層26との間にある接合部には金属界面がないため、低抵抗化を図ることができる。
【0037】
さらに、電池30の外部端子の接合面に凸部が形成されており、この凸部と配線層26とが拡散接合により接続されていることにより、回路基板20全体が凹状または凸状に反っている場合であっても、回路基板20の反りに応じて接合部分がずれるため電池30の外部端子と配線層26とを確実に接続することができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、凸部が外部端子側に設けられているが、配線層26側に凸部を設けた構造に変更することが可能である。
【0039】
(電池モジュールの製造方法)
電池モジュールの製造方法のうち、特に、電池と回路基板の接続方法について、図5(A)および図5(B)を参照して説明する。なお、図5(A)および図5(B)では、説明を簡便にするため一列分の電池30が示されている。
【0040】
まず、アルミニウムからなる正極端子の芯部の表面にスパッタ法を用いて銅を被覆し、表層部を形成する。なお、当該芯部には、図4に示したような突出部を設けておき、突出部と表層部とで凸部を形成する。また、銅を主成分とする金属で形成された負極端子に図4に示したような凸部を設けておく。こうして得られた銅を主成分とする金属で芯部が被覆された正極端子と銅を主成分とする金属で形成された負極端子を用いて、図3に示したような電池30を形成する。なお、電池30の正極端子および負極端子の最表面は、銅が大気中で自然酸化することにより、酸化銅を主成分とする酸化物で形成されている。ここで、「銅を主成分とする」および「酸化銅を主成分とする」という表現中、「主成分とする」は、銅または酸化銅の含有量が50%よりも大きいことを意味する。なお、正極端子はCuとAlからなるクラッド材からなっていてもよい。
【0041】
次に、図5(A)に示すように、配線層26の所定位置と電池30の正極端子50および負極端子60とを位置合わせした状態で、正極端子50の凸部(図示せず)と配線層26との間、および負極端子60の凸部(図示せず)と配線層26との間に、酸化銅が溶出または溶解する溶液(図示せず)を充填する。本実施の形態では、溶液はアンモニア水である。正極端子50の凸部と配線層26との間に溶液を充填したときの、正極端子50の凸部と配線層26との距離は、たとえば、1μmである。同様に、負極端子60の凸部と配線層26との距離は、たとえば、1μmである。
【0042】
室温で1分程度放置すると、正極端子50の凸部および負極端子60の凸部の最表面に形成された酸化銅が溶液中に溶出し、正極端子50の凸部および負極端子60の凸部の最表面から酸化銅が消失する。また、接合部分となる配線層26の最表面に形成された酸化銅が溶液中に溶出し、接合部分となる配線層26の最表面から酸化銅が消失する。酸化銅が溶液に溶出することにより、正極端子50および負極端子60の最表面およびこれと対応する配線層26の最表面に銅が露出する。また、溶液中では、銅錯体が形成される。本実施の形態では、銅錯体は、[Cu(NH3)4]2+で表される加熱分解性のテトラアンミン銅錯イオンとして存在すると考えられる。なお、アンモニア水は銅に対して不活性であるため、正極端子50、負極端子60および配線層26を構成する銅はアンモニア水と反応せずに残存している。
【0043】
次に、図5(B)に示すように、正極端子50と配線層26との間の距離、および負極端子60と配線層26との間の距離を縮めるように、プレス機を用いて正極端子50と配線層26とを加圧する。同様に、プレス機を用いて負極端子60と配線層26とを加圧する。加圧時の圧力は、たとえば1MPaである。本実施の形態では、電池30の正極端子50および負極端子60の先端部分は、電池30の長手方向に電池30の筐体から突出している。言い換えると、正極端子50と配線層26との接合部および負極端子60と配線層26との接合部が、電池30の筐体を回路基板20に投影した領域から外れた位置にある。このため、正極端子50および負極端子60に対してプレスを行う際に、電池30の筐体が障害とならず、正極端子50および負極端子60に対して直にプレスを行うことができる。
【0044】
次に、正極端子50と配線層26、および負極端子60と配線層26とを加圧した状態で200℃以下の比較的低温な条件下で加熱することにより溶液中の銅以外の成分を除去して銅を析出または再結晶化させる。本実施の形態では、加熱により水分が蒸発するとともに、テトラアンミン銅錯イオンが熱分解してアンモニア成分が蒸発する。これにより、溶液において銅の割合が徐々に高まるとともに、プレス機による加圧により正極端子50の凸部の最表面と配線層26の最表面との距離が徐々に近づく。同様に、負極端子60の凸部の最表面と配線層26の最表面との距離が徐々に近づく。
【0045】
次に、溶液中の銅以外の成分の除去が完了すると、正極端子50の凸部の最表面と配線層26の最表面とが酸化銅由来の銅からなる析出銅により接合される。同様に、負極端子60の凸部の最表面と配線層26の最表面とが酸化銅由来の銅からなる析出銅により接合される。この析出銅は、配向性および安定性が優れている。析出銅により接合が完了した後、加熱を停止して析出銅による接合部分を徐々に室温程度まで冷却する。なお、加熱開始から加熱停止までの時間は、たとえば、10分間である。冷却完了後、加圧を解除し、正極端子50の凸部と配線層26、および負極端子60の凸部と配線層26との接合工程が完了する。
【0046】
なお、図4に示した接合構造では、正極端子50と配線層26との仮想的な境界は、配線層26の最表面を延在した面と一致しているが、上述のように、正極端子50に対してプレスを行うことにより、正極端子50と配線層26との仮想的な境界は、配線層26の最表面を延在した面に対して配線層26の中に押し込まれることがある。負極端子60と配線層26との仮想的な境界も、同様に、配線層26の最表面を延在した面に対して配線層26の中に押し込まれることがある。
【0047】
以上説明した電池モジュールの製造方法によれば、真空装置などの大がかりな設備を用いることなく、比較的低温な条件下で電池30の外部端子と回路基板20の配線層26を接合することができる。具体的には、電池30の外部端子の接合面と配線層26の接合面とが活性化された後、析出銅を介して接合される。これにより、電池30の外部端子と配線層26との間にボイドが発生したり副生成物が介在することが抑制されるため、電池30の外部端子と配線層26との接続信頼性を高めることができる。
【0048】
また、電池30の外部端子と配線層26との接合を担う析出銅として、電池30の外部端子および配線層26の最表面に酸化被膜として存在していた酸化銅由来の銅が用いられているため、電池30の外部端子と配線層26とを接合するために、接合材料を別途用意する必要がない。このため、電池30の外部端子と配線層26との接続に要するコストを低減することができる。
【0049】
また、電池30の外部端子の接合面に凸部が形成されているため、回路基板20全体が凹状または凸状に反っている場合であっても、回路基板20の反りに応じて接合部分が形成されることで電池30の外部端子と配線層26とを確実に接続することができる。
【0050】
また、電池30の外部端子に凸部を設けておくことにより、接合部が限定され、プレス加工時の圧力が局所的に加わるため、接合部の信頼性や強度を高めることができる。
【0051】
(金属接合に用いる溶液)
上述した電池30の外部端子と配線層26との接合では、金属接合に用いる溶液としてアンモニア水が用いられているが、銅と錯体を形成する配位子を含む溶液であれば、これに限られず、たとえば、カルボン酸水溶液であってもよい。
【0052】
カルボン酸水溶液の調製に用いられるカルボン酸としては、酢酸などのモノカルボン酸、また、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、マレイン酸などのジカルボン酸、さらに、酒石酸、クエン酸、乳酸、サリチル酸などのオキシカルボン酸が挙げられる。
【0053】
このうち、カルボン酸水溶液は多座配位子となるカルボン酸を有することが好ましい。多座配位子となるカルボン酸を有するカルボン酸水溶液では、カルボン酸と銅がキレートを形成することにより銅錯体の安定性が非常に大きくなる。この結果、接合に必要な温度をより低温化させることができる。なお、酒石酸、シュウ酸などがキレートを形成することは「ヘスロップジョーンズ 無機化学(下) 齋藤喜彦 訳」の第666頁に記載されている。また、酒石酸がキレートを形成することについては、「理化学辞典 第4版(岩波書店)」の第593頁に記載されている。
【0054】
ここで、電池30の外部端子と配線層26との接続構造の変形例について説明する。以下の変形例では、負極端子60を用いて例示するが、正極端子50も同様な構造とすることができる。
【0055】
(変形例1)
図6(A)は、電池30の負極端子60と配線層26との接続構造の変形例1を示す概略図である。図6(B)は、図6(A)のY方向から見た負極端子60の側面図である。図6(C)は、図6(A)のX方向から見た負極端子60の平面図である。本変形例では、負極端子60の凸部66が柱状体(バンプ)であり、凸部66が負極端子60の接合面の複数箇所に形成されている。隣接する凸部66の間の領域は、凸部66と配線層26とが拡散接合により接合したときに、隙間となる。
【0056】
このような柱状体状の凸部66は、ウェットエッチング法や型抜き法などの手法により形成することができる。ウェットエッチング法を適用する場合には、たとえば、以下のプロセスを用いることができる。
(1)平坦な接合面の上(凸部66の形成面)にレジストを形成
(2)露光、現像を行い、凸部66の形成領域に合わせてマスクを形成
(3)ウェットエッチングを行うことにより、凸部66を形成
(4)マスクを剥離
【0057】
以上説明した電池30の負極端子60と配線層26との接続構造によれば、実施の形態1で説明した効果に加えて、次のような効果を得ることができる。
【0058】
負極端子60と配線層26との接合部分を凸部66の頂面部分に限定することができるため、プレス加工時の圧力をより局所的に加えることができる。このため、接合部の信頼性や強度を高めることができる。
【0059】
負極端子60と配線層26との間に充填された溶液がプレス加工により揮発して気体となる際に、隣接する凸部66の間に形成された隙間が、この気体の逃げ道となる。このため、気体が接合部に残ることでボイドが発生することが抑制される。この結果、負極端子60と配線層26との接続信頼性をより一層高めることができる。
【0060】
(変形例2)
図7(A)は、電池30の負極端子60と配線層26との接続構造の変形例2を示す概略図である。図7(B)は、図7(A)のY方向から見た負極端子60の側面図である。図7(C)は、図7(A)のX方向から見た負極端子60の平面図である。図7(D)は、図7(A)のZ方向から見た配線層26の平面図である。本変形例では、負極端子60の接合面側に複数の溝部67が併設されており、溝部67を仕切る壁部分が凸部66となっている。さらに、本変形例では、配線層26の接合面側にも、複数の溝部27が併設されており、溝部27を仕切る壁部分が凸部28となっている。溝部67および溝部27は、凸部66と配線層26とが拡散接合により接合したときに、隙間となる。負極端子60の側の凸部66が延在する方向は、配線層26の側の凸部28が延在する方向と交差する向きに形成されている。
【0061】
このような凹凸形状は、負極端子60の側、配線層26の側ともに上述したウェットエッチング法を適用することで形成することができる。また、負極端子60の側では、型抜き法やフライス盤等を用いた削り出し加工によって形成することができる。
【0062】
以上説明した電池30の負極端子60と配線層26との接続構造によれば、変形例1で説明した効果に加えて、次のような効果を得ることができる。
【0063】
負極端子60と配線層26との接合部分を負極端子60側の凸部66と配線層26側の凸部28とが交差し接触する部分に限定することができるため、プレス加工時の圧力をより一層局所的に加えることができる。このため、接合部の信頼性や強度をさらに高めることができる。
【0064】
負極端子60と配線層26との間に充填された溶液がプレス加工により揮発して気体となる際に、溝部67のみならず溝部27が、この気体の逃げ道となる。このため、気体が接合部に残ることでボイドが発生することがより一層抑制される。この結果、負極端子60と配線層26との接続信頼性をより一層高めることができる。
【0065】
(変形例3)
図8は、電池30の負極端子60と配線層26との接続構造の変形例3を示す概略図である。本変形例では、負極端子60に接合面側から接合面と対向する側に貫通する貫通孔68が形成されている。貫通孔68の数および設置位置は特に限定されない。貫通孔68は、負極端子60を電池30に取り付ける前にドリル加工などの加工法により形成することができる。
【0066】
このように、負極端子60に貫通孔68を形成しておくことにより、負極端子60と配線層26の所定位置とを位置合わせした後に、貫通孔68を通して負極端子60と配線層26との間に拡散接合用の溶液を注入することができるため、負極端子60と配線層26の所定位置との位置決め精度を高めた状態で拡散接合を行うことができる。
【0067】
また、負極端子60と配線層26との間に充填された溶液がプレス加工により揮発して気体となる際に、貫通孔68がこの気体の逃げ道となる。このため、気体が接合部に残ることでボイドが発生することが抑制される。この結果、負極端子60と配線層26との接続信頼性をより一層高めることができる。
【0068】
(変形例4)
図9は、電池30の負極端子60と配線層26との接続構造の変形例4を示す概略図である。本変形例では、負極端子60の凸部66に対応して、配線層26の接合面に凹部29が形成されている。なお、図9に示した点線は、負極端子60の凸部66と配線層26の凹部29との境界を仮想的に示す線である。
【0069】
凹部29は、配線層26を形成するためのウェットエッチングの際に、凹部29の中心部分に凹部29よりも小さい形状を開口とするマスクパターンを形成しておくことにより、形成することができる。また、凹部29は型を用いて加圧することで形成することができる。
【0070】
本変形例のように配線層26に凹部29を設けておくことにより、凹部29が拡散接合に使用される溶液の液溜めとなる。このため、拡散接合用の溶液の粘性が低い場合であっても、この溶液を負極端子60の凸部66と配線層26との間から逃げないようにすることができ、ひいては、拡散接合の接続信頼性を向上させることができる。
【0071】
また、配線層26に凹部29を設けておくことにより、回路基板20に反りが生じている場合であっても、回路基板20に電池30を搭載したときに、負極端子60の凸部66と配線層26の凹部29とが接触する部分がより柔軟に確保されるため、負極端子60の凸部66と配線層26の凹部29との接合部の接続信頼性をより一層高めることができる。
【0072】
なお、本変形例では、外部端子側に凸部を設け、配線層側に凹部を設けているが、これとは逆に、外部端子側に凹部を設け、配線層側に凸部を設けてもよい。この場合には、接合プロセスにおいて、図5と天地を逆にし、外部端子の上に配線層を配置することにより、外部端子に設けられた凹部を溶液の液溜として用いることができる。
【0073】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る電池モジュールの基本的な構成は実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
【0074】
図10(A)は、実施の形態2に係る電池モジュールの外部端子と配線層との接続構造を示す平面図である。図10(B)は、実施の形態2に係る電池モジュールの外部端子と配線層との接続構造を示す、図10(A)のA−A線に沿った断面図である。
【0075】
本実施の形態では、配線層26の一部が折り返されて、回路基板20を側面方向から見たときにコの字形状になっている。コの字形状部分において下側に位置する配線層26を下側配線層26uと呼び、コの字形状部分において上側に位置する配線層を上側配線層26tと呼ぶ。
【0076】
正極端子50は、下側配線層26uと上側配線層26tとの間に挟まれている。正極端子50の下面と下側配線層26uの上面とが拡散接合されていることに加えて、正極端子50の上面と上側配線層26tの下面とが拡散接合されている。同様に、負極端子60は、下側配線層26uと上側配線層26tとの間に挟まれている。負極端子60の下面と下側配線層26uの上面とが拡散接合されていることに加えて、負極端子60の上面と上側配線層26tの下面とが拡散接合されている。
【0077】
本実施の形態の正極端子50および負極端子60は平板状であり、下側配線層26uと重畳しない部分では、正極端子50の下面および負極端子60の下面が接着剤80によって回路基板20に固定されている。接着剤80は、電池30に設けられたガス弁(図示せず)を埋めないようにする。
【0078】
本実施の形態では、外部端子の上面と下面の両方が配線層と拡散接合することで、さらなる接合強度の向上を図ることができる。
【0079】
(電池モジュールの製造方法)
実施の形態2に係る電池モジュールの製造方法のうち、特に、電池と回路基板の接続方法について、図11(A)〜図11(D)を参照して説明する。
【0080】
まず、図11(A)に示すように、配線層26の一部がL字状に折り曲げられた回路基板20を用意する。電池30の負極端子60に接続される配線層26と、電池30の正極端子50に接続される配線層26との間に接着剤80を設けておく。一方、電池30の正極端子50の上面および下面に拡散接合用の溶液を塗布する。同様に、電池30の負極端子60の上面および下面に、実施の形態1と同様な拡散接合用の溶液を塗布する。
【0081】
次に、図11(B)に示すように、平板状の正極端子50および負極端子60が設けられた電池30を回路基板20に搭載する。正極端子50および負極端子60の先端側の領域は配線層26の上に位置し、これ以外の領域は、回路基板20上に設けた接着剤80によって仮固定される。
【0082】
次に、図11(C)に示すように、配線層26の一部をL字形状からコの字形状に折り曲げて、下側配線層26uと上側配線層26tとの間に正極端子50および負極端子60をそれぞれ挟むことで、電池30を固定する。
【0083】
次に、図11(D)に示すように、正極端子50が挟まれたコの字形状部分の配線層26をプレス機により加圧する。また、負極端子60が挟まれたコの字形状部分の配線層26をプレス機により加圧する。
【0084】
これにより、正極端子50の下面と下側配線層26uの上面とが拡散接合されるとともに、正極端子50の上面と上側配線層26tの下面とが拡散接合される。また、負極端子60の下面と下側配線層26uの上面とが拡散接合されるとともに、負極端子60の上面と上側配線層26tの下面とが拡散接合される。
【0085】
(電池と回路基板の接続方法の変形例)
上述した電池と回路基板の接続方法の変形例について図12(A)〜図12(C)を参照して説明する。
【0086】
まず、図12(A)に示すように、配線層26の一部を予め折り曲げてコの字形状とする。コの字形状をなす下側配線層26uと上側配線層26tとの間に外部端子(正極端子50、負極端子60)を挿入可能な隙間を設けておく。
【0087】
次に、図12(B)に示すように、コの字形状部分の隙間に、平板状の正極端子50、負極端子60をそれぞれ挿入する。なお、電池30の正極端子50の上面および下面に拡散接合用の溶液を予め塗布する。同様に、電池30の負極端子60の上面および下面に、実施の形態1と同様な拡散接合用の溶液を予め塗布する。
【0088】
次に、図12(C)に示すように、正極端子50が挟まれたコの字形状部分の配線層26をプレス機により加圧する。また、負極端子60が挟まれたコの字形状部分の配線層26をプレス機により加圧する。
【0089】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0090】
例えば、上述の実施の形態2における電池と回路基板の接続方法では、外部端子に拡散接合用の溶液を塗布しているが、拡散接合用の溶液を配線層26に塗布してもよい。拡散接合用の溶液に増粘剤を添加することにより、粘度を高めてもよい。これによれば、拡散接合用の溶液が接合部分から流れ出すことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0091】
10 電池モジュール、20 回路基板、26 配線層、30 電池、40 ハウジング、50 正極端子、60 負極端子、66 凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の電池が直列接続された電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電池(単セル)の起電力は低く、起電力が高いといわれるリチウムイオン電池においても4V程度である。そのため、より高い電圧が必要な場合には、複数個の電池を直列接続してモジュール化することが行われている。
【0003】
複数個の電池をモジュール化した構造(電池モジュール)として、電池監視用の回路基板に設けられた配線層と、電池の端子とを電圧検出ラインを介してはんだ接続する構造が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−123299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回路基板に設けられた配線層と、電池の端子とがはんだ接続された構造では、はんだの経年劣化により、配線層と電池の端子との接続信頼性が低下し、十分な耐振動性を得ることができない場合があった。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路基板に設けられた配線層と電池の端子との接続信頼性を向上させることができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、電池モジュールである。当該電池モジュールは、基材と基材に設けられた配線層とを有する回路基板と、電極体と、電極体が収容された筐体と、筐体の外部に設けられ、電極体に電気的に接続されている外部端子とを有する電池と、を備え、外部端子と配線層とが拡散接合により接合されており、当該接合領域において、外部端子または配線層の表面に、接合部分が非接合部分よりも突出した凸部を備えていることを特徴とする。
【0008】
この態様の電池モジュールによれば、回路基板に設けられた配線層と電池の外部端子とが拡散接合により一体化された構造となることで接続信頼性の向上が図られる。さらに、電池の外部端子の接合面に凸部が形成されているため、回路基板全体が反っている場合であっても、回路基板の反りに応じて接合部分が形成されることで電池の外部端子と配線層26とを確実に接続することができる。
【0009】
上記態様の電池モジュールの接合部分において、外部端子、配線層のうち一方の表面が凸部であり、他方の表面が凹部であってもよい。外部端子に接合面側から接合面に対向する表面側に貫通する貫通孔が設けられていてもよい。
【0010】
本発明の他の態様は電池モジュールの製造方法である。当該電池モジュールの製造方法は、銅を主成分とする金属で形成または被覆された凸部を有する外部端子を有する電池と、銅を主成分とする金属で形成された配線層を有する回路基板とを用意する工程と、外部端子の凸部と、配線層との間に、酸化銅を主成分とする酸化物が溶出する溶液を充填し、外部端子および配線層の最表面に銅を主成分とする金属を露出させる工程と、外部端子と配線層との間の距離を縮めるように外部端子と配線層とを加圧する工程と、外部端子と配線層とを加圧した状態で、加熱により外部端子と配線層とを接合する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記態様の電池モジュールの製造方法において、外部端子の接合面側から接合面と対向する面側に貫通する貫通孔が形成された電池を用意してもよい。配線層の接合部分に凹部が形成されている回路基板を用意し、外部端子の凸部と凹部とを接合してもよい。溶液は銅に対して不活性であってもよい。溶液が銅と錯体を形成する配位子を有する物質を含んでもよい。錯体が加熱分解性であってもよい。溶液がアンモニア水またはカルボン酸水溶液であってもよい。
【0012】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路基板に設けられた配線層と電池の端子との接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る電池モジュールの分解斜視図である。
【図2】電池の概略構造を示す断面図である。
【図3】回路基板に接続された電池の配列を示す平面図である。
【図4】図4(A)は、電池の正極端子と回路基板の配線層との接続構造を示す図である。図4(B)は、電池の負極端子と回路基板の配線層との接続構造を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る電池モジュールにおける電池と回路基板の接続方法を示す概略図である。
【図6】図6(A)は、電池の負極端子と配線層との接続構造の変形例1を示す概略図である。図6(B)は、図6(A)のY方向から見た負極端子の側面図である。図6(C)は、図6(A)のX方向から見た負極端子の平面図である。
【図7】図7(A)は、電池の負極端子と配線層との接続構造の変形例2を示す概略図である。図7(B)は、図7(A)のY方向から見た負極端子の側面図である。図7(C)は、図7(A)のX方向から見た負極端子の平面図である。図7(D)は、図7(A)のZ方向から見た配線層の平面図である。
【図8】電池の負極端子と配線層との接続構造の変形例3を示す概略図である。
【図9】電池の負極端子と配線層との接続構造の変形例4を示す概略図である。
【図10】図10(A)は、実施の形態2に係る電池モジュールの外部端子と配線層との接続構造を示す平面図である。図10(B)は、実施の形態2に係る電池モジュールの外部端子と配線層との接続構造を示す、図10(A)のA−A線に沿った断面図である。
【図11】実施の形態2に係る電池モジュールにおける電池と回路基板の接続方法を示す概略図である。
【図12】実施の形態2に係る電池モジュールにおける電池と回路基板の接続方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電池モジュール10の分解斜視図である。電池モジュール10は、回路基板20、複数個の電池30およびハウジング40を有する。
【0017】
回路基板20は、金属基板22、絶縁樹脂層24および配線層26を有する。
【0018】
金属基板22は、絶縁樹脂層24の一方の主表面に配置されている。金属基板22は、熱伝導性に優れたAl、Cuなどの金属を平板状にした部材であり、回路基板20の放熱性を高める機能を担う。
【0019】
絶縁樹脂層24は、回路基板20の「基材」であり、たとえば、BTレジン等のメラミン誘導体、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、PPE樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドビスマレイミド等の熱硬化性樹脂が例示される。回路基板20の放熱性向上の観点から、絶縁樹脂層24は高熱伝導性を有することが望ましい。このため、絶縁樹脂層24は、銀、ビスマス、銅、アルミニウム、マグネシウム、錫、亜鉛およびこれらの合金などを高熱伝導性フィラーとして含有することが好ましい。
【0020】
配線層26は、絶縁樹脂層24の他方の主表面に所定パターンをなして形成されている。本実施の形態の配線層26は銅で形成されている。
【0021】
回路基板20の一方の主表面には、電子部品25が搭載されている。電子部品25は、ICなどの半導体素子や、抵抗、コンデンサなどの受動素子からなる。電子部品25は、電池30の電圧や温度を監視し、電池30の接続状態を制御する回路部をなす。より具体的には、回路部は各電池30の電圧や温度を監視し、電圧や温度が異常を示した場合に、当該電池30のみ、または当該電池30を含む複数の電池の接続を遮断する機能等を備えている。
【0022】
また、回路基板20の一方の主表面には、電池30が接続されている。電池30の外部端子と回路基板20の配線層26との接続構造については後述する。
【0023】
ハウジング40は、電池30を収容可能な容器状の部材であり、ハウジング40の開口部分を塞ぐように、ハウジング40の内部に電池30が設けられた面を向けて回路基板20が組み付けられている。ハウジング40内に電池30を収容することで、電池30が外部環境から保護される。
【0024】
図2は、電池30の概略構造を示す断面図である。電池30は、図2に示すように、外装缶(筐体)31内に、正負極が渦巻状に巻回されてなる電極体32が外装缶31の缶軸方向に対し横向きに収納されており、封口板33により外装缶31の開口が封口されている。封口板33には電池30の外方に突出した正極端子50と負極端子60が設けられている。また、封口板33には、ガス排出弁(図示せず)が形成されている。
【0025】
正極端子50は、ガスケット34に当接された状態で、封口板33の正極用開口に嵌め込まれている。また、正極端子50は、封口板33の電池内側において正極タブ部材53と接続している。なお、封口板33の正極用開口に嵌め込まれた正極端子50の端部には、封口板33の正極用開口に沿って側壁が形成されるような凹部51が設けられている。凹部51の縁部分が広がるようにかしめることで、正極端子50が固定されている。正極端子50の芯部(図示せず)はアルミニウムで形成されており、芯部の周りを銅めっき層(図示せず)が被覆している。正極タブ部材53と封口板33の電池内側面との間に絶縁板35が設けられている。封口板33の正極用開口において、絶縁板35とガスケット34とが当接している。これにより、正極タブ部材53および正極端子50が封口板33から絶縁されている。
【0026】
正極タブ部材53は、電極体32の一方の端面から突出した正極集電板群32aに接続されている。なお、正極集電板群32aは、電極体32の一方の端面から突出した複数の正極集電板を束ねたものである。
【0027】
負極端子60は、ガスケット34に当接された状態で、封口板33の負極用開口に嵌め込まれている。また、負極端子60は、封口板33の電池内側において負極タブ部材62と接続している。なお、封口板33の負極用開口に嵌め込まれた負極端子60の端部には、封口板33の負極用開口に沿って側壁が形成されるような凹部61が設けられている。凹部61の縁部分が広がるようにかしめることで、負極端子60が固定されている。負極端子60は全体が銅で形成されている。負極タブ部材62と封口板33の電池内側面との間に絶縁板35が設けられている。封口板33の負極用開口において、絶縁板35とガスケット34とが当接している。これにより、負極タブ部材62および負極端子60が封口板33から絶縁されている。
【0028】
負極タブ部材62は、電極体32の他方の端面から突出した負極集電板群32bに接続されている。なお、負極集電板群32bは、電極体32の他方の端面から突出した複数の負極集電板を束ねたものである。
【0029】
図3は、回路基板20に接続された電池30の配列を示す平面図である。本実施の形態では、計10個の電池30が5個ずつに分かれてそれぞれ列をなしている。なお、図3においては、前述の電子部品25がなす回路部および監視のための配線の図示は省略している。
【0030】
第1の列をなす5個の電池30aは、電池30の長手方向が略平行になるように所定の間隔で並設されている。電池30aの正極端子50および負極端子60の先端部分は、電池30aの長手方向に電池30aの筐体から突出している。隣接する電池30aの正極端子50および負極端子60は、互いに反対側になるように配列されている。第1の列において、互いに隣接する一方の電池30aの正極端子50と他方の電池30aの負極端子60とが共通の配線層26aに接続されている。すなわち、配線層26aはインターコネクタとして機能している。これにより、第1の列の電池30aが直列接続されている。
【0031】
一方、第2の列をなす5個の電池30bは、電池の長手方向が略平行になるように所定の間隔で並設されている。電池30bの正極端子50および負極端子60の先端部分は、電池30bの長手方向に電池30bの筐体から突出している。隣接する電池30bの正極端子50および負極端子60は、互いに反対側になるように配列されている。第2の列において、互いに隣接する一方の電池30bの正極端子50と他方の電池30bの負極端子60とが共通の配線層26bに接続されている。すなわち、配線層26bはインターコネクタとして機能している。これにより、第2の列の電池30bが直列接続されている。
【0032】
さらに、第1の列をなす電池30aの直列接続の一方の終端となる負極端子60’と、第2の列をなす電池30bの直列接続の一方の終端となる正極端子50’とが共通の配線層26cに接続されている。これにより、第1の列をなす電池30aと第2の列をなす電池30bとが直列接続される。第1の列をなす電池30aの直列接続の一方の終端となる正極端子50’’は、配線層26dに接続されている。また、第2の列をなす電池30bの直列接続の一方の終端となる負極端子60’’は、配線層26eに接続されている。配線層26d、26eからそれぞれ回路基板20の外部に配線が引き回され、外部負荷と接続可能になっている。
【0033】
図4(A)は、電池30の正極端子50と回路基板20の配線層26との接続構造を示す図である。また、図4(B)は、電池30の負極端子60と回路基板20の配線層26との接続構造を示す図である。
【0034】
図4(A)に示すように、正極端子50の接続部分は、アルミニウムからなる芯部52と芯部52の周りを被覆する、銅からなる表層部54からなる。表層部54は、芯部52の周りに形成されたスパッタ層である。芯部52の配線層26側の面には突出部55が形成されている。本実施の形態では、突出部55の形状は中央部分が最も膨らんだドーム状である。表層部54は突出部55の表面にも被覆されており、突出部55とこれを被覆する表層部54とで凸部56が形成されている。突出部55の頂部に被覆された表層部54と配線層26とは、拡散接合により接合されている。表層部54と配線層26とが拡散接合により一体化しているため、両者の間にある接合部には界面が存在しない。
【0035】
一方、図4(B)に示すように、負極端子60の接続部分は銅で形成されている。負極端子60の配線層26側の面には凸部66が形成されている。本実施の形態では、凸部66の形状は中央部分が最も膨らんだドーム状である。負極端子60の凸部66と配線層26とは、拡散接合により接合されている。負極端子60と配線層26とが拡散接合により一体化しているため、両者の間にある接合部には界面が存在しない。
【0036】
以上説明した電池モジュール10によれば、電池30の外部端子(正極端子50および負極端子60)と回路基板20の配線層26とが拡散接合により接合し、一体化した構造を備えることにより、電池30の外部端子と配線層26との接続信頼性の向上を図ることができる。この結果、振動によって電池30の外部端子が配線層26から外れることを抑制することができる。また、電池30の外部端子と配線層26との間にある接合部には金属界面がないため、低抵抗化を図ることができる。
【0037】
さらに、電池30の外部端子の接合面に凸部が形成されており、この凸部と配線層26とが拡散接合により接続されていることにより、回路基板20全体が凹状または凸状に反っている場合であっても、回路基板20の反りに応じて接合部分がずれるため電池30の外部端子と配線層26とを確実に接続することができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、凸部が外部端子側に設けられているが、配線層26側に凸部を設けた構造に変更することが可能である。
【0039】
(電池モジュールの製造方法)
電池モジュールの製造方法のうち、特に、電池と回路基板の接続方法について、図5(A)および図5(B)を参照して説明する。なお、図5(A)および図5(B)では、説明を簡便にするため一列分の電池30が示されている。
【0040】
まず、アルミニウムからなる正極端子の芯部の表面にスパッタ法を用いて銅を被覆し、表層部を形成する。なお、当該芯部には、図4に示したような突出部を設けておき、突出部と表層部とで凸部を形成する。また、銅を主成分とする金属で形成された負極端子に図4に示したような凸部を設けておく。こうして得られた銅を主成分とする金属で芯部が被覆された正極端子と銅を主成分とする金属で形成された負極端子を用いて、図3に示したような電池30を形成する。なお、電池30の正極端子および負極端子の最表面は、銅が大気中で自然酸化することにより、酸化銅を主成分とする酸化物で形成されている。ここで、「銅を主成分とする」および「酸化銅を主成分とする」という表現中、「主成分とする」は、銅または酸化銅の含有量が50%よりも大きいことを意味する。なお、正極端子はCuとAlからなるクラッド材からなっていてもよい。
【0041】
次に、図5(A)に示すように、配線層26の所定位置と電池30の正極端子50および負極端子60とを位置合わせした状態で、正極端子50の凸部(図示せず)と配線層26との間、および負極端子60の凸部(図示せず)と配線層26との間に、酸化銅が溶出または溶解する溶液(図示せず)を充填する。本実施の形態では、溶液はアンモニア水である。正極端子50の凸部と配線層26との間に溶液を充填したときの、正極端子50の凸部と配線層26との距離は、たとえば、1μmである。同様に、負極端子60の凸部と配線層26との距離は、たとえば、1μmである。
【0042】
室温で1分程度放置すると、正極端子50の凸部および負極端子60の凸部の最表面に形成された酸化銅が溶液中に溶出し、正極端子50の凸部および負極端子60の凸部の最表面から酸化銅が消失する。また、接合部分となる配線層26の最表面に形成された酸化銅が溶液中に溶出し、接合部分となる配線層26の最表面から酸化銅が消失する。酸化銅が溶液に溶出することにより、正極端子50および負極端子60の最表面およびこれと対応する配線層26の最表面に銅が露出する。また、溶液中では、銅錯体が形成される。本実施の形態では、銅錯体は、[Cu(NH3)4]2+で表される加熱分解性のテトラアンミン銅錯イオンとして存在すると考えられる。なお、アンモニア水は銅に対して不活性であるため、正極端子50、負極端子60および配線層26を構成する銅はアンモニア水と反応せずに残存している。
【0043】
次に、図5(B)に示すように、正極端子50と配線層26との間の距離、および負極端子60と配線層26との間の距離を縮めるように、プレス機を用いて正極端子50と配線層26とを加圧する。同様に、プレス機を用いて負極端子60と配線層26とを加圧する。加圧時の圧力は、たとえば1MPaである。本実施の形態では、電池30の正極端子50および負極端子60の先端部分は、電池30の長手方向に電池30の筐体から突出している。言い換えると、正極端子50と配線層26との接合部および負極端子60と配線層26との接合部が、電池30の筐体を回路基板20に投影した領域から外れた位置にある。このため、正極端子50および負極端子60に対してプレスを行う際に、電池30の筐体が障害とならず、正極端子50および負極端子60に対して直にプレスを行うことができる。
【0044】
次に、正極端子50と配線層26、および負極端子60と配線層26とを加圧した状態で200℃以下の比較的低温な条件下で加熱することにより溶液中の銅以外の成分を除去して銅を析出または再結晶化させる。本実施の形態では、加熱により水分が蒸発するとともに、テトラアンミン銅錯イオンが熱分解してアンモニア成分が蒸発する。これにより、溶液において銅の割合が徐々に高まるとともに、プレス機による加圧により正極端子50の凸部の最表面と配線層26の最表面との距離が徐々に近づく。同様に、負極端子60の凸部の最表面と配線層26の最表面との距離が徐々に近づく。
【0045】
次に、溶液中の銅以外の成分の除去が完了すると、正極端子50の凸部の最表面と配線層26の最表面とが酸化銅由来の銅からなる析出銅により接合される。同様に、負極端子60の凸部の最表面と配線層26の最表面とが酸化銅由来の銅からなる析出銅により接合される。この析出銅は、配向性および安定性が優れている。析出銅により接合が完了した後、加熱を停止して析出銅による接合部分を徐々に室温程度まで冷却する。なお、加熱開始から加熱停止までの時間は、たとえば、10分間である。冷却完了後、加圧を解除し、正極端子50の凸部と配線層26、および負極端子60の凸部と配線層26との接合工程が完了する。
【0046】
なお、図4に示した接合構造では、正極端子50と配線層26との仮想的な境界は、配線層26の最表面を延在した面と一致しているが、上述のように、正極端子50に対してプレスを行うことにより、正極端子50と配線層26との仮想的な境界は、配線層26の最表面を延在した面に対して配線層26の中に押し込まれることがある。負極端子60と配線層26との仮想的な境界も、同様に、配線層26の最表面を延在した面に対して配線層26の中に押し込まれることがある。
【0047】
以上説明した電池モジュールの製造方法によれば、真空装置などの大がかりな設備を用いることなく、比較的低温な条件下で電池30の外部端子と回路基板20の配線層26を接合することができる。具体的には、電池30の外部端子の接合面と配線層26の接合面とが活性化された後、析出銅を介して接合される。これにより、電池30の外部端子と配線層26との間にボイドが発生したり副生成物が介在することが抑制されるため、電池30の外部端子と配線層26との接続信頼性を高めることができる。
【0048】
また、電池30の外部端子と配線層26との接合を担う析出銅として、電池30の外部端子および配線層26の最表面に酸化被膜として存在していた酸化銅由来の銅が用いられているため、電池30の外部端子と配線層26とを接合するために、接合材料を別途用意する必要がない。このため、電池30の外部端子と配線層26との接続に要するコストを低減することができる。
【0049】
また、電池30の外部端子の接合面に凸部が形成されているため、回路基板20全体が凹状または凸状に反っている場合であっても、回路基板20の反りに応じて接合部分が形成されることで電池30の外部端子と配線層26とを確実に接続することができる。
【0050】
また、電池30の外部端子に凸部を設けておくことにより、接合部が限定され、プレス加工時の圧力が局所的に加わるため、接合部の信頼性や強度を高めることができる。
【0051】
(金属接合に用いる溶液)
上述した電池30の外部端子と配線層26との接合では、金属接合に用いる溶液としてアンモニア水が用いられているが、銅と錯体を形成する配位子を含む溶液であれば、これに限られず、たとえば、カルボン酸水溶液であってもよい。
【0052】
カルボン酸水溶液の調製に用いられるカルボン酸としては、酢酸などのモノカルボン酸、また、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、マレイン酸などのジカルボン酸、さらに、酒石酸、クエン酸、乳酸、サリチル酸などのオキシカルボン酸が挙げられる。
【0053】
このうち、カルボン酸水溶液は多座配位子となるカルボン酸を有することが好ましい。多座配位子となるカルボン酸を有するカルボン酸水溶液では、カルボン酸と銅がキレートを形成することにより銅錯体の安定性が非常に大きくなる。この結果、接合に必要な温度をより低温化させることができる。なお、酒石酸、シュウ酸などがキレートを形成することは「ヘスロップジョーンズ 無機化学(下) 齋藤喜彦 訳」の第666頁に記載されている。また、酒石酸がキレートを形成することについては、「理化学辞典 第4版(岩波書店)」の第593頁に記載されている。
【0054】
ここで、電池30の外部端子と配線層26との接続構造の変形例について説明する。以下の変形例では、負極端子60を用いて例示するが、正極端子50も同様な構造とすることができる。
【0055】
(変形例1)
図6(A)は、電池30の負極端子60と配線層26との接続構造の変形例1を示す概略図である。図6(B)は、図6(A)のY方向から見た負極端子60の側面図である。図6(C)は、図6(A)のX方向から見た負極端子60の平面図である。本変形例では、負極端子60の凸部66が柱状体(バンプ)であり、凸部66が負極端子60の接合面の複数箇所に形成されている。隣接する凸部66の間の領域は、凸部66と配線層26とが拡散接合により接合したときに、隙間となる。
【0056】
このような柱状体状の凸部66は、ウェットエッチング法や型抜き法などの手法により形成することができる。ウェットエッチング法を適用する場合には、たとえば、以下のプロセスを用いることができる。
(1)平坦な接合面の上(凸部66の形成面)にレジストを形成
(2)露光、現像を行い、凸部66の形成領域に合わせてマスクを形成
(3)ウェットエッチングを行うことにより、凸部66を形成
(4)マスクを剥離
【0057】
以上説明した電池30の負極端子60と配線層26との接続構造によれば、実施の形態1で説明した効果に加えて、次のような効果を得ることができる。
【0058】
負極端子60と配線層26との接合部分を凸部66の頂面部分に限定することができるため、プレス加工時の圧力をより局所的に加えることができる。このため、接合部の信頼性や強度を高めることができる。
【0059】
負極端子60と配線層26との間に充填された溶液がプレス加工により揮発して気体となる際に、隣接する凸部66の間に形成された隙間が、この気体の逃げ道となる。このため、気体が接合部に残ることでボイドが発生することが抑制される。この結果、負極端子60と配線層26との接続信頼性をより一層高めることができる。
【0060】
(変形例2)
図7(A)は、電池30の負極端子60と配線層26との接続構造の変形例2を示す概略図である。図7(B)は、図7(A)のY方向から見た負極端子60の側面図である。図7(C)は、図7(A)のX方向から見た負極端子60の平面図である。図7(D)は、図7(A)のZ方向から見た配線層26の平面図である。本変形例では、負極端子60の接合面側に複数の溝部67が併設されており、溝部67を仕切る壁部分が凸部66となっている。さらに、本変形例では、配線層26の接合面側にも、複数の溝部27が併設されており、溝部27を仕切る壁部分が凸部28となっている。溝部67および溝部27は、凸部66と配線層26とが拡散接合により接合したときに、隙間となる。負極端子60の側の凸部66が延在する方向は、配線層26の側の凸部28が延在する方向と交差する向きに形成されている。
【0061】
このような凹凸形状は、負極端子60の側、配線層26の側ともに上述したウェットエッチング法を適用することで形成することができる。また、負極端子60の側では、型抜き法やフライス盤等を用いた削り出し加工によって形成することができる。
【0062】
以上説明した電池30の負極端子60と配線層26との接続構造によれば、変形例1で説明した効果に加えて、次のような効果を得ることができる。
【0063】
負極端子60と配線層26との接合部分を負極端子60側の凸部66と配線層26側の凸部28とが交差し接触する部分に限定することができるため、プレス加工時の圧力をより一層局所的に加えることができる。このため、接合部の信頼性や強度をさらに高めることができる。
【0064】
負極端子60と配線層26との間に充填された溶液がプレス加工により揮発して気体となる際に、溝部67のみならず溝部27が、この気体の逃げ道となる。このため、気体が接合部に残ることでボイドが発生することがより一層抑制される。この結果、負極端子60と配線層26との接続信頼性をより一層高めることができる。
【0065】
(変形例3)
図8は、電池30の負極端子60と配線層26との接続構造の変形例3を示す概略図である。本変形例では、負極端子60に接合面側から接合面と対向する側に貫通する貫通孔68が形成されている。貫通孔68の数および設置位置は特に限定されない。貫通孔68は、負極端子60を電池30に取り付ける前にドリル加工などの加工法により形成することができる。
【0066】
このように、負極端子60に貫通孔68を形成しておくことにより、負極端子60と配線層26の所定位置とを位置合わせした後に、貫通孔68を通して負極端子60と配線層26との間に拡散接合用の溶液を注入することができるため、負極端子60と配線層26の所定位置との位置決め精度を高めた状態で拡散接合を行うことができる。
【0067】
また、負極端子60と配線層26との間に充填された溶液がプレス加工により揮発して気体となる際に、貫通孔68がこの気体の逃げ道となる。このため、気体が接合部に残ることでボイドが発生することが抑制される。この結果、負極端子60と配線層26との接続信頼性をより一層高めることができる。
【0068】
(変形例4)
図9は、電池30の負極端子60と配線層26との接続構造の変形例4を示す概略図である。本変形例では、負極端子60の凸部66に対応して、配線層26の接合面に凹部29が形成されている。なお、図9に示した点線は、負極端子60の凸部66と配線層26の凹部29との境界を仮想的に示す線である。
【0069】
凹部29は、配線層26を形成するためのウェットエッチングの際に、凹部29の中心部分に凹部29よりも小さい形状を開口とするマスクパターンを形成しておくことにより、形成することができる。また、凹部29は型を用いて加圧することで形成することができる。
【0070】
本変形例のように配線層26に凹部29を設けておくことにより、凹部29が拡散接合に使用される溶液の液溜めとなる。このため、拡散接合用の溶液の粘性が低い場合であっても、この溶液を負極端子60の凸部66と配線層26との間から逃げないようにすることができ、ひいては、拡散接合の接続信頼性を向上させることができる。
【0071】
また、配線層26に凹部29を設けておくことにより、回路基板20に反りが生じている場合であっても、回路基板20に電池30を搭載したときに、負極端子60の凸部66と配線層26の凹部29とが接触する部分がより柔軟に確保されるため、負極端子60の凸部66と配線層26の凹部29との接合部の接続信頼性をより一層高めることができる。
【0072】
なお、本変形例では、外部端子側に凸部を設け、配線層側に凹部を設けているが、これとは逆に、外部端子側に凹部を設け、配線層側に凸部を設けてもよい。この場合には、接合プロセスにおいて、図5と天地を逆にし、外部端子の上に配線層を配置することにより、外部端子に設けられた凹部を溶液の液溜として用いることができる。
【0073】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る電池モジュールの基本的な構成は実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
【0074】
図10(A)は、実施の形態2に係る電池モジュールの外部端子と配線層との接続構造を示す平面図である。図10(B)は、実施の形態2に係る電池モジュールの外部端子と配線層との接続構造を示す、図10(A)のA−A線に沿った断面図である。
【0075】
本実施の形態では、配線層26の一部が折り返されて、回路基板20を側面方向から見たときにコの字形状になっている。コの字形状部分において下側に位置する配線層26を下側配線層26uと呼び、コの字形状部分において上側に位置する配線層を上側配線層26tと呼ぶ。
【0076】
正極端子50は、下側配線層26uと上側配線層26tとの間に挟まれている。正極端子50の下面と下側配線層26uの上面とが拡散接合されていることに加えて、正極端子50の上面と上側配線層26tの下面とが拡散接合されている。同様に、負極端子60は、下側配線層26uと上側配線層26tとの間に挟まれている。負極端子60の下面と下側配線層26uの上面とが拡散接合されていることに加えて、負極端子60の上面と上側配線層26tの下面とが拡散接合されている。
【0077】
本実施の形態の正極端子50および負極端子60は平板状であり、下側配線層26uと重畳しない部分では、正極端子50の下面および負極端子60の下面が接着剤80によって回路基板20に固定されている。接着剤80は、電池30に設けられたガス弁(図示せず)を埋めないようにする。
【0078】
本実施の形態では、外部端子の上面と下面の両方が配線層と拡散接合することで、さらなる接合強度の向上を図ることができる。
【0079】
(電池モジュールの製造方法)
実施の形態2に係る電池モジュールの製造方法のうち、特に、電池と回路基板の接続方法について、図11(A)〜図11(D)を参照して説明する。
【0080】
まず、図11(A)に示すように、配線層26の一部がL字状に折り曲げられた回路基板20を用意する。電池30の負極端子60に接続される配線層26と、電池30の正極端子50に接続される配線層26との間に接着剤80を設けておく。一方、電池30の正極端子50の上面および下面に拡散接合用の溶液を塗布する。同様に、電池30の負極端子60の上面および下面に、実施の形態1と同様な拡散接合用の溶液を塗布する。
【0081】
次に、図11(B)に示すように、平板状の正極端子50および負極端子60が設けられた電池30を回路基板20に搭載する。正極端子50および負極端子60の先端側の領域は配線層26の上に位置し、これ以外の領域は、回路基板20上に設けた接着剤80によって仮固定される。
【0082】
次に、図11(C)に示すように、配線層26の一部をL字形状からコの字形状に折り曲げて、下側配線層26uと上側配線層26tとの間に正極端子50および負極端子60をそれぞれ挟むことで、電池30を固定する。
【0083】
次に、図11(D)に示すように、正極端子50が挟まれたコの字形状部分の配線層26をプレス機により加圧する。また、負極端子60が挟まれたコの字形状部分の配線層26をプレス機により加圧する。
【0084】
これにより、正極端子50の下面と下側配線層26uの上面とが拡散接合されるとともに、正極端子50の上面と上側配線層26tの下面とが拡散接合される。また、負極端子60の下面と下側配線層26uの上面とが拡散接合されるとともに、負極端子60の上面と上側配線層26tの下面とが拡散接合される。
【0085】
(電池と回路基板の接続方法の変形例)
上述した電池と回路基板の接続方法の変形例について図12(A)〜図12(C)を参照して説明する。
【0086】
まず、図12(A)に示すように、配線層26の一部を予め折り曲げてコの字形状とする。コの字形状をなす下側配線層26uと上側配線層26tとの間に外部端子(正極端子50、負極端子60)を挿入可能な隙間を設けておく。
【0087】
次に、図12(B)に示すように、コの字形状部分の隙間に、平板状の正極端子50、負極端子60をそれぞれ挿入する。なお、電池30の正極端子50の上面および下面に拡散接合用の溶液を予め塗布する。同様に、電池30の負極端子60の上面および下面に、実施の形態1と同様な拡散接合用の溶液を予め塗布する。
【0088】
次に、図12(C)に示すように、正極端子50が挟まれたコの字形状部分の配線層26をプレス機により加圧する。また、負極端子60が挟まれたコの字形状部分の配線層26をプレス機により加圧する。
【0089】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0090】
例えば、上述の実施の形態2における電池と回路基板の接続方法では、外部端子に拡散接合用の溶液を塗布しているが、拡散接合用の溶液を配線層26に塗布してもよい。拡散接合用の溶液に増粘剤を添加することにより、粘度を高めてもよい。これによれば、拡散接合用の溶液が接合部分から流れ出すことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0091】
10 電池モジュール、20 回路基板、26 配線層、30 電池、40 ハウジング、50 正極端子、60 負極端子、66 凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材に設けられた配線層とを有する回路基板と、
電極体と、前記電極体が収容された筐体と、前記筐体の外部に設けられ、前記電極体に電気的に接続されている外部端子とを有する電池と、
を備え、
前記外部端子と前記配線層とが拡散接合により接合されており、
当該接合領域において、前記外部端子または前記配線層の表面に、接合部分が非接合部分よりも突出した凸部を備えていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
上記接合部分において、前記外部端子、前記配線層のうち一方の表面が凸部であり、他方の表面が凹部である請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記外部端子に接合面側から接合面に対向する表面側に貫通する貫通孔が設けられている請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
銅を主成分とする金属で形成または被覆された凸部を有する外部端子を有する電池と、銅を主成分とする金属で形成された配線層を有する回路基板とを用意する工程と、
前記外部端子の凸部と、前記配線層との間に、酸化銅を主成分とする酸化物が溶出する溶液を充填し、前記外部端子および前記配線層の最表面に銅を主成分とする金属を露出させる工程と、
前記外部端子と前記配線層との間の距離を縮めるように前記外部端子と前記配線層とを加圧する工程と、
前記外部端子と前記配線層とを加圧した状態で、加熱により前記外部端子と前記配線層とを接合する工程と、
を備えることを特徴とする電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記外部端子の接合面側から接合面と対向する面側に貫通する貫通孔が形成された電池を用意する請求項4に記載の電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記配線層の接合部分に凹部が形成されている回路基板を用意し、
前記外部端子の凸部と前記凹部とを接合する請求項4または5に記載の電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記溶液は銅に対して不活性である請求項4乃至6のいずれか1項に記載の電池モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記溶液が銅と錯体を形成する配位子を有する物質を含む請求項4乃至7のいずれか1項に記載の電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記錯体が加熱分解性である請求項8に記載の電池モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記溶液がアンモニア水またはカルボン酸水溶液である請求項4乃至9のいずれか1項に記載の電池モジュールの製造方法。
【請求項1】
基材と前記基材に設けられた配線層とを有する回路基板と、
電極体と、前記電極体が収容された筐体と、前記筐体の外部に設けられ、前記電極体に電気的に接続されている外部端子とを有する電池と、
を備え、
前記外部端子と前記配線層とが拡散接合により接合されており、
当該接合領域において、前記外部端子または前記配線層の表面に、接合部分が非接合部分よりも突出した凸部を備えていることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
上記接合部分において、前記外部端子、前記配線層のうち一方の表面が凸部であり、他方の表面が凹部である請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記外部端子に接合面側から接合面に対向する表面側に貫通する貫通孔が設けられている請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
銅を主成分とする金属で形成または被覆された凸部を有する外部端子を有する電池と、銅を主成分とする金属で形成された配線層を有する回路基板とを用意する工程と、
前記外部端子の凸部と、前記配線層との間に、酸化銅を主成分とする酸化物が溶出する溶液を充填し、前記外部端子および前記配線層の最表面に銅を主成分とする金属を露出させる工程と、
前記外部端子と前記配線層との間の距離を縮めるように前記外部端子と前記配線層とを加圧する工程と、
前記外部端子と前記配線層とを加圧した状態で、加熱により前記外部端子と前記配線層とを接合する工程と、
を備えることを特徴とする電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記外部端子の接合面側から接合面と対向する面側に貫通する貫通孔が形成された電池を用意する請求項4に記載の電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記配線層の接合部分に凹部が形成されている回路基板を用意し、
前記外部端子の凸部と前記凹部とを接合する請求項4または5に記載の電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記溶液は銅に対して不活性である請求項4乃至6のいずれか1項に記載の電池モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記溶液が銅と錯体を形成する配位子を有する物質を含む請求項4乃至7のいずれか1項に記載の電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記錯体が加熱分解性である請求項8に記載の電池モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記溶液がアンモニア水またはカルボン酸水溶液である請求項4乃至9のいずれか1項に記載の電池モジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−160337(P2012−160337A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19068(P2011−19068)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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