説明

電波ビーコン及びその搬送周波数の監視方法

【課題】送信周波数の監視を容易に行うことができる電波ビーコンを提供する。
【解決手段】電波ビーコンは、内部の基準発振器13からの基準周波数を逓倍して所定の搬送周波数の搬送波を生成する搬送波発生器4を備えており、この搬送波にデータ信号を重畳した電波を外部に送信する。電波ビーコンは、前記基準周波数を分周してより低い周波数の被検査信号T1を生成する分周回路16と、この被検査信号T1を、外部から受信した参照信号T0と比較して、これらの信号の時間差を検出するタイムインターバル比較回路17と、検出した時間差に基づいて前記基準発振器13の動作状態の適否を判定し、その動作状態が不適の場合にエラー処理を行う制御部10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電波ビーコン及びその搬送周波数の監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
路車間通信システムを利用した交通情報サービスとして、電波ビーコン、光ビーコン又はFM多重放送を用いたいわゆるVICS(Vehicle Information and Communication System)が既に展開されている。このうち、電波ビーコンは、電波を通信媒体としており、道路の各所に設置されたビーコン送信機とビーコンアンテナとを備え、ビーコンアンテナから、例えば、位置情報及び道路方向情報を含む信号並びに道路状況等の交通情報を含む信号を放射している。そして、道路を走行する車両はこの信号を受信し、GPSを利用したナビゲーション装置にこの信号を取り組み、車両の現走行位置及び方位を補正したり、交通情報を活用したりすることができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は従来の電波ビーコンが備えている搬送波発生器の構成を示すブロック図である。この搬送波発生器は、水晶発振器(水晶振動子)40とPLL回路部41とを有しており、所定の搬送周波数とした搬送波をデータ変調器(図示せず)へと与える。データ変調器において、前記搬送波をデータ送信器(図示せず)から送信された送信データフレームで変調し、変調波信号を作る。そして、この変調波信号に基づいて送信信号を作成し、前記ビーコンアンテナ(図示せず)から各種情報を含む信号を送信している。
【0004】
このような電波ビーコンにおいて、搬送波の搬送周波数のずれの発生を監視する必要がある。これは、搬送周波数がずれると、車載機との間で通信ができなくなったり、電波ビーコンの設置位置の周辺に存在する他の無線設備に悪影響を与えたりするおそれがあるためである。
搬送周波数のずれを監視するために従来では、定期点検の際に電波ビーコンの設置位置において、作業員が周波数カウンタ等の計測器を利用して搬送周波数を計測し、規格から外れていないかの監視を行っている。
【0005】
【特許文献1】特公平6−44035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
搬送波発生器は、内部にある水晶発振器の基準周波数(例えば10MHz)を逓倍して搬送波を生成しており、その搬送周波数は高周波(2.5GHz)である。このような高周波を測定する装置は非常に高価であること、また、前記のような従来の監視方法では、作業員が電波ビーコンの設置位置まで一つ一つ出向いて搬送周波数を計測する必要があることから、電波ビーコンの保守管理にコストと時間が多くかかるという問題点がある。
この発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、電波ビーコンの搬送周波数の監視を低コストで簡単に行うことができる電波ビーコン及びその搬送周波数の監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するためのこの発明の電波ビーコンは、内部の基準発振器からの基準周波数を逓倍して所定の搬送周波数の搬送波を生成する搬送波発生部を備えており、前記搬送波にデータ信号を重畳した電波を外部に送信する電波ビーコンであって、前記基準周波数を分周してより低い周波数の被検査信号を生成する分周部と、この分周部で生成された前記被検査信号を外部から受信した参照信号と比較して、これらの信号の時間差を検出する検出部と、この検出部で検出した時間差に基づいて前記基準発振器の動作状態の適否を判定し、その動作状態が不適の場合にエラー処理を行う制御部とを備えているものである。
【0008】
また、この発明は、内部の基準発振器からの基準周波数を逓倍して所定の搬送周波数の搬送波を生成する搬送波発生部を備えており、前記搬送波にデータ信号を重畳した電波を外部に送信する電波ビーコンの搬送周波数の監視方法であり、前記基準周波数を分周してより低い周波数の被検査信号を生成し、この被検査信号を外部から受信した参照信号と比較して、これらの信号の時間差を検出し、検出した時間差に基づいて前記基準発振器の動作状態の適否を判定する方法である。
【0009】
この電波ビーコン及びその搬送周波数の監視方法によれば、分周部が基準発振器からの基準周波数を分周してより低い周波数の被検査信号を生成し、この被検査信号を検出部が外部から受信した参照信号と比較して、これらの信号の時間差を検出するので、基準発振器からの基準周波数のずれを低い周波数とした状態で、検出部は検出することができる。このように、基準発振器の基準周波数のずれを監視することにより、電波ビーコンの搬送周波数の監視を行うことができ、また、低い周波数の検出を行う装置は、高い周波数の検出を行う装置よりも安価であるため、電波ビーコンの搬送周波数の監視を安価に行うことができる。また、制御部は検出部で検出した時間差に基づいて基準発振器の動作状態の適否を判定し、エラー処理を行うことができるので、従来よりも容易に電波ビーコンの搬送周波数の監視を行うことができる。
【0010】
また、前記電波ビーコンにおいて、前記参照信号は、電波時計用の送信信号、及び、GPS用の送信信号のうちの少なくとも一方に基づくものであるのが好ましい。これによれば、参照信号を高精度なものとできるので、検出部は、参照信号と被検査信号との時間差、つまり基準発振器の基準周波数のずれを正確に検出することができる。
【0011】
また、前記電波ビーコンにおいて、前記制御部は、前記エラー処理として電波の送信を停止させる停止部を有しているのが好ましい。これによれば、制御部が基準発振器の動作状態を不適と判断した場合に、停止部は電波ビーコンからの電波の送信を停止させることができる。
また、この場合において、電波の送信を停止させた旨を表示する表示部を備えているのが好ましい。これによれば、電波ビーコンを保守管理する作業員は、表示部を見ることによって電波の送信が停止されていることを知ることができる。
【0012】
また、前記電波ビーコンにおいて、
通信回線を介して中央管制装置と接続する通信部を更に備え、前記制御部は、前記エラー処理として前記中央管制装置に前記通信部を介してエラー情報を出力する出力部を有しているのが好ましい。これによれば、制御部が基準発振器の動作状態を不適と判断した場合に、出力部は中央管制装置にエラー情報を出力し、中央管制側に基準発振器の動作状態が不適である旨を知らせることができる。
【0013】
また、前記電波ビーコンにおいて、前記制御部は、前記エラー処理として前記搬送波発生部が生成する搬送波の搬送周波数を補正する補正部を有しているのが好ましい。これによれば、制御部が基準発振器の動作状態を不適と判断した場合に、補正部は搬送波発生部から出力される搬送波の搬送周波数を補正することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、搬送波発生部の基準発振器からの基準周波数のずれを監視することにより、電波ビーコンの搬送周波数の監視を行うことができ、また、この基準発振器の基準周波数のずれを低い周波数とした状態で検出することができるので、電波ビーコンの搬送周波数の監視を安価に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の電波ビーコン(路側装置)の構成を示すブロック図である。この図において、電波ビーコンは、従来知られている電波ビーコンと同様に、アンテナ8と、ビーコン送信機20とを備えており、ビーコン送信機20は、データ送信器1、データ変調器2、変調信号発生器3、搬送波発生器4、振幅変調器5,6、180°位相器7、及び通信器9を備えている。さらに、このビーコン送信機20は、電波ビーコンの搬送周波数の監視を行うために設けられた処理部10及び外部の送信器12から送信される信号を受信する受信部11を備えている。
【0016】
データ送信器1は、各種情報を直列符号列にして出力するコンポーネントである。前記各種情報としては、位置、方位(道路の向き)、道路情報、交通情報があり、双方向通信の電波ビーコンの場合はメッセージ等のデータを含んでいる。データ送信器1から送信される信号は、フレーム単位で間欠的に繰り返し送信されており、このフレームは、ヘッド、共通データ、正相対応データ及び逆相対応データを含んでいる。フレームの先頭に配列されたヘッドは、符号エレメントの同期、フレームの同期等の通信上必要な機能を持つ部分である。そして、データ送信器1から送信される送信データフレームは、データ変調器2に与えられる。
【0017】
データ変調器2は、搬送波発生器4から与えられる搬送波fcを前記送信データフレームで変調して、第1の変調波信号を作成するものである。データ変調器2における変調方式は、振幅変調、周波数変調、位相変調等を問わず、いかなる変調方式であってもよい。この実施例では、PSK(phase shift keying)変調器またはASK(amplitude shift keying)変調器が使用されている。データ変調器2は、性能的にPSK変調器とするのが好ましいが、低コスト化を図る場合はASK変調器を用いればよい。データ変調器2で作られた第1の変調波信号は2分されて、それぞれ振幅変調器5及び振幅変調器6へ与えられる。
【0018】
変調信号発生器3は、振幅変調信号fm(中心周波数がfmの信号)を発生するものであるが、データ送信器1から与えられる同期信号によって、振幅変調信号fmが前記送信データフレームに同期するようにされている。具体的には、この実施例の場合、変調信号発生器3は、データ送信器1で用いられている信号と同じクロック信号をカウントダウンし、かつ、データ送信器1からの同期信号に合わせて動作開始するようにされている。
振幅変調信号fmの周波数には、上述の搬送波fcやデータ送信レートに比べて十分に低い周波数が選ばれている。具体的には、この実施例の場合1kHz程度の周波数が採用されている。変調信号発生器3から出力される振幅変調信号fmは、そのまま振幅変調器5へ与えられるとともに、180゜移相器7で逆相に反転されて振幅変調器6へ与えられる。
【0019】
第1の振幅変調器5は、データ変調器2から与えられた第1の変調波信号を、変調信号発生器3の出力である振幅変調信号fmで振幅変調するものであり、変調信号fmの変調率は、第1の変調波信号があまり小さくならないように、0.5以下に選ばれている。振幅変調器5で変調された信号は第2の変調波信号(正相)となり、アンテナ(スプリットビームアンテナ)8へ与えられる。
第2の振幅変調器6も、第1の振幅変調器5と同じ構成であって、データ変調器2から与えられた第2の変調波信号を、180゜移相器7で逆相にされた振幅変調信号fmで振幅変調する。この結果、振幅変調器6の出力は第2の変調波信号(逆相)になる。この第2の変調波信号もアンテナ8へ与えられる。
【0020】
アンテナ8は、異なる主放射方向を持つアンテナエレメント(図示せず)を含む構成であり、道路上に向けて設置される。アンテナ8から放射される信号は、車両に搭載した受信装置(車載機)によって受信される(図示せず)。
【0021】
通信器(通信部)9は、ビーコン送信機20を電話回線等の通信回線を介して中央管制装置30と接続するためのモデムであり、ビーコン送信機20と中央管制装置30との間で各種情報が送受信される。中央管制装置30は、電波ビーコンの設置位置に対して遠隔にある管制室に設けられている。
【0022】
図2は、搬送波発生器4、処理部10及び受信部11の構成を示すブロック図である。搬送波発生器4は、データ変調器2へ与える搬送波fcを発生させるものであり、内部に水晶発振器13とPLL回路部14とを有している。水晶発振器13は基準周波数(例えば10MHz)の信号を発振しており、PLL回路部14は、この水晶発振器13からの基準周波数を逓倍して所定の搬送周波数(2.5GHz)とした搬送波fcを生成する。
以上の構成により、この電波ビーコンは搬送波fcにデータ信号を重畳した電波を道路に対して送信することができる。
【0023】
処理部10は、CPU及び記憶装置(RAM、ROM)を有するマイコン、並びに、各種回路等を有した構成であり、電波ビーコンの搬送波の搬送周波数の監視の制御処理を行うための部分である。処理部10は、制御部15、分周回路(時計回路)16、タイムインターバル比較回路17及びタイムインターバル回路18を有している。
【0024】
制御部15は、所定の各機能を実行するプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムにしたがって機能し、また、このプログラムが実行する機能部として、停止部26、出力部27及び補正部28を備えている。これらの機能については、後に説明する。
【0025】
受信部11は、ビーコン送信機20の外部の送信器12から送信された信号を受信するアンテナ(図示せず)を有したものである。この受信部11は、電波時計用の標準電波、及び、GPS(Global Positioning System)用の電波のうちの少なくとも一方を受信する。電波時計用の標準電波は、標準電波送信所の送信器から送信されている信号であり、時刻を修正するための正確な時間情報を含んでいる。GPS用の電波は、GPS衛星の送信器から送信されている信号であり、精度の高い時間情報を含んでいる。
【0026】
受信部11が受信した電波時計用の送信信号とGPS用の送信信号との少なくとも一方の信号は、タイムインターバル回路18に送られ、タイムインターバル回路18は、この信号を増幅し、受信信号に含まれている時刻信号の解読を行い、正確な時刻設定を行う。つまり、タイムインターバル回路18は、発振回路部を有しており、この発振信号を分周し時、分、秒を刻み、さらにタイムインターバル回路18において、この時刻は、電波時計用の送信信号とGPS用の送信信号との少なくとも一方によって校正され、正確なもの(参照信号T0)となる。
このように、タイムインターバル回路18は、(後に詳しく説明するが)電波ビーコンの搬送周波数の監視を行うために、外部から受信した信号に基づいて時間(周波数又は周期)について基準となる参照信号T0を生成することができる。
【0027】
分周回路16は、PLDやゲートアレー等により構成されており、水晶発振器13からの基準周波数を分周して、当該基準周波数よりも十分に低い周波数となる被検査信号T1を生成する。分周回路16は、水晶発振器13からの基準周波数の1/Nの周波数とした被検査信号T1を得ることができる。なお、この分周回路16は、PLLが組み合わされた周波数シンセサイザであり、前記Nを整数以外の値も採用することができる。また、後にも説明するが、分周回路16は、周期が長い(例えば周期が30日である)被検査信号T1を生成することができる。
【0028】
タイムインターバル比較回路17は、PLDやゲートアレー等により構成されており、分周回路16で生成された被検査信号T1と、前記タイムインターバル回路18によって得た参照信号T0とを比較して、これらの信号の時間差(周期のずれ)を検出する検出部である。
【0029】
制御部15は、タイムインターバル比較回路17で検出した時間差に基づいて、水晶発振器13の動作状態の適否を判定し、その動作状態が不適であると判定した場合にエラー処理を行う。
これを具体的に説明すると、制御部15には、時間についての所定の閾値が設定され記憶されている。この閾値は、前記被検査信号T1の基となっている水晶発振器13からの基準周波数のずれの許容値(±1.5ppm)に基づいて得られたものである。
【0030】
そして、制御部15は、タイムインターバル比較回路17が検出した時間差が、前記閾値を超えているか否かの判定を行う。判定の結果、時間差が閾値を超えている場合、制御部15は、被検査信号T1の基となっている水晶発振器13の基準周波数が規定値(ずれの許容値)を超えていると判断することができる。そして、制御部15は、後述するエラー処理を行う。
また、前記判定の結果、時間差が閾値以下である場合、制御部15は、水晶発振器13の基準周波数が規定値の範囲内にあると判断することができる。そして、電波ビーコンの稼働はそのまま継続される。
【0031】
制御部15によるエラー処理について説明する。
制御部15の前記停止部26は、エラー処理として電波の送信を停止させることができる。例えば、停止部26は、ビーコン送信機20の電源部(図示せず)においてアンテナ8(図1参照)への電力の供給を停止させたり、各変調器における動作を停止させたりする。これによれば、制御部15が水晶発振器13の動作状態を不適と判断した場合に、停止部26は電波ビーコンからの電波の送信を停止させることができる。したがって、規定値から外れた搬送周波数による電波が電波ビーコンから送信されることがない。
【0032】
また、図2において、電波ビーコンは、停止部26によって電波の送信を停止させた旨を表示する表示部29を備えている。表示部29は発光ダイオード(LED)とすることができ、ビーコン送信機20に設けられている。停止部26が電波の送信を停止させると、発光ダイオード29は発光する構成である。したがって、発光ダイオード29が発光することによって、電波ビーコンを保守管理する作業員は、電波の送信が停止していることを簡単に知ることができる。
【0033】
また、制御部15の前記出力部27は、エラー処理として、通信器9(図1参照)を介して中央管制装置30にエラー情報を出力することができる。すなわち、制御部15が水晶発振器13の動作状態を不適と判断した場合に、出力部27は中央管制装置30にエラー情報と、その電波ビーコンの所在(ID番号)についての情報とを出力し、このエラー情報を受信した中央管制装置30は、管制室にあるディスプレイや発光ダイオード等の表示部(図示せず)に、これら情報を表示させたり発光させたりすることができる。これにより、中央管制側に水晶発振器13の動作状態が不適である旨を知らせることができる。そして、中央管制装置30が、この電波ビーコンを停止させる信号を当該電波ビーコンに送信し、遠隔操作によってその電波ビーコンの稼働を停止させることができる。また、中央管制装置30側にいる作業員は、管制室にある前記表示部を確認することによって、この電波ビーコンの修理の手配を迅速に行うことができる。
【0034】
また、制御部15の補正部28は、エラー処理として、搬送波発生器4が生成する搬送波fcの搬送周波数を補正することができる。例えば、補正部28は、搬送波発生器4が有している電圧制御発信回路14aと分周回路14bとのうちの一方又は双方を操作することによって、出力する搬送波の搬送周波数が規定値の範囲内に収まるように、当該搬送周波数を補正する。これによれば、制御部15が水晶発振器13の動作状態を不適と判断した場合に、補正部28は搬送波発生器4から出力される搬送波fcの搬送周波数を補正することができる。したがって、搬送周波数が規定値から外れた電波を電波ビーコンから送信してしまうことを防止することができる。
【0035】
図3は、以上のように構成された電波ビーコンによって行われる搬送周波数の監視方法を説明するフローチャートである。この監視方法の具体例について図2を参照しつつ説明する。
受信部11が、電波時計用の標準電波とGPS用の電波とのうちの少なくとも一方を受信し、タイムインターバル回路18は、この受信信号に基づいて時間について基準となる参照信号T0を得る(ステップS1)。
【0036】
分周回路16は、随時、水晶発振器13からの基準周波数の信号を分周し、より低い周波数となる被検査信号T1を得る(ステップS2)。分周回路16は、水晶発振器13の基準周波数(10MHz)よりも低い周波数となる被検査信号T1として、周期が1日以上50日以下である被検査信号T1とするのが好ましく、例えばこの具体例では、周期が30日(1ヶ月)である長いタイムインターバル信号(被検査信号T1)を作る。
【0037】
分周回路16によってこの被検査信号T1が得られると(ステップS2)、タイムインターバル比較回路17は、被検査信号T1と参照信号T0との時間差εを検出する(ステップS3)。すなわち、被検査信号T1の周期(30日)と、参照信号T0による正確な30日の周期との差を、時間差εとして検出する。
【0038】
そして、タイムインターバル比較回路17が時間差εを検出することによって、制御部15は水晶発振器13の動作状態の適否を判定する(ステップS4)。つまり、制御部15は、時間差εと予め設定された閾値との比較を行う。具体的に説明すると、閾値は、前記被検査信号T1の基となっている水晶発振器13の基準周波数についてのずれの許容値(±1.5ppm)に基づいて得られたものであり、タイムインターバルを30日とした場合の±1.5ppmに相当する許容値は約2.6秒となる。したがって、この値(2.6秒)が閾値となり、制御部15はこの閾値と前記時間差εとを比較する。
【0039】
制御部15の比較により、時間差εが閾値以下である場合(ステップS4のYesの場合)、電波ビーコンは稼働をそのまま継続する(ステップS5)。一方、時間差εが閾値を超えている場合(ステップS4のNoの場合)、制御部15は前記エラー処理を行う(ステップS6)。これにより、水晶発振器13の基準周波数のずれが許容値(±1.5ppm)を超えてしまうことを防止することができる。この結果、水晶発振器13の基準周波数を逓倍して所定の搬送周波数とした搬送波の当該搬送周波数が、許容値(±1.5ppm)を超えることを防止でき、電波ビーコンから送信される電波の搬送周波数を規定値に保つことができる。
【0040】
以上のように、この発明によれば、水晶発振器13からの基準周波数を分周回路16が分周することにより、より低い周波数の被検査信号T1を得る。この被検査信号T1と、タイムインターバル回路18が得た参照信号T0とを比較して、これらの信号の時間差εを、タイムインターバル比較回路17が検出することにより、水晶発振器13の基準周波数のずれを低い周波数とした状態で、検出することができる。このように、水晶発振器13の基準周波数のずれを監視することにより、電波ビーコンの搬送周波数の監視を行うことができ、また、低い周波数の信号の処理を行うタイムインターバル比較回路17は、高い周波数の信号を処理する回路よりも安価であり、また、分周回路16及びタイムインターバル回路18においても、安価なもので構成することができるので、電波ビーコンの搬送周波数の監視を行う構成を安価に実現することができる。
【0041】
また、この発明によれば、タイムインターバル比較回路17の検出結果により制御部15はエラー処理を自動的に行うことができるので、従来のような、定期点検の際に電波ビーコンの設置位置において作業員が高価な周波数カウンタ等の計測器を利用し、搬送周波数を計測し、これが規格から外れていないかの監視を行う方法は不要となり、従来よりも、容易に電波ビーコンの搬送周波数の監視を行うことができる。つまり、前記処理部10によれば、電波ビーコンの搬送周波数の監視を、当該電波ビーコン自身で自動的に行ったり、当該電波ビーコンと電話回線等の通信回線を介して接続された中央管制装置30において、遠隔操作によって行ったりすることができる。このため、電波ビーコンの保守管理にかかるコストの低減が可能となる。
【0042】
また、この発明の電波ビーコンにおいて、時間について基準となる参照信号T0は、電波時計用の送信信号、及び、GPS用の送信信号のうちの少なくとも一方に基づくものであるため、参照信号T0の時間を高精度なものとできる。これにより、タイムインターバル比較回路17は、被検査信号T1と参照信号T0との時間差ε、つまり水晶発振器13からの基準周波数のずれを正確に検出することができる。これにより、電波ビーコンの搬送周波数の監視が高い精度で行われる。
【0043】
また、従来では、図4において、搬送波発生器のPLL回路部41のロック状態を監視する技術が提案されているが、この場合であっても、水晶発振器(水晶振動子)40の経年変化による基準周波数のずれを検出することはできない。しかし、この発明の前記実施形態(図2)によれば、水晶発振器13からの基準周波数の信号を分周してより低い周波数の被検査信号T1とし、この被検査信号T1と参照信号T0とを比較して、これらの信号の時間差を検出することにより、水晶発振器13の動作状態の適否を判定しているので、水晶発振器13の基準周波数のずれを監視することができる。これにより、水晶発振器13の経年変化による基準周波数のずれを検出することが可能となる。
【0044】
また、この発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
前記実施形態では、参照信号T0と被検査信号T1との時間差εに基づいて周波数の監視を行う場合を説明したが、この時間差εについては、参照信号T0と被検査信号T1との周波数の差と実質的に同一であり、これら信号の周波数の差を検出し、周波数の監視を行ってもよい。
【0045】
また、制御部15のエラー処理として、停止部26、出力部27及び補正部28のうちの複数を機能させてもよい。例えば、停止部26が電波の送信を停止させると共に、出力部27が中央管制装置30にエラー情報を送信してもよい。または、補正部28が補正を行うと共に、出力部27が中央管制装置30にエラー情報を送信してもよい。または、補正部28による補正が完了するまでの間について、停止部26が電波の送信を停止させ、補正が完了すると停止部26が停止状態を解除してもよく、さらこれと共に、出力部27が中央管制装置30にエラー情報を送信してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】電波ビーコンの構成を示すブロック図である。
【図2】搬送波発生器、処理部及び受信部の構成を示すブロック図である。
【図3】搬送周波数の監視方法を説明するフローチャートである。
【図4】従来の電波ビーコンが備えている搬送波発生器の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0047】
4 搬送波発生器(搬送波発生部)
9 通信器(通信部)
13 水晶発振器(基準発振器)
15 制御部
16 分周回路(分周部)
17 タイムインターバル比較回路(検出部)
18 タイムインターバル回路
26 停止部
27 出力部
28 補正部
30 中央管制装置
T0 参照信号
T1 被検査信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の基準発振器からの基準周波数を逓倍して所定の搬送周波数の搬送波を生成する搬送波発生部を備えており、前記搬送波にデータ信号を重畳した電波を外部に送信する電波ビーコンであって、
前記基準周波数を分周してより低い周波数の被検査信号を生成する分周部と、
この分周部で生成された前記被検査信号を外部から受信した参照信号と比較して、これらの信号の時間差を検出する検出部と、
この検出部で検出した時間差に基づいて前記基準発振器の動作状態の適否を判定し、その動作状態が不適の場合にエラー処理を行う制御部と、
を備えていることを特徴とする電波ビーコン。
【請求項2】
前記参照信号は、電波時計用の送信信号、及び、GPS用の送信信号のうちの少なくとも一方に基づくものである請求項1に記載の電波ビーコン。
【請求項3】
前記制御部は、前記エラー処理として電波の送信を停止させる停止部を有している請求項1又は2に記載の電波ビーコン。
【請求項4】
電波の送信を停止させた旨を表示する表示部を備えている請求項3に記載の電波ビーコン。
【請求項5】
通信回線を介して中央管制装置と接続する通信部を更に備え、
前記制御部は、前記エラー処理として前記中央管制装置に前記通信部を介してエラー情報を出力する出力部を有している請求項1〜4のいずれか一項に記載の電波ビーコン。
【請求項6】
前記制御部は、前記エラー処理として前記搬送波発生部が生成する搬送波の搬送周波数を補正する補正部を有している請求項1〜5のいずれか一項に記載の電波ビーコン。
【請求項7】
内部の基準発振器からの基準周波数を逓倍して所定の搬送周波数の搬送波を生成する搬送波発生部を備えており、前記搬送波にデータ信号を重畳した電波を外部に送信する電波ビーコンの搬送周波数の監視方法であって、
前記基準周波数を分周してより低い周波数の被検査信号を生成し、
この被検査信号を外部から受信した参照信号と比較して、これらの信号の時間差を検出し、
検出した時間差に基づいて前記基準発振器の動作状態の適否を判定することを特徴とする電波ビーコンの搬送周波数の監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−224491(P2008−224491A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64734(P2007−64734)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】