説明

電流駆動装置および表示装置

【課題】電流出力部に電圧を保持することで基準電流を記憶し、出力端子間の電流を均一化する方式の電流駆動装置において、電流出力部のキャリブレーション時間が不足する。
【解決手段】電圧供給手段V1と、電流供給手段QP1と、電流‐電圧変換機能、電圧‐電流変換機能、電圧保持用容量素子C1を有する複数の電流出力部A0〜Anを備える。電流出力部は3つの動作モードをとり、電圧供給モードでは電圧供給手段V1からの電圧を受けて電圧保持用容量素子C1に保持し、電流供給モードでは電流供給手段QP1からの電流を受け電流‐電圧変換機能により第2の電圧を生成して電圧保持用容量素子C1に保持し、電流出力モードでは電圧‐電流変換機能により電圧保持用容量素子C1に保持した電圧に応じた出力電流を出力する。基準電流によるキャリブレーションの前に、基準電圧により電流出力部を充電することで、電流出力部のキャリブレーションを高速に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流駆動装置にかかわり、特には有機EL(Electro-Luminescence)パネルやLEDパネルなどの表示用ドライバとして好適な電流駆動装置に関する。また、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイは大画面化、高精細化するとともに、薄型軽量化および低コスト化が進んできている。そのような背景の中で、表示用ドライバについては、出力端子間の出力電流のばらつきを低減することで、表示画質の均一性を高める性能が求められている。カレントミラーの静的動作の電流ばらつきは、個々のトランジスタの拡散プロセスによるばらつきや、電源配線の抵抗によるゲート電圧のばらつきなどがある。また、カレントミラーの動的動作におけるばらつきは、表示パネルからの電荷注入や瞬時的な電源の変動によるものがある。また、一般的にドライバ用半導体は、多出力構成であって平面パネルの額縁部に実装されるために棒状のスリム形状となっている。このLSI形状の制約により配置されるトランジスタの特性はスリムレイアウトの素子位置によって異なるため、カレントミラー構成では同一のゲート電圧が印加された場合であっても電流加算型DA変換回路の各々からの出力電流が等しくなるとはいえない。
【0003】
このようなばらつきの低減方法として、例えば図6に示すような電流出力部をもつ電流駆動装置がある(例えば特許文献1参照)。この電流出力部は、キャリブレーション機能と電流出力機能とを持つ。基準電流源による基準電流値を電流出力部に記憶させることを「キャリブレーション」という。
【0004】
キャリブレーションモード時は、電流出力用スイッチSo1,So2を非導通状態とし、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2およびすべての信号応答用スイッチG1〜Gmを導通させる。電流出力端子T1,T2は外部と切り離される。ノードN1とノードN2が短絡され、NchトランジスタQN1〜QNmのドレインとゲートは短絡され、基準電流源I1からの電流を受ける。これにより、NchトランジスタQN1〜QNmは、自身が基準電流源I1からの電流を流すのに必要なゲート電圧をノードN2に発生させる。電圧保持用容量素子C1は、前記のゲート電圧に充電される。ノードN2の電圧V(N2)は、基準電流源I1による基準電流と等しい電流をすべて導通状態にあるNchトランジスタQN1〜QNmに流させる能力の電圧に相当し、結局、電流出力部Aは基準電流源I1による基準電流を記憶することになる。
【0005】
次に、電流出力モード時は、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2を非導通状態に切り替え、電流出力用スイッチSo1,So2のいずれか一方を導通し他方は非導通とし、信号応答用スイッチG1〜Gmは外部から供給される入力信号に応じて導通、非導通が決定される。電圧保持用容量素子C1はキャリブレーション動作により充電された値を保持し、NchトランジスタQN1〜QNmのゲート端子に供給し続ける。NchトランジスタQN1〜QNmは、信号応答用スイッチG1〜Gmの導通状態に応じて、ノードN2の電圧V(N2)に応じた電流を電流出力端子T1,T2のうちの導通状態にある方から出力する。
【0006】
次に、図6に示した電流加算型DA変換回路のキャリブレーション、電流出力の一連の動作のタイミングチャートを図7に示す。スイッチの導通状態を“H”で、非導通状態を“L”で表す。V(N2)は、ノードN2の電圧V(N2)を表す。
【0007】
キャリブレーション前、電流出力部Aは、電流出力用スイッチSo1を導通させ、ノードN2の電圧V(N2)と入力信号によって制御される信号応答用スイッチG1〜Gmの状態に応じた出力電流を電流出力端子T1から出力している。電流出力用スイッチSo2、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2は非導通とする。
【0008】
キャリブレーション期間中は、電流出力用スイッチSo1,So2は非導通、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2を導通、NchトランジスタQN1〜QNmからの電流を選択する信号応答用スイッチG1〜Gmはすべて導通とする。これにより、NchトランジスタQN1〜QNmは、基準電流源I1の電流のみが供給される状態となり、前述の動作に従ってノードN2の電圧V(N2)を決定する。
【0009】
以上のキャリブレーションを終えると、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2を非導通状態とし、電圧保持用容量素子C1が電荷を保持する状態とする。つまり、ノードN2の電圧V(N2)を保持する状態とする。その後、電流出力用スイッチSo2を導通状態とし、入力信号により信号応答用スイッチG1〜Gmで選択された電流の和を電流出力端子T2から出力する。
【0010】
図6に示した電流出力部Aを利用した電流駆動装置の構成を図8に示す。(n+1)個の電流出力部A0〜Anは、動作制御回路Bから制御信号により、キャリブレーションモード、電流出力モードの動作状態を制御する。信号入力回路Dinは、各電流出力部A0〜Anの内部構成要素(図6参照)中の信号応答用スイッチG1〜Gmを制御する信号を与える。基準電流源I1によるキャリブレーションは、各電流出力部A0〜Anの内部動作により、(n+1)個の電流出力部A0〜Anのうちの1個の電流出力部に対して行われる。キャリブレーションは、A0からA1,A2,…Anと順に行う。キャリブレーションを行っていない電流出力部は電流出力モードとなり、n個の出力端子OUT1〜OUTnへ電流を出力する。電流出力は、A0からA1,A2、…Anと順に行う。
【0011】
上記の電流出力部による電流加算型DA変換回路を複数持った場合の基準電流を同一の電流源の電流に合わせ込むことができ、これにより、パネルの表示の均一化が実現できる。
【特許文献1】特開2005−311591号公報
【特許文献2】特開2004−219955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、この方式では、基準電流源I1の電流値が微小な場合に、電圧保持用容量素子C1を充放電する能力が不足し、キャリブレーション期間内にNchトランジスタQN1〜QNmの電流が基準電流源I1の電流の値に正確に合うように充電することが困難になる。この基準電流が微小なことによる電圧保持用容量素子C1の充電不足の様子を図9に示す。
【0013】
また、基準電流源I1の電流値が変化した場合に、逐次的なキャリブレーションでは、すべての電流出力部A0〜Anの基準電流が更新されるまで、出力端子によって基準電流が異なる状態が発生する。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みて創作したものであり、基準電流が微小な場合や基準電流を変更した場合でも、キャリブレーションを高速に行い、出力電流の不均一性を改善する電流駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による電流駆動装置は、
第1の電圧を供給する第1の電圧供給手段と、
第1の電流を供給する第1の電流供給手段と、
複数の出力端子と、
電流‐電圧変換機能、電圧‐電流変換機能、電圧保持手段および1個以上の電流出力端子を有し、前記第1の電流に応じた電流を出力する複数の電流出力部とを備え、
前記電流出力部は、電圧供給モードと電流供給モードと電流出力モードの3つの動作モードをとり、
前記電圧供給モードでは、前記第1の電圧供給手段から前記第1の電圧を受けて前記電圧保持手段に保持し、
前記電流供給モードでは、前記第1の電流供給手段から前記第1の電流を受け、前記電流‐電圧変換機能により第2の電圧を生成して前記電圧保持手段に保持し、
前記電流出力モードでは、前記電圧‐電流変換機能により、前記電圧保持手段に保持されている電圧に応じた出力電流を出力するように構成されているものである。電圧供給モードと電流供給モードとがキャリブレーションモードに相当する。
【0016】
上記のように構成された電流駆動装置においては、電流出力部は、電圧供給モードにおいて第1の電圧供給手段より第1の電圧の供給を受け、この第1の電圧を電圧保持手段に保持する。次いで電流供給モードにおいて、電流出力部は第1の電流供給手段より第1の電流の供給を受け、電流‐電圧変換機能により第2の電圧を生成し、この第2の電圧を電圧保持手段に保持する。これで、電圧保持手段への所定電圧への充電が高速化される。そして、電流出力モードにおいて、電流出力部は電圧‐電流変換機能により、電圧保持手段に保持されている電圧に応じた電流を出力する。上記において、電圧保持手段に対する充電に際しては、第1の電圧によって目標電圧付近まで充電し、さらに第1の電流を供給して充電を行うので、第1の電流供給手段による基準電流が微小であっても、基準電流を得るまでの電圧保持手段への電圧供給動作が高速化され、また基準電流を正確に得ることが可能となる。
【0017】
上記構成の電流駆動装置において、前記出力端子の各々は、複数の前記電流出力部に備わった前記電流出力端子と接続され、前記複数の電流出力部の各々が、共通の前記第1の電流供給手段および前記第1の電圧供給手段に対して並列に接続されているという態様がある。このように構成すれば、起動直後や第1の電流が変化した場合など、すべての電流出力部に大幅なキャリブレーションが必要となった場合に、すべての電流出力部に備わった電圧保持手段を第1の電圧に仮充電することができ、第1の電流の変更による表示むらを抑えることが可能となる。
【0018】
また上記構成の電流駆動装置において、前記電流出力部は、前記電圧供給モードにおいて、前記電流‐電圧変換機能を作動させるという態様がある。このように構成すれば、電圧保持手段に対する充電を、第1の電圧供給手段からの第1の電圧の供給による充電に加えて、第1の電流供給手段からの第1の電流を電圧に変換した上での充電との相乗が行われるので、さらなる高速化が実現可能となる。
【0019】
また上記構成の電流駆動装置において、前記電流出力部は、前記電圧供給モードにおいて、前記電流‐電圧変換機能を停止する機能を備えているという態様がある。このように構成すれば、第1の電圧供給手段より供給される電流をすべて電圧保持手段の充電に利用でき、消費電力の低減が図られる。
【0020】
また上記構成の電流駆動装置において、さらに、前記第1の電流と比例関係にある第2の電流を供給する第2の電流供給手段と、前記第2の電流を受けて前記第1の電圧を生成する電流‐電圧変換手段とを備え、前記第1の電圧供給手段は、前記電流‐電圧変換手段により生成された前記第1の電圧の前記電流出力部に対する供給を制御するという態様がある。このように構成すれば、第1の電圧供給手段が電流出力部に供給する第1の電圧が電流‐電圧変換手段によって第2の電流から生成され、その第2の電流供給手段による第2の電流が第1の電流と比例関係にあるので、結局、第1の電圧が第1の電流に比例したものになる。したがって、第1の電圧について、電圧保持手段に保持させるべき電圧の最終目標値にほぼ一致する値の電圧を生成することが可能となる。
【0021】
また上記構成の電流駆動装置において、前記電流‐電圧変換手段は、前記第1の電圧が現れるノードを基準電圧ノードに短絡する切り替え手段を備えているという態様がある。第1の電流や第2の電流を変更した場合には、電流‐電圧変換手段により生成される第2の電圧の変更にも時間がかかる。これに対して、本構成によれば、切り替え手段を動作させることにより電流‐電圧変換手段の出力電圧をリセットすることが可能であるので、電流‐電圧変換手段による第2の電圧の変更が高速化される。
【0022】
また上記構成の電流駆動装置において、さらに、前記第1の電圧供給手段よりも電圧供給能力の大きい第2の電圧供給手段を備え、複数の前記電流出力部のうち前記電圧供給モードをとる前記電流出力部の数に応じて、前記第1の電圧供給手段と前記第2の電圧供給手段の使用を切り替えるように構成されているという態様がある。多数の電流出力部を持つ場合、電圧供給モードになる電流出力部の数により、電圧供給手段の負荷が大幅に変わる。本構成によれば、第2の電圧供給手段を追加し、負荷に応じて、第1の電圧供給手段と第2の電圧供給手段の使用を切り替えることで、出力電圧を滑らかに変化させることによるEMI(電磁妨害)の低減と消費電力の低減が実現される。
【0023】
あるいは上記構成の電流駆動装置において、前記第1の電圧供給手段は、複数の前記電流出力部のうち前記電圧供給モードをとる前記電流出力部の数に応じて、その電圧供給能力が可変可能に構成されているという態様がある。このように構成すれば、第1の電圧供給手段が負荷に応じて電圧供給能力を最適にする機能を備えることで、EMI(電磁妨害)の低減と必要面積の低減が実現される。
【0024】
上記の電流駆動装置に関連する本発明による表示装置は、上記のいずれかの電流駆動装置を搭載し、この電流駆動装置によって駆動される電流駆動型の表示装置である。この表示装置においては、画面表示の均一化が実現される。
【0025】
本発明による電流駆動装置は、
電流供給手段に対する接続・遮断を制御する電流入力用スイッチと、
流入電流によって充電され基準電圧を保持する電圧保持手段と、
前記電流入力用スイッチと前記電圧保持手段との間に介挿されたキャリブレーション用スイッチと、
前記電圧保持手段による基準電圧に応じた電流を生成する電圧‐電流変換素子の複数と、
前記電圧‐電流変換素子のそれぞれに直列に接続され、前記キャリブレーション用スイッチに対してそれぞれ並列に接続され、入力されてくる信号に応じてオン・オフ制御される信号応答用スイッチの複数と、
前記電流入力用スイッチと前記キャリブレーション用スイッチとの接続ノードと複数の電流出力端子との間にそれぞれ介挿された電流出力用スイッチの複数と、
前記電圧保持手段に対して電圧供給手段の接続・遮断を制御する高速化スイッチとを備えたものである。
【0026】
キャリブレーションモードは2つの段階からなる。電圧供給モードと電流供給モードとである。電圧供給モードでは、高速化スイッチを導通状態にして電圧供給手段を電圧保持手段に接続し、電圧保持手段の電位レベルを高速に昇圧する。このとき、電流出力用スイッチはすべて非導通状態、キャリブレーション用スイッチおよびすべての信号応答用スイッチは導通状態とする。次いで、電流供給モードでは、高速化スイッチを非導通状態に切り替える。電流入力用スイッチおよびキャリブレーション用スイッチは導通状態とし、電圧‐電流変換素子に流れる電流の合計値が電流供給手段から供給される基準電流値と等しくなり、その基準電流値に等しい電流を電圧‐電流変換素子に流すことに対応した電圧を電圧保持手段に保持させることになる。すなわち、基準電流値を記憶することになる。このように、キャリブレーションモードでの前半段階である電圧供給モードでは電圧供給手段を用いて電圧保持手段の電位を高速に立ち上げ、キャリブレーションモードの後半段階では電流供給手段による基準電流値を正確に記憶するので、基準電流源の電流値が微小な場合であっても、基準電流を得るまでの電圧保持手段へ電圧供給する能力を電圧供給手段でまかない、電圧‐電流変換素子に流れる電流が基準電流源の電流の値に正確に合うキャリブレーションの完成を高速に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第1の電流供給手段による基準電流が微小であっても、第1の電圧によって電圧保持手段を目標電圧付近まで充電し、さらに第1の電流を供給して充電を行うので、基準電流を得るまでの電圧保持手段への電圧供給動作が高速化され、また基準電流を正確に得ることができる。
【0028】
また、出力電流の基準となる電流が変更された場合に、各電流出力部による出力電流の不均一性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明にかかわる電流駆動装置の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付してある。
【0030】
図1は本発明の実施の形態における電流駆動装置に搭載される電流出力部Aの構成を示す回路図、図2は電流出力部Aの動作を説明するタイミングチャート、ず3は電流駆動装置の全体的な構成を示すブロック回路図、図4は電圧供給源V1の具体例を示す回路図である。以下、順次に説明する。
【0031】
<電流出力部>
まず、図1を用いて電流出力部Aを説明する。電圧保持用容量素子C1の一端が接地端子に接続され、他端がm個のNchトランジスタQN1〜QNmのゲート端子に共通に接続されている。NchトランジスタQN1〜QNmのソースはそれぞれ接地端子に接続され、ドレインはそれぞれ入力信号に応じてオン・オフ制御される信号応答用スイッチG1〜Gmに直列に接続され、信号応答用スイッチG1〜Gmの他端は共通に接続され、かつ電流入力用スイッチSw1を介して、一定の電流値(第1の電流)を電流出力部Aに供給する基準電流源I1に接続されているとともに、キャリブレーション用スイッチSw2を介して電圧保持用容量素子C1に接続されている。電流入力用スイッチSw1とキャリブレーション用スイッチSw2および信号応答用スイッチG1〜Gmとの接続のノードN1が電流出力用スイッチSo1,So2を介してそれぞれ電流出力端子T1,T2に接続されている。ここまでの回路構成については、従来の技術の場合の図6の回路構成と同じである。本実施の形態においては、さらに、電圧保持用容量素子C1とキャリブレーション用スイッチSw2との接続のノードN2に対して、高速化スイッチSw3を介して、一定の電圧(第1の電圧)を電流出力部Aに供給する電圧供給源V1が接続されている。このが前述の第1の電圧供給手段に相当する。基準電流源I1が前述の第1の電流供給手段に相当する。電圧保持用容量素子C1が前述の電圧保持手段に相当する。なお、電圧保持用容量素子C1については、NchトランジスタQN1〜QNmのゲート端子に本来備わっている寄生容量で代用してもかまわない。
【0032】
この電流出力部Aは、電圧供給モードM1、電流供給モードM2および電流出力モードM3の3つの動作状態をとる。このうち電圧供給モードM1と電流供給モードM2とがキャリブレーションモードMcを構成する。
【0033】
≪電圧供給モードM1≫
ここで、電流出力部Aの電圧供給モードM1について説明する。
【0034】
まず、電流出力用スイッチSo1,So2はそれぞれ非導通状態とし、電流出力端子T1,T2はノードN1から切り離される。そして、高速化スイッチSw3が導通状態とされ、電圧供給源V1とノードN2とが接続されている。このとき、電圧保持用容量素子C1は、電圧供給源V1より供給される一定の電圧(第1の電圧に相当。以下、基準電圧と記す。)に充電される。
【0035】
なお、この電圧供給モードM1のときに、次に説明する電流供給モードM2を同時に動作させることもあり得る。その場合、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2およびすべての信号応答用スイッチG1〜Gmが導通状態とされる。
【0036】
≪電流供給モードM2≫
次に、電流出力部Aの電流供給モードM2について説明する。この電流供給モードM2では、電流‐電圧変換機能が作動する。そのため、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2および信号応答用スイッチG1〜Gmのすべてが導通状態とされる。高速化スイッチSw3は非導通状態に切り替えられ、ノードN2が電圧供給源V1から切り離される。電流出力用スイッチSo1,So2は非導通状態のままである。
【0037】
このとき、NchトランジスタQN1〜QNmは、ドレインとゲートが接続されているので、ダイオード特性を示す。よって、NchトランジスタQN1〜QNmは、負荷として基準電流源I1からの一定の電流値を有する電流(基準電流)を流すことになる。このとき、NchトランジスタQN1〜QNmのゲートには、基準電流源I1からの基準電流を流すためのゲート電圧が一義的に発生する。したがって、電圧保持用容量素子C1は、このゲート電圧に応じた電荷を蓄積する。このように、電圧保持用容量素子C1は、基準電流と等しい電流値を有する電流を流すためのゲート電圧を保持する。電流出力部Aとしては基準電流値を記憶することになる。
【0038】
≪電流出力モードM3≫
次に、電流出力部Aの電流出力モードM3について説明する。この電流出力モードM3では、電圧‐電流変換機能が作動する。そのため、電流入力用スイッチSw1およびキャリブレーション用スイッチSw2が非導通状態とされ、電流出力用スイッチSo1,So2のいずれか一方が非導通状態から導通状態に切り替えられる。電流出力用スイッチSo1,So2は、同時には導通しない。高速化スイッチSw3は、非導通状態のままである。電圧保持用容量素子C1には、上述の電流供給モードM2の際に基準電流と等しい電流値を有する電流を流すためのゲート電圧に応じた電荷が蓄積されている。よって、NchトランジスタQN1〜QNmのゲートには、電圧保持用容量素子C1に蓄積された電荷に応じたゲート電圧が印加されるので、電流出力端子T1またはT2に電源を接続すれば、電流出力用スイッチSo1,So2および信号応答用スイッチG1〜Gmの導通設定に応じて、基準電流に比例する電流値を有する引き込み電流を出力することができる。出力電流は、信号応答用スイッチG1〜Gmの導通設定にも依存し、NchトランジスタQN1〜QNmの出力電流のうち、上記各トランジスタに接続された信号応答用スイッチG1〜Gmが導通しているNchトランジスタが出力している電流の加算となる。なお、信号応答用スイッチG1〜Gmがすべて導通状態であれば、上述の電流供給を行った電流出力部Aの最大出力電流であり、その値は基準電流に等しくなる。
【0039】
この一連の動作により、基準電流を電流出力部Aにコピーして、この基準電流と入力信号に応じた電流を出力することができる。電流のコピーは、電流供給モードM2と電流出力モードM3のみでも可能であるが、電圧供給モードM1にて、NchトランジスタQN1〜QNmのゲート端子の接続されたノードN1の電圧を、目標電圧(電流供給モードM2での収束電圧)付近まで充電することで、電圧保持用容量素子C1の充電不足を解消し、電流を高速にコピーできる。
【0040】
本実施の形態においては、NchトランジスタQN1〜QNmの電流能力を、1倍、2倍、4倍…、2m 倍とすることで、mビットの電流加算型DA変換回路を構成することができる。なお、各ビット毎に基準電流源I1を用意するのでもよい。また、本実施の形態に示した電流加算型DA変換回路は一例に過ぎず、等しい電流のみをコピーする場合などは、信号応答用スイッチG1〜Gmを除けばよい。
【0041】
ここで、図1(a)に示した電流出力部Aを図1(b)に示すように5端子回路素子として表すことにする。図1(b)において、電流出力部Aは、基準電流入力端子IREFと電圧入力端子VREFと電流出力端子IOUTと制御信号入力端子CTLと信号入力端子DATAを備える。基準電流入力端子IREFは基準電流源I1に接続され、電圧供給モードM1、電流供給モードM2において基準電流源I1からの電流を入力する。電圧入力端子VREFは電圧供給源V1に接続され、電圧供給モードM1において基準電圧を入力する。電流出力端子IOUTは電流出力モードM3になると、電流供給モードM2にて記憶された電流を出力する。制御信号入力端子CTLは動作状態を制御する制御信号を入力し、電流出力部A内の電流出力用スイッチSo1,So2、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2、高速化スイッチSw3および信号応答用スイッチG1〜Gmの切り替えを制御する。信号入力端子DATAは出力電流値を制御するmビットの入力信号を入力し、信号応答用スイッチG1〜Gmの切り替えを制御する。
【0042】
次に、上記のように構成された本実施の形態の電流出力部Aの動作を図2のタイミングチャートを用いて説明する。図2は上記3つの動作状態(電圧供給モードM1、電流供給モードM2および電流出力モードM3)を示す。スイッチの導通状態を“H”で、非導通状態を“L”で表す。また、V(N2)はノードN2の電圧V(N2)を表す。ノードN2の電圧V(N2)は本実施の形態によるものを実線で、従来技術において電流供給モードM2のみのキャリブレーションを同時に開始した場合の電圧の様子を破線で示している。
【0043】
キャリブレーション前、電流出力部Aは、電流出力用スイッチSo1を導通させ、ノードN2の電圧V(N2)と入力信号によって制御される信号応答用スイッチG1〜Gmの状態に応じた出力電流を、電流出力端子T1から出力している。電流出力用スイッチSo2、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2、高速化スイッチSw3は非導通とする。
【0044】
キャリブレーション期間全般において、電流出力用スイッチSo1,So2は非導通とし、NchトランジスタQN1〜QNmからの電流を選択する信号応答用スイッチG1〜Gmは、すべて導通状態とする。詳しくは次のとおりである。電圧供給モードM1では、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2および高速化スイッチSw3を導通状態とすることで、基準電流および基準電圧を供給し、ノードN2から電圧保持用容量素子C1を充電する。電流供給モードM2では、電圧供給モードM1のスイッチの状態から、高速化スイッチSw3を非導通とする。これにより、NchトランジスタQN1〜QNmには基準電流源I1の電流のみが供給される状態となり、前述の動作に従って、ノードN2の電圧V(N2)を決定する。このノードN2の電圧V(N2)は、NchトランジスタQN1〜QNmのすべてが導通状態にあるという条件下で基準電流源I1による基準電流と等しい電流をNchトランジスタQN1〜QNmに流させる能力の電圧に相当し、結局、電流出力部Aは基準電流源I1による基準電流を記憶することになる。
【0045】
以上のキャリブレーションを終えると、まず電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2を非導通状態とし、電圧保持用容量素子C1が電荷を保持する状態とする。つまり、ノードN2の電圧V(N2)を保持する状態とする。その後、電流出力用スイッチSo2を導通状態とし、入力信号により信号応答用スイッチG1〜Gmで選択された電流の和を電流出力端子T2から出力する。
【0046】
なお、上記説明では、電圧供給モードM1において、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2を導通して高速化を図っているが、電流入力用スイッチSw1、キャリブレーション用スイッチSw2を非導通状態としても従来技術と比べると高速に収束し、かつ上記説明の場合に比べて基準電流源の分の電流を削減することができる。
【0047】
次に、本実施の形態における電流駆動装置の全体構成について図3を用いて説明する。この電流駆動装置は、n個の出力端子OUT1〜OUTnと、(n+1)個の電流出力部A0〜Anと、第1の電流供給手段を構成する基準電流供給用トランジスタQP1と、第2の電流供給手段を構成する基準電流供給用トランジスタQP2と、電圧供給源V1と、動作制御回路Bと、信号入力回路Dinと、電流‐電圧変換用トランジスタQNx,QPxと、基準電流源I1と、リセット用スイッチSw4とを備える。電流出力部A0〜Anの各々は図1に示した電流出力部であり、基準電流入力端子IREFは基準電流供給用トランジスタQP1に接続され、電圧入力端子VREFは電圧供給源V1に接続され、動作制御端子CTLは動作状態を制御する信号を動作制御回路Bから入力し、信号入力端子DATAは出力電流値を制御する信号を信号入力回路Dinから入力し、電流出力端子IOUTA,IOUTBはそれぞれ出力端子OUT1〜OUTnのうちの1つに接続され、基準電流と入力信号DATAとに応じた出力電流を制御信号CTLの状態に応じて外部へ出力する。基準電流供給用トランジスタQP1は、電流出力部A0〜AnのIREF端子と電源端子の間に接続され、ゲート端子はノードN11に接続されている。基準電流供給用トランジスタQP2は、ノードN12と電源端子との間に接続され、ゲート端子はノードN11に接続されている。Pチャンネル型の電流‐電圧変換用トランジスタQPxは、基準電流源I1と電源端子との間に接続され、ゲートは自身のドレインと短絡されている。Nチャンネル型の電流‐電圧変換用トランジスタQNxは、基準電流供給用トランジスタQP2と接地端子との間に接続され、ゲートは自身のドレインと短絡されている。リセット用スイッチSw4は、ノードN12と接地端子との間に接続されている。
【0048】
ここで、電流出力部A0〜Anの電流出力端子IOUTA,IOUTBの接続は、以下の規則に従って割り当てる。電流出力部A0の電流出力端子IOUTAは外部へ接続せず、電流出力端子IOUTBは電流駆動装置の出力端子OUT1へ接続する。電流出力端子IOUTAは出力端子OUT1へ接続し、電流出力端子IOUTBは出力端子OUT2へ接続する。以降の電流出力部も同様にしていき、電流出力部Anの電流出力端子IOUTAは出力端子OUTnに接続し、電流出力端子IOUTBは外部へ接続しない。つまり、n個の出力端子OUT1〜OUTnに対し、(n+1)個の電流出力部A0〜Anのうち、i番目の電流出力部Aiにおいて、電流出力端子IOUTAはi番目の出力端子OUTiに接続し、電流出力端子IOUTBは(i+1)番目の出力端子OUT(i+1)に接続する。ただし、1番目の電流出力部A0の電流出力端子IOUTAと、(n+1)番目の電流出力部Anの電流出力端子IOUTBは、外部へ接続しない。
【0049】
1番目の電流出力部A0については電流出力用スイッチSo1および電流出力端子T1を備えなくてもよく、(n+1)番目の電流出力部Anの電流出力用スイッチSo2と電流出力端子T2についても同様である。
【0050】
ここでは、出力端子数nより1個多い電流出力部を用意しているが、例えば、出力端子1個に対して2個の電流出力部を用意しても、一方が電流出力、他方がキャリブレーションとすることができ、常に電流出力端子に出力電流を供給できる。また、必ずしもすべての出力端子が電流出力状態になくてもよい場合は、出力端子よりも電流出力部の方が少なくしてもよい。
【0051】
電流‐電圧変換用トランジスタQPxは電流‐電圧変換手段として働く。基準電流源I1の電流を受け、電流‐電圧変換用トランジスタQPxが基準電流源I1に等しい電流を流すゲート電圧(第1の電圧)をノードN11に発生させる。ゲート端子がノードN11に接続された基準電流供給用トランジスタQP1,QP2は、基準電流源I1による基準電流に比例した電流を、それぞれ電流出力部A0〜AnのIREF端子と電流‐電圧変換用トランジスタQNxへ供給する。
【0052】
電流‐電圧変換用トランジスタQNxは、基準電流供給用トランジスタQP2より基準電流源I1の電流値に比例した電流を受ける。電流‐電圧変換用トランジスタQPxと同様、自身が、基準電流供給用トランジスタQP2より供給される電流を流すためのゲート電圧をノードN12に発生させる。
【0053】
好ましくは、電流‐電圧変換用トランジスタQNxは、図1に示したNchトランジスタQN1〜QNmのトランジスタのすべてを並列接続した構成にする。また、基準電流供給用トランジスタQP1,QP2より供給される電流を異なる値とする場合は、電流‐電圧変換用トランジスタQNxの電流‐電圧変換能力を、基準電流供給用トランジスタQP1,QP2が供給する電流値の比率に合わせるとよい。つまり、基準電流供給用トランジスタQP2より供給される電流値を、基準電流供給用トランジスタQP1より供給される電流値の3倍とした場合、電流‐電圧変換用トランジスタQNxは、電流出力部A内のNchトランジスタQN1〜QNmのすべてを並列接続したものを3つ分用意する。これにより、ノードN12に、電流出力部Aが電流供給モードM2でNchトランジスタQN1〜QNmのゲートに発生する電圧に極めて近い値の電圧を生成することができる。
【0054】
電圧供給源V1は、上記のようにして電流‐電圧変換用トランジスタQNxによってノードN12に発生した電圧を、電流出力部A0〜AnのVREF端子へ供給する。
【0055】
本実施の形態の電流駆動装置を実際の表示パネルに応用する場合、例えば、1ライン160画素とすると、出力端子数n=160となり、電流出力部Aは161個必要となる。RGBカラーの場合は、電流出力部A0〜Anと信号入力回路Dinがこの3倍が必要となる。さらに、RGBで基準電流を個別に制御する場合は、図3に示した電流駆動装置のうち、基準電流供給用トランジスタQP1と、電圧供給源V1が3組必要となる。動作制御回路Bは共用しても差し支えないが、個別制御してもよい。
【0056】
<キャリブレーションモードMc>
図3に示した電流駆動装置におけるキャリブレーションモードMcについて説明する。
【0057】
動作制御回路Bは、電流出力部A0〜Anのうち1つをキャリブレーションモードMcに設定する。すなわち、電圧供給モードM1から電流供給モードM2と遷移させ、それ以外の電流出力部は電流出力モードM3に設定する。
【0058】
まず、電流出力部A0を電圧供給モードM1に設定する。電流出力部A1〜Anは電流出力端子IOUTAよりそれぞれ出力端子OUT1〜OUTnに電流を出力する状態に設定する。次に、電流出力部A0を電流供給モードM2に設定する。電流出力部A1〜Anの動作設定は変更しない。以上により、電流出力部A0のキャリブレーションを行う。
【0059】
次に、電流出力部A0は電流出力端子IOUTBを出力端子OUT1に接続し、電流出力モードM3に設定する。電流出力部A2〜Anと、出力端子OUT2〜OUTnの接続は変更しない。この状態で、電流出力部A1を電圧供給モードM1、電流供給モードM2と遷移させ、キャリブレーションを行う。
【0060】
同様にして、キャリブレーション前の電流出力部の電流出力端子IOUTAまたはキャリブレーションの終わった電流出力部の電流出力端子IOUTBを出力端子に接続し、各電流出力部に対し、逐次キャリブレーションを行っていく。
【0061】
<電流出力モードM3>
次に、図3に示した電流駆動装置の電流出力モードM3について説明する。
【0062】
キャリブレーションモードMcに設定されていないn個の電流出力部Aは電流出力モードM3に設定され、信号入力回路Dinからそれぞれの電流出力部Aが接続されている出力端子に応じた表示データ信号を受ける。電流出力モードM3に設定されている電流出力部Aは、基準電流と上記表示データに応じた引き込み電流を出力する。
【0063】
<リフレッシュ>
キャリブレーションを1回しか行わない場合、電流出力部A0〜Anの内部において、電圧保持用容量素子C1やNchトランジスタQN1〜QNmのゲートでのリークによって電圧保持用容量素子C1に保持した基準電圧が変動してしまう。そのため、電流出力部に対するキャリブレーションを定期的に行う必要がある。このために、本実施の形態ではn個の出力端子OUT1〜OUTnに対し、(n+1)個の電流出力部A0〜Anを備え、電流を出力しない電流出力部に対しキャリブレーションを行う。
【0064】
なお、起動直後や基準電流の変更の直後以外において、一旦すべての電流供給部A0〜Anにキャリブレーションを行った後は、すでに目標電圧に近い電圧が保持されているため、電圧供給モードM1によるキャリブレーションを省いてもよい。
【0065】
<一括電圧供給モードM1′>
上述の定期的なキャリブレーション、リフレッシュ動作のみを行う場合、本電流駆動装置の起動直後や基準電流を変更した場合には、各電流出力部のノードN2に必要な電圧を保持させなければ完全な出力が得られず、パネル表示において不均一を生じる。このため、起動時や基準電流変更時には、全電流出力部A0〜AnのノードN2に対し、電流‐電圧変換用トランジスタQNxにて生成する電圧を、電圧供給源V1によって一括で与える動作モードを備える。これにより全電流出力部A0〜Anに、新たに設定された基準電流に近い電流値を記憶させることができ、逐次キャリブレーションによる表示の不均一性を改善することができる。
【0066】
<基準電圧の再設定>
上述のように各出力電流部は、電圧供給源V1によって新たな基準電流に近い電流値を仮に保持することができる。しかし、この電圧を供給するノードN12は、基準電流供給用トランジスタQP2からの吐き出し電流によって充電される。電流‐電圧変換用トランジスタQNxは、吐き出し電流を供給する基準電流供給用トランジスタQP2の負荷にすぎないため、特に再設定される基準電流が微小な場合等、低い電圧に収束させることが困難である。このため、リセット用スイッチSw4を備え、ノードN12を接地電位に短絡する機能を備えることが望ましい。
【0067】
なお、上記実施の形態ではリセット用スイッチSw4は接地電位と電流‐電圧変換用トランジスタQNxとの間に接続されているが、電流‐電圧変換用トランジスタQNxの電位として予測される最低電位を生成し、この生成された電位のノードと電流‐電圧変換用トランジスタQNxとの間に接続することで、電流‐電圧変換用トランジスタQNx電位の再設定の動作をさらに高速化できる。
【0068】
定期的なキャリブレーションにおける電圧供給モードM1の処理を行う場合と、本項の一括電圧供給モードM1′の処理を行う場合とでは、電圧供給源V1から見た負荷が大幅に変化する。1個の電流出力部Aを充電する際に、n個の負荷に対応した電圧供給能力を使用すると、電圧供給ラインの電圧波形がひずみ、EMI(電磁妨害)等の問題を引き起こしやすくなる。逆に、1個の電流出力部に対応した電圧供給能力では、すべての電流出力部へ電圧を供給する場合に電圧供給能力が不足してしまう。この対策として、充電すべき容量の大きさに応じて、電圧供給部の電圧供給能力を可変とするとよい。
【0069】
一例として、電圧供給源V1内の出力段トランジスタの数を、上記各動作モードに応じて可変にすれるものがある。そのような電圧供給源V1の例を図4に示す。電圧供給源V1は、差動増幅器Adと、NchトランジスタQN21,QN22と、PchトランジスタQP21,QP22と、スイッチSw5,Sw6,Sw7,Sw8により構成されている。差動増幅器Adは、その反転入力端子に電流‐電圧変換用トランジスタQNxにより生成される基準電圧が入力され、非反転入力端子には電圧供給源V1の出力端子が接続され、電圧供給源V1全体としてボルテージフォロアを構成している。また、電圧供給源V1の出力端子には電流出力部A0〜Anが接続されている。NchトランジスタQN21,QN22のゲートは差動増幅器Adの出力端子と接続され、ソースは接地端子に、ドレインはそれぞれスイッチSw5,Sw6を介して電圧供給源V1の出力端子へ接続されている。PchトランジスタQP21,QP22のゲートには外部より適当なバイアス電圧を与え、ソースは電源電位、ドレインはそれぞれスイッチSw7,Sw8を介して出力端子に接続されている。1個の電流出力部のみ、例えば電流出力部A0のみを電圧供給モードM1にする場合にはスイッチSw5,Sw7を導通状態、スイッチSw6,Sw8を非導通状態とすることで、電流出力部A0の電圧保持手段(図1の電圧保持用容量素子C1)のみ負荷とすることに最適な状態とする。電流出力部A0〜Anのすべてを電圧供給モードM1とする場合、スイッチSw5,Sw6,Sw7,Sw8をすべて導通状態とすることで、すべての電流出力部に備わった電圧保持用容量素子C1への充電に対応できるよう、電圧の供給能力を大きくする。これにより、電圧供給源V1は、負荷に応じて適切な電圧供給能力で電圧を供給できる。
【0070】
図5は本発明の別の実施の形態における電流駆動装置の構成を示す回路図である。定期的な電圧供給モードM1と一括電圧供給モードM1′とで、それぞれの動作モードのために、電圧供給能力の異なる第2の電圧供給手段を用意している。電流出力部の1個の負荷に対して電圧供給能力を合わせ込んだ第1の電圧供給手段としての電圧供給源V1に加えて、接続された電流出力部のすべてを負荷として電圧供給能力を合わせ込んだ第2の電圧供給手段としての電圧供給源V2を備えている。電圧供給源V1,V2には、動作制御回路Bより制御信号が入力される。電圧供給源V1および電圧供給源V2は、それぞれ第1の電圧を示すノードN12を入力とし、1つの電流出力部に対する電圧供給モードM1か、一括電圧供給モードM1′であるかによって、切り替え制御される。また、両電圧供給源の動作切り替え時にオーバーラップを設ければ、切り替え直後の出力波形の大きな変動を抑制できる。
【0071】
<効果>
以上のような構成により、基準電流を供給することによって電流出力部のキャリブレーションを行う電流駆動装置において、基準電流によるキャリブレーションの前に最終目標値に近い電圧を供給することで、キャリブレーション動作を高速化できる。これにより、基準電流が微小な場合や、パネルの大型化に伴う電流駆動装置の出力数の増大に対応することができる。
【0072】
なお、図1において、電流出力部の出力電流を吸い込み型とし、構成素子としてNchトランジスタを用いたが、出力電流が吐き出し型の場合には、Pchトランジスタを用いればよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の電流駆動装置は、出力電流の不均一性を改善することが可能であり、有機EL表示装置に用いられる電流駆動方式の表示装置のドライバ等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態における電流出力部の構成を示す回路図
【図2】図1に示す電流出力部の動作を示すタイミングチャート
【図3】本発明の実施の形態における電流駆動装置の全体の構成を示すブロック回路図
【図4】本発明の実施の形態における電圧供給源の具体的構成を示す回路図
【図5】本発明の実施の形態の変形例における電流駆動装置の全体の構成を示すブロック回路図
【図6】従来の技術における電流出力部の構成を示す回路図
【図7】図6に示す電流駆動装置の動作を示すタイミングチャート
【図8】従来の技術における電流駆動装置の全体の構成を示すブロック回路図
【図9】図6に示した電流駆動装置において基準電流が微小な場合の動作を示すタイミングチャート
【符号の説明】
【0075】
A,A0〜An 電流出力部
B 動作制御回路
C1 電圧保持用容量素子
Din 信号入力回路
G1〜Gm 信号応答用スイッチ
I1 基準電流源
OUT1〜OUTn 出力端子
QP1 基準電流供給用トランジスタ(第1の電流供給手段)
QP2 基準電流供給用トランジスタ(第2の電流供給手段)
QPx,QNx 電流‐電圧変換用トランジスタ(電流‐電圧変換手段)
QN1〜QNm Nchトランジスタ
So1,So2 電流出力用スイッチ
Sw1 電流入力用スイッチ
Sw2 キャリブレーション用スイッチ
Sw3 高速化スイッチ
T1,T2 電流出力端子
V1 電圧供給源(第1の電圧供給手段)
V2 電圧供給源(第2の電圧供給手段)
Vd 差動増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電圧を供給する第1の電圧供給手段と、
第1の電流を供給する第1の電流供給手段と、
複数の出力端子と、
電流‐電圧変換機能、電圧‐電流変換機能、電圧保持手段および1個以上の電流出力端子を有し、前記第1の電流に応じた電流を出力する複数の電流出力部とを備え、
前記電流出力部は、電圧供給モードと電流供給モードと電流出力モードの3つの動作モードをとり、
前記電圧供給モードでは、前記第1の電圧供給手段から前記第1の電圧を受けて前記電圧保持手段に保持し、
前記電流供給モードでは、前記第1の電流供給手段から前記第1の電流を受け、前記電流‐電圧変換機能により第2の電圧を生成して前記電圧保持手段に保持し、
前記電流出力モードでは、前記電圧‐電流変換機能により、前記電圧保持手段に保持されている電圧に応じた出力電流を出力するように構成されている電流駆動装置。
【請求項2】
前記出力端子の各々は、複数の前記電流出力部に備わった前記電流出力端子と接続され、前記複数の電流出力部の各々が、共通の前記第1の電流供給手段および前記第1の電圧供給手段に対して並列に接続されている請求項1に記載の電流駆動装置。
【請求項3】
前記電流出力部は、前記電圧供給モードにおいて、前記電流‐電圧変換機能を作動させる請求項1または請求項2に記載の電流駆動装置。
【請求項4】
前記電流出力部は、前記電圧供給モードにおいて、前記電流‐電圧変換機能を停止する機能を備えている請求項1または請求項2に記載の電流駆動装置。
【請求項5】
さらに、前記第1の電流と比例関係にある第2の電流を供給する第2の電流供給手段と、
前記第2の電流を受けて前記第1の電圧を生成する電流‐電圧変換手段とを備え、
前記第1の電圧供給手段は、前記電流‐電圧変換手段により生成された前記第1の電圧の前記電流出力部に対する供給を制御する請求項1から請求項4までのいずれかに記載の電流駆動装置。
【請求項6】
前記電流‐電圧変換手段は、前記第1の電圧が現れるノードを基準電圧ノードに短絡する切り替え手段を備えている請求項5に記載の電流駆動装置。
【請求項7】
さらに、前記第1の電圧供給手段よりも電圧供給能力の大きい第2の電圧供給手段を備え、複数の前記電流出力部のうち前記電圧供給モードをとる前記電流出力部の数に応じて、前記第1の電圧供給手段と前記第2の電圧供給手段の使用を切り替えるように構成されている請求項1から請求項6までのいずれかに記載の電流駆動装置。
【請求項8】
前記第1の電圧供給手段は、複数の前記電流出力部のうち前記電圧供給モードをとる前記電流出力部の数に応じて、その電圧供給能力が可変可能に構成されている請求項1から請求項6までのいずれかに記載の電流駆動装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の電流駆動装置を搭載し、この電流駆動装置によって駆動される電流駆動型の表示装置。
【請求項10】
電流供給手段に対する接続・遮断を制御する電流入力用スイッチと、
流入電流によって充電され基準電圧を保持する電圧保持手段と、
前記電流入力用スイッチと前記電圧保持手段との間に介挿されたキャリブレーション用スイッチと、
前記電圧保持手段による基準電圧に応じた電流を生成する電圧‐電流変換素子の複数と、
前記電圧‐電流変換素子のそれぞれに直列に接続され、前記キャリブレーション用スイッチに対してそれぞれ並列に接続され、入力されてくる信号に応じてオン・オフ制御される信号応答用スイッチの複数と、
前記電流入力用スイッチと前記キャリブレーション用スイッチとの接続ノードと複数の電流出力端子との間にそれぞれ介挿された電流出力用スイッチの複数と、
前記電圧保持手段に対して電圧供給手段の接続・遮断を制御する高速化スイッチとを備えた電流駆動装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−146568(P2008−146568A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335850(P2006−335850)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】