説明

電源切換装置

【課題】電源を備えた2系統のうち一方の系統に事故が発生した場合、事故が発生していないもう一方の系統に事故が波及することを防止することのできる電源切換装置を提供することにある。
【解決手段】機械式スイッチ6と2つのサイリスタスイッチ7a,7bにより構成させる切換回路5を備え、交流電源1A,1Bから入力される電圧の不足電圧を検出した場合、2つの交流電源1A,1B間で電源を切換えるための切換指令SCa,SCbを切換回路5に出力し、交流電源1A,1Bから入力される電力によりそれぞれ充電されるコンデンサ8a,8bの放電電流に基づいて、電源入力側の事故の発生を判断し、事故が発生したと判断された場合、切換指令SCa,SCbの出力を阻止する電源切換装置3A,3B。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源を切換える電源切換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電源システムを支える装置として無停電電源システム(UPS, uninterruptible power system)が用いられている。無停電電源システムを保守及び点検をする際には、他の無停電電源システムに電源系統を負荷に影響なく切換える必要がある。そこで、このように電源を切換えることのできる機能を持つ電源切換装置が多く使われている。
【0003】
電源切換装置の構成としては、半導体スイッチのみで構成された電源切換装置と、機械式スイッチと半導体スイッチを組合せた電源切換装置の2種類に分類される。半導体スイッチのみで構成された電源切換装置は、半導体のオン・オフ動作が速い特徴を利用して、負荷に影響を及ぼさない数ミリ秒程度の出力瞬断時間で切換えを行う。その反面、この構成による電源切換装置の場合は、出力瞬断時間と負荷側の許容瞬断時間との協調、及びオン電圧と負荷電流との積で決まる常時発生する損失の強制冷却が必要である。また、この構成による電源切換装置は、オン電圧による出力電圧の電圧降下が起きる。
【0004】
一方、機械式スイッチと半導体スイッチを組合せた電源切換装置は、常時の負荷給電を損失の小さい機械式スイッチを介して負荷給電する。このため、この構成による電源切換装置では、強制冷却をする必要がない。また、切換動作も半導体スイッチにより瞬間的に2系統の電源をラップさせて切換える。このため、電源と負荷側との間で無瞬断の切換ができる。このことから、機械式スイッチと半導体スイッチを組合せた電源切換装置が多く使われている。
【0005】
また、負荷側で短絡事故が発生した場合、電源切換装置から出力される電流の過電流を検出することで、2系統のうち1系統の入力電源の不足電圧を検出しても、自動電源切換回路を電源を切換えないように不動作とするインターロック回路を備えた電源切換装置もある。このインターロック回路を設けることにより、電源切換装置は、もう1つの電源系統に負荷側の短絡事故の影響を与えないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−289485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、機械式スイッチと半導体スイッチを組合せた電源切換装置では、上述したように、電源切換動作において2系統の電源をラップさせている。このため、一方の系統の短絡等の事故により、電源切換動作をした場合、もう一方の系統にこの事故の影響が及ぶ可能性がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、電源を備えた2系統のうち一方の系統に事故が発生した場合、事故が発生していないもう一方の系統に事故が波及することを防止することのできる電源切換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の観点に従った電源切換装置は、2つの交流電源のうちいずれか1つの交流電源から入力される電力を出力電力として選択する機械式選択手段と、前記2つの交流電源から入力される電力をそれぞれ出力又は出力停止のいずれかに切換えるための2つの静止型スイッチと、前記2つの交流電源から入力される電圧をそれぞれ検出するための2つの電圧検出手段と、前記2つの電圧検出手段により検出されたそれぞれの電圧に基づいて、前記2つの交流電源から入力される電圧の不足電圧をそれぞれ検出するための2つの不足電圧検出手段と、前記2つの不足電圧検出手段によりそれぞれ不足電圧が検出された場合、不足電圧が検出された前記交流電源から他方の前記交流電源に出力電力を切換えるために、前記機械式選択手段及び前記2つの静止型スイッチを制御する切換制御手段と、前記2つの交流電源から入力される電力により充電される少なくとも1つのコンデンサと、前記コンデンサから放電される電流を検出するための電流検出手段と、前記電流検出手段により検出された電流に基づいて、前記2つの交流電源のいずれかの電源入力側に事故が発生したことを判断する事故発生判断手段と、前記事故発生判断手段により事故が発生したと判断された場合、前記切換制御手段による切換えを阻止する切換阻止手段とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源を備えた2系統のうち一方の系統に事故が発生した場合、事故が発生していないもう一方の系統に事故が波及することを防止することのできる電源切換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電源切換装置の適用された電源系統の構成を示す構成図。
【図2】第1の実施形態に係る切換指令出力回路の構成を示す構成図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る電源切換装置の適用された電源系統の構成を示す構成図。
【図4】第2の実施形態に係る切換指令出力回路の構成を示す構成図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る電源切換装置の適用された電源系統の構成を示す構成図。
【図6】第3の実施形態に係る切換指令出力回路の構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電源切換装置3A,3Bの適用された電源系統の構成を示す構成図である。なお、以降の図における同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、異なる部分について主に述べる。以降の実施形態も同様にして重複する説明を省略する。
【0014】
本実施形態に係る電力系統システムは、A系統とB系統の2系統で構成されている。A系統は、A系電源1Aと、A系フィーダー盤2Aと、A系電源切換装置3Aと、A系負荷4Aとを備えている。B系統は、B系電源1Bと、B系フィーダー盤2Bと、B系電源切換装置3Bと、B系負荷4Bとを備えている。なお、ここでは、主にA系の装置について説明し、B系の装置については、同様に構成されているものとして、説明を省略する。また、以降の実施形態も同様に、B系の装置についての説明は適宜省略する。
【0015】
A系電源1Aは、無停電電源システムで構成される交流電源である。A系電源1Aは、最大で2つの負荷4A,4Bに電力を供給する。
【0016】
A系フィーダー盤2Aは、2つの電源1A,1Bの出力母線からそれぞれA系電源切換装置3Aに電源を送り出すための装置である。A系フィーダー盤2Aは、2つの開閉器21a,21bを備えている。A系開閉器21aを開放すると、A系電源1AからA系電源切換装置3Aへ電源を送り出す回路が切断される。即ち、A系電源1AからA系電源切換装置3Aへの電力供給が停止する。B系開閉器21bを開放すると、B系電源1BからA系電源切換装置3Aへ電源を送り出す回路が切断される。即ち、B系電源1BからA系電源切換装置3Aへの電力供給が停止する。
【0017】
A系電源切換装置3Aは、A系電源1A又はB系電源1Bのいずれかを選択する。A系電源切換装置3Aは、選択した電源1A,1BからA系負荷4Aに電力を供給する。通常時は、A系電源切換装置3Aは、A系電源1Aを選択している。A系電源切換装置3Aは、切換動作により、B系電源1Bに無瞬断で切り換わる。
【0018】
A系負荷4Aは、通常時は、A系電源1AからA系電源切換装置3Aを介して電力供給される。A系電源切換装置3Aによる電源切換により、B系電源1Bから電力供給される。
【0019】
A系電源切換装置3Aは、切換回路5と、2つのコンデンサ8a,8bと、2つの電流検出器9a,9bと、2つの電圧検出器10a,10bと、2つの切換指令出力回路30a,30bとを備えている。
【0020】
A系コンデンサ8aは、A系電源1Aから電力が入力される入力回路に設けられている。A系コンデンサ8aは、2つの端子のうち1つの端子のみがA系電源1Aの入力回路に接続されている。A系コンデンサ8aは、A系電源1Aから入力される入力電源の短絡電流を検出するために設けられている。A系コンデンサ8aは、A系電源1Aから入力される電力により充電される。A系電源1Aから交流電力が入力される電源入力側に短絡事故等が発生した場合、A系コンデンサ8aは、事故点に向けて放電電流を流す。即ち、A系コンデンサ8aは、A系電源1Aの電源入力側に事故等が発生すると、放電する。
【0021】
B系コンデンサ8bは、B系電源1Bから電力が入力される入力回路に設けられている。B系コンデンサ8bは、2つの端子のうち1つの端子のみがB系電源1Bの入力回路に接続されている。B系コンデンサ8bは、B系電源1Bから入力される入力電源の短絡電流を検出するために設けられている。B系コンデンサ8bは、B系電源1Bから入力される電力により充電される。B系電源1Bから交流電力が入力される電源入力側に短絡事故等が発生した場合、B系コンデンサ8bは、事故点に向けて放電電流を流す。即ち、B系コンデンサ8bは、B系電源1Bの電源入力側に事故等が発生すると、放電する。
【0022】
A系電流検出器9aは、A系コンデンサ8aの放電電流を計測する。A系電流検出器9aは、計測した電流値を電流信号SIaに変換して、A系切換指令出力回路30aに出力する。
【0023】
B系電流検出器9bは、B系コンデンサ8bの放電電流を計測する。B系電流検出器9bは、計測した電流値を電流信号SIbに変換して、B系切換指令出力回路30bに出力する。
【0024】
A系電圧検出器10aは、A系電源1Aから入力される電圧値(A系入力電源電圧)を計測する。A系電圧検出器10aは、計測した電圧値を電圧信号SVaに変換して、A系切換指令出力回路30aに出力する。
【0025】
B系電圧検出器10bは、B系電源1Bから入力される電圧値(B系入力電源電圧)を計測する。B系電圧検出器10bは、計測した電圧値を電圧信号SVbに変換して、B系切換指令出力回路30bに出力する。
【0026】
A系切換指令出力回路30aは、A系電源1AからB系電源1Bに電源切換するための切換指令SCaを出力する。A系切換指令出力回路30aは、A系電流検出器9aから入力された電流信号SIa及びA系電圧検出器10aから入力された電圧信号SVaに基づいて、切換指令SCaを生成する。
【0027】
B系切換指令出力回路30bは、B系電源1BからA系電源1Aに電源切換するための切換指令SCbを出力する。B系切換指令出力回路30bは、B系電流検出器9bから入力された電流信号SIb及びB系電圧検出器10bから入力された電圧信号SVbに基づいて、切換指令SCbを生成する。
【0028】
切換回路5は、機械式スイッチ6と、2つのサイリスタスイッチ7a,7bとで構成されている。切換回路5は、A系切換指令出力回路30aから入力される切換指令SCaによりA系電源1AからB系電源1Bに電源切換動作をする。切換回路5は、B系切換指令出力回路30bから入力される切換指令SCbによりB系電源1BからA系電源1Aに電源切換動作をする。
【0029】
機械式スイッチ6は、2系統の電源1A,1Bを切換えるための機械式に動作するスイッチである。
【0030】
2つのサイリスタスイッチ7a,7bは、機械式スイッチ6の切換を補完するための静止型のスイッチである。A系サイリスタスイッチ7aは、切換時に、A系電源1Aからの電力をA系負荷4Aに供給する回路を構成する。B系サイリスタスイッチ7bは、切換時に、B系電源1Bからの電力をA系負荷4Aに供給する回路を構成する。
【0031】
図2は、本実施形態に係る切換指令出力回路30a,30bの構成を示す構成図である。B系切換指令出力回路30bは、A系切換指令出力回路30aと同様に構成されているため、説明を省略する。
【0032】
A系切換指令出力回路30aは、不足電圧検出器32と、電流変換器33と、事故電流設定器34と、比較器35と、NOT回路36と、AND回路37とを備えている。
【0033】
不足電圧検出器32には、A系電圧検出器10aから入力されたA系電源1Aから入力される電圧値を計測するための電圧信号SVaが入力される。不足電圧検出器32は、電圧信号SVaが示す電圧値が所定値を下回る場合、Hレベルの信号をAND回路37に出力する。不足電圧検出器32は、電圧信号SVaが示す電圧値が所定値を下回らない場合、Lレベルの信号をAND回路37に出力する。
【0034】
電流変換器33には、A系電流検出器9aから入力されたA系コンデンサ8aの放電電流を計測するための電流信号SIaが入力される。電流変換器33は、入力された電流信号SIaを計測値に変換して、比較器35に出力する。
【0035】
事故電流設定器34には、短絡電流又は地絡電流などの事故電流を検出するための設定値Is*が設定されている。設定値Is*は、A系電流検出器9aによる計測値が事故電流であると判断する下限の基準値である。即ち、電流変換器33から入力される計測値が設定値Is*を上回る場合は、A系切換指令出力回路30aは、事故が発生したと判断する。事故電流設定器34は、設定値Is*を比較器35に出力する。
【0036】
比較器35には、電流変換器33から入力された計測値及び事故電流設定器34から入力された設定値Is*が入力される。比較器35は、電流変換器33から入力された計測値が事故電流設定器34から入力された設定値Is*よりも大きい場合、NOT回路36にHレベルの信号を出力する。比較器35は、電流変換器33から入力された計測値が事故電流設定器34から入力された設定値Is*以下の場合、NOT回路36にLレベルの信号を出力する。
【0037】
NOT回路36は、比較器35から入力された信号を論理否定(反転)して、AND回路37に出力する。即ち、NOT回路36は、比較器35からLレベルの信号が入力されると、Hレベルの信号を出力する。また、NOT回路36は、比較器35からHレベルの信号が入力されると、Lレベルの信号を出力する。NOT回路36から出力されるLレベルの信号は、A系切換指令出力回路30aから切換指令SCaが出力されることを阻止する信号である。
【0038】
AND回路37は、不足電圧検出器32から入力される信号とNOT回路36から入力される信号との論理積を演算する。AND回路37は、不足電圧検出器32から入力される信号とNOT回路36から入力される信号が共にHレベルの場合、切換指令SCaを切換回路5に出力する。AND回路37は、不足電圧検出器32から入力される信号とNOT回路36から入力される信号のいずれか1つ信号がLレベルの場合、切換指令SCaを出力しない。
【0039】
次に、A系電源切換装置3Aの動作について説明する。
【0040】
まず、A系電源切換装置3Aは、A系電源1AからA系負荷4Aに給電している状態であるとする。この状態から何らかの理由によりA系フィーダー盤2AのA系開閉器21aが開放した場合を想定する。
【0041】
A系開閉器21aが開放すると、A系電源1Aの出力母線であるA系母線が電源切換装置3Aから切り離される。これにより、電源切換装置3AのA系入力電源電圧が低下する。A系入力電源電圧が低下すると、A系電圧検出器10aを介して、A系切換指令出力回路30aは、不足電圧検出器32が動作する。このとき、A系コンデンサ8aから放電電流は流れないため、電源切換装置3Aは、切換指令SCaを切換回路5に出力する。
【0042】
切換回路5は、切換指令SCaを受信すると、A系電源1AからB系電源1Bに電源切換えするための動作を開始する。具体的には、切換指令SCaは、機械式スイッチ6をB系電源1Bの入力電源側に切換え、A系サイリスタスイッチ7aのオン指令を停止し、B系サイリスタスイッチ7bにオン指令を与える。
【0043】
機械式スイッチ6は、A系電源1AからB系電源1Bへの切換動作に所定時間を要する。このため、機械式スイッチ6の主接点がA系電源1Aから切り離される開極時間までは、B系サイリスタスイッチ7bもオンしている。このためA系電源とB系電源が、電源切換装置3Aの内部では、2つの系統の電源1A,1Bがラップした状態となる。しかし、この場合のケースでは、A系フィーダー盤2A内のA系開閉器21aが開放しているため、実際にA系電源1Aの出力母線とB系電源1Bの出力母線がラップすることは無い。
【0044】
切換動作が進み、機械式スイッチ6の主接点がA系電源1Aから切り離され、B系電源1Bに接続されるまでの時間は、B系サイリスタスイッチ7bのみを介し、A系負荷4Aへの給電を継続している状態である。
【0045】
さらに切換動作が進み、機械式スイッチ6の主接点がB系電源1B側となると、A系負荷4Aは、機械式スイッチ6を介してB系電源1Bから給電される。これにより、A系電源切換装置3Aの電源切換動作は完了する。
【0046】
このようにして、A系電源切換装置3Aは、A系入力電源電圧の不足電圧によるA系電源1AからB系電源1Bへの自動電源切換を行う。同様に、B系電源1BからA系負荷4Aに給電している状態で、A系フィーダー盤2AのB系開閉器21bが開放した場合も、A系電源切換装置3Aは、B系切換指令出力回路30bから出力される切換指令SCbにより、B系電源1BからA系電源1AへのB系入力電源電圧の不足電圧による自動電源切換を行う。これにより、A系電源切換装置3Aは、A系電源1AとB系電源の相互の電源切換を無瞬断で行う。
【0047】
次に、A系電源切換装置3Aは、A系電源1AからA系負荷4Aに給電している状態であるとする。また、B系電源切換装置3Bは、B系電源1BからB系負荷4Bに給電している状態であるとする。この状態で、A系フィーダー盤2AのA系開閉器21aとA系電源切換装置3Aとの間で短絡事故が発生した場合を想定する。
【0048】
短絡事故は、短絡点で低インピーダンス回路となる。このことから、A系電源1Aは、短絡点に大きな事故電流を流す。また、短絡点では、電圧が喪失する。
【0049】
短絡点で電圧が喪失することにより、A系電圧検出器10aにより計測されるA系入力電源電圧は低下する。これにより、A系電源切換装置3AのA系切換指令出力回路30aの不足電圧検出器32は、不足電圧を検出する。従って、不足電圧検出器32は、Hレベルの信号をAND回路37に出力する。
【0050】
一方、A系電源1Aの電源入力側に設けられたA系コンデンサ8aは、短絡点が低インピーダンス回路になっていることから、充電していた電荷を短絡点に向かって放電する。これにより、A系コンデンサ8aから短絡点に向かって放電電流が流れる。この放電電流により、A系電流検出器9aは、電流信号SIaをA系切換指令出力回路30aの電流変換器33に出力する。
【0051】
比較器35は、電流変換器33により電流信号SIaから変換されたA系電流検出器9aの計測値が事故電流設定器34の設定値Is*を上回ると、Hレベルの信号をNOT回路36に出力する。比較器35から出力されたHレベルの信号は、NOT回路36により、Lレベルの信号に反転する。従って、AND回路37は、NOT回路36からの信号がLレベルの信号であるため、不足電圧検出器32からHレベルの信号が入力されても、Lレベルの信号を出力することになる。即ち、A系切換指令出力回路30aは、コンデンサ8aの放電電流が設定値Is*を上回ると、事故が発生したと判断して、切換指令SCaの出力を阻止するための信号を生成する。よって、A系切換指令出力回路30aは、切換指令SCaを出力しない。
【0052】
これにより、A系電源1Aを選択しているA系電源切換装置3Aは、A系入力電源電圧の不足電圧を検出しても、電源切換動作を行わない。従って、B系電源1Bを選択しているB系電源切換装置3Bは、B系負荷4Bに短絡事故の影響を与えることはない。
【0053】
同様に、A系電源切換装置3AがB系電源1Bを選択している場合も、B系入力電源電圧の不足電圧を検出しても、B系電源1Bの電源入力側の系統事故の発生を検出すると、B系切換指令出力回路30bによる切換指令SCbの出力は阻止される。従って、A系電源切換装置3Aは、電源切換動作を行わない。
【0054】
本実施形態によれば、電源切換装置3A,3Bの電源入力側に設けられたコンデンサ8a,8bの放電電流を計測することで、電源切換装置3A,3Bの電源入力側の短絡等の系統事故を検出することができる。このように系統事故の検出することにより、電源切換装置3A,3Bは、電源切換動作をロックすることで、事故が発生していないもう一方の系統に事故が波及することを防止することができる。
【0055】
また、1つの電源切換装置3A,3Bに対して、A系電源1A及びB系電源1Bのそれぞれの事故電流を検出するために、2つのコンデンサ8a,8b及び2つの電流検出器9a,9bを設けることで、A系又はB系のどちらか一方の系の事故電流が検出できなくなっても、もう片方の系の事故電流は検出することができる。
【0056】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る電源切換装置3A1,3B1の適用された電源系統の構成を示す構成図である。
【0057】
本実施形態に係る電力系統システムは、図1に示す第1の実施形態に係る電力系統システムにおいて、電源切換装置3A,3Bをそれぞれ電源切換装置3A1,3B1に代えたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0058】
電源切換装置3A1は、第1の実施形態に係る電源切換装置3Aにおいて、切換指令出力回路30a,30bをそれぞれ切換指令出力回路30a1,30b1に代え、2つのコンデンサ8a,8bを1つのコンデンサ8に代え、2つの電流検出器9a,9bを1つの電流検出器9に代えたものである。その他の点は、第1の実施形態に係る電源切換装置3Aと同様である。
【0059】
コンデンサ8は、切換回路5から出力された電力がA系負荷4Aに供給される出力回路に設けられている。コンデンサ8は、2つの端子のうち1つの端子のみが切換回路5の出力回路に接続されている。コンデンサ8は、A系電源1A又はB系電源1Bから入力される入力電源の短絡電流を検出するために設けられている。コンデンサ8は、切換回路5から出力される電力により充電される。即ち、コンデンサ8は、A系電源1A又はB系電源1Bから入力される電力により充電される。A系電源1A又はB系電源1Bから交流電力が電源入力側に短絡事故等が発生した場合、コンデンサ8は、機械式スイッチ6を介して、放電される。その他の点は、第1の実施形態に係るコンデンサ8a,8bと同様である。
【0060】
電流検出器9は、コンデンサ8の放電電流を計測する。電流検出器9は、計測した電流値を電流信号SIに変換して、2つの切換指令出力回路30a1,30b1に出力する。
【0061】
図4は、本実施形態に係る切換指令出力回路30a1,30b1の構成を示す構成図である。B系切換指令出力回路30b1は、A系切換指令出力回路30a1と同様に構成されているため、説明を省略する。
【0062】
A系切換指令出力回路30a1は、図2に示すA系切換指令出力回路30aにおいて、電流変換器33を電流変換器33−1に代えたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0063】
電流変換器33−1には、電流検出器9から入力されたコンデンサ8の放電電流を計測するための電流信号SIが入力される。電流変換器33−1は、入力された電流信号SIを計測値に変換して、比較器35に出力する。即ち、比較器35は、コンデンサ8の放電電流の計測値と事故電流設定器34から入力された設定値Is*とを比較することで、A系切換指令出力回路30aから出力される切換指令SCaを阻止するための信号を生成する。
【0064】
本実施形態によれば、電源切換装置3A1,3B1の出力側に設けられたコンデンサ8の放電電流を計測することで、電源切換装置3A1,3B1の電源入力側の短絡等の系統事故を検出することができる。これにより、電源切換装置3A1,3B1は、系統事故の検出により、電源切換動作をロックすることで、事故が発生していないもう一方の系統に事故が波及することを防止することができる。
【0065】
また、1つの電源切換装置3A1,3B1に対して、A系電源1A及びB系電源1Bの事故電流を共に検出するために、両系統に共通の1つのコンデンサ8及び1つの電流検出器9を設けている。このように、電源切換装置3A1,3B1は、第1の実施形態に係る電源切換装置3A,3Bよりも構成部品を少なくしても、第1の実施形態と同様に、A系及びB系の両電源系統の系統事故を検出することができる。
【0066】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態に係る電源切換装置3A2,3B2の適用された電源系統の構成を示す構成図である。
【0067】
本実施形態に係る電力系統システムは、図3に示す第2の実施形態に係る電力系統システムにおいて、電源切換装置3A1,3B1をそれぞれ電源切換装置3A2,3B2に代えたものである。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0068】
電源切換装置3A2は、第2の実施形態に係る電源切換装置3A1において、切換指令出力回路30a1,30b1をそれぞれ切換指令出力回路30a2,30b2に代え、電流検出器9を電流検出器9Uに代えたものである。その他の点は、第2の実施形態に係る電源切換装置3A1と同様である。
【0069】
電流検出器9Uは、コンデンサ8よりも切換回路5側に設けられている。電流検出器9Uは、コンデンサ8の放電電流を検出するために、電源切換装置3A2の出力電流を計測する。電源入力側に短絡事故等が発生した場合、この出力電流には、コンデンサ8の放電電流も含まれる。電流検出器9Uは、計測した電流値を電流信号SI2に変換して、2つの切換指令出力回路30a2,30b2に出力する。
【0070】
図6は、本実施形態に係る切換指令出力回路30a2,30b2の構成を示す構成図である。B系切換指令出力回路30b2は、A系切換指令出力回路30a2と同様に構成されているため、説明を省略する。
【0071】
A系切換指令出力回路30a2は、図4に示すA系切換指令出力回路30a1において、電流変換器33−1を電流変換器33−2に代え、事故電流設定器34−1を事故電流設定器34−2に代えたものである。その他の点は、第2の実施形態と同様である。
【0072】
電流変換器33−2には、電流検出器9Uから入力されたコンデンサ8の放電電流を計測するための電流信号SI2が入力される。電流変換器33−1は、入力された電流信号SI2を計測値に変換して、比較器35に出力する。即ち、比較器35は、A系負荷4Aに流れる負荷電流の計測値と事故電流設定器34−2から入力された設定値Is2*とを比較することで、A系切換指令出力回路30aから出力される切換指令SCaを阻止するための信号を生成する。
【0073】
事故電流設定器34−2は、第2の実施形態に係る設定値Is*よりも大きい設定値Is2*が設定されている。電流検出器9Uは、コンデンサ8の放電電流に加え、切換回路5の出力電流も検出しているからである。その他の点は、第1の実施形態に係る事故電流設定器34−1と同様である。
【0074】
本実施形態によれば、第2の実施形態に係る電流検出器9の代わりに電流検出器9Uを用いても、第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0075】
また、電流検出器9Uは、正常時では、A系負荷4Aの負荷電流を計測している。このため、電流検出器9Uは、電源切換装置3A2の負荷電流検出器として機能を共用させることができる。これにより、電源切換装置3A2は、別途で負荷電流検出器を設ける必要がない。
【0076】
なお、第3の実施形態に係るコンデンサ8は、第2の実施形態に係るコンデンサ8の容量よりも大きい容量にしてもよい。これにより、電源切換装置3A2は、事故の検出(コンデンサ8の放電電流の検出)の精度を高めることができる。
【0077】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1A…A系電源、1B…B系電源、2A…A系フィーダー盤、2B…B系フィーダー盤、3A…A系電源切換装置、3B…B系電源切換装置、4A…A系負荷、4B…B系負荷、5…切換回路、6…機械式スイッチ、7a…A系サイリスタスイッチ、7b…B系サイリスタスイッチ、8a…A系コンデンサ、8b…B系コンデンサ、9a…A系電流検出器、9b…B系電流検出器、10a…A系電圧検出器、10b…B系電圧検出器、21a…A系開閉器、21b…B系開閉器、30a…A系切換指令出力回路、30b…B系切換指令出力回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの交流電源のうちいずれか1つの交流電源から入力される電力を出力電力として選択する機械式選択手段と、
前記2つの交流電源から入力される電力をそれぞれ出力又は出力停止のいずれかに切換えるための2つの静止型スイッチと、
前記2つの交流電源から入力される電圧をそれぞれ検出するための2つの電圧検出手段と、
前記2つの電圧検出手段により検出されたそれぞれの電圧に基づいて、前記2つの交流電源から入力される電圧の不足電圧をそれぞれ検出するための2つの不足電圧検出手段と、
前記2つの不足電圧検出手段によりそれぞれ不足電圧が検出された場合、不足電圧が検出された前記交流電源から他方の前記交流電源に出力電力を切換えるために、前記機械式選択手段及び前記2つの静止型スイッチを制御する切換制御手段と、
前記2つの交流電源から入力される電力により充電される少なくとも1つのコンデンサと、
前記コンデンサから放電される電流を検出するための電流検出手段と、
前記電流検出手段により検出された電流に基づいて、前記2つの交流電源のいずれかの電源入力側に事故が発生したことを判断する事故発生判断手段と、
前記事故発生判断手段により事故が発生したと判断された場合、前記切換制御手段による切換えを阻止する切換阻止手段と
を備えたことを特徴とする電源切換装置。
【請求項2】
前記2つの交流電源は、第1の交流電源と第2の交流電源であり、
前記2つの電圧検出手段は、
前記第1の交流電源から入力される電圧を検出するための第1の電圧検出手段と、
前記第2の交流電源から入力される電圧を検出するための第2の電圧検出手段とを備え、
前記2つの不足電圧検出手段は、
前記第1の電圧検出手段により検出された電圧に基づいて、前記第1の交流電源から入力される電圧の不足電圧を検出するための第1の不足電圧検出手段と、
前記第2の電圧検出手段により検出された電圧に基づいて、前記第2の交流電源から入力される電圧の不足電圧を検出するための第2の不足電圧検出手段とを備え、
前記切換制御手段は、
前記第1の不足電圧検出手段により不足電圧が検出された場合、前記第1の交流電源から前記第2の交流電源に出力電力を切換えるために、前記機械式選択手段及び前記2つの静止型スイッチを制御する第1の切換制御手段と、
前記第2の不足電圧検出手段により不足電圧が検出された場合、前記第2の交流電源から前記第1の交流電源に出力電力を切換えるために、前記機械式選択手段及び前記2つの静止型スイッチを制御する第2の切換制御手段とを備え、
前記コンデンサは、
前記第1の交流電源から入力される電力により充電される第1のコンデンサと、
前記第2の交流電源から入力される電力により充電される第2のコンデンサとを備え、
前記電流検出手段は、
前記第1のコンデンサから放電される電流を検出するための第1の電流検出手段と、
前記第2のコンデンサから放電される電流を検出するための第2の電流検出手段とを備え、
前記事故発生判断手段は、
前記第1の電流検出手段により検出された電流に基づいて、前記第1の交流電源の電源入力側に事故が発生したことを判断する第1の事故発生判断手段と、
前記第2の電流検出手段により検出された電流に基づいて、前記第2の交流電源の電源入力側に事故が発生したことを判断する第2の事故発生判断手段と備え、
前記切換阻止手段は、
前記第1の事故発生判断手段により事故が発生したと判断された場合、前記第1の切換制御手段による切換えを阻止する第1の切換阻止手段と、
前記第2の事故発生判断手段により事故が発生したと判断された場合、前記第2の切換制御手段による切換えを阻止する第2の切換阻止手段とを備えたこと
を特徴とする請求項1に記載の電源切換装置。
【請求項3】
前記2つの交流電源は、第1の交流電源と第2の交流電源であり、
前記2つの電圧検出手段は、
前記第1の交流電源から入力される電圧を検出するための第1の電圧検出手段と、
前記第2の交流電源から入力される電圧を検出するための第2の電圧検出手段とを備え、
前記2つの不足電圧検出手段は、
前記第1の電圧検出手段により検出された電圧に基づいて、前記第1の交流電源から入力される電圧の不足電圧を検出するための第1の不足電圧検出手段と、
前記第2の電圧検出手段により検出された電圧に基づいて、前記第2の交流電源から入力される電圧の不足電圧を検出するための第2の不足電圧検出手段とを備え、
前記切換制御手段は、
前記第1の不足電圧検出手段により不足電圧が検出された場合、前記第1の交流電源から前記第2の交流電源に出力電力を切換えるために、前記機械式選択手段及び前記2つの静止型スイッチを制御する第1の切換制御手段と、
前記第2の不足電圧検出手段により不足電圧が検出された場合、前記第2の交流電源から前記第1の交流電源に出力電力を切換えるために、前記機械式選択手段及び前記2つの静止型スイッチを制御する第2の切換制御手段とを備え、
前記コンデンサは、前記第1の交流電源及び前記第2の交流電源から入力される電力により充電され、
前記事故発生判断手段は、
前記電流検出手段により検出された電流に基づいて、前記第1の交流電源の電源入力側に事故が発生したことを判断する第1の事故発生判断手段と、
前記電流検出手段により検出された電流に基づいて、前記第2の交流電源の電源入力側に事故が発生したことを判断する第2の事故発生判断手段と備え、
前記切換阻止手段は、
前記第1の事故発生判断手段により事故が発生したと判断された場合、前記第1の切換制御手段による切換えを阻止する第1の切換阻止手段と、
前記第2の事故発生判断手段により事故が発生したと判断された場合、前記第2の切換制御手段による切換えを阻止する第2の切換阻止手段とを備えたこと
を特徴とする請求項1に記載の電源切換装置。
【請求項4】
前記電流検出手段は、出力電流を検出すること
を特徴とする請求項3に記載の電源切換装置。
【請求項5】
2つの交流電源のうちいずれか1つの交流電源から入力される電力を出力電力として選択する機械式選択器及び前記2つの交流電源から入力される電力をそれぞれ出力又は出力停止のいずれかに切換えるための2つの静止型スイッチにより前記2つの交流電源を切換える電源切換装置の制御方法であって、
前記2つの交流電源から入力される電圧をそれぞれ検出し、
検出したそれぞれの電圧に基づいて、前記2つの交流電源から入力される電圧の不足電圧をそれぞれ検出し、
不足電圧を検出した場合、不足電圧が検出された前記交流電源から他方の前記交流電源に出力電力を切換えるために、前記機械式選択器及び前記2つの静止型スイッチを制御し、
前記2つの交流電源から入力される電力により充電される少なくとも1つのコンデンサから放電される電流を検出し、
検出した前記コンデンサから放電される電流に基づいて、前記2つの交流電源のいずれかの電源入力側に事故が発生したことを判断し、
事故が発生したと判断した場合、前記機械式選択器及び前記2つの静止型スイッチの出力電力を切換えるための制御をさせないこと
を含むことを特徴とする電源切換装置の制御方法。
【請求項6】
2つの交流電源と、
前記2つの交流電源のうちいずれか1つの交流電源から入力される電力を出力電力として選択する機械式選択手段と、
前記2つの交流電源と前記機械式選択手段との間にそれぞれ設けられた2つの開閉手段と、
前記2つの交流電源から前記2つの開閉手段を介して入力される電力をそれぞれ出力又は出力停止のいずれかに切換えるための2つの静止型スイッチと、
前記2つの交流電源から入力される電圧をそれぞれ検出するための2つの電圧検出手段と、
前記2つの電圧検出手段により検出されたそれぞれの電圧に基づいて、前記2つの交流電源から入力される電圧の不足電圧をそれぞれ検出するための2つの不足電圧検出手段と、
前記2つの不足電圧検出手段によりそれぞれ不足電圧が検出された場合、不足電圧が検出された前記交流電源から他方の前記交流電源に出力電力を切換えるために、前記機械式選択手段及び前記2つの静止型スイッチを制御する切換制御手段と、
前記2つの交流電源から入力される電力により充電される少なくとも1つのコンデンサと、
前記コンデンサから放電される電流を検出するための電流検出手段と、
前記電流検出手段により検出された電流に基づいて、前記2つの交流電源のいずれかの電源入力側に事故が発生したことを判断する事故発生判断手段と、
前記事故発生判断手段により事故が発生したと判断された場合、前記切換制御手段による切換えを阻止する切換阻止手段と
を備えたことを特徴とする電力系統システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−5208(P2012−5208A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136497(P2010−136497)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】