説明

電源制御方式

【課題】停止時の電圧制御が必要となる場合に停止する順番を制御する回路と、停止する時間(電圧降下時間)を制御する回路とを有する、複数の電源で構成される電子装置において、要求される停止時の電圧制御を行えるようにする。
【解決手段】開示される電源制御方式は、並列に設けられた複数の電源回路11a,11bの出力側に、各電源回路にそれぞれ接続された負荷回路12a,12bが持つ容量成分の電荷を放電させて負荷回路の電圧を降下させる放電回路14a,14bを設け、シーケンス制御回路13における停止時のシーケンスを制御するこによって、要求される停止時の電源回路出力電圧変動の制御を可能にしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停止時の電圧制御が必要となる場合に停止する順番を制御する回路と、停止する時間(電圧降下時間)を制御する回路とを有する、複数の電源で構成される電子装置において、要求される停止時の電圧制御を行うための電源制御回路および電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、起動時の突入電流を分散させるために、各部を逐次起動する方式があったが、近年においては、負荷側のデバイスの仕様から、例えばコア電圧とI/O電圧の起動シーケンスの要求が生じている。
また、シーケンスに加え、時間規定(例えばコア電圧起動後、数mS以内にI/O電圧を起動する等)が追加されており、さらに停止時のシーケンス要求(時間,電圧差)が近年増加しているが、停止時のシーケンス要求を満足させることは困難であった。
【0003】
図4は、従来の電源制御方式の回路構成を示すブロック図、図5は、従来の電源制御方式における要求シーケンスの電圧遷移を示す図、図6は、従来の電源制御方式による動作タイムチャートと電圧遷移とを示す図である。
以下、図4乃至図6に基づいて、従来の電源制御方式を説明する。
【0004】
異なる電圧を必要とする負荷回路42a,42bと、負荷回路42a,42bに電圧を供給する電源回路41a,41bと、電源回路41a,41bの起動/停止を制御する起動/停止制御回路431と、電源回路41a,41bの出力電圧を監視する電圧監視回路432と、起動/停止制御回路431と電圧監視回路432を含むシーケンス制御回路43とを有する電子回路において、起動時のシーケンスは、図5に示すように、シーケンス制御回路43により、規定のシーケンスによって順次、電源回路41a,電源回路41bが起動し、起動時の電圧上昇時間は、各電源回路41a,41bが制御していた。
【0005】
また、停止のシーケンスは、起動シーケンスと同様に、シーケンス制御回路43により、規定のシーケンスによって順次、電源回路41a,電源回路41bを停止していたが、負荷回路42a,負荷回路42bがそれぞれ有する容量成分に応じて、停止シーケンスにおいて、図6に示すように、電圧降下時間にばらつきがあり、そのため図5に示すように、電源回路41a,電源回路41b間で、停止シーケンス時の電圧が逆転する場合があった。
【0006】
また、装置不具合時に緊急停止が必要な場合、電源回路41a,電源回路41bを停止しても、負荷回路42a,負荷回路42bがそれぞれ有する容量成分に応じて図6に示すように、電圧降下時間が冗漫になり、電源出力を即時、断にすることができなかった。
一般に、起動シーケンスを制御する電源ICや制御ICは有していていても、異種電源IC間の制御や、停止時の電圧降下時間の制御はできない場合が多い。
【0007】
これに対して特許文献1においては、一次側駆動回路に、出力電圧に応じた制御パルス信号でPWM制御されるメインスイッチを備え、二次側出力回路に、整流スイッチ用MOSFETと、還流スイッチ用MOSFETと、還流スイッチ用MOSFETのゲートに接続されたダイオードと還流ゲートドライバ用スイッチ素子とを備えている。また、スイッチング電源装置は、動作停止時に還流スイッチ用MOSFETのゲート・ソース間容量の充電電荷を所定の時定数で放電する放電手段を備えていることによって、動作停止時に出力電圧のアンダーシュート現象の発生を防止できる、スイッチング電源装置が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、MOSFETのゲート・ソース間容量の充電電荷を抜くことは記載されているが、電源の出力ラインに接続されている装置の有する容量成分を放電させることについては記載されていない。
【0009】
また、特許文献2においては、複数の電源を決められたシーケンスで停止する制御装置であって、直前に停止する電源の出力電圧と所定の電圧(例えば0.6V)を比較器で比較し、直前に停止する電源の出力電圧がこの所定の電圧以下になると電源を停止するようにした。負荷に応じて最適な停止シーケンスが自動的に設定できるので、停止時間が短くなり、また負荷に応じてオフタイマーのタイマー時間を再設定する必要がなくなるので、負荷の状態や負荷の容量成分の値によって電源の立ち下がり時間が異なるため、正しいシーケンスで複数の電源を停止させるときに、負荷に応じてオフタイマーのタイマー時間を再設定し、また停止シーケンスを検証しなければならなかったという課題を解決する、電源制御装置が開示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、複数の電源をオン/オフするタイマを有することは記載されているが、電源の出力ラインに接続されている装置の有する容量成分を放電させることについては記載されていない。
【0011】
また、特許文献3においては、起動停止順序制御装置は、起動停止信号と比較信号とを入力信号とする論理和回路、電源装置、電源装置の出力電圧を検出して、検出信号を出力する電圧検出回路、基準電圧と検出信号とを比較して比較信号を出力する比較器からなる電源起動回路、および起動停止信号と比較信号とを入力信号とする論理積回路、電源装置、電源装置の出力電圧を検出して、検出信号を出力する電圧検出回路、基準電圧と検出信号とを比較して比較信号を出力する比較器からなる電源起動回路を含み、各負荷への電源供給をシーケンシャルにオンオフ制御する際、起動時間や停止時間の変動に確実に対処できるので、電源起動回路の起動停止順序を柔軟に制御できる起動停止順序制御装置を提供する、電源起動回路、起動停止順序制御装置、および起動停止順序制御方法が開示されている。
【0012】
しかしながら、特許文献3記載の技術では、複数の電源をオン/オフする制御回路を有することは記載されているが、電源の出力ラインに接続されている装置の有する容量成分を放電させる機能を備えることはは記載されていない。
【0013】
また、特許文献4においては、電源投入/切断設定によって一以上の接続装置を電源投入および電源切断させる電源制御装置が、電源投入設定から接続装置すべてが電源投入起動処理を完了するまでの投入過程時間を超える時間が設定されて電源投入設定によってタイマ計時を開始する投入過程タイマ回路と、電源切断設定から接続装置すべてが電源切断停止処理を完了するまでの切断過程時間を超える時間が設定されて電源切断設定によってタイマ計時を開始する切断過程タイマ回路と、投入過程タイマ回路でのタイマ計時中の電源切断設定を無効化する切断入力無効化回路と、切断過程タイマ回路でのタイマ計時中の電源投入設定を無効化する投入入力無効化回路とを有する、情報処理システムの電源投入/切断を制御する電源制御装置および電源制御方法に関し、電源投入/切断シーケンス途中に発生する不測の電源切断/投入条件を回避させる、電源制御装置および電源制御方法が開示されている。
【0014】
しかしながら、特許文献4記載の技術では、複数の電源をオン/オフするタイマを有することは記載されているが、電源の出力ラインに接続されている装置の有する容量成分を放電させる機能を備えることはは記載されていない。
【0015】
また、特許文献5においては、負荷の電源として大容量蓄電素子を内蔵した大容量蓄電素子内蔵機器の大容量蓄電素子と並列に強制放電手段を接続した。強制放電手段は、大容量蓄電素子が充電されたまま長時間放置されないように、大容量蓄電素子内の電荷を強制的に放電させる。大容量蓄電素子の充電は、充電装置からの充電電流によって行われるので、電源として用いる化学的な反応を伴わずに電荷の蓄積が可能で、かつ前記のように電荷の放電が可能な大容量蓄電素子の容量劣化が少ない大容量蓄電素子を提供する、大容量蓄電素子内蔵機器が開示されている。
【0016】
しかしながら、特許文献5記載の技術では、大容量蓄電素子を負荷側の電源として内蔵した機器における強制放電手段については記載されているが、複数の電源の起動/停止を制御する電源制御装置とは異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−136115号公報
【特許文献2】特開2003−248518号公報
【特許文献3】特開2005−253124号公報
【特許文献4】特開2007−244167号公報
【特許文献5】特開平09−215190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このように、停止時の電圧制御が必要となる場合に停止する順番を制御する回路と、停止する時間(電圧降下時間)を制御する回路とを有する、複数の電源で構成される電子装置における、従来の電源制御方式では、要求される停止時の電圧制御を行う際に、両電源回路間で電圧降下時間にばらつきがあり、停止シーケンス時の電圧が逆転したり、電圧降下時間が冗漫になって電源出力を即断することができなかったりすることがあるという問題があった。
【0019】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、負荷回路がそれぞれ放電回路を有し、停止時に放電回路が負荷の有する容量成分を強制的に放電することによって電圧降下を制御して、上記のような問題を起こさないようにする、電源制御方式を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような課題を解決するため、この発明の電源電圧制御回路は、並列に設けられた複数の電源回路の出力側に、前記各電源回路にそれぞれ接続された負荷回路が持つ容量成分の電荷を放電させて負荷回路の電圧を降下させる放電回路を設けて、各電源回路における停止時のシーケンスを制御するこによって、要求される停止時の電源回路出力電圧変動の制御を可能にしたことを特徴としている。
【0021】
また、この発明の電源電圧制御方法は、並列に設けられた複数の電源回路の出力側に、前記各電源回路にそれぞれ接続された負荷回路が持つ容量成分の電荷を放電させて負荷回路の電圧を降下させる放電回路を設けて、各電源回路における停止時のシーケンスを制御するこによって、要求される停止時の電源回路出力電圧変動の制御を可能にすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、両電源回路の停止シーケンスに合わせて、対応する両放電回路がそれぞれの電源回路の容量成分を放電し、規定時間内に出力電圧を降下させることによって、要求される電源降下のシーケンスを確保することが可能になる。
また、各放電回路の放電電流と放電時間を検出することによって、異常放電(例えば電源回路動作中に放電回路が起動したような場合)を判断して、緊急停止することが可能になる。
さらに、各放電回路内に放電時間の異なる複数の放電回路部を備えることによって、通常停止シーケンス時の停止時間と緊急停止時の停止時間を使い分けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の電源制御方式の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の電源制御方式における放電回路の実施形態を示す図である。
【図3】この発明の電源制御方式による起動/停止シーケンスのタイムチャートと電圧遷移の例を示す図である。
【図4】従来の電源制御方式の回路構成を示すブロック図である。
【図5】従来の電源制御方式における要求シーケンスの電圧遷移を示す図である。
【図6】従来の電源制御方式による動作タイムチャートと電圧遷移とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施形態】
【0024】
以下、図1乃至図3に基づいてこの発明の実施形態を説明する。
この発明の電源制御方式は、図1に示すように、異なる電圧を必要とする負荷回路12a,12bに対して、両負荷回路にそれぞれ電圧を供給する電源回路11a,11bと、両電源回路の起動/停止時間を制御する起動/停止制御回路131と、電圧監視回路132と放電制御回路133を有するシーケンス制御回路13と、各負荷回路12a,12bのそれぞれの容量成分の電荷を放電する放電回路14a,14baを備えている。
【0025】
さらに図2に示すように、放電回路14aは、放電回路143aと、放電電流検出回路141aと、放電時間検出回路142aを有している。
なお、図示省略されているが、放電回路14bも、同様の構成を有している。
【0026】
以下、図1乃至図3を参照して、本発明の電源制御方式の動作を説明する。
負荷回路12a,12bを有する電子機器装置において、両負荷回路間の起動/停止シーケンスには、以下に示す要求があるものとする。
(1) 起動時:負荷回路12aは、負荷回路12bよりも先に電圧が確定すること。
(2) 停止時:負荷回路12bは、負荷回路12aよりも先に電圧が降下し、負荷回路12bの電圧が負荷回路12aの電圧を下回ってから、負荷回路12aの電圧が降下すること。
負荷回路12bの電圧は、負荷回路12aの電圧が完全に降下するまで、負荷回路12aの電圧を上回らないこと。
【0027】
まず、電源回路11a,電源回路11bと、シーケンス制御回路13に電源が投入され、上位装置から起動信号18がアサートされると、シーケンス制御回路13が起動信号15aをアサートし、電源回路11aを起動させる。電源回路11aの出力電圧が規定値に達すると、電源回路11aは電圧監視信号16aをアサートする。
【0028】
シーケンス制御回路13は、電圧監視信号16aがアサートされると、起動信号15bをアサートし、順次、電源回路を起動させる。このとき、放電制御信号17a,放電制御信号17bはディアサートされており、放電回路14a,放電回路14bは停止している。
【0029】
電源回路11a,電源回路11bと、シーケンス制御回路13の電源電圧が規定値まで降下するか、上位装置から起動信号A18がディアサートされると、シーケンス制御回路13が起動信号15bをディアサートし、電源回路11bが停止して電源回路11bの出力電圧が降下する。
電源回路11bの出力電圧が降下して規定の電圧を下回ると、電源監視信号16bがディアサートされて、シーケンス制御回路13内の放電制御回路133は、放電制御信号17bをアサートする。
【0030】
放電制御信号17bのアサートによって、放電回路14bの有する放電回路113aが電源回路11bの容量成分の電荷を放電し、電源回路14bの電圧を規定時間内に降下させる。
引き続き、電源回路11aの電圧を同様の停止シーケンスによって降下させる。
【0031】
また、図2に示すように、放電回路14a内の放電回路143aが放電されている場合、放電電流検出回路141aと放電時間検出回路142aによって、規定値以上の放電電流または放電時間が検出された場合は、アラーム信号19aがシーケンス制御回路13に通知される。
放電回路14bも同様の機能を有している。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、複数の電源回路を持ち、停止時に規定のシーケンスに従うことが要求されるデバイスを有する電気機器装置において広く利用可能なものである。
【符号の説明】
【0033】
11a 電源回路A
11b 電源回路B
12a 負荷回路A
12b 負荷回路B
13 シーケンス制御回路
131 起動/停止制御回路
132 電圧監視回路
133 放電制御回路
14a 放電回路A
14b 放電回路B
15a 電圧監視信号
15b 電圧監視信号
16a 起動信号
16b 起動信号
17a 放電信号
17b 放電信号
18 起動信号A
19a アラーム信号
19b アラーム信号
141a 放電電流検出回路
142a 放電時間検出回路
143a 放電回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に設けられた複数の電源回路の出力側に、前記各電源回路にそれぞれ接続された負荷回路が持つ容量成分の電荷を放電させて負荷回路の電圧を降下させる放電回路を設けて、各電源回路における停止時のシーケンスを制御するこによって、要求される停止時の電源回路出力電圧変動の制御を可能にしたことを特徴とする電源制御回路。
【請求項2】
請求項1記載の電源制御回路において、各電源回路の起動停止を制御する起動停止制御回路と、各電源回路の出力電圧を監視する電圧監視回路と、各放電回路の放電動作を制御する放電制御回路とを有するシーケンス制御回路を設けたことを特徴とする電源制御回路。
【請求項3】
請求項1または2記載の電源制御回路において、前記各放電回路の放電電流を検出する放電電流検出回路と、該放電電流検出回路で検出された放電電流の放電時間を検出する放電検出回路とを設けたことを特徴とする電源制御回路。
【請求項4】
前記放電電流検出回路と前記放電時間検出回路とを、前記放電回路ごとに設けたことを特徴とする請求項3記載の電源制御回路。
【請求項5】
前記放電回路が、前記放電電流検出回路の検出結果または前記放電時間検出回路の検出結果に応じて放電動作の制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項4記載の電源制御回路。
【請求項6】
並列に設けられた複数の電源回路の出力側に、前記各電源回路にそれぞれ接続された負荷回路が持つ容量成分の電荷を放電させて負荷回路の電圧を降下させる放電回路を設けて、各電源回路における停止時のシーケンスを制御するこによって、要求される停止時の電源回路出力電圧変動の制御を可能にすることを特徴とする電源制御方法。
【請求項7】
請求項1記載の電源制御回路において、各電源回路の起動停止を制御する起動停止制御回路と、各電源回路の出力電圧を監視する電圧監視回路と、各放電回路の放電動作を制御する放電制御回路とを有するシーケンス制御回路を設けることを特徴とする電源制御方法。
【請求項8】
請求項1または2記載の電源制御回路において、前記各放電回路の放電電流を検出する放電電流検出回路と、該放電電流検出回路で検出された放電電流の放電時間を検出する放電検出回路とを設けることを特徴とする電源制御方法。
【請求項9】
前記放電電流検出回路と前記放電時間検出回路とを、前記放電回路ごとに設けることを特徴とする請求項3記載の電源制御方法。
【請求項10】
前記放電回路が、前記放電電流検出回路の検出結果または前記放電時間検出回路の検出結果に応じて放電動作の制御を行うことを特徴とする請求項9記載の電源制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−226863(P2010−226863A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71042(P2009−71042)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】