説明

電界効果型トランジスタおよびその製造方法

【課題】有機高分子化合物からなる基板上にCNTを含有する半導体層を有する電界効果型トランジスタにおいて、高移動度・高オンオフ比を達成すること。
【解決手段】有機高分子化合物からなる基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を有する電界効果型トランジスタであって、前記半導体層が表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブ複合体を含有する電界効果型トランジスタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機高分子化合物からなる基板上にカーボンナノチューブを含む半導体層を有する電界効果型トランジスタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動度が高く柔軟性に優れるカーボンナノチューブ(以下、CNTという)を半導体層として用いた電界効果型トランジスタ(以下、FETという)が注目を浴びている。CNTは凝集し易く、通常バンドル(CNT束)状で存在するが、分散剤の共存下で超音波照射等をすることにより、CNTを溶液中に均一分散できることがわかってきた。CNTが均一に分散したCNT分散液を利用することで、インクジェット技術やスクリーニング技術等により、基板上に直接回路パターンを形成することが可能になることから、低コストかつ移動度の高いFETを実現する有力技術として盛んに研究が進められている。
【0003】
一方、来るユビキタス情報社会の実現に向け、より身近で利用し易い電子機器の開発が進められている。中でも、フレキシブルディスプレイなどのフレキシブル電子機器は、軽くて、曲げられ、割れにくいという特徴から、次世代の電子機器として研究が活発になっている。フレキシブル電子機器用の基板としては、透明で軽く、柔軟性の高いポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)等の有機高分子化合物からなる基板が広く検討されているが、ガラス転移温度が低く、プロセス温度が制限されるため、使用できる材料が限られたり、高い性能が得られにくい等の課題がある。例えば、従来のシリコン半導体薄膜の作製には、300℃を超える高温プロセスが必要なため、有機高分子化合物からなるフレキシブル基板上に作製することは困難である。従って、フレキシブル基板上にFETを作製すべく、比較的低温のプロセスで高い性能(特に移動度)を示す半導体材料が切望されている。
【0004】
有機半導体は、柔軟かつ低温プロセスである塗布法で作製できることから、フレキシブルFET用の半導体材料として広く研究が進められている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、高移動度を示す塗布型有機半導体は少ない上に、高移動度を示す塗布型有機半導体には150℃以上の高温アニールを必要とするものが多い(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
また、フレキシブル基板上に半導体層を形成する別の方法として、CNTの均一分散液を用いる例が開示されている(例えば、非特許文献3参照)。しかしながら、分散剤として非共役の長鎖アルキル系分散剤を用いているため、高い移動度は得られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,2007年,Vol.90,P.053504
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,2002年,Vol.124,No.30,P.8812−8813
【非特許文献3】Nano Letters,2005年,Vol.5,No.4,P.757−760
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、有機高分子化合物からなる基板上に半導体層を有する電界効果型トランジスタにおいて、高移動度・高オンオフ比を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有機高分子化合物からなる基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を有する電界効果型トランジスタであって、前記半導体層が表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブ複合体を含有する電界効果型トランジスタである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高移動度・高オンオフ比を示すフレキシブルな電界効果型トランジスタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のFETの例を示す模式断面図
【図2】本発明のFETの別の例を示す模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のFETについて説明する。本発明のFETは、有機高分子化合物からなる基板上に半導体層が形成されているFETであり、該半導体層が表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したCNT複合体(以下、CNT複合体という)を含有することを特徴とする。柔軟性や加工性に優れる有機高分子化合物からなる基板を用いることで、フレキシブルディスプレイなどが可能になるが、一方でプロセス温度が制限されるため、高い移動度を得ることが難しかった。本発明は、有機高分子化合物からなる基板上にCNT複合体を含む半導体層を形成することにより、比較的低いプロセス温度で高い移動度とオンオフ比を可能にした。これは、CNTが極めて高い導電性を有し、塗布後の加熱処理による配向コントロール等を必要としないこと、およびCNTの表面に導電性を阻害しない共役系重合体を付着させることにより、基板上にCNTの均一分散を実現したことによるものである。
【0012】
図1および図2は、本発明のFETの例を示す模式断面図である。図1では、ゲート絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する有機高分子化合物からなる基板1上に、ソース電極5およびドレイン電極6が形成され、さらにその上にCNT複合体を含有する半導体層4が形成されている。図2では、ゲート絶縁層3で覆われたゲート電極2を有する有機高分子化合物からなる基板1上に、CNT複合体を含有する半導体層4が形成され、さらにその上にソース電極5およびドレイン電極6が形成されている。
【0013】
基板1に用いられる材料としては、有機高分子化合物であれば特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリパラキシレンまたはこれらいずれかの誘導体等が挙げられる。特に、透明性、柔軟性、加工性に優れるポリエステル、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミドまたはこれらいずれかの誘導体が好ましい。さらにコストの観点から、ポリエステルまたはその誘導体がより好ましい。基板の厚みには特に制限はなく、用途に応じて、必要な厚みを選択できる。また、透明性、平坦性、耐環境性など基板としての特性を高める目的で、基板表面に1層または複数層の有機および/または無機の薄膜を形成してもよい。
【0014】
ゲート電極2、ソース電極5およびドレイン電極6に用いられる材料としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)などの導電性金属酸化物、白金、金、銀、銅、鉄、錫、亜鉛、アルミニウム、インジウム、クロム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、パラジウム、モリブデン、アモルファスシリコンやポリシリコンなどの金属やこれらの合金、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体など、ヨウ素などのドーピングなどで導電率を向上させた導電性ポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。
【0015】
ゲート絶縁層3に用いられる材料としては、特に限定されないが、酸化シリコン、アルミナ等の無機材料、ポリイミドやその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンやその誘導体、ポリビニルフェノールやその誘導体等の有機高分子化合物、あるいは無機化合物粉末と有機高分子化合物の混合物や有機低分子化合物と有機高分子化合物の混合物を挙げることができる。なお、本発明における有機高分子化合物とは分子量3000を超える有機化合物を示し、有機低分子化合物とは分子量3000以下の有機化合物を示す。ゲート絶縁層3の膜厚は、好ましくは50nm〜3μm、より好ましくは100nm〜1μmである。ゲート絶縁層3は単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して形成しても構わない。
【0016】
本発明における半導体層4は、少なくともCNT複合体を含有する。導電性の高いCNT複合体を半導体層中に含むことにより、高移動度のFETが得られる。さらに、CNTの表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着していることにより、CNTを基板上により均一に分散させることができ、移動度をより向上させるとともに高いオンオフ比を実現できる。共役系重合体がCNTの表面の少なくとも一部に付着した状態とは、CNT表面の一部、あるいは全部を共役系重合体が被覆した状態を意味する。共役系重合体がCNTを被覆できるのはそれぞれの共役系構造に由来するπ電子雲が重なることによって相互作用が生じるためと推測される。CNTが共役系重合体で被覆されているか否かは、被覆されたCNTの反射色が被覆されていないCNTの色から共役系重合体の色に近づくことで判別できる。定量的には元素分析やX線光電子分光法(XPS)などによって付着物の存在とCNTに対する付着物の重量比を同定することができる。また、CNTに付着させる共役系重合体は、分子量、分子量分布や構造に関わらず用いることができる。
【0017】
共役系重合体をCNTに付着させる方法は、(I)溶融した共役系重合体中にCNTを添加して混合する方法、(II)共役系重合体を溶媒中に溶解させ、この中にCNTを添加して混合する方法、(III)CNTを溶媒中で予め超音波等で予備分散しておいた所に共役系重合体を添加し混合する方法、(IV)溶媒中に共役系重合体とCNTを入れ、この混合系に超音波を照射して混合する方法等が挙げられる。本発明では、複数の方法を組み合わせてもよい。
【0018】
本発明において、CNT複合体に用いられるCNTとしては、1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNTのいずれを用いてもよく、これらを2種以上用いてもよい。CNTは、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法等の方法により得ることができる。
【0019】
本発明において、CNTの長さは、ソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)よりも短いことが好ましい。CNTの平均長さは、チャネル長によるが、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。一般に市販されているCNTは長さに分布があり、チャネル長よりも長いCNTが含まれることがあるため、CNTをチャネル長よりも短くする工程を加えることが好ましい。例えば、硝酸、硫酸などによる酸処理、超音波処理、または凍結粉砕法などにより短繊維状にカットする方法が有効である。またフィルターによる分離を併用することは、純度を向上させる点でさらに好ましい。
【0020】
また、CNTの直径は特に限定されないが、1nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下である。
【0021】
本発明では、CNTを溶媒中に均一分散させ、分散液をフィルターによってろ過する工程を設けることが好ましい。フィルター孔径よりも小さいCNTを濾液から得ることで、チャネル長よりも短いCNTを効率よく得られる。この場合、フィルターとしてはメンブレンフィルターが好ましく用いられる。ろ過に用いるフィルターの孔径は、チャネル長よりも小さければよく、0.5〜10μmが好ましい。
【0022】
他にCNTを短小化する方法として、酸処理、凍結粉砕処理などが挙げられる。
【0023】
上記のCNTを被覆する共役系重合体としては、ポリチオフェン系重合体、ポリピロール系重合体、ポリアニリン系重合体、ポリアセチレン系重合体、ポリ−p−フェニレン系重合体、ポリ−p−フェニレンビニレン系重合体、チオフェンユニットとヘテロアリールユニットを繰り返し単位中に有するチオフェン−ヘテロアリーレン系重合体などが挙げられ、これらを2種以上用いてもよい。上記重合体は、単一のモノマーユニットが並んだもの、異なるモノマーユニットをブロック共重合したもの、ランダム共重合したもの、また、グラフト重合したものなどを用いることができるが、チオフェン骨格を繰り返し単位中に含むことが好ましい。中でも、CNTへの付着が容易であり、CNT複合体を形成しやすいポリチオフェン系重合体およびチオフェン−ヘテロアリーレン系重合体が特に好ましく使用される。
【0024】
ポリチオフェン系重合体としては、ポリ−チオフェン構造の骨格を持つ重合体に側鎖を有するものが好ましい。具体例としては、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリ−3−ブチルチオフェン、ポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリ−3−オクチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルチオフェンなどのポリ−3−アルキルチオフェン(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜12);ポリ−3−メトキシチオフェン、ポリ−3−エトキシチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシチオフェンなどのポリ−3−アルコキシチオフェン(アルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜12);ポリ−3−メトキシ−4−メチルチオフェン、ポリ−3−ドデシルオキシ−4−メチルチオフェンなどのポリ−3−アルコキシ−4−アルキルチオフェン(アルコキシ基およびアルキル基の炭素数は好ましくは1〜12);ポリ−3−チオヘキシルチオフェンやポリ−3−チオドデシルチオフェンなどのポリ−3−チオアルキルチオフェン(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜12)が挙げられ、1種もしくは2種以上を用いることができる。中でも、ポリ−3−アルキルチオフェンまたはポリ−3−アルコキシチオフェンが好ましい。前者としては特にポリ−3−ヘキシルチオフェンが好ましい。ポリチオフェン系重合体の好ましい分子量は、数平均分子量で800〜100000である。また、上記重合体は必ずしも高分子量である必要はなく、直鎖状共役系からなるオリゴマーであってもよい。
【0025】
チオフェン−ヘテロアリーレン系重合体としては、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン)−2,7−ジイル−alt−[4,7−ビス(3−デシロキシチエン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール]−5’,5’−ジイル}、ポリ{[4,7−ビス(4,4’−ジヘキシルビチオフェン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール]−5’,5’−ジイル}などのチオフェン−ベンゾチアジアゾール系重合体、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン)−2,7−ジイル−alt−[5,8−ジ−2−チエニル−2,3−ビス(3−オクチロキシフェニル)キノキサリン)]−5’,5’−ジイル}などのチオフェン−キノキサリン系重合体、ポリ{5,7−ジ−2−チエニル−2,3−ビス(3,5−ジ(2−エチルヘキシロキシ)フェニル)チエノ[2,4−b]ピラジン}などのチオフェン−チエノピラジン系重合体などが挙げられる。
【0026】
本発明で用いられる共役系重合体の不純物を除去する方法として、再沈殿法、ソクスレー抽出法、ろ過法、イオン交換法、キレート法等を用いることができる。中でも低分子量成分を除去する場合には再沈殿法やソクスレー抽出法が好ましく用いられ、金属成分の除去には再沈殿法やキレート法、イオン交換法が好ましく用いられる。これらの方法を2種以上組み合わせてもよい。
【0027】
また、半導体層4は、CNTの導電性を阻害しない限り、CNT複合体の他に有機半導体や絶縁性材料等を含んでもよい。有機半導体としては、特に限定されないが、具体的にはポリ−3−ヘキシルチオフェン、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリジアセチレン類、ポリカルバゾール類、ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含窒素芳香環を構成単位とするポリヘテロアリール類、アントラセン、ピレン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ルブレンなどの縮合多環芳香族化合物、フラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ピリジン、キノリン、フェナントロリン、オキサゾール、オキサジアゾールなどの含窒素芳香族化合物、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニルに代表される芳香族アミン誘導体、ビス(N−アリルカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類、銅ポルフィリンなどの金属ポルフィリン類、ジスチリルベンゼン誘導体、アミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミドなどの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、メロシアニン、フェノキサジン、ローダミンなどの有機色素などが例として挙げられる。
【0028】
また、絶縁性材料としては、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子材料が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0029】
半導体層4は単層でも複数層でもよく、CNT複合体を含有する複数の層を積層してもよいし、CNT複合体を含有する層と既知の有機半導体からなる層を積層してもよい。半導体層4の膜厚は1nm以上200nm以下が好ましく、5nm以上100nm以下が好ましい。この範囲の膜厚にすることにより、均一な薄膜形成が容易になり、さらにゲート電圧によって制御できないソース・ドレイン間電流を抑制し、FETのオンオフ比をより高くすることができる。膜厚は、原子間力顕微鏡やエリプソメトリ法などにより測定できる。
【0030】
本発明では、少なくともCNT複合体を含有する半導体層4に対してゲート絶縁層3と反対側に第2絶縁層を設けてもよい。ここで、半導体層に対してゲート絶縁層と反対側とは、例えば、半導体層の上側にゲート絶縁層を有する場合は半導体層の下側を指す。これにより、しきい値電圧およびヒステリシスを低減することができ、高性能なFETが得られる。第2絶縁層に用いられる材料としては特に限定されないが、具体的には酸化シリコン、アルミナ等の無機化合物、ポリイミドやその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサンやその誘導体、ポリビニルフェノールやその誘導体等などの有機高分子化合物、あるいは無機化合物粉末と有機高分子化合物の混合物や有機低分子化合物と有機高分子化合物の混合物を挙げることができる。これらの中でも、インクジェット等の塗布法で作製できる有機高分子化合物を用いることが好ましい。特に、ポリフルオロエチレン、ポリノルボルネン、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネートまたはこれらの誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、またはこれらを含む共重合体を用いると、しきい値電圧およびヒステリシス低減効果がより大きくなるため好ましく、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、またはこれらを含む共重合体が特に好ましい。
【0031】
第2絶縁層の膜厚は、一般的には50nm〜10μm、好ましくは100nm〜3μmである。第2絶縁層は単層でも複数層でもよい。また、1つの層を複数の絶縁性材料から形成してもよいし、複数の絶縁性材料を積層して形成しても構わない。
【0032】
本発明のFETの製造方法は、高分子からなる基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成する工程を有し、前記半導体層を形成する工程が、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブ複合体を含有する半導体溶液を塗布する工程と150℃以下の温度で加熱処理する工程を含む。
【0033】
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、メッキ、CVD、イオンプレーティングコーティング、インクジェットおよび印刷などが挙げられるが、導通を取ることができれば特に制限されない。また電極パターンの形成方法としては、上記方法で作製した電極薄膜を公知のフォトリソグラフィー法などで所望の形状にパターン形成してもよいし、あるいは電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターン形成してもよい。
【0034】
ゲート絶縁層の形成方法としては、特に限定されず、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から、塗布法を用いることが好ましい。塗布法として、具体的には、スピンコート法、ブレードコート法、スリットダイコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、鋳型法、印刷転写法、浸漬引き上げ法、インクジェット法、ドロップキャスト法などを好ましく用いることができ、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。また、第2絶縁層を有する場合、第2絶縁層も同様の方法で形成することができる。
【0035】
半導体層の形成方法としては、抵抗加熱蒸着、電子線ビーム、スパッタリング、CVDなど乾式の方法を用いることも可能であるが、製造コストや大面積への適合の観点から、CNT複合体を含有する半導体溶液を塗布し、150℃以下の温度で加熱処理する方法が好ましい。150℃以下の温度で加熱処理することにより、基板素材を多くの有機高分子化合物の中から選択することができるため、コスト、透明性、柔軟性など必要特性に応じた基板の選択が可能となる。
【0036】
塗布法としては、ゲート絶縁層の形成方法として例示したものを挙げることができ、塗膜厚み制御や配向制御など、得ようとする塗膜特性に応じて塗布方法を選択できる。本発明において、CNT複合体を含む半導体溶液の溶媒としては、テトラヒドロフランやトルエン、キシレン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,3−ジエチルベンゼン、1,4−ジエチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−イソプロピルベンゼン、1,4−ジプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、o−クロロトルエン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、安息香酸エチル、2,4,6−トリメチル安息香酸エチル、2−エトキシ安息香酸エチル、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジンなどが挙げられる。これらの溶媒を2種以上用いてもよい。また、形成した塗膜に対して、大気下、減圧下または不活性ガス雰囲気下(窒素やアルゴン雰囲気下)でアニーリング処理を行ってもよい。
【0037】
このようにして形成されたFETは、ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流をゲート電圧を変化させることによって制御することができる。FETの移動度μは、下記の(a)式を用いて算出することができる。
【0038】
μ=(δId/δVg)L・D/(W・ε・ε・Vsd) (a)
ただしIdはソース・ドレイン間の電流(A)、Vsdはソース・ドレイン間の電圧(V)、Vgはゲート電圧(V)、Dはゲート絶縁層の厚み(m)、Lはチャネル長(m)、Wはチャネル幅(m)、εはゲート絶縁層の比誘電率、εは真空の誘電率(8.85×10−12F/m)である。
【0039】
また、あるマイナスのゲート電圧におけるId(オン電流)の値と、あるプラスのゲート電圧におけるId(オフ電流)の値の比からオンオフ比を求めることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0041】
なお、平均分子量(数平均分子量、重量平均分子量)はGPC装置(クロロホルムを送液したTOSOH社製、高速GPC装置HLC−8220GPC)を用い、絶対検量線法によって算出した。重合度nは以下の式で算出した。
重合度n=[(重量平均分子量)/(モノマー1ユニットの分子量)] 。
【0042】
合成例1
共役系重合体[WP−BT1]を以下のように合成した。
【0043】
【化1】

【0044】
4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール2.0gと、ビス(ピナコラト)ジボロン4.3gを1,4−ジオキサン40mlに加え、窒素雰囲気下で酢酸カリウム4.0g、[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム1.0gを加え、80℃で8時間撹拌した。得られた溶液に水200mlと酢酸エチル200mlを加え、有機層を分取し、水400mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/酢酸エチル)で精製し、4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾールを1.3g得た。
【0045】
次に、2−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン18.3gをテトラヒドロフラン250mlに溶解し、−80℃に冷却した。n−ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液)45mlを加えた後、−50℃まで昇温し、再度−80℃に冷却した。2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン18.6mlを加え、室温まで昇温し、窒素雰囲気下で6時間撹拌した。得られた溶液に1N塩化アンモニウム水溶液200mlと酢酸エチル200mlを加え、有機層を分取し、水200mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン/ジクロロメタン)で精製し2−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3−ヘキシルチオフェン16.66gを得た。
【0046】
次に、上記2−ブロモ−3−ヘキシルチオフェン2.52gと、上記2−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3−ヘキシルチオフェン3.0gをジメチルホルムアミド100mlに加え、窒素雰囲気下でリン酸カリウム13g、[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム420mgを加え、90℃で5時間撹拌した。得られた溶液に水200mlとヘキサン100mlを加え、有機層を分取し、水400mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン)で精製し、3,3’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェンを2.71g得た。
【0047】
次に、上記3,3’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン2.71gをジメチルホルムアミド8mlに溶解し、N−ブロモスクシンイミド2.88gのジメチルホルムアミド(16ml)溶液を加え、5℃〜10℃で9時間撹拌した。得られた溶液に水150mlとヘキサン100mlを加え、有機層を分取し、水300mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン)で精製し、5,5’−ジブロモ−3,3’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェンを3.76g得た。
【0048】
次に、上記5,5‘−ジブロモ−3,3’−ジヘキシル−2,2’−ビチオフェン3.76gと、上記2−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3−ヘキシルチオフェン4.71gをジメチルホルムアミド70mlに加え、窒素雰囲気下でリン酸カリウム19.4g、[ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム310mgを加え、90℃で9時間撹拌した。得られた溶液に水500mlとヘキサン200mlを加え、有機層を分取し、水300mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン)で精製し、3,4’,3’’,3’’’−テトラヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェンを4.24g得た。
【0049】
次に、上記3,4’,3’’,3’’’−テトラヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェン520mgをクロロホルム20mlに溶解し、N−ブロモスクシンイミド280mgのジメチルホルムアミド(10ml)溶液を加え、5℃〜10℃で5時間撹拌した。得られた溶液に水150mlとジクロロメタン100mlを加え、有機層を分取し、水200mlで洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた溶液をカラムクロマトグラフィー(充填材:シリカゲル、溶離液:ヘキサン)で精製し、5,5’’’−ジブロモ−3,4’,3’’,3’’’−テトラヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェンを610mg得た。
【0050】
次に、上記4,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアジアゾール280mgと、上記5,5’’’−ジブロモ−3,4’,3’’,3’’’−テトラヘキシル−2,2’:5’,2’’:5’’,2’’’−クオーターチオフェン596mgをトルエン30mlに溶解した。ここに水10ml、炭酸カリウム1.99g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)83mg、Aliquat336 1滴を加え、窒素雰囲気下、100℃にて20時間撹拌した。得られた溶液にメタノール100mlを加え、生成した固体をろ取し、メタノール、水、アセトン、ヘキサンの順に洗浄した。得られた固体をクロロホルム200mlに溶解させ、シリカゲルショートカラム(溶離液:クロロホルム)を通した後に濃縮乾固した後、メタノール、アセトン、メタノールの順に洗浄し、共役系重合体[WP−BT1]を480mg得た。重量平均分子量は29398、数平均分子量は10916、重合度nは36.7であった。
【0051】
実施例1
(1)半導体溶液の作製
共役系重合体であるポリ−3−ヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製、レジオレギュラー、数平均分子量(Mn):13000、以下P3HTという)0.10gをクロロホルム5mlの入ったフラスコの中に加え、超音波洗浄機(井内盛栄堂(株)製US−2、出力120W)中で超音波撹拌することによりP3HTのクロロホルム溶液を得た。次いでこの溶液をスポイトにとり、メタノール20mlと0.1規定塩酸10mlの混合溶液の中に0.5mlずつ滴下して、再沈殿を行った。固体になったP3HTを0.1μm孔径のメンブレンフィルター(PTFE社製:4フッ化エチレン)によって濾別捕集し、メタノールでよくすすいだ後、真空乾燥により溶媒を除去した。さらにもう一度溶解と再沈殿を行い、90mgの再沈殿P3HTを得た。
【0052】
次に、CNT(CNI社製、単層CNT、純度95%、以下単層CNTという)1.5mgと、上記P3HT1.5mgを30mlのクロロホルム中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(東京理化器械(株)製VCX−500)を用いて出力250Wで30分間超音波撹拌した。超音波照射を30分間行った時点で一度照射を停止し、P3HTを1.5mg追加し、さらに1分間超音波照射することによって、CNT分散液A(溶媒に対するCNT複合体濃度0.05g/l)を得た。
【0053】
上記CNT分散液A中で、P3HTがCNTに付着しているかどうかを調べるため、分散液A5mlをメンブレンフィルターを用いてろ過を行い、フィルター上にCNTを捕集した。捕集したCNTを、溶媒が乾かないうちに素早くシリコンウエハー上に転写し、乾燥したCNTを得た。このCNTを、X線光電子分光法(XPS)を用いて元素分析したところP3HTに含まれる硫黄元素が検出された。従って、CNT分散液A中のCNTにはP3HTが付着していることが確認できた。
【0054】
次に、半導体層4を形成するための半導体溶液の作製を行った。上記CNT分散液Aをメンブレンフィルター(孔径10μm、直径25mm、ミリポア社製オムニポアメンブレン)を用いてろ過を行い、長さ10μm以上のCNT複合体を除去した。得られたろ液を半導体溶液Aとした。
【0055】
(2)ゲート絶縁層用ポリマー溶液の作製
メチルトリメトキシシラン61.29g(0.45モル)、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン12.31g(0.05モル)、およびフェニルトリメトキシシラン99.15g(0.5モル)をプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)203.36gに溶解し、これに、水54.90g、リン酸0.864gを撹拌しながら加えた。得られた溶液をバス温105℃で2.0時間加熱し、内温を90℃まで上げて、主として副生するメタノールからなる成分を留出せしめた。次いでバス温130℃で2.0時間加熱し、内温を118℃まで上げて、主として水とプロピレングリコールモノブチルエーテルからなる成分を留出せしめた後、室温まで冷却し、固形分濃度26.0重量%のポリマー溶液Aを得た。
【0056】
得られたポリマー溶液Aを50gはかり取り、プロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)16.6gを混合して、室温にて2時間撹拌し、ポリマー溶液B(固形分濃度19.5重量%)を得た。
【0057】
(3)FETの製造
図1に示すFETを作製した。ポリエチレンテレフタレート(PET)製の基板1(膜厚125μm)上に、抵抗加熱法により、マスクを通してクロムを5nmおよび金を50nm真空蒸着し、ゲート電極2を形成した。次に上記(2)に記載の方法で作製したポリマー溶液Bを上記ゲート電極が形成されたPET基板上にスピンコート塗布(2000rpm×30秒)し、窒素気流下150℃、2時間熱処理することによって、膜厚600nmのゲート絶縁層3を形成した。次に、抵抗加熱法により、マスクを通して金を膜厚50nmになるように真空蒸着し、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
【0058】
これら両電極の幅(チャネル幅)は0.1cm、両電極の間隔(チャネル長)は100μmとした。電極が形成された基板上に上記(1)に記載の方法で作製した半導体溶液Aを1μLドロップキャストし、半導体層4を得た。続いて、30℃で10分間風乾した後、ホットプレート上で窒素気流下、150℃、30分間の熱処理を行い、FETを得た。
【0059】
(4)FETの評価
次に、上記FETのゲート電圧(Vg)を変えたときのソース・ドレイン間電流(Id)−ソース・ドレイン間電圧(Vsd)特性を測定した。測定には半導体特性評価システム4200−SCS型(ケースレーインスツルメンツ株式会社製)を用い、大気中で測定した。Vg=+30〜−30Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、0.48cm/V・secであった。また、このときのIdの最大値と最小値の比からオンオフ比を求めたところ2.4×10であった。
【0060】
比較例1
半導体溶液作製時にP3HTを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。Vg=+30〜−30Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、0.015cm/V・secであった。また、このときのIdの最大値と最小値の比からオンオフ比を求めたところ1.3×10であった。
【0061】
比較例2
CNT(CNI社製、単層CNT、純度95%、以下単層CNTという)1.5mgと、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)1.5mgを30mlの水中に加え、氷冷しながら超音波ホモジナイザー(東京理化器械(株)製VCX−500)を用いて出力250Wで3時間超音波撹拌し、CNT分散液B(溶媒に対するCNT複合体濃度0.05g/l)を得た。得られたCNT分散液Bを遠心分離機(日立工機(株)製CT15E)を用いて、21000Gで30分間遠心分離し、上澄みの80%を取り出すことにより半導体溶液Bを得た。次に、半導体溶液Aの代わりに半導体溶液Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。Vg=+30〜−30Vに変化させたときのVsd=−5VにおけるIdの値の変化から線形領域の移動度を求めたところ、0.012cm/V・secであった。また、このときのIdの最大値と最小値の比からオンオフ比を求めたところ75であった。
【0062】
実施例2
基板としてポリエチレンナフタレート(PEN)(厚さ125μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。
【0063】
実施例3
基板としてポリエーテルスルフォン(PES)(厚さ100μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。
【0064】
実施例4
P3HTの代わりに合成例1で得られた[WP−BT1]を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。
【0065】
実施例5
半導体溶液Aをドロップキャストした後、ホットプレート上で窒素気流下、130℃、30分間の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてFETを作製し、特性を測定した。結果は表1に示した。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の電界効果型トランジスタは、スマートカード、セキュリティータグ、フラットパネルディスプレイ用のトランジスタアレイなどへ好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0068】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁層
4 半導体層
5 ソース電極
6 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機高分子化合物からなる基板、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を有する電界効果型トランジスタであって、前記半導体層が表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブ複合体を含有する電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
前記有機高分子化合物がポリエステル、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミドまたはこれらいずれかの誘導体を含有する請求項1記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
前記共役系重合体がチオフェン骨格を繰り返し単位中に含む請求項1または2記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
高分子からなる基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極およびドレイン電極をそれぞれ形成する工程を有する電界効果型トランジスタの製造方法であって、前記半導体層を形成する工程が、表面の少なくとも一部に共役系重合体が付着したカーボンナノチューブ複合体を含有する半導体溶液を塗布する工程と150℃以下の温度で加熱処理する工程を含む請求項1〜3のいずれか記載の電界効果型トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−119435(P2011−119435A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275267(P2009−275267)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】