説明

電界放出型冷陰極の製造方法

【課題】低電圧で均一な電子放出を可能とする電界放出型冷陰極の製造方法を提供する。
【解決手段】電極表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性を有する可撓性基板を、配向性カーボンナノチューブ膜の転写工程に用いることにより、電界放出型冷陰極を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(以下、CNT)を電子源として用いる電界放出型冷陰極の製造方法に関する。本技術は、例えばフィールド・エミッション・ディスプレイ(以下、FED)などの薄型面発光表示装置や液晶バックライトなどの特殊面光源などに応用できる。
【背景技術】
【0002】
CNTは、1991年に飯島澄男氏によって発見されたもので(非特許文献1参照)、一般的な形状は、直径0.5〜100nm、長さ1〜100μmであり、非常に細長い中空のチューブ状の炭素材料である。近年、CNTは電界電子放出型の電子源としての応用が期待されている。電界電子放出型の電子源が並んだ電極には負の電圧がかかり、熱を放出しないため、冷陰極と呼ばれる。特に、FEDなどの面発光表示装置の電子源としてCNTを用いる場合は、一本のCNTからでは電子放出量が不足なため、多数本が必要である。さらに、均等な面発光を得るためには、面積あたり均等な本数で高さの揃ったCNTに電界を集中させる必要がある。
【0003】
ここで、より低い電圧で効率良くCNTから電子を引き出すために、近接ゲート構造またはエミッターホール構造と呼ばれる構造を、冷陰極表面に形成する手段がある。これは絶縁層とゲート層で構成される二層構造が電極表面で部分的にホールが開いた状態で形成され、そのホールの凹部である電極表面にCNTが付着する構造を採る。ホールの形状は、その冷陰極が用いられるデバイスの種類にもよって異なるが、円形である場合と短冊状である場合が多い。円形である場合は径5〜100μmが多い。短冊状である場合は短い方の辺が5〜100μmが多く、長い方の辺は特に定まらない。
【0004】
この近接ゲート構造を有するCNTの冷陰極を製造する方法としては、まず電極表面にホールが開いた絶縁層とゲート層を形成させ、その後でホールの凹部である電極表面にCNTを付着させる方法が好ましい。その理由としては、先に電極表面にCNTを付着させてしまうと、その後の電極表面にホールが開いた絶縁層とゲート層を形成させる工程、すなわちスクリーン印刷法、焼成法、CVD法、レーザー照射法、フォトリソグラフィー法、サンドブラスト法、ノズルプリンティング法またはエッチング法といった操作によってCNTがダメージを受ける場合があるからである。
【0005】
先に電極表面にホールが開いた絶縁層とゲート層を形成させ、次にホールの凹部である電極表面に触媒を付着させCVDを行うことで、ホールの凹部にCNTを成長させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法で用いられる電極基板は、高温の炭素析出条件下に曝されるため、電極基板の材質が劣化する場合がある。
【0006】
また、先に電極表面にホールが開いた絶縁層とゲート層を形成させ、次にホールの凹部である電極表面にCNTを含むペーストを塗布し、さらに電極表面全体をエミッター表面処理体で覆って固形化し、該エミッター表面処理体を電極から剥離することでCNTを露出させるという方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
このような別途調製したCNTを溶剤やバインダーと混ぜて電極に付着させる方法は、電極とCNTとの密着力を強くし電気的にも良く導通させる。しかしながら、CNTのようなナノスケールの物質は他の流動性物質と混ぜようとしても凝集し易く、均一に混合させるのは難しい。CNTと他の流動性物質とが不均一に混ざったままの状態で電極に付着させると、電極上の各電子源に含まれるCNTの密度が一定でなく、また電子源の表面に凹凸が生じてしまうので、面発光表示装置としてはむらを生じてしまう。ここで、なるべく均一に混ざるように溶剤の比率を増やすという手段もあるが、電極に溶剤が残存すると、高真空中で電界電子放出を行う際の妨げとなるので、溶剤の使用は極力少なくすることが望ましい。
【0008】
さらに、特許文献2ではCNTを含むペーストを分割することでCNTを表面に露出させるという、偶然に頼った要素が含まれており、均一に発光する面光源の安定した工業生産には不向きである。
【0009】
バインダーを用いない方法としては、CNT懸濁液をフィルターに通すことでフィルター表面にCNT層を形成させ、該CNT層を電極に転写する方法がある(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、フィルター上のCNT集合体を直に電極であるテフロン(登録商標)シートに付着させているため、パターン形成には不向きである。また、電極とCNTとの密着力にも問題がある。
【0010】
上述の非特許文献2に類する転写法としては、電界電子放出型冷陰極の製造方法には触れていないが、基体上に配向性のあるCNT集合体を成長させ、該配向性CNT集合体を第二の基体に転写する方法も開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この方法も膜状のCNTを一括転写する方法であり、所定の位置に細かく分割して設置する方法は明示していない。
【0011】
配向性のあるCNTを形成させ、成長用支持部材を除いてCNT部分を電極板に移し替え、電子放出層の開口を行う方法も知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、配向性はあるが一本が孤立して立っているCNTの形状を維持するため、マトリックス材料に埋め込むという煩雑な作業を必要としている。
【0012】
ここで、電界電子放出型冷陰極用のCNTとしては、各々がより細い方が、より良い電界放出能を有することが知られている。また、CNT集合体としては、電極基板に対し垂直方向に配向していること、および密度がより低い、あるいはCNT集合体の面積がより小さい方が、より良い電界放出能を有することが知られている。本発明者らは、上記の如き現状に鑑み、高さ10μm以上、管径10nm以下のCNTからなる配向性CNT集合体の製造に成功しており(例えば、特許文献5参照)、該配向性CNTからの電子放出にも成功した(例えば、特許文献6参照)。
【0013】
配向性CNT集合体をμmオーダの微小な面積に位置選択的に成長させる方法としては、触媒金属をマスク法でパターニング配置する方法(例えば、特許文献7参照)、触媒金属をマスク法でパターニング蝕刻する方法(例えば、特許文献8参照)、触媒層をスパッタリングで形成しストライプ状にパターニングする方法(例えば、特許文献4参照)、がある。しかし、これらの方法で製造したCNTは管径が10nm以上と太めであり、電界放出能は必ずしも十分とは言えない。
【特許文献1】特開2001−236879号公報
【特許文献2】特開2003−7201号公報
【特許文献3】特表2003−500325号公報
【特許文献4】特開2005−116469号公報
【特許文献5】特開2002−338221号公報
【特許文献6】特開2004−281388号公報
【特許文献7】特表2002−530805号公報
【特許文献8】特表2003−500324号公報
【非特許文献1】S.Iijima, "Helical microtubules of graphite carbon", Nature, 354, p56-58 (1991)
【非特許文献2】W.A.de Heerら, "A Carbon Nanotube Field-Emission Electron Source", Science, 270, p1179-1180 (1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
電界電子放出型冷陰極を用いた面発光表示装置を作動させるには、なるべく低電圧で、かつ均一な強度の電子放出をさせる方が有利である。そのため電界電子放出型冷陰極に用いられる各CNTはなるべく管径の細いほうが望ましい。ただし、単層CNTは強度的に課題があるため、2層以上の多層CNTが望ましい。
【0015】
電界電子放出型冷陰極に用いられるCNT集合体としては、多数のCNTが電極に対して垂直方向に配向し、密度と高さが一定である配向性CNT集合体が好ましい。垂直配向していれば、多数本から成るCNT電子源の総和として垂直方向に最大の電子放出強度が得られる。また、密度と高さが一定であれば、平面方向に対して均一な電子放出が得られる。さらに、電界電子放出の場合、CNTの先端と引き出し電極であるゲート層との距離が近いほど電子を引き出す電圧を低くできるため、電子源の高さが一定であれば、電子源の表面近くにゲート層が設置してあっても距離の均一性を保つことが可能で、同じ電子放出強度を得るのに引き出し電圧を低くできる。
【0016】
従って、電界電子放出型冷陰極としては、陰極表面に絶縁層を介してゲート層が積層され、それら二層構造の部分的にホールが開いており、ホールの凹部である電極表面に、高さ、密度が一定で垂直配向したCNT集合体が直立しており、なおかつその集合体のCNTの各々は2層以上の多層で、できるだけ細いCNTであることが好ましい。
【0017】
また上記の電界電子放出型冷陰極の作製手順としては、CNTへの熱的、機械的、化学的ダメージを避けるためには、先にホールが開いた上記二層構造を形成させ、その後でホールの凹部である電極表面に上記CNT集合体を設置する方法が望ましい。
【0018】
ここで、配向性CNT集合体の表面全体から電子を引き出すには引き出し電極をアスペクト比1以上離す必要があると言われている。例えば直径1mmの面状に形成した配向性CNT膜全体から電子を引き出すためには、引き出し電極を1mm以上離して設置せねばならず、たとえ形成したCNTのしきい電界が1V/ミクロンという高性能なCNTであっても、1KV以上の電圧をかける必要がある。
【0019】
以上の考察から、高性能な電界電子放出型冷陰極を作製するには、上記二層構造にできるだけ狭い面積のホールを開け、その狭い面積のホールに上記CNT集合体を設置する方法を見出す必要がある。
【0020】
本発明は上記に鑑み、先に微小面積のホールが開いた絶縁層、ゲート層の二層構造を形成させ、該ホールの凹部である電極表面に、垂直配向性があり、高さと密度が一定であり、管径の細いCNTからなる、配向性CNT集合体を設置することにより、低電圧で均一な電子放出を可能とする、電界放出型冷陰極の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、電界放出型冷陰極の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、微小面積のホールが開いた電極表面の形状を記憶した接着性表面を有する可撓性基板を用いる方法を見出し本発明に到達した。すなわち、本発明は次の通りである。
(1) 電極基板表面に配向性カーボンナノチューブ膜をパターン状に形成する電界放出型冷陰極の製造方法であって、
(a)基礎基板表面上に配向性カーボンナノチューブ膜を作製する工程と、
(b)電極基板表面に絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層する工程と、
(c)前記工程(b)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する可撓性基板の表面の凸部と、前記工程(a)で作製された配向性カーボンナノチューブ膜の表面とを接着後、可撓性基板表面の凸部と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を可撓性基板側に転写する工程と、
(d)前記工程(b)で得られた電極基板の表面の凹部に導電性バインダーをパターン形成する工程と、
(e)可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面とパターン形成された導電性バインダーの表面とを接着後、導電性バインダーと接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を電極基板側に転写する工程とを含む、電界放出型冷陰極の製造方法。
(2) 電極基板表面に配向性カーボンナノチューブ膜をパターン状に形成する電界放出型冷陰極の製造方法であって、
(a)基礎基板表面上に配向性カーボンナノチューブ膜を作製する工程と、
(b)前記工程(a)で作製された配向性カーボンナノチューブ膜の表面を、可逆的接着性表面を有する第一の可撓性基板の表面に接着後、第一の可撓性基板表面と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を第一の可撓性基板側に転写する工程と、
(c)電極基板表面に絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層する工程と、
(d)前記工程(c)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する第二の可撓性基板の表面の凸部と、第一の可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面とを接着後、第二の可撓性基板表面の凸部と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して第一の可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を第二の可撓性基板側に転写する工程と、
(e)前記工程(c)で得られた電極基板の表面の凹部に導電性バインダーをパターン形成する工程と、
(f)第二の可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面と導電性バインダーの表面とを接着後、導電性バインダーと接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して第二の可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を電極基板側に転写する工程とを含む、電界放出型冷陰極の製造方法。
(3) 電極基板表面に配向性カーボンナノチューブ膜をパターン状に形成する電界放出型冷陰極の製造方法であって、
(a)基礎基板表面上に配向性カーボンナノチューブ膜を作製する工程と、
(b)電極基板表面に絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層する工程と、
(c)前記工程(b)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する可撓性基板の表面の凸部と、前記工程(a)で作製された配向性カーボンナノチューブ膜の表面とを接着後、可撓性基板表面の凸部と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を可撓性基板側に転写する工程と、
(d)可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面に導電性バインダーを付着させる工程と、
(e)配向性カーボンナノチューブ膜の表面に付着した導電性バインダーの表面と、電極基板の表面の凹部とを接着後、導電性バインダーおよび配向性カーボンナノチューブ膜を残して可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を電極基板側に転写する工程とを含む、電界放出型冷陰極の製造方法。
(4) 電極基板表面に配向性カーボンナノチューブ膜をパターン状に形成する電界放出型冷陰極の製造方法であって、
(a)基礎基板表面上に配向性カーボンナノチューブ膜を作製する工程と、
(b)前記工程(a)で作製された配向性カーボンナノチューブ膜の表面を、可逆的接着性表面を有する第一の可撓性基板の表面に接着後、第一の可撓性基板表面と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を第一の可撓性基板側に転写する工程と、
(c)電極基板表面に絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層する工程と、
(d)前記工程(c)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する第二の可撓性基板の表面の凸部と、第一の可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面とを接着後、第二の可撓性基板表面の凸部と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して第一の可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を第二の可撓性基板側に転写する工程と、
(e)第二の可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面に導電性バインダーを付着させる工程と、
(f)配向性カーボンナノチューブ膜の表面に付着した導電性バインダーの表面と、電極基板の表面の凹部とを接着後、導電性バインダーおよび配向性カーボンナノチューブ膜を残して第二の可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を電極基板側に転写する工程とを含む、電界放出型冷陰極の製造方法。
(5) 電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な可逆的接着性表面を有する可撓性基板が、絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層した電極基板の表面と、該可撓性基板の表面とを接触させ、該電極基板の表面の凹凸形状を反転して記憶させた後、剥離することによって得られるものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(6) 電極基板の表面の凹凸形状を反転して記憶させる過程で光照射または加熱を用いる、(5)記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(7) 可逆的接着性表面を有する可撓性基板の表面の材質が、ポリエポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂およびポリ塩化ビニルからなる群より選ばれた単独または複数の樹脂である、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(8) 電極基板表面に絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層する工程において、スクリーン印刷法、焼成法、CVD法、レーザー照射法、フォトリソグラフィー法、サンドブラスト法、ノズルプリンティング法およびエッチング法からなる群より選ばれた単独または複数の方法を用いる、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(9) 基礎基板表面上に配向性カーボンナノチューブ膜を作製する工程において、アルミニウムを被覆した支持基板に、遷移金属または遷移金属化合物を含む触媒を担持させてなる基礎基板の存在下、気体状の炭素化合物を分解することにより、該基礎基板表面上に基礎基板と垂直方向に配向したカーボンナノチューブ膜を成長させる、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(10) 支持基板にアルミニウムを被覆する方法が、真空蒸着法、電析法、スパッタリング法またはゾルゲル法である、(9)記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(11) アルミニウムを被覆した支持基板に、遷移金属または遷移金属化合物を含む触媒を担持する方法が、含浸法、浸漬法またはゾルゲル法である、(9)記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(12) 炭素化合物が、飽和炭化水素化合物、不飽和炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物および含酸素炭化水素化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物である、(9)記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(13) カーボンナノチューブの外径が1nm〜10nmの範囲である、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(14) 配向性カーボンナノチューブ膜の表面と可逆的接着性表面を有する可撓性基板の表面とを接着する方法が、配向性カーボンナノチューブ膜の表面と可撓性基板の可逆的接着性表面とを接触させて、乾燥、圧着、加熱または熱圧着を施すものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(15) 電極基板が、絶縁性の板の表面に予め導電性の回路を形成した板である、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(16) 配向性カーボンナノチューブ膜の表面と導電性バインダーの表面とを接着する方法が、配向性カーボンナノチューブ膜の表面と導電性バインダーの表面とを接触させて、乾燥、圧着、加熱または熱圧着を施すものである、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(17) 導電性バインダーが、導電性ペーストである、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(18) 導電性バインダーが、導電性銀ペースト、導電性金ペースト、導電性カーボンペーストまたは導電性銅ペーストである、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(19) 導電性バインダーが、インジウム、スズ、鉛、亜鉛、銅またはこれら金属の一種以上を含む合金である、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(20) 可逆的接着性表面を有する可撓性基板が、粘着剤を表面に塗布した樹脂シートである、(1)〜(4)のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
(21) (1)〜(20)のいずれかの方法によって得られる電界放出型冷陰極。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電界放出型冷陰極の製造方法によれば、先に微小面積のホールが開いた絶縁層、ゲート層の二層構造を形成し、該ホールの凹部である電極表面に、垂直配向性があり高さおよび密度が均一の配向性CNTの集合体を設置した電界放出型冷陰極を、大面積で容易に製造できる。本発明の方法により製造された陰極を用いて、低電圧で作動し、均一な輝度の面発光表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本実施形態における電界放出型冷陰極の製造法は、以下に示す四通りの方法(A、B、CまたはD法)がある。
A法は図1に示すように、(a)基礎基板表面上に配向性CNT膜を作製する工程と、(b)電極基板表面に絶縁層、ゲート層を逐次パターン状に積層する工程と、(c)前記工程(b)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する可撓性基板の表面の凸部と、前記工程(a)で作製された配向性CNT膜の表面とを接着後、可撓性基板表面の凸部と接着した配向性CNT膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性CNT膜を可撓性基板側に転写する工程と、(d)前記工程(b)で得られた電極基板の表面の凹部に導電性バインダーをパターン形成する工程と、(e)可撓性基板に転写された配向性CNT膜の表面とパターン形成された導電性バインダーの表面とを接着後、導電性バインダーと接着した配向性CNT膜を残して可撓性基板を剥離することにより、配向性CNT膜を電極基板側に転写する工程とを含む方法である。
【0024】
A法の工程(a)で作製する配向性CNT膜としては、電界放出型電子源として用いるため、高さおよび密度が一定であることが好ましい。また、各々のCNTはなるべく管径の細いほうが望ましい。ただし、単層CNTは強度的に課題があるため、2層以上の多層CNTが望ましい。さらに、基礎基板表面上にある配向性CNT膜としては、工程(c)で基礎基板から剥離する操作を行うため、基礎基板と該基礎基板表面上のCNTの密着力が弱い方が好ましい。
【0025】
上記条件を満たす配向性CNT膜として、例えば、本発明者らが特開2002−338221号公報や特開2004−002182号公報で開示した配向性CNT膜が挙げられる。該CNT膜は特開2002−338221号公報に記載されているように、アルミニウムを蒸着した支持基板上に、CNT生成触媒を担持してCNT成長用の基礎基板を作製し、該基板上で炭素化合物を分解することにより製造できる。また、該CNT膜は特開2004−002182号公報に記載されているように、0.1〜50nmの細孔を有するゾルゲル法多孔質担体を作製した支持基板に、CNT生成触媒を担持してCNT成長用の基礎基板を作製し、該基板上で炭素化合物を分解することにより製造できる。
【0026】
ここで用いられるCNT生成触媒としては、CNTを形成する触媒であればいずれでも良く、遷移金属または遷移金属化合物を含む触媒が用いられる。例えば、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデンまたはこれらの化合物を含む触媒が用いられる。これらの触媒は単独または混合物として用いることができる。
【0027】
触媒の担持法としては、担体に触媒を担持させる方法であればいずれでも良く、含浸法、浸漬法、ゾルゲル法等が挙げられる。また、触媒を担持後に、該CNT成長用基板を加熱する場合もある。
【0028】
該CNT成長用基板を用いて炭素化合物を分解することにより、該基板上に配向性CNT膜が生成する。使用される炭素化合物は、適当な触媒の存在下で、CNTを生じさせるものなら何でも良く、例えば、メタン、エタン、プロパンなどの飽和炭化水素化合物、エチレン、プロピレン、アセチレンなどの不飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、メタノール、エタノール、アセトンなどの含酸素炭化水素化合物などが挙げられ、好ましくは、メタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、メタノール、エタノール、プロパノールである。
【0029】
該炭素化合物の導入形態としては、ガス状のまま導入しても良いし、アルゴンのような不活性ガスと混合して導入しても良いし、または不活性ガス中の飽和蒸気として導入しても良い。また、ナノチューブに組み込まれるホウ素、窒素などのヘテロ元素を含む化合物を混ぜることで、ヘテロ元素含有ナノチューブとすることも可能である。
【0030】
該炭素化合物の分解反応としては、熱分解が最も一般的で、好ましい反応温度は400〜1100℃、より好ましくは500〜900℃である。好ましい反応圧力は1kPa〜1MPa、より好ましくは0.01〜0.12MPaである。
【0031】
本実施形態において、触媒粒子は、CNTの生成後には各CNTの先端部分すなわち配向性CNT膜の先端側に内包されていることが多い。本発明の製造方法によると、高さ1〜100μmの配向性CNT膜を基礎基板上に一様に生成させることができる。この時、個々のCNTの外径は1nm〜10nmの範囲で製造できる。また、該基礎基板と基礎基板上の該CNT膜は物理的に接触しているのみであり、基礎基板と該基板上のCNT膜の密着力は弱い。
【0032】
A法における工程(b)、すなわち電極基板表面に絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層する工程においては、通常のパターン状の積層方法、すなわちスクリーン印刷法、焼成法、CVD法、レーザー照射法、フォトリソグラフィー法、サンドブラスト法、ノズルプリンティング法またはエッチング法などの方法、あるいはこれらの方法を組み合わせた方法を用いる。
【0033】
絶縁層を形成する材料としては、絶縁物から成り真空中でガスを発生させないものが好ましく、真空封止時の温度(約500℃程度)でもその形状を保持できるものが良い。一般的にはケイ素を主成分とするガラス質ゾルと溶剤等からなるペーストをパターン状にスクリーン印刷し、焼成によって溶剤等の有機成分を除いて固める手法がコスト的に有利である。また、近年開発された、感光性有機ケイ酸膜も絶縁層としての機能を満たしており使用することができる。
【0034】
ゲート層を形成する材料としては、導電物からなり真空中でガスを発生させないものが好ましく、真空封止時の温度(約500℃程度)でもその形状を保持できるものが良い。一般的には、金属微粒子と溶剤等からなるペーストを、絶縁層のパターンに上塗りする形でスクリーン印刷し、焼成によって溶剤等の有機成分を除いて固める手法がコスト的に有利である。
【0035】
この工程で形成されるパターン状とは、絶縁層とゲート層で構成される二層構造が電極表面で部分的にホールが開いた状態のことを指す。ホールの形状は、最終的に得られる冷陰極の用途によって異なるが、円形である場合と短冊状である場合が多い。円形である場合は直径5〜100μmが多い。短冊状である場合は短い方の辺が5〜100μmが多く、長い方の辺は特に定まらない。
【0036】
A法における工程(c)の接着、転写工程で用いられる可逆的接着性表面を有する可撓性基板とは、対象物をその表面に接着または剥離が可能な可撓性基板で、その表面部分が電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な形状を有している基板を意味する。構成に関しては、接着成分が支持基板表面に全面的またはパターンに合わせて部分的に塗布してある場合と、基板そのものが接着性を有する材質である場合とがある。機能に関しては、通常の環境下では接着性の機能がない基板でも、湿潤雰囲気や高温など特殊な環境下で機能を発現する基板も使用できる。逆に通常の環境下では機能がある基板でも、光照射や加熱など特殊な操作で機能を失う基板も使用できる。また、このような機能の可逆的発現は段階的に制御することもできる。
【0037】
可撓性基板表面が電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能とは、該可撓性基板と該電極基板とを垂直方向から近づけた場合に、互いの凸部どうしが接触せずに近づけることができる形状を言う。最も明快な形状としては図2に示すように、凹凸形状が互いに反転しているものがある。その他、後の工程(e)では転写する配向性CNT膜が該電極基板表面の導電性バインダーに接触すればよいので、図3に示すように該可撓性基板表面の凸部が該電極基板表面の凸部よりも低くても構わない。また、後の工程(e)で該電極基板表面の凹部の一部分に配向性CNT膜を付着させる方法としては、図4のように該可撓性基板表面の凸部が該電極基板表面の凹部よりも狭いもの、図5のように該可撓性基板表面の凸部が分割してあるものも使用可能である。
【0038】
図2に示すような、電極基板表面の凹凸形状が反転した形状を有する可撓性基板を作製する上で、できるだけ精度良く、かつ広い面積でも簡便に作製する方法として、表面形状が記憶可能な可逆的接着性表面を有する可撓性基板を用いる方法がある。表面形状が記憶可能とは、密着させた相方の表面形状の凸の部分が凹となり、凹の部分が凸となって、形状が反転して記憶されることを言う。この記憶の過程で、光照射や加熱などを必要とする場合もある。
【0039】
特にここで用いられる可撓性基板の表面の材質としては、ポリエポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等に例示される光硬化型樹脂、あるいはエポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル等に例示される熱硬化型樹脂が好ましい。支持基板が用いられている場合の材質としては、柔らかな樹脂シートや多少曲げることのできるガラス板など、材質には特にこだわらない。
【0040】
ここで表面形状が記憶可能な可逆的接着性表面を有する可撓性基板を用いて工程(b)で得られた電極基板表面の形状を記憶する場合は、図6に示すように、該可撓性基板表面と電極基板表面とを接触させ、該可撓性基板の表面に該電極基板表面の形状を記憶させた後、剥離する。絶縁層とゲート層からなる二層構造によって電極基板表面に形成されたホールに、可撓性基板表面部分が良く侵入するように、ある程度押圧するのが一般的である。また、形状を記憶する過程においては、可撓性基板表面の材質に応じて、光照射または加熱操作を行う場合もある。この一連の操作によって、可撓性基板表面にはホールが開いた電極表面が凸となり、ゲート層表面が凹となって、電極表面の凹凸形状が反転して記憶される。
【0041】
A法における工程(c)においては、前記工程(a)で作製した配向性CNT膜を、可撓性基板表面の凸部に貼り付ける。貼り付ける方法としては、配向性CNT膜の膜面と可撓性基板表面の凸部とを接触させて、乾燥、圧着、加熱または熱圧着を施して接触面を接着させた後、配向性CNT膜を剥がすことで行う。配向性CNT膜は物理的に基礎基板に乗っているだけなので膜面が可撓性基板表面の凸部と接着した部分は簡単に剥離することができる。一方、膜面が可撓性基板表面の凸部と接着しなかった部分は剥離せずに残るので、該可撓性基板表面の凸部の部分だけに配向性CNT膜を貼り付けることができる。
【0042】
A法における工程(d)、すなわち電極基板の表面の凹部に導電性バインダーをパターン形成する工程では、絶縁層とゲート層とで構成された二層構造によって形成されるホールの電極表面に、導電性バインダーを付着させる。導電性バインダーのパターンとしては、ホールの電極表面に付着していれば良く、ホールの形に添ったパターンでも良いし、ホールの外周部または中央部が抜けたパターンでも良い。
【0043】
導電性バインダーとしては、導電性ペーストまたは低融点金属が良く用いられる。導電性バインダーが導電性ペーストである場合は、導電性銀ペースト、導電性金ペースト、導電性カーボンペースト、導電性銅ペーストなどが好ましい。これら導電性ペーストのパターン形成方法としては、インクジェット法などのノズルプリンティング方法が一般的には用いられる。導電性バインダーが低融点金属である場合は、インジウム、スズ、鉛、亜鉛、銅またはこれら金属の一種以上を含む合金を用いることが好ましい。
【0044】
ここで、本発明において製造される電界放出型冷陰極をFEDなどのような画像表示装置の電子源として使用する場合、電極基板としては絶縁性の板の表面に予め導電性の回路を形成させた板を用いることが好ましい。絶縁性の板としては大面積でも安価なガラスが好ましい。これに対し配向性CNT膜を電極基板にパターン形成させた後で、電極基板に導電性の回路を形成する方法は非常に煩雑である。
【0045】
A法における最後の工程(e)では、工程(c)の接着、転写工程で可撓性基板表面の凸部に転写した配向性CNT膜の表面と、工程(d)で電極基板の表面の凹部にパターン形成した導電性バインダーの表面とを接着させ、可撓性基板を剥離する。具体的には、配向性CNT膜の表面と導電性バインダーの表面とを接触させて、乾燥、圧着、加熱または熱圧着を施して接触面を接着させた後、可撓性基板表面の凸部から配向性CNT膜を剥がす。
【0046】
剥がす操作においては、配向性CNT膜と導電性バインダーとの間の接着力が、配向性CNT膜と可撓性基板表面の凸部との接着力を上回れば良い。通常、工程(e)の前半の接着操作により上回らせることは容易に可能であるが、上述した可撓性基板表面の接着力を下げる操作も付加することで、より確実に転写を完了できる。
【0047】
上記A法で得られる電界放出型冷陰極に転写された配向性CNT膜の電子放出面は、工程(a)において得られた配向性CNT膜の膜面側である。しかしながら工程(a)の操作次第では得られた配向性CNT膜の膜面側と基礎基板側との電子放出性能が異なる場合がある。上記A法と同様な製造方法であるが、基礎基板側を電子放出面に用いた方が有利な場合は、可撓性基板を二種類導入した以下のB法を用いる。
【0048】
本実施形態における電界放出型冷陰極の製造方法のうち、B法は図7に示すように、(a)基礎基板表面上に配向性CNT膜を作製する工程と、(b)前記工程(a)で作製された配向性CNT膜の表面を、可逆的接着性表面を有する第一の可撓性基板の表面に接着後、第一の可撓性基板表面と接着した配向性CNT膜を残して基礎基板を剥離することにより配向性CNT膜を第一の可撓性基板側に転写する工程と、(c)電極基板表面に絶縁層、ゲート層を逐次パターン状に積層する工程と、(d)前記工程(c)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する第二の可撓性基板の表面の凸部と、配向性CNT膜の表面とを接着後、可撓性基板表面の凸部と接着した配向性CNT膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性CNT膜を第二の可撓性基板側に転写する工程と、(e)前記工程(c)で得られた電極基板の表面の凹部に導電性バインダーをパターン形成する工程と、(f)第二の可撓性基板に転写された配向性CNT膜の表面と導電性バインダーの表面とを接着後、導電性バインダーと接着した配向性CNT膜を残して第二の可撓性基板を剥離することにより、配向性CNT膜を電極基板側に転写する工程とを含む方法である。
【0049】
B法における工程(a)は、A法における工程(a)と同様である。B法における工程(b)の転写工程において用いられる可逆的接着性表面を有する第一の可撓性基板は、A法で用いる可逆的接着性表面を有する可撓性基板と同様な基板であるが、凹凸形状の表面を必要としない点では異なる。但し、第一の可撓性基板を構成する材質としてはA法で述べた可撓性基板を構成する材質を使うことが好ましい。
【0050】
B法における工程(c)はA法における工程(b)と同様である。
【0051】
B法における工程(d)で用いられる第二の可逆的接着性表面を有する可撓性基板は、A法において用いられる可逆的接着性表面を有する可撓性基板と同様でありここでは説明を省略する。
【0052】
以下、B法における工程(e)および(f)は、A法における工程(d)および(e)とそれぞれ同様である。
【0053】
本実施形態における電界放出型冷陰極の製造方法のうち、C法は図8に示すように、(a)基礎基板表面上に配向性CNT膜を作製する工程と、(b)電極基板表面に絶縁層、ゲート層を逐次パターン状に積層する工程と、(c)前記工程(b)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する可撓性基板の表面の凸部と、配向性CNT膜の表面とを接着後、可撓性基板表面の凸部と接着した配向性CNT膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性CNT膜を可撓性基板側に転写する工程と、(d)可撓性基板に転写された配向性CNT膜の表面に導電性バインダーを付着させる工程と、(e)配向性CNT膜の表面に付着した導電性バインダーの表面と、電極基板の表面の凹部とを接着後、導電性バインダーおよび配向性CNT膜を残して可撓性基板を剥離することにより、配向性CNT膜を電極基板側に転写する工程とを含む方法である。
【0054】
C法における工程(a)〜(c)は、A法における工程(a)〜(c)とそれぞれ同様なのでここでは説明を省略する。
【0055】
C法における工程(d)で用いられる導電性バインダーは、A法における工程(d)で用いられる導電性バインダーと同様である。付着方法としては特に制限はないが、別途基板上に導電性バインダーの薄膜を形成し、そこに工程(c)で得られた可撓性基板表面の凸部上の配向性CNT膜を接触させ、乾燥、圧着、加熱または熱圧着を施すことにより接触面を接着させる方法が一般的である。すなわち工程(d)後には、可撓性基板表面の凸部上には配向性CNT膜、導電性バインダーの順に積層されている。
【0056】
C法における工程(e)で、前半の接着には特に制限はないが、一般的には両者を接触させ、乾燥、圧着、加熱または熱圧着を施す。後半の転写は、電極基板と導電性バインダーとの間の接着力が、配向性CNT膜と可撓性基板表面の凸部との接着力を上回れば良い。通常、前半の接着操作により上回らせることは容易に可能であるが、上述した可撓性基板表面の接着力を下げる操作も付加することで、より確実に転写を完了できる。
【0057】
上記C法で得られる電界放出型冷陰極に転写された配向性CNT膜の電子放出面は、工程(a)において得られた配向性CNT膜の膜面側である。しかしながら工程(a)の操作次第では得られた配向性CNT膜の膜面側と基礎基板側との電子放出性能が異なる場合がある。上記C法と同様な製造方法であるが、基礎基板側を電子放出面に用いた方が有利な場合は、可撓性基板を二種類導入した以下のD法を用いる。
【0058】
本実施形態における電界放出型冷陰極の製造方法のうち、D法は、図9に示すように、(a)基礎基板表面上に配向性CNT膜を作製する工程と、(b)前記工程(a)で作製された配向性CNT膜の表面を、可逆的接着性表面を有する第一の可撓性基板の表面に接着後、第一の可撓性基板表面と接着した配向性CNT膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性CNT膜を第一の可撓性基板側に転写する工程と、(c)電極基板表面に絶縁層、ゲート層を逐次パターン状に積層する工程と、(d)前記工程(c)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する第二の可撓性基板の表面の凸部と、第一の可撓性基板に転写された配向性CNT膜の表面とを接着後、第二の可撓性基板表面の凸部と接着した配向性CNT膜を残して第一の可撓性基板を剥離することにより、配向性CNT膜を第二の可撓性基板側に転写する工程と、(e)第二の可撓性基板に転写された配向性CNT膜の表面に導電性バインダーを付着させる工程と、(f)配向性CNT膜の表面に付着した導電性バインダーの表面と、電極基板の表面の凹部とを接着後、導電性バインダーおよび配向性CNT膜を残して第二の可撓性基板を剥離することにより、配向性CNT膜を転写する工程とを含む方法である。
【0059】
D法における工程(a)〜(d)は、B法における工程(a)〜(d)とそれぞれ同様であり、D法における工程(e)と(f)は、C法における工程(d)と(e)とそれぞれ同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0060】
以上、本発明の電界放出型冷陰極の製造方法によれば、先に微小面積のホールが開いた絶縁層とゲート層とからなる二層構造を電極基板上に形成し、該ホールの凹部である電極表面に、垂直配向性があり高さおよび密度が均一の配向性CNTの集合体を設置した電界放出型冷陰極を提供できる。本発明の方法により製造された陰極を用いて、低電圧で作動し、大面積で均一な輝度の面発光表示装置を得ることができる。
【実施例】
【0061】
実施例1(B法)
(a)基礎基板表面上に配向性CNT膜を作製する工程:
シリカ25%、アルミナ75%の組成で、厚さ2mm、一辺30mmの角型シリカアルミナ板を支持基板として選び、真空蒸着法にてアルミニウムの蒸着により被覆した。この際のアルミニウム薄膜の厚さは0.5μmであった。次いで、濃度0.2mol/lの硝酸コバルト水溶液に2時間浸漬した。基板を引き上げた後、400℃、3時間空気中で焼成し、基礎基板を得た。焼成後、アルミニウム蒸着側を水平上向きにして、基礎基板を石英管状炉内に設置した。水平方向にアルゴンを1000cm/minで送風しながら管状炉を700℃まで昇温した。続いて、700℃に保持したまま、1000cm/minのアルゴンにプロピレンを300cm/minで混合させて管状炉内に送風した。プロピレン/アルゴン混合ガスを3分間流した後、再びアルゴンのみに切り替えて流しながら、管状炉の加熱を止めて、室温まで放冷した。反応終了後、基礎基板表面を走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果、基礎基板上側に厚さ15μmの配向性CNT膜が形成されたことが確認できた。
当該膜は、垂直方向に配向したCNTからなっており、厚さは一定で膜の表面は平滑であった。また、この配向膜の透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行ったところ、配向膜を構成するCNTは、外径5〜8nm、5〜7層程度の多層CNTであった。
【0062】
(b)配向性CNT膜の表面を第一の可撓性基板の表面に接着後、第一の可撓性基板表面と接着した配向性CNT膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性CNT膜を第一の可撓性基板側に転写する工程:
アクリル樹脂/ポリオレフィンからなる接着性シートの表面と、(a)で得られた配向性CNT膜の表面とを接触させ、プレス機で2Kg/cmかけて圧着した。圧着後、接着性シートを引っ張り、配向性CNT膜を残して基礎基板を剥離することで、接着性シート上に配向性CNT膜を転写した。
【0063】
(c)電極基板表面に絶縁層、ゲート層を逐次パターン状に積層する工程:
一辺30mmの角型ITO基板を電極基板として選び、ライン幅50μm、ライン間隔70μmのストライプ状にガラスペーストをスクリーン印刷し、500℃で空気焼成した。同じ印刷、焼成を2度繰り返すことにより、高さ50μmの絶縁層を形成した。この絶縁層表面に導電性銀ペーストをスクリーン印刷し、500℃で空気焼成することにより、絶縁層上に厚み1μmのゲート層を形成した。
【0064】
(d)電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な可逆的接着性表面を有する第二の可撓性基板の表面の凸部と、第一の可撓性基板に転写された配向性CNT膜の表面とを接着後、第二の可撓性基板表面の凸部と接着した配向性CNT膜を残して第一の可撓性基板を剥離することにより、配向性CNT膜を第二の可撓性基板側に転写する工程:
ポリエポキシアクリレートを主成分とするUV硬化型接着性シートを、工程(c)で得られた電極基板表面にラミネートした。次にラミネートしたままの状態でUV硬化型接着性シート側から250mJ/cmのUVを15分間照射した。照射後、UV硬化型接着性シートを電極基板から剥離したところ、表面にライン幅70μm、ライン間隔50μmのストライプ状の凸部が形成された。このUV硬化型接着性シートの凸部と、工程(b)で得られた接着性シート上の配向性CNT膜の表面とを接触させ、プレス機で2Kg/cmかけて圧着した。圧着後、UV硬化型接着性シートを引っ張り、配向性CNT膜を残して接着性シートを剥離することで、UV硬化型接着性シートの凸部上に、高さ15μm、ライン幅70μmのストライプ状の配向性CNT膜を転写した。
【0065】
(e)電極基板の表面の凹部に導電性バインダーをパターン形成する工程:
工程(c)で得られた電極基板表面の凹部にノズルプリンティング法で導電性銀ペーストを塗布し、電極基板表面の凹部上に厚み5μm、ライン幅70μmのストライプ状に導電性銀ペースト薄膜を形成した。
【0066】
(f)第二の可撓性基板に転写された配向性CNT膜の表面と導電性バインダーの表面とを接着後、導電性バインダーと接着した配向性CNT膜を残して第二の可撓性基板を剥離することにより配向性CNT膜を転写する工程:
工程(d)で得られた配向性CNT膜の表面と工程(e)で形成した導電性銀ペースト薄膜の表面とを接触させ、プレス機で4Kg/cmかけて圧着した。さらに配向性CNT膜が接着しているUV硬化型接着性シート側から250mJ/cmのUVを15分間照射した。照射後、UV硬化型接着性シートを電極基板から剥離することにより、表面凹部に配向性CNT膜が転写された電界放出型冷陰極を得た。
【0067】
実施例2(D法)
工程(a)〜(d):
実施例1におけるB法の工程(a)〜(d)に同じ。
【0068】
(e)第二の可撓性基板に転写された配向性CNT膜の表面に導電性バインダーを付着させる工程:
ガラス板上に導電性銀ペーストをスクリーン印刷し、厚み5μmの導電性銀ペースト薄膜を形成した。工程(d)で得られた配向性CNT膜の表面とガラス板上の導電性銀ペースト薄膜の表面とを接触させ、プレス機で2Kg/cmかけて圧着した。ガラス板を剥離し、配向性CNT膜上に厚み5μmの導電性銀ペーストを付着させた。
【0069】
(f)配向性CNT膜の表面に付着した導電性バインダーの表面と、電極基板の表面の凹部とを接着後、導電性バインダーおよび配向性CNT膜を残して第二の可撓性基板を剥離することにより、配向性CNT膜を転写する工程:
工程(c)で得られた電極基板表面の凹部と工程(e)で付着させた導電性銀ペースト薄膜の表面とを接触させ、プレス機で4Kg/cmかけて圧着した。さらに配向性CNT膜が接着しているUV硬化型接着性シート側から250mJ/cmのUVを15分間照射した。照射後、UV硬化型接着性シートを電極基板から剥離することにより、表面凹部に配向性CNT膜が転写された電界放出型冷陰極を得た。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】電界放出型冷陰極の製造方法(A法)
【図2】電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する可撓性基板の一例
【図3】電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する可撓性基板の一例
【図4】電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する可撓性基板の一例
【図5】電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する可撓性基板の一例
【図6】凹凸形状を記憶した可撓性基板の作製方法
【図7】電界放出型冷陰極の製造方法(B法)
【図8】電界放出型冷陰極の製造方法(C法)
【図9】電界放出型冷陰極の製造方法(D法)
【符号の説明】
【0071】
1 基礎基板
2 配向性カーボンナノチューブ膜
3 電極基板
4 絶縁層
5 ゲート層
6 電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する可撓性基板
7 導電性バインダー
8 形状記憶が可能な可逆的接着性表面を有する可撓性基板
9 可逆的接着性表面を有する第一の可撓性基板
10 電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する第二の可撓性基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極基板表面に配向性カーボンナノチューブ膜をパターン状に形成する電界放出型冷陰極の製造方法であって、
(a)基礎基板表面上に配向性カーボンナノチューブ膜を作製する工程と、
(b)電極基板表面に絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層する工程と、
(c)前記工程(b)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する可撓性基板の表面の凸部と、前記工程(a)で作製された配向性カーボンナノチューブ膜の表面とを接着後、可撓性基板表面の凸部と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を可撓性基板側に転写する工程と、
(d)前記工程(b)で得られた電極基板の表面の凹部に導電性バインダーをパターン形成する工程と、
(e)可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面とパターン形成された導電性バインダーの表面とを接着後、導電性バインダーと接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を電極基板側に転写する工程とを含む、電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項2】
電極基板表面に配向性カーボンナノチューブ膜をパターン状に形成する電界放出型冷陰極の製造方法であって、
(a)基礎基板表面上に配向性カーボンナノチューブ膜を作製する工程と、
(b)前記工程(a)で作製された配向性カーボンナノチューブ膜の表面を、可逆的接着性表面を有する第一の可撓性基板の表面に接着後、第一の可撓性基板表面と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を第一の可撓性基板側に転写する工程と、
(c)電極基板表面に絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層する工程と、
(d)前記工程(c)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する第二の可撓性基板の表面の凸部と、第一の可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面とを接着後、第二の可撓性基板表面の凸部と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して第一の可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を第二の可撓性基板側に転写する工程と、
(e)前記工程(c)で得られた電極基板の表面の凹部に導電性バインダーをパターン形成する工程と、
(f)第二の可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面と導電性バインダーの表面とを接着後、導電性バインダーと接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して第二の可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を電極基板側に転写する工程とを含む、電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項3】
電極基板表面に配向性カーボンナノチューブ膜をパターン状に形成する電界放出型冷陰極の製造方法であって、
(a)基礎基板表面上に配向性カーボンナノチューブ膜を作製する工程と、
(b)電極基板表面に絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層する工程と、
(c)前記工程(b)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する可撓性基板の表面の凸部と、前記工程(a)で作製された配向性カーボンナノチューブ膜の表面とを接着後、可撓性基板表面の凸部と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を可撓性基板側に転写する工程と、
(d)可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面に導電性バインダーを付着させる工程と、
(e)配向性カーボンナノチューブ膜の表面に付着した導電性バインダーの表面と、電極基板の表面の凹部とを接着後、導電性バインダーおよび配向性カーボンナノチューブ膜を残して可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を電極基板側に転写する工程とを含む、電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項4】
電極基板表面に配向性カーボンナノチューブ膜をパターン状に形成する電界放出型冷陰極の製造方法であって、
(a)基礎基板表面上に配向性カーボンナノチューブ膜を作製する工程と、
(b)前記工程(a)で作製された配向性カーボンナノチューブ膜の表面を、可逆的接着性表面を有する第一の可撓性基板の表面に接着後、第一の可撓性基板表面と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して基礎基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を第一の可撓性基板側に転写する工程と、
(c)電極基板表面に絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層する工程と、
(d)前記工程(c)で得られた電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な、可逆的接着性表面を有する第二の可撓性基板の表面の凸部と、第一の可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面とを接着後、第二の可撓性基板表面の凸部と接着した配向性カーボンナノチューブ膜を残して第一の可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を第二の可撓性基板側に転写する工程と、
(e)第二の可撓性基板に転写された配向性カーボンナノチューブ膜の表面に導電性バインダーを付着させる工程と、
(f)配向性カーボンナノチューブ膜の表面に付着した導電性バインダーの表面と、電極基板の表面の凹部とを接着後、導電性バインダーおよび配向性カーボンナノチューブ膜を残して第二の可撓性基板を剥離することにより、配向性カーボンナノチューブ膜を電極基板側に転写する工程とを含む、電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項5】
電極基板の表面の凹凸形状にかみ合わせ可能な可逆的接着性表面を有する可撓性基板が、絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層した電極基板の表面と、該可撓性基板の表面とを接触させ、該電極基板の表面の凹凸形状を反転して記憶させた後、剥離することによって得られるものである、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項6】
電極基板の表面の凹凸形状を反転して記憶させる過程で光照射または加熱を用いる、請求項5記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項7】
可逆的接着性表面を有する可撓性基板の表面の材質が、ポリエポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂およびポリ塩化ビニルからなる群より選ばれた単独または複数の樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項8】
電極基板表面に絶縁層とゲート層とを逐次パターン状に積層する工程において、スクリーン印刷法、焼成法、CVD法、レーザー照射法、フォトリソグラフィー法、サンドブラスト法、ノズルプリンティング法およびエッチング法からなる群より選ばれた単独または複数の方法を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項9】
基礎基板表面上に配向性カーボンナノチューブ膜を作製する工程において、アルミニウムを被覆した支持基板に、遷移金属または遷移金属化合物を含む触媒を担持させてなる基礎基板の存在下、気体状の炭素化合物を分解することにより、該基礎基板表面上に基礎基板と垂直方向に配向したカーボンナノチューブ膜を成長させる、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項10】
支持基板にアルミニウムを被覆する方法が、真空蒸着法、電析法、スパッタリング法またはゾルゲル法である、請求項9記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項11】
アルミニウムを被覆した支持基板に、遷移金属または遷移金属化合物を含む触媒を担持する方法が、含浸法、浸漬法またはゾルゲル法である、請求項9記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項12】
炭素化合物が、飽和炭化水素化合物、不飽和炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物および含酸素炭化水素化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物である、請求項9記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項13】
カーボンナノチューブの外径が1nm〜10nmの範囲である、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項14】
配向性カーボンナノチューブ膜の表面と可逆的接着性表面を有する可撓性基板の表面とを接着する方法が、配向性カーボンナノチューブ膜の表面と可撓性基板の可逆的接着性表面とを接触させて、乾燥、圧着、加熱または熱圧着を施すものである、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項15】
電極基板が、絶縁性の板の表面に予め導電性の回路を形成した板である、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項16】
配向性カーボンナノチューブ膜の表面と導電性バインダーの表面とを接着する方法が、配向性カーボンナノチューブ膜の表面と導電性バインダーの表面とを接触させて、乾燥、圧着、加熱または熱圧着を施すものである、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項17】
導電性バインダーが、導電性ペーストである、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項18】
導電性バインダーが、導電性銀ペースト、導電性金ペースト、導電性カーボンペーストまたは導電性銅ペーストである、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項19】
導電性バインダーが、インジウム、スズ、鉛、亜鉛、銅またはこれら金属の一種以上を含む合金である、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項20】
可逆的接着性表面を有する可撓性基板が、粘着剤を表面に塗布した樹脂シートである、請求項1〜4のいずれかに記載の電界放出型冷陰極の製造方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかの方法によって得られる電界放出型冷陰極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−188662(P2007−188662A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3472(P2006−3472)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】