説明

電界放出型電子源及びその製造方法

【課題】本発明は、電界放出型電子源及びその製造方法に関する。
【解決手段】本発明の電界放出型電子源は、絶縁基板と、該絶縁基板に設置された複数のグリッド電極及び陰極電極と、複数の電子放出ユニットと、を含む。前記複数のグリッド電極及び前記複数陰極電極が交叉して、複数の格子が形成され、各々の格子に一つの前記電子放出ユニットが設置され、各々の前記電子放出ユニットが、少なくとも一つの電子放出体を含み、前記電子放出体の両端がそれぞれ、前記グリッド電極及び前記陰極電極に電気的に接続され、前記電子放出体に隙間があり、該電子放出体が前記隙間に対向した二つの先端を有し、各々の前記先端が一つの電子放出先端を含む。また、本発明は、前記電界放出型電子源の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出型電子源及びその製造方法に関し、特にカーボンナノチューブを使用した電界放出型電子源及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子源は、電界放出型電子源及び表面伝導型電子源を含む。該電界放出型電子源及び表面伝導型電子源は、低温又は室温で作動し、熱電子源と比べて、消費電力が低く、応答速度が速く、放出ガスが少ないという優れた点を有する。現在、電界放出型電子源及び表面伝導型電子源を大型表示装置に応用するために、大寸法を有する電子源に対して、研究がなされている。
【0003】
図1を参照すると、従来技術としての大寸法を有する電界放出型電子源300は、絶縁基板30、前記絶縁基板30に設置された複数の電子放出ユニット36、前記絶縁基板30に設置された複数の陰極電極34及び複数のグリッド電極32を含む。前記複数の陰極電極34及び複数のグリッド電極32が短絡することを防止するために、該複数の陰極電極34及び複数のグリッド電極32の間に絶縁層33により電気絶縁する。各電子放出ユニット36は、少なくとも一つの陰極放出体38を含み、該陰極放出体38は、前記陰極電極34に電気的に接続され、且つ前記グリッド電極32と分離して設置される。前記陰極放出体38は、前記グリッド電極32のプラス電位になると、電子を放射することができる。前記電界放出型電子源300は、電子を放射する効率が良い。しかし、前記電界放出型電子源300において、前記グリッド電極32の位置が前記陰極電極34の位置より高い必要があり、前記陰極放出体38が前記グリッド電極32の作用で電子を放射するので、前記陰極電極34及び前記グリッド電極32の距離が近い必要があるが、前記陰極電極34及び前記グリッド電極32の距離を正確に制御できず、必要とする駆動電圧が高く、コストを高める。
【0004】
図2を参照すると、従来技術としての表面伝導型電子源400は、絶縁基板40、前記絶縁基板40に設置された複数の電子放出ユニット46、前記絶縁基板40に設置された複数の陰極電極44及び複数のグリッド電極42を含む。前記複数の陰極電極44は、平行し、等間隔に前記絶縁基板40に設置され、前記複数のグリッド電極42は、平行し、等間隔に前記絶縁基板40に設置され、該グリッド電極42が前記複数の陰極電極44に平行する延長部421を有する。該複数の陰極電極44と該複数のグリッド電極42は、垂直に交叉して前記絶縁基板40に設置されている。該複数の陰極電極44と該複数のグリッド電極42とが短絡することを防止するために、交叉する場所に絶縁層43が設置されている。各電子放出ユニット46は、電子放出体48を含み、該電子放出体48は、それぞれ前記複数の陰極電極44と複数のグリッド電極42の延長部に電気的に接続される。該電子放出体48は、電子放出区域(非特許文献1を参照)を含む。該電子放出区域は、小さい粒子からなるフィルムである。該電子放出区域の両端に電圧を印加することにより、且つ該電子放出区域に表面処理を行なって、該電子放出区域をアクティブにさせ、電子は、表面伝導電流を形成でき、前記グリッド電極42のプラス電位の作用で電子を放出することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T.Oguchi et al.,“A36-inch Surface-conduction Electron-emitter Display(SED)”、「SID’05 Digest」、2005年、第36巻、第1929頁〜第1931頁
【非特許文献2】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記表面伝導型電子源400において、電子放出区域のフィルムにおける粒子の間の距離が小さいので、前記グリッド電極42のプラス電位が該電子放出区域の内部に作用しにくい。従って、前記表面伝導型電子源400は電子を放出する効率が低い。
【0007】
従って、本発明は、電子を放出する効率が高く、大寸法を有する電界放出型電子源を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
電界放出型電子源は、絶縁基板と、該絶縁基板に設置された複数のグリッド電極及び陰極電極と、複数の電子放出ユニットと、を含む。前記複数のグリッド電極及び前記複数陰極電極が交叉して、複数の格子が形成され、各々の格子に一つの前記電子放出ユニットが設置され、各々の前記電子放出ユニットが、少なくとも一つの電子放出体を含み、該電子放出体の両端がそれぞれ、前記グリッド電極及び前記陰極電極に電気的に接続され、該電子放出体に隙間があり、該電子放出体が前記隙間に対向した二つの先端を有し、各々の前記先端が一つの電子放出先端を含む。
【0009】
前記電子放出体が、金属線、カーボン繊維、カーボンナノチューブワイヤの一種又は多種である。
【0010】
前記電子放出体がカーボンナノチューブワイヤを含み、前記カーボンナノチューブワイヤが平行して配列された複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブが分子間力で接続される。
【0011】
単一の前記電子放出体の直径が2マイクロメートル〜5マイクロメートルである。
【0012】
前記電子放出先端が複数のカーボンナノチューブを含む。
【0013】
前記二つの先端の間の距離が1マイクロメートル〜20マイクロメートルである。
【0014】
前記グリッド電極が複数の延長部を含み、各々の延長部がそれぞれ、各々の前記陰極電極に対向して設置される。
【0015】
前記電子放出体の両端がそれぞれ、前記グリッド電極の延長部及び前記陰極電極に電気的に接続される。
【0016】
電界放出型電子源の製造方法は、絶縁基板を提供する第一ステップと、前記絶縁基板に設置された複数のグリッド電極及び陰極電極を形成し、前記複数のグリッド電極及び前記複数陰極電極が交叉して、複数の格子を形成する第二ステップと、カーボンナノチューブフィルムを前記グリッド電極及び前記陰極電極に設置する第三ステップと、前記カーボンナノチューブフィルムを処理し、複数の電子放出体を形成する第四ステップと、前記電子放出体を加工して、各々の前記電子放出体に隙間を形成し、該電子放出体が前記隙間に、対向した二つの先端を形成する第五ステップと、を含む。
【0017】
前記第四ステップにおいて、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブフィルムを収縮させ、カーボンナノチューブワイヤを形成し、電子放出体を形成する。
【0018】
前記第五ステップにおいて、レーザーで焼き切る方法、電子の衝撃で切る方法又は真空の雰囲気で焼き切る方法を利用して、前記電子放出体を加工する。
【発明の効果】
【0019】
従来の電界放出型電子源と比べると、本発明の電界放出型電子源は、グリッド電極、陰極電極及び電子放出体が共面に設置されるので、構造が簡単である。前記電子放出体に隙間が形成されるので、前記グリッド電極及び前記陰極電極の間に電圧を印加すると、該グリッド電極及び該陰極電極の間に電界が形成され、前記電子放出先端が細く、電子が前記放出体の電子放出先端から放出しやすくなるので、前記電界放出型電子源の電子放出効率が高くなることができ、放出された電子は均一性が良い。前記電界放出型電子源の製造方法は、電子放出体を加工することにより、隙間を形成するので、該方法が簡単で、応用に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術の電界放出型電子源の構造を示す断面図である。
【図2】従来技術の表面伝導型電子源の構造を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電界放出型電子源の構造を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電界放出型電子源における電子放出先端の構造を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電界放出型電子源における電子放出先端の構造を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電界放出型電子源の製造方法のフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る電界放出型電子源における電子放出先端のラマンスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0022】
図3を参照すると、本実施形態は、電界放出型電子源100を提供する。該電界放出型電子源100は、絶縁基板10、前記絶縁基板10に設置された複数の電子放出ユニット22、複数のグリッド電極12及び複数の陰極電極14を含む。前記複数のグリッド電極12は、平行し、等間隔に前記絶縁基板10に設置されている。前記複数の陰極電極14は、平行し、等間隔に前記絶縁基板10に設置されている。該複数のグリッド電極12と該複数の陰極電極14は、垂直に交叉して前記絶縁基板10に設置され、交叉する場所に絶縁層20が設置され、該複数のグリッド電極12と該複数の陰極電極14とが短絡することを防止できる。各々の前記グリッド電極12は、更に平行し、等間隔に配列された複数の延長部121を含む。該複数の延長部121は、前記複数のグリッド電極12の同じ側に対するように、前記グリッド電極12に電気的に接続され、各々の陰極電極14に対向して設置される。隣接する二つのグリッド電極12と、その隣接する二つの陰極電極14が交叉して、複数の格子16が形成されている。各々の前記格子16に一つの電子放出ユニット22が設置されている。
【0023】
前記絶縁基板10は、セラミック基板、ガラス基板、樹脂基板又は石英基板などである。該絶縁基板10の大きさと厚さは制限されず、実際の応用により選択することができる。本実施形態において、前記絶縁基板10は、ガラス基板である。
【0024】
前記複数のグリッド電極12と前記複数の陰極電極14は、例えば金属などの導電材料からなる。前記グリッド電極12と前記陰極電極14の幅は、30マイクロメートル〜100マイクロメートルであり、厚さは、10マイクロメートル〜50マイクロメートルである。隣接するグリッド電極12の間の距離は、300マイクロメートル〜500マイクロメートルであり、隣接する陰極電極14の間の距離は、300マイクロメートル〜500マイクロメートルである。前記複数のグリッド電極12の延長部121は、長さが60マイクロメートルであり、幅が20マイクロメートルであり、厚さが20マイクロメートルである。各々の前記グリッド電極12の隣接する延長部121の間の距離は、300マイクロメートル〜500マイクロメートルである。
【0025】
本実施形態において、前記複数のグリッド電極12及び前記複数の陰極電極14は、シルクスクリーン印刷法により、導電ペーストを印刷して成る平面導電体であることが好ましい。シルクスクリーン印刷法で導電ペーストを前記絶縁基板10に印刷し、前記グリッド電極12及び前記陰極電極14を形成する。
【0026】
前記電界放出型電子源100における各電子放出ユニット22は、少なくとも一つの電子放出体18を含む。各々の電子放出体18は、一つの端部が前記陰極電極14に接続され、もう一つの端部が前記グリッド電極12の延長部121に接続されている。該電子放出体18は、金属線、カーボン繊維又はカーボンナノチューブワイヤである。該電子放出体18の両端181は、導電接着剤或いは分子間力で、それぞれ前記グリッド電極12及び陰極電極14に電気的に接続されている。該電子放出体18は、前記絶縁基板10と分離して設置されてもよく、前記絶縁基板10に直接設置されてもよい。前記電子放出体18は、隙間182を有する。該隙間182の幅は、1マイクロメートル〜20マイクロメートルである。さらに、該電子放出体18は、該隙間182に対向した二つの先端183を有する。各先端183は、一つの電子放出先端を有し、各電子放出先端は、円錐体に形成されている。前記グリッド電極12及び前記陰極電極14に電圧を印加すると、該グリッド電極12及び該陰極電極14の間に電界が形成され、電子が前記電子放出先端から飛び出しやすくなるので、該電界放出型電子源100の電子放出効率が高くなることができる。
【0027】
本実施例において、前記電子放出体18は、カーボンナノチューブワイヤである。該カーボンナノチューブワイヤは、カーボンナノチューブワイヤの長さの方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。具体的には、前記カーボンナノチューブワイヤは、複数のカーボンナノチューブセグメントを含む。該複数のカーボンナノチューブセグメントは、端と端が分子間力で接続される。各カーボンナノチューブセグメントには、平行し、分子間力で接続される複数のカーボンナノチューブを含む。前記カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブの一種又は多種である。該カーボンナノチューブワイヤの長さは、50マイクロメートル〜400マイクロメートルであり、直径は、2マイクロメートル〜5マイクロメートルである。
【0028】
図4及び図5を参照すると、前記電子放出体18は、一つの電子放出先端を含む。該電子放出先端は、平行する複数のカーボンナノチューブを含む。該複数のカーボンナノチューブは、前記グリッド電極12から前記陰極電極14までに延長する。該複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接続されている。前記電子放出体18の直径が小さいので、前記電子放出先端が細く、電子を放出しやすい。
【0029】
図3を参照すると、前記電界放出型電子源100における各電子放出ユニット22は、更に、複数の固定素子(図示せずに)を含む。前記複数の固定素子は、それぞれ前記グリッド電極12及び/又は前記陰極電極14に設置される。前記固定素子は、前記電子放出体18を良く前記グリッド電極12及び/又は前記陰極電極14に固定することに用いられる。該固定素子は、導電接着剤、分子間力又は他の方式により、それぞれ、前記グリッド電極12及び/又は前記陰極電極14に設置される。
【0030】
前記電界放出型電子源100は、電界放出表示装置に応用することができる。前記グリッド電極12及び前記陰極電極14の間にプラス電圧を印加し、前記電子放出先端は、該グリッド電極12の作用で電子を放出する。陽極の作用で放出された電子は、螢光体を衝撃し、該電界放出表示装置を表示させる。前記グリッド電極12及び前記陰極電極14の間にマイナス電圧を印加し、前記電子放出先端は、該陰極電極14の作用で電子を放出する。
【0031】
図6を参照すると、本実施形態における前記電界放出型電子源100の製造方法は、下記のステップを含む。
【0032】
第一ステップでは、絶縁基板10を提供する。
【0033】
前記絶縁基板10は、ガラス基板である。
【0034】
第二ステップでは、平行し、等間隔に前記絶縁基板10に設置された複数のグリッド電極12と、平行し、等間隔に前記絶縁基板10に設置された複数の陰極電極14とを形成し、前記複数のグリッド電極12及び前記複数陰極電極14が垂直に交叉して、複数の格子16が形成される。
【0035】
前記絶縁基板10に、平行し、等間隔に配列された複数のグリッド電極12を形成し、平行し、等間隔に配列された複数の陰極電極14を形成する。該複数のグリッド電極12と該複数の陰極電極14は、垂直に交叉して設置され、交叉する場所に絶縁層20が設置され、該複数のグリッド電極12と該複数の陰極電極14とが短絡することを防止している。各々の前記グリッド電極12は、更に平行し、等間隔に配列された複数の延長部121を含む。該複数の延長部121は、前記複数のグリッド電極12の同じ側に対するように、前記グリッド電極12に電気的に接続され、各々の陰極電極14に対向して設置される。隣接する二つのグリッド電極12と、その隣接する二つの陰極電極14とは、複数の格子16を形成している。
【0036】
前記グリッド電極12及び前記陰極電極14は、シルクスクリーン印刷法、スパッタ法又は蒸着法で形成する。本実施形態において、シルクスクリーン印刷法で前記グリッド電極12及び前記陰極電極14を形成する。
【0037】
まず、シルクスクリーン印刷法で導電ペーストを前記絶縁基板10に印刷し、平行し、等間隔に配列された複数のグリッド電極12を形成する。該導電ペーストは、金属粉末、低い融点を有するガラス粉末及び接着剤を含む。該金属粉末は、銀粉末であり、該接着剤は、テルピネオール又はエチルセルロースである。前記導電ペーストは、前記金属粉末が50〜90wt%であり、前記低い融点を有するガラス粉末が2〜10wt%であり、前記接着剤が8〜40wt%である。
【0038】
次に、シルクスクリーン印刷法で前記グリッド電極12及び陰極電極14が交叉する場所に複数の絶縁層20を印刷する。
【0039】
最後に、シルクスクリーン印刷法で導電ペーストを前記絶縁基板10に印刷し、平行し、等間隔に配列された複数の陰極電極14を形成する。前記複数のグリッド電極12及び前記複数の陰極電極14は、交叉して格子16を形成する。前記導電ペーストと前記複数のグリッド電極12を形成する導電ペーストとが同じである。
【0040】
また、本実施形態に制限されず、前記グリッド電極12及び陰極電極14の形成方法は、下記のステップにより、行なってもよい。
【0041】
まず、シルクスクリーン印刷法で導電ペーストを前記絶縁基板10に印刷し、平行し、等間隔に配列された複数の陰極電極14を形成する。次に、複数の絶縁層20を印刷する。最後に、シルクスクリーン印刷法で導電ペーストを前記絶縁基板10に印刷し、平行し、等間隔に配列された複数のグリッド電極12を形成し、前記複数のグリッド電極12及び前記複数の陰極電極14は、交叉して格子16を形成する。
【0042】
第三ステップでは、カーボンナノチューブフィルムを前記グリッド電極12及び前記陰極電極14に設置する。
【0043】
まず、カーボンナノチューブフィルムを提供し、該カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、下記のステップを含む。
【0044】
カーボンナノチューブアレイを提供し、該カーボンナノチューブアレイが超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献2を参照)であることが好ましい。
【0045】
本実施形態において、前記超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相成長(CVD)法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施形態において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその二種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイを成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直するように成長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、一部分のカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。成長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残りの触媒となる金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0046】
本実施形態において、前記カーボンを含むガスとしては例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0047】
本実施形態から提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0048】
前記カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。
【0049】
ステップ(a)では、前記カーボンナノチューブアレイには、所定の幅を有する複数のカーボンナノチューブセグメントを選択する。本実施形態において、所定の幅を有するテープで前記カーボンナノチューブアレイに接着し、所定の幅を有する複数のカーボンナノチューブセグメントを選択するようになる。ステップ(b)では、所定の速度でカーボンナノチューブアレイが成長された方向に垂直な方向に沿って、前記複数のカーボンナノチューブセグメントを引き伸ばし、連続するカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0050】
前記引き伸ばす過程において、複数のカーボンナノチューブセグメントが引っ張り力で引き伸ばされた方向に沿って、前記基材から離れ、同時に分子間力で選択された複数のカーボンナノチューブセグメント及び他のカーボンナノチューブセグメントは、端と端が接続され、カーボンナノチューブフィルムが形成される。該カーボンナノチューブフィルムは、選択的な方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブの端と端が接続され、所定の幅を有するカーボンナノチューブフィルムである。該カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが相互に平行し、配列された方向がカーボンナノチューブフィルムの引き伸ばされた方向に平行する。
【0051】
前記カーボンナノチューブフィルムの幅は、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に大きく関係する。本実施形態において、CVD法で4インチのシリコン基材に超配列カーボンナノチューブアレイを成長し、該カーボンナノチューブアレイを引き伸ばし、カーボンナノチューブフィルムを形成するから、該カーボンナノチューブフィルムの幅が0.01センチメートル〜10センチメートルである。該カーボンナノチューブフィルムの長さに制限はなく、実際の応用に応じて製造することができる。該カーボンナノチューブフィルムの厚さが10ナノメートル〜100マイクロメートルである。
【0052】
次に、前記カーボンナノチューブフィルムを前記グリッド電極12及び前記陰極電極14に設置し、該グリッド電極12から該陰極電極14までに延長する。
【0053】
前記カーボンナノチューブフィルムの両端を、導電接着剤或いは分子間力で、それぞれ前記グリッド電極12の延長部121及び陰極電極14に接続し、該グリッド電極12及び陰極電極14に電気的に接続する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、グリッド電極12から該陰極電極14までに延長する。
【0054】
第四ステップでは、有機溶剤を利用して、前記カーボンナノチューブフィルムを処理し、複数の電子放出体18を形成する。
【0055】
まず、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬する。該有機溶剤は、揮発性有機溶剤であり、アルコール、メチルアルコール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムの一種又は多種の混合物である。本実施形態において、該有機溶剤はアルコールである。該カーボンナノチューブフィルムは、前記有機溶剤で浸漬されると、発揮性の有機溶剤の表面張力によって該カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブセグメントが収縮され、少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤに形成される。従って、各々の格子16において、少なくとも一つの電子放出体18を形成する。該電子放出体18は、複数のカーボンナノチューブを含む。該電子放出体18は、直径が2マイクロメートル〜5マイクロメートルであり、比表面積が小さくなり、接着性がなくなり、優れた機械強度と勒性を有する。
【0056】
また、前記電子放出体18は、金属線又はカーボン繊維でもよい。機械的な外力で前記金属線又はカーボン繊維を処理し、電子放出体18を形成することができる。
【0057】
更に、シルクスクリーン印刷法で前記グリッド電極12及び陰極電極14に固定素子を形成し、前記電子放出体18を前記グリッド電極12と固定素子の間に固定し、前記陰極電極14と固定素子の間に固定する。
【0058】
第五ステップでは、前記電子放出体18を加工し、各電子放出体18に隙間182を形成し、該電子放出体18が前記隙間182に対向した二つの先端183を形成する。
【0059】
前記電子放出体18を加工する方法は、レーザーで焼き切る方法、電子の衝撃で切る方法又は真空の雰囲気で焼き切る方法がある。本実施形態においては、真空で焼き切る方法を採用する。
【0060】
真空の雰囲気で前記グリッド電極14及び前記陰極電極12に電圧を印加する。該電圧の大きさと前記電子放出体18の直径及び長さには関係がある。直流電圧の作用で該電子放出体18が加熱されることができる。加熱する温度は2000K〜2800Kであることが好ましく、加熱する時間は20分間〜60分間であることが好ましい。前記加熱過程において、該電子放出体18を流れる電流が高くなり、多量の熱が生じ、最後に各電界放出型電子源100における電子放出体18が焼き切られる。前記電子放出体18の焼き切るようにする領域の炭素が蒸発して、前記電子放出体18に隙間182が形成される。該隙間182の大きさが1マイクロメートル〜20マイクロメートルである。該電子放出体18は、二つの先端183を有し、該二つの先端183が対向する。前記真空雰囲気の真空度が高いので、焼き切られる領域にガスが電離する。電離して生じたイオンは前記電子放出体18の二つの先端183を衝撃し、該電子放出体18は、カーボンナノチューブフィルムが収縮して形成されたカーボンナノチューブワイヤからなるので、該二つの先端183にそれぞれ、一つの電子放出先端を形成する。前記電子放出体18の直径が小さくなるので、前記電子放出先端が細くなり、電子を放出することに便利である。
【0061】
本実施形態では、真空の雰囲気で前記電子放出体18を焼き切る方法を採用して、該電子放出体18が焼き切られた所が汚染されることを防止することができ、加熱する過程において、該電子放出体18の機械強度が高くなるから、良い電界放出の性能を有する。
【0062】
図7は、前記電子放出体18の電子放出先端のラマンスペクトル図である。ラマンスペクトルで分析すると、熱処理された電子放出体18の電子放出先端のDバンド(欠陥モード)が小さくなり、先端のDバンドが最も小さい。即ち、電子放出体18の電子放出先端のカーボンナノチューブが焼き切られると、該カーボンナノチューブの品質が良くなる。該カーボンナノチューブの品質が良くなるのは、該カーボンナノチューブが熱処理されると、欠陥が減少し、欠陥を有するグラファイト層が高温で落ちやすくなり、品質が良いグラファイト層が残されるからである。
【0063】
前記電界放出型電子源100において、グリッド電極12、陰極電極14及び電子放出体18が共面に設置されるので、構造が簡単である。前記電子放出体18に隙間182が形成されるので、前記グリッド電極12及び前記陰極電極14の間に電圧を印加すると、該グリッド電極12及び該陰極電極14の間に電界が形成され、前記電子放出先端が細く、電子が前記放出体18の電子放出先端から放出しやすくなるので、前記電界放出型電子源100の電子放出効率が高くなることができ、放出された電子は均一性が良い。前記電界放出型電子源100の製造方法は、電子放出体を加工することにより、隙間182を形成するので、該方法が簡単で、応用に便利である。
【0064】
以上本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種種変更可能であることは勿論であって、本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲から決まる。
【符号の説明】
【0065】
10、30、40 絶縁基板
16 格子
18 電子放出体
20、33、43 絶縁層
22、36、46 電子放出ユニット
12、32、42 グリッド電極
14、34、44 陰極電極
38、48 陰極放出体
121、421 延長部
181 電子放出体の両端
182 隙間
183 先端
100、300 電界放出型電子源
400 表面伝導型電子源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、前記絶縁基板に設置された複数のグリッド電極及び陰極電極と、複数の電子放出ユニットと、を含む電界放出型電子源において、
前記複数のグリッド電極及び前記複数陰極電極が交叉して、複数の格子が形成され、
各々の前記格子に一つの前記電子放出ユニットが設置され、
各々の前記電子放出ユニットが、少なくとも一つの電子放出体を含み、
前記電子放出体の両端がそれぞれ、前記グリッド電極及び前記陰極電極に電気的に接続され、
前記電子放出体に隙間があり、該電子放出体が前記隙間に対向した二つの先端を有し、
各々の前記先端が一つの電子放出先端を含むことを特徴とする電界放出型電子源。
【請求項2】
前記電子放出体が、金属線、カーボン繊維、カーボンナノチューブワイヤの一種又は多種であることを特徴とする、請求項1に記載の電界放出型電子源。
【請求項3】
前記電子放出体がカーボンナノチューブワイヤを含み、
前記カーボンナノチューブワイヤが平行して配列された複数のカーボンナノチューブを含み、
該複数のカーボンナノチューブが分子間力で接続されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電界放出型電子源。
【請求項4】
単一の前記電子放出体の直径が2マイクロメートル〜5マイクロメートルであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電界放出型電子源。
【請求項5】
前記電子放出先端が複数のカーボンナノチューブを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の電界放出型電子源。
【請求項6】
前記二つの先端の間の距離が1マイクロメートル〜20マイクロメートルであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の電界放出型電子源。
【請求項7】
前記グリッド電極が複数の延長部を含み、各々の延長部がそれぞれ、各々の前記陰極電極に対向して設置されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の電界放出型電子源。
【請求項8】
前記電子放出体の両端がそれぞれ、前記グリッド電極の延長部及び前記陰極電極に電気的に接続されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の電界放出型電子源。
【請求項9】
絶縁基板を提供する第一ステップと、
前記絶縁基板に設置された複数のグリッド電極及び陰極電極を形成し、前記複数のグリッド電極及び前記複数陰極電極が交叉して、複数の格子を形成する第二ステップと、
カーボンナノチューブフィルムを前記グリッド電極及び前記陰極電極に設置する第三ステップと、
前記カーボンナノチューブフィルムを処理し、複数の電子放出体を形成する第四ステップと、
前記電子放出体を加工して、各々の前記電子放出体に隙間を形成し、該電子放出体が前記隙間に対向した二つの先端を形成する第五ステップと、
を含むことを特徴とする電界放出型電子源の製造方法。
【請求項10】
前記第四ステップにおいて、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブフィルムを収縮させ、カーボンナノチューブワイヤを形成し、電子放出体を形成することを特徴とする、請求項9に記載の電界放出型電子源の製造方法。
【請求項11】
前記第五ステップにおいて、レーザーで焼き切る方法、電子の衝撃で切る方法又は真空の雰囲気で焼き切る方法を利用して、前記電子放出体を加工することを特徴とする、請求項9又は10に記載の電界放出型電子源の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−187945(P2009−187945A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18644(P2009−18644)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】