説明

電着可能なコーティング組成物およびそれらの生成のための方法

分散媒質中に分散された樹脂相を含む水性分散物を生成するための方法が開示されており、ここで、樹脂相は、活性水素を含有する膜形成樹脂を含む。また、開示されているのは、このような分散物を含む電着可能なコーティング組成物、このような組成物から少なくとも部分的にコーティングされた導電性基材、および導電性基材をこのような組成物で少なくとも部分的にコーティングするための方法である。硬化したプライマーコーティング層を導電性基材の少なくとも一部分の上に、そして硬化したトップコート層を該硬化したプライマーコーティング層の少なくとも一部分の上に含む複数層複合コーティングもまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、高分子量樹脂相を含む電着可能なコーティング組成物(例えば、耐光分解性組成物)、およびこのような組成物中に含まれ得る水性分散物を生成するための方法に関連している。本発明はまた、このような組成物で少なくとも部分的にコーティングされた導電性基材、このような組成物から形成されたプライマー層を含む耐光分解性の多層コーティング、およびこのような組成物で導電性基材を少なくとも部分的にコーティングするための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
電着可能なコーティング組成物は、金属基材の防食のためのコーティングを提供するためにしばしば使用されており、例えば、自動車産業において使用されるものである。電着のプロセスは、より高い塗料利用、優れた防食、少ない環境汚染、および/もしくは非電気泳動コーティング方法と比較して高度に自動化されたプロセスをしばしば提供する。
【0003】
電着プロセスにおいて、導電性基材を有する物品(例えば、自動車のボディーもしくはボディーの部品)は、膜形成ポリマーの水性エマルジョンのコーティング組成物浴中に浸され、導電性基材は、電極および逆に荷電した対電極を含む電気回路内で電荷電極として働く。電流は、所望する厚さを有するコーティングが物品に沈着されるまで、水性エマルジョンと電気的に接触をした物品と対電極との間をとおされる。カソードの電気的コーティングプロセスにおいて、コーティングされる物品はカソードであり、対電極はアノードである。
【0004】
電着可能なコーティング組成物は、耐腐食性のプライマーコーティングを形成するためにしばしば使用される。歴史的に、電着可能なプライマーコーティング組成物(例えば、自動車産業において使用されるもの)は、芳香族イソシアネートと架橋した耐腐食性のエポキシベースの組成物であった。このような組成物は、紫外線エネルギー(例えば、太陽光)にさらされた場合、光分解を受け得る。ゆえに、場合によっては、プライマー表面剤(surfacer)は、1つ以上のトップコートを塗る前に、このような硬化した電着したコーティングに直接塗られた。プライマー表面剤は、コーティング系に多種の特性(電着したコーティングを光分解から保護することを含む)を提供し得る。あるいは、1つ以上のトップコートは、このような硬化した電着したコーティングに直接塗られ得、このような例においては、トップコートは、電着したコーティングの光分解からの充分な保護をトップコートが提供するように配合される。トップコートが充分な保護を提供しない場合、電着したコーティングの光分解が起こり得、硬化した電着したプライマーコーティングからのトップコートの層間剥離を引き起こし得る。
【0005】
さらに最近では、プライマー表面剤もしくはトップコート組成物の存在とは独立した、後に塗られたトップコートの光分解および層間剥離を遅延させる電着可能なプライマーコーティング組成物が開示されている。例えば、特許文献1は、水性媒質中に分散した樹脂相を含む耐光分解性の電着可能なコーティング組成物を開示しており、ここで、樹脂相は以下を含む:(1)1つ以上の非ゲル状の、活性水素を含有し、陽イオン性アミン塩の基を含有する樹脂(カソードに電着可能)(ここで、アミン塩の基は、特定のペンダントおよび/もしくは末端のアミン基から誘導される)、および(2)1つ以上の少なくとも部分的にブロックされた脂肪族のポリイソシアネート硬化剤。さらに、特許文献2は、水性媒質中に分散した樹脂相を含む耐光分解性の電着可能なコーティング組成物を開示している。樹脂相は以下を含む:(1)1つ以上の非ゲル状の、活性水素を含有し、陽イオン性スルホニウム塩の基を含有する樹脂(カソードに電着可能)、および(b)陽イオン性基もしくは陽イオン性基を形成可能な基を含む1つ以上の硬化剤。
【0006】
特定の適用において、例えば、特定の外観的特性(例えば、耐油しみ)が重要であり得る場合、高分子量の膜形成樹脂を含む電着可能なコーティング組成物(耐光分解性組成物を含む)を配合する必要性がある。しかしながら、このような組成物の製造には難しさが存在し得る。例えば、高分子量の樹脂は、非常に粘性が高い傾向にあり、これによって分散のプロセスが困難となり得る。さらに、高分子量を有する膜形成樹脂を含む電着可能なコーティング組成物を作る際に、ゲル化の相当なリスクがしばしば存在する。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0054193号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0098238号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
一つの点において、本発明は、分散媒質中に分散された高分子量樹脂相を含む安定した水性分散物を作るための方法に関する。これらの方法は、(a)活性水素を含有する膜形成樹脂を含む非ゲル状樹脂相の分散媒質中に安定した分散物を形成する工程;および(b)安定した分散物中で活性水素を含有する膜形成樹脂を鎖伸長(chain extending)して、分散媒質中に分散された高分子量樹脂相を含む安定した水性分散物を形成する工程を包含する。
【0008】
別の点において、本発明は、水性媒質中に分散された樹脂相を含む、硬化性の電着可能なコーティング組成物に関する。これらの組成物において、樹脂相は、(a)少なくとも部分的にブロックされた脂肪族のポリイソシアネート硬化剤、および(b)活性水素を含有し、陽イオン性アミン塩の基を含有する樹脂(カソードに電着可能)を含み、ここで、アミン塩の基は、構造:
【0009】
【化3】

を有する、ペンダントおよび/もしくは末端のアミノ塩の基から誘導され、ここで、Rは、HもしくはC〜C18アルキルを表し;R、R、RおよびRは、同じであるか、もしくは異なっており、それぞれは独立して、HもしくはC〜Cアルキルを表し;nは、1〜11の範囲の値を有する整数であり(例えば、1〜5、もしくはいくつかの場合においては、1〜2);ならびにXおよびYは同じであっても異なっていてもよく、それぞれは独立して、ヒドロキシル基もしくはアミノ基を表す。これらの組成物において、樹脂相は、少なくとも200,000のZ平均分子量を有する。
【0010】
他の点において、本発明は、このような組成物で少なくとも部分的にコーティングされた導電性基材、このような組成物から形成されるプライマー層を含む耐光分解性多層コーティング、およびこのような組成物で導電性基材を少なくとも部分的にコーティングするための方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の実施形態の詳細な説明)
以下の詳細な説明の目的のために、本発明は、そうでないと明確に特定される場合を除き、多種の代案的変更および工程の順序を採用し得ることが理解されるべきである。以下の明細書中に記載の特定のデバイス(あれば)は、本発明の単なる例示的な実施形態であることもまた理解されるべきである。ゆえに、本明細書中に開示されている実施形態に関連するいずれの特定の寸法もしくは他の物理的特徴も限定的であるとみなされるべきではない。さらに、いずれかの実施例以外では、もしくはそうでないと述べられていない限り、例えば、明細書および特許請求の範囲内で使用される成分の量を表す全ての数字は、用語「約」によって全ての場合において修飾されることが理解されるべきである。したがって、そうでないと述べられていない限り、以下の明細書および添付する特許請求の範囲内に述べる数値パラメーターは、本発明によって得られるべき所望する特性に依存して変わり得る近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を限定しようとする企図としてではなく、それぞれの数値パラメーターは、報告される有効数字の数に照らし、そして通常の丸めの技術を応用して少なくとも解釈されるべきである。
【0012】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメーターは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において述べる数値は、できる限り正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も、それらの各々の試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を固有に含む。
【0013】
また、本明細書中に記載されているいずれの数値範囲も、その中に包含されている全てのサブ範囲を含むと意図されることが理解されるべきである。例えば、「1〜10」という範囲は、記載される最小値1と記載される最大値10との間(およびこれを含む)の全てのサブ範囲を含むことが意図され、すなわち、1と等しいもしくは1より大きい最小値、および10と等しいもしくは10より小さい最大値を有する。
【0014】
本願において、そうでないと特定的に述べられていない限り、単数形の使用は、複数形を含むこともまた理解されるべきである。例えば、そして非限定的に、本願は、「活性水素を含有する、膜形成樹脂」を含む樹脂相を含む安定した分散物を参照する。「活性水素を含有する、膜形成樹脂」に対する言及は、1つのこのような樹脂を含む分散物、ならびに1つより多いこのような樹脂を含む分散物(例えば、2つのこのような樹脂を含む分散物)を包含することが意味される。さらに、本願において、「および/もしくは」が特定の場合において明白に使用され得るとはいえ、そうでないと具体的に述べられていない限り、「もしくは」の使用は、「および/もしくは」を意味する。
【0015】
特定の実施形態において、本発明は、分散媒質中に分散された高分子量樹脂相を含む安定した水性分散物を作るための方法に関する。これらの方法は、(a)活性水素を含有する膜形成樹脂を含む非ゲル状樹脂相の安定した分散物を分散媒質中で形成する工程;および(b)安定した分散物中の活性水素を含有する膜形成樹脂を鎖伸長して、分散媒質中に分散された高分子量樹脂相を含む安定した水性分散物を形成する工程を包含する。このような水性分散物は、電着可能なコーティング組成物における使用に適している。本発明のこれらの方法は、分散媒質中に分散された高分子量樹脂相を含む電着可能なコーティング組成物の生成を可能にすると同時に、分散媒質中へのこれらの分散の前に高粘度の膜形成樹脂を処理する必要性を減少させるかもしくは取り除く。さらに、これらの方法は、樹脂相の分子量が分散物中では増加するので、ゲル化のリスクを減少させ得る。
【0016】
特定の実施形態において示したように、本発明は、高分子量樹脂相を含む安定した水性分散物を作るための方法に関する。さらに、特定の実施形態において、本発明は、このような分散物を含む電着可能なコーティング組成物に関する。本明細書中で使用される場合、用語「電着可能なコーティング組成物」とは、印加された電位の影響下で導電性基材上に沈着され得る組成物をいう。
【0017】
本発明の特定の方法は、活性水素を含有する膜形成樹脂を含む非ゲル状の樹脂相の安定した分散物を分散媒質中で形成する工程を包含する。本明細書で使用される場合、用語「分散物」とは、2相の、透明、半透明もしくは不透明の樹脂系であって、樹脂が、分散相に存在し、そして、分散媒質は連続相に存在するものをいう。本明細書で使用される場合、用語「安定した分散物」とは、25℃の温度で、少なくとも60日間はゲル化、綿状化もしくは沈殿のいずれもしない分散物、あるいは、多少の沈殿が生じる場合、沈殿物が攪拌で再分散され得るような分散物をいう。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「非ゲル状の」とは、適切な溶媒(例えば、ASTM−D1795もしくはASTM−D4243にしたがって決定されたような溶媒)中に溶解された場合、架橋結合を実質的に含まず、かつ固有粘度を有する樹脂をいう。樹脂もしくは樹脂混合物の固有粘度は、その分子量の指標である。他方で、ゲル化樹脂は、本質的に無限に高い分子量のものであるので、測定するには高すぎる固有粘度を有する。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「活性水素を含有する」とは、反応部位として活性水素を含むポリマーをいう。用語「活性水素」とは、Zerewitnoffテスト(JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY、Vol.49、3181ページ(1927)中に述べられている)によって決定された場合にイソシアネートと反応作用を示す基をいう。特定の実施形態において、活性水素は、ヒドロキシル基、第一級アミン基および/もしくは第二級アミン基から誘導される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「膜形成樹脂」とは、組成物中に存在するあらゆる希釈剤もしくはキャリアを除去する際、あるいは周囲の温度もしくは上昇した温度において硬化する際に、基材の少なくとも水平表面上に自己支持性連続膜を形成し得る樹脂をいう。
【0021】
特定の実施形態において、活性水素を含有する膜形成樹脂は陽イオン性ポリマーを有する。本発明の特定の方法にしたがって作られた分散物中での使用に適した陽イオン性ポリマーは、ポリマーが分散媒質(例えば、水)中に分散可能である限り(すなわち、可溶化、分散もしくは乳化されるように適応される)、当該分野に公知である多数の陽イオン性ポリマーのうちのいずれかを含み得る。本明細書で使用される場合、用語「陽イオン性ポリマー」とは、正の電荷を付与する陽イオン性官能基を含むポリマーをいう。陽イオン性ポリマーを水中に分散させ得る官能基は、本発明に適しており、この官能基としては、スルホニウム基およびアミン基が挙げられる。本明細書で使用される場合、用語「ポリマー」とは、オリゴマー、ならびにホモポリマーおよびコポリマーの両方をいう。
【0022】
このような陽イオン性膜形成樹脂の非限定的な例としては、1つ以上のポリエポキシドポリマー、アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエステルポリマー、これらの混合物、これらのコポリマー(これらのグラフトコポリマーを含む)から選択される、活性水素を含有する陽イオン性ポリマーが挙げられる。特定の実施形態において、活性水素を含有する膜形成樹脂は、アクリルポリマーを含む。
【0023】
適切なポリエポキシドとしては、当該分野に公知の多種のポリエポキシドのいずれもが挙げられる。このようなポリエポキシドの例としては、1より大きい、しばしば2の1,2−エポキシ当量を有するもの;すなわち、1分子につき平均2つのエポキシド基を有するポリエポキシドが挙げられる。このようなポリエポキシドポリマーとしては、環式ポリオールのポリグリシジルエーテルが挙げられ得、例えば、ビスフェノールAのような多価フェノールである。これらのポリエポキシドは、アルカリの存在下でのエピハロヒドリンもしくはジハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリンもしくはジクロロヒドリン)を用いた多価フェノールのエーテル化によって調製され得る。適切な多価フェノールの非限定的な例としては、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−メチル−1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−(4−ヒドロキシ−3−第3級ブチルフェニル)プロパン、およびビス−(2−ヒドロキシナフチル)メタンが挙げられる。
【0024】
多価フェノールの他に、環式ポリオール誘導体のポリグリシジルエーテルを調製するために、他の環式ポリオールが使用され得る。このような環式ポリオールの例としては、脂環式(cycloaliphatic)ポリオールのような脂環式(alicyclic)ポリオール(例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンおよび水素化ビスフェノールA)が挙げられる。
【0025】
ポリエポキシドは、ポリエーテルポリオールもしくはポリエステルポリオールを用いて鎖伸長され得る。適切なポリエーテルポリオールおよび鎖伸長のための条件の例は、米国特許第4,468,307号中に開示されている。鎖伸長のためのポリエステルポリオールの例は、米国特許第4,148,772号中に開示されている。
【0026】
他の適切なポリエポキシドは、ノボラック樹脂もしくは同様のポリフェノールから同様に生成され得る。このようなポリエポキシド樹脂は、米国特許第3,663,389号;同第3,984,299号;同第3,947,338号および同第3,947,339号中で述べられている。さらなる適切なポリエポキシド樹脂としては、米国特許第4,755,418号、同第5,948,229号および同第6,017,432号中に述べられているものが挙げられる。
【0027】
適切なアクリルポリマーとしては、例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸の1つ以上のアルキルエステルのコポリマー(必要に応じて、1つ以上の他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーと一緒になる)が挙げられる。アクリル酸もしくはメタクリル酸の適切なアルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。適切な他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、ニトリル(例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)、ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデン(例えば、塩化ビニルおよびフッ化ビニリデン)ならびにビニルエステル(例えば、酢酸ビニル)が挙げられる。酸および無水物の官能性エチレン性不飽和モノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸もしくは無水物、イタコン酸、マレイン酸もしくは無水物あるいはフマル酸)が使用され得る。アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN−アルキル置換(メタ)アクリルアミドを含め、アミド官能性モノマーもまた適切である。特定の場合において、ビニル芳香族化合物(例えば、スチレンおよびビニルトルエン)もまた使用され得る。
【0028】
官能基(例えば、ヒドロキシル基およびアミノ基)は、官能性モノマー(例えば、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレートもしくはアミノアルキルアクリレートおよびアミノアルキルメタクリレート)を使用することによって、アクリルポリマーに取り込まれ得る。エポキシド官能基(陽イオン性塩の基への変換のための)は、官能性モノマー(例えば、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレートもしくはアリルグリシジルエーテル)を使用することによって、アクリルポリマーに取り込まれ得る。あるいは、エポキシド官能基は、アクリルポリマー上のカルボキシル基とエピハロヒドリンもしくはジハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリンもしくはジクロロヒドリン)とを反応させることによって、アクリルポリマーに取り込まれ得る。
【0029】
適切なアクリルポリマーは、当該分野において公知のとおりの伝統的なフリーラジカルによって開始される重合技術(例えば、溶液重合技術)によって、適切な触媒(有機過酸化物およびアゾタイプ化合物を含む)および必要に応じて連鎖移動因子(例えば、α−メチルスチレンダイマーおよびtert−ドデシルメルカプタン)を使用して調製され得る。さらなる適切なアクリルポリマーとしては、米国特許第3,455,806号および同第3,928,157号に記載されている樹脂が挙げられる。
【0030】
適切なポリウレタンポリマーとしては、例えば、高分子ポリオールであって、ポリエステルポリオールもしくはアクリルポリオール(例えば、上記のようなもの)とポリイソシアネートとを、ヒドロキシル/イソシアネート当量比が1:1よりも大きいように反応させて調製されるので、遊離ヒドロキシル基が生成物中に存在するものが挙げられる。ポリエステルの調製において使用するためのより小さい多価アルコール(例えば、上で開示したようなもの)もまた、高分子ポリオールの代わりに、もしくは高分子ポリホールと組み合わせて使用され得る。
【0031】
適切なポリウレタンポリマーのさらなる例としては、ポリエーテルポリオールおよび/もしくはポリエーテルポリアミンとポリイソシアネートとを反応させて調製される、ポリウレタン、ポリ尿素およびポリ(ウレタン−尿素)ポリマーが挙げられる。このようなポリウレタンポリマーは、米国特許第6,248,225号に記載されている。
【0032】
ポリウレタンの調製の際に、ヒドロキシル官能性第三級アミン(例えば、N,N−ジアルキルアルカノールアミンおよびN−アルキルジアルカノールアミン)が、他のポリオールと組み合わせて使用され得る。適切な第三級アミンの例としては、米国特許第5,483,012号中の第3欄の49〜63行目に開示されているN−アルキルジアルカノールアミンが挙げられる。
【0033】
エポキシド官能基は、当該分野において周知の方法によってポリウレタンに取り込まれ得る。例えば、エポキシド基は、ポリウレタン上のヒドロキシル基とエピハロヒドリンもしくはジハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリンもしくはジクロロヒドリン)とをアルカリの存在下で反応させることによって、取り込まれ得る。
【0034】
スルホニウム基含有ポリウレタンもまた適切であり、そして、ヒドロキシ−官能性スルフィド化合物(例えば、チオジグリコールおよびチオジプロパノール)の少なくとも部分的な反応によっても作られ得、これによって、硫黄のポリマー骨格への取り込みがなされる。その後、硫黄含有ポリマーは、酸の存在下で単官能性エポキシ化合物と反応して、スルホニウム基を形成する。適切な単官能性エポキシ化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシドール、フェニルグリシジルエーテルおよびCARDURA(登録商標)E(Resolution Performance Productsより入手可能)が挙げられる。
【0035】
適切なポリエステルは、公知の方法で、多価アルコールとポリカルボン酸との縮合によって調製され得る。適切な多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールが挙げられる。ポリエステルの調製における使用に適切なポリカルボン酸の例としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびトリメリト酸が挙げられる。上記のポリカルボン酸のほかに、酸の機能的等価物(例えば、無水物(それらが存在する場合))もしくは酸の低級アルキルエステル(例えば、メチルエステル)が使用され得る。
【0036】
特定の実施形態において、ポリエステルは、硬化反応において利用可能な遊離したヒドロキシル基部分(ポリエステルの調製中の過剰な多価アルコールおよび/もしくはより高次のポリオールの使用によって生じる)を含む。エポキシド官能基は、ポリエステル上のカルボキシル基とエピハロヒドリンもしくはジハロヒドリン(例えば、エピクロロヒドリンもしくはジクロロヒドリン)とを反応させることによってポリエステルに取り込まれ得る。
【0037】
アミノ基は、ポリマーのエポキシ官能基とヒドロキシルを含有第三級アミン(例えば、N,N−ジアルキルアルカノールアミンおよびN−アルキルジアルカノールアミン)とを反応させることによってポリエステルポリマーに取り込まれ得る。適切な第三級アミンの特定の例としては、米国特許第5,483,012号中の第3欄の49〜63行目に開示されているN−アルキルジアルカノールアミンが挙げられる。適切なポリエステルとしては、米国特許第3,928,157号に開示されているものが挙げられる。
【0038】
スルホニウム基含有ポリエステルもまた適切である。スルホニウム塩の基は、酸の存在下で上記のタイプのエポキシ基含有ポリマーとスルフィドとの反応によって導入され得る(米国特許第3,959,106号および同第4,715,898号に記載のとおり)。スルホニウム基は、同様の反応条件を使用して記載のポリエステル骨格上に導入され得る。
【0039】
特定の実施形態において、活性水素を含有する膜形成樹脂は、ペンダントおよび/もしくは末端のアミノ基から誘導される、陽イオン性アミン塩の基を含む。「ペンダントおよび/もしくは末端」によって、第一級、第二級および/もしくは第三級アミノ基が、ポリマー骨格からぶら下がっているかもしくはポリマー骨格の末端位置にある置換基として存在するか、あるいはポリマー骨格からぶら下がっているかもしくはポリマー骨格の末端位置にある基の末端基の置換基である置換基として存在することが意味される。言い換えると、陽イオン性アミン塩の基が誘導されるアミノ基は、高分子骨格の内にはない。
【0040】
ペンダントおよび/もしくは末端のアミノ基は、以下:
【0041】
【化4】

の構造(I)もしくは(II)を有し得、ここで、Rは、HもしくはC〜C18アルキルを表し;R、R、RおよびRは、同じであるか、もしくは異なっており、それぞれは独立して、HもしくはC〜Cアルキルを表し、nは、1〜11の範囲の値を有する整数であり(例えば、1〜5、もしくはいくつかの場合においては、1〜2);そしてXおよびYは同じであっても異なっていてもよく、それぞれは独立して、ヒドロキシル基もしくはアミノ基を表す。
【0042】
「アルキル」によって、アルキルおよびアラルキル、環式もしくは非環式、直鎖状もしくは分枝状の1価の炭化水素基が意味される。アルキル基は、非置換であってもよく、もしくは1つ以上のヘテロ原子(例えば、1つ以上の酸素原子、窒素原子もしくは硫黄原子のような非炭素で非水素の原子)によって置換されてもよい。
【0043】
上記の構造(I)および(II)によって表されるペンダントおよび/もしくは末端のアミノ基は、アンモニア、メチルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ビス−ヘキサメチレントリアミンおよびこれらの混合物から選択される化合物から誘導され得る。これらの化合物のうちの1つ以上が、上記のポリマーのうちの1つ以上(例えば、ポリエポキシドポリマー)と反応すると、ポリアミンとの反応をとおしてエポキシ基が開環され、それにより、末端アミノ基および第二級ヒドロキシル基が提供される。
【0044】
特定の実施形態において、陽イオン性塩の基を含有するポリマーは、電着されそして硬化される電着可能なコーティング組成物中に含まれる場合、少なくとも2つの電子吸引性基(下記に詳述されるような)が、硬化した電着したコーティング中に存在する実質的に全ての窒素原子に関してβ位で結合するように、上記の構造(II)を有する1つ以上のペンダントおよび/もしくは末端のアミノ基から誘導されるアミン塩の基を含む。特定の実施形態において、このような電着可能なコーティング組成物が電着されそして硬化された場合、3つの電子吸引性基が、硬化した電着したコーティング中に存在する実質的に全ての窒素原子に関してβ位で結合する。硬化した電着したコーティング中に存在する「実質的に全て」の窒素原子は、陽イオン性アミン塩の基を形成するために使用されるアミンから誘導された全ての窒素原子のうちの少なくとも65%(例えば、少なくとも90%)が、硬化した電着したコーティング中に存在することを意味する。
【0045】
以下に議論するように、本明細書中で言及される電子吸引性基は、硬化剤と、構造(II)中のXおよびY(この構造中に表されている窒素原子に関してβ位で結合している)によって表されるペンダントおよび/もしくは末端のヒドロキシル基および/もしくはアミノ基との反応によって形成される。電着可能な組成物の硬化した遊離膜中に存在する遊離したもしくは非結合のアミン窒素の量は以下のように決定され得る。硬化した遊離コーティング膜は、低温で粉砕機にかけられ得、酢酸で溶解され得、その後、酢酸性過塩素酸で電位差滴定が行なわれ得、サンプルの総塩基含量を決定する。サンプルの第一級アミン含量は、第一級アミンとサリチルアルデヒドを反応させ、滴定不可能なアゾメチンを形成することで決定され得る。その後、反応しなかった第二級アミンおよび第三級アミンのいずれも、過塩素酸での電位差滴定によって決定され得る。総塩基性とこの滴定との差は、第一級アミンを表す。サンプルの第三級アミン含量は、第一級アミンおよび第二級アミンと無水酢酸との反応によって対応するアミドを形成した後の過塩基酸での電位差滴定によって決定され得る。
【0046】
特定の実施形態において、末端のアミノ基は、構造(II)を有し、ここで、XおよびYの両方は第一級アミノ基を含む(例えば、アミノ基は、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミンおよび/もしくはビス−ヘキサメチレントリアミンから誘導される)。この場合、ポリマーとの反応の前に、第一級アミノ基は、例えば、ケトン(例えば、メチルエチルケトン)との反応によってブロックされ得、ジケチミンを形成する。このようなケチミンは、米国特許第4,104,147号の第6欄の23行目〜第7欄の23行目に述べられている。ケチミン基は、アミン−エポキシ反応生成物を水中に分散させる際に分解し得、それにより、硬化反応部位として遊離した第一級アミン基を提供し得る。
【0047】
少量の(例えば、組成物中に存在する総アミン窒素の5%以下を表す量)アミン(例えば、ヒドロキシル基を含まないモノ、ジおよびトリアルキルアミンおよび混合アリール−アルキルアミン、もしくはヒドロキシルとは異なる基で置換されたアミン)が含まれ得る(但し、このようなアミンの含有は、硬化した電着したコーティングの耐光分解性に悪影響を及ぼさない)。特定の例としては、モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、エチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ジココアミン(dicocoamine)およびN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0048】
特定の実施形態において、上記のアミンとポリマー上のエポキシド基との反応は、アミンとポリマーとを混合した際に起こる。アミンがポリマーに加えられてもよいし、もしくはその逆でもよい。反応は、ニートで行われ得るか、もしくは適切な溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン、キシレンもしくは1−メトキシ−2−プロパノール)の存在下で行われ得る。反応は、一般的に発熱性であり、そして冷却が所望され得る。しかしながら、反応を促進するために約50℃〜150℃という中程度の温度に熱することは行われ得る。
【0049】
特定の実施形態において、活性水素を含有する陽イオン性塩の基を含むポリマーは、ポリマーおよび生じた電着可能な組成物から形成されたコーティングの耐光分解性を最大にするように選択された成分から調製される。どの理論にも束縛される意図はないが、硬化した電着したコーティングの耐光分解性(すなわち、可視光および紫外線による分解に対する耐性)は、活性水素を含有する陽イオン性アミン塩の基を含む樹脂の分散のために使用される窒素を含有する陽イオン性基の位置および特性と相互に関係し得ると考えられる。
【0050】
特定の実施形態において、ペンダントおよび/もしくは末端のアミノ基が誘導されるアミンは、このアミンの活性水素が、ポリイソシアネートとの反応によって鎖伸長の間に消費されるように第一級および/または第二級アミン基を含み、そして/あるいは硬化して尿素基もしくは結合を形成する。
【0051】
特定の実施形態において、安定した分散物は、少なくとも2つの異なる非ゲル状の活性水素を含有する膜形成樹脂の混合物を含む樹脂相を含む。場合によっては、このような分散物は、さらなるイオン性膜形成ポリマー(例えば、ジエンから誘導された高分子物質を実質的に含まない、陽イオン性塩の基を含む膜形成ポリマー)を配合される。適切な樹脂としては、ポリエポキシドと第一級および第二級アミン(例えば、米国特許第4,031,050号の第3欄の20行目〜第5欄の8行目に記載されているものであり、この部分は本明細書中に参考として援用される)との酸可溶化反応の生成物である、高いスローパワー(throwpower)のアミン塩の基を含有する樹脂が挙げられる。場合によっては、これらのアミン塩の基を含む樹脂は、ブロックされたイソシアネート硬化剤(例えば、以下でより充分に議論されているもの)と組み合わせて使用される。さらに、このような分散物は、低いスローパワーの樹脂(例えば、陽イオン性アクリル樹脂(例えば、米国特許第3,455,806号の第2欄の36行目〜第4欄の2行目、および同第3,928,157号の第2欄の29行目〜第3欄の21行目に記載されているもので、両方のこれらの部分は本明細書中に参考として援用される))を含み得る。
【0052】
アミン塩の基を含有する樹脂の他に、第四級アンモニウム塩の基を含有する樹脂もまた利用され得る。これらの樹脂の例は、有機ポリエポキシドと第三級アミン酸塩とを反応させることで形成される樹脂である。このような樹脂は、米国特許第3,962,165号の第2欄の3行目〜第10欄の64行目;同第3,975,346号の第1欄の62行目〜第14欄の9行目および同第4,001,156号の第1欄の58行目〜第14欄の43行目に記載されており、これらの部分は本明細書中に参考として援用される。他の適切な陽イオン性樹脂の例としては、三元スルホニウム塩の基を含有する樹脂(例えば、米国特許第3,793,278号の第1欄の46行目〜第5欄の25行目に記載されているものであり、この部分は本明細書中に参考として援用される)が挙げられる。また、エステル交換反応のメカニズム(例えば、欧州特許出願第12463号A1の1ページの29行目〜10ページの40行目に記載されているものであり、この部分は本明細書中に参考として援用される)をとおして硬化する陽イオン性樹脂もまた利用され得る。
【0053】
ゆえに、特定の実施形態において、安定した分散物は、少なくとも2つの非ゲル状の活性水素を含有する膜形成樹脂の混合物を含む樹脂相を含む。特定の実施形態において、このような分散物は、陽イオン性ポリエポキシドポリマーと陽イオン性アクリルポリマーとの混合物を含む。このような混合物が使用される場合、ポリエポキシドポリマーは分散物中に、組成物中に存在する樹脂固体の総重量を基準として5重量%〜80重量%(例えば、10重量%〜60重量%、もしくは場合によっては、10重量%〜40重量%)の範囲の量で存在し得る。
【0054】
特定の実施形態において、安定した分散物は、活性水素を含有する膜形成樹脂の活性水素基と反応するように適合された硬化剤を含む樹脂相を含む。特定の実施形態において、硬化剤は、少なくとも部分的にブロックされたポリイソシアネート(例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートもしくはこの2つの混合物)を含む。特定の実施形態において、硬化剤は、少なくとも部分的にブロックされた脂肪族ポリイソシアネートを含む。
【0055】
適切な少なくとも部分的にブロックされた脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、完全にブロックされた脂肪族ポリイソシアネート(例えば、米国特許第3,984,299号の第1欄の57行目〜第3欄の15行目に記載されているもの)もしくはポリマー骨格と反応される部分的にブロックされた脂肪族ポリイソシアネート(例えば、米国特許第3,947,338号の第2欄の65行目〜第4欄の30行目に記載されているもの)が挙げられる。「ブロックされた」は、イソシアネート基が化合物と反応し、その結果、生じるブロックされたイソシアネート基が周囲の温度では活性水素に対して安定しているが、上昇した温度(普通は、90℃と200℃との間)では活性水素との反応性を示すことを意味する。特定の実施形態において、ポリイソシアネート硬化剤は、実質的に遊離イソシアネート基がない完全にブロックされたポリイソシアネートである。
【0056】
特定の実施形態において、ポリイソシアネートは、ジイソシアネートを含むが、他の実施形態においては、ジイソシアネートの代わりに、もしくはジイソシアネートと組み合わせて、より高次のポリイソシアネートが使用される。硬化剤として使用されるのに適した脂肪族ポリイソシアネートの例としては、脂環式ポリイソシアネートおよびアラリファティック(araliphatic)ポリイソシアネート(例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス−(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、高分子1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、三量体化イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートおよびこれらの混合物)が挙げられる。本発明の特定の実施形態において、硬化剤としては、高分子1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらの混合物から選択される完全にブロックされたポリイソシアネートが挙げられる。本発明の他の実施形態において、ポリイソシアネート硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネートの完全にブロックされた三量体(Bayer CorporationよりDesmodur N3300(登録商標)として入手可能)が挙げられる。
【0057】
特定の実施形態において、ポリイソシアネート硬化剤は、1,2−アルカンジオール(例えば、1,2−プロパンジオール);1,3−アルカンジオール(例えば、1,3−ブタンジオール);ベンジル型アルコール(例えば、ベンジルアルコール);アリル型アルコール(例えば、アリルアルコール);カプロラクタム;ジアルキルアミン(例えば、ジブチルアミン);およびこれらの混合物から選択される少なくとも1つのブロッキング剤によって少なくとも部分的にブロックされている。特定の実施形態において、ポリイソシアネート硬化剤は、3つ以上の炭素原子を有する少なくとも1つの1,2−アルカンジオール(例えば、1,2−ブタンジオール)で少なくとも部分的にブロックされている。
【0058】
特定の実施形態において、ブロッキング剤としては、他の周知のブロッキング剤が挙げられ、例えば、脂肪族、脂環式もしくは芳香族のアルキルモノアルコールあるいはフェノール化合物であり、例えば、低級脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノールおよびn−ブタノール);脂環式アルコール(例えば、シクロヘキサノール);芳香族−アルキルアルコール(例えば、フェニルカルビノールおよびメチルフェニルカルビノール);およびフェノール化合物(例えば、フェノール自体ならびにクレゾールおよびニトロフェノールのような置換フェノール(ここで、置換基はコーティング作用に影響をおよぼさない)が挙げられる。グリコールエーテルおよびグリコールアミンもまたブロッキング剤として使用され得る。適切なグリコールエーテルとしては、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。他の適切なブロッキング剤としては、オキシム(例えば、メチルエチルケトキシム、アセトンオキシムおよびシクロヘキサノンオキシム)が挙げられる。
【0059】
特定の実施形態において、少なくとも部分的にブロックされたポリイソシアネート硬化剤は、80%〜20%(例えば、75%〜30%、もしくは場合によっては、50%〜30%)の範囲の量で存在する(百分率は、活性水素を含有する膜形成樹脂の樹脂固体と硬化剤とを合わせた総合計重量を基準とした重量%である)。
【0060】
特定の実施形態において、非ゲル状の樹脂相(1つ以上の非ゲル状の、活性水素を含有する膜形成樹脂および硬化剤を含む)は、100,000〜600,000(例えば、200,000〜500,000)の、当該分野で認められている形式のポリスチレン標準を使用してジメチルホルムアミド(DMF)中で行なわれるゲル浸透クロマトグラフィーによって得られるとおりのZ平均分子量(Mz)を有する。活性水素を含有する膜形成樹脂の分子量を制御するための方法は、当業者にとっては明らかである。例えば、活性水素を含有する膜形成樹脂が、前述に述べたような溶液重合によって作られるアクリル樹脂を含む場合、このような樹脂の分子量は、イニシエーター、溶媒および/もしくは連鎖移動因子のタイプおよび/もしくはレベル、アミン基のエポキシ基に対する、ならびに/または反応時間および/もしくは温度を制御することによって制御され得る。活性水素を含有する膜形成樹脂が、上記で述べたようなポリエポキシドポリマーとアミンとの反応生成物を含む場合、樹脂の分子量は、反応時間および/もしくは温度、アミンのエポキシ基に対する比、あるいはアミンもしくはケチミンのタイプを制御することによって制御され得る。
【0061】
上記に示したように、本発明の特定の方法にしたがって、樹脂相が分散媒質中に分散された安定した分散物が形成される。特定の実施形態において、分散媒質は水を含む。水の他に、分散媒質は、融合溶媒(coalescing solvent)を含み得る。有用な融合溶媒としては、炭化水素、アルコール、エステル、エーテルおよびケトンが挙げられる。場合によっては、融合溶媒としては、アルコール、ポリオールおよびケトンが挙げられる。適切な融合溶媒の特定の例としては、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソホロン、2−メトキシペンタノン、エチレンおよびプロピレングリコール、ならびにエチレングリコールのモノエチル、モノブチルおよびモノヘキシルエーテルが挙げられる。特定の実施形態において、融合溶媒の量は、分散媒質の総重量を基準にして0.01重量%〜25重量%(例えば、0.05重量%〜5重量%)である。特定の実施形態において、分散媒質中の樹脂相の平均の粒子サイズは、1.0ミクロン未満(例えば、0.5ミクロン未満(例えば、0.15ミクロン未満))である。
【0062】
特定の実施形態において、分散媒質中の樹脂相の濃度は、分散物の総重量を基準として少なくとも1重量%(例えば、2重量%〜60重量%)である。
【0063】
特定の実施形態において、活性水素を含有する膜形成樹脂は、分散媒質中への分散の前に、少なくとも部分的に中和される(例えば、酸での処理によって、水に分散可能な樹脂を形成する)。前述に示したように、このような樹脂は、樹脂を水中に分散可能にさせる陽イオン性官能基(例えば、スルホニウム基およびアミン基)を含み得る。適切な酸の非限定的な例としては、有機酸および無機酸(例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、リン酸、ジメチロールプロピオン酸およびスルファミン酸)が挙げられる。酸の混合物が使用され得る。中和の程度は、関係する個々の反応生成物によって変わる。しかしながら、膜形成樹脂を水中に分散させるために、充分な酸が使用されるべきである。特定の場合においては、使用される酸の量は、総理論的中和の少なくとも30%を提供する。100%の総理論的中和に必要な量を超える過剰な酸もまた使用され得る。
【0064】
陽イオン性塩の基の形成の程度は、膜形成樹脂が他の成分と混合された際に、膜形成樹脂の安定した分散物を形成するような程度であるべきである。さらに、特定の実施形態において、分散物は、分散物中に浸されたアノードとカソードとの間に電位が設定された際に、分散した粒子がカソードに移動し、電着するような充分な陽イオン性の性質を有する。
【0065】
特定の実施形態において、活性水素を含有する膜形成樹脂(もしくはそれらの2つ以上の混合物)は、鎖伸長の前に、ポリマー固体1グラムあたり、0.1ミリ当量(millequivalent)〜3.0ミリ当量(例えば、0.4ミリ当量〜2.0ミリ当量、もしくは場合によっては、0.8ミリ当量〜1.4ミリ当量)の陽イオン性塩の基を含む。
【0066】
分散の工程は、中和もしくは部分的に中和された樹脂と分散媒質とを合わせることによって遂行され得る。中和および分散は、樹脂と分散媒質とを合わせることによって、1つの工程で遂行され得る。樹脂(もしくはその塩)が分散媒質に添加され得るか、もしくは分散媒質が樹脂(もしくはその塩)に添加され得る。特定の実施形態において、分散物のpHは、5〜9の範囲内である。このような安定した分散物を形成するための適切な条件としては、実施例中に述べる条件が挙げられる。
【0067】
上記に示したように、本発明の特定の方法は、安定した分散物中で活性水素を含有する膜形成樹脂を鎖伸長し、分散媒質中に分散された高分子量樹脂相の安定した分散物を形成する工程を包含する。分散物が活性水素を含有する膜形成樹脂を2つ以上含む本発明の実施形態において、本発明の方法は、少なくとも1つのこれらの樹脂を分散物中で鎖伸長する工程を包含する。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語「高分子量」とは、高分子量樹脂相が形成される非ゲル状の樹脂相のMzよりも大きいMz(上記で述べたようにして得られる)を有する樹脂相(これは、上記で議論したように、1つ以上の活性水素膜形成樹脂および硬化剤を含み得る)をいう。例えば、分散物が活性水素を含有する膜形成樹脂を1つ含む本発明の特定の実施形態において、高分子量樹脂相は、高分子量樹脂相が形成される樹脂相よりも、少なくとも25%大きい、もしくは場合によっては、少なくとも30%大きい、もしくはさらに他の場合によっては、少なくとも50%大きいMzを有する。分散物が活性水素を含有する膜形成樹脂を2つ以上含む他の実施形態において、高分子量樹脂相は、高分子量樹脂が形成される非ゲル状の樹脂相よりも、少なくとも5%大きい、もしくは場合によっては、少なくとも10%大きい、もしくはさらに他の場合によっては、少なくとも20%大きいMzを有する。さらに、分散物が、1つの非ゲル状の活性水素を含有する膜形成樹脂を含む本発明の特定の実施形態において、高分子量樹脂相は、少なくとも200,000のMzを有するか、もしくは場合によっては、Mzは、200,000〜2,000,000(例えば、500,000〜1,500,000、600,000〜1,300,000)あるいはさらに他の場合によっては、600,000〜1,000,000である。分散物が、活性水素を含有する膜形成樹脂を2つ以上含む他の実施形態において、高分子量樹脂相は、少なくとも150,000のMzを有するか、もしくは場合によっては、Mzは、200,000〜2,000,000(例えば、300,000〜1,500,000もしくは400,000〜1,300,000)である。
【0069】
特定の実施形態において、安定した分散物中での活性水素を含有する膜形成樹脂の鎖伸長は、樹脂と、樹脂の活性水素基と反応性を示す反応性基を含む反応物とを反応させることによって遂行される。特定の実施形態において、反応物は、ブロックされていないポリイソシアネート(例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートもしくはこの2つの混合物)を含む。適切なポリイソシアネートとしては、例えば、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート(「m−TMXDI」)、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体(「HMDI」)およびイソホロンジイソシアネート三量体(「IPDI」)が挙げられる。特定の実施形態において、このような反応物は、分散物中の樹脂固体の総重量を基準として、0.1重量%〜10重量%(例えば、0.5重量%〜5重量%、もしくは場合によっては、0.5重量%〜2重量%)の量で存在する。
【0070】
特定の実施形態において、安定した分散物中での活性水素を含有する膜形成樹脂の鎖伸長は、触媒の存在下で行なわれる。適切な触媒としては、例えば、有機スズ化合物(例えば、ジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズアセテートなど)が挙げられる。特定の実施形態において、触媒は、分散物中の樹脂固体の総重量を基準として、0.01重量%〜5.0重量%(例えば、0.05重量%〜1.0重量%)の量で存在する。
【0071】
鎖伸長反応の時間および温度は、当業者によって理解されるように、選択される成分、および場合によっては反応の規模に依存する。安定した分散物中で活性水素を含有する膜形成樹脂を鎖伸長し、分散溶媒中で高分子量樹脂相の安定した分散物を形成するための適切な条件としては、実施例中に述べられる条件が挙げられる。
【0072】
特定の実施形態において、活性水素を含有する膜形成樹脂は、鎖伸長の後、樹脂固体1グラムあたり、0.1ミリ当量〜3.0ミリ当量(例えば、0.4ミリ当量〜2.0ミリ当量、もしくは場合によっては、0.6ミリ当量〜1.2ミリ当量)の陽イオン性基を含む。
【0073】
特に、活性水素を含有する膜形成樹脂が、上記で述べたようなペンダントおよび/もしくは末端のアミノ基から誘導される陽イオン性アミン塩の基を含む特定の実施形態において、活性水素を含有する膜形成樹脂は、鎖伸長の後は、上記に述べたような尿素結合の形成のため、1グラムの樹脂あたり、鎖伸長の前に含まれる樹脂より少ない陽イオン性塩の基を含む。例えば、特定の実施形態において、活性水素を含有する膜形成樹脂は、鎖伸長の後は、鎖伸長の前より、樹脂1グラムあたり、0.02ミリ当量〜0.3ミリ当量(例えば、0.04ミリ当量〜0.15ミリ当量)少ない陽イオン性塩の基を含む。
【0074】
前述の説明より理解されるべきであるように、本発明はまた、このような分散物を含む電着可能なコーティング組成物にも関する。ゆえに、特定の実施形態において、本発明は、水性媒質中に分散された樹脂相を含む硬化性の電着可能なコーティング組成物に関する。これらの組成物において、樹脂相は、(a)少なくとも部分的にブロックされた脂肪族ポリイソシアネート硬化剤、および(b)活性水素を含有し、陽イオン性アミン塩の基を含有する樹脂(カソードに電着可能)を含み、ここで、アミン塩の基は、構造:
【0075】
【化5】

を有するペンダントおよび/もしくは末端のアミノ塩の基から誘導され、ここで、Rは、HもしくはC〜C18アルキルを表し;R、R、RおよびRは、同じであるか、もしくは異なっており、それぞれは独立して、HもしくはC〜Cアルキルを表し;nは、1〜11の範囲の値を有する整数(例えば、1〜5、もしくはいくつかの場合においては、1〜2)であり;そしてXおよびYは同じであっても異なっていてもよく、それぞれは独立して、ヒドロキシル基もしくはアミノ基を表す。これらの組成物において、樹脂相は、少なくとも200,000のZ平均分子量を有する。
【0076】
特定の実施形態において、活性水素を含有する膜形成樹脂は、電着可能なコーティング組成物中の樹脂固体の総重量を基準として、少なくとも10重量%(例えば、少なくとも20重量%、もしくは場合によっては、少なくとも25重量%)の量で存在する。このような組成物中では、上記で議論した活性水素を含有する膜形成樹脂に加えて他のポリマーが存在し得る。例えば、このような組成物は、上記で議論したように、所望であれば、鎖伸長の工程の前に、分散物中に加えられ得る、さらなるイオン性膜形成ポリマー(例えば、上記で議論したような陽イオン性塩の基を含有する膜形成ポリマー)を用いて配合され得る。
【0077】
ゆえに、特定の実施形態において、本発明の電着可能な組成物は、ポリマーの混合物(例えば、上記で議論したような陽イオン性ポリエポキシドポリマーと陽イオン性アクリルポリマーとの混合物)を含む。
【0078】
特定の実施形態において、本発明は、耐光分解性の電着可能なコーティング組成物および関連する方法に関する。本明細書中で使用される場合、用語「耐光分解性」とは、硬化したプライマー層を基材の少なくとも一部分の上に、そして硬化したトップコート層をこの硬化したプライマー層の少なくとも一部分の上に含む複数層複合コーティング中にプライマー層を形成するために、電着可能なコーティング組成物が使用され得、ここで、米国特許出願公開第2003/0054193号A1の[0158]〜[0161](これは本明細書中に参考として援用される)に詳述されたように400ナノメートルで測定したときにトップコート層が少なくとも80%の光透過率を有する場合、複数層複合コーティングが、2年間の野外の風化作用と同等の集中させた太陽スペクトルのイラディアンスにさらされた際に、硬化したプライマーコーティング層と硬化したトップコート層との間の層間剥離を実質的に示さないことを意味する。
【0079】
特定の実施形態において、本発明の電着可能なコーティング組成物はまた、希土類金属、イットリウム、ビスマス、ジルコニウム、タングステンおよびこれらの混合物から選択される少なくとも1つの金属源も含む。特定の実施形態において、少なくとも1つの金属源は、組成物中の樹脂固体の総重量を基準として、0.005重量%〜5重量%の金属量で、電着可能な組成物中に存在する。
【0080】
可溶性イットリウム化合物および不溶性イットリウム化合物の両方は、このような電着可能組成物中でイットリウム源として働き得る。適切なイットリウム源の例としては、可溶性の有機イットリウム塩および無機イットリウム塩(例えば、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、ギ酸イットリウム、炭酸イットリウム、スルファミン酸イットリウム、乳酸イットリウムおよび硝酸イットリウム)が挙げられる。イットリウムが組成物中に水溶液として加えられるべきである場合、容易に入手可能なイットリウム化合物である硝酸イットリウムが好ましいイットリウム源である。他の適切なイットリウム化合物は、有機イットリウム化合物および無機イットリウム化合物(例えば、酸化イットリウム、臭化イットリウム、水酸化イットリウム、モリブデン酸イットリウム、硫酸イットリウム、ケイ酸イットリウムおよびシュウ酸イットリウム)である。有機イットリウム錯体およびイットリウム金属もまた使用され得る。イットリウムが、ピグメントペースト中の成分として組成物中に取り込まれるべきである場合、酸化イットリウムが好ましいイットリウム源である。
【0081】
適切な希土類金属化合物としては、希土類金属の可溶性、不溶性の、有機塩および無機塩(例えば、希土類金属の酢酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、酸化物、水酸化物、モリブデン酸塩など)が挙げられる。
【0082】
イットリウム、ビスマス、ジルコニウム、タングステンもしくは希土類金属化合物が電着可能な組成物中に組み込まれ得る様々な方法がある。可溶性化合物は、「ニートで」加えられ得る(すなわち、他の成分との事前の混合も反応もなしに、組成物中に直接加えられ得る)。あるいは、可溶性化合物は、非ゲル状の、活性水素を含有する膜形成ポリマー、硬化剤および/もしくはその他の任意の非着色成分を含み得る、事前に分散された透明なポリマーフィード(polymer feed)に加えられ得る。他方で、不溶性化合物および/もしくは金属ピグメントは、電着可能な組成物中へのペーストの組み込みの前に、ピグメントペースト成分と事前にブレンドされ得る。
【0083】
本発明の電着可能なコーティング組成物は、耐UV分解性を付与するための、ヒンダードアミン光安定剤をさらに含み得る。適切なヒンダードアミン光安定剤としては、米国特許第5,260,135号に開示されているものが挙げられる。特定の実施形態において、これらの物質は、電着可能な組成物中のポリマー固体の総重量を基準として、0.1重量%〜2重量%の量で電着可能な組成物中に存在する。
【0084】
ピグメント組成物および他の必要に応じた添加物(例えば、界面活性剤、湿潤剤、および/もしくは触媒)もまた、電着可能なコーティング組成物中に含まれ得る。ピグメント組成物は、無機ピグメント(例えば、酸化鉄、チャイナクレー、カーボンブラック、炭塵、二酸化チタン、タルク、硫酸バリウム)ならびに有機有色ピグメント(例えば、フタロシアニングリーンなど)を含む従来のタイプのものであり得る。組成物のピグメント含量は、通常、ピグメントとポリマーとの比として表される。ピグメントが使用される場合、ピグメントとポリマーとの比は、通常、約0.02〜1:1の範囲内である。上記に述べた他の添加物は、ポリマー固体の重量を基準として、通常分散物中に、約0.01重量%〜3重量%の量で存在する。
【0085】
特定の実施形態において、本発明の電着可能な組成物は、組成物の総重量を基準として、5重量%〜25重量%のポリマー固体含量を有する。
【0086】
特定の実施形態において、本発明はまた、導電性基材をコーティングするための方法にも関する。特定の実施形態において、このような方法は、(a)電着可能なコーティング組成物(例えば、上記に述べたような組成物)を基材に電気泳動的に沈着し、基材の少なくとも一部分に電着したコーティングを形成する工程、および(b)コーティングされた基材を、基材上の電着したコーティングが硬化するに充分な温度でかつ充分な時間にわたって加熱する工程を包含する。特定の実施形態において、このような方法は、(a)電着可能なコーティング組成物(例えば、上記に述べたような組成物)を基材に電気泳動的に沈着し、基材の少なくとも一部分に電着したコーティングを形成する工程、(b)コーティングされた基材を、基材上の電着したコーティングが硬化するに充分な温度でかつ充分な時間にわたって加熱する工程、および(c)硬化した電着したコーティングに、ピグメントを含有するコーティング組成物1つ以上および/もしくはピグメントを含まないコーティング組成物1つ以上を直接塗り、硬化した電着したコーティングの少なくとも一部分の上にトップコートを形成する工程、ならびに(d)工程(c)のコーティングされた基材を、トップコートが硬化するに充分な温度でかつ充分な時間にわたって加熱する工程を包含する。
【0087】
これらの方法において、電着可能なコーティング組成物は、種々の導電性基材(種々の金属性基材を含む)のうちのいずれかの少なくとも一部分に電気泳動的に沈着され得る。例えば、適切な金属性基材としては、鉄金属および非鉄金属が挙げられ得る。適切な鉄金属としては、鉄、鋼およびそれらの合金が挙げられる。有用な鋼物質の非限定的な例としては、冷間圧延した鋼、亜鉛めっきした(すなわち、亜鉛コーティングされた)鋼、電気亜鉛めっきした(electrogalvanized)鋼、ステンレス鋼、酸洗いされた鋼、GALVANNEAL(登録商標)、GALVALUME(登録商標)およびGALVAN(登録商標)亜鉛−アルミニウム合金でコーティングした鋼ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。有用な非鉄金属としては、導電性炭素でコーティングされた物質、アルミニウム、銅、亜鉛、マグネシウムおよびこれらの合金が挙げられる。冷間圧延もまた、溶液(例えば、リン酸金属溶液、IIIB族金属もしくはIVB族金属を少なくとも1つ含む水溶液、有機リン酸エステル溶液、有機ホスホン酸エステル溶液および以下で議論するような上記の組み合わせ)で前処理される際に適切である。鉄金属および非鉄金属の組み合わせもしくは複合材もまた使用され得る。
【0088】
本発明のこれらの方法において、電着可能なコーティング組成物は、裸の金属もしくは前処理された金属のいずれかに塗られ得る。「裸の金属」によって、前処理組成物(例えば、従来のリン酸処理溶液、重金属すすぎなど)で処理されていない新しい金属基材が意味する。さらに、本発明の目的のために、裸の金属基材としては、基材の切断端(そうでなければ基材の非端部表面上が処理および/もしくはコーティングされる)が挙げられ得る。
【0089】
何らかのコーティング組成物の何らかの処理もしくは湿布の前に、基材は必要に応じて、製造物に形成され得る。1つより多くの金属基材の組み合わせが一緒に組み立てられて、このような製造物へと形成され得る。
【0090】
また、本明細書中で使用される場合、「基材」の少なくとも一部分の「上に」形成された電着可能な組成物もしくはコーティングとは、基材表面の少なくとも一部分の上で直接形成された組成物、ならびに基材の少なくとも一部分に事前に塗られた任意のコーティングもしくは前処理物質の上に形成された組成物もしくはコーティングを意味することが理解されるべきである。
【0091】
すなわち、コーティング組成物が電着した「基材」は、1つ以上の前処理および/もしくはプライマーコーティングが事前に塗られている上記の導電性基材のいずれをも含み得る。例えば、「基材」は、金属性基材および基材表面の少なくとも一部分の上の溶接可能なプライマーコーティングを含み得る。上記の電着可能なコーティング組成物は、その後、それらの少なくとも一部分の上に電着され、そして硬化する。以下に詳述されるようなトップコーティング組成物の1つ以上が、硬化した電着したコーティングの少なくとも一部分の上に続いて塗られ得る。
【0092】
例えば、基材は、前述の導電性基材のうちのいずれかおよびその基材の少なくとも一部分の上に塗られた前処理組成物(前処理組成物は、キャリア媒質中(典型的には、水性媒質)に可溶化もしくは分散された1つ以上のIIIB族の元素もしくはIVB族の元素を含有する化合物もしくはその混合物を含む溶液を含む)を含み得る。IIIB族の元素およびIVB族の元素は、例えば、Handbook of Chemistry and Physics(60th Ed.1980)に示されているとおりのCAS Periodic Table of the Elementsによって定義される。遷移金属化合物および希土類金属化合物は、典型的には、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、イットリウムおよびセリウムならびにそれらの混合物の化合物である。典型的なジルコニウム化合物は、ヘキサフルオロジルコニウム酸、アルカリ金属およびそのアンモニウム塩、炭酸アンモニウムジルコニウム、硝酸ジルコニル、カルボン酸ジルコニウム、およびヒドロキシカルボン酸ジルコニウム(例えば、ヒドロフルオロジルコニウム酸、酢酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウム、グリコール酸アンモニウムジルコニウム、乳酸アンモニウムジルコニウム、クエン酸アンモニウムジルコニウムおよびこれらの混合)から選択され得る。
【0093】
前処理組成物のキャリアはまた、膜形成樹脂(例えば、1つ以上のアルカノールアミンと少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシ官能性物質の反応生成物(例えば、米国特許第5,653,823号中に開示されているようなもの))も含み得る。他の適切な樹脂としては、水に可溶もしくは水に分散可能なポリアクリル酸(例えば、米国特許第3,912,548号および同第5,328,525号中に開示されているようなもの);フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(例えば、米国特許第5,662,746号中に開示されているようなもの);水溶性ポリアミド(例えば、WO95/33869中に開示されているようなもの);アリルエーテルとマレイン酸もしくはアクリル酸とのコポリマー(カナダ特許出願番号第2,087,352号中に記載されているとおり);および水に可溶もしくは分散可能な樹脂(エポキシ樹脂、アミノプラスト、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、タンニンおよびポリビニルフェノール(米国特許第5,449,415号中に記載されているとおり)を含む)。
【0094】
さらに、非鉄もしくは鉄の基材は、有機リン酸エステルもしくは有機ホスホン酸エステルの非絶縁層(例えば、米国特許第5,294,265号および同第5,306,526号中に記載されているもの)で前処理され得る。このような有機リン酸エステルもしくは有機ホスホン酸エステルの前処理物質は、PPG Industries,Inc.より、NUPAL(登録商標)の商用名で市販されている。非導電性コーティング(例えば、NUPAL)を基材に塗った後、コーティング癒着の前に、非導電性コーティング層が非絶縁性であるに充分に薄いことを確実にするために基材を脱イオン水ですすぎ得る。前処理のコーティング組成物は、基材のぬれを向上させるために界面活性剤を含み得る。キャリア媒質中の他の必要に応じた物質としては、消泡剤および基材湿潤剤が挙げられる。
【0095】
前処理コーティング組成物は、クロム含有物質を含まなくてもよく、すなわち、この組成物は、約2重量%未満のクロム含有物質(CrOとして表される)(例えば、約0.05重量%未満のクロム含有物質)を含む。
【0096】
特定の前処理プロセスにおいて、前処理組成物を金属基材の表面上に沈着させる前に、表面を完全に清浄および脱脂することにより、異物が金属表面から除去される。このような清浄は、物理的もしくは化学的手段によって(例えば、表面を機械的に研磨することによるか、もしくは市販されているアルカリ性もしくは酸性の洗浄剤(例えば、メタケイ酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム)での清浄/脱脂することによる)実行され得る。適切な洗浄剤の非限定的な例は、CHEMKLEEN(登録商標) 163(PPG Pretreatment and Specialty Products of Troy、Michから市販されているアルカリベースの洗浄剤)である。酸性洗浄剤もまた使用され得る。清浄工程に続いて、金属基材は水ですすがれ得、その後、空気乾燥(例えば、エアナイフを使用してか、基材を高温に短時間さらすことにより水をきることによってか、もしくは基材をスクイジーロールの間にとおすことによって)され得る。前処理コーティング組成物は、金属基材の外部表面の少なくとも一部分の上に沈着され得る。前処理膜の厚さは変わり得るが、しばしば1マイクロメートル未満(例えば、1ナノメートル〜500ナノメートル、もしくは場合によっては、10ナノメートル〜300ナノメートル)である。
【0097】
前処理コーティング組成物は、任意の従来の適用技術によって(例えば、バッチプロセスまたは連続プロセスでの、スプレー、液浸もしくはロールコーティング)金属基材の表面に塗られ得る。適用時の前処理コーティング組成物の温度は、時々10℃〜85℃(例えば、15℃〜60℃)である。場合によっては、適用時の前処理コーティング組成物のpHは、2.0〜5.5(例えば、3.5〜5.5)である。媒質のpHは、鉱酸(例えば、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸、リン酸など(これらの混合物を含む));有機酸(例えば、乳酸、酢酸、クエン酸、スルファミン酸、もしくはこれらの混合物)、および水に可溶もしくは水に分散可能な塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、アンモニアもしくはアミン(例えば、トリエチルアミン、メチルエチルアミンもしくはこれらの混合物))を使用して調節され得る。
【0098】
前処理コーティング組成物は、任意の従来のプロセス(例えば、連続プロセス)によっても塗られ得る。例えば、コイル産業において、基材はしばしば清浄され、すすがれ、その後、化学的コーターでのロールコーティングによって前処理コーティング組成物と接触させられる。その後、処理された小片は加熱することにより乾燥され、従来のコイルコーティングプロセスによって塗られ、そして焼かれる。
【0099】
前処理組成物のミル適用は、液浸、スプレーもしくはロールコーティングによって、新たに製造された金属小片に塗られ得る。過剰な前処理組成物は時々、リンガーロールによって除去される。金属表面に前処理組成物が塗られた後、金属は、脱イオン水ですすがれ、室温もしくは上昇した温度で乾燥され、処理された基材表面から過剰な水分を除去し、あらゆる硬化性コーティング組成物を硬化させて、前処理コーティングが形成され得る。あるいは、場合によっては、処理された基材は、65℃〜125℃の範囲の温度まで、2秒〜30秒間熱されて、その上に前処理コーティング組成物の乾燥樹脂を有するコーティングされた基材が生成される。基材が既にホットメルト生成プロセスから熱されている場合、乾燥を促進するために、処理された基材の塗布後加熱は必要ない。コーティング中の固体の百分率、コーティング組成物の成分および基材のタイプのような変動要因に依存して、コーティングを乾燥するための温度および時間は変わる。
【0100】
場合によっては、前処理組成物の残留物の膜範囲は、1平方メートルあたり1〜10,000ミリグラム(mg/m)(例えば、10mg/m〜400mg/m)である。
【0101】
基材が前処理されているかいないかにかかわらず、溶接可能なプライマーの層もまた基材に塗られ得る。典型的な溶接可能なプライマーは、BONAZINC(登録商標)(亜鉛を多く含有するミル適用有機膜形成組成物)であり、これは、PPG Industries,Inc.、Pittsburgh、Paより市販されている。BONAZINCはしばしば、少なくとも1マイクロメートルの厚さ(例えば、3マイクロメートル〜4マイクロメートルの厚さ)になるように塗られる。リン化鉄を多く含有するプライマーのような他の適切な溶接可能なプライマーが市販されている。
【0102】
電着プロセスはしばしば、導電性基材を、水性の電着可能組成物の電着浴中に浸す工程を包含し、基材は、カソードおよび逆に荷電した対電極(すなわち、アノード)を含む電気回路中でカソードとして働く。電着可能なコーティング組成物の実質的に連続した付着性膜を導電性基材の表面に電着させるために、電極間に充分な電流が印加される。電着はしばしば、1ボルト〜数千ボルトの範囲の一定の電圧(例えば、50ボルト〜500ボルト)で行なわれる。最大電流密度はしばしば、1平方フィートあたり1.0アンペアと15アンペアとの間(1平方メートルあたり10.8アンペア〜161.5アンペア)であり、電着プロセスの間に急速に降下する傾向があり、これは、連続自己支持性膜の形成を示す。
【0103】
電着プロセスにおいて、コーティングされた、カソードとして働く金属基材および導電性アノードは、陽イオン性の電着可能組成物と接触して設置される。アノードおよびカソードが電着可能組成物と接触しながらカソードとアノードとの間を電流が通過すると、電着可能組成物の付着膜が、実質的に連続した形式で導電性基材に沈着する。
【0104】
特定の実施形態において、本発明は、導電性基材に耐光分解性の多層コーティングを形成するための方法に関し、これは、(a)上記に述べたような電着可能なコーティング組成物を基材に沈着し、基材の少なくとも一部分に電着したコーティングを形成する工程(この基材は、カソードおよびアノードを含む電気回路中でカソードとして働き、このカソードおよびアノードは、電着可能なコーティング組成物中に浸され、ここで、電流がカソードとアノードとの間をとおされ、基材の少なくとも一部分へのコーティングの電着を生じる);(b)コーティングされた基材を、基材上の電着したコーティングが硬化するに充分な温度でかつ充分な時間にわたって加熱する工程;(c)硬化した電着したコーティングに、ピグメントを含有するコーティング組成物1つ以上および/もしくはピグメントを含まないコーティング組成物1つ以上を直接塗り、硬化した電着したコーティングの少なくとも一部分の上にトップコートを形成する工程;ならびに(d)工程(c)のコーティングされた基材を、トップコートを硬化するに充分な温度でかつ充分な時間にわたって加熱する工程を包含する。これらの方法において、非鉄性アノード(例えば、酸化ルテニウムもしくは炭素の棒からなるアノード)が、回路中に含まれる。
【0105】
大部分の従来の陽イオン性電着浴系において、アノードは鉄性物質(例えば、ステンレス鋼)からなる。典型的な陽イオン性浴は、4〜7の範囲の酸性pH(しばしば、5〜6.5)を有する。しかしながら、典型的な電着浴系において、アノード液(すなわち、アノードのごく近くの浴液)は、アノードにおけるもしくはアノード周辺の酸の濃度のために、3.0以下という低さのpHを有し得る。これらの強い酸性pHの範囲において、鉄性アノードは分解し得、それによって、可溶性鉄を浴中に放出する。「可溶性鉄」によって、少なくとも部分的に水に可溶なFe2+もしくはFe3+の塩が意味される。電着プロセスの間に、可溶性鉄は樹脂バインダーに電着され、そして硬化した電着したコーティング中に存在する。可溶な形態の鉄の存在は、風化作用にさらされる際、硬化した電着したコーティング層からの、続けて塗られたトップコート層の層間剥離の一因であり得ることが見出された。前述を考慮して、電着浴の形態の場合、電着可能なコーティング組成物は、10ppm未満(典型的には、1ppm未満)の可溶性鉄を含むことが望ましい。これは、非鉄性アノードを回路中に含むことによって成し遂げられ得る。
【0106】
電着可能なコーティング組成物が導電性基材の少なくとも一部分の上に電着したら、コーティングされた基材は、基材上の電着したコーティングを硬化するに充分な温度でかつ充分な時間にわたって加熱される。特定の実施形態において、コーティングされた基材は、250°F〜450°F(121.1℃〜232.2℃)(例えば、275°F〜400°F(135℃〜204.4℃)、もしくは場合によっては、300°F〜360°F(149℃〜180℃))の範囲の温度まで加熱される。硬化時間は、硬化温度ならびに他の変動要因(例えば、電着したコーティングの膜の厚さ、組成物中に存在する触媒のレベルおよびタイプなど)に依存し得る。本発明の目的のために、必要である全てのことは、時間が基材上の電着コーティングの硬化をもたらすに充分であることである。例えば、硬化時間は、10分〜60分の範囲(例えば、20分〜40分)であり得る。
【0107】
特定の実施形態において、コーティングされた基材は、360°F(180℃)以下の温度まで、基材上の電着したコーティングの硬化をもたらすに充分な時間にわたって加熱される。生じた硬化した電着したコーティングの厚さはしばしば、15ミクロン〜50ミクロンの範囲である。
【0108】
本明細書中で使用される場合、組成物に関連して使用される場合(例えば、「硬化した組成物」)、用語「硬化」は、組成物の任意の架橋可能な成分が少なくとも部分的に架橋されていることを意味するものとする。本発明の特定の実施形態において、架橋可能な成分の架橋密度(すなわち、架橋の程度)は、完全架橋の5%〜100%の範囲である。他の実施形態において、架橋密度は、総架橋の35%〜85%の範囲であるか、もしくは場合によっては、50%〜85%の範囲である。当業者は、架橋の存在および程度(すなわち、架橋密度)が、種々の方法(例えば、窒素下で行なわれるTA Instruments DMA 2980 DMTA分析器を使用した動的機械的熱分析(DMTA))によって決定され得ることを理解する。この方法は、コーティングもしくはポリマーの遊離膜のガラス転移温度および架橋密度を決定する。硬化した物質のこれらの物理的特徴は、架橋ネットワーク構造と関連している。本発明の目的のために、硬化した組成物は、アセトンに浸した布で2回の摩擦を受けた際、コーティングを除去せずに、少なくとも100回の2回摩擦に耐える。
【0109】
他の実施形態において、本発明は、電着可能なコーティング組成物が導電性基材に電気泳動的に塗られ、そして、5ppm以下(例えば、1ppm以下)の窒素酸化物(NO)を有する雰囲気で、上記のように基材上の電着したコーティングを硬化するに充分な温度でかつ充分な時間にわたって加熱される方法に関する。硬化オーブン内のNOの存在は、風化作用にさらされた際に、硬化した電着したコーティングと任意の続いて塗られたトップコートとの間の層間剥離を引き起こし得る酸化雰囲気を生じ得る。
【0110】
本発明の特定の方法にしたがって、電着したコーティングが基材上に硬化したら、ピグメントを含有するコーティング組成物1つ以上、およびもしくはピグメントを含有しないコーティング組成物1つ以上が、硬化した電着したコーティングに直接塗られる。単層コーティングが所望される例において、トップコート塗布の必要はない。
【0111】
特定の実施形態において、本明細書中に開示されている特定の電着可能組成物によってもたらされた向上された耐光分解性のために、プライマーもしくはプライマー表面剤の使用は不必要である。適切なトップコート(ベースコート、透明コート、着色性単一コートおよび透明で着色された複合組成物を含む)は、当業者に公知のいずれかを含み、それぞれは独立して、水系、溶媒系、固体粒子(すなわち、粉末コーティング組成物)の形態もしくは粉末スラリーの形態であり得る。トップコートは典型的に、膜形成ポリマー、架橋物質を含み、そして、着色されたベースコートもしくは単一コートであれば、1つ以上のピグメントを含む。
【0112】
適切なベースコート組成物の非限定的な例としては、水系ベースコート(例えば、米国特許第4,403,003号;同第4,147,679号;および同第5,071,904号中に開示されているとおり)が挙げられる。適切な透明コート組成物としては、米国特許第4,650,718号;同第5,814,410号;同第5,891,981号およびWO98/14379中に開示されているものが挙げられる。
【0113】
トップコート組成物は、従来の手段(ブラッシング、ディッピング、フローコーティング、スプレーなどを含む)によって塗られ得るが、これらは、スプレーによって最も多く塗られる。エアースプレーおよび静電スプレーのための通常のスプレー技術および装置、ならびに手動もしくは自動のいずれかの方法が使用され得る。基材にそれぞれのトップコートを塗った後、加熱もしくは空気乾燥の時間によって膜から有機溶媒および/もしくは水を追い出すことにより、基材の表面上に膜が形成される。
【0114】
典型的に、着色性ベースコートの厚さは、0.1ミル〜5ミル(2.54ミクロン〜127ミクロン)の範囲(例えば、0.4ミル〜1.5ミル(10.16ミクロン〜38.1ミクロン))である。透明コートの厚さはしばしば、0.5ミル〜5ミル(12.7ミクロン〜127ミクロン)の範囲(例えば、1.0ミル〜3ミル(25.4ミクロン〜76.2ミクロン))である。
【0115】
加熱は、いずれの続けて塗られるトップコーティングも、コーティング界面で起こる溶解が起こらずに塗られ得ることを確実にするのに充分であるべきである。適切な乾燥条件は、個々のトップコート組成物および周囲湿度(トップコート組成物が水系である場合)に依存するが、一般的には、80°F〜250°F(20℃〜121℃)の温度での1分〜5分の乾燥時間が使用される。通常、コートの間に、事前に塗られたコートは、水切り(すなわち、周囲の条件に1分〜20分間さらされる)される。
【0116】
トップコート組成物を塗った後、コーティングされた基材はその後、コーティング層の硬化をもたらすに充分な温度かつ充分な時間にわたって加熱される。硬化操作において、溶媒は追い出され、そしてトップコートの膜形成物質はそれぞれ架橋される。加熱もしくは硬化の操作はしばしば、160°F〜350°F(71℃〜177℃)の範囲の温度で行なわれるが、必要であれば、架橋機構を活性化させるために必要に応じてより低いもしくはより高い温度が使用され得る。硬化は上記に定義したとおりである。
【0117】
特定の実施形態において、硬化された場合、上記で述べたトップコートは、400ナノメートルで測定したときに、少なくとも0.1%の光透過率を有し得る。光透過率のパーセントは、150ミリメートルのLap Sphere積分球を用いてPerkin−Elmer Lambda 9スキャンニング分光光度計を使用して、1.6ミル〜1.8ミル(40.64ミクロメートル〜45.72ミクロメートル)の範囲の膜の厚さの遊離した硬化したトップコート膜の光透過率を測定することによって決定される。ASTM E903、Standard Test Method for Solar Absorbance,Reflectance,and Transmittance of Materials Using Integrating Spheresにしたがって、Perkin−Elmer UV WinLabソフトウェアを使用して、データは収集される。
【0118】
本発明の説明は以下の実施例であるが、しかしながら、これらは本発明をそれらの詳細まで限定するものとしてみなされるべきではない。そうでないと示されていない限り、以下の実施例内ならびに本明細書の全体にわたっての全ての部数および百分率は、重量によるものである。
【実施例】
【0119】
(実施例A)
本実施例は、非ゲル状の活性水素を含有する膜形成樹脂を含む樹脂相の水中の安定した分散物の調製を説明する。成分および量は表1に提供される。
【0120】
【表1】

Ciba Geigy Corporationより入手可能である、光安定剤。
Du Pont Specialty Chemicalsより入手可能である、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)。
Dow Chemical Co.より入手可能である、N−ブトキシプロパノール溶媒。
Dow Chemical Co.より入手可能である、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶媒。
Arkema Inc.より入手可能である、ミネラルスピリット中の50% t−ブチルペルオキシアセテート。
ジエチレントリアミンおよびメチルイソブチルケトン(メチルイソブチルケトン中72.69%固体)から形成されたジケチミン。
ブロックされたイソシアネート硬化剤、メチルイソブチルケトン中79.5%固体。10当量のイソホロンジイソシアネートと1当量のトリメチロールプロパン、3当量のビスフェノールA−エチレンオキシドポリオール(ビスフェノールAとエチレンオキシドとのモル比率1:6で調製された)および1,2−ブタンジオールからの6当量の第一級ヒドロキシとの反応によって調製された。
【0121】
成分Aを、攪拌器、サーモカップル、窒素入り口およびDean and Starkコンデンサーを備えた3リットルのフラスコ内で還流まで上げた。温度は、そうでないと指示されるまでは、プロセス全体にわたって還流を維持するように調節した。成分Bを等速度で150分にわたって加え、続けてすぐに、成分Cを10分にわたって加えた。さらに10分後、成分Dを10分にわたって加えた。90分後、成分Eを続けて加え、90分後、成分Fを加えた。60分後、成分Gを加え、そして、温度を60分かけて105℃まで降下させた。
【0122】
その間に、別の容器内で成分Hを50℃まで加熱した。その後、1764gの反応混合物を、すばやく攪拌しながら成分H中に注いだ。生じた分散物は、25%の固体含量を有した。
【0123】
(実施例B1〜B3)
実施例Aで調製した分散物を3等分に分けた。実施例B1では、減圧下の蒸留によって部分1から溶媒を除去した。実施例B2では、部分2を室温で攪拌しながら、固体状の1%TMXDIをメチルイソブチルケトン中の50重量%溶液として、1時間にわたって加えた。その後、減圧下の蒸留によって溶媒を除去した。実施例3Bでは、部分3を室温で攪拌しながら、固体状の2%TMXDIをメチルイソブチルケトン中の50重量%溶液として、1時間にわたって加えた。その後、減圧下の蒸留によって溶媒を除去した。
【0124】
(実施例B4およびB5)
実施例B4では、実施例Aで調製した700gの分散物を、米国特許出願公開第2003/0054193号A1の実施例H中で調製した627gの樹脂と混合した。実施例B5では、実施例B4の混合物を室温で攪拌しながら、2.26gのTMXDIと2.26gのメチルイソブチルケトンとの混合物を1時間にわたって加えた。その後、減圧下の蒸留によって溶媒を除去した。
【0125】
(実施例C1〜C3)
本実施例は、活性水素を含有する膜形成樹脂を含む樹脂相の安定した水中分散物の調製を説明する。成分および量は表2に提供される。本実施例は、実施例C1〜C3について3回繰り返された。
【0126】
【表2】

Ciba Geigy Corporationより入手可能である、光安定剤。
Du Pont Specialty Chemicalsより入手可能である、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)。
10 Dow Chemical Co.より入手可能である、N−ブトキシプロパノール溶媒。
11 Dow Chemical Co.より入手可能である、プロピレングリコールモノメチルエーテル溶媒。
12 Arkema Inc.より入手可能である、ミネラルスピリット中の50% t−ブチルペルオキシアセテート。
13 ジエチレントリアミンおよびメチルイソブチルケトン(メチルイソブチルケトン中72.69%固体)から形成されたジケチミン。
14 ブロックされたイソシアネート硬化剤、メチルイソブチルケトン中79.5%固体。10当量のイソホロンジイソシアネートと1当量のトリメチロールプロパン、3当量のビスフェノールA−エチレンオキシドポリオール(ビスフェノールAとエチレンオキシドとのモル比率1:6で調製された)および1,2−ブタンジオールからの6当量の第一級ヒドロキシとの反応によって調製された。
【0127】
成分Aを、攪拌器、サーモカップル、窒素入り口およびDean and Starkコンデンサーを備えた3リットルのフラスコ内で還流まで上げた。温度は、そうでないと指示されるまでは、プロセス全体にわたって還流を維持するように調節した。成分Bを等速度で150分にわたって加え、続けてすぐに、成分Cを10分にわたって加えた。さらに10分後、成分Dを10分にわたって加えた。90分後、成分Eを続けて加え、90分後、成分Fを加えた。60分後、成分Gを加え、そして、温度を60分かけて105℃まで降下させた。
【0128】
その間に、別の容器内で成分Hを50℃まで加熱した。その後、1764gの反応混合物を、すばやく攪拌しながら成分H中に注いだ。生じた分散物は、25%の固体含量を有した。減圧下の蒸留によって溶媒を除去した。
【0129】
【表2A】

**成分Fの添加の45分後、サンプルはゲル化した。
【0130】
(コーティング組成物の実施例1)
本実施例は、電着浴の形態での電着可能なコーティング組成物の調製を説明する。以下に記載されているとおりに、そして表3中に列挙されている成分の混合物から電着浴を調製した。
【0131】
【表3】

15 実施例B1の樹脂。
16 米国特許出願公開第2003/0054193号A1の実施例H中で調製された樹脂。
17 米国特許第4,891,111号中に記載されているように調製された、2モルのジエチレングリコールブチルエーテルと1モルのホルムアルデヒドとの反応生成物。
18 米国特許第4,423,166号中に記載されているように調製された、Jeffamine D400(Huntsman Corporationより入手可能なポリオキシプロピレンジアミン)とDER−732(Dow Chemical Co.から市販されている脂肪族エポキシド)との反応生成物。
19 Rohm and Haasから市販されている製品。
20 PPG Industriesより、E9003として市販されているピグメントペースト。
【0132】
攪拌しながら、陽イオン性樹脂Aを100gの脱イオン水で希釈した。可塑剤を、希釈した陽イオン性樹脂に直接加えた。柔軟剤を100gの脱イオン水で希釈し、その後、樹脂混合物に攪拌しながら加えた。Kathonを100gの脱イオン水で希釈し、その後、樹脂混合物に攪拌しながら加えた。陽イオン性樹脂Bを、攪拌しながら100gの脱イオン水で別に希釈し、その後、還元樹脂混合物中に攪拌しながらブレンドした。ピグメントペーストを100gの脱イオン水で希釈し、上記の樹脂ブレンドに加えた。その後、残りの脱イオン水を樹脂混合物に攪拌しながら加えた。最終的な浴固体は約22%であり、ピグメントと樹脂との比は、0.15:1.0であった。限外ろ過によって浴の合計の25%を除去し、浴を2時間攪拌した後、脱イオン水で置き換えた。何らかの電気コーティングが起こる前に、塗料をさらに16時間攪拌させた。
【0133】
(コーティング組成物の実施例2)
本実施例は、電着浴の形態での電着可能なコーティング組成物の調製を説明する。実施例1記載されているとおりに、そして表4中に列挙されている成分の混合物から電着浴を調製した:
【0134】
【表4】

21 実施例B2の樹脂。
22 米国特許出願公開第2003/0054193号A1の実施例H中で調製された樹脂。
23 米国特許第4,891,111号中に記載されているように調製された、2モルのジエチレングリコールブチルエーテルと1モルのホルムアルデヒドとの反応生成物。
24 米国特許第4,423,166号中に記載されているように調製された、Jeffamine D400(Huntsman Corporationより入手可能なポリオキシプロピレンジアミン)とDER−732(Dow Chemical Co.から市販されている脂肪族エポキシド)との反応生成物。
25 Rohm and Haasから市販されている製品。
26 PPG Industriesより、E9003として市販されているピグメントペースト。
【0135】
(コーティング組成物の実施例3)
本実施例は、電着浴の形態での電着可能なコーティング組成物の調製を説明する。実施例1記載されているとおりに、そして表5中に列挙されている成分の混合物から電着浴を調製した:
【0136】
【表5】

27 実施例B3の樹脂。
28 米国特許出願公開第2003/0054193号A1の実施例H中で調製された樹脂。
29 米国特許第4,891,111号中に記載されているように調製された、2モルのジエチレングリコールブチルエーテルと1モルのホルムアルデヒドとの反応生成物。
30 米国特許第4,423,166号中に記載されているように調製された、Jeffamine D400(Huntsman Corporationより入手可能なポリオキシプロピレンジアミン)とDER−732(Dow Chemical Co.から市販されている脂肪族エポキシド)との反応生成物。
31 Rohm and Haasから市販されている製品。
32 PPG Industriesより、E9003として市販されているピグメントペースト。
【0137】
(コーティング組成物の実施例4)
本実施例は、電着浴の形態での電着可能なコーティング組成物の調製を説明する。実施例1記載されているとおりに、そして表6中に列挙されている成分の混合物から電着浴を調製した:
【0138】
【表6】

33 実施例C1の樹脂。
34 米国特許出願公開第2003/0054193号A1の実施例H中で調製された樹脂。
35 米国特許第4,891,111号中に記載されているように調製された、2モルのジエチレングリコールブチルエーテルと1モルのホルムアルデヒドとの反応生成物。
36 米国特許第4,423,166号中に記載されているように調製された、Jeffamine D400(Huntsman Corporationより入手可能なポリオキシプロピレンジアミン)とDER−732(Dow Chemical Co.から市販されている脂肪族エポキシド)との反応生成物。
37 Rohm and Haasから市販されている製品。
38 PPG Industriesより、E9003として市販されているピグメントペースト。
【0139】
(コーティング組成物の実施例5)
本実施例は、電着浴の形態での電着可能なコーティング組成物の調製を説明する。実施例1記載されているとおりに、そして表7中に列挙されている成分の混合物から電着浴を調製した:
【0140】
【表7】

39 実施例B5の樹脂。
40 米国特許第4,891,111号中に記載されているように調製された、2モルのジエチレングリコールブチルエーテルと1モルのホルムアルデヒドとの反応生成物。
41 米国特許第4,423,166号中に記載されているように調製された、Jeffamine D400(Huntsman Corporationより入手可能なポリオキシプロピレンジアミン)とDER−732(Dow Chemical Co.から市販されている脂肪族エポキシド)との反応生成物。
42 Rohm and Haasから市販されている製品。
43 PPG Industriesより、E9003として市販されているピグメントペースト。
【0141】
(電気コーティングプロセス)
上記の実施例1〜5の電着浴の組成物のそれぞれは、2つの異なる基材上に電着された。1つは、リン酸亜鉛での前処理、続いて脱イオン水でのすすぎにより前処理された冷間圧延した鋼の基材であり;2つめは、リン酸亜鉛での前処理、続いて脱イオン水でのすすぎで前処理された電気亜鉛めっきした基材(それぞれ、CRS C700DIおよびE60 EZG C700DIとしてACT Laboratoriesから市販されている)であった。それぞれの陽イオン性電着の条件は、以下のとおりであった:90°F(32℃)で、225〜250ボルトで2分間において、1.0ミル〜1.1ミルの硬化した膜の厚さを得た。脱イオン水でのすすぎの後、電気コーティングされたパネルを電気オーブン中で、360°F(182℃)で30分間、硬化した。
【0142】
(試験プロセス)
硬化した電気コート膜を、膜の滑らかさおよび耐油しみに関して評価した。膜の厚さを、Fisher Permascopeを使用して測定した。膜の滑らかさを、Gould Surfanalyzer 150を使用して測定した。記録された膜の厚さおよび滑らかさは、それぞれ 3回の測定の平均に基づいた。膜の滑らかさの結果は、以下の表8に報告されている。
【0143】
耐油しみ汚染の試験は、硬化の際に、電着したコーティングが、基材と一緒に浴中に持ち込まれた不純物によるクレーター形成を阻害する能力を評価する。CRS C700DI試験パネルの上半分にTRIBOL−ICO媒質オイルで斑点をつけ、パネルの下半分にLUBECON ATSオイルで斑点をつけることによって、パネルを耐油しみに関して試験した。これらのオイルは、自動車組み立て工場においてチェーン潤滑のために典型的に使用されるものの例である。その後、油しみ試験のパネルを電気コーティングし、そして上記に述べたように硬化させて、1.0ミル〜1.1ミルの硬化した膜の厚さを得た。耐油しみ汚染の評価等級は、以下の表8に報告されている。
【0144】
【表8】

10=最も良い;0=最も悪い
表8の結果は、TMXDIを含む電着浴の組成物は、TMXDIを含まない対照の浴に対して向上した耐油しみを示すことを説明する。さらに、膜の滑らかさは、1%TMXDIの添加によって悪影響を受けなかった。
【0145】
前述の記載中に開示されている概念から逸脱せずに本発明に改変がなされ得ることは、当業者によって容易に理解される。このような改変は、特許請求の範囲がそれらの言葉によって明白にそうでないと述べられていない限り、特許請求の範囲内に含まれるとみなされるべきである。したがって、本明細書中に詳述されている個々の実施形態は、単なる説明的なものであって、添付される特許請求の範囲ならびに任意およびすべてのこれらの同等物の全幅が与えられるべき本発明の範囲を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒質中に分散された高分子量樹脂相を含む安定した水性分散物を作るための方法であって、該方法は:
(a)活性水素を含有する膜形成樹脂を含む非ゲル状樹脂相の安定した分散物を分散媒質中に形成する工程;および
(b)該安定した分散物中で活性水素を含有する膜形成樹脂を鎖伸長して、分散媒質中に分散された高分子量樹脂相を含む安定した水性分散物を形成する工程を包含する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって作られた前記水性分散物を含む、電着可能なコーティング組成物。
【請求項3】
前記安定した分散物が、少なくとも2つの異なる非ゲル状の、活性水素を含有する膜形成樹脂の混合物を含む樹脂相を含む、請求項2に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項4】
前記混合物が、陽イオン性ポリエポキシドポリマーおよび陽イオン性アクリルポリマーを含む、請求項3に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項5】
前記活性水素を含有する膜形成樹脂が、アクリルポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記活性水素を含有する膜形成樹脂が、陽イオン性アミン塩の基を含む、請求項5に記載の方法であって、ここで、該アミン塩の基は、構造:
【化1】

を有する、ペンダントおよび/もしくは末端のアミノ基から誘導され、ここで、Rは、HもしくはC〜C18アルキルを表し;R、R、RおよびRは、同じであるか、もしくは異なっており、それぞれは独立して、HもしくはC〜Cアルキルを表し;nは、1〜11の範囲の値を有する整数であり;ならびにXおよびYは同じであっても異なっていてもよく、それぞれは独立して、ヒドロキシル基もしくはアミノ基を表す、方法。
【請求項7】
前記非ゲル状の樹脂相が、100,000〜600,000のZ平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
鎖伸長の前に、前記活性水素を含有する膜形成樹脂が、ポリマー固体1グラムあたり、0.1ミリ当量〜3.0ミリ当量の陽イオン性塩の基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記高分子量樹脂相が、前記非ゲル状樹脂相よりも、少なくとも25%大きいZ平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記高分子量樹脂相が、少なくとも200,000のZ平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記高分子量樹脂相が、前記非ゲル状樹脂相よりも、少なくとも5%大きいZ平均分子量を有する、請求項3に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項12】
前記高分子量樹脂相が、少なくとも150,000のZ平均分子量を有する、請求項3に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項13】
前記安定した分散物中での前記活性水素を含有する膜形成樹脂の鎖伸長が、該樹脂とブロックされていないポリイソシアネートを含む反応物とを反応させることによって遂行される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ブロックされていないポリイソシアネートが、m−テトラメチルキシレンジイソシアネートを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
鎖伸長の後、前記活性水素を含有する膜形成樹脂が、鎖伸長の前より、樹脂固体1グラムあたり、0.02ミリ当量〜0.3ミリ当量少ない陽イオン性塩の基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項2に記載の電着可能なコーティング組成物で少なくとも部分的にコーティングされた、電着可能な基材。
【請求項17】
水性媒質中に分散された樹脂相を含む硬化性の電着可能なコーティング組成物であって、ここで、該樹脂相は:
(a)少なくとも部分的にブロックされた脂肪族ポリイソシアネート硬化剤、および
(b)活性水素を含有し、陽イオン性アミン塩の基を含有する樹脂であって、カソードに電着可能な樹脂を含み、ここで、該アミン塩の基は、構造:
【化2】

を有する、ペンダントおよび/もしくは末端のアミノ塩の基から誘導され、
ここで、Rは、HもしくはC〜C18アルキルを表し;R、R、RおよびRは、同じであるか、もしくは異なっており、それぞれは独立して、HもしくはC〜Cアルキルを表し;そしてXおよびYは同じであっても異なっていてもよく、それぞれは独立して、ヒドロキシル基もしくはアミノ基を表し、そして
該樹脂相は、少なくとも200,000のZ平均分子量を有する、組成物。
【請求項18】
前記樹脂相が、500,000〜1,500,000のZ平均分子量を有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の組成物で少なくとも部分的にコーティングされた、電着可能な基材。
【請求項20】
導電性基材をコーティングするための方法であって、該方法は、
(a)請求項17に記載の電着可能なコーティング組成物を該基材に電気泳動的に沈着する工程、および
(b)コーティングされた基材を、該基材上の電着したコーティングが硬化するに充分な温度でかつ充分な時間にわたって加熱する工程を包含する、方法。
【請求項21】
硬化したプライマーコーティング層を導電性基材の少なくとも一部分の上に、そして硬化したトップコート層を該硬化したプライマーコーティング層の少なくとも一部分の上に含む複数層複合コーティングであって、該プライマーコーティング層が、請求項18に記載の硬化性の電着可能なコーティング組成物から形成される、複数層複合コーティング。

【公表番号】特表2008−537571(P2008−537571A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505368(P2008−505368)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/011247
【国際公開番号】WO2006/110318
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】