説明

電磁弁およびこのような電磁弁を有する運転手支援装置

本発明は、弁体(3)を備え、弁体(3)に、シール素子(14)によって閉鎖可能な弁座(12)、シール素子(14)を少なくとも部分的に収容する電磁弁(1)の流体スペース(15)に開口する少なくとも1つの流出通路(13)、およびシール素子(14)を少なくとも部分的に包囲する流体案内素子(16)が設けられており、シール素子(14)が流体案内素子(16)における流体スペース(15)に向いていない側に形成された磁石アンカスペース(17)に配置された磁石アンカ(5)と作用結合している電磁弁(1)に関する。本発明によれば、流体案内素子(16)が弁体(3)を少なくとも部分的に包囲し、流体スペース(15)と磁石アンカスペース(17)との間の流体接続を形成する接続通路(21)が弁体(3)の壁(30)を半径方向に貫通する半径方向切欠き(29)と流体接続している。本発明は、さらにこのような電磁弁(1)を有する運転手支援装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体を備え、弁体に、シール素子によって閉鎖可能な弁座、シール素子を少なくとも部分的に収容する、電磁弁の流体スペースに開口する少なくとも1つの流出通路、およびシール素子を少なくとも部分的に包囲する流体案内素子が設けられており、シール素子が、流体案内素子における流体スペースに向いていない方の側に形成された磁石アンカスペースに配置された磁石アンカと作用結合している、電磁弁に関する。本発明は、さらに運転手支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で述べた形式の電磁弁は従来技術により既知である。このような電磁弁、例えば非通電状態で閉じられた2方向2位置電磁弁または同様に非通電状態で閉じられた2方向2位置電磁弁は、ABS、TCSまたはESPシステムで使用することができる。電磁弁はシール素子によって閉鎖可能な弁座を備える。シール素子は、このために少なくとも閉鎖位置と開放位置との間で変位可能である。閉鎖位置では、シール素子は、弁座を覆い、これにより閉鎖するように配置されている。開放位置では、シール素子は、例えば弁座から離間されており、これにより、流体が弁座を通って貫流することができる。閉鎖位置では電磁弁は流体を貫流させず、開放位置では流体は電磁弁を通って貫流することができる。シール素子は、少なくとも部分的に電磁弁の流体スペース内に配置されている。弁座を流体スペースの壁に設ける場合もある。特に流体スペースには少なくとも1つの流出通路が開口しており、流体スペースと流出通路との間には持続的な流体接続が提供されていてもよい。流入通路を介して電磁弁に流体を供給することができ、流体は流入通路を介して弁座に案内される。シール素子が開放位置に位置している場合、流体は弁座を通って流体スペースに到達し、次いで流出通路を介して流体スペースから排出することができる。
【0003】
開放位置では、シール素子は一般に弁座の上方に配置されており、したがって、弁座を通って流れる流体は、シール素子またはシール素子に結合された磁石アンカに沿って流れる。特に、流れ込む流体の流れ方向はしばしば流出通路からそれており、流体は排出通路に流入することができる前にまず流体スペースで制動される。この場合に、流体が磁石アンカと電磁弁のケーシングとの間の領域に到達する場合もある。シール素子および/または磁石アンカに沿って流入する流体の流れおよび磁石アンカとケーシングとの間に進入する流体はシール素子の変位可能性に影響を及ぼす。なぜなら、流体によって、シール素子もしくはシール素子に結合された磁石アンカに付加的に軸線方向力が加えられるからである。このようなことは、場合によっては電磁弁の調節能力にネガティブな影響を及ぼし得る。したがって、このような付加的な力が、ばね素子の戻し力、シール素子を変位するために磁石アンカに作用する磁力、および電磁弁の設計時に考慮される流体の加圧力の間の力の均衡に影響を及ぼす。これは、特に流出通路の開口が弁座に隣接する流体スペースに配置されており、弁座を介した流体の流入および流出通路を介した流出が反対方向に得られる電磁弁の場合である。
【0004】
基本的には、軸線方向にシール素子もしくは磁石アンカに作用する付加的な力の代わりに、回転対称的な半径方向力のみが生じる場合には、軸線方向の力均衡に影響がないので、有利である。このような理由で、例えば、流入する流体を流出通路の方向に変向するか、もしくは流出通路に案内する流体案内面を備える流体案内素子を設けてもよい。流体案内面は、この場合、少なくとも部分的に、有利には流出通路の方向に湾曲されていてもよい。この場合、流れ案内素子は、弁座が配置されている電磁弁の流体スペースから磁石アンカスペースを分離する。磁石アンカスペースには、シール素子と作用結合した磁石アンカが配置されている。この作用結合によって、シール素子は磁石アンカによって変位可能であり、シール素子は、少なくとも閉鎖位置と開放位置との間に設けられている。
【0005】
このような電磁弁は、例えば、ドイツ国特許出願公開第19802464号明細書により既知である。この明細書は、電磁弁のケーシング内に配置された、圧力媒体のための案内ボディを備え、この案内ボディが閉鎖体によって貫通されており、弁座圧力媒体と案内するように接続しており、弁ケーシングの周面側に少なくとも1つの流出開口を有するリング通路を弁の操作手段を含むスペースから分離する電磁操作式液圧弁を示している。この場合、案内ボディは端面で弁体に接触した状態で弁体で支持されており、開口側の弁座外形に重なる、下流側でリング通路に開口した案内通路を備える。既知の電磁弁では、流体スペースと磁石アンカスペースとの間の圧力補償もしくは流体移動は流体案内素子の開口を通って行われ、開口には、シール素子が少なくとも部分的に配置されているか、もしくは案内されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第19802464号明細書
【発明の概要】
【0007】
これに対して、請求項に記載の特徴を有する電磁弁は、電磁弁の調節可能性の改善が達成されるという利点を有する。このために、本発明によれば、流体案内素子が弁体を少なくとも部分的に包囲し、流体スペースと磁石アンカスペースとの間の流体接続を形成する接続通路が弁体の壁を半径方向に貫通する半径方向切欠きと流体接続している。流体案内素子により弁体を包囲することにより2つの素子を相互に固定してもよい。例えば、圧着接続の形態の摩擦接続的な結合が流体案内素子と弁体との間で得られるように流体案内素子を弁体に押し付けてもよい。流体案内素子は、流体案内素子と弁体とが共に流体スペースを形成もしくは制限するように、弁体に対して配置されている。このために、例えば、流体案内素子は弁体の端面に載置され、流体スペースは弁体に形成された切欠きによって形成され、流体案内素子によって制限されている。
【0008】
流体案内素子は、流体スペースに弁座を通って流入する流体が直接に磁石アンカ、もしくは磁石アンカスペースに配置された弁体の領域と接続し、これにより、不都合な力を負荷することを防止する。このために、流体案内素子は、流体が流体案内素子にのみ力を加えるように、磁石アンカスペースを流体スペースから分離する。流体案内素子がこのような力によって磁石アンカの方向に変位されることを防止するために、流体案内素子は電磁弁の内部では変位不能に、すなわち、不動に保持されている。これは、既に説明したように、好ましくは摩擦接続によって行われる。
【0009】
接続通路を介して流体が流体スペースと磁石アンカスペースとの間に流入し、これら2つのスペース間の圧力補償が行われる。このようにして、例えば、磁石アンカの変位によって、磁石アンカの変位に反作用する圧力が磁石アンカスペース内に形成されることはない。したがって、接続通路を介した流体接続によって電磁弁の調節可能性を著しく改善することができる。流体接続を形成する接続通路は、原則的には流体案内素子および/または弁体に設けるか、または両者によって共に形成してもよい。接続通路は、弁体の壁を半径方向に貫通する半径方向切欠きと流体接続している。この場合、壁は流体スペースを制限する壁である。したがって、流体スペース内の流体は、半径方向切欠きを通って接続通路に到達し、続いて磁石アンカスペースに到達する。当然ながら、流体が反対方向に流れることも可能であり、これにより、流体は磁石アンカスペースから流体スペースに到達する。すなわち、接続通路は、半径方向切欠きと共に少なくとも部分的に流体接続を形成する。
【0010】
本発明の別の実施形態では、接続通路は少なくとも部分的に弁体の外壁と流体案内素子の内壁との間に設けられている。流体案内素子は、流体案内素子と弁体との間に接続通路が形成されるように弁体に配置されているか、もしくは弁体を包囲している。例えば、接続通路は、弁体および流体案内素子がいずれも実質的に横断面で見て円形である場合には、少なくとも部分的にリング通路として設けられている。接続通路を形成するためには、当然ながら弁体および/または流体案内素子は少なくとも部分的にこの円形横断面とは異なっている必要がある。代替的に、弁体および/または流体案内素子を実質的に円形に形成し、弁体または流体案内素子に設けることのできるバーによって離間することも可能である。
【0011】
本発明の別の実施形態では、流出通路と接続通路との間に流体接続を形成する少なくとも1つの半径方向通路が弁体内に形成されている。流出通路および半径方向通路は弁体内に設けられている。この場合、流出通路は、有利には、軸線方向に流体スペースに開口しており、したがって、流出通路の開口位置に関係して、半径方向通路によって流出通路と半径方向切欠きとの間の流体接続、ひいては接続通路との流体接続を形成することが不可欠となり、最適な流体案内が得られる。半径方向通路とは、この場合、流体を実質的半径方向に案内するために適した通路であり、流体の主要流れ方向は少なくとも1つの半径方向素子を備える。すなわち、半径方向通路は、電磁弁の長手方向軸線に対してさらに内側に設けられた流出通路と、長手方向軸線に対してさらに外側に設けられた接続通路との流体接続を形成するために設けられている。半径方向通路は、例えば、弁体の凹部もしくは切欠きとして設けられている。
【0012】
本発明の別の実施形態では、半径方向通路は、弁体を周方向に少なくとも部分的に包囲する溝に開口している。溝は、この場合、有利には弁体の外側に設けられており、半径方向に弁体に設けられている。この場合、溝は弁体を周方向に完全に貫通してもよいし、または代替的に、弁体の周に部分的にのみ1つ以上の部分として設けられていてもよい。半径方向通路は溝と流体接続しており、したがって、溝に開口している。この場合、半径方向通路と溝とは共に半径方向切欠きを形成しており、この半径方向切欠きにより流体スペースから接続通路への流体接続が形成されている。この場合、有利には半径方向通路は半径方向に内側から外側に弁体の壁を少なくとも部分的に貫通し、溝は半径方向に外側から内側に壁に設けられている。好ましい実施形態では、溝は弁体を周方向に完全に包囲し、半径方向通路は弁体内に流出通路の領域にのみ形成されており、この領域から半径方向外側に弁体の壁に設けられている。したがって、この箇所に流体スペースと接続通路との流体接続を形成するための半径方向切欠きが設けられる。
【0013】
本発明の別の実施形態では、接続通路は少なくとも部分的に流体案内素子の少なくとも1つの軸線方向切欠きによって形成されている。軸線方向切欠きは、例えば、流体案内素子のカバープレートに設けられている。この場合、カバープレートは、流体スペースを磁石アンカスペースから区切る、流体案内素子の部分である。すなわち、カバープレートは、シール素子によって貫通係合され、もしくはシール素子を少なくとも部分的に包囲する。軸線方向切欠きは、例えば、軸線方向孔として形成されており、有利には、弁体の半径方向切欠きもしくは流出通路からできるだけわずかな間隔を有する流体案内素子部分に設けられている。
【0014】
本発明の別の実施形態では、接続通路は横断面で見て少なくとも部分的にリング状に、特に円形リング状に形成されている。したがって、接続通路は、リング通路もしくは円形リング通路として設けられている。有利には、接続通路は弁体の全周を包囲する。これは、特に接続通路が弁体の外壁と流体案内素子の内壁との間に形成されている場合である。
【0015】
本発明の別の実施形態では、流体案内素子は形状接続的、摩擦接続的および/または材料接続的に弁体に固定されている。原則的には、流体案内素子は任意の形で弁体に結合されていてよい。例えば、材料接続的および摩擦接続的な結合を組み合わせて設けてもよい。この場合、形状接続的な結合は、流体案内素子に作用する力を弁体に伝達し、これにより、流体案内素子を電磁弁の他の領域、特に弁体に対して不動に保持する材料接続的な結合を解除する。しかしながら、摩擦接続的な結合は、比較的簡単に形成することができるので好ましい。
【0016】
本発明の別の実施形態では、摩擦接続的な固定のために、流体案内素子と弁体との間に圧着結合部が設けられる。本発明によれば、流体案内素子は弁体を少なくとも部分的に、有利には完全に周方向に包囲することが望ましい。この場合、弁体もしくは流体案内素子は、包囲に際して、例えば、流体案内素子が弁体を包囲する領域に圧着結合が生じるように形成されており、この場合、流体案内素子は弁体よりも少なくともわずかに小さい寸法を有し、これにより、流体案内素子および弁体を相互に組み付ける場合に、圧着結合部が形成される。
【0017】
本発明の別の実施形態では、弁体および/または流体案内素子は金属および/またはプラスチックからなっている。原則的には、弁体および流体案内素子は任意の材料からなっていてもよい。しかしながら、電磁弁の良好な耐用性が得られるので、有利には金属もしくはプラスチックが用いられる。
【0018】
さらに本発明は、特に上記実施形態にしたがった少なくとも1つの弁体を備える電磁弁を有する運転手支援装置、特にABS,TSCまたはESP装置に関し、弁体にはシール素子によって閉鎖可能な弁座、シール素子を少なくとも部分的に収容する電磁弁の流体スペースに開口する流出通路、およびシール素子を少なくとも部分的に包囲する流体案内素子が設けられており、シール素子は、流体案内素子の、流体スペースに向いていない方の側に形成された磁石アンカスペースに配置された磁石アンカと作用結合されている。この場合、弁体の流体案内素子は少なくとも部分的に弁体を包囲し、流体スペースと磁石アンカスペースとの間の流体接続を形成する接続通路は、弁体の壁を半径方向に貫通する半径方向切欠きと流体接続している。
【0019】
次に、本発明を限定することなしに図示の実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】弁体および流体案内素子を有する電磁弁の一部を示す横断面図である。
【図2】電磁弁の弁体および流体案内素子を示す断面図である。
【図3】弁体の一部を示す詳細図である。
【図4】弁体を別の方向から見た図である。
【図5】流体案内素子を第1の方向から見た図である。
【図6】流体案内素子を別の方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、電磁弁1の一部の断面図を示す。電磁弁1は、ここには示唆のみする外部装置2の内部に配置されている。電磁弁1は、弁体3およびケーシング4を備え、ケーシング4の内部には磁石アンカ5が軸線方向に可動に支承されている。弁体3の内部には、少なくとも1つの流入通路7と流体接続している上昇通路6が形成されている。流入通路7を介して電磁弁1に流体を供給することができる。この場合、上昇通路6は(電磁弁1の縦軸線8に対して)軸線方向に形成されている。流入通路7は、これに対して、上昇通路から半径方向に延び、弁体3もしくは電磁弁の周面9に開口している。
【0022】
上昇通路6を形成するためには、電磁弁1もしくは弁体3の端面10から始まって、まず弁体3に軸線方向の孔が設けられる。次いで、この孔は、流入通路7を通って上昇通路6に到達する流体が弁座12の方向に流れるように、上昇通路6への流入通路7の注ぎ口の下方で閉鎖素子11によって閉鎖される。この場合、弁座12は弁体3に形成されている。弁体3は、さらに少なくとも1つの流出通路13を備える。この実施例では、4つの流入通路7および4つの流出通路13が設けられており、そのうちの1つの流入通路7および2つの流出通路13のみが示されている。
【0023】
磁石アンカ5によって、シール素子14が電磁弁1の軸線方向に変位可能である。この場合、シール素子14は、流入通路7と流出通路13との間の流体接続が遮断されているように、閉鎖位置(図1に示す)で弁座12と協働する。シール素子14が磁石アンカ5によって軸線方向に変位された場合、いまやシール素子14は、流体が弁座12を還流することができるように弁座12の上方に配置され、これにより、流入通路7と流出通路13との間の流体接続が形成される。この場合、シール素子14は、少なくとも部分的に流体スペース15に配置されている。流体スペース15は、弁体3および流体案内素子16によって形成され、流体案内素子16は、流体スペース15および磁石アンカスペース17が提供されているように弁体3に配置されている。磁石アンカスペース17には、シール素子14および磁石アンカ5が少なくとも部分的に配置されている。磁石アンカスペース17は、この場合、流体案内素子16の、流体スペース15に向いていない方の側に位置する。
【0024】
流体案内素子16は、シール素子14によって貫通係合される中央の切欠き18を備える。流体案内素子16は、流体スペース15における流体の流れを改善するために設けられており、この場合、弁座12を通って流体スペース15に流れ込む流体は、有利には流出通路13の開口部19の方向に流体スペース15で変向される。シール素子14が閉鎖位置から外側へ変位される場合に生じる流れは矢印20で示されている。しかしながら、特に流体案内素子16は、弁座12を通って流れ込む流体が不都合な力を磁石アンカ5もしくはシール素子14に加えることを阻止するために設けられている。このために、流体案内素子6は、流体スペース15に流れ込む流体が磁石アンカ5もしくは磁石アンカスペース17に配置されたシール素子14の領域と直接に接触できることを防止する。
【0025】
図1に示した電磁弁1の実施形態では、流体案内素子16はシール素子14を周方向に完全に包囲している。しかしながら、これは、まず切欠き18によってのみ流体スペース15と磁石アンカスペース17との間の流体接続が生じることを意味する。したがって、磁石アンカ5もしくはシール素子14が軸線方向に変位された場合に流体スペース15および磁石アンカスペース17には異なる圧力が生じるか、もしくは磁石アンカスペース17に磁石アンカ5の変位に反作用する圧力が形成される。このような理由で、流体スペース15と磁石アンカスペース17との間の流体接続を改善し、これにより、磁石アンカスペース17に上記圧力が形成されることを防止する少なくとも1つの接続通路21を設けることが望ましい。このようにして、電磁弁1の調節可能性が著しく改善される。
【0026】
電磁弁1のここに示した実施形態では、接続通路21は弁体3と流体案内素子16とによって形成されていることが望ましい。このために、図1に示すように、接続通路21は弁体3の外壁22と流体案内素子16の内壁23との間に設けられている。これにより生じる流体接続は、流体の可能な流れ方向と共に二重矢印24で示されている。ここに示す実施形態では、接続通路21はリング通路として形成されており、この場合に弁体3の全周にわたって設けられていることが望ましい。弁体3には、それぞれ1つの流出通路13に対応させた複数の半径方向通路25が形成されている。半径方向通路25を介して、接続通路21への流体接続が形成される。
【0027】
半径方向通路25に生じる流れは、可能な流れ方向と共に二重矢印26で示されている。半径方向通路25は、弁体13の流体スペース15の底部27に形成されている。半径方向通路25は、弁体3を周方向に完全に包囲する溝28に開口している。半径方向通路25および溝28は、弁体3の壁30を半径方向に貫通する半径方向切欠き29を形成している。この貫通によって、流体スペース15と接続通路21との間の流体接続、ひいては磁石アンカスペース17との流体接続が形成される。
【0028】
流体案内素子16は、カバープレート31とリング素子32とからなる。カバープレート31は、弁体3における端面10とは反対側の端面33に位置している。カバープレート31には、シール素子14のための切欠き18が形成されている。同様に、カバープレート3は少なくとも1つの軸線方向切欠き34を備え、この軸線方向切欠き34によって接続通路21と磁石アンカスペース17との間の流体接続が形成されている。理想的には、流出通路13もしくは半径方向切欠き29と同数の軸線方向切欠き34が設けられている。ここに示した実施形態では、4つの軸線方向切欠き34および同数の半径方向通路25が設けられている。この場合、軸線方向切欠き34は、半径方向通路25もしくは流出通路13に対してできるだけわずかな間隔を有するように弁体3に対して周方向に整列されており、これにより、できるだけわずかな流体抵抗を伴う流体接続を接続通路21と共に提供する。したがって、流体スペース15と磁石アンカスペース17との間の流体接続は、半径方向通路25と溝28とによって形成された半径方向切欠き29、接続通路21および軸線方向切欠き34によって得られる。
【0029】
流体案内素子16のリング素子32は弁体3を少なくとも部分的に取り囲んでいる。この場合、リング素子32は理想的には弁体3に環状に形成されたショルダ35に接触し、これにより、この箇所では弁体3に対して少なくともいずれか一方の軸線方向に流体案内素子16の形状接続的な支承が付与されている。有利には、弁体3は、流体案内素子16と弁体3との間に圧着接続部36が得られるような寸法をショルダ35の領域に備える。すなわち、電磁弁の組付け時に流体案内素子16は弁体3にのみ押し付けられ、カバープレート31は弁体3の端面33に載置され、ショルダ35の領域で圧着接続部36が形成される。有利には、流体案内素子16もしくは流体案内素子16のリング素子32は軸線方向長さにわたって一定の内寸を備える。同時に、弁体3はショルダ35の領域では接続通路21の領域よりも大きい寸法を備える。このようにして、流体案内素子16と弁体3との間に圧着接続部36が形成された後に、外壁22と内壁23との間の接続通路21は、周方向に連続したリング通路として提供されている。電磁弁1のこのような実施形態では、ケーシング4は、流体案内素子16および弁体3がケーシング4で確実に保持されてるように流体案内素子16を包囲する。ケーシング4と流体案内素子16との間の密な結合を得るためにはシール素子37を設けてもよい。
【0030】
図2は、電磁弁1を別の方向から見た図を示し、弁体3および流体案内素子16のみが図示されている。弁体3および流体案内素子16は上記実施形態にしたがって形成されており、この点では上記実施形態を参照されたい。半径方向切欠き29が半径方向通路25と溝28とによって共に形成されていることがここでも明確に認められる。半径方向通路25は、例えば、穿孔またはフライス加工によって弁体3の壁30に設けてもよい。この場合、半径方向通路25は内側から半径方向に壁30を貫通し、溝28は外側から半径方向に壁30に設けられる。このようにして、溝28および半径方向通路25が設けられた箇所には、弁体3の壁30を完全に貫通する半径方向切欠き29が形成される。図示の実施形態では、軸線方向切欠き34は、半径方向切欠き29に対して周方向にずらして配置されており、ここでは45°のずれが設けられている。図2にはマーク38を付けた領域が設けられている。
【0031】
このマーク38の領域が図3に拡大して示されており、ここでは弁体3のみが示されている。端面33に段部39が設けられていることがわかる。この段部39によって、弁体3と流体案内素子16との間のシール作用を得ることができる。このために、段部39は圧入カラーとして弁体3に形成されている。これは、弁体3および流体案内素子16が金属材料からなっている場合には、特に有利である。
【0032】
図4は、弁体3を別の方向から見た図を示す。これについては上記実施形態を参照されたい。
【0033】
図5および図6は、流体素子16をそれぞれ上方から見た図および下方から見た図を示す。切欠き18および軸線方向切欠き34を明確に見ることができる。流体案内素子16は上記実施形態に対応しており、したがって、これについては上記実施形態を参照されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体(3)を備え、該弁体(3)に、シール素子(14)によって閉鎖可能な弁座(12)、シール素子(14)を少なくとも部分的に収容する電磁弁(1)の流体スペース(15)に開口する少なくとも1つの流出通路(13)、およびシール素子(14)を少なくとも部分的に包囲する流体案内素子(16)が設けられており、シール素子(14)が流体案内素子(16)における流体スペース(15)に向いていない方の側に形成された磁石アンカスペース(17)に配置された磁石アンカ(5)と作用結合している電磁弁(1)において、
流体案内素子(16)が弁体(3)を少なくとも部分的に包囲し、流体スペース(15)と磁石アンカスペース(17)との間の流体接続を形成する接続通路(21)が弁体(3)の壁(30)を半径方向に貫通する半径方向切欠き(29)と流体接続していることを特徴とする、電磁弁。
【請求項2】
前記接続通路(21)が、少なくとも部分的に前記弁体(3)の外壁(22)と前記流体案内素子(16)の内壁(23)との間に設けられている、請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記流出通路(13)と前記接続通路(21)との間に流体接続を形成する少なくとも1つの半径方向通路(25)が前記弁体(3)内に形成されている、請求項1または2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記半径方向通路(25)が、前記弁体(3)を周方向に少なくとも部分的に包囲する溝(28)に開口している、請求項1から3までのいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記接続通路(21)が、少なくとも部分的に前記流体案内素子(16)の少なくとも1つの軸線方向切欠き(34)によって形成されている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項6】
前記接続通路(21)が、横断面図で見て少なくとも部分的にリング状に、特に円形リング状に形成されている、請求項1から5までのいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項7】
前記流体案内素子(16)が、形状接続的、摩擦接続的および/または材料接続的に前記弁体(3)に固定されている、請求項1から6までのいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項8】
摩擦接続的な固定のために、前記流体案内素子(16)と前記弁体(3)との間に圧着結合部(36)が設けられている、請求項1から7までのいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項9】
前記弁体(3)および/または前記流体案内素子(16)が、金属および/またはプラスチックからなっている、請求項1から8までのいずれか一項に記載の電磁弁。
【請求項10】
特に請求項1から9までのいずれか一項に記載の、少なくとも1つの弁体(3)を備える電磁弁(1)を有する運転手支援装置、特にABS,TSCまたはESP装置であって、弁体(3)内に、シール素子(14)によって閉鎖可能な弁座(12)、シール素子(14)を少なくとも部分的に収容する電磁弁(1)の流体スペース(15)に開口する少なくとも1つの流出通路(16)、およびシール素子(14)を少なくとも部分的に包囲する流体案内素子(16)が設けられており、前記シール素子(14)が、流体案内素子(16)の、流体スペース(15)に向いていない方の側に形成された磁石アンカスペース(17)に配置された磁石アンカ(5)と作用結合されている、運転手支援装置において、
流体案内素子(16)が、少なくとも部分的に弁体(3)を包囲し、流体スペース(15)と磁石アンカスペース(17)との間の流体接続部を形成する接続通路(21)が、弁体(3)の壁(3)を半径方向に貫通する半径方向切欠き(29)と流体接続していることを特徴とする、運転手支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−515219(P2013−515219A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545180(P2012−545180)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066671
【国際公開番号】WO2011/076471
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】