説明

電磁緩衝器

【課題】ロータとボール螺子ナットの連結作業における作業効率を向上することができる電磁緩衝器を提供することである。
【解決手段】上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、ナット2に上記カップリング4を組み付けてカップリング組立体Cを形成し、当該カップリング組立体Cにロータ3に対向して周方向に傾斜する傾斜面4d,4eと設け、ロータ3に設けた爪3aの先端に傾斜面3b,3cを設け、上記傾斜面同士を突き合わせてカップリング組立体Cにおけるカップリング4の弾性歯4b,4b間にロータ側の爪3aの挿入を周方向に案内させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに生じる電磁力で上記車体と車軸との相対移動を抑制する電磁緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁緩衝器としては、螺子軸と螺子軸に回転自在に螺合されるボール螺子ナットとボール螺子ナットに連結されるモータとを備えて構成され、たとえば、モータを車両の車体側へ螺子軸を車軸側へ連結して車体と車軸との間に介装されており、モータのトルクで車体振動を抑制する減衰力を発揮するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この電磁緩衝器の場合、減衰力発生源であるモータのトルクを直線方向に作用させるべき減衰力に変換するために、螺子軸とボール螺子ナットとで構成される運動変換機構を備えており、このボール螺子ナットをモータのロータへ連結している。このように、電磁緩衝器にあっては、従来の油圧緩衝器と異なり、モータのロータやボール螺子ナットといった回転系の慣性質量が大きく、特に、高周波振動入力時に回転系の慣性により電磁緩衝器が伸縮しづらくなって車体への振動伝達を効果的に絶縁することができなくなって、車両における乗り心地を損なうという危惧があるため、モータのロータとボール螺子ナットとの連結には、弾性体でなるカップリングを介装して行うことがある。
【0004】
このカップリングは、螺子軸の挿通を許容するため環状とされていて、外周側に放射状に複数の弾性歯を備えていて、この弾性歯を、モータのロータの端部に複数設けた爪と、ボール螺子ナットの端部に設けた複数の爪との間に入れ込んでロータとボール螺子ナットを連結する。つまり、ロータ側の爪とボール螺子ナット側の爪との間には、カップリングの弾性歯が介装されており、ロータとボール螺子ナットの回転速度に差が生じた場合、カップリングの弾性歯が圧縮されて弾性変形することで、ロータとボール螺子ナットの回転速度差を吸収して慣性による衝撃を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−91030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の電磁緩衝器にあっては、上述したように、カップリングを介してモータのロータとボール螺子ナットを連結するようにしているが、実際に連結する作業工程では、モータのケース内へボール螺子ナットを挿入してロータに連結しなければならず、ロータとボール螺子ナットおよびカップリングを目視できない状態でこれらを連結することを強いられている。
【0007】
このようにロータとボール螺子ナットおよびカップリングを目視できない状態では、ボール螺子ナット或いはロータに予めカップリングを組みつけておいたとしても、ロータとボール螺子ナットの連結は手探りで行わなくてはならず、たとえば、予めロータにカップリングを組み付けておく場合、カップリングの弾性歯間にボール螺子ナットに設けた爪を挿入するのに、ロータに対してボール螺子ナットを少しずつ周方向に回しながら当たりをつけて連結作業を行うことになるので、作業性が悪く、作業に多大な労力と時間を費やさなくてはならず、作業効率の向上が切望されている。
【0008】
そこで、本発明は、上記の不具合を勘案して創案されたものであって、その目的とするところは、ロータとボール螺子ナットの連結作業における作業効率を向上することができる電磁緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、螺子軸と螺子軸に回転自在に螺合されるナットとを備えた運動変換機構と、モータとを備え、モータにおけるロータの端部に設けられ周方向に並んでナットへ向けて突出する複数のロータ側の爪と、ナットの端部にロータ側の爪数と同数設けられて周方向に並んでロータへ向けて突出しロータ側の爪間に配置されるナット側の爪と、環状であって内周或いは外周にナット側の爪とロータ側の爪との間に介装される弾性歯を備えたカップリングとでロータとナットとを連結した電磁緩衝器において、上記ロータと上記ナットの一方に上記カップリングを組み付けてカップリング組立体を形成し、当該カップリング組立体にロータとナットの他方に対向して周方向に傾斜する傾斜面と設け、ロータとナットの他方に設けられる上記爪の先端にカップリング組立体に対向し周方向に傾斜する傾斜面を設け、上記傾斜面同士を突き合わせてカップリング組立体におけるカップリングの弾性歯間にロータとナットの他方の爪の挿入を周方向で案内させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電磁緩衝器によれば、視認できずとも、ロータ側あるいはナット側の爪とカップリング組立体の双方が傾斜面を突き当てることで周方向に案内されて、容易にロータとナットとを連結することができるので、ロータとナットの組み立てにおける作業性が改善され、作業効率が向上し作業時間も短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施の形態における電磁緩衝器の縦断面図である。
【図2】一実施の形態における電磁緩衝器におけるロータとナットの連結部の拡大斜視図である。
【図3】一実施の形態における電磁緩衝器におけるロータとナットとカップリングの分解斜視図である。
【図4】一実施の形態における電磁緩衝器におけるロータとナットとカップリングの組立工程を説明する図である。
【図5】一実施の形態の一変形例における電磁緩衝器におけるロータとナットとカップリングの一部拡大図である。
【図6】一実施の形態の他の変形例における電磁緩衝器におけるロータとナットとカップリングの一部拡大図である。
【図7】一実施の形態の別の変形例における電磁緩衝器におけるロータとナットとカップリングの一部拡大図である。
【図8】一実施の形態のさらに他の変形例における電磁緩衝器におけるカップリングの一部拡大断面図である。
【図9】一実施の形態のさらに他の変形例における電磁緩衝器におけるカップリングの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態における電磁緩衝器Eは、螺子軸1と螺子軸1に回転自在に螺合されるナットたるボール螺子ナット2とを備えた運動変換機構Tと、運動変換機構Tにおけるボール螺子ナット2に連結されるモータMと、ボール螺子ナット2とモータMのロータ3との間に介装されるカップリング4とを備えて構成されており、この実施の形態にあっては、螺子軸1の下端に流体圧ダンパDが連結されていて、電磁緩衝器Eと流体圧ダンパDとでサスペンション装置Sを構成している。
【0013】
このサスペンション装置Sは、この実施の形態の場合、電磁緩衝器Eに連結される環状のエアチャンバ7と、流体圧ダンパDの外周に設けたエアピストン8と、エアチャンバ7とエアピストン8とに架け渡される筒状のダイヤフラム9とで画成されるエア室Gによって懸架ばねとして機能するエアばねASを外周側に備えている。
【0014】
そして、このサスペンション装置Sは、電磁緩衝器Eを車両の車体へ連結し、流体圧ダンパDの下端となるダンパ本体6を車両の車軸へ連結することで、車両の車体と車軸との間に介装することができるようになっている。すなわち、このサスペンション装置Sにあっては、基本的には、図示しない車両の車体と車軸との間に介装するにあたり、電磁緩衝器Eを車体へ流体圧ダンパDを車軸へと連結するようにして介装されるようになっていて、電磁緩衝器Eが減衰力を発揮するのみならずアクチュエータとしても機能することで車体の振動を抑制することができるようになっている。
【0015】
また、流体圧ダンパDは、サスペンション装置Sに入力される高周波振動を吸収する目的で設けられており、運動変換機構TおよびモータMにおける回転系の慣性で高周波振動に対して動きづらくなる電磁緩衝器Eを補助して車体振動の抑制を良好ならしめるものである。
【0016】
流体圧ダンパDは、ダンパ本体6と、ダンパ本体6内に挿入されるロッド5とを備えており、ダンパ本体6に対してロッド5が図1中上下方向となる軸方向の相対移動を呈する伸縮時に所定の減衰力を発生するようになっている。
【0017】
電磁緩衝器Eは、モータMと、モータMのロータ3に連結されるボール螺子ナット2とボール螺子ナット2に螺合する螺子軸1とを備えた運動変換機構Tと、ボール螺子ナット2とロータ3との間に介装されるカップリング4とを備えて構成されており、モータMを駆動することでボール螺子ナット2を回転させて螺子軸1の直線方向に駆動することが可能であり、上述したように、螺子軸1の直線運動をモータMのトルクで抑制することもでき、また、アクチュエータとしても減衰力を発揮するダンパとしても機能することができるようになっている。
【0018】
詳しくは、モータMは、有頂筒状のフレーム11と、フレーム11内に固定したステータコア12と、ステータコア12に巻回される巻線13と、フレーム11の開口端に嵌合される環状のキャップ14と、フレーム11内にボールベアリング15,16を介して回転自在に収容された筒状のロータ3と、ロータ3の外周に装着されてステータコア12に対向する磁石17とを備えて構成されており、ボール螺子ナット2を回転自在に保持するとともにエアチャンバ7に連結される筒状のケース18内に収容されて固定されている。
【0019】
したがって、このモータMにあっては、巻線13に通電して周方向に回転磁界を発生させることで、磁石17を吸引してロータ3を回転駆動することができる、ブラシレスモータとして構成されている。
【0020】
なお、このモータMの場合、モータM内をも上述のエアばねASのエア室Gの一部として機能させるため、ケース18とモータMのフレーム11との間およびフレーム11とキャップ14との間は、それぞれ、シールリング19,20によって密にシールされている。
【0021】
ロータ3は、図1から図3に示すように、筒状であって、ボール螺子ナット側端となる図1中下端には、周方向に並んでボール螺子ナット2へ向けて突出する複数個、この場合、6個のロータ側爪3aを備えている。ロータ側爪3aの先端となるボール螺子ナット側端は、周方向両側に傾斜面3b,3cを設けてあって周方向に見て先端が尖端形状となるようになっている。
【0022】
螺子軸1は、図1に示すように、その外周に螺旋状の螺子溝1aが形成されるとともに、軸線に沿って、すなわち、螺子軸1の直線運動方向に沿って、直線状のスプライン溝1bが形成されている。
【0023】
他方、ナットたるボール螺子ナット2は、内部構造は周知であるので詳細には図示しないが、筒状のナット本体2aの内周に設けた螺子軸1の螺子溝1aに対向する螺旋状の通路と、筒状本体内に設けられ上記通路の両端を連通する循環路と、該通路および循環路に収容されるとともに螺子溝1aを走行する複数のボールと、各ボール間に介装されるスペーサとを備えて構成され、各ボールは、上記ループ状に形成された通路と循環路を循環することができるようになっている。なお、本実施の形態では、ナットをボール螺子ナット2として螺子軸1の円滑な直線運動を実現するようにしているが、単に、螺子軸1の螺子溝1aに螺合する螺子山を備えたナットとしてもよい。
【0024】
このボール螺子ナット2は、ケース18の内周に設けた段部18aとケース18の内周に螺合する固定ナット21とで挟持されてケース18内周に固定されるボールベアリング22を介してケース18に回転自在に保持されている。なお、ボールベアリング22のボール22aがボール螺子ナット2のナット本体2aの外周に形成された環状溝2bを走行するようになっており、ボール螺子ナット2自体がボールベアリング22の内輪として機能するとともに、ケース18にボールベアリング22の外輪22bを固定することでボール螺子ナット2をケース18に固定することが可能となっている。
【0025】
また、このケース18は、ボール螺子ナット2のほかに、ボールスプラインナット23を保持している。このボールスプラインナット23は、ボール螺子ナット2の回転駆動によって螺子軸1を直線運動させるため、螺子軸1の回り止めとして機能するものである。ボールスプラインナット23は、周知であるので詳細には図示しないが、筒状の本体と、本体内周に設けた螺子軸1の外周に設けたスプライン溝1bに対向する直線状の通路と、本体内に設けられ上記通路の両端を連通する循環路と、該通路および循環路に収容されるとともにスプライン溝1bを走行する複数のボールと、各ボール間に介装されるスペーサとを備えて構成され、各ボールは、上記ループ状に形成された通路と循環路を循環することができるようになっていて、螺子軸1はボールスプラインナット23に対して図1中上下方向となる軸方向への移動は許容されるものの、周方向への回転が阻止される。
【0026】
したがって、ボール螺子ナット2を回転駆動すると、螺子軸1は、ボールスプラインナット23によって回り止めされるので、図1中上下方向へ直線運動することになり、逆に、螺子軸1を直線運動させると、ボール螺子ナット2を回転運動させることができる。なお、螺子軸1の回り止めは、ボールスプラインナット23以外にも、たとえば、螺子軸1にキー溝を設け、ケース18側にキー溝内に挿入されるキーを設けるようにして行うこともできる。
【0027】
戻って、ボール螺子ナット2のナット本体2aのロータ側端となる図1中上端には、ロータ側爪3aの数と同数の6個のナット側爪2cが周方向に並んでロータ3側へ向けて突出するように設けられている。このナット側爪2cは、この実施の形態にあっては、先端となるロータ側端の形状は平坦形状とされている。
【0028】
上記ロータ側爪3aとナット側爪2cは、ともに、同一円周上に設けられていて、図1および図2に示すように、ロータ3のロータ側爪3a間にボール螺子ナット2のナット側爪2cを挿入することができ、ロータ側爪3aとナット側爪2cが周方向に交互に隙間を開けて組み合わせることができるようになっている。
【0029】
そして、ロータ側爪3aとナット側爪2cとの間には、カップリング4が介装されている。カップリング4は、環状本体4aと、環状本体4aの外周から放射状に突出するとともに弾性を持つ12個の弾性歯4bを備えて構成されており、環状本体4aの外形は、各ロータ側爪3aの内側および各ナット側爪2cの内側に収容可能な径に設定されていて、弾性歯4bをロータ側爪3aとナット側爪2cとの12箇所の周方向隙間に隙間なく嵌合させることができるようになっている。したがって、サスペンション装置Sに振動が入力されて、螺子軸1が図1中上下方向へ駆動されることを考えた場合、螺子軸1によってボール螺子ナット2が回転駆動され、ボール螺子ナット2の回転がモータMのロータ3に伝達されるが、弾性歯4bは、ナット側爪2cから圧縮力を受けて圧縮されつつ、ロータ側爪3aにナット側爪2cからのトルクを伝達することになる。ロータ3とボール螺子ナット2の回転速度に差が生じても、この弾性歯4bが圧縮による弾性変形することによって回転速度差を一端吸収するので、慣性が大きいためにロータ3とボール螺子ナット2が互いに相手方の回転速度の急峻な変化に追随しにくくても、カップリング4で回転速度差を吸収することができ、電磁緩衝器Eにおける回転系の慣性によって螺子軸1の円滑な直線運動を阻害しないようになっている。なお、ロータ側爪3aとナット側爪2cの数は複数であって同数であればよく、弾性歯4bの数は、ロータ側爪3aとナット側爪2cとの間に介装されればよいので、ロータ側爪3aとナット側爪2cの数の2倍の数を設ければよい。
【0030】
また、カップリング4は、ナット側爪2cを挟む弾性歯4bのロータ3側端同士を繋ぐとともにロータ3に対向する連携体4cを備えており、この連携体4cは、周方向両側にロータ側爪3aに対向する傾斜面4d,4eを設けてあって周方向に見てその先端が尖端形状となるようになっている。
【0031】
さて、このカップリング4は、ロータ3とボール螺子ナット2の双方を連結するものであるが、組み付けの際には、この場合、図4に示すように、ボール螺子ナット2へ組み付けて、カップリング組立体Cを構成する。そうしておいてから、カップリング組立体Cにロータ3を組み付けるのであるが、ロータ3のロータ側爪3aの先端に傾斜面3b,3cが設けてあり、カップリング4の連携体4cに傾斜面4d,4eが設けてあって、ロータ側爪3a間に、カップリング組立体Cの弾性歯4b,4bとナット側爪2cとを挿入する際に、図4に示すところでは、連携体4cの傾斜面4dにロータ側爪3aの傾斜面3cを突き合わせることで、カップリング組立体Cにおけるカップリング4の弾性歯4b,4b間にロータ側爪3aが周方向へ案内されてカップリング4の弾性歯4b,4b間に容易に挿入することができる。
【0032】
ここで、モータMのロータ3は、フレーム11内に収容されており、ボール螺子ナット2とこれに組み合わせられるカップリング4とでなるカップリング組立体Cは、ともに、ケース18内に収容されているので、モータMのロータ3とカップリング組立体Cとの連結は、モータMのロータ3とカップリング組立体Cの両者を接近させて行うことになるが、フレーム11とケース18の存在によって上記両者の連結部を視認できない状況下で行うことになるが、上記したように、ロータ側爪3aに傾斜面3b,3cを設け、これに組み付けられるカップリング組立体Cにも傾斜面4d,4eが設けられているので、視認できずとも、ロータ側爪3aとカップリング組立体Cの双方が周方向に案内されて、容易に上記両者を連結することができることになる。このようにロータ3とボール螺子ナット2の連結を容易に行うことができるので、作業性が改善され、作業効率が向上し作業時間も短縮することができる。
【0033】
なお、上記したところでは、ロータ3のロータ側爪3aに傾斜面3b,3cを設け、カップリング4とボール螺子ナット2を組み合わせてカップリング組立体Cとして当該カップリング組立体Cに傾斜面4d,4eを設けるようにしているが、反対に、ボール螺子ナット2のナット側爪2cにロータ側爪3aに設けたものと同様の傾斜面を設けて、ロータ側爪3aとカップリング4とを組み合わせてカップリング組立体Cとし、カップリング4の連携体4cをボール螺子ナット2側へ向けて連携体4cに設けた傾斜面4d,4eをナット側爪2cに設けた傾斜面に突き合わせて、弾性体4b,4b間にナット側爪2cを周方向に案内しつつカップリング組立体Cとボール螺子ナット2を連結するようにしてもよい。
【0034】
また、上記したところでは、ロータ側爪3aの周方向両端に傾斜面3b,3cを設けているが、図5に示すように、一端側に傾斜する傾斜面3dのみを設け、カップリング4の連携体4cに、傾斜面3dに傾斜方向が一致する傾斜面4fのみを設けるようにし、これら傾斜面3d,4fを突き合わせるようにして、案内するようにしてもよい。
【0035】
さらに、カップリング4に連携体4cを設け、当該連携体4cに傾斜面4d,4eを設けるようにしているが、図6に示すように、カップリング4とボール螺子ナット2を組み合わせてカップリング組立体Cを構成する場合、ナット側爪2cとこれを挟持する弾性歯4b,4bを組みとして、これらを一つの爪に見立てて、ナット側爪2cと弾性歯4b,4bの組みの先端の周方向両側にロータ3に対向する面一の傾斜面30,31を設けて、ロータ側爪3aの傾斜面3b,3cに突き合わせて案内するようにしてもよいし、図7に示すように、ナット側爪2cと弾性歯4b,4bの組みの先端の一端側に傾斜してロータ3に対向する面一の傾斜面32を設けて、ロータ側爪3aの傾斜面3dに突き合わせて案内するようにしてもよい。カップリング組立体Cをボール螺子ナット2とカップリング4とで構成しているが、反対に、カップリング組立体Cをロータ3とカップリング4で構成して、ロータ側爪3aとこれを挟持するカップリング4の弾性歯4b,4bを組みとして一つの爪に見立てて、傾斜面を形成するようにしてもよい。
【0036】
またさらに、カップリング4とロータ3に組立て、カップリング組立体Cを構成する場合、図8に示すように、カップリング4のボール螺子ナット2側の内周端に面取り4gを設けておくと、螺子軸1の挿入が円滑に行われるとともに、カップリング組立体Cを螺子軸1で径方向へ案内することができ、より一層、ロータ3とボール螺子ナット2の連結作業が容易となる。
【0037】
なお、図9に示すように、カップリング4の軸方向両端の外周であって弾性歯4b,4b間に面取り4h,4iを設けておく場合には、ロータ側爪3aとナット側爪2cのカップリング4への組付の際に、ロータ側爪3aとナット側爪2cがそれぞれ面取り4h,4iに突き当てられた際に、ロータ3とボール螺子ナット2がカップリング4に対して径方向へ案内されるので、これらの組付けが容易となる。なお、図9中左半分は、カップリング4を連携体4cの周方向中央で切断した断面であり、図9中右半分は、カップリング4を連携体4c間で切断した断面である。
【0038】
また、上記したところでは、カップリング4の環状本体4aがロータ側爪3aとナット側爪2cよりも内周側に配置されていて、環状本体4aの外周に弾性歯4bを設けているが、環状本体4aでロータ側爪3aとナット側爪2cの外周を覆うようにして、環状本体4aの内周にロータ側爪3aとナット側爪2cとの間に嵌合する弾性歯4bを設けるようにしてもよい。
【0039】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、緩衝器に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 螺子軸
1a 螺子溝
1b スプライン溝
2 ナットとしてのボール螺子ナット
2a ナット本体
2b 環状溝
2c ナット側爪
3 ロータ
3a ロータ側爪
3b,3c,3d,4d,4e,4f,30,31,32 傾斜面
4 カップリング
4a 環状本体
4b 弾性歯
4c 連携体
4g,4h,4i 面取り
5 ロッド
6 ダンパ本体
7 エアチャンバ
8 エアピストン
9 ダイヤフラム
11 フレーム
12 ステータコア
13 巻線
14 キャップ
15,16,22 ボールベアリング
17 磁石
18 ケース
18a 段部
19,20 シールリング
21 固定ナット
22a ボール
22b 外輪
23 ボールスプラインナット
AS エアばね
C カップリング組立体
D 流体圧ダンパ
E 電磁緩衝器
G エア室
M モータ
T 運動変換機構
S サスペンション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺子軸と螺子軸に回転自在に螺合されるナットとを備えた運動変換機構と、モータとを備え、モータにおけるロータの端部に設けられ周方向に並んでナットへ向けて突出する複数のロータ側の爪と、ナットの端部にロータ側の爪数と同数設けられて周方向に並んでロータへ向けて突出しロータ側の爪間に配置されるナット側の爪と、環状であって内周或いは外周にナット側の爪とロータ側の爪との間に介装される弾性歯を備えたカップリングとでロータとナットとを連結した電磁緩衝器において、上記ロータと上記ナットの一方に上記カップリングを組み付けてカップリング組立体を形成し、当該カップリング組立体にロータとナットの他方に対向して周方向に傾斜する傾斜面と設け、ロータとナットの他方に設けられる上記爪の先端にカップリング組立体に対向し周方向に傾斜する傾斜面を設け、上記傾斜面同士を突き合わせてカップリング組立体におけるカップリングの弾性歯間にロータとナットの他方の爪の挿入を周方向で案内させることを特徴とする電磁緩衝器。
【請求項2】
上記カップリング組立体におけるカップリングのロータとナットの一方の爪を挟む弾性歯同士を繋ぐとともにロータとナットの他方に対向する連携体を設け、当該連携体に傾斜面を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電磁緩衝器。
【請求項3】
カップリング組立体におけるカップリングのロータとナットの一方の爪を挟む弾性歯と当該挟まれる爪とを組みとして、各組のロータとナットの他方に対向する先端に傾斜面を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁緩衝器。
【請求項4】
カップリングのボール螺子ナット側の内周端を面取りしたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電磁緩衝器。
【請求項5】
カップリングの軸方向両端の外周であって弾性歯間に面取りを設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電磁緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−167756(P2012−167756A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29743(P2011−29743)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】