説明

電磁駆動装置

【課題】 シール部材の磁気遮断による磁気特性低下を防止する。
【解決手段】 コイル2が挿入される磁性体金属製のボデー1と、ボデー1の開口部を閉塞する磁性体金属製のプレート3との間に、磁性体製のガスケット4を挟持させる。磁性体製のガスケット4を用いているため、磁気遮断による磁気特性低下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電時に電磁力を発生する電磁駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁駆動装置は、図5に示すように、磁性体金属製のボデー1内にコイル2が収納され、ボデー1の開口部が磁性体金属製のプレート3によって閉塞されている。そして、外部からの水の浸入防止を目的として、Oリング等のゴム製シール部材100が設けられている(例えば、特許文献1参照)。因みに、ゴム製シール部材100は、通常は厚さ1.5mm以上のものが用いられる。
【特許文献1】特開2001−182638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の電磁駆動装置は、非磁性体で且つ厚さが大きいゴム製シール部材100の磁気遮断により磁気特性(吸引力、応答性)が低下し、その磁気特性低下分を補うためにコイル2の体格アップを招いている。また、ゴム製シール部材100を配置するための収納溝29をコイル2に加工する必要があった。
【0004】
さらに、コイル2をボデー1またはプレート3に組み付ける際に、シール部材100が収納溝29からはみ出してシール不良をおこす虞があった。さらにまた、コイル2をボデー1またはプレート3に組み付ける際に、シール部材100がボデー1またはプレート3と摺動してシール部材100の表面が荒れ、シール不良をおこす虞があった。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、磁気特性低下を防止ないしは抑制することを主目的とする。また、シール部材を配置するための収納溝を不要にして加工工数を低減すること、および、シール性を向上させることを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コイル(2)が挿入される磁性体金属製のボデー(1)と、ボデー(1)の開口部(12)を閉塞する磁性体金属製のプレート(3)との間に、磁性体製のガスケット(4)が挟持されていることを第1の特徴とする。
【0007】
これによると、磁性体製のガスケットを用いているため、ガスケットの磁気遮断による磁気特性低下を防止することができる。
【0008】
本発明は、ボデー(1)における開口部(12)側のボデー端面(13)と、プレート(3)におけるボデー端面(13)に対向するプレート端面(33)との間に、平板リング状のガスケット(4)が挟持されていることを第2の特徴とする。
【0009】
これによると、ガスケットをボデーに仮組みする際に、ガスケットのシール面は他の構成部品に対して摺動しないので、ガスケットのシール面が他の構成部品にて荒らされることがなく、シール性を向上させることができる。また、従来の電磁駆動装置における収納溝や、その収納溝に相当するものが不要であるため、加工工数を低減することができる。
【0010】
本発明は、ガスケット(4)の硬度が、ボデー(1)およびプレート(3)の硬度よりも低いことを第3の特徴とする。これによると、ガスケットの変形によりガスケットがボデーやプレートに密着するため、シール性を確実に得ることができる。
【0011】
本発明は、ガスケット(4)の表面に、ガスケット(4)よりも硬度が低い弾性部材(9)を有することを第4の特徴とする。これによると、弾性部材が容易に変形してボデーやプレートにより気密的に密着するため、シール性を確実に得ることができる。
【0012】
本発明は、弾性部材(9)が、ゴム製で且つ厚さが0.15mm以下であることを第5の特徴とする。これによると、弾性部材が薄いため磁気遮断の度合いが小さく、磁気特性低下を抑制することができる。
【0013】
本発明は、弾性部材(9)が磁性体製のゴムであることを第6の特徴とする。これによると、弾性部材の磁気遮断による磁気特性低下を防止することができる。
【0014】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る電磁駆動装置を備えるコモンレール式燃料噴射装置の全体構成を示す図である。この燃料噴射装置は、高圧燃料が蓄圧される蓄圧器101を備えており、蓄圧器101には、ディーゼルエンジン(以下、内燃機関という)201の各気筒毎に設けられる複数の噴射弁102が接続され、蓄圧器101内に蓄圧される高圧燃料が、各噴射弁102から対応する気筒に噴射されるようになっている。噴射弁102の開弁時期および開弁時間は、制御手段である電子制御ユニット(以下、ECUという)103によって制御される。
【0016】
ECU103は、図示しないCPU、ROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータを備え、マイクロコンピュータに記憶された各種処理を順に実行する。そして、ECU103には、エンジン回転数や図示しないアクセルペダルの踏み込み量等の情報が入力され、ECU103は、それらの情報に基づいて、噴射弁102や、後述する圧送量制御弁104、圧力制御弁Vの作動を制御する。
【0017】
蓄圧器101内には、燃料ポンプ105から圧送される高圧燃料が、燃料の噴射圧力に相当する所定圧で蓄圧される。燃料ポンプ105としては、公知の構造の可変吐出量高圧ポンプが用いられ、低圧部としての燃料タンク106からフィードポンプ107を経て吸入される低圧燃料を高圧に加圧する。ECU103は、蓄圧器101に設けた圧力センサ108からの信号を基に、噴射圧力が負荷や回転数に応じて定めた所定値となるように、燃料ポンプ105に設けた圧送量制御弁104を駆動して、圧送量を制御する。
【0018】
蓄圧器101は排出流路を構成する低圧流路109を介して燃料タンク106に接続されており、この低圧流路109と蓄圧器101の間に、圧力制御弁Vが設けてある。圧力制御弁Vは、ECU103によって内燃機関1の運転状態に応じて制御され、開弁時に蓄圧器101内の高圧燃料を低圧流路109を介して燃料タンク106に戻すことにより、蓄圧器101の圧力を目標値まで低減するものである。
【0019】
次に、圧力制御弁Vについて説明する。図2は本発明の第1実施形態に係る電磁駆動装置を備える電磁弁の構成を示す断面図、図3は図2のA部の拡大図である。
【0020】
図2および図3に示すように、電磁弁は、軸方向一端側に底部11が形成されるとともに軸方向他端側に開口部12を有する有底円筒状のボデー1を備えている。通電時に磁界を形成する筒状のコイル2は、開口部12からボデー1に挿入され、ボデー1内に収納されている。ボデー1の開口部12はプレート3にて閉塞されている。このプレート3は、ボデー1の開口部12を覆う円盤状の蓋部31と、蓋部31の径方向中心部からコイル2の筒内空間に延びる柱状部32とを備えている。
【0021】
ボデー1とプレート3の間には、ボデー1とプレート3の合わせ面のシールを行う平板リング状のガスケット4が挟持されている。より詳細には、ボデー1における開口部12側のボデー端面13と、プレート3の蓋部31におけるボデー端面13に対向するプレート端面33との間に、ガスケット4が挟持されている。ボデー端面13およびプレート端面33は、ボデー1の軸方向に対して直交する平面になっている。
【0022】
そして、ボデー1には、開口部12およびボデー端面13を囲むようにして円筒状の筒部14が形成されており、コイル2、プレート3、およびガスケット4をボデー1に仮組みした後、筒部14の端部をかしめることにより、プレート3がボデー1に固定されるとともに、ガスケット4が圧縮状態でボデー1とプレート3とに挟持される。
【0023】
ボデー1、プレート3、およびガスケット4は、いずれも磁性体金属製であり、磁気回路を形成する。ガスケット4は、ボデー1およびプレート3よりも硬度が低い材料を用いている。因みに、本実施形態では、ボデー1はクロム鋼を浸炭処理して用い、プレート3はステンレスの生材を用い、ガスケット4は冷間圧延鋼板を用いている。
【0024】
ボデー1の底部11の径方向中心部には、コイル2の筒内空間に連通する貫通穴15が形成されており、この貫通穴15内にアーマチャ5が配設されている。アーマチャ5は、磁性体金属よりなり、磁気回路を形成する。
【0025】
ボデー1の底部11の外側には、円柱状の弁体6を保持するバルブハウジング7が配置されている。このバルブハウジング7は、一端が開口されるとともに他端に底部71が形成された有底円筒状をなしている。また、バルブハウジング7の径方向中心部には、軸方向に延びる摺動穴72が形成されており、この摺動穴72内に弁体6が摺動可能に配設されている。ボデー1の底部11の外側には、円筒状の筒部16が形成されており、この筒部16の端部をかしめることにより、バルブハウジング7がボデー1に固定されている。
【0026】
バルブハウジング7の底部71の径方向中心部には、軸方向に延びて底部71を貫通する第1排出通路73が形成されており、バルブハウジング7の円筒部には、径方向に延びて円筒部を貫通する第2排出通路74が形成されている。また、バルブハウジング7の底部71において、弁体6と対向する部位には、テーパ状のシート面75が第1排出通路73と同軸に形成されている。そして、弁体6がシート面75と接離することにより、第1排出通路73と第2排出通路74間が連通・遮断されるようになっている。
【0027】
弁体6には、ボデー1の貫通穴15内へ延びる円柱状のロッド61が一体に形成されており、このロッド61の外周にはアーマチャ5が嵌合固定されている。プレート3の柱状部32内には、スプリング8が配置されており、このスプリング8はアーマチャ5および弁体6を閉弁方向に付勢している。
【0028】
なお、第1排出通路73が蓄圧器101(図1参照)に接続され、第2排出通路74が燃料タンク106(図1参照)に接続される。
【0029】
上記構成において、内燃機関201の減速時以外は、圧力制御弁Vのコイル2への通電が断たれており、スプリング8によってアーマチャ5および弁体6が閉弁方向に付勢され、弁体6がバルブハウジング7のシート面75に当接して第1排出通路73と第2排出通路74間が遮断されている。
【0030】
一方、アクセルペダルの踏み込み量が急激に減少した場合、すなわち内燃機関201の減速時には、ECU103が圧力制御弁Vを開弁させ、これにより、蓄圧器101内の高圧燃料を燃料タンク106に排出し、蓄圧器101内の圧力を目標値まで急速に低下させる。
【0031】
具体的には、圧力制御弁Vのコイル2に通電されて磁界が形成され、ボデー1、プレート3、ガスケット4、およびアーマチャ5に磁気回路が形成されて磁気吸引力が発生し、アーマチャ5がプレート3の柱状部32側に吸引される。そして、アーマチャ5と一体の弁体6も柱状部32側に移動し、弁体6がバルブハウジング7のシート面75から離れるため、第1排出通路73と第2排出通路74間が連通し、蓄圧器101内の高圧燃料が、第1排出通路73、第2排出通路74および低圧流路109を介して燃料タンク106に排出される。
【0032】
本実施形態では、ガスケット4を磁性体製にしているため、ガスケット4によって磁気遮断されることがなく、したがって磁気特性低下を防止することができる。
【0033】
また、組み付けの際に、ガスケット4のシール面は他の構成部品に対して摺動しないので、ガスケット4のシール面が他の構成部品にて荒らされることがなく、シール性を向上させることができる。
【0034】
また、従来の電磁駆動装置における収納溝29(図5参照)や、その収納溝29に相当するものが不要であるため、加工工数を低減することができる。
【0035】
また、ガスケット4は、ボデー1およびプレート3よりも硬度が低い材料を用いているため、ガスケット4の変形によりガスケット4がボデー1やプレート3に密着し、シール性を確実に得ることができる。
【0036】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図4は第2実施形態に係る電磁駆動装置にて用いるガスケットの構成を示す断面図である。
【0037】
図4に示すように、本実施形態は、磁性体金属よりなる平板リング状のガスケット4の両面、すなわち、ボデー端面13(図3参照)およびプレート端面33(図3参照)に対向する面に、ガスケット4よりも硬度が低い平板リング状の弾性部材9を接合している。
【0038】
本実施形態では、ガスケット4は冷間圧延鋼板を用い、弾性部材9はアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を用いている。そして、ガスケット4と弾性部材9は、熱溶着或いは接着剤によって接合している。また、NBRは非磁性であるため、弾性部材9による磁気遮断の度合いを小さくして磁気特性低下を抑制するために、弾性部材9の厚さを0.15mm以下にしている。
【0039】
なお、磁性を有するゴムにて弾性部材9を形成することにより、弾性部材9による磁気遮断を防止することができる。
【0040】
本実施形態によると、弾性部材9はガスケット4よりも硬度が低いため、弾性部材9が容易に変形してボデー1やプレート3により気密的に密着するため、シール性を確実に得ることができる。
【0041】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、本発明の電磁駆動装置を電磁弁に適用したが、本発明の電磁駆動装置は、弁以外の被駆動部材を駆動するものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電磁駆動装置を備えるコモンレール式燃料噴射装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電磁駆動装置を備える電磁弁の構成を示す断面図である。
【図3】図2のA部の拡大図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電磁駆動装置にて用いるガスケットの構成を示す断面図である。
【図5】従来の電磁駆動装置を備える電磁弁の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…ボデー、2…コイル、3…プレート、4…ガスケット、12…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気吸引力により被駆動部材を駆動する電磁駆動装置であって、
筒状で一端側に開口部(12)を有する磁性体金属製のボデー(1)と、
前記開口部(12)から前記ボデー(1)に挿入されて通電時に磁界を形成するコイル(2)と、
前記開口部(12)を閉塞する磁性体金属製のプレート(3)と、
前記ボデー(1)と前記プレート(3)との間に挟持された磁性体製のガスケット(4)とを備えることを特徴とする電磁駆動装置。
【請求項2】
前記ボデー(1)における前記開口部(12)側のボデー端面(13)と、前記プレート(3)における前記ボデー端面(13)に対向するプレート端面(33)との間に、平板リング状の前記ガスケット(4)が挟持されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁駆動装置。
【請求項3】
前記ガスケット(4)は、前記ボデー(1)および前記プレート(3)よりも硬度が低いことを特徴とする請求項1または2に記載の電磁駆動装置。
【請求項4】
前記ガスケット(4)は、磁性体金属製であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の電磁駆動装置。
【請求項5】
前記ガスケット(4)の表面に、前記ガスケット(4)よりも硬度が低い弾性部材(9)を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の電磁駆動装置。
【請求項6】
前記弾性部材(9)は、ゴム製で且つ厚さが0.15mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の電磁駆動装置。
【請求項7】
前記弾性部材(9)は、磁性体製のゴムであることを特徴とする請求項5または6に記載の電磁駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−78111(P2007−78111A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268532(P2005−268532)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】