説明

電解めっき装置及び電解めっき方法

【課題】遮蔽板による電流遮蔽構造を簡易に調整・変更でき、めっき厚の均一化が図れる電解めっき装置及び電解めっき方法を提供する。
【解決手段】めっき液(13)が充填されるめっき処理槽(12)内に少なくとも一個以上のアノード(14)が垂直に設けられ、電解めっき処理される導体部(15)を有するテープ状製品(3)が、その面を垂直にして前記アノード(14)に対向しつつ前記アノード(14)に沿って搬送され、前記アノード(14)と前記テープ状製品(3)との間に、開口を有する絶縁性の遮蔽板(20)を設けた電解めっき装置において、前記遮蔽板(20)は、主遮蔽板(18)と、当該主遮蔽板(18)の開口(18a)を調整する従遮蔽板(19)とを重ね合わせて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電解めっき装置及び電解めっき方法に関し、更に詳しくは、導体部を有するテープ状製品を搬送しながら電解めっき処理を行う電解めっき装置及び電解めっき方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テープ状製品、例えば、TABテープ等の半導体装置用テープキャリアにおいて、各種電解めっき技術が利用されている。具体的には、両面配線TABテープ材における両面の導体層を導通化させるためのブラインドビアホールのコンフォーマルまたはビアフィリングの銅めっき、はんだボール搭載用ビアホールヘの充填銅めっき、セミアディティブパターン銅めっき、配線パターン形成後の銅配線表面及びはんだボール搭載用ビアホールヘのニッケル、金めっきなどが挙げられる。
【0003】
リール・ツー・リール生産方式により、TABテープに金、ニッケルめっきなどの電解めっきを行う従来の電解めっき装置を、図面を用いて説明する。
図8(1)に示すように、めっき槽(めっき処理槽)12内にはめっき液13が充填され、めっき槽12内にはアノード14が垂直に配置されている。電解めっき処理されるTABテープ3は、その面を垂直にしてアノード14に対向しつつアノード14に沿って水平方向(図8の紙面に垂直な方向)にめっき槽12を貫通して搬送される。
【0004】
めっき槽12内のアノード14には整流器(図示せず)の+側が接続され、前記整流器の−側が給電ロール(図示せず)に接続される。TABテープ3の搬送時には、前記給電ロールはTABテープ3の導体部15に接触しつつ回転するように構成されており、TABテープ3がめっき槽12内に有る状態で電圧をかければ、電流Cが流れてめっき液13中のニッケルイオン等がTABテープ3の導体部(導体パターンなど)15上に電解反応で析出することになる。
【0005】
電解金めっきは、一般に均一電着性が高くめっき厚分布が極めて良いが、電解ニッケルめっきや電解銅めっきは、めっき厚分布が悪いため、上記アノード14からTABテープ3の導体部15への電流Cの一部を遮蔽する絶縁性の遮蔽板を用いた電流遮蔽技術が利用されている。図8(2)〜(4)及び図9(1)〜(3)に、遮蔽板17を用いた従来の電解めっき装置を示す。遮蔽板17には、TABテープ3の導体部15の幅(図中、導体部15の上下方向の寸法)に合わせた上下幅を有する開口17aが形成されている。
【0006】
なお、関連する技術として、対向配置の基板と陽極との間に遮蔽板(多孔板)を配置し、基板の中央部と周囲部とにおける電流密度が均一になるように、中央部と周囲部との孔部の面積を異ならせた多孔の遮蔽板を用いた電解めっき方法(特許文献1参照)、及び、挟持部材(クリップ)に懸垂保持されるプリント配線板の幅寸法に応じて、プリント配線板の両側面に近接して配置される2つの遮蔽板(金属バー)との間、及び2つの挟持部材(クリップ)との間の距離を調整可能な位置調整機構(ラックとピニオン)を備えたプリント配線板めっき治具(特許文献2参照)が知られている。
【0007】
【特許文献1】特開2002−54000号公報
【特許文献2】特開2005−42170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、めっき厚分布はめっき条件によっても変わるが、特に電流密度はめっき厚分布に及ぼす影響が大きい。一般的には低い電流密度で時間をかけてめっきを行なうことでめっき厚分布は良くなる。また、めっきの金属種と目標とするめっき厚さが同じであれば、電流密度とめっき所要時間は反比例の関係にある。したがって、めっき厚分布の改善のために電流密度を低くすれば、所要時間が長くなり生産性は低下する。特にTABテープのようなリール・ツー・リール式生産方式の場合、めっき工程の搬送速度を遅くしなければならず、生産性にダイレクトに影響を及ぼす。
【0009】
生産性低下の問題を解決するためには、電流密度を維持しためっき方法でなければならず、上述した遮蔽板17を用いた電流遮蔽技術が利用される場合が多い。次に、遮蔽板17を用いた電流遮蔽の問題点を述べる。
【0010】
図8、図9は、全てTABテープ3の搬送方向に垂直な断面図であり、電解めっき時の電流分布状況を概略的に示している。
遮蔽板が無い図8(1)の場合、電解めっき時の電流(電流線)Cは、TABテープ3の導体部15の端部には、外側から回り込んで到達する電流成分があるため、特にTABテープ3の端部ほどめっき厚が厚くなり、中央部付近は薄くなる傾向にある。このため、TABテープ3の端部への電流集中を防ぎ、めっき厚を抑えるため、遮蔽板17等を配置した電流遮蔽技術が用いられる。
【0011】
図8(2)のように幅(上下幅)が狭い遮蔽板17の場合、電流Cの一部が遮蔽板17の上下を回り込んで導体部15の端部に到達し、導体部15の端部のめっき厚が厚くなるので、図8(3)のように、遮蔽板17の下側はめっき槽12の底面と接し、上側はめっき液13の液面上に出るのがよい。
また、図8(4)のように遮蔽板17の厚さが薄いと、アノード14からカソードとなる導体部15ヘ向かう電流Cのうち、遮蔽板17の開口17aの上下端部付近の回り込み電流成分を遮蔽しにくく、TABテープ3の端部付近のめっき厚が厚くなる。この場合には、図8(3)のように、遮蔽板17の厚さをある程度厚くすることで、めっき厚分布はかなり改善する。
【0012】
しかし、図9(1)のように、TABテープ3の導体部15が広幅、大面積になるほど、めっき厚分布が悪くなり、めっき厚均一化のための遮蔽板17による電流遮蔽技術の難易度は高くなる。
また、TABテープ3が多列取り、例えば、2列取り(図9(2))、3列取り(図9(3))のTABテープ3の場合には、遮蔽部材が無い遮蔽板17の開口17aの内側では、各列間の導体部15の端部に電流が集中し、この付近のめっき厚が厚くなってしまう。
【0013】
このように、遮蔽板による電流遮蔽技術はめっき厚分布の改善に有効な手段であるが、広幅や多列取りなどのテープ状製品の品種や、要求されるめっき厚規格範囲に応じて、更なる調整・対応が必要となる。しかしながら、その都度、めっき槽12内の遮蔽板17をそっくり交換することは非常に手間が掛かり、結果として電流密度を下げるなどの対応になってしまう場合が多いのが現状である。
【0014】
本発明は、上記課題を解決し、遮蔽板による電流遮蔽構造を簡易に調整・変更でき、めっき厚の均一化が図れる電解めっき装置及び電解めっき方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成されている。
【0016】
本発明の第1の態様は、めっき液が充填されるめっき処理槽内に少なくとも一個以上のアノードが垂直に設けられ、電解めっき処理される導体部を有するテープ状製品が、その面を垂直にして前記アノードに対向しつつ前記アノードに沿って搬送され、前記アノードと前記テープ状製品との間に、開口を有する絶縁性の遮蔽板を設けた電解めっき装置において、前記遮蔽板は、主遮蔽板と、当該主遮蔽板の開口を調整する従遮蔽板とを重ね合わせて構成されていることを特徴とする電解めっき装置である。
【0017】
本発明の第2の態様は、第1の態様の電解めっき装置において、前記従遮蔽板は、前記めっき処理槽から抜き差し可能に設けられていることを特徴とする。
【0018】
本発明の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様の電解めっき装置において、前記従遮蔽板は、前記主遮蔽板の前記テープ状製品側に設置されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の態様のいずれかの電解めっき装置おいて、多列の前記導体部を有する前記テープ状製品に対し、前記従遮蔽板は、前記テープ状製品の各列の前記導体部に対応した開口を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の態様のいずれかの電解めっき装置において、前記従遮蔽板の開口の上下幅を、前記テープ状製品の導体部の幅よりも狭く設定したことを特徴とする。
【0021】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の態様のいずれかの電解めっき装置において、前記従遮蔽板の開口の上下の端部に、前記主遮蔽板の開口の内側へと突出される突起遮蔽部が、前記上下の端部に沿って複数形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の第7の態様は、第1〜第6の態様のいずれかの電解めっき装置において、前記主遮蔽板は、その下端部が前記めっき処理槽内の底面上に設置され、その上端部がめっき液面から突き出て設けられていることを特徴とする。
【0023】
本発明の第8の態様は、第1〜第7の態様のいずれかの電解めっき装置において、前記主遮蔽板の厚みが20〜50mmであり、前記従遮蔽板の厚みが5〜10mmであることを特徴とする。
【0024】
本発明の第9の態様は、めっき液が充填されためっき処理槽内に少なくとも一個以上のアノードを垂直に設け、前記アノードの面に対向させて開口を有する絶縁性の遮蔽板を設け、前記アノードとは反対側の前記遮蔽板の近傍に、めっき処理される導体部を有するテープ状製品を搬送して、前記導体部をめっき処理する電解めっき方法において、前記遮蔽板として、主遮蔽板と当該主遮蔽板の開口を調整する従遮蔽板とを重ね合わせた遮蔽板を用いるようにしたことを特徴とする電解めっき方法である。
【0025】
本発明の第10の態様は、第9の態様の電解めっき方法において、前記遮蔽板を用いて電解めっきされた前記テープ状製品の導体部のめっき厚分布の結果に基づいて、前記電解めっきに用いた従遮蔽板を、当該従遮蔽板とは異なる開口の上下幅または開口形状を有する別の従遮蔽板に変更して、前記めっき膜分布を調整するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、遮蔽板による電流遮蔽構造を簡易に調整・変更でき、めっき厚の均一なテープ状製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る電解めっき装置及び電解めっき方法の実施形態を図面を用いて説明する。
【0028】
図1には、実施形態の電解めっきに用いられるリール・ツー・リール生産方式による電解めっき装置の一例として、テープ状製品であるTABテープ3にニッケルめっき及び金めっき処理を施す電解めっき装置の概略的な平面配置を示す。
【0029】
リール・ツー・リール工程では、図1に示すように、巻き出し部1にセットしたリール2から電解めっき処理されるテープ状製品であるTABテープ3を繰り出し、巻き取り部9のリール2に電解めっきされたTABテープ3を巻き取る。巻き出し部1のリール2と巻き取り部9のリール2との間のTABテープ3の搬送経路(パスライン)には、前処理槽4と、ニッケルめっき槽5と、金めっき槽6と、後洗浄槽7と、乾燥槽8とが設置されている。ニッケルめっき槽5および金めっき槽6の前後には、給電ロール10がそれぞれ設けられている。また、ニッケルめっき槽5及び金めっき槽6内には、アノードが設置される。
【0030】
図2(a)は給電ロール10とTABテープ3との位置関係を示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)のB−B断面図である。図2に示すように、給電ロール10は回転自在に設けられ、TABテープ3の搬送時には給電ロール10が回転してTABテープ3の導体部である給電パターン11と接触するよう構成されている。
電気回路的には、図示省略の整流器(めっき電源)の+側がめっき槽5、6内のアノードと接続され、−側が給電ロール10と接続された回路となるので、TABテープ3の導体部がめっき槽5、6内に有る状態で電圧をかければ、電流が流れてめっき液中のニッケルイオン等がTABテープ3の導体パターン15、給電パターン11等の導体部上に電解反応で析出することになる。
【0031】
(第1の実施形態)
図3は、1列取りのTABテープ3に適した遮蔽板20を備えた第1の実施形態の電解めっき装置を示す。図3(a)はTABテープ3の搬送方向に垂直なめっき槽(めっき処理槽)12の断面図であり、図3(b)は従遮蔽板19の正面図であり、図3(c)は遮蔽板20とTABテープ3との配置を示すTABテープ3の搬送方向に垂直な断面図である。
【0032】
図3(a)に示すように、めっき槽12内にはめっき液13が充填され、めっき槽12内にはアノード14が垂直に配置されている。電解めっき処理されるTABテープ3は、その面を垂直にしてアノード14に対向しつつアノード14に沿って水平方向(図3の紙面に垂直な方向)にめっき槽12を貫通して搬送される。
めっき槽12内のアノード14には整流器(めっき電源)の+側が接続され、前記整流器の−側が給電ロールに接続される。従って、TABテープ3がめっき槽12内に有る状態で電圧を加えれば、電流(電流線)Cが流れてめっき液13中のニッケルイオン等がTABテープ3の導体部(導体パターンなど)15上に電解反応で析出することになる。
なお、アノード14の構造は、ニッケルめっきの場合、チタンバスケットにニッケルチップを充填させ、チタンバスケット全体を液透過性のアノードバッグで包む構造が一般的である。金めっきの場合はチタン板またはチタン板を加工したメッシュ状の板の表面を白金めっきした不溶性タイプを使用する場合が多い。
【0033】
アノード14とTABテープ3との間には、前記電流Cの一部を遮断する絶縁性の遮蔽板20が設けられる。遮蔽板20は、TABテープ3の搬送経路(パスライン)に近接させて設置される。遮蔽板20は、図示のように、主遮蔽板18と、主遮蔽板18の開口18aを調整する開口19aを有する従遮蔽板19とを重ね合わせたものである。この第1
の実施形態では、主遮蔽板18の開口18aも従遮蔽板19の開口19aも、図示のように、TABテープ3の導体部15の幅寸法に合わせた上下幅を有する長方形状である。
【0034】
主遮蔽板18は、基本的な設定としては、図3に示すように、TABテープ3の導体部15の幅分(めっきエリアの幅分)に合わせた幅(上下幅)の開口18aとし、開口18aの上下部分で電流Cを遮蔽する構造とする。主遮蔽板18の下側はめっき槽12の底面上に設置し、主遮蔽板18の上側はめっき液13面から出るようにするのがよい。
主遮蔽板18の材料には、絶縁性、強度、耐薬品性を考慮し、塩化ビニル樹脂などを用いるのが良い。主遮蔽板18の厚さは20〜50mm程度が望ましい。主遮蔽板の目的からすれば、厚さ(奥行き)が20mm以上確保できれば良いと考えられるが、例えば、開ロ18aを囲む外周部分を庇状に突出させて形成することで電流遮蔽が確保できれば、主遮蔽板18の厚さを、より薄くしても構わない。主遮蔽板18とテープ状製品の間に従遮蔽板19を挿入するため、それを見込んだ距離分、主遮蔽板18をテープ状製品のパスラインから離した位置に設置する。
【0035】
従遮蔽板19は、図示のように、主遮蔽板18に沿わせて、主遮蔽板18のTABテープ3のパスライン側に設置される。従遮蔽板19は、めっき槽12の上方から抜き差し可能に設けられており、TABテープ3等の導体幅に合った適切な開口19aを有する従遮蔽板19を選定して使用する。
従遮蔽板19の開ロ19aは、主遮蔽板18と同様に、テープ状製品であるTABテープ3の導体部15の幅(めっきエリアの幅)に合せた開口幅を基本とする。
【0036】
しかしながら、めっき厚分布の結果、例えば、導体部15の端部におけるめっき厚が厚い場合には、従遮蔽板19の開ロ19aの幅を、若干導体部15の幅よりも狭くして、従遮蔽板19の遮蔽部分がテープ状製品の導体部15部分に被さるようにして調整するのが良い。
また、テープ状製品であるTABテープ3等の導体部の幅が品種毎に若干異なることが予想される場合には、主遮蔽板18の開口18aの上下幅は、導体部の幅が最大である品種に合せておき、品種毎に若干異なる導体部の幅にあった開口19aを有する従遮蔽板19を品種毎に変更して用いるのが良い。
【0037】
主遮蔽板18は基本的にめっき槽12内に固定的に設けられ、一方、従遮蔽板19はテープ状製品の品種切り替えなどに際して容易に交換可能に設けられる。従って、従遮蔽板19は、簡単にめっき槽12の上側などから抜き挿しができる構造とするのがよい。また、従遮蔽板19は、加工や製作しやすい材質が望ましいので、厚さが5〜l0mm程度の塩化ビニル製樹脂のものが好ましい。なお、従遮蔽板19の抜き差しを容易とするために、従遮蔽板19を案内し且つ保持するためのガイド枠(ガイド溝)ないし挿入枠(挿入溝)などを、めっき槽12或いは主遮蔽板18に設けるようにするのが良い。
【0038】
従遮蔽板19を設置した後の状態は、電流遮蔽性を考慮し、テープ状製品のパスラインから1〜5mm程度離した位置に挿入できるように設計しておく。遮蔽板20はテープ状製品に近づけるほどその開口形状に近い電流分布が得られる。しかし、接触すると擦りキズの原因となるので僅かに離す必要がある。理想的には1〜2mm程度が良いが、5mm程度までは効果が高い。
遮蔽板20の厚みは30mm以上あれば、アノード14からカソードとなるTABテープ3の導体部15ヘ向かう回り込み電流の遮蔽効果が高い。しかし、厚すぎても取り扱いが難しくなるから、主遮蔽板18と従遮蔽板19の厚みの合計が30〜60mm程度になるのが望ましい。従遮蔽板19の厚みを5〜10mmとすれば、主遮蔽板18の厚みは20〜50mm程度が良い。なお、主遮蔽板18のアノード14側にも更に従遮蔽板を設置するようにしても良い。
【0039】
(第2、第3の実施形態)
図4には2列取りのTABテープ3に適した遮蔽板を備えた第2の実施形態の電解めっき装置を、また、図5には3列取りのTABテープ3に適した遮蔽板を備えた第3の実施形態の電解めっき装置を示す。
【0040】
第2の実施形態の電解めっき装置における遮蔽板は、図4に示すように、上記第1の実施形態と同様に、主遮蔽板21と従遮蔽板22とが重ね合わされて構成される。主遮蔽板21は、図示のように、2列のTABテープ3の導体部15の幅分(めっきエリアの幅分)に合わせた開口21aを有する。また、従遮蔽板22は、2列の各導体部15の幅に合わせた開口幅を有する2つの開口22a、22aを有し、開口22aと開口22aとの間には細長い帯状の遮蔽部22bが形成されている。
【0041】
第3の実施形態の電解めっき装置における遮蔽板は、図5に示すように、上記第1の実施形態と同様に、主遮蔽板23と従遮蔽板24とが重ね合わされて構成される。主遮蔽板23は、図示のように、3列のTABテープ3の導体部15の幅分(めっきエリアの幅分)に合わせた開口23aを有する。また、従遮蔽板24は、3列の各導体部15の幅に合わせた開口幅を有する3つの開口24a、24a、24aを有し、各開口24aの間には、細長い帯状の遮蔽部24bが形成されている。
【0042】
多列取りのTABテープ3に対して、上述した図9(2)、(3)に示すような開口17a内に遮蔽部材が無い遮蔽板17を用いた場合、各列間の導体部15の端部に電流Cが集中し、この付近のめっき厚が厚くなってしまう。
これに対し、図4、図5に示すように、従遮蔽板22の開口22a、22aの間、従遮蔽板24の各開口24aの間には、遮蔽部22b、遮蔽部24bが設けられているので、各列間の導体部15の端部に電流Cが集中するのを防止でき、めっき厚分布を均一化できる。
【0043】
2列(図4)、3列(図5)と多列取りの場合も、1列取り(図3)の場合と同様に、従遮蔽板22、24の開口22a、24aは、各列の導体部15の幅に合せた開口とする。しかし、めっき厚分布の結果次第では若干導体部15の部分に被さる幅としても良い。
【0044】
遮蔽板の開口幅、開口形状を導体幅に合せた電流遮蔽方法により、高いめっき厚分布の均一化効果が得られる。しかし実際には、導体パターンの形状等の違いによりめっき厚分布は変化する。ある一つの従遮蔽板を使用してめっきした際のめっき厚分布が満足できないレベルであれば、めっき厚を詳細に解析した上で、従遮蔽板の開口幅または開口形状を調整・変更すると良い。
【0045】
例えば、広幅品の導体部の端部や多列品における各列の導体部の端部が厚い結果を得た場合には、主遮蔽板の開口の内側へと突出される突起遮蔽部を、従遮蔽板の開口の上下の端部に、これに沿って複数形成すると良い。
(第4の実施形態)
具体的には、図3に示す1列取りのTABテープ3に適した第1の実施形態の電解めっき装置にあっては、従遮蔽板19に替えて、図6に示すような従遮蔽板25を用いる。従遮蔽板25の開口25aの上下端部には、くさび形状(三角形状)の複数の突起遮蔽部25cが等間隔に形成されている。図6(a)は従遮蔽板25の正面図、(b)は(a)のA−A線の位置をTABテープ3の導体部15が通過する時の断面図、(c)は(a)のB−B線の位置をTABテープ3の導体部15が通過する時の断面図である。
(第5の実施形態)
また、図4に示す2列取りのTABテープ3に適した第2の実施形態の電解めっき装置
にあっては、従遮蔽板22に替えて、図7に示すような従遮蔽板26を用いる。従遮蔽板26の2つの開口26a、26aの上下端部には、くさび形状(三角形状)の複数の突起遮蔽部26cが等間隔に形成されている。図7(a)は従遮蔽板26の正面図、(b)は(a)のA−A線の位置をTABテープ3の導体部15が通過する時の断面図、(c)は(a)のB−B線の位置をTABテープ3の導体部15が通過する時の断面図である。
【0046】
従遮蔽板25、26の開口25a、26aの端部付近の電流Cを部分的に遮蔽することで、導体部15の端部付近のめっき厚を抑制可能である。図6,7の従遮蔽板25、26の開口25a、26aは、A−A線付近の位置をTABテープ3の導体部15が通過する際には、導体幅と同じ幅であるが、B−B線付近の位置をTABテープ3の導体部15が通過する際には、導体部15の端部が突起遮蔽部25c、26cにより遮蔽されるためである。この方法は、めっき槽内をテープ状製品を搬送していくリール・ツー・リール方式で有効な方法である。
【0047】
上述したように、遮蔽板を主遮蔽板と主遮蔽板の開口を調整する従遮蔽板とを重ね合わせた構造とし、テープ状製品の導体幅、導体パターン形状等に合った適切な開口幅、開口形状を有する従遮蔽板を用いることで、簡単に電流遮蔽構造を調整・変更することができると共に、高いめっき厚分布の均一化を実現できる。
また、従遮蔽板のみを交換することで、種々の品種に対してめっき厚分布の改善が図れる。更に、従遮蔽板は抜き差しが簡単にできる構造のため、交換が容易であり、結果として品種変更の際の対応を極めてスピーディに行える。また、めっき厚の均―化が容易になることから、電流密度を落とす必要がなくなり、生産性は高いレベルで維持可能である。
また、めっき厚分布を解析し、従遮蔽板の開口形状等を変更すること、即ち開口形状等にフィードバックをかけることで、更なるめっき厚分布の改善要求(膜厚規格範囲)に対応が可能となる。
【0048】
なお、上記実施形態では、ニッケルめっき、金めっきについて説明したが、本発明はこれら金属種以外(銅など)にも、勿論適用可能である。また、上記実施形態では、片面のみに導体部(導体層)を有するテープ状製品であったが、両面に導体部(導体層)を有するテープ状製品に対し、両面に電解めっきを行なう必要のある場合は、テープ状製品のパスラインの両側に本発明の遮蔽板とアノードとをそれぞれ設置することで同様に対応が可能である。
【実施例】
【0049】
次に、本発明の実施例を説明する。
【0050】
(1)評価サンプルの作製方法
TABテープ基材として住友金属鉱山製のエスパーフレックス材(銅厚:約8μm、ポリイミド厚:約38μm)を使用し、フォトエッチング工程を経て配線パターンを形成した。この配線パターンを形成したテープ基材を、図1に示すめっき装置を用いてニッケルめっき処理を行なった。なお、金めっきは実施しなかった。
ここで、遮蔽板の構造を変化させることで、数種類の評価サンプルを作製した。主遮蔽板の厚みは30mmであり、テープ基材のパスラインから10mm離れた所にその端部が位置するように設置した。従遮蔽板の厚みは8mmとし、主遮蔽板に沿わせてめっき槽の上側から挿入した。このとき、テープ基材のパスラインと従遮蔽板の端部までの距離(間隔)は2mmとなった。
ニッケルめっきの前処理は、硫酸系の酸性脱脂液および過酸化水素一硫酸系銅化研液(化学研磨液)を使用した。ニッケルめっきは、電流密度を4A/dmとしてめっき時間は2分となるようにテープ基材の搬送速度を調整した。この条件でめっき厚の平均値(理論値)としては1.6μm程度になる。ニッケルめっき厚の測定は蛍光X線膜厚計を使用
した。
【0051】
(2)評価結果
表1に、テープ基材の幅が105mm、導体パターン部の幅が90mmの1列品のニッケルめっき厚測定結果を示す。実施例1では、上記図3に示す主遮蔽板(導体パターン部の幅と同じ90mm)と従遮蔽板(開口幅90mm)とを用いた。実施例2では、図3の主遮蔽板(開口幅90mm)と、図6の従遮蔽板(開口幅90mmで、開口の上下端部にくさび状の突起遮蔽部を有するもの)とを用いた。また、比較例1では、図3の主遮蔽板(開口幅90mm)のみを用い、従来例1では、遮蔽板を用いずにニッケルめっきを行った。
【0052】
表2に、テープ基材の幅が158mm、導体パターン部の幅が各列61mmの2列品のニッケルめっき厚測定結果を示す。実施例3は、上記図4に示す主遮蔽板(2列の導体パターン部の幅と同じ131mm)と従遮蔽板(各列の幅と同じ開口幅61mm)とを用いた。実施例4では、図4の主遮蔽板(開口幅131mm)と、図7の従遮蔽板(開口幅61mmで、開口の上下端部にくさび状の突起遮蔽部を有するもの)とを用いた。また、比較例2では、図4の主遮蔽板(開口幅131mm)のみを用い、従来例2では、遮蔽板を用いずにニッケルめっきを行った。
【0053】
【表1】

【0054】
表1より、実施例1、2の条件にて、ニッケルめっき厚の分布を均一化することができた。実施例2は実施例1の膜厚分布の解析結果をフィードバックし、従遮蔽板の開ロ端部をくさび形状に加工した場合(図6)の結果であり、更なるめっき厚の改善効果が得られた。即ち、実施例1では、導体層上のニッケルめっき厚の最大値と最小値との差が0.3
2μmであったが、実施例2では、0.12μmに減少した。比較例1は主遮蔽板のみを
使用した場合であり、主遮蔽板の開口幅を90mmとすることで遮蔽効果が出ており、めっき厚分布は遮蔽板を用いていない従来例1と比較して改善している。しかしながら、テープ基材のパスラインと遮蔽板(主遮蔽板)の距離が10mmと開いていることにより、実施例1と比較して遮蔽効果が弱まったと考えられる。従来例1では、めっき厚のばらつきが大きいことが確認された。
【0055】
【表2】

【0056】
表2からも、実施例3、4の条件にて、ニッケルめっき厚の分布を改善できることを確認した。実施例4は実施例3の膜厚分布の解析結果をフィードバックし、従遮蔽板の開ロ端部をくさび形状に加工した場合(図7)の結果であり、表1のときと同様、更なるめっき厚の改善効果が得られた。比較例2は主遮蔽板のみを使用した場合であり、主遮蔽板の開口幅を131mmとすることで遮蔽効果が出ており、めっき厚分布は遮蔽板を用いていない従来例2と比較して改善している。しかしながら、テープ基材のパスラインと遮蔽板(主遮蔽板)の距離が10mmと開いていることにより、実施例3と比較して遮蔽効果が弱まったと考えられる。従来例2では、めっき厚のばらつきが大きいことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態の電解めっきに用いられるリール・ツー・リール生産方式による電解めっき装置の一例を示す概略的な平面配置図である。
【図2】図1の給電ロール10とTABテープ3との配置を示すもので、(a)は斜視図、(b)は(a)のb−b断面図である。
【図3】1列取りのTABテープに適した遮蔽板を備えた第1の実施形態の電解めっき装置を示す図である。
【図4】2列取りのTABテープに適した遮蔽板を備えた第2の実施形態の電解めっき装置を示す図である。
【図5】3列取りのTABテープに適した遮蔽板を備えた第3の実施形態の電解めっき装置を示す図である。
【図6】1列取りのTABテープに適した従遮蔽板の他の実施形態を示す図である。
【図7】2列取りのTABテープに適した従遮蔽板の他の実施形態を示す図である。
【図8】従来の電解めっき装置を示すもので、(1)〜(4)は全てTABテープの搬送方向に垂直な断面図である。
【図9】従来の電解めっき装置を示すもので、(1)〜(3)は全てTABテープの搬送方向に垂直な断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 巻き出し部
2 リール
3 TABテープ(テープ状製品)
4 前処理槽
5 ニッケルめっき槽
6 金めっき槽
7 後洗浄槽
8 乾燥槽
9 巻き取り部
10 給電ロール
11 給電パターン
12 めっき槽
13 めっき液
14 アノード
15 導体部(導体パターン)
18 主遮蔽板
18a 開口
19 従遮蔽板
19a 開口
20 遮蔽板
21、23 主遮蔽板
22、24 従遮蔽板
21a、22a、23a、24a 開口
22b、24b、26b 遮蔽部
25c、26c 突起遮蔽部
C 電流(電流線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液が充填されるめっき処理槽内に少なくとも一個以上のアノードが垂直に設けられ、電解めっき処理される導体部を有するテープ状製品が、その面を垂直にして前記アノードに対向しつつ前記アノードに沿って搬送され、前記アノードと前記テープ状製品との間に、開口を有する絶縁性の遮蔽板を設けた電解めっき装置において、
前記遮蔽板は、主遮蔽板と、当該主遮蔽板の開口を調整する従遮蔽板とを重ね合わせて構成されていることを特徴とする電解めっき装置。
【請求項2】
前記従遮蔽板は、前記めっき処理槽から抜き差し可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載電解めっき装置。
【請求項3】
前記従遮蔽板は、前記主遮蔽板の前記テープ状製品側に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電解めっき装置。
【請求項4】
多列の前記導体部を有する前記テープ状製品に対し、前記従遮蔽板は、前記テープ状製品の各列の前記導体部に対応した開口を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電解めっき装置。
【請求項5】
前記従遮蔽板の開口の上下幅を、前記テープ状製品の導体部の幅よりも狭く設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電解めっき装置。
【請求項6】
前記従遮蔽板の開口の上下の端部に、前記主遮蔽板の開口の内側へと突出される突起遮蔽部が、前記上下の端部に沿って複数形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電解めっき装置。
【請求項7】
前記主遮蔽板は、その下端部が前記めっき処理槽内の底面上に設置され、その上端部がめっき液面から突き出て設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電解めっき装置。
【請求項8】
前記主遮蔽板の厚みが20〜50mmであり、前記従遮蔽板の厚みが5〜10mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電解めっき装置。
【請求項9】
めっき液が充填されためっき処理槽内に少なくとも一個以上のアノードを垂直に設け、前記アノードの面に対向させて開口を有する絶縁性の遮蔽板を設け、前記アノードとは反対側の前記遮蔽板の近傍に、めっき処理される導体部を有するテープ状製品を搬送して、前記導体部をめっき処理する電解めっき方法において、
前記遮蔽板として、主遮蔽板と当該主遮蔽板の開口を調整する従遮蔽板とを重ね合わせた遮蔽板を用いるようにしたことを特徴とする電解めっき方法。
【請求項10】
前記遮蔽板を用いて電解めっきされた前記テープ状製品の導体部のめっき厚分布の結果に基づいて、前記電解めっきに用いた従遮蔽板を、当該従遮蔽板とは異なる開口の上下幅または開口形状を有する別の従遮蔽板に変更して、前記めっき厚分布を調整するようにしたことを特徴とする請求項9に記載の電解めっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−293114(P2009−293114A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150698(P2008−150698)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】