説明

露光マスクの位置合わせ方法、及び薄膜素子基板の製造方法

【課題】 本発明の目的は、同一露光マスクのアライメントマーク間の最小許容間隔を保ち、対象体のアライメントマークに必要な領域を縮小でき、対象体の同マークの再利用が可能な露光マスクの位置合わせ方法及び薄膜素子基板の製造方法の提供。
【解決手段】 本発明は、アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いて、アライメントマークが形成された露光対象となる対象体にパターン露光を行うに際し、両アライメントマークを用いてホログラムマスクと対象体との位置合わせを複数回行う露光マスクの位置合わせ方法で、対象体上のパターン露光のための一領域と、該一領域の露光に用いるマスクとの位置合わせ用マークとを結ぶ直線が、対象体上の一領域に隣接するパターン露光のための他領域と、該他領域の露光に用いるマスクとの位置合わせ用マークとを結ぶ直線に対して交差するように各アライメントマークを設けて位置合わせを行う方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム等の露光技術を使った微細加工に関し、詳しくは、露光マスクと露光対象となる対象体との位置合わせ方法、及びその方法を用いた薄膜素子基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置のパターニングプロセスにおいて、TIR(Total Internal Reflection:全内部反射)型ホログラフィック露光技術が注目されている。この露光技術は、ホログラム露光装置を用いて、ホログラムマスクに対し所望のパターンを記録する記録工程と、このホログラムマスクに再生光を照射して半導体パターン用のフォトレジストを感光する露光工程とからなる方法が採用されている。
【0003】
記録工程では、まず半導体装置のパターンに対応したマスクパターン(元レチクル)にレーザー光の記録ビームを照射して回折光を生じさせ、ホログラムマスクの記録面に射出する。一方、ホログラムマスクの記録面に対し一定の角度でホログラムマスクの裏側から参照光を照射し、元レチクルからの回折光と干渉させる。これによってホログラムマスクの記録面に干渉パターンを生じさせこれをホログラム記録面に記録させる。
【0004】
露光工程では、元レチクルと同じ位置にホログラムマスクを置いて、記録時と反対方向から再生光である露光ビームを照射し、フォトレジストに元のパターンを再現した回折光を結像させてフォトレジストを露光する。通常、この露光工程において、ホログラムマスクは、露光の対象体となる基板側に形成されたアライメントマークとホログラムマスク側に形成されたアライメントマークとを合わせることで、基板とホログラムマスクとの位置合わせを行う。
【0005】
従来、複数のホログラムマスクを用いてパターニングを行う場合には、この複数のホログラムマスクの各々に形成された各アライメントマークに対応する位置に、各々アライメントマークが形成された基板を用いてホログラムマスクと基板との位置合わせを行っていた(非特許文献1参照)。
【0006】
したがって、基板側には、ホログラムマスクの数に対応するアライメントマークが複数必要となり、使用するホログラムマスクの数が多くなるほど、基板側のアライメントマークの数も多くなり、アライメントマークを形成するために基板上に広い面積が必要となるといった問題があった。
【0007】
このようなホログラム露光装置用ホログラムマスクに組み込むアライメントマークは、デバイス領域と別個に作成するが、作成装置の精度上、デバイス領域及び他のホログラムマスク(他のレイヤ)用のアライメントマークに対し、5mm程度の間隔を設けて作成する必要がある(図11及び図12参照)。
【0008】
ここで、図11(a)及び(b)は、ホログラム用マスクを作成するためのオリジナルCr製マスク(元レチクル)である第1層目マスク及び第2層目マスクをそれぞれ示す概略平面図である。図11(a)に示すように、第1層目マスク1は、中央部に位置する1層目デバイス領域D1と、四隅の1層目アライメントマークA1とが設けられている。また、図11(b)に示すように、第2層目マスク2は、中央部に位置する2層目デバイス領域D2と、四隅の2層目アライメントマークA2とが設けられている。A1とA2とはマーク模様が異なっている。
【0009】
図12(a)及び(b)は、ホログラム用マスク(2層目マスク)におけるデバイス領域記録時とアライメントマーク記録時それぞれの工程を示す概略構成図である。図12(a)に示すように、デバイス領域記録時には、オリジナルCrマスク2の4つのアライメントマークA2を遮光板で閉じた状態にして、デバイス領域D2を介したオブジェクトビームとプリズムを介した参照ビームによってホログラムマスクに記録する。一方、図12(b)に示すように、アライメントマーク記録時には、デバイス領域D2を遮光板で閉じた状態にして、オリジナルCrマスク2の4つのアライメントマークA2を介したオブジェクトビームによってホログラムマスクに記録する。ここで作成されたホログラム用マスクでは、アライメントマークとデバイス領域との間がそれぞれ5mm程度の間隔を設けて作成されている。尚、図示しないが、当該アライメントマークと他のレイヤ用のアライメントマークとを同一マスク上に設ける場合には、両アライメントマークの間もそれぞれ5mm程度の間隔を設けて作成されることになる。
【0010】
また、合わせ露光時に上層アライメントマークが下層アライメントマークに重なってパターニングされてしまうので、以後の露光時のアライメントに使用できなくなる。
【非特許文献1】SID03 Digest, P-40, pp.350-353.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする問題点は、前述した従来技術における問題点である。
そこで、本発明の目的は、同一の露光マスクにおけるアライメントマーク間の最小許容間隔を保ちつつ、対象体のアライメントマークに必要な領域を縮小することができ、しかも対象体のアライメントマークの再利用が可能となる露光マスクの位置合わせ方法、これを用いた薄膜素子基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記1.に示す露光マスクの位置合わせ方法を提供することにより、前記目的を達成したものである。
【0013】
1.アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いて、アライメントマークが形成された露光対象となる対象体にパターン露光を行うに際し、両者のアライメントマークを用いて前記ホログラムマスクと前記対象体との位置合わせを複数回行う露光マスクの位置合わせ方法であって、
前記対象体上におけるパターン露光をするための一の領域と、該一の領域の露光に用いるホログラムマスクとの位置合わせ用のアライメントマークとを結ぶ直線が、前記対象体上における前記一の領域に隣接するパターン露光をするための他の領域と、該他の領域の露光に用いるホログラムマスクとの位置合わせ用のアライメントマークとを結ぶ直線に対して、交差するように前記各アライメントマークを設けて位置合わせを行うことを特徴とする露光マスクの位置合わせ方法。
【0014】
本発明によれば、同一の露光マスクにおけるアライメントマーク間の最小許容間隔を保ちつつ、対象体のアライメントマークに必要な領域を縮小することができる。また、合わせ露光時に上層側のアライメントマークが下層側のアライメントマークに重なってパターニングされることがなく、以後の露光時のアライメントの使用が可能となる。即ち、対象体上のアライメントマークの再利用が可能となる。ここで、一の領域又は他の領域とアライメントマークとを結ぶ直線は、これら領域上の任意の一点とアライメントマーク上の任意の一点を結ぶ直線であればよいが、一の領域又は他の領域を形成する図形の中心(重心)とアライメントマークを形成する図形の中心とを結ぶ直線が好ましい。
【0015】
また、本発明は、下記2.〜5.に示す発明をそれぞれ提供するものである。
【0016】
2.前記一の領域の露光に用いるホログラムマスクが、少なくとも前記他の領域に対して遮光可能な形状からなる、前記1記載の露光マスクの位置合わせ方法。
かかる方法によれば、対象体のアライメントマークに必要な領域をより効率的に縮小することができる。
【0017】
3.アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いてパターン露光を行うホログラム露光を利用した薄膜素子基板の製造方法であって、
前記1又は2記載の露光マスクの位置合わせ方法を用いて位置合わせを行う第1工程と、
前記ホログラムマスク上から露光ビームを照射することにより、前記対象体を露光してパターニングを行う第2工程と、を含むことを特徴とする薄膜素子基板の製造方法。
【0018】
かかる方法によれば、半導体装置等のデバイスに用いられる薄膜素子基板の回路パターン形成に利用し得る領域を広げることが可能となるので、より高密度に集積化されたデバイスを提供することが可能となる。
【0019】
4.アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いてパターン露光を行うホログラム露光を利用した薄膜素子基板の製造方法であって、
前記ホログラムマスクにアライメントマークを含む所望のパターンを記録する第1工程と、
前記1又は2記載の露光マスクの位置合わせ方法を用いて位置合わせを行う第2工程と、
前記ホログラムマスク上から露光ビームを照射することにより、前記対象体を露光してパターニングを行う第3工程と、を含むことを特徴とする薄膜素子基板の製造方法。
【0020】
かかる方法によれば、半導体装置等のデバイスに用いられる薄膜素子基板の回路パターン形成に利用し得る領域を広げることが可能となるので、より高密度に集積化されたデバイスを提供することが可能となる。
【0021】
5.前記対象体のアライメントマークが、該対象体上に最初のパターンを露光する際に形成される、前記3又は4に記載の薄膜素子基板の製造方法。
かかる方法によれば、対象体上のアライメントマークを別途形成する必要がなくなるので、作業工程を減らすことが可能となり、生産効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、同一の露光マスクにおけるアライメントマーク間の最小許容間隔を保ちつつ、対象体のアライメントマークに必要な領域を縮小することができ、しかも対象体のアライメントマークの再利用が可能となる露光マスクの位置合わせ方法が提供される。また、本発明によれば、高密度に集積化されたデバイスを形成することのできる薄膜素子基板の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は下記実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係る露光マスクの位置合わせ方法を実施するためのホログラフィック露光装置の全体構成を示す図である。
【0024】
図1に示すように、この露光装置は、主にプリズム201、ステージ220を備えるステージ装置222、第1情報処理装置230、距離測定光学系240、膜厚測定光学系250、光源260、第2情報処理装置270、露光光源280、露光光源駆動装置282、およびアライメント系290により構成される。
【0025】
ステージ装置222は、感光性材料膜212が形成された露光対象体としての被露光基板210を真空チャック等でステージ220上に保持して、上下方向(Z方向)及び水平方向(XY平面)へのステージ220の位置調整が可能に構成されている。
【0026】
光源260は、距離測定光学系240および膜厚測定光学系250の測定用光ビームを射出可能に構成されている。距離測定光学系240は、ビームスプリッタ、シリンドリカルレンズ、光センサ、誤差信号検出器等を備え、ホログラム記録面202と被露光基板上に塗布された感光性材料膜表面214との距離を調整して露光時のフォーカスを制御することが可能に構成されている。
【0027】
第1情報処理装置230は、距離測定光学系240により計測されたホログラム記録面と被露光基板上に形成された感光性材料膜表面との距離に基づいてフォーカスが適正となるようにステージ220の位置を設定するように構成されている。膜厚測定光学系250は、ビームスプリッタ、フォトデテクタ、増幅器、A/D変換器等を備え、被露光基板210上に形成された感光性材料膜212の膜厚を測定するための構成を備えている。
【0028】
第2情報処理装置270は、露光光源280から照射される露光ビームが適正な露光領域内を走査するように露光光源280を移動させるとともに、膜厚測定光学系250により出力された感光性材料膜212の膜厚の相対値に基づいて露光の光量を制御するように構成されている。
【0029】
露光光源280は、ホログラムマスク200のホログラム記録面202に露光ビームを照射可能に構成されている。露光光源駆動装置282は、この露光光源280を移動して被露光基板210上の所望の露光領域を走査して露光するように構成されている。また当該露光装置は、被露光基板210に対向する面に、所定のレチクルパターンに対応した干渉パターンが記録されているホログラムマスク200を装着したプリズム201を備えている。
【0030】
また、アライメント系290は、アライメントマークを観察するための観察手段と、観察手段から得られた情報に基づきホログラムマスク200のアライメントマークと被露光基板210のアライメントマークとの位置ずれを検出する位置ずれ検出手段とを備えている。
【0031】
本実施形態では、観察手段としての顕微鏡292は、ホログラムマスク200を介して、被露光基板210上に形成されたアライメントマークを観察するためのものである。顕微鏡292は、観察されたアライメントマークの画像を取り込むための例えばCCDカメラ等の画像取込み装置を備えている。顕微鏡292により観察され、画像取り込み装置により取り込まれたホログラムマスク200のアライメントマークと被露光基板210のアライメントマークの画像は、画像信号に変換され、位置ずれ検出手段としての位置ずれ検出装置294に送られる。
【0032】
位置ずれ検出装置294は、画像信号からホログラムマスク200側のアライメントマークと被露光基板210側のアライメントマークの特徴点を抽出し、特徴点間の距離を算出するものである。例えば、被露光基板210上に十字状のアライメントマークが形成され、ホログラムマスク200側にX字状のアライメントマークが形成されている場合において、特徴点として、例えば十字の交点及びX字の交点を各々抽出し、当該交点間の距離を算出する。この算出された距離情報を第1情報処理装置230に送信する。
【0033】
第1情報処理装置230は、また、このアライメント間の距離(アライメントずれ量)が減少するように、ステージ装置222をXY方向に移動させ被露光基板210の位置を設定するようにも構成されている。これにより、ホログラムマスク200と被露光基板210との位置合わせが可能となる。
【0034】
そして、ホログラムマスク200と被露光基板210との位置合わせは、該被露光基板210上の下層露光パターンが、図2に示すパターンとなるようにして行う。ここで、図2は、被露光基板210上におけるデバイス等形成のための二つの層(下層及び上層)のパターニングを複数のホログラムマスク200を用いて行う場合の下層露光パターンを示す平面図である。
【0035】
図2に示すように、本実施形態においては、先ず、被露光基板210上における所定の箇所に下層用のホログラムマスク200を介して露光することにより、パターン化された矩形状の一の下層領域D11とともに、該下層領域D11の対角線の延長線上に所定の間隔をあけて上層用のホログラムマスク200との位置合わせ用の4つの十字状のアライメントマークA111,A112,A113,A114を設ける。次に、前記下層領域D11に隣接する、パターン化された矩形状の別の下層領域D12とともに、該下層領域D12の対角線の延長線上に所定の間隔をあけて上層用のホログラムマスク200との位置合わせ用の4つの十字状のアライメントマークA121,A122,A123,A124を、下層用のホログラムマスク200を介して露光により設ける。続いて、前記下層領域D12に隣接するパターン化された矩形状の別の下層領域D13とともに、該下層領域D13の対角線の延長線上に所定の間隔をあけて上層用のホログラムマスク200との位置合わせ用の4つの十字状のアライメントマークA131,A132,A133,A134を、下層用のホログラムマスク200を介して露光により設ける。
【0036】
ここで用いられる下層用のホログラムマスク200としては、例えば、図3(a)に示すように、所定の遮光領域Sを備えたマスクパターンのホログラムマスク200Lを使用することができる。このホログラムマスク200Lは、被露光基板210に所定のアライメントマークを形成するためのアライメントマークA1,A2,A3,A4を備えるとともに、一の下層領域を露光する際に、少なくとも他の下層領域に対して遮光可能な形状からなっている。具体的には、ホログラムマスク200Lは、例えば、下層領域D11を露光する場合には、該下層領域D11を露光するが、それに隣接する下層領域D12を遮光領域Sによって遮光する形状となっている。また、ホログラムマスク200Lは、例えば、下層領域D12を露光する場合には、該下層領域D12を露光するが、それに隣接する下層領域D11及び下層領域D13の両方を遮光領域Sによって遮光する形状となっている。
【0037】
さらに、前記と同様にして、被露光基板210上におけるパターン化された矩形状の下層領域D14と上層用のホログラムマスク200との位置合わせ用のアライメントマークA141,A142,A143,A144、下層領域D15とアライメントマークA151,A152,A153,A154、及び下層領域D16とアライメントマークA161,A162,A163,A164を順次設ける。このようにして、図2に示す下層露光パターンを有する被露光基板210が得られる。
【0038】
次に、かかる被露光基板210に対して、上層のパターニングを行うために、上層用のホログラムマスク200を用いて位置合わせを行う。ここで用いられる上層用のホログラムマスク200としては、例えば、図3(b)に示すように、所定の遮光領域Sを備えたマスクパターンのホログラムマスク200Uを使用することができる。このホログラムマスク200Uは、下層用のホログラムマスク200Lと略同様の形状で、被露光基板210上の所定の十字状のアライメントマークを用いて該被露光基板210と位置合わせをするためのX字状のアライメントマークA5,A6,A7,A8を備えるとともに、一の上層領域を露光する際に、少なくとも他の上層領域に対して遮光可能な形状からなっている。具体的には、図4に示すように、ホログラムマスク200Uは、例えば、上層領域D22を露光する場合には、該上層領域D22を露光するが、それに隣接する上層領域D21及び上層領域D23の両方を遮光領域Sによって遮光する形状となっている。ここで、図4は、図2に示す被露光基板210の下層露光パターン上に、上層用のホログラムマスク200Uを介して上層を露光する際の露光パターンを示す平面図である。
【0039】
このように、本実施形態においては、被露光基板210上におけるパターン露光をされた一の下層領域(例えば、D11)と、該一の下層領域に対応する上層領域(例えば、D21)の露光に用いる一の上層用ホログラムマスク200Uとの位置合わせ用のアライメントマーク(例えば、A112)とを結ぶ直線が、被露光基板210上における前記一の下層領域(D11)に隣接するパターン露光をするための他の下層領域(例えば、D12)と、該他の下層領域に対応する上層領域(例えば、D22)の露光に用いる上層用のホログラムマスク200Uとの位置合わせ用のアライメントマーク(例えば、A121)とを結ぶ直線に対して、交差するように各アライメントマーク(A112及びA121)を設けて位置合わせを行う。これにより、同一のホログラムマスク200におけるアライメントマーク間の最小許容間隔を保ちつつ、対象体である被露光基板210のアライメントマークに必要な領域を縮小することができる。本発明においては、少なくとも一のアライメントマークがかかる関係にあればよく、該関係にある複数のアライメントマークを設けることも可能である。
【0040】
本実施形態による方法を採用した場合には、パターニングの際のアライメントマーク部は、例えば、図5に示すように変化する。ここで、図5(a)は露光時、図5(b)は現像後、図5(c)はエッチング後それぞれの被露光基板におけるアライメントマーク部を示す断面図である。図5(a)に示すように、露光時には、下層の被露光基板501に設けられたアライメントマークA上に、薄膜層(SiO2等)502、パターニング層503、及びフォトレジスト504が順次積層された積層体の表面に位置するフォトレジスト504に対して露光ビームにより露光される。これにより、現像後には、図5(b)に示すように、フォトレジスト504が除去され、下層のアライメントAに相当する十字状の模様が表面に現れたパターニング層503を有する積層体となる。このときの現像後のパターンは、図6に示すようになる。さらに、エッチング後には、図5(c)に示すように、パターニング層503が除去され、下層のアライメントAに相当する十字状の模様が表面に現れた絶縁層502を有する積層体となる。このように、当該アライメントマーク部(下層のアライメントAに相当する十字状の模様)は、そのマーク部領域上に、上層用ホログラムマスクのX字状のアライメントマークがパターングされないため、以後の合わせ露光におけるアライメントマークとしても使用可能である。
【0041】
次に、図7乃至図10を参照しながら本実施形態の薄膜素子基板の製造方法について説明する。
【0042】
まず、第1のパターニング(最初のパターニング)を行う。
図7(A)に示すように、プリズム201に貼り合わせられたホログラムマスク200aのホログラム記録面202に、例えばCr製の第1の原版マスク300(元レチクルともいう)を用いて第1のレチクルパターンに対応する干渉縞を記録する。第1のレチクルパターンには、少なくとも目的とする薄膜素子基板における薄膜素子を含む薄膜回路に対応するパターンが含まれる。
【0043】
具体的には、記録ビームL1(物体光)を第1の原版マスク300に照射して第1の原版マスク300を経た回折光をホログラムマスク200aのホログラム記録面202に射出する。この第1の原版マスク300を介した記録ビームL1と、ホログラム記録面202の他方面側からプリズム201を透過させて照射した参照光L2とを干渉させる。これにより、ホログラム記録面202に所望のパターンの干渉縞が記録される。
【0044】
図7(B)は、第1の干渉縞パターン310が形成されたホログラムマスク200aの一例を示す図である。図7(B)に示すように、第1の干渉縞パターン310には、薄膜回路を構成する第1の回路パターンに対応する干渉縞パターン312及びアライメントマークとなる干渉縞パターンP11、P21、P31、P41が含まれる。また、ホログラムマスク200aには、所定の遮光領域Sが設けられる。
【0045】
次に、図8に示すように、原版マスク300が配置されていた位置に、原版マスク300の代わりに第1の感光性材料膜212aが形成された被露光基板210を配置する。その後、再生光である露光ビームL3を、図7(A)における参照光L2の入射側と反対の方向(参照光L2の出射側)から、プリズム201を介してホログラム記録面202に照射し、被露光基板210上に形成された第1の感光性材料膜212aを露光する。なお、この際、露光ビームL3の入射側にプリズム201の斜面が向くようにプリズム201の方向を変えてホログラムマスク200aをプリズム201に付け替える。これにより、ホログラム記録面202に記録された第1の干渉縞パターン310に対応するパターンが被露光基板210上に形成される。
【0046】
第1の干渉縞パターン310により形成されるパターンの一例は、図2に示したパターンと同様のものである。即ち、図2に示すように、ホログラムマスク200aの干渉縞パターンP11、P21、P31、P41に対応するアライメントマークA111,A112,・・・及び干渉縞パターン312に対応する第1の回路パターンが領域D11,D12,・・・に形成される。その後、必要な現像やエッチング処理がなされて第1のパターニングが終了する。
【0047】
次に、第2のパターニングを行う。
図9(A)に示すように、プリズム201に貼り合わせられたホログラムマスク200bのホログラム記録面202に、例えばCr製の第2の原版マスク302を用いて第2のレチクルパターンに対応する干渉縞を記録する。第2のレチクルパターンには、少なくとも薄膜素子基板における薄膜素子を含む薄膜回路に対応するパターンが含まれる。干渉縞を記録する工程は、図7(A)の工程と同様の方法により行われる。また、この干渉縞を記録する工程とは別に、物体光L1のみを照射することにより、ホログラムマスク200bのホログラム記録面202に、アライメントマークP12、P22、P32、P42を形成する。
【0048】
図9(B)は、第2の干渉縞パターン及び第2のアライメントマークが形成されたホログラムマスク200bの一例を示す図である。図9(B)に示すように、第2の干渉縞パターンには、薄膜回路を構成する第2の回路パターンに対応する干渉縞パターン320が含まれる。また、ホログラムマスク200bの四隅には、このホログラムマスク200bと被露光基板210との位置合わせを行うためのアライメントマークP12、P22、P32、P42が形成される。また、ホログラムマスク200bには、所定の遮光領域Sが設けられる。
【0049】
次に、図10に示すように、原版マスク302が配置されていた位置に、原版マスク302の代わりに第1の回路パターン上に第2の感光性材料膜212bを形成した被露光基板210を配置する。その後、露光ビームL3を、図9(A)における参照光L2と反対の方向(参照光L3の出射側)から、プリズム201を介してホログラム記録面202に照射し、第2の感光性材料膜212bを露光する。なお、この際も同様に、露光ビームL3の入射側にプリズム201の斜面が向くようにプリズム201の方向を変えてホログラムマスク200bをプリズム201に付け替える。
【0050】
本工程についてより具体的に説明する。
まず、第2の感光性材料膜212bが形成された被露光基板210とホログラムマスク200bとの位置合わせを、被露光基板210上に形成されたアライメントマークA111,112,113,114,・・・(図2)とホログラムマスク200bに形成されたアライメントマークP12、P22、P32、P42(図9(B))とを重ね合わせることにより行う。具体的には、図1に示したように、ホログラムマスク200bと被露光基板210を所定位置に設置した後、各アライメントマークが観察される位置に設置された顕微鏡292によりプリズム201の垂直面を介してホログラムマスク200bと被露光基板210のアライメントマークの重なり画像を取り込む。顕微鏡292において取り込んだ画像を画像信号として、位置ずれ検出装置294に送信し、アライメントマークの重なり画像から特徴点を抽出する。例えば、アライメントマークA111の十字の交点とアライメントマークP12のX字の交点の位置を抽出し、この交点間の距離を算出する。この距離情報を第1情報処理装置230に送り、この距離が減少するように、ステージ装置222を駆動してホログラムマスク200bと被露光基板210との位置合わせを行う。この際、前述した位置合わせ方法(図2、図4参照)を採用して、位置合わせを行う。
【0051】
その後、露光ビームL3をホログラム記録面202に照射する。感光性材料膜212bには、ホログラムマスク200bのアライメントマークP12、P22、P32、P42に対応するアライメントマークが、ホログラム記録面202上に記録された干渉縞パターン320に対応する第2の回路パターンと併せて形成されることになる。このときのアライメントマーク及び第2の回路パターンの一例は、図4に示したパターンと同様のものである。その後、必要な現像やエッチング処理がなされて第2のパターニングが終了する。
【0052】
なお、ホログラムマスク200bのX字状のアライメントマーク部分に前述したシャッター手段等を用いてパターン露光する場合には、合わせ露光時に被露光基板210上の十字状(下層)のアライメントマーク領域上に、第2の回路パターン(上層)用ホログラムマスク200bのX字状のアライメントマークがパターングされなくなり、以後の露光においてもアライメントが可能となる。この手段を用いて、図9及び図10に記載の工程を繰り返せば、更に、第3のパターニング、第4のパターニング、・・・、を行うこともできる。
【0053】
本発明に係る薄膜素子基板の製造方法は、例えば、EL表示装置や液晶表示装置などの電気光学装置における各画素を構成する画素回路や、当該画素回路を制御するドライバ(集積回路)の形成等に適用することができる。また、このような電気光学装置の製造以外にも、種々のデバイス製造に適用することが可能である。例えば、FeRAM(ferroelectric RAM)、SRAM、DRAM、NOR型RAM、NAND型RAM、浮遊ゲート型不揮発メモリ、マグネティックRAM(MRAM)など各種のメモリ製造が可能である。また、この他、薄膜トランジスタ(TFT)を使用して集積化したセンサ、CPUを搭載したバンクカード等にも利用可能である。さらに、マイクロ波を用いた非接触型の通信システムにおいて、微小な回路チップ(ICチップ)を搭載した安価なタグを製造する場合にも適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、同一の露光マスクにおけるアライメントマーク間の最小許容間隔を保ちつつ、対象体のアライメントマークに必要な領域を縮小することができ、しかも対象体のアライメントマークの再利用が可能となる露光マスクの位置合わせ方法、及び高密度に集積化されたデバイスを形成することのできる薄膜素子基板の製造方法として、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本実施形態に係る露光マスクの位置合わせ方法を実施するためのホログラフィック露光装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る露光マスクの位置合わせ方法を説明するための図(対象体上の下層露光パターンを示す平面図)である。
【図3】図3(a)は、下層用ホログラムマスクの一例を示す平面図であり、図3(b)は、上層用ホログラムマスクの一例を示す平面図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る露光マスクの位置合わせ方法を説明するための図(上層を露光する際の露光パターンを示す平面図)である。
【図5】図5(a)は露光時、図5(b)は現像後、図5(c)はエッチング後それぞれの被露光基板におけるアライメントマーク部を示す断面図である。
【図6】図6は、図5(b)相当の現像後の被露光基板を示す平面図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る薄膜素子基板の製造方法を説明するための図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る薄膜素子基板の製造方法を説明するための図である。
【図9】図9は、本実施形態に係る薄膜素子基板の製造方法を説明するための図である。
【図10】図10は、本実施形態に係る薄膜素子基板の製造方法を説明するための図である。
【図11】図11(a)及び(b)は、ホログラム用マスクを作成するためのオリジナルCr製マスク(元レチクル)を示す概略平面図である。
【図12】図12(a)及び(b)は、ホログラム用マスク(2層目マスク)におけるデバイス領域記録時とアライメントマーク記録時それぞれの工程を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0056】
200,200a,200b・・・ホログラムマスク、201・・・プリズム、202・・・ホログラム記録面、210・・・被露光基板、212・・・感光性材料膜、212a・・・第1の感光性材料膜、212b・・・第2の感光性材料膜、214・・・感光性材料膜表面、220・・・ステージ、222・・・ステージ装置、230・・・第1情報処理装置、240・・・距離測定光学系、250・・・膜厚測定光学系、260・・・光源、270・・・第2情報処理装置、280・・・露光光源、282・・・露光光源駆動装置、A111〜A114,A121〜A124,A131〜A134,A141〜A144・・・アライメントマーク、D11〜D16・・・下層領域、D21〜D23・・・上層領域、200L・・・下層用ホログラムマスク、200U・・・上層用ホログラムマスク、S・・・遮光領域、501・・・被露光基板、502・・・薄膜層(SiO2等)、503・・・パターニング層、504・・・フォトレジスト、A・・・アライメントマーク、300・・・第1の原版マスク、302・・・第2の原版マスク、310・・・第1の干渉縞パターン、312・・・干渉縞パターン、316・・・第1の回路パターン、320・・・第2の干渉縞パターン、322・・・干渉縞パターン、A1〜A8・・・アライメントマーク、B1〜B4・・・領域、HM・・・ホログラムマスク、L・・・露光光源、L1・・・記録ビーム、L2・・・参照光、L3・・・露光ビーム、P・・・プリズム、P11,P21,P31,P41・・・干渉縞パターン、P12,P22,P32,P42・・・アライメントマーク、P1〜P4・・・アライメントマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いて、アライメントマークが形成された露光対象となる対象体にパターン露光を行うに際し、両者のアライメントマークを用いて前記ホログラムマスクと前記対象体との位置合わせを複数回行う露光マスクの位置合わせ方法であって、
前記対象体上におけるパターン露光をするための一の領域と、該一の領域の露光に用いるホログラムマスクとの位置合わせ用のアライメントマークとを結ぶ直線が、前記対象体上における前記一の領域に隣接するパターン露光をするための他の領域と、該他の領域の露光に用いるホログラムマスクとの位置合わせ用のアライメントマークとを結ぶ直線に対して、交差するように前記各アライメントマークを設けて位置合わせを行うことを特徴とする露光マスクの位置合わせ方法。
【請求項2】
前記一の領域の露光に用いるホログラムマスクが、少なくとも前記他の領域に対して遮光可能な形状からなる、請求項1記載の露光マスクの位置合わせ方法。
【請求項3】
アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いてパターン露光を行うホログラム露光を利用した薄膜素子基板の製造方法であって、
請求項1又は2記載の露光マスクの位置合わせ方法を用いて位置合わせを行う第1工程と、
前記ホログラムマスク上から露光ビームを照射することにより、前記対象体を露光してパターニングを行う第2工程と、を含むことを特徴とする薄膜素子基板の製造方法。
【請求項4】
アライメントマークが形成された複数のホログラムマスクを用いてパターン露光を行うホログラム露光を利用した薄膜素子基板の製造方法であって、
前記ホログラムマスクにアライメントマークを含む所望のパターンを記録する第1工程と、
請求項1又は2記載の露光マスクの位置合わせ方法を用いて位置合わせを行う第2工程と、
前記ホログラムマスク上から露光ビームを照射することにより、前記対象体を露光してパターニングを行う第3工程と、を含むことを特徴とする薄膜素子基板の製造方法。
【請求項5】
前記対象体のアライメントマークが、該対象体上に最初のパターンを露光する際に形成される、請求項3又は請求項4に記載の薄膜素子基板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−93607(P2006−93607A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280045(P2004−280045)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】