説明

露光装置用ランプ

【課題】ランプを簡単に取り外して、ランプの部品をリサイクルすることができ、生産コストを低減することができる露光装置用ランプを提供する。
【解決手段】小型水銀ランプ10は、バルブ20と、該バルブ20から発生した光を前方へ反射させる集光鏡21と、バルブ20の端部を保持するホルダー22と、を備える。バルブ20と集光鏡21のランプ取付孔48との間には、断熱材50が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置用ランプに関し、より詳細には、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の大型のフラットパネルディスプレイの基板を製造する露光装置に適用可能な露光装置用ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
基板の製造工程で使用される露光装置には、光源が設けられており、感光剤が塗布された基板の表面に、光源から発せられた光を照射して、感光剤に照射光のエネルギーを与えることで、該表面を露光している。この感光剤に与える照射光のエネルギーは、単位面積当たりに対して変わらないようにする必要がある。
【0003】
近年、フラットパネルディスプレイ装置の基板は、生産性を高めるために大型化しており、露光装置でも、この基板の大型化に伴って露光領域が広がることから、光源の出力を高める必要がある。光源の出力を高める方法としては、ランプ単体の出力を高める方法と、複数のランプを用いる方法とがある。
【0004】
複数のランプを用いた光照射装置としては、ランプを冷却する冷却ファンが取り付けられた各光源ユニットを支持体に対して個別に固定し、光源ユニットの光が照射される方向と反対側から光源ユニットを装着もしくは離脱するようにしてランプを露光処理時に交換するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、放電灯の構造としては、種々のものが考案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献1に記載の放電灯では、バルブと口金との間に接着剤を充填し、バルブと口金とをねじ止めしている。特許文献2に記載の放電ランプでは、ランプとホルダーとの間に固形緩衝材としてのシリコーンゴムを埋め、ランプの位置決めを精度良く行っている。特許文献3に記載の放電灯では、バルブと口金との間に導電性ゴムソケットを設け、バルブと口金との電気的接続と、バルブの簡便な交換とを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−278907号公報
【特許文献2】実開平03−121654号公報
【特許文献3】特開2002−279889号公報
【特許文献4】実開平07−11747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ランプは、集光鏡やバルブを含む複数の部品から構成されており、バルブの寿命切れやバルブの破損といった故障の場合には、バルブを取り外して、集光鏡のみを交換し、その他の部品を再利用することが好ましい。特許文献1では、複数のランプを使用して、不具合の発生したランプを露光動作中に交換することが記載されているが、ランプのリサイクルについては考慮されていない。また、特許文献1に記載のランプでは、バルブで発生した熱が集光鏡に伝導して集光鏡が熱くなってしまうので、ランプから集光鏡をすぐに取り外すことができず、ランプのリサイクルができないという問題がある。
【0008】
また、特許文献2〜4の記載の放電灯においてもリサイクルについて考慮されておらず、また、ランプを再利用できるような構成ではなかった。
【0009】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ランプを簡単に取り外して、ランプの部品をリサイクルすることができ、生産コストを低減することができる露光装置用ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)バルブと、該バルブから発生した光を前方へ反射させる集光鏡と、バルブの端部を保持するホルダーと、を備える露光装置用ランプであって、
前記バルブと前記集光鏡の取付孔との間には、断熱材が配置されることを特徴とする露光装置用ランプ。
(2)前記断熱材は、筒状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の露光装置用ランプ。
(3)前記断熱材は、螺旋状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の露光装置用ランプ。
(4)前記断熱材は、樹脂またはゴムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の露光装置用ランプ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の露光装置用ランプによれば、バルブと集光鏡の取付孔との間には、断熱材が配置されるので、ランプを簡単に取り外して、ランプの部品をリサイクルすることができ、生産コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る露光装置用ランプが適用される露光装置の概略構成を説明するための図である。
【図2】図1に示す露光装置用ランプの斜視図である。
【図3】図1の露光装置用ランプの断面図である。
【図4】本発明の変形例に係る露光装置用ランプの断面図である。
【図5】本発明の他の変形例に係る露光装置用ランプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る露光装置用ランプについて、図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本発明の露光装置用ランプが適用される露光装置1は、基板Wを保持する基板保持部2と、マスクMを保持するマスク保持部(図示せず)と、光照射装置3と、光照射装置3から照射される光を平行光として基板Wに導く光学系4と、光照射装置3からの光を通過・遮断するように開閉制御する機械式のシャッター5と、を主に備えている。
【0015】
光学系4は、光照射装置3からの光の強度を均一化するインテグレータ6と、インテグレータ6の出射面から出射された光路の向きを変える平面鏡7と、コリメーションミラー8と、を備える。インテグレータ6としては、フライアイレンズでも、ロッドインテグレータレンズでもよい。
【0016】
光照射装置3は、複数の小型水銀ランプ(露光装置用ランプ)10と、所定数のランプ10をそれぞれ取り付け可能な複数のカセット11と、複数のカセット11を取り付け可能な支持体12と、を備える。複数のカセット11及び支持体12は、各小型水銀ランプ10から照射された光がインテグレータ6に集光するように中心方向に向かって傾斜するように配置されている。
【0017】
図2及び図3に示すように、小型水銀ランプ10は、バルブ20と、バルブ20から発生した光を前方へ反射させる集光鏡21と、バルブ20の端部を保持するホルダー22と、を備える。
【0018】
バルブ20は、直流(或いは交流)点灯式のショートアークバルブであり、球状の発光部32と、その両端からストレートに延びた棒状の封止部34とを有する封体容器36、電極棒38、電極棒38に溶接されたリード棒40、及び発光部32内に封止された封止ガスや発光金属その他必要封止物を備えている。各電極棒38の一端には、発光部32内で一対の電極44を構成する陽極44aおよび陰極44bが接続されている。
【0019】
集光鏡21は、碗状に形成されており、内面には凹状の反射面46が、中央部には、ランプ取付孔48が形成されている。反射面46には、赤外線と可視光を透過可能な紫外光反射膜51が形成されており、これにより、バルブ20から発せられる紫外光を前方へ効率良く反射させ、赤外線と可視光を後方に透過させる。
【0020】
ホルダー22は、バルブ20における封止部34の挿入先端部を保持するとともに、図示しない電力供給線を保持するものであり、セラミック等の耐熱性材料によって一体成形され、集光鏡21の中央取付筒部49に接着剤にて接着されている。
【0021】
また、バルブ20の封体容器36の外周面とランプ取付孔48との間の対向面間には、バルブ20から集光鏡21への熱の伝達を抑制するため、樹脂またはゴムの断熱材50が埋め込まれている。断熱材50は、台形筒状または円筒状に形成されている。また、断熱材50は、軸方向に亘って断面積が変化するように台形筒状または円筒状に形成されることが好ましく、集光鏡21の開口側からホルダー22側に向かって、断熱材50の外径が徐々に小さくなるように配置することで、バルブ20を断熱材50と共に集光鏡21から容易に取り外すことができる。
【0022】
なお、断熱材50は、バルブ20の外周面に嵌めこまれており、バルブ20と共に取り外されているが、断熱材50は、ランプ取付孔48の内周面に嵌めこまれて、バルブ20が集光鏡21に嵌めこまれた断熱材50から取り外されてもよい。
【0023】
断熱材50を構成する樹脂材料としては、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバ、ウレタン系、フェノール系、ポリスチレン系、ポリスチレン系などがある。また、断熱材50を構成するゴム材料としては、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴムなどがある。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の小型水銀ランプ10によれば、バルブ20の封体容器36と集光鏡21のランプ取付孔48との対向面間には、断熱材50が配置されるので、集光鏡21がバルブ20からの熱によって熱くなることが抑えられて、露光中や露光直後であっても、ランプ10をすぐに取り外して集光鏡21を簡単に交換することができる。従って、小型水銀ランプ10をリサイクルすることができ、生産コストを低減することができる。
【0025】
図4は、本発明の変形例に係る小型水銀ランプ(露光装置用ランプ)の断面図である。この小型水銀ランプ10aでは、バルブ20の封体容器36とランプ取付孔48との対向面間には、樹脂またはゴムからなる複数の断熱材50aが軸方向に並んで埋め込まれている。これらの断熱材50aも台形筒状または円筒状に形成されている。また、封体容器36は、集光鏡21の開口側からホルダー22側に向かって、外径が徐々に小さくなるように形成されることが好ましい。これにより、封体容器36の周囲に取り付けられた複数の断熱材50aも集光鏡21の開口側からホルダー22側に向かって、外径が徐々に小さくなり、バルブ20を断熱材50aとともに集光鏡21から容易に取り外すことができる。なお、封体容器36の外径を変更する代わりに、複数の断熱材50aの外径が異なるものを用いて、集光鏡21の開口側から外径が大きな断熱材50aを順に配置するようにしてもよい。
なお、バルブ20の封体容器36とランプ取付孔48の対向面の少なくとも一方には、複数の断熱材50aがそれぞれ嵌め込まれる溝(図示せず)が形成されてもよい。
【0026】
図5は、本発明の他の変形例に係る小型水銀ランプ(露光装置用ランプ)の断面図である。この小型水銀ランプ10bでは、樹脂またはゴムからなる長尺の断熱材50bが軸方向に亘って螺旋状に巻きつけられることで、この螺旋状の断熱材50bがバルブ20の封体容器36の外周面とランプ取付孔48との間に埋め込まれている。封体容器36の外形は、台形または円形であり、集光鏡21の開口側からホルダー22側に向かって、外径が徐々に小さくなるように形成されることが好ましい。これにより、封体容器36の周囲に巻き付けられた螺旋状の断熱材50bも集光鏡21の開口側からホルダー22側に向かって、外径が徐々に小さくなり、バルブ20を断熱材50bとともに集光鏡21から容易に取り外すことができる。
なお、この場合も、バルブ20の封体容器36とランプ取付孔48の対向面の少なくとも一方には、螺旋状の断熱材50bが嵌め込まれる溝(図示せず)が形成されてもよい。
【0027】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0028】
本実施形態では、複数の小型水銀ランプ10をカセット11と支持体12とを有する光照射装置3に適用したが、これに限定されず、任意の構成の光照射装置3に適用可能である。
また、露光装置としては、分割逐次近接露光装置、走査式近接露光装置、ミラープロジェクション式露光装置、レンズ投影式露光装置、密着式露光装置のいずれにも適用することができる。さらに、本発明は、一括式、逐次式、走査式等のいずれの露光方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 露光装置
3 光照射装置
10,10a,10b 小型水銀ランプ(露光装置用ランプ)
20 バルブ
21 集光鏡
22 ホルダー
48 ランプ取付孔
50,50a,50b 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブと、該バルブから発生した光を前方へ反射させる集光鏡と、バルブの端部を保持するホルダーと、を備える露光装置用ランプであって、
前記バルブと前記集光鏡の取付孔との間には、断熱材が配置されることを特徴とする露光装置用ランプ。
【請求項2】
前記断熱材は、筒状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の露光装置用ランプ。
【請求項3】
前記断熱材は、螺旋状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の露光装置用ランプ。
【請求項4】
前記断熱材は、樹脂またはゴムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の露光装置用ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−177795(P2012−177795A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40655(P2011−40655)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(311011449)NSKテクノロジー株式会社 (51)
【Fターム(参考)】