説明

露光量決定方法、半導体装置の製造方法、露光量決定プログラムおよび露光量決定装置

【課題】所望の2次元形状パラメータを有したパターンを基板上に形成可能な露光量を正確に決定することができる露光量決定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】マスク上に形成されるマスクパターンと所望のマスクパターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量分布を、マスクパターンマップm1として取得するマスクパターンマップ取得ステップと、マスクをショット露光してウェハ上にパターンを形成した場合に形成されるウェハ上パターンと所望のウェハ上パターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量が所定の範囲内に収まるよう、マスクパターンマップm1に基づいて、露光ショット内での位置毎に露光量を決定する露光量決定ステップと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光量決定方法、半導体装置の製造方法、露光量決定プログラムおよび露光量決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体製造技術の進歩は非常に目覚しく、最小加工寸法50nmサイズの半導体集積回路装置(半導体装置)が量産されている。このような半導体装置の微細化は、フォトマスクなどを用いたリソグラフィ技術の躍進により実現されている。例えば、リソグラフィ工程では、フォトマスクのパターン寸法がばらつくと、基板上に形成するレジストパターンの寸法精度を悪化させてしまうので、基板上に形成するパターンの寸法が、露光ショット内で不均一になる。このため、フォトマスクのパターン寸法のばらつき量(誤差)を十分に抑制しておく必要がある。ところが、フォトマスクのマスク寸法誤差は、フォトマスクの製造上、どうしても発生してしまうものである。
【0003】
基板上に形成するパターンの寸法を露光ショット内で均一に仕上げる技術の1つとして、露光ショット内でのパターン寸法が均一になるよう露光ショット内での露光量マップ(ドーズ量の分布)を予め規定し、露光量マップに従って露光を行う技術がある。例えば、特許文献1に記載の露光方法では、レチクル上のラインパターンの線幅のばらつきをSEM(走査型電子顕微鏡)で測定している。そして、測定結果のショット内分布に基づいて、ショット内に露光量分布を与え、これにより基板上に形成するレジストパターンの線幅寸法が均一となるようにしている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、コンタクトホールに対し、ラインパターンの線幅と同じ方向である1方向の線幅に応じた露光量分布しかショット内に与えることができなかった。このため、ショット内の各ホールパターンの2次元的な形状がばらつくという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−257819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、所望の2次元形状パラメータを有したパターンを基板上に形成可能な露光量を正確に決定することができる露光量決定方法、半導体装置の製造方法、露光量決定プログラムおよび露光量決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様によれば、マスク上に形成されるマスクパターンと所望のマスクパターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量分布を、マスクパターンマップとして取得するマスクパターンマップ取得ステップと、前記マスクを露光ショットして基板上にパターンを形成した場合に形成される基板上パターンと所望の基板上パターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量が所定の範囲内に収まるよう、前記マスクパターンマップに基づいて、前記露光ショット内での位置毎に露光量を決定する露光量決定ステップと、を含むことを特徴とする露光量決定方法が提供される。
【0008】
また、本願発明の一態様によれば、マスクパターンを有するマスクを所定の露光量で露光ショットして基板上にパターンを形成した場合に形成される基板上パターンと所望の基板上パターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量分布を、基板上パターンマップとして取得する基板上パターンマップ取得ステップと、前記基板上パターンと所望の基板上パターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量が所定の範囲内に収まるよう、前記基板上パターンマップを用いて、前記基板上パターンを形成する際の前記ショット内での位置毎に露光量を補正する補正ステップと、を含むことを特徴とする露光量決定方法が提供される。
【0009】
また、本願発明の一態様によれば、マスク上に形成されるマスクパターンと所望のマスクパターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量分布に基づいて、前記マスクを露光ショットして基板上にパターン形成した場合に形成される基板上パターンと所望の基板上パターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量が所定の範囲内に収まるよう、前記ショット内での位置毎に露光量を決定する露光量決定ステップを、コンピュータに実行させることを特徴とする露光量決定プログラムが提供される。
【0010】
また、本願発明の一態様によれば、マスク上に形成されるマスクパターンと所望のマスクパターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量分布に基づいて、前記マスクを露光ショットして基板上にパターン形成した場合に形成される基板上パターンと所望の基板上パターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量が所定の範囲内に収まるよう、前記ショット内での位置毎に露光量を決定する露光量決定装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所望の2次元形状パラメータを有したパターンを基板上に形成可能な露光量を正確に決定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態に係る露光量決定方法の概念を説明するための図である。
【図2】図2は、実施の形態に係る露光量マップ作成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、第1の実施の形態に係る露光処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、ウェハ上パターンマップと露光量マップとの関係を説明するための図である。
【図5】図5は、マスクパターン形状の誤差と最適露光量補正量との相関関係を説明するための図である。
【図6】図6は、一方向のみの寸法に基づいてターゲットを補正した場合の問題点を説明するための図である。
【図7】図7は、マスクパターン形状に応じた露光量補正量の設定処理を説明するための図である。
【図8】図8は、第2の実施の形態に係る露光処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、露光量マップ作成装置のハードウェア構成を示す図である。
【図10】図10は、露光装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る露光量決定方法、半導体装置の製造方法、露光量決定プログラムおよび露光量決定装置を詳細に説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施の形態)
本実施の形態では、マスク(フォトマスク)のマスクパターンの平面形状(寸法、大きさ、面積など)を実験または計算よって取得し、取得結果に基づいてウェハなどの基板上に形成されるパターンのパターン形状を予測する。そして、ウェハ上に形成されるであろうと予測されたパターンのパターン形状と、目標形状との間のずれ量を補正するための露光量マップ(露光量を補正するためのショット内の露光量補正量分布)を作成する。この後、作成した露光量マップを用いてウェハへの露光を行なうことにより、ウェハ上に所望のパターン形状(2次元形状パラメータ)を有したパターンを形成する。
【0015】
例えば、コンタクトホールパターンをウェハ上に形成する際に、露光処理によってウェハ上に転写されるコンタクトホールの面積が所望の面積となるよう、ショット内やショット間で露光装置の露光量を変える。なお、以下では、コンタクトホールパターンをウェハ上に形成する場合について説明するが、ウェハ上に形成するパターンは、ラインパターンなどのコンタクトホールパターン以外のパターンであってもよい。
【0016】
図1は、実施の形態に係る露光量決定方法(露光量補正方法)の概念を説明するための図である。まず、ウェハ上に形成するパターン(エッチング後パターン)の設計データD1を、設計データ作成装置などのコンピュータによって作成する(S1)。
【0017】
この後、設計データD1を用いてリソターゲットが作成される。そして、OPC装置やPPC装置などの近接効果補正装置10は、リソターゲットにOPC(Optical Proximity Correction)やPPC(Process Proximity Correction)を行なうことによってマスクデータD2を作成する(S2)。
【0018】
マスク作製工程P1では、マスクデータD2に対応するマスクパターンを有したマスクが作製される。換言すると、マスク作製工程P1では、マスクデータD2のパターン形状と略同じパターン形状のマスクパターンを有したマスクが作製される。マスク作製工程P1には、描画装置51、塗布・現像装置52、加工装置53、洗浄装置54などが用いられる。
【0019】
描画装置51は、マスク基板上のレジストにEB描画を行なう装置である。塗布・現像装置52は、マスク基板上へのEB描画を行なう前にマスク基板上にEB描画用のレジストを塗布する機能と、EB描画が行なわれた後のマスク上のレジストを現像してマスク上にレジストパターンを形成する機能とを有した装置である。加工装置53は、マスク上のレジストパターン上からエッチングなどの下地膜加工を行なってマスク上にコンタクトホールなどのマスクパターンを形成する装置である。洗浄装置54は、マスクパターンが形成されたマスクを洗浄する装置である。洗浄装置54は、マスクにマスクパターンを形成した直後にマスクを洗浄してもよいし、マスクを用いて露光処理を行った後、マスクが汚れた時点でマスクを洗浄してもよい。
【0020】
マスク作製工程P1で作製されるマスクのマスクパターンは、大きく分けて光の透過部と遮光部(半透過部)の2領域から形成されており、マスクパターンの寸法、周囲長、形状、面積、透過率、位相等がマスクパターン形状を特徴付ける評価値となる。理想的には、マスクデータD2と同じパターン形状を有したマスクが形成されることが望ましい。ところが、マスク描画、マスク描画後のレジスト現像、レジストパターンをマスク材にした下地膜加工といった工程(以下、マスクプロセスと呼ぶ)を経ることにより、上述した評価値がマスク面内で系統的な分布を持ってしまう。系統的な分布を持つマスクを一定露光量で露光すると、マスク上での系統的な分布がそのままウェハ上のパターン形状に反映されてしまう。その結果、評価値のマスク上での系統分布(以下、評価値系統分布という)に従ってウェハ上でのパターン形状が変化し、そのパターン形状変化に伴ってデバイス特性の劣化を招く可能性がある。
【0021】
したがって、マスク上での系統的な評価値の分布を最小限にするようなマスクプロセスの開発が必要となるが、このマスクプロセスの開発には膨大なコストと時間がかかる。そこで、本実施の形態では、ウェハへの露光中にショット内で露光量を可変にできる露光量マップシステムを用いる。
【0022】
露光量マップシステムを用いてウェハへの露光を行なうため、作製済みのマスク上での評価値を実験もしくは計算によって算出する。具体的には、マスクデータD2が作成された後、マスク上に形成されるマスクパターンの形状データ(マスクパターンの評価値)としてマスクパターン形状D3を導出する。
【0023】
マスクパターン形状D3は、マスクパターン形状算出装置20がマスク作製シミュレーションによって取得してもよいし、実際のマスク作製実験によって取得してもよい。マスクパターン形状算出装置20は、マスクデータD2を用いてマスクパターンの平面形状を予測するコンピュータであり、マスク作製工程P1でのプロセス条件などに基づいてマスクパターン形状D3を算出する。マスクパターン形状算出装置20は、例えばマスクパターン形状D3を算出するための算出モデルを用いてマスクパターン形状D3を算出する(S3)。具体的には、マスクパターン形状算出装置20は、マスク面内における評価値系統分布をモデル化し、さらにマスクパターンの疎密差に基づく寸法変換差をモデル化し、それぞれのモデルをマスクデータD2に対して適用することで、マスク面内における評価値系統分布を再現する。
【0024】
例えば、マスクパターンを形成する際に生じる系統的なマスクパターンの寸法分布およびマスクパターンの疎密に依存するマスクパターンの寸法差の少なくとも一方を考慮したプロセスシミュレーションによって、マスクパターン形状D3を算出する。
【0025】
マスクパターンの評価値系統分布は、マスク面内全体に同心円、傾斜といった分布となることが多い。このため、曲面式と多項式との組み合わせにて評価値系統分布を精度良く再現できる。また、マスクパターンの疎密差は、近接パターンからの影響をガウシアンとの畳み込み積分した寸法値や隣接パターンまでの開口角に対して相関を持つので、これらの関数系を用いたモデルにて精度良く再現できる。
【0026】
一方、マスクパターン形状D3を実験で導出する場合、マスク作製工程P1によってマスクを作製する。そして、マスク作製工程P1で作製したマスクに対し、マスク上で形状などの評価値を測定すべき種々の位置(測定対象とするマスクパターン)を選定する。そして、選定したマスクパターンの評価値をSEM、光学式測定装置、画像取得装置などによって測定する。コンタクトホールパターンのパターン形状として、コンタクトホールの縦方向の直径および横方向の直径などが測定される。
【0027】
本実施の形態では、マスクパターン形状D3として、マスクパターンの2次元形状パラメータを導出しておく。マスクパターンの2次元形状パラメータは、マスクの主面側からマスクパターンを見た場合の、マスクパターンの2次元形状を決定する要素であり、例えば、面積、周囲長、縦方向と横方向の寸法、縦横寸法比、周囲長などである。
【0028】
このように、シミュレーションや実験によって、マスク面内でのマスクパターン形状D3を導出した後、このマスクにショット内で同一露光量にて露光した場合の仮想的なウェハ上でのパターン形状(寸法)および形状分布を算出する。
【0029】
具体的には、マスクパターン形状D3が導出された後、マスクパターンマップ作成装置25が、後述のマスクパターンマップm1を作成する(S4)。マスクパターンマップ作成装置25は、マスクパターン形状D3を用いてマスクパターンマップm1を作成するコンピュータである。マスクパターンマップm1は、ウェハ上への露光対象となる露光ショット内での種々の位置におけるマスクパターンの形状に関するマップ(ショット内分布)である。マスクパターンマップm1には、マスク作製工程P1によってマスク上に形成されるマスクパターンの形状と、マスク製造の際に製造誤差が生じなかった場合の理想的なマスクパターンの形状と、の間の形状差に関する情報が格納されている。
【0030】
マスクパターンマップm1が作成された後、マスクパターンマップm1を用いて光学シミュレーションを実施し、さらに加工シミュレーションを実施することでウェハ上での仮想的な形状分布(加工後パターンの形状分布)を算出する。なお、ウェハ上での仮想的な形状分布(レジスト形状分布)は、マスクパターンマップm1を用いた光学シミュレーションのみによって算出してもよい。
【0031】
具体的には、ウェハ上パターンマップ算出装置30が、後述のウェハ上パターンマップm2を算出する(S5)。ウェハ上パターンマップ算出装置30は、マスクパターンマップm1を用いてウェハ上パターンマップm2を作成するコンピュータであり、パターン形成工程P2でのプロセス条件などに基づいてウェハ上パターンマップm2を算出する。
【0032】
ウェハ上パターンマップm2は、ショット内での種々の位置におけるウェハ上パターン(レジストパターン又はエッチング後パターン)の平面形状に関するマップ(ショット内分布)である。ウェハ上パターンマップm2には、パターン形成工程P2によってウェハ上に形成されるウェハ上パターンの形状と、ウェハ上パターン形成の際に形成誤差が生じなかった場合の理想的なウェハ上パターンの形状(ターゲット形状、例えば設計レイアウト)と、の間の形状差に関する情報が格納されている。
【0033】
ウェハ上パターンマップ算出装置30は、例えばウェハ上パターンマップm2を算出するための算出モデルを用いてウェハ上パターンマップm2を作成する。ウェハ上パターンマップm2を算出するための算出モデルは、例えば、マスクパターンマップm1内でのパターン形状の誤差(理想値からのずれ量)と、ウェハ上パターンのパターン形状誤差と、の対応関係などを用いて、マスクパターンマップm1をウェハ上パターンマップm2に変換するモデルである。
【0034】
パターン形成工程P2では、マスク作製工程P1によって作製されたマスクを用いて、ウェハ上にウェハ上パターン(レジストパターンやエッチング後パターン)が形成される。パターン形成工程P2には、露光装置60、塗布・現像装置56、加工装置57などが用いられる。
【0035】
露光装置60は、マスク作製工程P1によって作製されたマスクを用いて露光を行なうことにより、マスクパターンをウェハ上に転写する装置である。露光装置60は、二次光源から発した光をマスクに照射し、マスクに形成されたパターンの像を投影光学系を介してウェハに投影露光する。
【0036】
塗布・現像装置56は、塗布・現像装置52と同様の機能を有した装置である。塗布・現像装置56は、露光装置60による露光処理を行なう前にウェハ上にレジストを塗布する機能と、露光されたウェハ上のレジストを現像してウェハ上にレジストパターンを形成する機能とを有している。加工装置57は、加工装置53と同様の機能を有した装置である。加工装置57は、ウェハ上のレジストパターン上からエッチングなどの下地膜加工を行なってウェハ上にコンタクトホールなどのパターンを形成する。
【0037】
このように、マスク作製工程P1では、露光装置60によってウェハへの露光処理を行なうので、露光装置60が予め既知である場合には、露光装置60の機差を考慮した光学シミュレーションによって、マスクパターンマップm2を算出してもよい。例えば、露光装置60の照明形状、照明輝度分布、レンズの大きさ、偏光度、レンズ収差、レンズ透過率、偏光収差、露光量、フォーカスオフセット、マスクとウェハのスキャンの平行度、露光波長の分布、投影レンズNAといったウェハ上パターン形状に影響を与える光学パラメータを少なくとも1つを光学シミュレーションに取り込む。
【0038】
このように光学パラメータを取り込むことにより、マスク上での評価値系統分布のみならず、露光装置60の光学パラメータに起因する評価値系統分布も取り込んだ仮想的形状分布を算出することが可能となる。これにより、マスク、露光装置60の双方に起因する評価値系統分布で示される形状誤差を同時に補正することが可能となる。さらに、加工シミュレーションを実施することによって、リソグラフィのみならず、加工プロセスによる評価値系統分布で示される形状誤差をも補正することが可能となる。
【0039】
なお、ウェハ上パターンマップm2は、ウェハ上パターンの形成実験で求めてもよい。この場合、パターン形成工程P2によってウェハ上にウェハ上パターンを形成する。そして、パターン形成工程P2で形成したウェハ上パターンの種々の位置(測定対象とするウェハ上パターン)でのパターン形状をSEMなどによって測定する。ウェハ上パターンマップm2は、ショット内での種々の位置におけるウェハ上でのパターン形状に関する寸法のマップ(分布)である。
【0040】
ウェハ上パターンマップm2が算出された後、露光量マップ作成装置40が露光量マップm3を作成する。露光量マップ作成装置40は、ウェハ上パターンマップm2を用いて、所望のパターン形状を有したパターンをウェハ上に形成するための露光量マップm3を算出する(S6)。
【0041】
換言すると、本実施の形態では、ウェハ上での仮想形状分布とターゲット形状との形状差分をショット内で算出しておき、この形状差分が予め決められた値より小さくなるように露光量の補正マップを作成する。形状差分を補正する為には、予め単位露光量変動に対する寸法変動量を規定しておく。
【0042】
所望のパターン形状を有したウェハ上パターンを形成するためには、ショット内の種々の位置で、各位置(ウェハ上パターンマップm2)に応じた露光量でウェハ上のレジストを露光する必要がある。このため、露光量マップm3は、ショット内での種々の位置における露光量(ドーズ量)のマップ(ショット内分布)である。なお、露光量マップm3は、ショット内での種々の位置における露光量補正量のマップであってもよい。露光量マップm3が作成された後、露光量マップm3をパターン形成工程P2に適用して、ウェハ上にパターン形成が行われる。
【0043】
例えば、マスク作製工程P1では、マスク作製プロセスの際に、マスク上に形成されるマスクパターンのパターン形状が所望のパターン形状からずれる。また、パターン形成工程P2では、露光装置60の照明やレンズで生じるショット内の系統的な照明形状ずれ、照明むら、収差ばらつき、レンズの位相ばらつき、透過率ばらつきなどが原因で、ウェハ上に形成されるパターンのパターン形状が所望のパターン形状からずれる。また、露光時に用いるマスク内での系統的な寸法ばらつき、位相ばらつき、透過率ばらつき等が原因で、ウェハ上に形成されるパターンのパターン形状が所望のパターン形状からずれる。また、加工プロセスにて生じる系統的なばらつきが原因で、ウェハ上に形成されるパターンのパターン形状が所望のパターン形状からずれる。
【0044】
本実施の形態では、ウェハ上パターンマップm2とウェハ上パターンのターゲットパターン形状との間のずれ量を補正するための露光量マップm3を作成するので、マスク作製工程P1やパターン形成工程P2が原因で生じるウェハ上でのショット内の系統的な寸法誤差を露光量マップm3にて補正することが可能となる。具体的には、マスク寸法、形状、位相、透過率、露光装置60のショット内での系統的な光学パラメータばらつき、加工プロセスによるショット内での系統的なばらつきなどに起因するウェハ上での寸法変動を、露光量補正にて補正することが可能となる。なお、露光量マップm3は、マスクパターンマップm1とウェハ上パターンのターゲットパターン形状との間のずれ量を補正するための露光量補正量のマップであってもよい。
【0045】
ところで、マスクパターンがメモリ製品のように均一化されたパターン(同一形状の周期パターン)で構成されている場合には、単位露光量の変動に対する寸法変化量はほぼ一定値となる。このため、マスクパターンがメモリ製品の場合、形状差分を補正するための露光量の補正量を算出することは比較的容易である。しかしながら、システムLSI製品等では、様々な種類の形状を有したマスクパターンが同一マスク上に配置されるので、単位露光量の変動に対する寸法変化量はマスクパターン毎に異なる。
【0046】
このような場合には、マスク面内を数μm〜数100μm程度のメッシュに分割し、各メッシュ内でウェハ上パターンの理想値からのずれ量が最小となるような露光量補正量を算出してもよい。このとき、露光量、フォーカスがずれる場合であっても、ターゲット寸法に対する形状差分が最も小さくなるような露光量補正量(露光マージンの大きな露光量補正量)を算出してもよい。分割されたメッシュ毎に露光量補正量を算出した後、各メッシュの露光量補正量を繋ぎ合わせてマスク面内での露光量マップm3が作成される。
【0047】
図2は、実施の形態に係る露光量マップ作成装置の構成を示すブロック図である。露光量マップ作成装置(露光量決定装置)40は、入力部41と、パターンマップ記憶部42と、相関関係記憶部43と、露光量マップ作成部45と、出力部46と、を備えている。
【0048】
入力部41は、ウェハ上パターンマップ算出装置30などからウェハ上パターンマップm2を入力する。また、入力部41は、露光量補正量(後述の最適露光量補正量B)とウェハ上のパターン形状(面積など)の誤差量(後述の平面形状差分D)との相関関係を示す相関関係情報を入力する。平面形状差分Dは、シミュレーションなどで求めたウェハ上のパターン形状と、ウェハ上に形成するウェハ上パターンの目標形状と、の間の形状に関する差を示す情報である。相関関係情報は、コンタクトホールの面積に関するMEF(Mask Error Enhancement Factor)(マスクの寸法変動量に対するウェハ上パターンの寸法変動量の割合)である。入力部41は、ウェハ上パターンマップm2をパターンマップ記憶部42に送り、相関関係情報を相関関係記憶部43に送る。
【0049】
なお、相関関係情報は、ウェハ上のパターン形状とウェハ露光量との間の相関関係であってもよい。また、相関関係情報は、平面形状差分Dとウェハ露光量との間の相関関係であってもよいし、ウェハ上のパターン形状と最適露光量補正量Bとの間の相関関係であってもよい。パターンマップ記憶部42は、ウェハ上パターンマップm2を記憶するメモリなどである。相関関係記憶部43は、相関関係情報を記憶するメモリなどである。
【0050】
露光量マップ作成部45は、ウェハ上パターンマップm2と相関関係情報を用いて露光量マップm3を作成する。露光量マップm3は、マスクを用いてウェハ上パターンを形成する際のショット内での露光量に関する分布情報である。例えば、平面形状差分Dにおいて、シミュレーションなどで求めたウェハ上パターンが目標パターンよりも大きくなっている場合、ウェハ上パターンが小さくなるよう露光量を大きくする。また、シミュレーションなどで求めたウェハ上パターンが目標パターンよりも小さくなっている場合、ウェハ上パターンが大きくなるよう露光量を小さくする。
【0051】
出力部46は、露光量マップ作成部45が作成した露光量マップm3を出力する。出力部46から出力された露光量マップm3は、露光装置60に入力され、ウェハへの露光処理の際に用いられる。
【0052】
つぎに、実施の形態に係る露光処理手順について説明する。図3は、第1の実施の形態に係る露光処理手順を示すフローチャートである。まず、シミュレーションなどで求めたウェハ上のパターン形状と、ウェハ上に形成するパターンの目標形状と、の間の形状差である平面形状差分Dとを種々のウェハ上パターンに対して求めておく。さらに、各ウェハ上パターンを形成するのに必要な最適な露光量補正量(最適露光量補正量B)を求めておく。平面形状差分Dや最適露光量補正量Bは、シミュレーションによって求めてもよいし、実験によって求めてもよい。さらに、平面形状差分Dと最適露光量補正量Bとの相関関係を、相関関係情報として導出しておく(ステップS10)。この相関関係情報は、相関関係記憶部43に格納しておく。
【0053】
相関関係情報を導出した後、ウェハ上パターンマップ算出装置30は、マスクデータD2に対応するウェハ上パターンマップm2を、マスクパターンマップm1を用いて算出する(ステップS20)。算出したウェハ上パターンマップm2は、パターンマップ記憶部42に格納しておく。
【0054】
露光量マップ作成装置40の露光量マップ作成部45は、相関関係記憶部43内の相関関係情報と、パターンマップ記憶部42内のウェハ上パターンマップm2と、に基づいて、露光量マップm3を作成する(ステップS30)。
【0055】
図4は、ウェハ上パターンマップm2と露光量マップm3との関係を説明するための図である。ウェハ上パターンマップm2は、ウェハ上パターンの形状誤差のショット内分布であり、露光量マップm3は、最適露光量補正量Bのショット内分布である。図4では、ウェハ上パターンマップm2のショット内分布が、ウェハ上パターンの形状誤差の大きさ毎に区切られた領域a1〜a4である場合を示している。また、露光量マップm3のショット内分布が、最適露光量補正量Bの大きさ毎に区切られた領域b1〜b4である場合を示している。ウェハ上パターンマップm2と露光量マップm3とは、相関関係があるので、領域a1〜a4のショット内分布と領域b1〜b4のショット内分布は、略同様の分布を有している。
【0056】
出力部46は、露光量マップ作成部45が作成した露光量マップm3を出力する。出力部46から出力された露光量マップm3が露光装置60に設定され、露光量マップm3に従ってウェハへの露光処理が行われる(ステップS40)。これにより、ウェハ上パターンの形状誤差量である平面形状差分Dに応じた最適露光量補正量Bで、ウェハへの露光処理を行うことが可能となる。
【0057】
このように、本実施の形態では、コンタクトホールパターンなどを、ウェハ上において寸法(CD)ではなく、面積、周囲長、縦方向と横方向の寸法、縦横寸法比、周囲長などの2次元形状パラメータが均一となるよう形成する。これにより、コンタクトホールパターンの電気特性が面内で一様に目標値に近づくので、半導体デバイスの性能が安定し、不良品の発生を抑制することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、平面形状差分Dと最適露光量補正量Bとの相関関係に基づいて、露光量マップm3を作成したが、平面形状差分Dと最適露光量との相関関係に基づいて、露光量マップm3を作成してもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、マスクパターンマップm1を用いてウェハ上パターンマップm2を導出する場合について説明したが、実験によってウェハ上パターンマップm2を導出する場合、マスクパターンマップm1の作成を省略してもよい。この場合、例えばウェハ上パターンマップm2を導出する際に用いた露光量(一様でなくともよい)に対する露光量の補正量を算出する。
【0060】
このように第1の実施の形態によれば、ウェハ上パターンマップm2内に格納されている2次元的なパターン形状に基づいて、ショット内での露光量補正量や露光量を決定するので、所望の2次元形状パラメータを有したパターンをウェハ上に形成できる露光量補正量や露光量を正確に決定することが可能となる。
【0061】
(第2の実施の形態)
つぎに、図5〜図8を用いてこの発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、マスクパターン形状の誤差(マスクパターンマップm1)に基づいて、露光量補正量を設定する。なお、以下ではマスクパターン形状の誤差と最適露光量補正量との相関関係を用いて露光量マップm3を導出する場合について説明するが、マスクパターン形状の誤差と最適露光量との相関関係を用いて露光量マップm3を導出してもよい。
【0062】
図5は、マスクパターン形状の誤差と最適露光量補正量との相関関係を説明するための図である。ここでは、設計データD1上でのコンタクトホールh1〜h4のx方向のパターン寸法がそれぞれA〜Dであり、y方向のパターン寸法がそれぞれA’〜D’である場合について説明する。コンタクトホールh1〜h4を用いてウェハ上にコンタクトホールパターンを形成することにより、各コンタクトホールh1〜h4の形状に応じたウェハ上パターンとして、図示しないコンタクトホールパターンH1〜H4がそれぞれ形成される。このとき、ショット内で形状ずれの分布が発生する。
【0063】
図5では、異なるマスクパターン径をもつ複数のパターンに対し、レジストパターン径がそれぞれ所望値になるよう露光量の調整を行った場合の、マスクパターン形状の誤差と最適露光量補正量Bとの対応関係を示している。マスクパターン形状の誤差と最適露光量補正量Bとの対応関係は、実験によって求めてもよいし、マスクパターン形状を用いた結像シミュレーションによって算出してもよい。
【0064】
図5の左上側には、コンタクトホールパターンH1〜H4の所望寸法からのx方向の寸法ずれ量(コンタクト寸法ずれ量)と最適露光量補正量Bとの対応関係を示しており、図5の右上側には、コンタクトホールパターンH1〜H4の所望面積からの面積ずれ量(コンタクト面積ずれ量)と最適露光量補正量Bとの対応関係を示している。
【0065】
また、図5の左下側には、コンタクトホールh1〜h4と、各コンタクトホールパターンH1〜H4のコンタクト寸法ずれ量の大きさの順位と、を対応付けて示している。また、図5の右下側には、コンタクトホールh1〜h4と、各コンタクトホールパターンH1〜H4のコンタクト面積ずれ量の大きさの順位と、を対応付けて示している。
【0066】
マスクパターン形状がコンタクトホールである場合、図5の左側に示すように、コンタクトホールパターンH1〜H4の1方向(例えばx方向)におけるコンタクト寸法ずれ量と、最適露光量補正量Bとの間には相関関係がない。例えば、コンタクトホールパターンH1〜H4のコンタクト寸法ずれ量の大きさの順位がコンタクトホールh4、コンタクトホールh3、コンタクトホールh2、コンタクトホールh1である場合であっても、最適露光量補正量Bの大きさは、この順番になるとは限らない。
【0067】
図6は、一方向のみの寸法に基づいてターゲットを補正した場合の問題点を説明するための図である。図6の(a)に示すように、製造誤差などのない理想的なマスクパターンMp1に対して標準露光量(補正のない適正露光量)で露光処理を行うと、所望の寸法ターゲットに対応するレジストパターンR1が形成される。
【0068】
一方、図6の(b)に示すように、寸法誤差のあるマスクパターンMp2に対して標準露光量で露光処理を行うと、寸法誤差の分だけ形状がずれたレジストパターンR2が形成される。例えば、製造誤差などによって、マスクパターンMp2が横方向に大きくなっていた場合、レジストパターンR2も横方向に大きくなるよう形成されてしまう。このような場合に、横方向の寸法が所望の寸法ターゲットとなるよう露光量を補正すると、露光量補正後のレジストパターンR3は、縦方向の寸法が小さくなってしまう。したがって、このような露光量補正量を用いて基板上にレジストパターンを形成すると、横方向のみが所望の寸法となり、縦方向は所望の寸法で形成することができない。コンタクトホールのレジストパターンをウェハ上に形成する際に必要な最適露光量補正量Bは、形成されるコンタクトホールパターンの形状に応じた値となるからであり、形成されるコンタクトホールパターンのx方向の寸法のみに応じた値とはならないからである。したがって、ウェハ上パターンのx方向の寸法とx方向の目標寸法とに基づいてウェハ露光量補正量を設定しても所望のウェハ上パターンを形成することができない。
【0069】
このように、マスクパターンが、非等方的な寸法誤差を持っている場合に、露光量補正量を調整することによってコンタクトホールのレジストパターンの径を目標寸法に合わせこむとコンタクトホールパターンの面積が目標面積からずれてしまう。半導体デバイスにおいて、コンタクトホールパターンは上層と下層の配線を電気的に接続する役割を果たす。このため、コンタクトホールパターンの断面積が目標面積からずれると、コンタクトホールパターンの電気抵抗もずれてしまい、その結果、半導体デバイスの動作特性に悪影響を及ぼすことになる。
【0070】
図5の右上側に示すように、コンタクトホールパターンH1〜H4のコンタクト面積ずれ量と、最適露光量補正量Bとの間には相関関係がある。例えば、コンタクトホールh1〜h4のコンタクト面積ずれ量の大きさの順位が、コンタクトホールh3(面積はC×C’)、コンタクトホールh4(面積はD×D’)、コンタクトホールh1(面積はA×A’)、コンタクトホールh2(面積はB×B’)である場合、最適露光量補正量Bの大きさもこの順番となる。このため、マスクパターンの2次元的な形状(面積など)のずれ量に基づいて、最適露光量補正量Bを設定することによって、所望形状のパターンをウェハ上に形成することが可能となる。このように、本実施の形態では、コンタクトホールパターンなどを、ウェハ上において寸法(CD)ではなく、面積などが均一となるよう形成する。これにより、コンタクトホールパターンの電気特性が面内で一様に目標値に近づくので、半導体デバイスの性能が安定し、不良品の発生を抑制することができる。
【0071】
図7は、マスクパターン形状に応じた露光量補正量の設定処理を説明するための図である。マスクM内には、マスク作製工程P1に応じた種々の形状誤差を有したマスクパターン(コンタクトホールパターン)が形成される。このマスクM内の例えば位置p1〜p3に形成されたコンタクトホールパターンは、マスク作製工程P1によって種々の形状誤差を生じさせているので、それぞれのマスクM上でのコンタクト面積も種々の誤差を生じている。このため、露光量マップ作成装置40(露光量決定装置)は、コンタクト面積の誤差を解消するよう、位置p1〜p3毎に露光量補正量を設定し、これにより露光量マップm3を作成する。
【0072】
つぎに、第2の実施の形態に係る露光処理手順について説明する。図8は、第2の実施の形態に係る露光処理手順を示すフローチャートである。なお、図8に示す処理手順のうち、図3に示した処理手順と同様の処理については重複する説明を省略する。
【0073】
まず、シミュレーションや実験などで求めたマスク上でのコンタクト面積ずれ量と、最適露光量補正量Bとの相関関係を相関関係情報として導出しておく(ステップS110)。相関関係情報は、シミュレーションや実験を繰り返して最適となる露光量を予め求め、両者の相関関係をルール化、モデル関数化しておくことによって導出する。具体的には、シミュレーションや実験などで求めたマスク上でのパターン形状と、ウェハ上に形成するパターンの目標形状と、の間の形状差を種々のマスク上パターンに対して求めておく。さらに、各ウェハ上パターンを形成するのに必要な最適な露光量補正量(最適露光量補正量B)を求めておく。そして、形状差と最適露光量補正量Bとの相関関係を、相関関係情報として導出する。この相関関係情報は、相関関係記憶部43に格納しておく。
【0074】
コンタクト面積ずれ量と最適露光量補正量Bとの間の相関関係情報を導出した後、マスクパターンマップ作成装置25は、マスクパターン形状D3を用いてマスクパターンマップm1を作成する(ステップS120)。作成したマスクパターンマップm1は、パターンマップ記憶部42に格納しておく。
【0075】
露光量マップ作成装置40の露光量マップ作成部45は、相関関係記憶部43内の相関関係情報と、パターンマップ記憶部42内のマスクパターンマップm1と、に基づいて、露光量マップm3を作成する(ステップS130)。
【0076】
出力部46は、露光量マップ作成部45が作成した露光量マップm3を出力する。出力部46から出力された露光量マップm3が露光装置60に設定され、露光量マップm3に従ってウェハへの露光処理が行われる(ステップS140)。これにより、マスクパターン形状の誤差量であるコンタクト面積ずれ量に応じた最適露光量補正量Bで、ウェハへの露光処理を行うことが可能となる。
【0077】
露光量マップm3を用いた露光量補正量の調整は、例えばウェハプロセスのレイヤ毎、マスク毎に行われる。そして、各レイヤ、各マスクに応じた露光量マップm3を用いて半導体装置(半導体集積回路)が製造される。具体的には、ウェハプロセスのレイヤ毎、マスク毎に露光量マップm3を作成しておく。そして、露光量マップm3を用いて、露光処理が行なわれ、その後、ウェハの現像処理やエッチング処理などが行なわれる。半導体装置を製造する際には、上述した露光量マップm3の作成処理、露光処理、現像処理、エッチング処理などがレイヤ毎に繰り返される。
【0078】
つぎに、露光量マップ作成装置40のハードウェア構成について説明する。図9は、露光量マップ作成装置のハードウェア構成を示す図である。露光量マップ作成装置40は、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、表示部94、入力部95を有している。露光量マップ作成装置40では、これらのCPU91、ROM92、RAM93、表示部94、入力部95がバスラインを介して接続されている。
【0079】
CPU91は、露光量マップm3を作成するコンピュータプログラムである露光量マップ作成プログラム(露光量決定プログラム)97を用いて露光量マップm3を作成する。表示部94は、液晶モニタなどの表示装置であり、CPU91からの指示に基づいて、ウェハ上パターンマップm2、最適露光量補正量Bと平面形状差分Dとの相関関係、コンタクト面積ずれ量と最適露光量補正量Bとの相関関係、露光量マップm3などを表示する。入力部95は、マウスやキーボードを備えて構成され、使用者から外部入力される指示情報(露光量マップの作成に必要なパラメータ等)を入力する。入力部95へ入力された指示情報は、CPU91へ送られる。
【0080】
露光量マップ作成プログラム97は、ROM92内に格納されており、バスラインを介してRAM93へロードされる。図9では、露光量マップ作成プログラム97がRAM93へロードされた状態を示している。
【0081】
CPU91はRAM93内にロードされた露光量マップ作成プログラム97を実行する。具体的には、露光量マップ作成装置40では、使用者による入力部95からの指示入力に従って、CPU91がROM92内から露光量マップ作成プログラム97を読み出してRAM93内のプログラム格納領域に展開して各種処理を実行する。CPU91は、この各種処理に際して生じる各種データをRAM93内に形成されるデータ格納領域に一時的に記憶させておく。
【0082】
露光量マップ作成装置40で実行される露光量マップ作成プログラム97は、露光量マップ作成部45を含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
【0083】
つぎに、露光装置60の構成について説明する。図10は、露光装置の構成を示すブロック図である。露光装置60は、例えば、レチクルとウェハとを投影光学系に対して同期走査して露光を行うステップ・アンド・スキャン方式の露光装置である。露光装置60は、レチクルステージおよびウェハステージのスキャンスピード(移動速度)を変化させることによって、ショット内での露光量分布を制御する。露光装置60は、制御部61、露光機構62、露光量マップ入力部63、露光量マップ記憶部64を備えている。
【0084】
露光量マップ入力部63は、外部装置などから露光量マップm3を入力する。ただし、露光量マップ作成装置40(露光量決定装置)は、露光装置60内部に搭載されていてもよく、この場合は露光装置内部にて露光装置マップm3が作成される。露光量マップ記憶部64は、露光量マップm3を記憶しておくメモリなどである。制御部61は、露光量マップm3を用いて露光機構62を制御する機能を有しており、スキャンスピード制御部71、レチクルステージ制御部72、ウェハステージ制御部73を有している。
【0085】
スキャンスピード制御部71は、露光量マップm3に応じた露光量分布でショット内が露光されるよう、ショット内でのスキャンスピードを調整する。レチクルステージ制御部72は、レチクルステージの移動方向などを制御し、ウェハステージ制御部73は、ウェハステージの移動方向などを制御する。
【0086】
露光機構62は、制御部61からの指示に従ってウェハへの露光処理を行なう機能を有しており、レチクルステージ81とウェハステージ82を備えている。レチクルステージ81は、レチクル(マスク)を載置するとともに、レチクルステージ制御部72からの指示に従ってレチクルをXY平面内で移動させる。ウェハステージ82は、ウェハを載置するとともに、ウェハステージ制御部73からの指示に従ってウェハをXY平面内で移動させる。
【0087】
露光装置60は、露光量の補正を行なわない場合は、露光エリアの位置で所定のスキャンスピードを維持した状態で露光を行なう。このとき、レチクルステージ81とウェハステージ82とは、互いに反対の方向に移動するよう制御部61からの指示に従って同期をとった状態で移動させられる。
【0088】
露光量の補正を行なう場合、制御部61は、レチクルステージ81とウェハステージ82の移動量比およびスキャンスピードの比を維持したままでスキャンスピードを変化させることによってショット内での露光量を制御する。具体的には、制御部61は、露光量マップm3に対応する露光量分布となるよう、レチクルステージ81とウェハステージ82のスキャンスピードを制御する。
【0089】
本実施の形態では、ウェハ上パターンマップm2と目標パターン形状との間のずれ量を補正するための露光量マップm3を作成するので、マスク作製工程P1やパターン形成工程P2が原因で生じるウェハ上でのショット内の系統的な寸法誤差を露光量マップm3にて補正することが可能となる。そして、露光量マップm3を用いて露光処理を行なうことによって、マスク面内の系統的なばらつきや、露光時のショット内での光学パラメータの系統的なばらつきによる、ウェハ上での寸法ばらつきを補正することが可能となる。換言すると、露光量マップm3を用いることによって、系統的なばらつきにより生じる寸法誤差を低減させることができるので、各プロセスユニットで許容できる系統ばらつきのスペックを緩くすることが可能となる。
【0090】
したがって、マスク上での系統的な評価値ばらつきに起因するウェハ上での寸法ばらつきを低減させることが可能となる。この結果、ウェハ上での寸法均一性を大幅に向上させることが可能となる。本実施の形態の露光方法を用いることによって、従来の露光方法よりも約20%程度もショット内での寸法精度が向上することが確認された。
【0091】
なお、上述した第1および第2の実施の形態では、マスクパターンやウェハ上パターンのパターン形状に基づいて、最適露光量補正量Bを決定する場合について説明したが、マスクパターンやウェハ上パターンのパターン寸法に基づいて、最適露光量補正量Bを決定してもよい。この場合、マスクパターンのパターン寸法は、マスクデータD2を用いたマスク作製シミュレーションによって算出しておく。また、ウェハ上パターンのパターン寸法は、マスクパターン形状D3を用いた光学シミュレーションや加工シミュレーションによって算出しておく。
【0092】
このように第2の実施の形態によれば、マスクパターンマップm1内に格納されている2次元的なパターン形状に基づいて、ショット内での露光量補正量または露光量を決定するので、所望の2次元形状パラメータを有したパターンをウェハ上に形成できる露光量補正量や露光量を正確に決定することが可能となる。
【0093】
また、マスク作製シミュレーション、光学シミュレーション、加工シミュレーションによって算出したパターン寸法を算出し、算出したパターン寸法に基づいて、最適露光量補正量Bを決定するので、所望の寸法を有したパターンをウェハ上に形成できる露光量補正量を正確に決定することが可能となる。
【符号の説明】
【0094】
20 マスクパターン形状算出装置、25 マスクパターンマップ作成装置、30 ウェハ上パターンマップ算出装置、40 露光量マップ作成装置、42 パターンマップ記憶部、43 相関関係記憶部、45 露光量マップ作成部、60 露光装置、61 制御部、62 露光機構、64 露光量マップ記憶部、D1 設計データ、D2 マスクデータ、D3 マスクパターン形状、m1 マスクパターンマップ、m2 ウェハ上パターンマップ、m3 露光量マップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク上に形成されるマスクパターンと所望のマスクパターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量分布を、マスクパターンマップとして取得するマスクパターンマップ取得ステップと、
前記マスクを露光ショットして基板上にパターンを形成した場合に形成される基板上パターンと所望の基板上パターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量が所定の範囲内に収まるよう、前記マスクパターンマップに基づいて、前記露光ショット内での位置毎に露光量を決定する露光量決定ステップと、
を含むことを特徴とする露光量決定方法。
【請求項2】
マスクパターンを有するマスクを所定の露光量で露光ショットして基板上にパターンを形成した場合に形成される基板上パターンと所望の基板上パターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量分布を、基板上パターンマップとして取得する基板上パターンマップ取得ステップと、
前記基板上パターンと所望の基板上パターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量が所定の範囲内に収まるよう、前記基板上パターンマップを用いて、前記基板上パターンを形成する際の前記ショット内での位置毎に露光量を補正する補正ステップと、
を含むことを特徴とする露光量決定方法。
【請求項3】
前記二次元形状パラメータは、パターンの面積、周囲長、縦方向と横方向の寸法及び縦横寸法比のいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の露光量決定方法。
【請求項4】
前記マスクパターンマップは、前記マスク上に形成されるマスクパターンの形状を前記マスクのマスクデータを用いて算出するプロセスシミュレーションによって算出され、
前記プロセスシミュレーションは、前記マスクパターンを形成する際に生じる前記ショット内での系統的なマスクパターンの寸法分布および前記ショット内での前記マスクパターンの疎密に依存するマスクパターンの寸法差の少なくとも一方を考慮したシミュレーションであることを特徴とする請求項1に記載の露光量決定方法。
【請求項5】
請求項1または2記載の露光量決定方法により決定された露光量に基づき、前記マスクを露光して基板上にパターンを形成する半導体装置の製造方法。
【請求項6】
マスク上に形成されるマスクパターンと所望のマスクパターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量分布に基づいて、前記マスクを露光ショットして基板上にパターン形成した場合に形成される基板上パターンと所望の基板上パターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量が所定の範囲内に収まるよう、前記ショット内での位置毎に露光量を決定する露光量決定ステップを、コンピュータに実行させることを特徴とする露光量決定プログラム。
【請求項7】
マスク上に形成されるマスクパターンと所望のマスクパターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量分布に基づいて、前記マスクを露光ショットして基板上にパターン形成した場合に形成される基板上パターンと所望の基板上パターンとの間の二次元形状パラメータのずれ量が所定の範囲内に収まるよう、前記ショット内での位置毎に露光量を決定する露光量決定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−146606(P2011−146606A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7507(P2010−7507)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】