説明

青色発光蛍光体及び発光装置

【課題】Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示される蛍光体を青色光源に用いた、発光輝度の高い発光装置を提供する。
【解決手段】波長172nmの発光を含む真空紫外光の発光を示す励起光源と、該励起光源からの真空紫外光によって励起されて青色光を発光する蛍光体とを備えた発光装置であって、該蛍光体が、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.0090〜0.025の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.040モルの範囲の量にて含有する蛍光体である発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示される青色発光蛍光体及びその青色発光蛍光体を青色発光光源として利用する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空紫外光や紫外光などの光を蛍光体に照射して、蛍光体を励起させることによって可視光を発光させる発光装置としては、交流型プラズマディスプレイパネル(AC型PDP)、冷陰極型蛍光ランプ(CCFL)及び白色発光ダイオード(白色LED)などが知られている。
【0003】
AC型PDPは、Xeガスの放電により生成する真空紫外光を、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体及び赤色発光蛍光体にそれぞれ照射して、各蛍光体を励起させることにより発光した青色光、緑色光及び赤色光を組み合わせることによって画像を得る発光装置である。Xeガスの放電により起こる発光は、主にXeの共鳴線発光とXe2の分子線発光である。共鳴線発光では中心波長が146nm(147nmと記載されている文献もある)の真空紫外光が生成する。分子線発光では中心波長が172nm(173nmと記載されている文献もある)の真空紫外光が生成する。
【0004】
CCFLは、Hgガスの放電により生成する紫外光を、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体及び赤色発光蛍光体に照射して、各蛍光体を励起させることにより発光した青色光、緑色光及び赤色光の混色によって白色光を得る発光装置である。Hgガスの放電により生成する紫外光は、波長が254nmである。
【0005】
白色LEDとしては、半導体に電圧を印加することにより生成した波長350〜430nm範囲にピークを有する光を、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体及び赤色発光蛍光体に照射して、各蛍光体を励起させることにより発光した青色光、緑色光及び赤色光の混色によって白色光を得る構成のものが知られている。
【0006】
真空紫外光や紫外光などの光によって励起されると青色光を発光する青色発光蛍光体として、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示される蛍光体(以下、SMS蛍光体とも言う)やBa1-xMgAl1017:Euxの組成式で示される蛍光体(以下、BAM蛍光体とも言う)が知られている。SMS蛍光体はBAM蛍光体と比較して真空紫外光や紫外光の照射による経時的な発光輝度の低下が少なく、長寿命であるという利点がある。
【0007】
特許文献1には、励起光の照射による発光輝度の経時的な低下をさらに防止するために、SMS蛍光体のMgの一部を5族及び6族の元素に置換することが記載されていて、その5族及び6族の元素の例としてWが記載されている。この特許文献1には、Wの置換量は、Mg及びWの総モルに対するWの割合(W/(Mg+W))で0.003以上0.006以下の範囲と記載されている。また、Euの含有量はSr及びEuの総モルに対するEuの割合(Eu/(Sr+Eu))で0.003以上0.05以下の範囲が好ましいと記載されている。なお、この特許文献1の実施例では、上記Wの添加効果の確認は、波長146nmの真空紫外光の励起による発光輝度により行なわれている。
【0008】
特許文献2には、真空紫外励起条件下で使用される珪酸塩蛍光体の寿命と輝度特性の向上のために、蛍光体にCu、Ga、Ge、As、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Au、Hg、Tl、Pb、Biなどの元素を添加することが記載されている。この特許文献2に記載されている蛍光体のEu含有量の好ましい範囲は、蛍光体1モルに対して、0.001〜0.2モルであり、添加元素の好ましい量は、Euに対するモル比率で1以下である。なお、この特許文献2の実施例では、上記元素の添加効果の確認は、波長147nmの真空紫外光の励起による発光輝度により行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−314644号公報
【特許文献2】特開2006−70187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1と2に記載されているSMS蛍光体は、Xeガスの放電により発光するXeの共鳴線発光(波長146nmもしくは147nmの真空紫外光)の励起による青色発光源として有用である。一方、AC型PDPでは、発光輝度を高めるために、パネル内のXeガス充填量を多くして、Xeガスの放電により生成する真空紫外光の量を増加させることが検討されている。パネル内のXeガス充填量を増加すると、分子線発光による波長172nmの真空紫外光の発光量が多くなる。このため、AC型PDP用の蛍光体では、波長172nmの真空紫外光の励起による発光輝度の向上が望まれている。また、SMS蛍光体の用途には、CCFLや白色LEDなどのように、波長146nm以外の光を励起光とする発光装置も多数存在する。しかしながら、本発明者の検討によると、前記特許文献1と2に記載されている添加元素が、そのままCCFLの励起光として利用される波長254nmの紫外光や白色LEDの励起光として利用される波長350〜430nmの光の励起によるSMS蛍光体の発光輝度を向上させるのに有効に作用するわけではないことが判明した。
【0011】
さらに、AC型PDPやCCFLなどの発光装置において、蛍光体は通常、基体の上に蛍光体層として配置されている。この蛍光体層は、蛍光体の分散液を基体に塗布し、次いでその塗布膜を乾燥した後、大気中にて300〜600℃の温度で焼成することにより形成するのが一般的である。また、白色LEDには、蛍光体をガラスに分散させた蛍光体層として配置されているものもある。この蛍光体層は、蛍光体とガラスとの混合物の分散液を大気中にて300℃以上の温度で焼成して、ガラスを溶融させることによって形成するのが一般的である。従って、蛍光体は大気雰囲気中での加熱処理後においても、高い発光輝度を維持することが要求される。
【0012】
従って、本発明の目的は、大気雰囲気中での加熱処理後においても、波長172nmの真空紫外光、波長254nmの紫外光及び波長350〜430nmの光による励起によって高い発光輝度を示すSMS蛍光体を開発し、SMS蛍光体を青色発光源に用いた発光輝度の高い発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示されるSMS蛍光体においては、大気雰囲気中での加熱処理後の発光輝度の向上にW及び/又はPbの添加が有効であること、但し、励起光の波長によって、Euの含有量(組成式のx値)とW及び/又はPbの添加量の最適値が異なることを見出し、Euの含有量とW及び/又はPbの添加量とを下記の範囲とすることによって、波長172nmの真空紫外光、波長254nmの紫外光又は波長350〜430nmの光による励起によって高い発光輝度を示すSMS蛍光体が得られることを確認して、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.0090〜0.025の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.040モルの範囲の量にて含有する、波長172nmの発光を含む真空紫外光を励起光とする発光装置用の青色発光蛍光体にある。
【0015】
本発明はまた、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.025〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.0075モルの範囲の量にて含有する、波長254nmの発光を含む紫外光を励起光とする発光装置用の青色発光蛍光体にもある。
【0016】
本発明はまた、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.0090〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.040モルの範囲の量にて含有する、波長350〜430nmの範囲にピークを有する光を励起光とする発光装置用の青色発光蛍光体にもある。
【0017】
本発明はまた、波長172nmの発光を含む真空紫外光の発光を示す励起光源と、該励起光源からの真空紫外光によって励起されて青色光を発光する蛍光体とを備えた発光装置であって、該蛍光体が、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.0090〜0.025の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.040モルの範囲の量にて含有する蛍光体である発光装置にもある。
【0018】
本発明はまた、波長254nmの発光を含む紫外光の発光を示す励起光源と、該励起光源からの紫外光によって励起されて青色光を発光する蛍光体とを備えた発光装置であって、該蛍光体が、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.025〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体である発光装置にもある。
【0019】
本発明はまた、波長350〜430nmの範囲にピークを有する光の発光を示す励起光源と、該励起光源からの光によって励起されて青色光を発光する蛍光体とを備えた発光装置であって、該蛍光体が、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.0090〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.040モルの範囲の量にて含有する蛍光体である発光装置にもある。
【発明の効果】
【0020】
本発明のSMS蛍光体は、後述の実施例の結果から明らかなように大気雰囲気中での500℃の温度で加熱処理した後の、発光輝度が市販のBAM蛍光体よりも高い。従って、本発明のSMS蛍光体を用いた発光装置は、従来のBAM蛍光体を用いた発光装置と比較して青色光の発光輝度が大きい、あるいは、従来のBAM蛍光体を用いた発光装置と比較して青色光の発光輝度が同等であっても、蛍光体の使用量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に従う、交流型プラズマディスプレイパネルの一例の斜視図である。
【図2】本発明に従う、冷陰極型蛍光ランプの一例の断面図である。
【図3】本発明に従う、白色発光ダイオードの一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のSMS蛍光体は、基本組成式がSr3-xMgSi28:Euxで示される。SMS蛍光体は、一般にメルウィナイト結晶構造を有する。SMS蛍光体としては、Srの一部をCaやBaで置換したものも知られているが、本発明で用いるSMS蛍光体は、Srに置換したCaやBaを実質的に含有しないものであることが好ましい。ここで、CaやBaを実質的に含有しないとは、Ca及びBaの含有量が蛍光体1モル当たりの含有量として0.01モル以下であることを意味する。
【0023】
本発明のSMS蛍光体は、W及び/又はPbを含む。SMS蛍光体のEu含有量及びW及び/又はPbの添加量は、SMS蛍光体の用途、すなわちSMS蛍光体を励起させる光の波長によって異なる。
【0024】
AC型PDPのように励起光源に放電下にあるXeガスを用いる発光装置用、すなわち波長172nmの発光を含む真空紫外光による励起用のSMS蛍光体は、蛍光体1モル中のEu含有量が0.0090〜0.025モルの範囲にあり(すなわち、組成式のxが0.0090〜0.025の範囲にある値にあり)、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.040モルの範囲の量にて含有する。
【0025】
励起光が波長172nmの発光を含む真空紫外光用のSMS蛍光体は、蛍光体1モル中のEu含有量が0.010〜0.025モルの範囲、特に0.010〜0.023モルの範囲にあり、蛍光体1モルに対してWを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体であるか、蛍光体1モル中のEu含有量が0.0090〜0.025モルの範囲、特に0.010〜0.023モルの範囲にあり、蛍光体1モルに対してPbを0.00050〜0.040モルの範囲の量にて含有する蛍光体であることが好ましい。
【0026】
CCFLのように励起光源に放電下にあるHgガスを用いる発光装置用、すなわち波長254nmの発光を含む紫外光による励起用のSMS蛍光体は、蛍光体1モル中のEu含有量が0.025〜0.040モルの範囲にあり(すなわち、組成式のxが0.025〜0.040の範囲にある値にあり)、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.0075モルの範囲の量にて含有する。
【0027】
励起光が波長254nmの発光を含む紫外光用のSMS蛍光体は、蛍光体1モル中のEu含有量が0.025〜0.040モルの範囲、特に0.028〜0.040モルの範囲にあり、蛍光体1モルに対してWを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体であるか、蛍光体1モル中のEu含有量が0.025〜0.040モルの範囲、特に0.028〜0.040モルの範囲にあり、蛍光体1モルに対してPbを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体であることが好ましい。
【0028】
白色LEDのように励起光源に電圧が印加された半導体を用いる発光装置用、すなわち波長350〜430nmの光による励起用のSMS蛍光体は、蛍光体1モル中のEu含有量が0.0090〜0.040モルの範囲にあり(すなわち、組成式のxが0.0090〜0.040の範囲にある値にあり)、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.040モルの範囲の量にて含有する。
【0029】
波長350〜430nmの光による励起用のSMS蛍光体は、蛍光体1モル中のEu含有量が0.025〜0.040モルの範囲、特に0.028〜0.040モルの範囲にあり、蛍光体1モルに対してWを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体であるか、蛍光体1モル中のEu含有量が0.025〜0.040モルの範囲、特に0.028〜0.040モルの範囲にあり、蛍光体1モルに対してPbを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体であることが好ましい。
【0030】
上記のSMS蛍光体は、Sr源粉末、Mg源粉末、Si源粉末、Eu源粉末、そしてW源粉末及び/又はPb源粉末を混合し、得られた粉末混合物を焼成することによって製造することができる。
【0031】
Sr源粉末、Mg源粉末、Si源粉末、Eu源粉末、W源粉末及びPb源粉末の各原料粉末はそれぞれ、酸化物粉末であってもよいし、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩(塩基性炭酸塩を含む)、硝酸塩、シュウ酸塩などの加熱により酸化物を生成する化合物の粉末であってもよい。原料粉末はそれぞれ一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。各原料粉末は、純度が99質量%以上であることが好ましい。
【0032】
Sr源粉末、Mg源粉末、Si源粉末及びEu源粉末の配合比率は、SMS蛍光体が生成する割合であり、一般に、粉末混合物中のSrとEuとの合計量を3モルとしたときにMgが0.9〜1.1モルの範囲、Siが1.9〜2.1モルの範囲となる割合である。
【0033】
粉末混合物には、フラックスを添加してもよい。フラックスはハロゲン化物であることが好ましく、塩素化合物であることが特に好ましい。フラックスとして、原料粉末の一部に塩素化合物粉末を用いることが好ましい。特に、ストロンチウムの塩素化合物粉末を用いることが好ましい。フラックスの添加量は、粉末混合物中のストロンチウムとユウロピウムとの合計量を3モルとして、ハロゲン量が0.0001〜0.5モルの範囲となる量であることが好ましく、0.02〜0.5モルの範囲となる量であることが特に好ましい。
【0034】
原料粉末の混合方法には、乾式混合法及び湿式混合法のいずれかの方法を採用することができる。湿式混合法で原料粉末を混合する場合は、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ミル、ペイントシェーカー、ロッキングミル、ロッキングミキサー、ビーズミル、撹拌機などを用いることができる。溶媒には、水や、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコールを用いることができる。
【0035】
粉末混合物の焼成は、0.5〜5.0体積%の水素と99.5〜95.0体積%の不活性気体とからなる還元性気体の雰囲気下にて行なう。不活性気体の例としては、アルゴン及び窒素を挙げることができる。焼成温度は、一般に900〜1300℃の範囲である。焼成時間は、一般に0.5〜100時間の範囲である。
【0036】
原料粉末に加熱により酸化物を生成する化合物の粉末を用いる場合には、還元性気体雰囲気下で焼成する前に、粉末混合物を大気雰囲気下にて、600〜850℃の温度で0.5〜100時間仮焼することが好ましい。
【0037】
焼成により得られたSMS蛍光体は、必要に応じて分級処理、塩酸や硝酸などの鉱酸による酸洗浄処理、ベーキング処理を行なってもよい。
【0038】
次に、本発明の発光装置について添付図面の図1〜図3を参照しながら、説明する。
【0039】
図1は、本発明に従うAC型PDPの一例の斜視図である。AC型PDPは、励起光源が放電下にあるXeガスであり、波長172nmの発光を含む真空紫外光を励起光とする発光装置である。
図1において、プラズマディスプレイパネルは、Xeガスを含む放電ガスが充填された放電空間10を介して、対向配置された前面板20と背面板30とからなる。放電空間10に充填される放電ガスには、通常はXeガスとNeガスとの混合ガスが用いられる。混合ガス中のXeガスの濃度は、Xeガスの放電により分子線発光が生じる濃度であり、一般には10〜30体積%の範囲、好ましくは15〜25体積%の範囲にある。
【0040】
前面板20は、透明ガラス基板21、透明ガラス基板21の背面板側の表面に形成された二つの列電極24a、24bからなる放電電極25、放電電極を被覆する誘電体層26、そして誘電体層の表面に形成された誘電体保護層27からなる。放電電極25を構成する二つの列電極24a、24bは、それぞれ透明電極22とバス電極23とからなる。透明電極22は、一般にITO(インジウムスズ酸化物)膜や酸化スズ膜などの導電性金属酸化物膜からなる。誘電体層26は低融点ガラスからなる。誘電体保護層27は、酸化マグネシウム膜からなる。
【0041】
背面板30は、透明ガラス基板31、透明ガラス基板31の前面板側の表面に形成されたアドレス電極32、アドレス電極32を被覆する誘電体層33、誘電体層33の表面に間隔を開けてストライプ状に形成された隔壁34、隔壁34の間に充填された青色発光蛍光体35B、緑色発光蛍光体35G及び赤色発光蛍光体35Rからなる。アドレス電極32は、一般にアルミニウム、銅及び銀などの単相金属膜、もしくはクロム/銅/クロムなどの積層金属膜からなる。誘電体層33及び隔壁34は低融点ガラスからなる。青色発光蛍光体35Bは、上記励起光が波長172nmの発光を含む真空紫外光用のSMS蛍光体からなる。
【0042】
図1のAC型PDPにおいて、前面板20の放電電極25に電圧を印加すると、放電空間10内のXeガスが放電して、波長146nmと波長172nmの真空紫外光が生成し、この真空紫外光が背面板30に備えられているSMS蛍光体35B、緑色発光蛍光体35G及び赤色発光蛍光体35Rに照射して、それらの蛍光体を励起して、青色、緑色、赤色の三原色の可視光を発光させ、これらの組み合わせで画像を形成する。
【0043】
図2は、本発明に従う、CCFLの一例の断面図である。CCFLは、励起光源が放電下にあるHgガスであり、波長254nmの発光を含む紫外光を励起光とする発光装置である。
図2において、CCFLはガラス部材であるガラス管41、ガラス管41の内部空間42に充填された放電ガス、ガラス管41の内壁面に形成された蛍光体層43、ガラス管41の長手方向の両側端部にそれぞれ設けられた一対の電極44a、44b、そして電極44a、44bと外部電源(図示せず)とを電気的に接続するための導電線45a、45bからなる。放電ガスは、一般にHgガスと希ガス(例えば、Arガス)との混合ガスが用いられる。蛍光体層43は、上記励起光が波長254nmの発光を含む紫外光用のSMS蛍光体と、緑色発光蛍光体と、赤色発光蛍光体とを含む。
【0044】
図2のCCFLにおいて、電極44a、44bとの間に高電圧を印加すると、内部空間42に充填されたHgガスの放電により波長254nmの紫外光が生成し、この紫外光が蛍光体層43に照射し、各色の蛍光体を励起して、青色、緑色及び赤色の可視光を発光させ、これらの発光光の混色により白色が生成する。
【0045】
図3は、本発明に従う、白色LEDの一例の断面図である。本発明において、白色LEDは、励起光源が電圧が印加された半導体とし、該半導体にて生成した波長350〜430nmの範囲にピークを有する光を励起光とする発光装置である。
図3において、白色LEDは、基板51と、基板51の上に接着材52により固定された半導体53、基板の上に形成された一対の電極54a、54b、半導体53と電極54a、54bとを電気的に接続するリード線55a、55b、半導体53を被覆する樹脂層56、樹脂層56の上に設けられた蛍光体層57、そして樹脂層56と蛍光体層57の周囲を覆う光反射材58、そして電極54a、54bと外部電源(図示せず)とを電気的に接続するための導電線59a、59bからなる。半導体53の例としては、AlGaN系半導体を挙げることができる。樹脂層56の材料の例としてはシリコーン樹脂を挙げることができる。蛍光体層57には、上記波長350〜430nmの光による励起用のSMS蛍光体と、緑色発光蛍光体と、赤色発光蛍光体とがガラスやシリコーン樹脂などの透明樹脂に分散された層を用いることができる。
【0046】
図3の白色LEDにおいて、電極54a、54bに電圧を印加すると、半導体53から波長350〜430nmの範囲にピークを有する光が生成し、この光が蛍光体層57に照射し、各色の蛍光体を励起して、青色、緑色及び赤色の可視光を発光させ、これらの発光光の混色により白色が生成する。
【実施例】
【0047】
[実施例1]
SrCO3粉末(純度99.99質量%、平均粒子径2.73μm)、塩基性MgCO3粉末(4MgCO3・Mg(OH)2・4H2O粉末、純度99.99質量%、平均粒子径11.08μm)、SiO2粉末(純度99.9質量%、平均粒子径3.87μm)、Eu23粉末(純度99.9質量%、平均粒子径2.71μm)、WO3粉末(純度99.9質量%、平均粒子径7μm)の各原料粉末をそれぞれ、Sr:Mg:Si:Eu:Wのモル比で2.985:1:2.000:0.015:0.0010となるように秤量した。なお、各原料粉末の平均粒子径は、いずれもレーザー回折散乱法により測定した値である。
【0048】
秤量した各原料粉末を純水750mLと共にボールミルに投入し、24時間湿式混合した後、加熱により水分を除去して粉末混合物を得た。得られた粉末混合物をアルミナ坩堝に入れて、大気雰囲気にて800℃の温度で3時間仮焼し、次いで室温まで放冷した後、2体積%水素−98体積%アルゴンの混合ガス雰囲気にて1200℃の温度で3時間焼成して粉末焼成物を得た。得られた粉末焼成物を目開き20μmのポリアミド製篩にて湿式で篩分けし、粗大粒子を除去した後、乾燥した。以上のようにして、蛍光体1モルに対してEuを0.015モル、Wを0.0010モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0049】
[実施例2]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Wのモル比が2.985:1:2.000:0.015:0.0050となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光
体1モルに対してEuを0.015モル、Wを0.0050モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0050】
[比較例1]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Wのモル比が2.985:1:2.000:0.015:0となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.015モル含有し、Wを含有しないSMS蛍光体を製造した。
【0051】
[実施例3]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Wのモル比が2.980:1:2.000:0.020:0.0010となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.020モル、Wを0.0010モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0052】
[実施例4]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Wのモル比が2.980:1:2.000:0.020:0.0050となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.020モル、Wを0.0050モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0053】
[比較例2]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Wのモル比が2.980:1:2.000:0.020:0となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.020モル含有し、Wを含有しないSMS蛍光体を製造した。
【0054】
[実施例5]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Wのモル比が2.970:1:2.000:0.030:0.0010となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.030モル、Wを0.0010モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0055】
[実施例6]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Wのモル比が2.970:1:2.000:0.030:0.0050となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.030モル、Wを0.0050モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0056】
[比較例3]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Wのモル比が2.970:1:2.000:0.030:0となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.030モル含有し、Wを含有しないSMS蛍光体を製造した。
【0057】
[実施例7]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Wのモル比が2.965:1:2.000:0.035:0.0010となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.035モル、Wを0.0010モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0058】
[実施例8]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Wのモル比が2.965:1:2.000:0
.035:0.0050となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.035モル、Wを0.0050モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0059】
[比較例4]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Wのモル比が2.965:1:2.000:0.035:0となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.035モル含有し、Wを含有しないSMS蛍光体を製造した。
【0060】
[評価]
実施例1〜8と比較例1〜4で製造したSMS蛍光体、及び市販のBAM蛍光体をそれぞれアルミナ坩堝に入れて大気雰囲気にて500℃の温度で1時間加熱処理した後、室温まで放冷した。放冷後の各蛍光体に、波長146nm、波長172nm、波長254nm及び波長405nmの光をそれぞれ照射して、蛍光体を励起させ、蛍光体が発光した青色光の発光輝度を測定した。波長146nmと波長172nmの光源にはそれぞれ各波長用のエキシマランプを用いた。波長254nmと波長405nmの光源にはキセノンランプを用い、分光器を用いて波長254nmと波長405nmの光に分光した。発光輝度の測定結果を表1に示す。なお、発光輝度は、市販のBAM蛍光体の発光強度を100とした相対値である。
【0061】
表1
────────────────────────────────────────
蛍光体1モル中のEuとWの量 各波長の光で励起したときの発光輝度
─────────────── ───────────────────
Eu量(モル) W量(モル) 146nm 172nm 254nm 405nm
────────────────────────────────────────
実施例1 0.015 0.0010 73 85 91 160
実施例2 0.015 0.0050 74 90 92 170
────────────────────────────────────────
比較例1 0.015 0 61 83 89 155
────────────────────────────────────────
実施例3 0.020 0.0010 54 89 106 165
実施例4 0.020 0.0050 60 89 112 170
────────────────────────────────────────
比較例2 0.020 0 30 82 102 160
────────────────────────────────────────
実施例5 0.030 0.0010 31 74 118 195
実施例6 0.030 0.0050 49 73 119 180
────────────────────────────────────────
比較例3 0.030 0 25 73 109 168
────────────────────────────────────────
実施例7 0.035 0.0010 23 71 120 180
実施例8 0.035 0.0050 24 72 121 170
────────────────────────────────────────
比較例4 0.035 0 22 70 114 165
────────────────────────────────────────
【0062】
表1の結果から、実施例1〜4のWを含むSMS蛍光体は、Wを含まないSMS蛍光体(比較例1)と比較して、波長172nmの真空紫外光の励起による発光輝度が高い。またSMS蛍光体はBAM蛍光体と比較して、経時的な発光輝度の低下が少ないことは知られている。従って、実施例1〜4のWを含むSMS蛍光体は、励起光源に放電下にあるXeガスを用いる発光装置の青色発光源用として特に有用である。また、実施例5〜8のWを含むSMS蛍光体は、Wを含まないSMS蛍光体(比較例4)と比較して、波長254nmの紫外光の励起による発光輝度が高い。従って、実施例5〜8のWを含むSMS蛍光体は、励起光源に放電下にあるHgガスを用いる発光装置の青色発光源用として特に有用である。また、実施例1、3のWを含むSMS蛍光体は、Wを含まないSMS蛍光体(比較例4)とを比較して、SMS蛍光体の付活成分であるEuが少量でありながらも、波長405nmの光の励起による発光輝度は同等であり、実施例2、4〜8のWを含むSMS蛍光体は、いずれもWを含まないSMS蛍光体(比較例4)とを比較して、波長405nmの光の励起による発光輝度が高い。従って、実施例1〜8のWを含むSMS蛍光体は、励起光源に電圧が印加されて、波長350〜430nmの範囲にピークを有する光の発光を示す半導体を励起光源とする発光装置の青色発光源として有用である。
【0063】
[実施例9]
SrCO3粉末(純度99.99質量%、平均粒子径2.73μm)、塩基性MgCO3粉末(4MgCO3・Mg(OH)2・4H2O粉末、純度99.99質量%、平均粒子径11.08μm)、SiO2粉末(純度99.9質量%、平均粒子径3.87μm)、Eu23粉末(純度99.9質量%、平均粒子径2.71μm)、PbCl2粉末(純度98質量%、平均粒子径30μm)の各原料粉末をそれぞれ、Sr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比で2.990:1:2.000:0.010:0.0010となるように秤量した。なお、各原料粉末の平均粒子径は、いずれもレーザー回折散乱法により測定した値である。
【0064】
秤量した各原料粉末を純水750mLと共にボールミルに投入し、24時間湿式混合した後、加熱により水分を除去して粉末混合物を得た。得られた粉末混合物をアルミナ坩堝に入れて、大気雰囲気にて800℃の温度で3時間焼成し、次いで室温まで放冷した後、2体積%水素−98体積%アルゴンの混合ガス雰囲気にて1200℃の温度で3時間焼成して粉末焼成物を得た。得られた粉末焼成物を目開き20μmのポリアミド製篩にて湿式で篩分けし、粗大粒子を除去した後、乾燥した。以上のようにして、蛍光体1モルに対してEuを0.010モル、Pbを0.0010モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0065】
[実施例10]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.990:1:2.000:0.010:0.0050となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.010モル、Pbを0.0050モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0066】
[実施例11]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.990:1:2.000:0.010:0.0100となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.010モル、Pbを0.0100モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0067】
[実施例12]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.990:1:2.000:0.010:0.0300となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.010モル、Pbを0.0300モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0068】
[比較例5]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.990:1:2.000:0.010:0となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.010モルを含有し、Pbを含有しないSMS蛍光体を製造した。
【0069】
[実施例13]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.985:1:2.000:0.015:0.0010となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.015モル、Pbを0.0010モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0070】
[実施例14]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.985:1:2.000:0.015:0.0050となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.015モル、Pbを0.0050モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0071】
[比較例6]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.985:1:2.000:0.015:0となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.015モルを含有し、Pbを含有しないSMS蛍光体を製造した。
【0072】
[実施例15]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.980:1:2.000:0.020:0.0010となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.020モル、Pbを0.0010モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0073】
[実施例16]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.980:1:2.000:0.020:0.0050となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.020モル、Pbを0.0050モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0074】
[実施例17]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.980:1:2.000:0.020:0.0100となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.020モル、Pbを0.0100モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0075】
[実施例18]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.980:1:2.000:0.020:0.0300となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.020モル、Pbを0.0300モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0076】
[比較例7]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.980:1:2.000:0.020:0となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.020モルを含有し、Pbを含有しないSMS蛍光体を製造した。
【0077】
[実施例19]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.970:1:2.000:0.030:0.0010となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.030モル、Pbを0.0010モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0078】
[実施例20]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.970:1:2.000:0.030:0.0050となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.030モル、Pbを0.0050モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0079】
[比較例8]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.970:1:2.000:0.030:0となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.030モルを含有し、Pbを含有しないSMS蛍光体を製造した。
【0080】
[実施例21]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.965:1:2.000:0.035:0.0010となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.035モル、Pbを0.0010モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0081】
[実施例22]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.965:1:2.000:0.035:0.0050となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.035モル、Pbを0.0050モル含有するSMS蛍光体を製造した。
【0082】
[比較例9]
各原料粉末をSr:Mg:Si:Eu:Pbのモル比が2.965:1:2.000:0.035:0となるように秤量したこと以外は、実施例9と同様にして、蛍光体1モルに対してEuを0.035モルを含有し、Pbを含有しないSMS蛍光体を製造した。
【0083】
[評価]
実施例9〜22と比較例5〜9で製造したSMS蛍光体、及び市販のBAM蛍光体をそれぞれアルミナ坩堝に入れて大気雰囲気にて500℃の温度で1時間加熱処理した後、室温まで放冷した。放冷後の各蛍光体に波長146nm、波長172nm、波長254nm及び波長405nmの光をそれぞれ照射して、蛍光体を励起させ、蛍光体が発光した青色光の発光輝度を測定した。その結果を表2に示す。なお、発光輝度は、市販のBAM蛍光体の発光強度を100とした相対値である。
【0084】
表2
────────────────────────────────────────
蛍光体1モル中のEuとPbの量 各波長の光で励起したときの発光輝度
───────────────── ──────────────────
Eu量(モル) Pb量(モル) 146nm 172nm 254nm 405nm
────────────────────────────────────────
実施例9 0.010 0.0010 78 81 80 150
実施例10 0.010 0.0050 77 90 92 155
実施例11 0.010 0.0100 65 92 84 160
実施例12 0.010 0.0300 74 86 86 162
────────────────────────────────────────
比較例5 0.010 0 71 81 76 148
────────────────────────────────────────
実施例13 0.015 0.0010 65 85 89 158
実施例14 0.015 0.0050 67 87 95 165
────────────────────────────────────────
比較例6 0.015 0 61 83 89 162
────────────────────────────────────────
実施例15 0.020 0.0010 55 87 105 162
実施例16 0.020 0.0050 53 88 104 162
実施例17 0.020 0.0100 54 91 110 165
実施例18 0.020 0.0300 54 96 108 170
────────────────────────────────────────
比較例7 0.020 0 30 82 102 160
────────────────────────────────────────
実施例19 0.030 0.0010 30 74 118 175
実施例20 0.030 0.0050 42 75 119 180
────────────────────────────────────────
比較例8 0.030 0 25 73 109 168
────────────────────────────────────────
実施例21 0.035 0.0010 25 72 120 168
実施例22 0.035 0.0050 27 71 121 172
────────────────────────────────────────
比較例9 0.035 0 22 70 114 165
────────────────────────────────────────
【0085】
表2の結果から、実施例9〜18のPbを含むSMS蛍光体は、Pbを含まないSMS蛍光体(比較例6)と比較して、波長172nmの真空紫外光の励起による発光輝度が高い。またSMS蛍光体はBAM蛍光体と比較して、経時的な発光輝度の低下が少ないことは知られている。従って、実施例9〜18のPbを含むSMS蛍光体は、Xeガスの放電により生成する真空紫外光で蛍光体を励起させる発光装置の青色発光源用として特に有用である。また、実施例19〜22のPbを含むSMS蛍光体は、Pbを含まないSMS蛍光体(比較例9)と比較して、波長254nmの紫外光の励起による発光輝度が高い。従って、実施例19〜22のPbを含むSMS蛍光体は、励起光源に放電下にあるHgガスを用いる発光装置の青色発光源用として特に有用である。また、実施例9〜17のPbを含むSMS蛍光体は、Pbを含まないSMS蛍光体(比較例8)とを比較して、SMS蛍光体の付活成分であるEuが少量でありながらも、波長405nmの光の励起による発光輝度は同等であり、実施例18〜22のPbを含むSMS蛍光体は、いずれもPbを含まないSMS蛍光体(比較例8)とを比較して、波長405nmの光の励起による発光輝度が高い。従って、実施例9〜22のPbを含むSMS蛍光体は、励起光源に電圧が印加されて、波長350〜430nmの範囲にピークを有する光の発光を示す半導体を励起光源とする発光装置の青色発光源として有用である。
【符号の説明】
【0086】
10 放電空間
20 前面板
21 透明ガラス基板
22 透明電極
23 バス電極
24a、24b 列電極
25 放電電極
26 誘電体層
27 誘電体保護層
30 背面板
31 透明ガラス基板
32 アドレス電極
33 誘電体層
34 隔壁
35B 青色発光蛍光体
35G 緑色発光蛍光体
35R 赤色発光蛍光体
41 ガラス管
42 内部空間
43 蛍光体層
44a、44b 電極
45a、45b 導電線
51 基板
52 接着材
53 半導体
54a、54b 電極
55a、55b リード線
56 樹脂層
57 蛍光体層
58 光反射材
59a、59b 導電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.0090〜0.025の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.040モルの範囲の量にて含有する、波長172nmの発光を含む真空紫外光を励起光とする発光装置用の青色発光蛍光体。
【請求項2】
組成式のxが、0.010〜0.025の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してWを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する請求項1に記載の青色発光蛍光体。
【請求項3】
組成式のxが、0.0090〜0.025の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してPbを0.00050〜0.040モルの範囲の量にて含有する請求項1に記載の青色発光蛍光体。
【請求項4】
Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.025〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.0075モルの範囲の量にて含有する、波長254nmの発光を含む紫外光を励起光とする発光装置用の青色発光蛍光体。
【請求項5】
組成式のxが、0.025〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してWを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する請求項4に記載の青色発光蛍光体。
【請求項6】
組成式のxが、0.025〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してPbを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する請求項4に記載の青色発光蛍光体。
【請求項7】
Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.0090〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.040モルの範囲の量にて含有する、波長350〜430nmの範囲にピークを有する光を励起光とする発光装置用の青色発光蛍光体。
【請求項8】
組成式のxが、0.025〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してWを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する請求項7に記載の青色発光蛍光体。
【請求項9】
組成式のxが、0.025〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してPbを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する請求項7に記載の青色発光蛍光体。
【請求項10】
波長172nmの発光を含む真空紫外光の発光を示す励起光源と、該励起光源からの真空紫外光によって励起されて青色光を発光する蛍光体とを備えた発光装置であって、該蛍光体が、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.0090〜0.025の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.040モルの範囲の量にて含有する蛍光体である発光装置。
【請求項11】
励起光源が放電下にあるXeガスであり、蛍光体の組成式のxが、0.010〜0.025の範囲にある値であり、該蛍光体が、蛍光体1モルに対してWを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体である請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
励起光源が放電下にあるXeガスであり、蛍光体の組成式のxが、0.0090〜0.025の範囲にある値であり、該蛍光体が、蛍光体1モルに対してPbを0.00050〜0.040モルの範囲の量にて含有する蛍光体である請求項10に記載の発光装置。
【請求項13】
波長254nmの発光を含む紫外光の発光を示す励起光源と、該励起光源からの紫外光によって励起されて青色光を発光する蛍光体とを備えた発光装置であって、該蛍光体が、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.025〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体である発光装置。
【請求項14】
励起光源が放電下にあるHgガスであり、蛍光体の組成式のxが、0.025〜0.040の範囲にある値であり、該蛍光体が、蛍光体1モルに対してWを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体である請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
励起光源が放電下にあるHgガスであり、蛍光体の組成式のxが、0.025〜0.040の範囲にある値であり、該蛍光体が、蛍光体1モルに対してPbを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体である請求項13に記載の発光装置。
【請求項16】
波長350〜430nmの範囲にピークを有する光の発光を示す励起光源と、該励起光源からの光によって励起されて青色光を発光する蛍光体とを備えた発光装置であって、該蛍光体が、Sr3-xMgSi28:Euxの組成式で示され、xが0.0090〜0.040の範囲にある値であり、蛍光体1モルに対してW及び/又はPbを0.00010〜0.040モルの範囲の量にて含有する蛍光体である発光装置。
【請求項17】
励起光源が電圧が印加された半導体であり、蛍光体の組成式のxが、0.025〜0.040の範囲にある値であり、該蛍光体が、蛍光体1モルに対してWを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体である請求項16に記載の発光装置。
【請求項18】
励起光源が電圧が印加された半導体であり、蛍光体の組成式のxが、0.025〜0.040の範囲にある値であり、該蛍光体が、蛍光体1モルに対してPbを0.00075〜0.0075モルの範囲の量にて含有する蛍光体である請求項16に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−116974(P2011−116974A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247604(P2010−247604)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000119988)宇部マテリアルズ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】