説明

静電容量検出装置および接触検知センサ

【課題】検出対象物が接近する以外のノイズ事象の影響を受けずに、静電容量値の増加を検出して検出対象物の接近を確実に判別できる静電容量検出装置を提供する。
【解決手段】第1および第2電極と導電性基体との間に形成される第1および第2静電容量と、第1および第2静電容量の各静電容量値を所定の時間間隔で検出する検出部と、各静電容量値の時間変化分である第1変化容量ΔC1および第2変化容量ΔC2を演算する演算部(S11、S21)と、第1変化容量ΔC1が第1閾値A1以上で第2変化容量ΔC2が第2閾値A2未満のときに第1電極へ検出対象物が接近したと判定する第1判定処理(S12〜S14)、および、第2変化容量ΔC2が第4閾値A4以上で第1変化容量ΔC1が第3閾値A3未満のときに第2電極へ検出対象物が接近したと判定する第2判定処理(S22〜S24)のうちの少なくとも一方の判定処理を行う判定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自由空間を介して形成される静電容量の静電容量値の変化を検出することにより検出対象物の接近を判定する静電容量検出装置、および、静電容量検出装置を用いた接触検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
運転者が所持する携帯機からの無線信号を車両側で受信して、車両のドアを自動的に解錠および施錠するスマートキーシステムが実用化されている。最近のスマートキーシステムは、携帯機からの無線信号のID認証に加え、運転者のドアハンドルへの接触を検知することにより運転者の意思を確認し、より的確な解錠操作および施錠操作を行うようになっている。運転者の接触を検知する方法として、ドアハンドルに内蔵された電極により形成される静電容量の静電容量値の変化を検出することが一般的になっている。この種の静電容量式接触検知センサでは、静電容量値を変化させる雨水などの影響を運転者の接触と確実に判別する技術が重要であり、特許文献1〜3に技術例が開示されている。
【0003】
特許文献1の静電容量式接触検知装置は、ドアハンドルに設けられたセンサ電極により構成される静電容量センサと、静電容量変化に基づきユーザの接触を検知する検知部とを備え、静電容量センサはドアパネルに近い部分における接触検知感度がドアパネルから遠い部分よりも低いことを特徴としている。さらに、この接触検知感度の特性を実現するために、センサ電極に切欠部を形成した態様、誘電率の異なる部位を設けた態様、および複数の静電容量センサを備える態様が開示されている。これにより、ドアハンドルの上面とドアパネルとの境界部分に雨水が溜まったときにユーザが接触したと誤検知することを防止できると、されている。
【0004】
特許文献2の静電容量式のドア用タッチセンサは、ドアハンドルの内部または近傍に2つ以上のセンサ電極を設置し、それぞれのセンサ電極の容量変化を電圧または周波数のパラメータに変換する変換回路と、パラメータを検出する判断回路とを有し、2つ以上のセンサ電極による出力をもって検出出力を生じることを特徴としている。つまり、2つ以上のセンサ電極による出力の論理積で接触の有無を判定している。これにより、単に通りすがりに触った程度の意志の認められない接触では検出出力は生じず、誤動作により予想外の時点でドアの解錠が行われる不都合が生じない、とされている。
【0005】
また、特許文献3の静電容量タッチセンサは、第1および第2電極、発振部、および検出部を備えている。第1および第2電極は、タッチ操作に基づいて大地との間に静電容量を形成し、水滴の付着によって電極間に寄生容量が発生するようになっている。そして、タッチ操作では検出部の出力電圧が減少し、水滴の付着では検出部の出力電圧が増加することから、高い精度でタッチ操作の有無を判定することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−133777号公報
【特許文献2】特開2006−344554号公報
【特許文献3】特開2009−218876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1では、雨水の量が少なく水滴として付着する程度であれば効果が生じるが、被水量が増加したときの誤検知のおそれは解消されない。例えば、屋外で降水量が多いときや、注水洗車を行っているときには、大量の水がドアハンドルに降り注いでドアハンドルの上面全体が被水する。このときの静電容量の増加は、人の手がドアハンドルの上面に接触したときに類似するため、誤検知のおそれは解消されない。
【0008】
また、特許文献2では、2つ以上のセンサ電極による出力の論理積を用いることで、通りすがりの人などによる偶発的な接触に対する誤動作を防止しているが、雨水に対する誤動作防止の効果は期待できない。なぜなら、雨水は2つ以上のセンサ電極の全てに対し程度の差はあっても影響を及ぼして静電容量を増加させるので、運転者の接触と判別することが難しいからである。一方、運転者は全てのセンサ電極に同時に接触しないと検知してもらえず、1つのセンサ電極のみを用いる方式と比較して使用性が劣る。
【0009】
さらに、特許文献3でも特許文献1と同様に、ドアハンドルの被水量が増加すると実際には電極間の寄生容量だけでなく大地との間の静電容量も増加する。したがって、被水量が増加したときの等価回路および諸回路定数は人が接触したときに類似し、検出部の出力電圧も類似して変化するものと考えられ、出力電圧の増減による判別が難しくなり、雨水の影響を人の接触と誤検知するおそれは解消されない。
【0010】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、ドアハンドルの被水量が多いときでもその影響を受けずに、静電容量値の増加を検出して人の手の接近を確実に判別できる静電容量検出装置および接触検知センサを提供することを解決すべき課題とする。さらに一般化して考えれば、検知対象物である人の手がドアハンドルに接触するあるいは接近する以外の事象はノイズ事象と捉えることができる。したがって、検出対象物が接近する以外のノイズ事象の影響を受けずに、静電容量値の増加を検出して検出対象物の接近を確実に判別できる静電容量検出装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する請求項1に係る静電容量検出装置の発明は、非導電性部材に内蔵された第1電極と導電性基体との間に自由空間を介して形成される第1静電容量と、前記非導電性部材に内蔵された第2電極と前記導電性基体との間に自由空間を介して形成される第2静電容量と、前記第1静電容量の静電容量値、および前記第2静電容量の静電容量値を所定の時間間隔で測定する検出部と、前記第1静電容量の静電容量値の時間変化分である第1変化容量、および前記第2静電容量の静電容量値の時間変化分である第2変化容量を演算する演算部と、前記第1変化容量が第1閾値以上で前記第2変化容量が第2閾値未満のときに前記第1電極へ検出対象物が接近したと判定する第1判定処理、および、前記第2変化容量が第4閾値以上で前記第1変化容量が第3閾値未満のときに前記第2電極へ前記検出対象物が接近したと判定する第2判定処理のうちの少なくとも一方の判定処理を行う判定部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記判定部は、前記第1判定処理および前記第2判定処理の両方を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記判定部は、前記第1変化容量が前記第1閾値以上のときに前記第1電極へ前記検出対象物が接近したと判定する第3判定処理および前記第2判定処理を行い、あるいは、前記第2変化容量が前記第4閾値以上のときに前記第2電極へ前記検出対象物が接近したと判定する第4判定処理および前記第1判定処理を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記検出部は、前記第1静電容量および前記第2静電容量が電荷を充電または放電したときの時定数に関する指標を測定するスイッチドキャパシタ方式検出部であり、かつ、前記第1静電容量および前記第2静電容量のうちの一方の充電と他方の放電とを同期して行うことを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記検出部は、前記第1静電容量および前記第2静電容量が電荷を充電または放電したときの時定数に関する指標を測定するスイッチドキャパシタ方式検出部であり、かつ、充放電の繰り返し周波数を複数有して各繰り返し周波数での前記第1および前記第2静電容量の各静電容量値を測定し、前記演算部は各繰り返し周波数での前記第1および前記第2変化容量を演算し、前記判定部は、前記第1〜前記第4判定処理の少なくとも一判定処理で前記第1および前記第2変化容量の前記各繰り返し周波数に対する周波数依存性を参照して前記検出対象物の接近を判定することを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記導電性基体はドアパネルであり、前記非導電性部材はドアハンドルであって、前記検出対象物は人の手であることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項6において、前記ドアパネルは車両のドアを構成し、前記第1電極は前記ドアハンドルの前記ドアパネルに近い裏面側に内蔵され、前記第2電極は前記ドアハンドルの前記ドアパネルから離れた表面側に内蔵されかつ前記第1電極に対し前記ドアハンドルの長手方向に変位していることを特徴とする。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項7において、前記車両は、車両側無線装置および携帯機側無線装置を有して前記ドアの施錠および解錠を自動で実施するスマートキーシステムを備え、前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方が前記車両側無線装置の無線通信用アンテナを兼ねていることを特徴とする。
【0018】
請求項9に係る接触検知センサの発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の静電容量検出装置を用い、前記非導電性部材への人の手の接触を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る静電容量検出装置の発明では、非導電性部材に内蔵された第1および第2電極と導電性基体との間に自由空間を介して第1および第2静電容量が形成され、それぞれの静電容量値が検出され、その時間変化分である第1および第2変化容量が演算される。そして、判定部は、第1および第2変化容量の一方が所定の閾値以上に増加したときに、他方の増加が顕著でないことを必要条件にして検出対象物の第1または第2電極への接近を判定する。したがって、自由空間に発生して第1および第2静電容量の両方に影響する例えば降雨による被水などのノイズ事象が発生したときに、第1および第2変化容量がともに増加するため、検出対象物の接近と誤判定することはない。一方、第1および第2電極の一方に選択的に検出対象物が接近したときに、一方の変化容量のみが増加するため、検出対象物の接近を確実に判定できる。つまり、検出対象物が接近する以外のノイズ事象の影響を受けずに、静電容量値の増加を検出して検出対象物の接近を確実に判別できる。
【0020】
請求項2に係る発明では、判定部は、第1判定処理および第2判定処理の両方を行い、第1および第2変化容量の一方が所定の閾値以上に増加したときに、他方の増加が顕著でないことを必要条件にして検出対象物の接近を判定する。したがって、ノイズ事象の影響を受けずに、検出対象物が第1および第2電極のどちらに接近したときにも確実に判別できる。
【0021】
請求項3に係る発明では、判定部は、第1および第2変化容量の一方が所定の閾値以上に増加したときに他方の増加が顕著でないことを必要条件とするが、他方が所定の閾値以上に増加したときには一方の増加を参照しない。ノイズ事象から受ける影響の度合いが第1および第2静電容量で異なるときには、影響を受けにくい他方の静電容量では、他方の変化容量のみを用いて検出対象物の接近を判定してもよい。これにより、判定処理が簡素化される。
【0022】
請求項4に係る発明では、検出部は、第1静電容量および第2静電容量が電荷を充電または放電したときの時定数に関する指標を測定するスイッチドキャパシタ方式検出部であり、かつ、第1静電容量および第2静電容量のうちの一方の充電と他方の放電とを同期して行う。一般的に、電荷を充電または放電すると静電容量素子の電圧は急峻に変動し、ラインノイズや電磁波ノイズが発生し得る。本態様で、一方の充電と他方の放電とを同期して行うことにより、発生するノイズは異極性となり互いに打ち消し合うので、他へのノイズの影響を低減することができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、複数の繰り返し周波数での第1および第2変化容量をそれぞれ演算し、第1〜前記第4判定処理の少なくとも一判定処理で第1および第2変化容量の周波数依存性を参照して検出対象物の接近を判定する。つまり、変化容量の増加の検出に加え、ノイズ事象との判別に有効な周波数依存性も併用して判定を行う。これにより、検出対象物が第1および第2電極の両方に接近したことをノイズ事象と判別でき、判定精度が一層向上する。
【0024】
請求項6に係る発明では、導電性基体はドアパネルであり、非導電性部材はドアハンドルであって、検出対象物は人の手とされている。本発明は、建造物の出入口を始めとするドアに組み込むことができ、人が出入りする際の接近検知やドアハンドルへの接触検知に有効である。
【0025】
請求項7に係る発明では、ドアパネルは車両のドアを構成し、第1電極は前記ドアハンドルのドアパネルに近い裏面側に内蔵され、第2電極はドアハンドルのドアパネルから離れた表面側に内蔵されかつ第1電極に対しドアハンドルの長手方向に変位している。本発明は、車両のドアに組み込むことができ、人の手のドアハンドルへの接触を降雨による被水などと判別できて効果的である。さらに、上述のようにドアハンドルへの第1および第2電極の内蔵位置を定めると、人の手が第1および第2電極に同時に接近することがなくなり、かつ、乗車時には人の手の第1電極への接近を判別でき、降車時には人の手の第2電極への接近を判別できる。したがって、乗車時と降車時を判別する必要のあるスマートキーシステムに好適である。
【0026】
請求項8に係る発明では、車両は、車両側無線装置および携帯機側無線装置を有するスマートキーシステムを備え、第1電極および第2電極の少なくとも一方が車両側無線装置の無線通信用アンテナを兼ねている。これにより、部材点数が削減され構造が簡素化されるので、車両のコスト低減に貢献できる。
【0027】
請求項9に係る発明では、静電容量検出装置を用い、非導電性部材への人の手の接触を検知する接触検知センサを構成できる。本発明は、接触検知センサとして実施することができ、効果は請求項1〜8と同じである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態の静電容量検出装置を車両のドアに搭載した状態を説明する斜視図である。
【図2】解錠用センサ電極の配置を説明する図であり、図1中のA−A断面図である。
【図3】施錠用センサ電極、検出部、および電子制御部の配置を説明する図であり、図1中のB−B断面図である。
【図4】第1実施形態の静電容量検出装置の機能構成を説明する図である。
【図5】スイッチドキャパシタ方式検出部の構成例を説明する図である。
【図6】検出部における第1および第2静電容量の各静電容量値を検出するタイミングを説明する図であり、(1)は同期検出、(2)は非同期検出を示している。
【図7】第1実施形態の静電容量検出装置で、電子制御部が行う判定処理フローを説明する図である。
【図8】第2実施形態の静電容量検出装置で、電子制御部が行う判定処理フローを説明する図である。
【図9】第3および第4実施形態で検出部における第1および第2静電容量の各静電容量値を検出するタイミングを説明する図であり、(1)は同期検出、(2)は非同期検出を示している。
【図10】第3実施形態の静電容量検出装置で、電子制御部が行う判定処理フローを説明する図である。
【図11】第4実施形態の静電容量検出装置で、電子制御部が行う判定処理フローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1実施形態の静電容量検出装置について、図1〜図7を参考にして説明する。第1実施形態の静電容量検出装置は、車両のドアに組み込んで人の手のドアハンドルへの接触を検知する接触検知センサに用いるものであり、スマートキーシステムの一部になっている。図1は、第1実施形態の静電容量検出装置1を車両のドア2に搭載した状態を説明する斜視図である。図中の右上方が車両前側、左下方が車両後側であり、ドア2を構成するドアパネル21およびドアハンドル25が図示されている。
【0030】
ドア2は、車両のボディに開閉可能に枢支されており、スマートキーシステムにより施錠および解錠可能となっている。ドアパネル21は、金属板のプレス成型により形成された部材であり、本発明の導電性基体に相当する。ドアハンドル25は、ドアパネル21のアウトサイドに設けられて車両の前後方向に延在し、前後2箇所でドアパネル21に取り付けられている。ドアハンドル25は、樹脂成型により内部空間26を有する中空形状に形成されており、第1および第2電極を内蔵した本発明の非導電性部材に相当する。ドアパネル21のドアハンドル25の内側には窪み22が形成されており、人の手が容易にドアハンドル25の中央付近を把持できるようになっている。
【0031】
ドアハンドル25には、解錠用センサ電極3、施錠用センサ電極4、検出部5、および電子制御部6が内蔵されている。図2は、解錠用センサ電極3の配置を説明する図であり、図1中のA−A断面図である。解錠用センサ電極3は第1電極に相当し、図1および図2に示されるように、金属製の短冊状板材である。解錠用センサ電極3は、ドアハンドル25の内部空間26のうちドアパネル21に近い裏面側27に内蔵され、内部空間26の前後方向の中央付近で前後に延在している。解錠用センサ電極3は、スマートキーシステムで解錠のタイミングを検知する接触検知センサ、すなわち解錠用センサを構成する。乗車時に人の手が窪み22に入ってドアハンドル25を把持する(すなわち接触する)と、解錠用センサ電極3に接近し直接には触れない。
【0032】
また、図3は、施錠用センサ電極4、検出部5、および電子制御部6の配置を説明する図であり、図1中のB−B断面図である。施錠用センサ電極4は第2電極に相当し、図1および図3に示されるように、解錠用センサ電極3よりも小さな金属製の短冊状板材である。施錠用センサ電極4は、ドアハンドル25の内部空間26のうちドアパネル21から離れた表面側28に内蔵され、かつ解錠用センサ電極3に対し前方に変位して配置され、前後に延在している。施錠用センサ電極4は、スマートキーシステムで施錠のタイミングを検知する接触検知センサ、すなわち施錠用センサを構成する。人の手が窪み22に入ってドアハンドル25を把持しても、施錠用センサ電極4には接近しない。その代わり、降車時に手の指をドアハンドル25の前部付近に接触させると、施錠用センサ電極4に接近する。
【0033】
検出部5は、後で説明するスイッチドキャパシタ方式検出部5であり、電子回路基板で形成されている。検出部5は、図1および図3に示されるように、ドアハンドル25の内部空間26のうち施錠用センサ電極4に近い裏面側29に配設されている。電子制御部6は、検出部5と同様にドアハンドル25の内部空間26のうち施錠用センサ電極4に近い裏面側29に配設されている(便宜的に検出部5および電子制御部6を図中にグレーで表示)。
【0034】
図4は、第1実施形態の静電容量検出装置1の機能構成を説明する図である。図示されるように、解錠用センサ電極3およびドアパネル21は検出部5に接続されており、両者3、21の間には自由空間を介して第1静電容量31が形成される。同様に、解錠用センサ電極4も検出部5に接続されており、ドアパネル21との間には自由空間を介して第2静電容量41が形成される。
【0035】
電子制御部6は、図略のCPUを備えてソフトウェアで動作し、本発明の演算部および判定部を兼ねている。電子制御部6は、制御線を介して検出部5の検出動作を制御するとともに、信号線を介して検出部5が検出した第1および第2静電容量31、41の各静電容量値C1、C2に関する信号を取得する。さらに、電子制御部6は、取得した信号から各静電容量値C1、C2を求め時系列データとして記憶し、所定個数の最新データを残すように逐次更新処理を行う。各静電容量値C1、C2を求めた以降の電子制御部6の演算部および判定部としての機能は、後の判定処理フローで詳述する。
【0036】
図5は、スイッチドキャパシタ方式検出部5の構成例を説明する図である。検出部5は、第1および第2静電容量31、41に対して同様の検出回路構成を有しており、第1静電容量31を代表にして説明する。図示されるように、電源ラインの一側V1上の第1端子T1と第2端子T2との間に、既知の基準容量Cs1および第1スイッチS1を並列に接続し、第2端子T2と第3端子T3との間に第2スイッチS2を接続する。また、第3端子T3と、電源ラインの他側V2上の第4端子T4との間に、第1静電容量31(静電容量値C1)および第3スイッチS3を並列に接続する。さらに、コンパレータCmpを設け、その負側入力端子−に第2端子T2を接続し、正側入力端子+にレファレンス電圧Vref1を入力する。そして、電子制御部6から第1〜第3スイッチS1〜S3を開閉制御し、コンパレータCmpの出力端子Voutの信号を電子制御部6に取り込むように構成する。
【0037】
上述の検出部5では、まず、第1スイッチS1および第2スイッチS2を閉じ、第3スイッチS3を開いて、電源電圧により第1静電容量31に電荷を充電する。次に、第1スイッチを開き、第2スイッチS2および第3スイッチS3を短時間ピッチで繰返して交互に開閉することにより、第1静電容量31の電荷を充放電する。すると、第2端子T2の電圧は上下動しつつ徐々に低下し、レファレンス電圧Vref1以下になると出力端子Voutの信号がオン出力される。この構成で、第2端子T2の電圧が低下する速さは、充放電の時定数に依存し、時定数は第1静電容量31の静電容量値C1に依存して定まる。したがって、出力端子Voutがオン出力するまでの第2および第3スイッチS2、S3の開閉回数は時定数に関する指標であり、これを電子制御部6でカウントすることにより、静電容量値C1を検出できる。
【0038】
また、第2静電容量41に対する検出部5の検出回路構成は、第1〜第3スイッチがそれぞれ第4〜第6スイッチに置き換わり、第2静電容量41の静電容量値C2に合わせて基準容量Cs2およびレファレンス電圧Vref2が設定されている点が異なり、それ以外は第1静電容量31に対する検出回路構成と同じである。
【0039】
ここで、電子制御部6は、第1静電容量31および第2静電容量41のうちの一方の充電と他方の放電とを同期して行う。つまり、第3スイッチS3開状態での第2スイッチS2の閉動作による第1静電容量31の充電と、第5スイッチS5開状態での第6スイッチS6の閉動作による第2静電容量41の放電とを同期して行う。また、第2スイッチS2開状態での第3スイッチの閉動作による第1静電容量31の放電と、第6スイッチS6開状態での第5スイッチの閉動作による第2静電容量41の充電とを同期して行う。これにより、第1静電容量31および第2静電容量41で発生するノイズは異極性となり互いに打ち消し合うので、車載の他装置へのノイズの影響を低減することができる。
【0040】
図6は、検出部5における第1および第2静電容量31、41の各静電容量値C1,C2を検出するタイミングを説明する図であり、(1)は同期検出、(2)は非同期検出を示している。図中の横軸は共通の時間軸であり、各静電容量値C1、C2を検出する時間帯がグレーの矩形で示されている。前述したように、電子制御部6が第1〜第3スイッチS1〜S3と第4〜第6スイッチS4〜S6とを並行して開閉制御する場合、(1)に示されるように同一の時間帯に第1および第2静電容量31、41の各静電容量値C1、C2を検出することになる。また、(2)に示される別法で、まず第1〜第3スイッチS1〜S3を開閉制御して第1静電容量31の静電容量値C1を検出し、次いで第4〜第6スイッチS4〜S6を開閉制御して第2静電容量41の静電容量値C2を検出するようにしてもよい。いずれの場合も、電子制御部6は、各静電容量値C1、C2の検出時間間隔t1が一定となるように制御を行う。
【0041】
次に、電子制御部6の演算部および判定部としての機能について、判定処理フローを参考にして説明する。図7は、第1実施形態の静電容量検出装置1で、電子制御部6が行う判定処理フローを説明する図である。図中には、解錠用センサ判定処理および施錠用センサ判定処理が右左に記載されているが、2つのCPUで並行して判定処理を行うことを意味しているのではなく、1つのCPUで2つの判定処理を交互に行い破線矢印で示されるように互いに演算結果を流用することを便宜的に示したものである。
【0042】
図7中の解錠用センサ判定処理のステップS11で、電子制御部6は、まず、解錠用センサ電極3の静電容量値C1の最新データC1newを取得して時系列データを更新する。次に、最新データC1newから所定個数だけ過去の旧データC1oldを減算して第1変化容量ΔC1を演算する(ΔC1=C1new―C1old)。所定個数は、各静電容量値C1、C2の検出時間間隔t1、ならびに人の手がドアハンドル25に接近および接触する速さを参考にして適宜定めることができる。ステップS11の機能は、本発明の演算部の機能に相当する。
【0043】
次のステップS12で、第1変化容量ΔC1が第1閾値A1以上であるか否か比較し、条件が成立しないときは解錠用センサ判定処理を終了する。つまり、静電容量値C1の増加が認められないときは、ドアハンドル25の解錠用センサ電極3に近い位置に人の手は接触していないと判定する。ステップS12の条件が成立したときは、ステップS13に進み、施錠用センサ電極4の第2変化容量ΔC2の最新値を流用する。そして、ステップS14で、第2変化容量ΔC2が第2閾値A2未満であるか否か比較し、条件が成立しないときは解錠用センサ判定処理を終了する。つまり、静電容量値C1の増加が認められかつ静電容量値C2の増加も認められたときは、解錠用センサ電極3および施錠用センサ電極4の両方に影響する例えば降雨による被水などのノイズ事象が発生したと判定する。
【0044】
ステップS14の条件が成立したときは、静電容量値C1の増加が認められかつ静電容量値C2の増加が認められなかった場合である。このとき、ドアハンドル25の解錠用センサ電極3に近い位置に人の手が接触したと判定できるので、ステップS15に進み、解錠用センサ信号を出力する。これにより、スマートキーシステムはドア2を解錠する。ステップS12からステップS14に至る判定処理は、本発明の判定部の第1判定処理に相当する。
【0045】
図7中の施錠用センサ判定処理のステップS21〜S25は、解錠用センサ判定処理のステップS11〜S15と概ね同様になっている。すなわち、ステップS21で、電子制御部6は、まず、施錠用センサ電極4の静電容量値C2の最新データC2newを取得して時系列データを更新する。次に、最新データC2newから、解錠用センサ判定処理における所定個数と同数だけ過去の旧データC2oldを減算して第2変化容量ΔC2を演算する(ΔC2=C2new―C2old)。ステップS21の機能は、本発明の演算部の機能に相当する。
【0046】
次のステップS22で、第2変化容量ΔC2が第4閾値A4以上であるか否か比較し、条件が成立しないときは施錠用センサ判定処理を終了する。つまり、静電容量値C2の増加が認められなときは、ドアハンドル25の施錠用センサ電極4に近い位置に人の手は接触していないと判定する。ステップS22の条件が成立したときは、ステップS23に進み、解錠用センサ電極3の第1変化容量Δ1の最新値を流用する。そして、ステップS24で、第1変化容量ΔC1が第3閾値A3未満であるか否か比較し、条件が成立しないときは施錠用センサ判定処理を終了する。つまり、静電容量値C2の増加が認められかつ静電容量値C1の増加も認められたときは、ノイズ事象が発生したと判定する。
【0047】
ステップS24の条件が成立したときは、静電容量値C2の増加が認められかつ静電容量値C1の増加が認められなかった場合である。このとき、ドアハンドル25の施錠用センサ電極4に近い位置に人の手が接触したと判定できるので、ステップS25に進み、施錠用センサ信号を出力する。これにより、スマートキーシステムはドア2を施錠する。ステップS22からステップS24に至る判定処理は、本発明の判定部の第2判定処理に相当する。第1実施形態では、電子制御部6は、第1判定処理および第2判定処理の両方を行っている。
【0048】
なお、各静電容量値C1、C2の増加を判定する第1〜第4閾値A1〜A4の適正値は、ドアパネル21およびドアハンドル25の形状や材質、解錠用センサ電極3および施錠用センサ電極4の大きさと配置などに依存して変化する。したがって、コンピュータを用いたシミュレーションや試作実験などの手法により、第1〜第4閾値A1〜A4を設定することが好ましい。
【0049】
第1実施形態では、自由空間に発生して第1および第2静電容量31、41の両方に影響する例えば降雨による被水などのノイズ事象が発生したときに、第1および第2変化容量ΔC1、ΔC2がともに増加するため、検出対象物すなわち人の手の接近と誤判定することはない。一方、解錠用センサ電極3および施錠用センサ電極4の位置は、ドアハンドル25の裏面側27と表面側28に別れ、かつ互いに車両の前後方向に変位しているので、人の手はいずれか一方(3または4)に選択的に接近する。このため、一方の変化容量のみ(ΔC1またはΔC2)が増加し、電子制御部6は人の手の接近を確実に判定できる。また、解錠用センサ電極3と施錠用センサ電極4とで乗車時と降車時を判別できるので、スマートキーシステムに好適である。
【0050】
次に、解錠用センサの判定処理を簡素化した第2実施形態の静電容量検出装置について、図8を参考にして説明する。第2実施形態の静電容量検出装置は、図1〜図6で説明した第1実施形態の装置構成と同一であり、電子制御部6の判定処理フローが図7から図8に置き換わる。図8は、第2実施形態の静電容量検出装置で、電子制御部6が行う判定処理フローを説明する図である。図8を図7と比較すれば明らかなように、第2実施形態ではステップS13およびステップS14を省略している。図8のステップS12の判定処理は、本発明の判定部の第3判定処理に相当する。つまり、第2実施形態では、電子制御部6は、第3判定処理および第2判定処理を行っている。
【0051】
第3判定処理で第1変化容量ΔC1のみに基づく判定を行い、第2判定処理で第2変化容量ΔC2に加え第1変化容量ΔC1も流用して判定を行う理由は、被水から受ける影響の度合いが解錠用センサ電極3および施錠用センサ電極4で異なることに依拠している。つまり、解錠用センサ電極3では、ドアハンドル25のドアパネル21に向いた裏面側の表面に被水すると第1変化容量ΔC1が増加し得るが、実際には発生しにくい。したがって、第1変化容量ΔC1が増加したとき、直ちに人の手の接近と判定しても誤るおそれは少ない。
【0052】
一方、施錠用センサ電極4では、ドアハンドル25の外側に向いた表面だけでなくドアハンドル25の上面に被水しても第2変化容量ΔC2が増加し得るので、比較的多頻度で発生し得るものと考えられる。したがって、第2変化容量ΔC2が増加しただけで人の手の接近と判定すると誤るおそれがあり、第1変化容量ΔC1の増加が認められないことを必要条件とすることにより判定信頼性を向上できる。また、上述したように、第2実施形態では、第1実施形態よりも判定処理を簡素化できる。
【0053】
なお、被水などのノイズ事象から受ける影響の度合いが上述と逆の場合には、演算結果を流用する方向を反転する。つまり、第1実施形態の図7に示される判定処理フローからステップS23およびステップS24を省略する。この応用形態では、電子制御部6は、第2変化容量ΔC2のみに基づいて判定する第4判定処理、および第1変化容量ΔC1に加え第2変化容量ΔC2も流用して判定する第1判定処理を行う。
【0054】
次に、スイッチドキャパシタ方式検出部5が充放電の繰り返し周波数を複数有する第3および第4実施形態の静電容量検出装置について、図9〜図11を参考にして説明する。第3および第4実施形態の静電容量検出装置は、図1〜図6で説明した第1実施形態の装置構成と同一であり、図5に示されるスイッチドキャパシタ方式検出部5の動作が異なる。また、電子制御部6の判定処理フローは、第3実施形態では図10、第4実施形態では図11に置き換わる。以下詳述する。
【0055】
第3および第4実施形態では、検出部5で第1静電容量31に関して第2スイッチS2および第3スイッチS3を短時間ピッチで繰返して交互に開閉する際に、2種類の繰り返し周波数f1、f2を用いる。この繰り返し周波数f1、f2は、電子制御部6から第2および第3スイッチS2、S3を適宜開閉制御することにより実現でき、それぞれに対して静電容量値C11(f1)、C12(f2)を検出できる。また、第2静電容量41に関しても同様に、第5および第6スイッチS5、S6を繰り返し周波数f1、f2で開閉制御することにより、2種類の静電容量値C21(f1)、C22(f2)を検出できる。これら4静電容量値は、図9に示される検出タイミングで検出することができる。図9は、第3および第4実施形態で検出部5における第1および第2静電容量31、41の各静電容量値C1、C2を検出するタイミングを説明する図であり、(1)は同期検出、(2)は非同期検出を示している。第1実施形態と同様に、2つの静電容量値C1、C2を並行して同時に検出してもよいし、時間的にずらして検出してもよい。
【0056】
第3実施形態では、電子制御部6は、検出した4静電容量値を用い、図10に示される判定処理フローを行う。図中の解錠用センサ判定処理および施錠用センサ判定処理は交互に行なわれる。図10中の解錠用センサ判定処理のステップS51で、電子制御部6は、解錠用センサ電極3に関し繰り返し周波数f1での静電容量値C11の最新データを取得して時系列データを更新する。次に、最新データから所定個数だけ過去の旧データを減算して、繰り返し周波数f1での第1変化容量ΔC11を演算する。ステップS52でも同様にして、繰り返し周波数f2での第1変化容量ΔC12を演算する。
【0057】
次に、ステップS53で、第1変化容量ΔC11が閾値A11以上でかつ/または第1変化容量ΔC12が閾値A12以上あるか否か比較し、条件が成立しないときは解錠用センサ判定処理を終了する。つまり、静電容量値C11またはC12の増加が認められないときは、ドアハンドル25の解錠用センサ電極3に近い位置に人の手は接触していないと判定する。ステップS53の条件が成立したときは、ステップS54に進み、2つの第1変化容量ΔC11、ΔC12の周波依存性が同じか否か比較する。例えば、2つの第1変化容量ΔC11、ΔC12の各増加量または各増加率が概ね一致しているか否か比較する。この周波依存性については、被水では一致せず、人の手の接近で一致することが既に判明している。したがって、条件が成立しないときは解錠用センサ判定処理を終了し、条件が成立したときは、ステップS55に進む。
【0058】
ステップS55では、施錠用センサ電極4の2つの第2変化容量ΔC21、ΔC22の最新値を流用する。そして、ステップS56で、第2変化容量ΔC21が閾値A21未満かつ/または第2変化容量ΔC22が閾値A22未満の場合は、解錠用センサ電極4に近い位置に人の手が接触したと判定できるので、ステップS58に進む。また、ステップS56で、第2変化容量ΔC21が閾値A21以上かつ/または第2変化容量ΔC22が閾値A22以上の場合は、解錠用センサ電極3および施錠用センサ電極4の両方に影響する例えば降雨による被水などのノイズ事象が発生、もしくは施錠用センサ電極4に人の手が接触したと判定してステップS57に進む。ステップS57では、2つの第2変化容量ΔC21、ΔC22の周波依存性が同じか否か比較する。条件が成立しないときは解錠用センサ判定処理を終了し、条件が成立したとき、すなわち施錠用センサ電極4にも人の手が接触したと判定したときはステップS58に進む。ステップS58では、解錠用センサ信号を出力する。ステップS53からステップS57に至る判定処理は、周波数依存性による判定を併用した第1判定処理に相当する。
【0059】
また、図10中の施錠用センサ判定処理における各ステップS61〜S68は、上述した解錠用センサ判定処理の各ステップS51〜S58と概ね同様であるので説明は省略する。ステップS63からステップS67に至る判定処理は、周波数依存性による判定を併用した第2判定処理に相当する。
【0060】
なお、各閾値A11〜A42には、当然ながら適正値を設定する。上述した第3実施形態では、2つの繰り返し周波数f1、f2でともに変化容量が増加することに加え、ノイズ事象との判別に有効な周波数依存性も併用して判定を行う。したがって、人の手の解錠用センサ電極3および施錠用センサ電極4の両方への接近の判別が可能になる。
【0061】
また、第4実施形態では、電子制御部6は、検出した4静電容量値を用い、図11に示される判定処理フローを行う。図11を図10と比較すれば明らかなように、第4実施形態ではステップS55〜S57を省略している。図11のステップS53およびステップS54の判定処理は、周波数依存性による判定を併用した第3判定処理に相当する。第4実施形態は、第2実施形態と同様に被水から受ける影響の度合いが解錠用センサ電極3および施錠用センサ電極4で異なる構成に有効であり、第3実施形態よりも判定処理を簡素化できる。
【0062】
なお、被水などのノイズ事象から受ける影響の度合いが逆の場合には、演算結果を流用する方向を反転する。つまり、第3実施形態の図10に示される判定処理フローからステップS65〜S67を省略する。この応用形態では、電子制御部6は、2つの第2変化容量ΔC21、ΔC22に基づいて判定する第4判定処理、および2つの第1変化容量ΔC11、ΔC12に加え2つの第2変化容量ΔC21、ΔC22も流用して判定する第1判定処理を、周波数依存性による判定を併用しつつ行う。
【0063】
なお、各実施形態で、解錠用センサ電極3および施錠用センサ電極4の少なくとも一方を、スマートキーシステムの車両側無線通信用アンテナと兼ねるようにしてもよい。これにより、部材点数が削減され構造が簡素化されるので、車両のコスト低減に貢献できる。また、本発明は、スマートキーシステム以外の用途にも実施でき、様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1:静電容量検出装置
2:ドア
21:ドアパネル(導電性基体) 22:窪み
25:ドアハンドル(非導電性部材) 26:内部空間
27:裏面側 28:表面側 29:裏面側
3:解錠用センサ電極(第1電極) 31:第1静電容量
4:施錠用センサ電極(第2電極) 41:第2静電容量
5:検出部
6:電子制御部(演算部および判定部)
C1、C11、C12:第1静電容量の静電容量値
ΔC1、ΔC11、ΔC12:第1変化容量
C2、C21、C22:第2静電容量の静電容量値
ΔC2、ΔC21、ΔC22:第2変化容量
A1〜A4:第1〜第4閾値 A11〜A42:閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性部材に内蔵された第1電極と導電性基体との間に自由空間を介して形成される第1静電容量と、
前記非導電性部材に内蔵された第2電極と前記導電性基体との間に自由空間を介して形成される第2静電容量と、
前記第1静電容量の静電容量値、および前記第2静電容量の静電容量値を所定の時間間隔で検出する検出部と、
前記第1静電容量の静電容量値の時間変化分である第1変化容量、および前記第2静電容量の静電容量値の時間変化分である第2変化容量を演算する演算部と、
前記第1変化容量が第1閾値以上で前記第2変化容量が第2閾値未満のときに前記第1電極へ検出対象物が接近したと判定する第1判定処理、および、前記第2変化容量が第4閾値以上で前記第1変化容量が第3閾値未満のときに前記第2電極へ前記検出対象物が接近したと判定する第2判定処理のうちの少なくとも一方の判定処理を行う判定部と、
を備えることを特徴とする静電容量検出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記判定部は、前記第1判定処理および前記第2判定処理の両方を行うことを特徴とする静電容量検出装置。
【請求項3】
請求項1において、前記判定部は、前記第1変化容量が前記第1閾値以上のときに前記第1電極へ前記検出対象物が接近したと判定する第3判定処理および前記第2判定処理を行い、あるいは、前記第2変化容量が前記第4閾値以上のときに前記第2電極へ前記検出対象物が接近したと判定する第4判定処理および前記第1判定処理を行うことを特徴とする静電容量検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記検出部は、前記第1静電容量および前記第2静電容量が電荷を充電または放電したときの時定数に関する指標を測定するスイッチドキャパシタ方式検出部であり、かつ、前記第1静電容量および前記第2静電容量のうちの一方の充電と他方の放電とを同期して行うことを特徴とする静電容量検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、
前記検出部は、前記第1静電容量および前記第2静電容量が電荷を充電または放電したときの時定数に関する指標を測定するスイッチドキャパシタ方式検出部であり、かつ、充放電の繰り返し周波数を複数有して各繰り返し周波数での前記第1および前記第2静電容量の各静電容量値を測定し、
前記演算部は各繰り返し周波数での前記第1および前記第2変化容量を演算し、
前記判定部は、前記第1〜前記第4判定処理の少なくとも一判定処理で前記第1および前記第2変化容量の前記各繰り返し周波数に対する周波数依存性を参照して前記検出対象物の接近を判定することを特徴とする静電容量検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記導電性基体はドアパネルであり、前記非導電性部材はドアハンドルであって、前記検出対象物は人の手であることを特徴とする静電容量検出装置。
【請求項7】
請求項6において、前記ドアパネルは車両のドアを構成し、前記第1電極は前記ドアハンドルの前記ドアパネルに近い裏面側に内蔵され、前記第2電極は前記ドアハンドルの前記ドアパネルから離れた表面側に内蔵されかつ前記第1電極に対し前記ドアハンドルの長手方向に変位していることを特徴とする静電容量検出装置。
【請求項8】
請求項7において、前記車両は、車両側無線装置および携帯機側無線装置を有して前記ドアの施錠および解錠を自動で実施するスマートキーシステムを備え、
前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一方が前記車両側無線装置の無線通信用アンテナを兼ねていることを特徴とする静電容量検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の静電容量検出装置を用い、前記非導電性部材への人の手の接触を検知することを特徴とする接触検知センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−129762(P2012−129762A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278764(P2010−278764)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】